(書籍発売中!)逃げる魔法使い 〜寿命を削って魔法を使っていただけなのに、なんだか周囲の様子が変です〜   作:うちっち

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長ーい!
いや、こんな感じになればいいなって……


おまけ⑧ 再放送最終話(「また、どこかで」)

 ある小さな村に立ち寄った日の午後のことだった。

 

 勇者は、村の縁に住む老婆に呼び止められた。勇者が人を探しているという噂を聞いて来てくれたのだという。杖をついて歩くその人は、嬉しそうにこんな話を始めた。

 

「先週ね、山で迷ったの。滑って足を痛めて、動けなくなって……」

 

 誰も通らないはずの山道で、ひとりの少女が現れたという。

 

「白い服を着ていて、小さくて細くて、最初は子供かと思ったの。でも、声は落ち着いてて……“動かないでくださいね”って、そっと手を当ててくれたのよ」

 

 老婆は、目を細めて続ける。

 

 「そのとき――背負ってた杖が、ふっと、黄色く光ったの。あたたかくて、すぐに足が楽になったのよ。不思議な光だった……」

 

 勇者の呼吸が、わずかに止まった。

 黄色。

 それは、一ヶ月分の寿命を意味する光。

 

「お名前、聞いておけばよかったわ。……ねえ、あなた、探してる人がいるんでしょう? あの子、知り合い? 何て名前なの?」

 

 老婆はそう言って、懐から小さな紙片を取り出した。

 

 それは、老婆自身が描いたという、少女の後ろ姿だった。背中に大きな杖。ひらりと舞う服の裾。

 

 勇者は、それを見た瞬間、はっきりと分かった。

 

 あの子は――まだ、魔法を使っている。

 まだ、誰かを助けている。まだ、寿命を削っている。

 

 視界の端が、音もなく滲んでいく。

 

 止められるはずだった。もう、させないと誓ったはずだった。

 

 王宮で、もう一度立ち上がると決めたとき、今度こそ守ると誓ったのに。

 けれど。

 

 彼女は笑って、名前も告げずに、また人を助けて、消えていった。

 

「ありがとうございます。……どうか、足を大事に」

 

 勇者はそう言って頭を下げたが、その声は震えていた。

 

 老婆は気づかなかった。

 

 勇者の顔が凍り付いていることも……その手が、強く握られすぎて、爪が手のひらに食い込んでいたことも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある夜、剣士は夢を見た。

 

 舞台は、どこかの街角。知らないはずの場所なのに、どこか懐かしい光の色があった。人の流れの中、ふと立ち止まった彼の視界に、一人の少女が映る。

 

 白い服。背に大きな杖。

 

 細く、小さな背中が、群衆の隙間に紛れ、ゆっくりと遠ざかっていく。

 

 剣士は、息を呑んだ。

 

 ――彼女だ。

 

 間違えるはずがない。何度も共に歩いた、隣にいたその姿。

 

 だから、すぐに声が出た。

 

「――おいっ!」

 

 けれど、少女は振り返らない。

 

 剣士は焦った。もう一度、声を上げようとする。その名を呼ぼうと、喉まで出かかった言葉に――何も続かなかった。

 名前が、出てこない。いや、思い出せないのではなかった。

 

 ――知らなかったのだ。最初から、自分は。

 

 魔法使いの少女の「名前」を、一度も聞いていなかったのだと、そこで初めて気づいた。

 

「……まってくれ」

 

 そう絞るように言ったとき、少女は群衆の向こうへ消えていった。

 

 手を伸ばしたが、誰にも触れられなかった。

 

 その瞬間、剣士は夢の中で、自分の無力さにただ立ち尽くすことしかできなかった。

 

 

 

 目が覚めたとき、彼は天井をじっと見つめていた。

 

 手が、布団の中で震えていた。彼女が目の前に現れても――自分には、何も言えないかもしれない。だって、自分は「彼女の名を呼ぶ」ことすら、できないのだから。

 

 

 

 

 

 

 数日後。勇者と顔を合わせても、剣士は何も言わなかった。

 

 ただ一言だけ、ぽつりと呟く。

 

 「……夢を見た」

 

 勇者は、それに何も答えなかった。けれど、その無言がすべてだった。

 

 二人は言葉を交わさなくとも、同じ喪失の中にいることを理解していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

 

 

 

【実況】『逃げる魔法使い』再放送最終話【また、どこかで】

 

1:風の名無しさん

 【悲報】本日最終話【追加エピソードなし】

 

5:風の名無しさん

 このおばあちゃん誰⁉

 この人から地獄の匂いする!

 

9:風の名無しさん

 再放送、初回より地獄度上げてきてない?

 最終話で情報追加すんのやばい

 

11:風の名無しさん

 はい来ました「黄色く光った」

 は〜〜もうだめだ、見れんかもしれん

 

15:風の名無しさん

 え……まだ助けてたの……?

 残り何か月しかない寿命使って……?

 わけがわからないよ

 

18:風の名無しさん

 勇者、また取り逃がしてて草wwwww

 草生やすしかないwww

 ない……

 

29:風の名無しさん

 後ろ姿のスケッチで確信させてくるのズルい!

