(書籍発売中!)逃げる魔法使い 〜寿命を削って魔法を使っていただけなのに、なんだか周囲の様子が変です〜   作:うちっち

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おまけアニメ回(下)

 私は、3人が泣き止まないので、1人、浜でカニ牧場を作っていた。

 

 カニ牧場とは何か。

 

 あなたがカニ牧場を作りたいなら、まず、海辺で小さな潮だまりを探すといい。そんなに大きくなくていい。砂浜にぽつんと残された、手のひらほどの水たまり。波が引いたあと、海水が凹みに残っている、そういうのだ。よく見ると小さな魚や貝も取り残されていたりして、じっと覗き込むと、そこだけ時間が止まっているみたいに静かで涼しい。

 

 

 その潮だまりを中心に、石や流木で囲いを作る。カニたちが脱走しないように。そして、砂浜から捕獲したカニをそこに放てば、カニ牧場の出来上がり。牧場の中をちょこちょこと歩くカニを眺めてもいいし、仲間を捕まえてきてもいい。そこはあなたの牧場主としての手腕の見せ所だ。

 

 

 

 

 

 私は、10匹目のカニを放牧し、潮だまりを覗き込んでほっと息をついた。満足である。カニたちは、まるでこの世界の主であるかのように、しゃかしゃかと足を動かして、小さな水辺を闊歩している。

 

 

 

 

 ……しかし、どう言ったものか。

 

 

 

 さっきの反応からして、私の寿命が無限に近いほどあるという話は、信じてもらえていない。そう考えるのが妥当だろう。信じてもらえない理由について深く考えようとしたが、私が傷つきそうなのでやめた。

 

 

 

 

 なら、ここからどうするか。私は、せっかく海に来たんだから、4人で仲良く遊びたい。本当は「私の寿命のことなど置いておいて楽しく遊びましょうよ!」と言いたい。というか、さっき結構ストレートにそう言った。しかし、反応はいまいちだった気がする。むむ……。

 

 

 

(1)人の2倍の寿命がある → ×(残り寿命マイナス10年により破綻)

 

(2)数えきれないくらいに寿命がある→ ×(信じてもらえない)

 

(3)残り寿命? 3分です~! → ?(未知数)

 

 

 

 なぜ(2)で駄目なのか。本当なのに。やはりあれか、寿命が長すぎるのも信じてもらえないのかもしれない。「そんな生き物いるわけない!」みたいな。おそらく、公衆の面前でうかつにそう主張した日には、その人は大衆から袋叩きにでも遭ってしまうのだろう。おそろしいことだ。

 

 

 

 ……残り寿命が何年かは、もっとよく考えて口にするべきだった……? やっぱり10年か15年くらいが……おや?

 

 

 

 

 

 

 私が気配を感じて顔を上げると、3人がこちらへずんずんと歩み寄ってくるところだった。どうやら泣き止んだらしい。えらい。

 

 

 しかし、彼らの気配におののいたのか、囲いの中のカニたちは一斉に囲いを越えて逃げ出し、私のカニ牧場は蜘蛛の子を散らすように壊滅した。

 

 

 

 ああ、儚い栄華よ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう、何してるんだ?」

 

 勇者が声をかけてきた。彼は隠しているつもりらしいが、伝わってくる空気はとってもピリピリしている。おっカニ牧場かよ風流だな、みたいな雰囲気では決してない。

 

 

 

 正直に「牧場経営してた」と答えてもいいが、今ここに残っているのは、壊れた囲いと濁ってしまった潮だまりだけだ。まあいいや。牧場はまた作ればいい。気を遣わせるのも悪いので、無難に答えておく。

 

「海をぼーっと見てたよ」

 

 

 

 その言葉に、王女様がふっと顔を伏せ、口元に手を当てる。悲しそう。わ、私は海を見ることも許されないの……? じゃあなんで海に連れて来たの王女様。

 

 

 

 

 

「……ごめんなさい。私だけ先に出てきちゃいました」

「いいわ。それより、あなたに聞きたいことがあるの」

 

 決意したような声で、王女様が私を見つめてきた。残りの2人もじっと私に視線を送る。

 

「あなたの“本当の”残り寿命って……何年くらいかしら?」

「本当の……」

 

 さっき答えたのに、また聞かれてる……やっぱり、先ほどの答えは不正解だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 ……迷う。

 

 いま、私の中に残っている選択肢は、「3分」か「15年」しかない。

 ここで間違えたら、きっと、取り返しのつかないことになる。

 

 

 どっち……?

