(書籍発売中!)逃げる魔法使い 〜寿命を削って魔法を使っていただけなのに、なんだか周囲の様子が変です〜   作:うちっち

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(おまけ)猫と、王家の味と(下)

 ――王女(?)の助言を聞けば、すべてうまくいく。

 

 

 ……一瞬、嫌な予感がしたが、勇者は言葉を飲み込んだ。正直、藁にもすがりたい気持ちだったのだ。そもそも……。

 

 勇者は、隣のベンチで焼き芋をもぐもぐ頬張る少女を横目でちらりと見た。

 

(まず、あいつに恋愛感情があるのかを、俺は疑問に思っている)

『……さすがにあるでしょ? だってミアも長命種だったけれど結婚したって言ってたじゃない』

(だって言っても全然変わんねーもん)

『ほら、拗ねないの。子供じゃないんだから』

 

 たしなめるように、王女の声が響く。腰に手を当てて困ったような顔をする王女が目に浮かぶようだった。

 

『直接伝えなさい。幼馴染のままじゃ嫌なんだって』

(前世で10回くらい言ったんだよなぁ……)

 

 ちなみにその時の反応は、「じゃあ相棒だね!」だった。またある時は「親友!」だったり、「仲良し!」だったり。要は定まっていないのだろう。

 

 勇者には、「幼馴染」のほかに肩書が10個ある。それはいずれも、過去の自身の失敗の証となって、今も彼の肩に重くのしかかっていた。

 

 

 

 

 

『じゃあもう1回くらい言ってもいいじゃない。そうよ! 旅に行ったら初日に告白なさい。旅が楽しくなるわ』

(それって駄目だったら残りの日が地獄じゃねえ?)

『………………』

(おーい。王女様ー? もしもーし?)

 

 

 

 

 勇者は耳を澄ませた。

 しかし、なぜか声は急に聞こえなくなった。聞こえるのは、冬の冷たく吹き抜ける風の音と、遠くで焼き芋を販売している店員の呼び込みの声だけ。

 

 

 

 

 

 やはり幻覚だったのか、と勇者が諦めようとしたその時。気を取り直したように、王女の声が再び響く。

 

『そうよ! 要は伝え方が悪いんだわ。あなたはそのあたりがなってないものね』

(現場を見てきたみたいに言うじゃん)

『見なくてもわかるわ』

(あっそっすか)

 

 王女の声は、自信満々だった。

 

 

 

 

『ここを告白の場としなさい。まあ、そういう意味ではさっきのは良かったわ。ベンチに横並びで同時に座ったことは、足並みをそろえていこうという意思表示になるから』

(そうなの?)

『欲を言うなら、あの子の座る場所にハンカチを敷いてほしかったわ』

(それしたら絶対座ってくれなかったと思う)

 

 

 

 

 そして、出来の悪い生徒に言い含める教師みたいな口調で、王女は続けた。

 

『別に、普通の会話から入ってもいいんだけれど』

(普通の会話って?)

『髪型変わった? とかでいいの。いつもと変わった部分を褒めたりよ。ま、今回はいきなり本題に入るんじゃなくて、寓話から入りましょ』

(寓話ってなんだ?)

『たとえ話よ。そこから告白につなげるの。寓話の出来が上手なほど、異性からの評価は高いわ。王宮ではそれが一般的だったから』

(平安時代かよ)

『……へいあん?』

 

 勇者が思わず口を挟むと、不思議そうな声色で返事が返ってきた。王女様(?)は日本史には疎いらしい。それもそうか、と思い、勇者は続きを促す。

 

 

 

 

 

 

(いやすまん何でもない。でも俺、たとえ話なんてできないぞ……)

『私に、任せなさい』

 

 自信たっぷりに。胸をぐっと張って身を反らせる王女の姿が目に見えるようだった。

 

 そして、嘘ではなかったらしい。

 間をおかず、物語を紡ぐような口調で、語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

『旅人が渡る吊り橋は、強風の日ほど揺れは大きいが、

その揺れこそが橋を守ると言われるわ。

揺れを恐れて立ち止まる者は長く進めず、

揺れを受け入れて歩いた者だけが向こう岸へ辿り着く。

人の心も同じ。

揺れを恐れて距離を置くほど、想いは届かなくなる。

向こう岸に渡るには、揺れている間に歩くしかないの』

 

 

 

(……えーっと。要は?)