 ズルい!(泣)

 

33:風の名無しさん

 手当てして、そのまま去ったって……

 え、また会えないの……?

 

37:風の名無しさん

 初回ではここ一切出てこなかった

 再放送用の完全新規パート

 

40:風の名無しさん

 “勇者の視界が滲む”って描写

 ナレーションじゃなく演出だけで殴ってくるの強すぎる

 おいやめろ馬鹿

 

43:風の名無しさん

 爪が手のひらに食い込んでたの、心が痛い

 

45:風の名無しさん

 勇者ァ!

 何やってんだよ!(泣)

 もう少し早く来てれば……

 

47:風の名無しさん

 「ありがとうございます……」って声震えてた

 

51:風の名無しさん

 老婆が何も気づいてないのがまたつらいんだよ

 そこが一番しんどい

 

55:風の名無しさん

 勇者の顔www

 はあ……

 

60:風の名無しさん

 再放送ってこんなキツかったっけ……

 え? これ続くの?

 

62:風の名無しさん

 てか、あの子このまま「名前すら誰にも呼ばれない存在」で終わるの?

 

69:風の名無しさん

 今、勇者が一番泣いてるのに

 誰も気づいてくれないのつら……

 

74:風の名無しさん

 再放送なのに

 初回より丁寧に精神壊しにきてるのどうして

 

80:風の名無しさん

 おばあちゃん幸せそうなのに

 勇者の顔があまりにも地獄……

 

85:風の名無しさん

 誰だよ「再放送だから心構えできてる」とか言ってたやつ

 

89:風の名無しさん

 これ「見つける物語」じゃなくて

 「届かないことを確認する物語」になってない?

 

91:風の名無しさん

 つら……つら……

 こんな静かなとこから地獄始まるなんて思わなかった

 もう20分くらい経った?

 

105:風の名無しさん

 まだ7分なんだが?

 

117:風の名無しさん

 「人知れず傷を負う勇者からしか摂取できない栄養分がある」とか制作陣思ってそう

 

124:風の名無しさん

 最終話なのに

 再会の希望が削られていくの怖いんだけど……

 

127:風の名無しさん

 これってもしかしてだけど

 また会えないってこと?

 

130:風の名無しさん

 再放送のくせに

 追加情報で致命傷与えてくるのやめろ

 

137:風の名無しさん

 このまま進んだら初回よりバッドエンドになる可能性

 マジであるぞ……

 

 

 

 

 

 

 

150:風の名無しさん

 えっ 夢……?

 なんか光の色がやたら優しい気が……

 

152:風の名無しさん

 夢だな

 街の光がぼんやりしてるのとBGMが反響してる

 

156:風の名無しさん

 「夢の中で背中を見つける」って

 それもう約束された地獄の展開では?

 

159:風の名無しさん

 後ろ姿きた!!!!!

 剣士! 早く! 声かけて!

 

162:風の名無しさん

 この剣士

 叫んでるくせに近づかないのなんなんwwww

 

166:風の名無しさん

 剣士、追いかけないんじゃなくて

 「追いつけない夢」なんだな……

 

169:風の谷の名無しさん

 群衆の間に自然に紛れていく演出が異常に丁寧

 これが「記憶から消える」ってことか……

 

179:風の名無しさん

 はい名前知らなかった件来ました

 飛天御剣流は全て隙を生じぬ二段構え

 

181:風の名無しさん

 作中で名前で呼んだこと一度もなかったんだよな……

 「お前」「おい」だけだったもんな

 夫婦かな?

 

184:風の名無しさん

 こんな大事な人の名前、知らなかったって

 これもう残酷超えてる

 

187:風の名無しさん

 名前も呼べずに目覚めwwwww

 おつかれwwwwwww

 おつかれ……

 

190:風の名無しさん

 夢で手を伸ばす → 間に合わない → 無言で立ち尽くす

 死因:夢

 

200:風の名無しさん

 目を覚ました剣士

 天井見つめて何も言わないのリアルすぎて怖い

 まばたきくらいしろ

 

212:風の名無しさん

 勇者と視線合わせないのも

 声を掛けないのも

 同じ痛み背負ってるのに、言葉が届かないの……泣く……

 

215:風の名無しさん

 会話しないのにわかり合ってるの

 逆にしんどいタイプのやつ

 

223:風の名無しさん

 こいつ直接脳内に……!

 

229:風の名無しさん

 再放送、やっぱ初回より深いところで殺しに来てるな

 

244:風の名無しさん

 この夢、再会フラグじゃなくて

「後悔だけを積み上げるパート」なのが狂気

 まあでも最終的に晴れるなら……

 えっ? 最終話なんですか?