 どっちを、みんなは求めているの……?

 

 

 私の背中を冷や汗が伝った。

 

 

 

 

 

 3分と答えて、3分後に「生きてるー!」と王女様に突っ込まれる未来……みんな笑ってハッピーエンド。それが……正解? 本当にそう? そういう空気かな今? なんか違わない……?

 

 

 

 ほらなんか剣士とか人でも殺しそうなすごい目付きしてるし子供がいたら泣いてると思うよあれ。私は大人だから泣いたりしないけど、嘘ちょっとだけ泣きそう。

 

 私は恐怖に耐えかね、そっと目を逸らした。

 

 

 

 

 

 

 私が左に首を傾けると3人はびくりと身を震わせ、右に首を傾けると目を皿のようにしてこちらを見つめてくる。ど、どっち……? せめてヒントが欲しい。反応からして右が正解? いや「3分」と「15年」のどっちが右なんだ。

 

 

 

 

 

 

 ……よし。もうこうなったら、なるようになれ!

 

 

 大丈夫! 私、こう見えても5000年生きてるから……! きっと今度も正しく切り抜けられる、できるできるできる……! よし! いっけー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 長考ののち、私は思い切って、口を開こうとした。すると、機先を制したように勇者が口を挟んでくる。もう、今言おうとしてたのに。せっかちだなぁ。

 

 

 

「言いづらいか? それとも何聞かれたか忘れたか?」

「失礼だなぁ。私の残り寿命だったよね? 3分だよ」

「さ、さん……っ⁉ え? さ、3分⁉ ……3分⁉」

 

 

 

 その一瞬で、勇者は私の方を3度見くらいした。私は即座に方向を転換する。

 

 

 

 

「ごめん嘘、さすがに3分じゃない。だいたい15年くらいだと思う」

「その嘘挟む必要あった⁉」

「だって急かしてくるから……」

 

 あっぶな! 3分不正解! 勇者ナイス! やっぱり口挟んできてくれてありがとう! さすが私の幼馴染!

 

 

 

 

 隣で百面相みたいに次々表情を変えた王女様は、目をぐるぐると回しながら「3分? あっ15年なのね? よかった! ううんやっぱり良くないわ……!」とぶつぶつ呟いている。

 

 一方、剣士はじーっとこちらを見つめているので、私は目を合わせてニコッと微笑んでみた。すると、そっと視線を逸らされる。ちょっと悲しい。剣士は私の笑顔が嫌いなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、目のぐるぐるが収まった王女様から話を聞いたところ……3人は、私の寿命がもっと延びる方法を探してくれるらしかった。

 

 

 王女様はぐっと腕を胸の前で握りしめ、背筋をしゃんと伸ばした。その目は何やらめらめらと燃えている。

 

 

「王家の威信にかけて、今の5倍、いえ、8倍くらいには伸ばして見せるわ……!」

「いえ、そんな、いいですよ別に……」

 

 

 だってもう十分にあるのに。8倍なんてなったら一体どうなってしまうのか。しかし、悲しそうな顔をする王女様を見て、私は口を閉じた。うーん、けど、これは徒労では……?

 

 

 

 

 だがその時不意に、私の脳に電流が走る。そうだ……!

 

 

 

 まず、王女様たちと一緒にどこかに冒険に行き、何かそれらしきものを見つける。その地方の珍しい名産品とかでいいだろう。そして、それを食べた私は、「ああ、皆さんのおかげで、みるみる寿命が延びていきます……!」と言うのだ。奇跡のハッピーエンド。

 

 

 

 これならみんなで楽しく冒険に行くだけ。迷惑もそんなに掛からない、はず。それに、ほんとに寿命が延びる何かが見つかったら、それが一番いい。3人の寿命が延びたら、もっとたくさん遊べる……!