『“気持ちが不安定な時ほど距離を縮めよ”ってことよ!』

(なるほど)

 

 

 

 

 

 

 

『次ね。

 大河は、水源から遠ざかるほどゆっくり流れるの。

 流れが遅いからといって、

 源の力が弱まったわけではない。

 むしろ水は広く、深くなっていく。

 恋もまた、初めは勢いよく始まるが、

 深くなるほど静かに流れる。

 静かだからこそ、大河は誰よりも遠くへ運ぶのよ』

 

 

 

 

(つまり?)

『“落ち着いた好意こそ本物”ってこと!』

(なんかよくわからんがすげえ!)

『ふふ、もっと褒めなさい!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんと、あっという間に2つ。

 泉のように次々湧き出てくる王女の助言に、勇者は感服した。よくまあ、すぐ出てくるものだ。まるで、いつか使う時のためにと大事に温めておいたかのようであった。

 

 と、ここで勇者に1つの疑問が浮かぶ。

 

(ちなみに王女様ってこれ実際に使ったことあるの?)

『…………………………………………』

(おーい?)

『……うるっさいわねえ……』

(え? ないの?)

『どうでもいいでしょ。助言いるの? いらないの?』

(俺、王女様と知り合えてよかったと思ってる!)

『……ふーん? ま、いいわ。最後にこう言いなさい』

 

 そうして、王女が勇者に教えてくれた寓話は、以下のようなものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~猟師と走らない猟犬~

 

 とある村の猟師が、何匹もの犬を訓練していた。

 号令をかければどの犬もすぐに走り、

 素直で、忠実だった。

 

 しかし、ただ一匹だけ、

 号令をかけても動かず、

 後ろでじっと猟師を見ている犬がいた。

 

 猟師は叱り、訓練し、

 それでもその犬だけは走らなかった。

 

 ある日、猟師は足を滑らせ崖から落ちかけた。

 他の犬たちは前方に走っていったため気づかない。

 

 動かなかった犬だけが猟師の袖を噛み、

 必死に引き戻した。

 

 そこで猟師は気づいたのだ。

 あの犬は――言うことを聞かなかったのではない。

 行き先より、猟師を見ていたのだ。

 

 その瞬間、

 猟師の中で何かが音を立てて変わった。

 

「前を歩く者より、

 自分を見てくれる者こそが大切」

 

 だから自分に必要なのも、同じ道を走る相手じゃない。

 自分を見てくれる、たった一つの存在。

 他の誰でもない貴方こそが必要なんだ。

 

 

 

 

        ~2人は幸せなキスをして終了~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(正気か? ほんとにこうなる?)

『何かおかしいかしら? いい話でしょ?』

(……あいつって別に俺の方見てなくない?)

『だからこそ寓話よ。理論上は完璧だから安心なさい』

 

 王女の返事には自信が溢れていた。

 勇者はいちおう、確かめてみる。

 

(ちなみに実際にこれで成功したことは?)

『……………………』

(だから都合悪くなると黙るのやめてくれねえかなぁ! いるかどうかわかんなくなるから!)

『イメージトレーニングでは何回も成功しているわ』

(そりゃそうだろ! イメトレで失敗するやついる!?)