 

250:風の名無しさん

 剣士、あんなに不器用なのに

 夢の中で名前呼ぼうとしたのしんどい

 

260:風の名無しさん

 名前って、「誰かにとっての存在証明」なんだな……

 知らなかったって、つまり……

 

263:風の名無しさん

 最終話でやる夢演出、って大体再会のための布石じゃん

 なのにこれは「再会できなくても後悔は残る」って意味

 

273:風の名無しさん

 「夢で会えたのに、名前すら呼べなかった」って

 

288:風の名無しさん

 でもあの子、名乗ったことなかったよな

 本当に一度も……

 最初から、消えるつもりだったのかな

 

291:風の名無しさん

 こんだけ描写して「再会できませんでした〜」だったら

 制作陣、やばくない???

 

294:風の名無しさん

 いや、やばいんじゃなくて、やるよ

 この作品なら

 

301:風の名無しさん

 このあと再会できたとしても

 「呼びかける名前がない」っての引きずるじゃん……

 もうやだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 勇者は時に1人で、あるいは剣士と2人で、各地を巡った。

 

 そして、それは、珍しく王女が時間が取れ、3人でともに動いた、そんな日のことだった。

 

 

 

 ――丘を越えた先に、その草原は広がっていた。

 

 地図にも名前の載っていない場所。村人たちがただ「風の台地」と呼ぶだけの、広くて、静かな、何もない場所だった。

 

 

 

 

 春先の風が、無数の草を波のように揺らしていく。見渡す限り、濃淡の緑。背丈ほどある草々が、なびいては重なり、またほどけていく。

 

 草原の端には、白い石が散らばる崖があり、その向こうには、霞むような空がある。広がるのは、どこまでも続く丘。風が草を押し、空と地面の境目が霞んでいた。

 

 誰の気配もない。鳥の声もしない。ただ、揺れる緑の波だけが、そこにあった。

 

 

 

 

 王女が、草をかき分けながら立ち止まる。

 

「……広いわね。ほんとに、何もない」

 

 勇者は、腰に手を当てて空を見上げた。剣士は、足元の地面に視線を落とし、小さな石をひとつ拾い、静かに投げた。音は、なかった。

 

 地元の案内人は、少し離れたところから申し訳なさそうに言った。

 

「この場所、誰が名づけたかも分かってないんです。本当に、広いだけで何もない場所ですよ」

 

 

 

 

 風が吹く。草が一斉に身をかがめ、また立ち上がる。まるで、呼吸しているように見えた。誰も声を出さなかった。高く吹き抜ける風の音だけが、耳を通り過ぎていく。

 

 

 

 しばらくして、王女がほんの少しだけ笑った。けれど、それは苦笑に近かった。

 

「……行きましょう。まだ、他にも見てない場所があるわ」

 

 3人は、草原を背にして歩き出す。

 

 広すぎる風景は、何も言わない。

 

 

 

 けれど、ふと、振り返った勇者の瞳に映った空は、どこか名残惜しく見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 王宮での政務の合間を縫って、王女は、研究員たちの部屋を訪れることが多くなった。今日も、バタンとドアを開けたかと思うと、机の前に飛び込んでくる。

 

 

 普段の威厳を持った姿とは違い、少し息を弾ませていた。ドレスの裾を少し持ち上げ、そっと机の研究主任を見下ろす。

 

「どう? 『寿命を戻す方法』『消えた存在を追う手段』について、進展があったかしら?」

 

 

 

 その勢いに、研究員たちは少し引き気味だ。なぜなら、王女がやってくるのは、今日だけで既に6回目であった。

 

「いえ……その、まだ……」

「資料も、逸話も少なくて……」

「王女様、その……落ち着いていただけますか?」

 

 王女は思わずといった様子で両手をバン! と机に下ろした。ビクッと主任の肩が揺れる。王女も、気品ある佇まいをしているものの、これでも魔王と正対して生きて帰ってきた勇者パーティーの一員である。それが証拠に、両手を振り下ろされた机には、ピシピシと細かい罅が入っていた。

 

 

 

 

 主任はそっとため息をつく。この机はさっき交換してもらったばかりの新品だった。物品担当から嫌味を言われることは必至であった。

 

「あの子は絶対にどこかにいるの! 勇者からの話だと、世界から存在が薄れてしまっているかもしれない、けれど……それを捕まえられる手段があるはず……!」

 

 その言葉に、研究員たちは言葉を飲み込む。王国の過去の記録を追ってみても、同じような例は、……ないわけではない、が。全てが、曖昧で、手掛かりとなるような情報は、何も残っていないのだ。まるで……誰かが、故意に隠しでもしたように。

 

 

 

 

 

 研究員たちが黙っている中、王女は空気を察知したのか、明るい声で話題を変えた。

 

「いったい、そういう存在って、どうすれば見つけられるの? そもそも、世界から存在が薄れる、ってどういうことなのかしら……」

 

 すると、一人の若い研究員が、小さな声で答える。

 

「ええと……それに近いものとして、古い言い伝えに“長命種”という存在が……」

 

 王女は瞬時に反応した。

 

「長命種?」

 

「ええ、時の外にいる存在、と呼ばれています。ですが、長命種は……あくまで言い伝えの一つに過ぎません。時の外にいる者、と呼ばれていますが、それも世界から薄れていると言われたら共通するかもしれません。ただ、あくまで神話のようなものかと」