 

 

 

 

 

 

 

 3人は、はらはらとした表情でこちらを窺っている。私はぺこりと頭を下げた。

 

「お願いします……!」

 

 すると、勇者は拳を掲げて「任せろ!」と笑い、王女様は胸に手を当てて「必ずよ!」と強く頷き、剣士は静かに片腕を上げた。

 

 

 

「迷ってたのに急に物分かりいいじゃん」

「迷惑かなって思ってたんだけど……」

「んなわけねーだろ! じゃあなんで素直に頷いたんだ」

「何か見つかって、それでみんなが長生きしてくれたら嬉しいなって。その方が、たくさん遊べるから」

「……」

 

 勇者は急に黙りこんでしまった。その代わりに、王女様が目元をぬぐい、やたらに明るい声を上げる。

 

「そうね! 遊びましょう! せっかく海に来たんだから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、私達は海で遊んだ。

 

 波打ち際にふよふよと浮かぶ、発光するクラゲのような生物を、裸足になってみんなで追いかけた。

 

 水面を滑るように飛ぶ魚たちを見て大騒ぎし、4人で協力して、浜辺にとんでもない大きさの砂の城を築いた。

 

 塔を建て、堀を掘り、貝殻を窓の飾りにするという王女様の案が採用され、勇者と剣士は黙々と実行した。私は旗の代わりに流木を屋根に立てて、「建国完了です!」と宣言した。

 

 

 

 

 

 2対2に分かれてボール遊びをした。王女様がとんでもない角度から鋭いスパイクを叩き込み、勇者が受け止め損ねて、さっき建国されたばかりの砂の城に頭から突っ込んだ。

 

 私はその横でボールを追い損ねてすっ転び、勇者の隣に深々と埋まった。剣士はその様子を見て、珍しく笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、遊んだ……」

 

 浜辺で座りながら、遠くの夕焼けを眺める勇者。いつの間にか、海は夕日でオレンジ色に染まっていた。お昼にこちらに近づいていそうに見えた暗雲は、水平線の向こうをゆっくりと右から左に動いている。

 

 

「とりあえず、まずは東ね。魔法結界都市に、すごく長生きしたっていう僧侶がいたらしいの。そのおかげか、何でも知っていたんですって。寿命を延ばすうえで、何かの手がかりにならないかしら」

 

 続ける王女様。こちらも夕焼けで真っ赤に染まっている。

 

「すごく?」

「人間なのに1000年生きたんですって」

「マジで? ありえなくない?」

 

 あ、やっぱりあり得ないんだ。というか、1000年生きた僧侶というワードに聞き覚えがある気が……。

 

 私の昔の知り合いかもしれない。彼は確かに物知りだった。色々な常識を私に教えてくれたっけ。夕焼けがどうして赤いのかとか、砂浜は何千年も経てばなくなってしまうのだとか。

 

 

 

 

「この砂浜も、1000年経ったらなくなっちゃうのかもしれないですね~……」

「なんでいきなりそう思ったんだ……」

「海が砂浜をだんだん削っていくんだって。昔の知り合いが言ってた。本当かどうかは怪しいけど」

「俺が聞いてるのはなんで急にそれを言い出したのかなんですけど?」

 

 

 

 すると、王女様がくすりと笑った。

 

 

「なら、1000年後に見に来る? 確かめてみましょうか、みんなで」

 

 

 突然そう言い出した王女様を、みんなが目を丸くして見つめた。……そうか、さっきの勇者はこんな気持ちだったのか。混乱させてすまなかった。

 

 

 

 

 一方、全員の視線を集めた王女様は、「ち、ちがっ……」とか言いながら、慌てたようにぱたぱたと手を振った。

 

 

「だって、あなたの寿命を延ばす方法を、これからみんなで探しに行くんですもの。もちろん、見つかるまで続けるわよ。魔法都市だろうが、氷河の国だろうが、どこにだって行くわ。なら、全員で1000年生きることだって可能じゃない」

 

 

 「もちろん、理想としてはだけどね」と王女様は気恥ずかしそうにそっぽを向いた。

 

 私はそれを聞いて、ちょっとわくわくしてしまう。1000年後に、みんなでここにやってくる。それは、随分と、幸せな未来のように見えて。

 

 

 