『いるのはいるでしょ。失敗した場合の立て直しを考える時とか』

(すまん今のは俺が悪かった)

『ともかく行くわよ。いつまでたっても奇跡なんて舞い降りてきやしないわ。ただ待ってるだけの者にはね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 奇跡。

 勇者はベンチの端から指を離し、膝の上の猫を一度だけ撫でた。猫は小さく喉を鳴らし、熱で手のひらを慰める。

 

 勇者は、真剣な顔で、魔法使いの少女に向き合った。きょとんとした顔で勇者を見返す少女。

 

「どうしたの?」

『今よ! ほら寓話!』

(マジで? いきなり?)

『いい? 待ってるだけの者にはね――』

(無理に好きな台詞言うのやめてもらっていい?)

 

 

 

 

 

「えー、吊り橋って、強風の日ほど揺れは大きいんだ。

でも、その揺れこそが橋を守ると言われてて。

揺れを恐れて立ち止まる者は長く進めず、

揺れを受け入れて歩いた者だけが向こう岸へ辿り着く。

人の心も同じ。

揺れを恐れて距離を置くほど、想いは届かなくなる。

向こう岸に渡るには、揺れている間に歩くしかないんだ。

だから……」

 

 セリフは王女が読み上げてくれるので、それを追いかければ済んだ。

 しかし途中で、困ったような顔をした少女に手を振られ、勇者は口を閉じた。

 

 

「ごめん、なんでいきなりその話したの? 別にここに吊り橋ないじゃん」

「急に話したくなったんだ」

「そっかぁ」

 

 

 

 

 

 

 少女はしばし沈黙した。

 そして、不意にぱぁっと顔を輝かせ、何度も頷いた。

 そして、宙からノートを取り出し、何かいそいそと書き込み始める。

 

 勇者がこっそり覗いてみたところ、少女は『旅の目的地! 吊り橋!』とメモしていた。なんとなくだが、伝わっていない気がした。

 

「違うんだ。別に行きたいわけじゃない」

「わかってる。揺れる吊り橋に冬に行くのは危ないもんね。春まで待とうね」

 

(ほら! ダメじゃん!!)

『つ、次よ! まだまだあるんだから!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 勇者は息を大きく吸った。

 そして、気を取り直して続けた。

 

「大河って、水源から遠ざかるほどゆっくり流れるんだ。

 流れが遅いからといって、

 源の力が弱まったわけじゃない。

 むしろ水は広く、深くなっていく。

 恋もまた、初めは勢いよく始まるが、

 深くなるほど静かに流れる。

 静かだからこそ、大河は誰よりも遠くへ運ぶんだ」

「……なるほどね」

「伝わったか」

「言わずともね」

 

 勇者と少女は、深く頷き合った。そして、少女はまた何かをノートに書き留めた。『大きな川にも行きたい』

 

 

 

 

 

「違うんだ。俺は別に川が見たいわけじゃない」

「わかってるわかってる。川が見たいんじゃないんだよね。川下りがしたいんでしょ。吊り橋見てから行こうね」

 

 頷く少女の目は優しかった。

 

(俺らって旅行の行き先の話してたんだっけ?)

『諦めないで! ほら! 猟師の話よ! これさえ伝われば他の寓話なんて、前座も前座よ。通販のやたら大きい段ボールに入ってる緩衝材と同じくらいの価値くらいしかないんだから』

(ばっちり現代に適応してるじゃねーか)

『ほら行って!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あと猟師と猟犬の話もしたいんだ」

「……牧場みたいな感じってこと?」

「そうだ」

「楽しそう」

「この話が一番大事なんだ」

「そうなんだ。じゃあ一生懸命聞くね」

 

