虚実の方舟:Re   作:Oh my PC

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本編が泥々すぎるので息抜きに書いたハルナ達が和牛食べるだけの話。
温度差に風邪を引きそうになりそうです笑


美食研の日本人街巡り

 

 日本とキヴォトスがワームホールで繋がってから数ヶ月。

 

 ワームホールが存在し、日本が特別経済区と定めたD.U.シラトリ区は目覚ましい変化を遂げた。

 自衛隊から提供された装備や資金によってヴァルキューレ警察学校D.U.支部の治安維持能力は大きく向上し、犯罪発生率は脅威の8割低下を叩き出した。

(ヴァルキューレの能力向上の他に、単純に倫理的な話で”ヘイローのない人間が居る場所では銃をぶっ放せない“というマトモな生徒の意識改善も要因の一つである)

 

 そして、連邦生徒会と日本政府は予想よりも遥かに治安が改善された事に驚きつつ、この経済的恩恵を受ける一大チャンスを逃すまいと各企業や店舗のキヴォトス展開の規制を緩め、多くの日本企業や飲食店チェーンが展開することとなったのだ。

 

 その中でも特に治安改善の結果と言うべきものが『シラトリ区日本人街』である。

 

 と言っても、日本でいうチャイナタウンやコリアタウンのようなノリではなく、実態は独立した地区に近い。

 日本人街は連邦生徒会と日本政府の合意の元に建設された異文化交流特区で、日本企業に加えて限定的ではあるが個人経営店舗の展開も許された。

 

 この個人経営の店舗の展開が与えた影響は大きく、特に『地球のグルメ』はキヴォトス中に知れ渡った。

 

 これはそんな異文化交流の地たる日本人街を、ゲヘナのグルメ好きお尋ね者が巡る記録である。

 

 

 

 

 

 

 

 

"ここが…日本人街……"

 

「ええ、そのようですわね」

 

 日本人街の入り口に聳え立つ鳥居を模した建造物を見上げて、シャーレの先生とゲヘナ美食研究会の黒舘ハルナがそう言葉を漏らした。

 続いて、ジュンコやアカリと云った他の部員も各々に感想を言い合う。

 

「異世界の料理…どんなのがあるのかなぁ」

 

「ちょっとイズミ! 日本人街に入る時くらいはゲテモノ食べるのやめなさいよ!!」

 

「日本にも大食いの文化があるらしいですが…楽しみです♡」

 

 日本人街はどうやら最近できた異文化交流特区らしく、キヴォトスでもグルメスポットとして有名だ。

 

 また、日本人街は日本人従業員が多く銃撃が起きた際の危険性が高い為、日本の治安維持組織にあたるジエイタイ?という組織の兵士が警備に当たり、日本人街には銃の持ち込みの一切が禁止されているそうだ。

 

 まさかキヴォトスで銃を全く見ない事があるなんて、と先生は心の中で呟きながら入り口の検問所へ歩みを進める。

 

「そこ、コッチの検査スペースに───って、お前らまさか…!」

 

「要注意団体の美食研究会だ! お前ら、何しに来た!?」

 

 その時、検問所で警備任務に就いていたヴァルキューレ警察学校の生徒と自衛官がハルナ達の顔ぶれを見るなり、驚愕したような声を上げ、ヴァルキューレの生徒に関しては彼女らに銃口を向けた。

 

 その声が大きかったのか、周囲の自衛官も何ごとだと集まってきた。

 

「確かに、要注意団体の美食研究会で間違いなさそうです。それで、シャーレの先生。彼女達を引き連れて何を?」

 

 集まってきた内の自衛官の一人が、恐る恐ると言った具合にそう先生に尋ねた。

 仮にも目の前に居るのは、キヴォトス中の飲食店を爆破しては各自治区の治安維持組織と交戦して逃走している危険極まりないテロリストなのだ。

 

 偶然にもこの自衛官はイラク派遣の経験のある者だったが、それでも緊張を隠し切れていない。

 その自衛官の緊張を察してか、先生が出来るだけ穏やかな口調で彼の言葉に応えた。

 

"今日は彼女達と日本のグルメを堪能しに来たんですけど…もしかして、指名手配犯は立ち入り禁止と云う規定があったりしましたか? もしそうであれば、こちらの不手際なのですが…"

 

「……少々お待ち下さい。問い合わせます」

 