「じゃあ、今度は私が一番先に待ってますね~」

「普通に受け入れてるお前は何なの……」

「遅くなったら置いて行っちゃうから」

「お前さ、『待ってる』の言葉の意味知ってる?」

 

 

 すると、静かな笑みを浮かべて、剣士が呟いた。

 

 

「なら、置いていかれないようにしないとな」

「ほら、これが大人の対応だよ~」

「納得いかねえ……!」

 

 

 

 

 そして、私達は顔を見合わせて、誓った。誰からともなく拳を出して、そっと合わせる。

 

 

「約束だ」

「守ります~」

「ふふ、待たせたら承知しないわよ勇者」

「なんで俺が最後に来る前提なんだよ⁉」

 

 

 

 

 

 

 私達は、夕焼けに染まった海と、崩れかけた砂の城に、千年後の再会を、誓った。

 

 

 

 

 ――それは、叶わないかもしれないし、叶うかもしれない約束。

 

 少なくとも、1000年後にその答えが出るまでは……退屈せずに済みそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * *

 

 

 

【逃げる魔法使い】おまけアニメ 実況&感想スレpart2

 

1:風の名無しさん

 魔法使いちゃん、またカニで遊んでて草

 

3:風の名無しさん

 勇者と初めて会ったときも川で同じことしてたよな

 

5:風の名無しさん

 長命種に共通の遊びなのかもしれん

 

8:風の名無しさん

 もう長くないから、出会った時のことを思い出してるんじゃ……

 

10:風の名無しさん

 おいやめろ

 

12:風の名無しさん

 お、3人が来たぞ

 誰が寿命の話を切り込むんだ?

 

15:風の名無しさん

 勇者に決まってます

 幼馴染なので

 

16:風の名無しさん

 王女様が早くて草

 3人がちょっと駆け引きしてたなwww

 

19:風の名無しさん

 ファッ⁉

 残り寿命3分⁉

 

21:風の名無しさん

 3分は草生える

 ウルトラマンかな?

 

24:風の名無しさん

 なぜそんな嘘を……

 

26:風の名無しさん

 3分しか残ってないのにカニと遊んでたなら大物すぎるんよ

 

29:風の名無しさん

 ……15年かぁ……まあ一安心、なのか?

 

31:風の名無しさん

 本当にそうか? ほんとに15年ある?

 

33:風の名無しさん

 カニと遊んでたから少なくともすぐじゃなさそう

 

37:風の名無しさん

 「みんなが長生きしてくれたら嬉しいなって」

 お前は何を言ってるんだ(真顔)

 

39:風の名無しさん

 一瞬時間が止まりましたね……

 

 

 

 

 

 

 

 

40:風の名無しさん

 海だー!

 

42:風の名無しさん

 魔法使いちゃんの水着……

 色気0かと思ったら意外にアリだな

 俺、疲れてるのかな……?

 

45:風の名無しさん

 似合ってる

 学校のプールサイドにいそうな地味さ

 だがそれがいい

 

46:風の名無しさん

 ちょっと恥ずかしいのかそわそわしてるのがまた

 

49:風の名無しさん

 王女様が色々存在感ありすぎる

 あの色気で王族は無理でしょ

 

51:風の名無しさん

 そんな王女様がいるのに、勇者が魔法使いちゃんしか見てないですね……

 

54:風の名無しさん

 剣士もさりげなく魔法使いちゃんしか見てないけど、あれどういう視線なんだ

 

56:風の名無しさん

 一方、魔法使いちゃんはクラゲと謎の魚に夢中な模様

 

57:風の名無しさん

 生き物好きなんだなwww

 

59:風の名無しさん

 さりげなく剣士が素手で魚捕まえてて草

 差し出されて困惑する魔法使いちゃんもよき

 

62:風の名無しさん

 剣士、お前船乗れ

 

 

 

 

 

 

 

 

66:風の名無しさん

 砂の城でっかwwww

 

68:風の名無しさん

 やたらと城にこだわりを見せる王女様

 腰に手を当てて現場監督みたい

 メガホンどこから出したのwww

 

71:風の名無しさん

 城のてっぺんに流木建てたら建国なの……?