 少女は頷いた。そして、さっとノートと鉛筆を構える。

 風でページの端がめくれかけるのを、彼女は指先で押さえた。仕草は丁寧で、まるで授業のノートを取るみたいだ。勇者はその姿を見て、一瞬だけ希望に似たものを掴みかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とある村の猟師が、何匹もの犬を訓練していたんだ。何匹って? そりゃ5匹くらいだろ。何匹かは関係ないんだ。犬種? 知らん。マルチーズとかだよ。マルチーズで猟はできないだろうって? そうだな。間違えた、ドーベルマンとかだよ。とかって何って? いろんな犬種がいたんだ。その方が色んな猟ができるからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ。向上心があるえらい猟師だったんだ。それで、5匹くらいの犬を訓練してたんだよ。どんな訓練って? そりゃ走ったり跳んだりだよ。そうだ跳ぶんだ。鳥とかも捕まえたかったんだよ。犬ってフリスビーとかキャッチしたりするだろ? それで、猟師が号令を掛けたらどの犬もすぐに走ったんだ。どんな号令かって? 「それいけ!」とかそんなんだよ。ちょっと本題に戻っていいか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「猟師が号令をかければどの犬もすぐに走り、素直で、忠実だったんだ。……名前? シロだよ。白かったからな。5匹いるはず? 全部シロだよ。全部白かったんだ。全部同じ名前なんてひどい? そうだな。たぶん考えるのが大変だったんだ。猟師の話だ。でも一匹だけ、号令を掛けても動かない犬がいたんだ。もちろん名前はシロだ。全員同じ名前だから自分に号令されてるって分からなかったんじゃないかって? そうだな。そうかもしれない。戻っていいか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それで、動かなかった犬だけが猟師の袖を噛んで必死に引き戻したんだ。よかった? そうだよな。落ちなくてよかったよな。今がチャンスだと思って襲い掛かってこなくてよかった? お前は「魔物じゃない」って言った俺の話全然信じてなかったんだな。そう普通の犬だったんだよ。実は、じゃない。最初から。で、うん良かったよな。1人と1匹が両方助かって。安心したって? そうだよな。その犬は何が好きなのかって? ごめんなこれってお話だから、その犬に好きなものをあげたりはできないんだ。……ハッピーエンドをありがとう? どういたしまして」

 

 

 

 

 

 

 

 ニコニコと笑う少女の前に、勇者はそれ以上、話を続けることを諦めた。

 

 そして話を締めくくった勇者は、黙って天を仰ぐ。小声で『お、おかしいわ……こんなはずじゃ……』という声がどこかから聞こえた気がしたが、責める気にはなれなかった。乗ったのは自分なのだ。

 

 それにしても、自分は何を言っていたのだろう。

 さっきまでの自分を思い返すと、体が熱い。すると、膝の上の猫がまるで暖を求めるように、にゃーんと体を擦り付けてきた。猫は外気で少し冷えているのに、触れているうちに体温が手のひらに戻ってくる。小さな生き物の確かな重みが、現実へ引き戻す。

 

 

 

 

 話が終わったのだと理解したのだろう。隣の少女は、「ところで全然話変わるんだけどさー」と話を始めた。

 

「職場で、王女様役の声優のすみれさんって人と友達になったんだけど。あの人、ひょっとしたら王女様の生まれ変わりかも」

『違うわ! 誰よそれ!?』

「なんでそう思うんだ」

 

 叫んでいる声は置いておいて、勇者は続きを促した。すると、んー、とあごに手を当てて、少女は宙を見上げた。こんなに大きい声なのに、王女様(?)の声は彼女には届いていないらしい。

 

「すみれさん、夏の現場で、暑いからって水でカップラーメン作ってたの。自信満々で。『絶対美味しいに決まってる』って」

「それで?」

「『美味しくないわ……』って泣きながら食べてた」

「作る前に気付くだろ」

「とんこつラーメンだった」

「なんでまた冷やしてまずそうな味に……」

 

 想像だけで駄目そうなのに、なぜ実行してしまうのか。

 そして、少女は目を輝かせて言った。

 

「あれ見て「王女様だ!」って思ったの。頑張って残さず全部食べてたし」

『心外ね。私はさすがにそんなことしないわ』

「まあするかしないかは置いといて。たぶん違うと思うぜ。……まあ、ともかく。こっちでもお前に友達が1人でもいてよかったよ。……なあ」

 

