(書籍発売中!)逃げる魔法使い 〜寿命を削って魔法を使っていただけなのに、なんだか周囲の様子が変です〜   作:うちっち

43 / 55
(特別編②)『魔法学校へようこそ』

 学校に行こうと誘われた翌朝。

 私は白巫女さんとテレサに挟まれて、魔法学校の門をくぐっていた。

 

 

 

 昨日のうちに「手続きはこちらで進めます」と言われ、そのまま流れるように制服まで渡されてしまったので、もう逃げる隙はないらしい。白を基調にした上着に、濃紺のスカート。胸元には銀糸で校章が入っていて、見た目だけならかなり可愛い。今の私は十歳くらいの姿なので、似合っているのもたぶん事実だと思う。だからこそ、ちょっと悔しい。制服に説得された気がする。

 

 そして背中には、布でぐるぐる巻きにされた、私の身長より大きな杖。

 

 可愛い制服。

 可愛くない長物。

 全体としてのまとまりは、だいぶ悪かった。

 

「よくお似合いですよ」

 

 白巫女さんは満足そうに言った。

 

「制服は似合っても、授業は似合わないと思う」

「今から馴染んでください」

「雑だなぁ」

 

 隣では、テレサが目をきらきらさせていた。

 

「本当に可愛いです、フィリナさん!」

「ありがとう。でもそう言われてもあんまり嬉しくないかなぁ」

「どうしてですか?」

「今から学校だから」

 

 するとテレサは、少しだけ不思議そうにしてから、やわらかく笑った。

 

「学校、楽しいですよ」

 

 その言い方は、行ったことがある人の言い方ではなく、これから行けることが嬉しい人の言い方だった。そう思うと、水を差すのも悪い気がする。私まで一緒なのは納得していないけど。

 

 そして、そうこうしているうちに、魔法学校が見えてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝の光の中で見上げる魔法学校は、やっぱり大きかった。

 

 白い石造りの校舎が、山肌に沿っていくつも折り重なるように建っている。ひとつひとつの建物だけでも村の集会場よりずっと大きい。朝靄が薄く残っていて、遠目には、建物そのものが少し宙に浮いているようにも見える。

 

 尖塔は空へ向かって何本も伸び、その先端では結界の紋様が朝日に触れて淡く光っていた。丸い訓練場らしき広場、規則正しく並んだ寮棟、ガラス張りの温室みたいな建物まで見える。さらに上の方には、雲に半分隠れた区画まであった。上へ行くほど古い時代のものが残っているのか、壁の色や形まで少しずつ違っていて、長い時間をそのまま積み重ねたような重みがある。

 

 「学校に来た」というより、「知らない大きな街に入る」みたいな気分だった。

 

「すごい……」

 

 隣でテレサが息をのんだ。

 

「魔法学校って、こんなに大きいんですね」

「うん。立派になったね」

「前にも来たことがあるんですか?」

「うん、まあ、ちょっとだけ。だいぶ前だけど」

 

 説明すると長くなるので、昔のことはだいたいちょっとで済ませるに限る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 校門をくぐると、受験生たちが何列にも並んでいた。だいたい十五、六歳くらいだろうか。今の私より頭ひとつ、ふたつ大きい子ばかりで、私は完全に混ざる場所を間違えた感じになっている。しかも背中にはめちゃくちゃ大きな杖まで背負っている。目立たないわけがない。

 

 列の前の方には、金髪のツインテールの子がいた。背筋がぴんと伸びていて、持っている書類の端まで綺麗に揃えている。いかにも真面目で、いかにも優秀そうだ。

 

 少し離れたベンチでは、女の子が一人、壁にもたれて寝ていた。試験の日に寝るなんて、やる気がないのか余裕があるのか、その両方なのかもしれない。

 

 もう一人、腕を組んでこちらを見ている男子もいる。口元に少しだけ、面白いものを見つけた時の笑みが浮かんでいた。あれはたぶん、人の失敗を見るのが好きな顔だ。

 

 金髪ツインテールの子がふと顔を上げ、こちらを見ていた。

 

 私はなんとなく手を振ってみた。

 

 彼女は振り返さなかった。代わりに、私とテレサと白巫女様を、順番に二度、三度と見直した。

 

 

 

 

 

 * * * 

 

 

 

 

 

【特別編】聖女テレサとの特別編実況スレ

 

1:風の名無しさん

 特別編二話きた

 

3:風の名無しさん

 制服魔法使いちゃんかわよ

 

5:風の名無しさん

 白い上着に紺スカートか

 

8:風の名無しさん

 なお背中

 

10:風の名無しさん

 クソデカ杖で草

 

13:風の名無しさん

 布で巻いても二メートルは隠せんやろw

 

16:風の名無しさん

 可愛い制服+物騒な長物

 ビジュアル事故

 

20:風の名無しさん

 魔法学校でっっっっっか

 

23:風の名無しさん

 門くぐっても校舎まだ遠いの草

 

26:風の名無しさん

 学校っていうか街やん

 

29:風の名無しさん

 高い回廊の向こうに丸い訓練場見えるな

 

32:風の名無しさん

 寮っぽい建物も何列かある

 生徒数えぐそう

 

36:風の名無しさん

 魔法使いちゃん

「立派になったね」

 

39:風の名無しさん

 おっと?

 

42:風の名無しさん

 その言い方は古参

 

45:風の名無しさん

 しかしテレサこれを痛恨のスルー

 

49:風の名無しさん

 受験生みんな年上っぽい中に

 ちっちゃい魔法使いちゃん混ざってて草

 

60:風の名無しさん

 金髪ツインテきた!