 

72:風の名無しさん

 魔法使いちゃん、君は国というものを何か勘違いしてる

 

 

 

 

 

74:風の名無しさん

 と思ったらなんか急にバレー始まって草

 

76:風の名無しさん

 突如理由のない王女様のスパイクが勇者を襲う

 

78:風の名無しさん

 パワー系王女様wwww

 

81:風の名無しさん

 剣士左利きなんだ

 こっちの変化球サーブも取りにくそう

 

84:風の名無しさん

 あ、魔法使いちゃんには緩いボールなんだ

 

85:風の名無しさん

 やさしい

 

86:風の名無しさん

 一方、勇者へは容赦のない集中砲火

 

88:風の名無しさん

 片方を集中攻撃はルールで禁止スよね

 忌憚なき意見ってやつっス

 

89:風の名無しさん

 だがこの場合、上手な方を狙ってるので反則かと言われると……

 

91:風の名無しさん

 そもそもなんであんなマジなの……?

 

93:風の名無しさん

 チーム分けで勇者が魔法使いちゃんとペアになったことが関係してそう

 なんだかんだで勝ち取った勇者すげーわ

 

94:風の名無しさん

 愛です

 愛ですよ

 

96:風の名無しさん

 その後「俺がこいつを守る!」って言ったのがまずかったね……

 

98:風の名無しさん

 王女と剣士はモンスターか何か?

 

99:風の名無しさん

 俺「が」ねえ……ふーん

 

100:風の名無しさん

 あ、勇者が城に突っ込んだ

 王女様の城が半壊しちゃった……

 

102:風の名無しさん

 まるで現実の王都が襲撃されたみたいな言い方はNG

 

103:風の名無しさん

 魔法使いちゃんも埋まったwwww

 

105:風の名無しさん

 崩れかけの砂の城から2人の下半身が飛び出してる異様な光景

 通りすがりの人間が見たらどう思われるやら

 

106:風の名無しさん

 殺人現場か宗教的儀式かな?

 

108:風の名無しさん

 ほう、これが噂の壁尻ですか

 

110:風の名無しさん

 足をじたばたさせる魔法使いちゃんかわいい

 これだと抵抗できないねえ

 

111:風の名無しさん

 ガタッ

 

112:風の名無しさん

 立つな

 座ってろ

 

113:風の名無しさん

 弱くて元々抵抗できない定期

 

 

 

 

 

 

 

 

118:風の名無しさん

 結局、夕方まで遊んだな

 

120:風の名無しさん

 1000年生きる僧侶ってそれこそ長命種じゃねえか

 

121:風の名無しさん

 人間だってよ

 

123:風の名無しさん

 長命種の定義こわれる

 

124:風の名無しさん

 魔法使いちゃんの中では僧侶と砂浜は同じなんだwww

 どういうカテゴリ分けだよwww

 

125:風の名無しさん

 やだこの人たち

 普通に1000年生きるとか言ってる……

 1000年後の約束してるわ……

 

126:風の名無しさん

 ぜったい叶わない約束するの、儚くてすき

 

128:風の名無しさん

 長生きする人間がたくさん増えたら長命種は迫害されなくなるのかね

 

130:風の名無しさん

 さすがに1000年は無理でしょ

 諦めないって意思表示だよ

 

132:風の名無しさん

 お、でもこのまま終わりそう

 今回はあんまり曇らなかったな……

 

133:風の名無しさん

 (前半から目を逸らして)そうだね

 これくらいなら許容範囲だよ

 

134:風の名無しさん

 ここまでついてきた視聴者だ

 面構えが違う

 

136:風の名無しさん

 これ普通に続く感じだよね?

 

137:風の名無しさん

 確かに

 2期発表あるんじゃね

 

138:風の名無しさん

 ねえ監督!

 ここまで来たらさあ!

 ハッピーエンドしかありえないでしょ!

 

145:風の名無しさん

 2期! 2期!

 

149:風の名無しさん

 1000年後もわちゃわちゃしてる4人を見たい!