 

 

 

 王女はがっかりしたように肩を落とした。今、欲しいのは、おとぎ話ではないのだ。それでも、研究員たちが昼夜問わず膨大な記録を追ってくれていることを、王女は知っていた。だから、軽い世間話に乗るつもりで、続きを促す。

 

「まあ、似てるなら、捕まえ方も参考になるかもしれないわね。その、長命種……? って、どうやったら捕まえられるのかしら」

 

「長生きしているわけですから、幾多の危機に瀕したこともあったはずです。なら、多くの対処法を持っていることでしょう。年齢が高いほど、捕まえるのも難しいでしょうね。普通は1000年以上生きるらしいですよ」

 

 意図を汲んだらしい若い研究員が、軽い口調で乗ってくる。ふむ、と王女は指をあごに当て、宙を見上げる。

 

「じゃあ、普通に追いかけても駄目ってこと?」

 

「まあ、捕まえようと追いかけたら逃げるでしょうね。そういうのに敏感だと思いますから」

 

 王女は、呆れたように溜息をついた。雑談のはずが、もう1つ答えの出ない疑問が出てきてしまったではないか。

 

「なら捕まえられないじゃない。どうするの?」

 

「文献を見る限り、食事を夢中に食べ始めるまでじっと待つとか、背後から気付かれないように近づいて、さっと捕まえるとかみたいですよ。……それより王女様、こちらの1000年前の騒乱の記録なのですが……寿命を戻す手掛かりになりそうな記述が……」

 

 

 

 

 研究員はあっさりとそう言い、話を元に戻した。王女も姿勢を正して覗き込む。もう既に、さっきの雑談は、王女の頭の片隅に追いやられていた。だが同時に、彼女の優秀な記憶力は「いちおう参考にしておこう」と、さっきの会話を無意識に脳裏に刻み込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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350:風の名無しさん

 ん???

 この風景、もしや

 

353:風の名無しさん

 おいこれってまさか……

 いやでも草の色と風の音……

 

357:風の名無しさん

 ここだ!!!!!!

 

364:風の名無しさん

 初回ラストカットの草原

 魔法使いちゃんが手を振ってた場所

 

366:風の名無しさん

 「知っているのは視聴者だけ」って構図

 あまりにも残酷

 

369:風の名無しさん

 勇魔供給だと思ったら死亡確認でした!!!

 解釈違いです!!(泣)

 

372:風の名無しさん

 なんでみんな騒いでるの?

 草原ってそんなに重要??

 

376:風の名無しさん

 勇者さん、そこ彼女が立ってたとこなんですよ……

 気づきませんかそうですか……

 

397:風の名無しさん

 王女「なにもない」

 いやあるが⁉

 

400:風の名無しさん

 ちなみにこの構図、初回ラストのカメラワークと完全一致です

 やめて

 

404:風の名無しさん

 「何もない場所」って言葉が

 「何かあった場所」にかぶさるのほんと地獄

 

411:風の名無しさん

 “再会”じゃなくて

 “すれ違いの記録確認”で終わるアニメがあるとは

 

414:風の名無しさん

 これってあれでしょ

 魔法使いちゃんは今、ちょっとコンビニ行ってるだけでしょ?(震え声)

 

428:風の名無しさん

 草原のくせに草も生やせない構図やめろww

 

432:風の名無しさん

 「いた場所に来る」→「でも何も起きない」→「いた事実だけが重くなる」

 これエグすぎる

 

451:風の名無しさん

 これは視聴者の記憶を試す演出でもある

 初回を見ていたか?と問われている

 

466:風の名無しさん

 これ下手な再会より精神に来るタイプのやつやん

 

469:風の名無しさん

 えっ今日の再放送

 草と風とEDだけで視聴者殺す回なんですか??

 

480:風の名無しさん

 確かにここにいたのに……

 

489:風の名無しさん

 ラストに希望持たせたアニメが、再放送でその希望ぶっ壊してくる構造、控えめに言って異常

 

492:風の名無しさん

 だんだん分かってきたけど……

 ここって最後にいた場所だったんだね……

 

497:風の名無しさん

 再会の舞台に来て再会できないとか

 

500:風の名無しさん

 供給なさすぎて逆に幻覚見えたわwww

 今手振ってた気がしたwwwww

 

504:風の名無しさん

 草原の全てが、あの子の「またね」に見える

 つらい つらい

 

509:風の名無しさん

 え? 見えないの?