 先生の言葉を聞いた彼は直ぐに詰所に戻り、日本製の受話器を手に取り、警備隊本部に問い合わせを行う。

 数分間の会話の後、自衛官が気まずそうな顔をして戻ってきた。

 

「申し訳ございません。どうやら規定ではそのような項目は定められていないようです。銃口を向けた事、失礼いたしました」

 

 自衛官はそう謝罪を述べると、89式小銃を下ろし深々と頭を下げた。

 それに対して先生は気にしていないと云う旨の言葉を伝える。

 すると、奥からヴァルキューレ警察学校の生徒が歩いて来て、先生とハルナ達に向けて告げた。

 

「まだ日本人街は設立したばかりで法規制が十分ではありません。武器類は全て没収しての入場となりますが……先生、よろしくお願いしますよ?」

 

 ヴァルキューレの生徒はそう(余計なトラブルを起こさせるな)と暗に伝え、彼女らを通した。

 

 こうして、ハルナ達の日本グルメ巡りが始まったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

「案外、日本のグルメもキヴォトスの物と変わらないですわね」

 

 そう、街頭に並ぶ露店や看板を眺めながらハルナが言う。

 その言葉に、ジュンコが応えた。

 

「でも、何だか少しキヴォトスのグルメと違うのが多いわよ? 例えばこれとか!」

 

 そう言ってジュンコが目を輝かせながら差し出したのは、普通の団子よりも少し色が素朴な団子。

 日本の伝統料理の一つ、蕎麦団子であった。

 ジュンコは手元にあったそれをひょいと口に放り込み、満足そうに頬張る。

 

「なんだか、普通の団子よりもふんわりとしてて、素朴な味わいね! 結構好きな味かも!」

 

「美味しそう! ジュンコ、それ私にも頂戴!」

 

「い、嫌よ!? アンタ全部食べちゃうんだから、自分で買いなさい!」

 

"まあまあ、この後があるし、皆んな程々にね?"

 

 そう騒ぐジュンコに、先生がそう諭す。

 だが、そんな先生にアカリが言った。

 

「あら、そう云う先生も随分と楽しんでいませんか?」

 

 アカリが目をやると、先生は両手にビニール袋を持ち、屋台で買った軽食やスイーツがたんまりと入っていた。

 美食研の4人にはバレないようにこっそりと食べようとしていた辺り、先生も確信犯である。

 

「あー! 先生もズルい!!」

 

「オトナの財力と云うことですね♡」

 

"あ、あはは……何も買わないつもりだったんだけど、いざ目の前にすると欲望を抑えきれなくて…"

 

 結局、先生は美食研の4人にも屋台の料理を奢ると云うことで話を付けたのであった。

 

 

 そして、談笑しながら歩いていた5人は一つの店舗の前で立ち止まる。

 今日の『目当て』の物だ。

 

「こ、これが噂の和牛ステーキ店……」

 

「凄い行列ですねぇ…」

 

「でも、凄くいい匂いがする!」

 

 日本人街の和牛ステーキ。

 ゲートが開通して日本人街が出来て以降、訪れた生徒全員が絶賛したとネットで噂の料理だった。

 曰く口の中で溶けるだの、今までのステーキがサンダルの底に感じるだの。

 そんな料理が美食研の目に留まらない訳がなく、今回4人が訪れたのだ。

 

"取り敢えず並ぼうか。結構な行列みたいだし"

 

 先生にそう言われ、4人は大人しく列に並ぶ。

 

 さっきまで屋台の料理を食べてたじゃないか、と思うかもしれないが、彼女達の胃は数々の美食探求により並みの大きさではなく、早く食べたいという気持ちで一杯だった。

 

 

 列に並んでから約1時間、遂に彼女達の番が訪れた。

 

「やっと食べられる~!!」

 

「ええ、長かったですわ。ですが…空腹は最大のスパイス、ベストコンディションで和牛ステーキを頂きましょう」

 

 名前を呼ばれた5人は店の自動ドアを潜り、対面の大きなソファ席に座る。

 先生がメニューを机の上に広げ、品揃えを見る。

 

"私は…一番人気の和牛ステーキセットのレギュラーにしようかな"

 

「私は和牛ステーキセットのダブルに致しましょう」

 

「私はレギュラーにしようかしら…」

 

「私もダブルにしましょう。どんな大きさか気になりますね♡」

 