 

159:風の名無しさん

 私は結婚した2人の新生活を見たいです

 

175:長命種ニキ

 み、みんなそんなに油断しない方が……

 正直ヤバい流れだと思いますよこれ

 

189:風の名無しさん

 あ、ほら何か……あれ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

 

 

 不意に、場面が暗転し……映し出されたのは、夜の海。静かに打ち寄せる波の音のほかは、何も聞こえない。

 

 

 

 かつて築かれた巨大な砂の城は、跡形もなくなっていた。

 

 果たしてどれほど時間が経ったのか。かつて広い砂浜だったはずのそこは波に削られ、細く痩せた砂地だけが残っている。

 

 

 

 その片隅に、小さな焚火がぽつりと灯っていた。

 

 淡い炎が風に揺れ、砂の上にゆらゆらと影を落とす。

 

 

 

 

 焚火の傍らには、ひとりの少女が座っていた。

 

 魔法使いの少女――その姿は、まるで時間から取り残されたように、何も変わっていない。髪の色も、背丈も、目元のかたちも。

 

 

 彼女だけが、あの夏のままだった。

 

 

 

 

 

 

 その横顔は、笑ってもいなければ、泣いてもいない。

 ただ、何の表情も浮かべずに、降るような満天の星を見上げている。

 

 

 

 

 

 やがて、少女が小さく呟く。

 

 

 

 

 

 「――次は、どこに行こうかな」

 

 

 

 

 

 その声に応じるように、火の粉がひとつ、風に乗って空へと舞い上がり、やがて夜の海へ溶けていった。

 

 

 

 

 

 そして――画面はゆっくりと暗転する。

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

 一転して、まばゆい光の世界が映し出される。

 その中を、とことこと歩いていくのは、魔法使いの少女だった。

 

 

 

 

 ふと、少女が立ち止まり、振り返る。

 

 背後には――勇者、剣士、王女。かつて共に旅をした、3人の仲間が立っていた。

 

 

 

 

 彼らは口を開かず、真剣な表情で、ただ真っすぐに少女を見つめている。

 

 少女もまた、何も言わない。

 その手には、黒く禍々しい杖が握られていた。

 

 

 

 

 立ち止まっている3人と少女との間には、わずかな距離しかない。けれど、その数歩は、永遠に埋まらない線だった。

 

 

 

 光が、だんだんと強くなる。

 

 そして、少女が不意に笑い、何かを言いかけた瞬間――画面全体が白く染まり、すべてがその中に呑まれていった。

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

 場面は変わって、再び、夜の海。周囲は変わらず静寂に包まれている。

 

 

 

 焚火はまだ揺れている。魔法使いの少女以外、誰の姿もない。

 

 

 

 

 少女は黙ったまま、じっと星空を見上げていた。ずっと、見上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがて、また画面がゆっくりと暗転する。

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 1枚のエンドカードが現れる。

 

 

 夕暮れの浜辺。

 

 空は茜色に染まり、波打ち際にほんのり金の光が揺れている。

 その中を――四人の影が、並んで歩いていた。

 

 

 先頭を歩くのは、勇者。

 その手は、魔法使いの少女の手をしっかりと握り締めている。

 少女は慌てたような表情で手を引かれながらも、弾けるような笑顔を浮かべている。

 

 

 二人のあとを、王女が歩く。

 風になびく髪を手で押さえながら、ふわりと笑って二人を見つめている。

 その横顔は、どこまでも穏やかだった。

 

 

 さらにその背後には剣士。

 手をポケットに入れたまま、目を細めている。

 他の三人を守るように、少し距離を空けながら歩いていた。

 

 

 波打ち際に点々と続く足跡。

 傍らには、半壊した巨大な砂の城。

 まるで、つい先ほどまで遊んでいたことを証明するかのように、砂が崩れかけている。

 

 

 

 この瞬間だけを切り取ったような、静かで、あたたかな一枚絵。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、画面の右下には、小さく可愛らしい白い文字が添えられていた。

 

 

 

 

 

 

 ~『逃げる魔法使い』第2期、始まります!~

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

201:風の名無しさん

 えっ……今のなに?

 

223:長命種ニキ

 ほら言ったじゃないか……

 

234:風の名無しさん

 なんだこの明るいエンドカード

 え? さっきのは夢?

 

240:風の名無しさん

 ……どういうこと?

 魔法使いちゃん、なんで1人だったの……?

 

264:風の名無しさん

 「また地獄が始まります!」って書いてある!




 2期って決まった後、放映までちょっと時間ありますよね(予防線)
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