 ほら魔法使いちゃんが笑顔で両手を振ってるよ

 いや……違うな。彗星はもっと、バァーって動くもんな

 おーい、出してくださいよ

 

510:風の名無しさん

 この後4人は5分後にここで再会する

 古事記にもそう書かれている

 

 

 

 

 

 

 

 

516:風の名無しさん

 王女、研究室に1日6回目突入www

 

518:風の名無しさん

 研究員の目wwwwww

 

521:風の名無しさん

 「間に合わないかもしれない」って思いながら机バンッしてるの

 王女の声、笑ってるようで泣いてる

 

522:風の名無しさん

 机バンバンネキ……

 

523:風の名無しさん

 言葉の端が全部もう二度と会えない前提なのほんとやめて……

 

526:風の名無しさん

 研究班、王女に寿命削られてて草

 

530:風の名無しさん

 「今も魔法を使ってる」って

 寿命、もう残ってないんじゃ……

 

534:風の名無しさん

 王女がまだ「間に合うかも」って言葉に縋ってるの見るだけでしんどい……だって本人が信じてないのに言ってる……

 

537:風の名無しさん

 「間に合わない」って空気が全員からジワジワ滲んでるのマジでやめてwww

 

540:風の名無しさん

 今生きてるかどうかも分からない誰かに向かって、希望を探すしかないの、残酷すぎる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 そして、彼女が姿を消してから――十年の歳月が流れた。

 

 

 

 3人は、それぞれの道を歩きながらも、探し続けていた。目撃情報の断片、古い記録、ふとした偶然。届かぬことは分かっていても、諦めきれなかった。

 

 けれど、時は残酷に流れ、何も掴めないまま、十年が過ぎた。

 

 いつしか3人は、互いに言葉を交わさずとも、同じ結論に辿り着いていた。

 

 ――ならばせめて、彼女のことを語る日をつくろう。

 

 迎えに行けなかったなら、せめて思いを重ねよう。

 

 

 

 

 かつて旅の途中で訪れた、あの静かな温泉宿。

 

 不思議と、あの場所がいいと思えたのは、3人とも同じだった。

 

 

 

 それは、再会のためではなかった。思い出を分かち合うための、小さな約束だった。

 

 そこは、何の事件も起こらず、誰も傷つかず、ただ穏やかに笑い合えた、数少ない夜を過ごした場所。

 

 もしかしたら、あの子も、ほんの少しだけ、あの時は笑っていたかもしれない――そんな記憶を、頼りない希望のように抱えて。

 

 彼女の話をするために。

 

 そして、もう一度だけ、あの子のことを思い出すために。

 

 3人は、かつての旅の終点のようなその場所に、静かに集まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 最初に宿へ姿を見せたのは、勇者だった。

 背は少し伸び、表情にほんのわずかな影を宿しながらも、その歩みは変わらずまっすぐだった。

 

 次に現れたのは剣士。十年前よりもさらに無口になっていたが、その佇まいには変わらぬ鋭さと、静かなやさしさがあった。

 

 そして、日が傾き始めたころ――王女が現れた。ドレスではなく、旅の名残を思わせる、落ち着いた旅装束に身を包んでいた。

 

 本来の約束は、翌日。けれど3人は、まるで引き寄せられるように、前日の夕方、誰からともなく、自然と同じ場所に揃っていた。

 

「……全員、早すぎるわね」

「お前が言うなよ」

「……」

 

 味気ない会話。けれど、どこか懐かしい響き。言葉は少なくても、同じ想いを抱えていることは、それだけで十分だった。

 

 縁台に腰を下ろし、誰もいない湯舟を見下ろしながら、3人は語り始めた。

 話題はすぐに、彼女のことになった。

 あの小さな魔法使いのこと。

 たくさん笑って、たくさん困らせて、そして、何も言わずに姿を消した、あの子のこと。

 

 語りながら、それぞれの胸に残る光景が浮かんでくる。

 共に歩いた道。

 旅の夜に交わした言葉。

 何気ない仕草。

 そして――もう、触れることのできない背中。

 

 どれだけ時間が経っても、語り尽くせることなどなかった。

 語れば語るほど、伝えられなかった思いが浮かび上がり、胸を締めつけた。

 

 そんな時だった。

 ほんの一瞬。

 3人が、同時に――振り返った。

 

 誰かが、そこに立っていた気がした。

 

 風に揺れる草の向こう。廃宿となり、ぼろぼろになった庭の、夕陽に染まる石畳の先。

 はっきりと姿を見たわけではない。

 けれど、たしかに、何かが――手を振った、そんな気配があった。

 

 

 

 誰も声を出さなかった。けれど、誰もが、確かに思った。

 

 ――今のは、あの子だったのではないか、と。

 

 

 

 見渡せば、風に揺れる草しかない。

 

 けれど、その草の揺れ方が、どこか――優しかった。

 

 

 

 名前も呼べなかった。姿も追えなかった。何一つ、伝えられなかった。

 

 それでも、手を振ったようなあの気配が、すべてを赦すように、夕空の中へ消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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554:風の名無しさん

 10年後に集まるって、ここだったのか……

 ぴょんの場所

 旅の中で一番あったかかった場所……

 

560:風の名無しさん

 王女来たあああああ!

 3人揃ったああああ!!!

 なのに何この空気……

 

562:風の名無しさん

 剣士が無意識であの子の分空けてるのに気づいた瞬間死んだ

 

568:風の名無しさん

 草の音、風の音、足音……

 誰もいないはずなのに、誰か来たように感じる

 

571:風の名無しさん

 全員「もう無理だな……」って察してるんだけど、それを言葉にしないのしんどい

 

562:風の名無しさん

 「まだ間に合うかも」って信じてた王女の顔がちょっとだけ崩れる瞬間、見逃さなかった

 

566:風の名無しさん

 再会イベントかと思ったら

 これ再会できなかった10年間の総決算じゃん……

 

574:風の名無しさん

 音したよな? 誰かいたよな?

