今回は短めです。
テキサス州・アマリロ近郊にて展開された神殺し作戦(Operation Godslayer)
アメリカ合衆国が史上最大級の火力を以って挑んだこの一大作戦は、最終的に未確認機械生命体『ビナー』の撃破には至らなかったものの、明確に損傷を与え、撤退に追い込むことに成功した。
──そして、世界は遂に“キヴォトスの存在による初の死者”を生み出す結果となってしまった。
これに対してアメリカ国内では自国民が惨殺されたことに対する怒りが沸騰し、『リメンバー・クロード』のスローガンと共にキヴォトス──もといアビドス砂漠への米軍進駐を行うべき、という強硬派論が台頭した。
無論、強硬派論の台頭は全てアメリカ政府の思惑通りである。
敢えてビナーによる被害者を表に出す事で国民の意識を怒りへ持っていく事で、世論を味方に着けようとしたのだ。
中にはアビドス砂漠からビナーが顕現したのなら無闇な進駐は兵士を危険に晒すだけである、という慎重な意見も見られたが、直後の政府による『アビドス砂漠は廃墟化した市街と砂漠が大半を占める危険性の少ない土地である』という発表により、それらは掻き消されていった。
政府による慎重な世論操作の後、ホワイトハウスによる『米軍によるアビドス砂漠進駐作戦』が公式に発表された。
この発表によりアメリカ世論は沸き立ち、諸外国は大焦りした。
中露は言わずもがな、日本政府もアメリカのキヴォトス進出には不味いと感じていた。
アメリカは今まで唯一キヴォトスというフロンティアに通じる日本の顔色を窺ってきた──つまり、それほどアメリカはキヴォトスでの利権を欲していたという事である。
そんな強欲なアメリカがキヴォトスとの直接的な繋がりを得たらどうなるか。想像もしたくない。
だが、今回の米軍進駐には諸外国は強く言えなかった。
国際法は異世界とのやりくりに対する記述はある筈もなく、そもそも自国民のこれ以上の被害を防ぐ為という大義名分を得てしまっているからだ。
しかし、今回の進駐発表で最も焦りを感じ、頭を抱えていたのは他でも無い連邦生徒会であった。
交流を得た日本政府からの情報により、アメリカを始めとする地球国家のヤバさというものは既に十分に理解していた。
そんなヤバい連中がキヴォトスに流れ込んでくるなんて、笑えない。
日本は比較的理性的であった為にD.U.地区のみでの活動を確約してくれたが、アメリカが同じ対応をしてくれるとは限らないのだ。
下手をすれば、学園が何個か消える。
連邦生徒会は必死にアメリカへの対抗策を考え、頭を悩ませるのであった。
◆
「ふむ、これは非常に由々しき事態だ」
「どうしましたか? マエストロ」
キヴォトスの某所。
そこに2人の人間───とは決して断定できない、異様な人影が在った。
その内の一人、マエストロと呼ばれた木彫りの男が頭をカタカタと鳴らし、言った。
「この気配……色彩では無い
「……クックック、私もその件で貴方をお尋ねしようとしていた所です。もしや、あり得ない事ですが
マエストロの言葉に、黒いスーツに身を包んだ男がそう答えた。
マエストロは続いて忌々しそうに首をギギギと鳴らし、言葉を続ける。
「顕現したソレは、言うならば漆黒、憎悪、破滅。芸術とは程遠いもの。全く忌々しい。アレを放置するのは危険だ、確実に対策を練る必要がある」
「ええ、そうですね。何かしらの対策を練った方が良いでしょう。アレは下手をすれば色彩よりも危険です」
表舞台が大混乱に陥る時、裏舞台でも混乱が広がっていた。
この世界が辿る末路は、まだ誰にも分からない。