「うーん、私もレギュラーで良いや」

 

 各々が注文を決めると、オーダー用紙に品名を書き、日本人の店員に手渡す。

 その様子を見ていたイズミが不意に声を漏らした。

 

「屋台の時から思ってたけど、本当に日本の人ってヘイローが無いんだね」

 

"私と一緒だね"

 

 日本を始め、地球に住む人々はヘイローが無いと云う話は前々から聞いていたが、目の前にするとその事実を実感する。

 ヘイローの無い人間が普通に社会を形成し、時には戦争をするという事が、キヴォトスの住人からすれば信じ難い事だったからである。

 

 と、あれやこれやと道中の感想や雑談をしていると、一つのロボットがゆっくりと近づいて来た。

 後ろには5つのステーキプレートが置いてあり、配膳ロボットである事が分かった。

 

『料理をお取り下さいニャ! 取り終わったら背中のボタンを押して下さいニャ!』

 

 猫型の配膳ロボットがそう言うと、5人はそれぞれ頼んだ料理を手に取り、ロボットの背中にあるボタンを押した。

 

 すると配膳ロボットは軽快なBGMを流しながらゆっくりと席を離れていった。

 

「……配膳ロボットなんて久しぶりに見ましたわ。私もミレニアムに訪れた際に見かけた位で…」

 

"まぁ、ゲヘナとかだと直ぐ壊されたり盗まれちゃうからね…それほど治安が良い証拠だよ"

 

 そうハルナと先生が言葉を交わした後、5人は目の前のステーキに向き合う。

 

 量は…お世辞にも多いとは言えなかった。

 何というか、ステーキと呼ぶには小さすぎるが、焼肉と言うには大きすぎる、といった具合だ。

 

 まぁ何はともあれ食べてみないと分からない。

 

"それじゃあ……"

 

「「「「「いただきます!!」」」」」

 

 ナイフで肉を切り、フォークで持ち上げる。

 

 ……柔らかい。それに、肉汁の量が凄まじい。

 

 持ち上げた肉を口に運び、咀嚼する。

 

"お、美味しい…!"

 

「これは…素晴らしいステーキですわね」

 

「ん~! こんなお肉食べたことない!!」

 

 口に入れた瞬間に鼻を抜ける肉の香りと、ステーキとは思えないほどの柔らかい食感。

 評判通り、今までのステーキの概念を破壊する凄まじい逸品だった。

 

 更に、肉と一緒に白米を掛け込めば、肉の香りと白米が絶妙にマッチし、これまた最高の一口だ。

 

 あまりの衝撃に5人はほぼ無語で味わった。

 無論、幾ら美味しいからと言って勢い良くがっつく事はしない。

 ゆっくりと肉の味を愉しんだ。

 

 

 

 

「あ~! 美味しかった~!」

 

「何杯でもイケちゃう味でした♡」

 

「小さいと思ったけど、思いのほか満足度は高いわね…」

 

「絶品のステーキでしたわ。お付き合い頂きありがとうございました、先生」

 

"ううん、大丈夫。それに、こんなに美味しいステーキを食べられたんだから寧ろこっちが感謝したいくらいだよ"

 

 食べ終わった5人は店を出て、各々で感想を言い合っていた。

 値は張ってしまったが、値段に見合った美味しさであった事は間違いないだろう。

 

 先生はユウカにまた何か言われそう、と不安に駆られたが恐らく彼女をこのお店に連れていってあげれば大丈夫か、何て云う安直な思考でそれを振り払った。

 

「皆さんのお腹の調子は如何ですか? 私はまだまだイケますが♡」

 

「それはアンタがおかしいのよ!!」

 

「和牛ステーキ…量の割に満足度が高かったですね。少量で大きい満足感を与える……これもまた新しい美食と云う訳ですか」

 

"まぁ、まだ日本人街は全て周り切れてないからね。小腹を空かしがでら、他のお店も行ってみよう!"

 

「「「「おー!」」」」

 

 そうして5人は日本人街を更に満喫する為、店の反対側の商店街へと足を運んだ。 

 




おかしいな…美食研が登場したのに、爆破シーンが無い……

というか、結果キヴォトスと日本のグルメってガチの伝統料理以外はほぼ一緒なので描写に苦労しました。
でも美味しく日本グルメを堪能する美食研が見たいんや…!って事で和牛を採用。
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