 この演出、逆転フラグじゃないよな……?

 再会じゃなくて、「確認して終わり」なんだよな

 

578:風の名無しさん

 誰かが通ったはずなのに、音しかないの怖すぎる

 幻聴かもしれんってなるのもつらい

 

583:風の名無しさん

 “あ、もうこの人たち、届く側じゃないんだ”って分かった瞬間、息止まった

 

587:風の名無しさん

 10年経っても、誰も彼女を見つけられなかったことが、今ようやく確定された感ある

 

590:風の名無しさん

 お願いだからまだ希望あるって言って

 このままED入らないで

 

595:風の名無しさん

 王女が「もしかして今……?」って泣きそうな顔するの

 ギリ希望残ってるの残酷でしかない

 

598:風の名無しさん

 草がゆれて風が抜けるだけ

 それだけなのに“誰かがいた気配”が生々しいのなんで?

 

602:風の名無しさん

 作画スタッフ、音響、演出、全員が視聴者の心を潰しにきてるとしか思えん……

 

609:風の名無しさん

 BGMが一切なくなって、風だけになった瞬間に悟った

 ああもういないんだって……

 

616:風の名無しさん

 誰かが「来てたかもしれない」って気配だけでED突入しそうなのやめて

 本当にお願いだから

 

622:風の名無しさん

 全員が笑ってるけど、あれ絶対“誰も来ないのを受け入れた”顔だって……!

 

775:風の名無しさん

 やめて、ここでED入ったらトラウマになるってば……

 

782:風の名無しさん

 このあとの草原カットが、変わらなかったらどうしよう

 

789:風の名無しさん

 むしろ草原が映らなくて誰の物か分からない墓が映ったらどうするんだ

 普通にそれあり得るからな

 

795:風の名無しさん

 吐いたし泣いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ――3人が、廃宿に集まっていたのと、同時刻。

 

 その丘には、名がある。「風の台地」という名が。

 けれど、この草原を本当に知っている者は、ほとんどいない。

 

 風が吹いていた。草が伏し、また立ち上がる。夕陽が低く傾き、空は、金色と紅の間にゆらめいていた。

 

 その中に、ひとつ、人影があった。

 白い服。細い背中。小さなシルエット。

 

 丘の上で、少女はただ、風に吹かれて立っていた。

 

 振り向く気配はないが、何かを見ているようで、何も見ていないような目線。肩が、風に押されて、ほんのわずかに揺れる。

 

 

 

 その背中は――なぜか、少しだけ、寂しそうに見えた。

 

 

 

 

 少女は、ふと、片手を上げた。

 

 誰に向けたのでもない。ただ、空気の向こうに何かを感じ取ったように。

 

 手を、ひらひらと、ひとふり。

 その動きには、意味があったのかもしれないし、なかったのかもしれない。

 

 

 

 振り向かず、表情も見せず、ただ背中だけが夕焼けに染まっている。手を下ろしたとき、風が草をさらうように彼女の姿もさらっていった。

 

 

 

 

 次の瞬間――姿が消えた。

 

 

 

 

 誰かがいたような気配だけを残して。

 誰も、それが“さよなら”だったのかどうかも分からないまま。

 

 

 草原には、風だけが吹き抜けていく。

 

 紺色に染まりつつある空には、光の尾が、ゆっくりと流れていた。

 

 そして、次第に、画面が暗転する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒い背景に、静かにスタッフロールが流れていく。

 

 これまでの旅路の断片――勇者の故郷の村から始まり、王都、旅の途中の何気なく笑い合う影、魔王との決着、そして、宴――が、淡く、静かに映し出されては消えていく。

 

 

 

 

 

 やがて、カットがゆっくりと切り替わる。

 

 

 そこは、森の奥。

 木々の隙間から、月の光がひとすじ、地面を撫でている。

 

 虫の声が、遠く。風が、枝葉をわずかに揺らす。

 

 画面の中央、焚火の跡。燃え尽きた灰だけが、そこにある。

 

 その傍ら、小さな木のテーブル。そして、その上には――ひとつのカップ。小さく、白く、どこか寂しげな輪郭の、紅茶用のカップ。

 

 湯気はない。

 誰の姿も、もうない。

 

 灰が、風にさらさらと舞う。

 画面には、誰もいない。

 

 

 

 

 月の光が、木々の間からこぼれ、夜空に一筋、青い残光が流れていく。

 

 音もなく、言葉もなく。ただ、光と静けさだけが、そこにあった。

 

 

 

 

 そして、画面は、ゆっくりと闇に沈んでいく――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

801:風の名無しさん

 あ……手、振った……

 

803:風の名無しさん

 手振ってる!!!!