 

 

 

 何と言ったらいいか分からないまま、勇者は口を開く。

 

「俺達って……友達だよな?」

「うんそうだよ。……え、そうだよね? そうじゃなかったらショックで泣いちゃうかも」

 

 

 友達。

 その言葉が嬉しいのと、物足りないのが、半々くらいだった。

 気持ちを伝えると、彼女は何と言うだろう。

 「何を今更」と笑うだろうか。

 

 

 

 

 

 

 ……そのとき。

 耳元で、「フォン」と風を切る音がした。

 

 これまでの旅の中で、何度も聞いた音――剣士が剣を振る音だった。どうやら、彼女の言った通り、もう1人もいるらしい。

 

【俺には、お前の話がわからない】

(何が、わからないんだ?)

 

 相変わらず、言葉の少ない奴だった。

 だが、その言葉には心底不思議そうな響きがこもっていて、勇者は思わず問いかける。分からないらしい。そうだろう。パーティーの中で一番そういうのに疎そうなのが剣士だった。だから、今何が起こってるかすら分かっていないのでは――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【彼女は、お前の覚悟を笑うのか?】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 勇者は、隣で困ったようにこちらを見返す少女の瞳を、じっと見つめた。

 

「お前、髪染めた? もっと色薄かったよな?」

「……なんで今聞くの……? うん、あのままだとファンタジー丸出しだったから……べ、別に、うまく染まらなかったからって魔法は使ってないよ? 嘘じゃないよ?」

「似合ってる」

 

 

 

 すると、彼女は、目を一瞬見開いた。

 しかしそのまま表情を変えずに、ふいっと顔を逸らす。そして、不思議そうに首をかしげ、手元の焼き芋の方に視線を戻した。

 

 その様子には、さっきまでと同じ、こちらの気持ちが伝わった感じは受けない。

 

【む……】

 

 残念そうな声が、脳裏に響いてきた。

 いいさ、と勇者は独り言ちる。

 

 彼女は、何千年も生きているから、そういう経験もさぞや豊富なのだろう。勇者がいくらそう言う気持ちを伝えても、きっと、幼児が「大人になったら近所のお姉ちゃんと結婚する!」と言い出すようなもので。一刻も早くこっちを意識させてやる、と勇者は寒空に誓った。

 

 寒空は、誓いに容赦しない。風が強く、みるみるうちに頬が冷えるが、全身はさっきより一層、熱い。熱が逃げ場を探して、息がいっそう白くなる。

 

 

 

 そのとき、猫が、にゃーんと言いながら、魔法使いの少女の方へ移っていった。そして、彼女の膝の上でそのまま丸くなる。

 まだまだ、先は遠そうだった。

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

 

 

「団長さん、知ってます? フィリナって、マイペースなのに意外と恥ずかしがり屋なんですよ」

「なんだ急にいきなり」

 

 

 

「顔に全然出ないけれど、あれ痩せ我慢してるんです。手を握ったら体温ぐんぐん上がってるの分かりますからね。何やってるんですかそこで諦めてどうするんですか押したら何か変わるかもしれないですよ人間ってすぐ死ぬのにのんびりとしてるのなんなんですかねあの人の焦る顔くらい見せてくださいよたぶん今とか慣れないシチュエーションに心臓ばっくんばっくんですからほら膝の猫に話しかけてないじゃないですか普段なら挨拶してるでしょ」

 

 

 

「ハッハッハ! こっち来てから思ったんだが、ミアってたまにいきなり早口になるよな。フィリナならまだまだ生きそうだぞ。当分来ないって」

 

「そこでなんで抱きしめないんですか? 幸せなキスしたらひょっとしたら終了ですよ!? ああもうじれったい私ちょっと行ってきます」

 

 

 

「無理だって。おーい、またミアが発作出た。カヤ、話聞いてやってくれ」

 

「はーい」

 

 

 

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