 また背中しか見えない!!!!(泣)

 

806:風の名無しさん

 また背中だけで終わらせようとしてんじゃんwww

 

809:風の名無しさん

 誰も来ない草原で、誰かに向かって手を振る少女

 地獄は静かにやってくる

 

811:風の名無しさん

 え……なんでこんな静かなの……

 これで終わり……?

 

814:風の名無しさん

 初回と構図同一、音演出も同じ

 再会フラグではなく“確定演出”に転化してる

 

817:風の名無しさん

 手振って草www

 誰にwww

 また草だけwwwww

 

823:風の名無しさん

 だめだ

 あの背中に「帰らない」って書いてある(幻覚)

 

829:風の名無しさん

 視聴者にだけ手を振るのやめろ

 3人に見せてやってくれよ!

 

832:風の名無しさん

 迎えを待ってるんじゃないんだよな……

 ただ誰も来ないことに慣れてる感じ

 

835:風の名無しさん

 なんか、誰もいないのに手を振ってて……

 すごく……かなしい……

 

837:風の名無しさん

 “気づかれないまま終わる”って残酷なんだなって

 

843:風の名無しさん

 魔法使いちゃん、ずっと人のために動いてたのに

 最後は誰の目にも映らないってか……

 

846:風の名無しさん

 草原→手ふり→消失

 \完/

 

852:風の名無しさん

 顔が見えないのつらい!

 でも背中が優しいのもっとつらい!

 

855:風の名無しさん

 ED……入るの……?

 え、これで終わり???

 

860:風の名無しさん

 初回では「また会えるかも」って思えたのに

 今回は「もう終わりです」って看板立ってた

 

863:風の名無しさん

 10年分の会いたいが、草の音でかき消されるの無理……

 ほんと無理……

 

869:風の名無しさん

 えっえっ……再会しないの?

 これでほんとに終わり??

 

870:風の名無しさん

 視聴者が「またね」って言われるの見たくて見てたのに

 「さよなら」だった バグ?

 

874:風の名無しさん

 このアニメ、なんで「出会えなかったこと」を見せてくるの?

 普通逆じゃない??

 

876:風の名無しさん

 無言で手を振る女の子を2周連続で見せてくる制作陣

 愉悦部すぎるだろ

 

877:風の名無しさん

 供給ください、じゃなくて

 「見つけてあげてください」になってるのやばくない?

 

880:風の名無しさん

 “あの子の人生、誰にも理解されないまま終わった”

 という仮説に辿り着いて今吐きそう

 

893:風の名無しさん

 最終話だったのに、再会じゃなくて再断絶だった……

 

896:風の名無しさん

 うわああああああEDきたあああああああ!!

 

899:風の名無しさん

 あの紅茶カップまだ……誰も片づけてないの…………

 

902:風の名無しさん

 カップってあんなに寂しい演出になることある?

 

904:風の名無しさん

 ED、初回と同じだ……変わってない……あのまんま……

 ピアノアレンジも一緒

 せめて歌聞かせてくれよ

 

906:風の名無しさん

 あのカップのサイズ感だけで「あの子の私物」ってわかるの泣いちゃうからやめて……

 

908:風の名無しさん

 こんなに無人のエンディングある??

 

909:風の名無しさん

 最終話で誰の声もセリフもないの、静寂で殴られてる気分

 

911:風の名無しさん

 再放送ってなんだったの???

 追い討ち????

 

913:風の名無しさん

 いや終わった……え……ほんとに終わった……

 

914:風の名無しさん

 おかしいよ……2期は? 後期OPは??

 「彼女の物語」は?????????

 

916:風の名無しさん

 もしかして……マジでここで終わり……?

 いや、いやだって、まって……?

 こんなの絶対おかしいよ

 

918:風の名無しさん

 初回放送より後味が終わってるの、ほんとどういうこと……?

 

920:風の名無しさん

 再放送って、再会の希望じゃなかったの……?

 絶望の再演だったの……?

 

921:風の名無しさん

 草原で手振ってたの、やっぱ「これで最後」って意味だったんだな……

 

923:風の名無しさん

 エンドロールでもキャラの名前出ないの、意図的すぎる

 なんだよ「魔法使いの少女」って

 勇者パーティーだぞ

 

924:風の名無しさん

 みんな再会を夢見てたんだよな

 たった一言、それだけだったのに

 

926:風の名無しさん

 また会えると思ってたのに

 ほんとに「また、どこかで」だった……

 

928:風の名無しさん

 でも、あのEDはたしかに「彼女の物語」だったんだなって、今なら思う

 

930:風の名無しさん

 ありがとうって言えなかったな って思ってたら終わっ……あれ? 終わらなくない? ED‼ 2番入った‼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スタッフロールが終わり、暗転していた画面に光が戻る。

 

 その瞬間、これまでピアノだけだった旋律に――ゆっくりと、歌声が重なっていった。

 

 

 

 そして1枚ずつ、原画調の、静止した絵が現れていく。

 

 

 

 物語の記憶をなぞるように。

 

 

 

 まるで、ページをめくるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕暮れの丘。

 少女が、高台から小さな村を見下ろしている。村は、どうやら勇者の村のように見える。

 ぼろぼろになった服は風に揺れ、髪がなびく。後ろ手に、どこかで見たような杖を持っている。

 その背中には、言葉にならない何かが宿っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 勇者との出会いの日。

 川で遊んでいる幼女の元に、幼き日の勇者が嬉しそうに駆け寄っている。よく見ると、川のほとりには、大きな杖が立てかけられている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 神託の神殿。

 少年が剣を受け取る場面。

 背後には魔法使いの少女の姿。

 彼女は何も言わず、少し離れた場所でニコニコと笑いながら、見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 旅の一場面。

 4人の仲間が草原を歩く。

 笑い声が聞こえそうな風景の中、少女と少年は少し遅れて並び、笑い合っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦場。

 4人が凛とした表情で魔王を前に立つ。

 勇者は剣を構え、王女は杖を掲げ、剣士は盾を前に。

 少女の杖だけが、赤く、静かに光っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 宴の夜。

 光に包まれている少女。

 その消えゆく姿に、仲間たちがそれぞれの様子で手を伸ばす。

 でも、それは届かない。

 少女は、光の中で、困ったように笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕暮れの草原。

 少女が、静かに背を向けて立っている。

 後ろ姿には、「絶対に振り向かせないこと!」と書かれた付箋がいくつも貼られている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 木のテーブルを、真上から見下ろす構図。

 そこには、紅茶のカップがひとつだけ置かれている。

 背景は描かれていない。

 カップはぐるぐると鉛筆らしき線で囲まれ、いくつも書き込みがされている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……そして、一度、暗転。

 

 

 

 

 

 

 わずかに間を置いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 廃業した温泉宿の前。

 少女が、戸口を覗き込むように首をかしげている。杖は、持っていない。何も、持っていない。

 その姿は絵の中で静止し、風さえも止まっている。

 まるで、時間が流れ出すのを待っているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――そして、不意に原画に色が付き、映像が動き出す。

 

 

 

 少女が廃宿の玄関に踏み込み、大きく声を上げる。

 

「……あれ? すみませーん!」

 

 しかし、返事はない。宿の木の扉は半ば閉ざされたまま、傾きかけた屋根の下に沈黙している。扉の横には、かつての宿の名を記した木札があったはずだが、今はもう取り外され、痕跡だけが残っている。玄関先には落ち葉が積もり、苔が辺りを覆っていた。

 

「うーん……定休日? にしてはちょっと荒れてるような……」

 

 指を唇に当て、少女は困ったように笑った。

 

 

 

 

 

 そのとき、彼女の髪がふわりと持ち上がった。

 

 ちょうど、彼女の背後、風の向こうに、何かの気配があった。

 

「……?」

 

 彼女はゆっくりと、振り返る。

 

 そして、その瞳が大きく見開かれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――画面が、白く溶けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔法使いの少女に、三人の仲間が飛びついている絵。

 

 

 

 

 王女は涙を流しながら、縋りつくようにしがみついている。

 

 勇者は背中に腕を回し、しっかりとその小さな身体を抱きしめている。

 

 剣士は全員を包み込むように立ち、そっと背中に手を添えている。

 

 少女は驚いたような表情を浮かべている。

 

 

 

 

 

 

 

 その一枚は、彼らのこれまでの、すべてを物語っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラストカット。

 

 木のテーブルの上に、紅茶のカップが四つ並んでいる。

 

 誰も座っていない、誰の姿もない。

 けれど、それはもう「空席」ではなかった。

 

 

 

「~魔法がなくても、歩いていける気がした~」

 

 

 

 歌の最後の一節が、まるでそっと頷くように、静かに流れていく。

 

 

 

 

 

 

 そして、画面は静かに白く滲んで――

 

 

 

 

 

 

『世界のどこかにある、誰かの「夢」のようなお話』

 

 

 

 白い文字が、中央にふわりと浮かび、やがて静かに、光の粒とともに消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 画面は、深い静寂の中、最後の残光だけを残して――静かに、完全に、暗転する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                             【END】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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997:風の名無しさん

  なんか、情報量が多すぎてわからん

  いや、嬉しいんだけど説明してほしいことが多すぎるっていうか

 

 

 998:風の名無しさん

  俺はそれでもいいって思った

  なんか、全部が魔法みたいでさ

 

 

 999:風の名無しさん

  なにそれオシャレじゃん

 

 

1000:風の名無しさん

  なんか、彼女が戻ってきてくれたことが一番の魔法だったんだな、って思った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1001:OVER 1000 THREAD

 このスレッドは1000を超えました。

 これ以上書き込みを行うことはできません。

 続きは、新しいスレッドを立ててください……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ちゃんと最初に「ハッピーエンドにしたいですね」って言ったから……! これで、ひとまずは一段落……でしょうか? 

ここまでたくさんの方にお気に入りにしていただいたり、評価や感想をいただき、とっても感謝です。あまりハーメルンの制度?に慣れていないところもあったのですが、毎日ドキドキしながら数字を見たりしてました。本当に、ありがとうございます!
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