 いかにも優等生っぽい

 

63:風の名無しさん

 書類の角まで揃ってるのがもう強い

 

67:風の名無しさん

 ベンチで寝てるの女の子かよw

 試験前だぞw

 

70:風の名無しさん

 腕組み男子、顔がもう口悪そう

 

74:風の名無しさん

 魔法使いちゃん手振ったけど

 無視されて草

 

83:風の名無しさん

 初対面から距離-100スタート

 

88:風の名無しさん

 受け付けきた

 

91:風の名無しさん

 まず年齢確認だよな

 

94:風の名無しさん

 そらそうよ

 

97:風の名無しさん

 見た目10歳やぞ

 

100:風の名無しさん

 答案映った

 

103:風の名無しさん

 魔法理論 二点

 

106:風の名無しさん

 二点wwwwwwww

 またかよwwww

 

110:風の名無しさん

 赤ででかく「2」ついてるの草

 

113:風の名無しさん

 魔法使いちゃん本人も

 「知ってた」みたいな顔してて草

 

116:風の名無しさん

 見た目10歳

 テスト二点

 もう二翻です

 

132:風の名無しさん

 クソデカ杖でドラも乗ってるから

 

136:風の名無しさん

 金髪ツインテの子

 めっちゃ反応したな

 

139:風の名無しさん

「二点で、受験を?」

 そらそう

 

142:風の名無しさん

 ぐう正論

 

145:風の名無しさん

 テレサ

「いえ! この子は天才です!」

 

148:風の名無しさん

 おいやめろ

 

154:風の名無しさん

 あっ(察し)

 

161:風の名無しさん

 その無邪気な擁護は

 未来の自分に刺さるやつやぞ

 

165:風の名無しさん

 曇らせRTAやめーや

 

169:風の名無しさん

 あんなこと言うんじゃなかったと後悔するんやろなぁ

 

173:風の名無しさん

 儀礼具確認きた

 

176:風の名無しさん

 布の隙間から見える杖の先がもう凶器

 こんなねじ曲がった儀礼具があるか

 

179:風の名無しさん

 白巫女様

「神殿預かりの貴重な一品です」

 

185:風の名無しさん

 その押し通し方で大丈夫か?

 

189:風の名無しさん

 腕組み男子

「ふはっ……! でかくないか?」

 

192:風の名無しさん

 そこなんよ

 

195:風の名無しさん

 火の玉ストレート

 

203:風の名無しさん

 魔力測定きた

 あの石を触るんだな

 

206:風の名無しさん

 金髪ツインテの子、光つよい

 

209:風の名無しさん

 優等生やん

 

212:風の名無しさん

 テレサの光きれいだな

 聖女感ある

 

216:風の名無しさん

 さあ魔法使いちゃんの番です!

 

222:風の名無しさん

 うん……

 

225:風の名無しさん

 無

 

228:風の名無しさん

 ゼロで草

 

231:風の名無しさん

 もう一回手を置いたぞ

 バンバン叩いてる

 

234:風の名無しさん

 やっぱゼロです……

 

237:風の名無しさん

 永遠のゼロやめろ

 

241:風の名無しさん

 見た目10歳

 二点

 魔力ゼロ

 

244:風の名無しさん

 満貫に育ったな

 

253:風の名無しさん

 草

 

256:風の名無しさん

 そりゃ優等生っぽい子もキレるわ

 

259:風の名無しさん

「こんな子を、どうして」

 正論100%

 

263:風の名無しさん

 言ってること全部正しい

 

282:風の名無しさん

 テレサ食い下がる

「でもこの子は本当にすごいんです!」

 

288:風の名無しさん

 善意100%やめーや

 

291:風の名無しさん

 隙あらば未来の曇りゲージ貯めるな

 

295:風の名無しさん

 白巫女様が前出た

 

298:風の名無しさん

 来たわね

 

301:風の名無しさん

 政治の時間だああああ

 

307:風の名無しさん

「神殿案件」

「特例」

「保護下」

「保証」

「推薦」

 

310:風の名無しさん

 便利ワード連打で草

 デンプシーロールかな?

 

314:風の名無しさん

 権力の暴力やめろwww

 

318:風の名無しさん

 試験官の顔www

 「困る」じゃなくて「めっちゃ困る」になっとる

 

322:風の名無しさん

 優等生っぽい子、当然納得しない

 

326:風の名無しさん

 そら学校側からしたらバグやろこんなん

 

330:風の名無しさん

 腕組み男子、完全に見世物見てる顔で草

 

338:風の名無しさん

 あ、通した

 

341:風の名無しさん

 ファッ!?

 

344:風の名無しさん

 え、入れるの!?

 

347:風の名無しさん

 通った!!!

 

350:風の名無しさん

 公衆の面前で不正入学《new!》

 

353:風の名無しさん

 役満に進化して草

 

356:風の名無しさん

 満貫で済んでたのに白巫女が役満に

 コンビ打ちかな?

 

360:風の名無しさん

 見た目10歳

 クソデカ杖

 理論二点

 魔力ゼロ

 神殿パワー不正入学

 

 はい役満

 

368:風の名無しさん

 優等生っぽい子からしたら悪夢でしかない

 

372:風の名無しさん

 でもテレサだけは純粋にうれしそうなんよな

 

375:風の名無しさん

「やった、一緒に通えて嬉しいです!」

 10年後もそう言えたらいいね

 

378:風の名無しさん

「……あの時わたしが誘わなければ……」

 

382:風の名無しさん

 魔法使いちゃん、まだ何もしてないのに

 空気だけ最悪で草

 

386:風の名無しさん

 存在そのものが不穏分子

 

389:風の名無しさん

 本人はめっちゃやめてほしそう

 今すぐ退学したいって顔してる

 

400:風の名無しさん

 次から学校生活とか絶対荒れるやん

 

403:風の名無しさん

 波乱の予感しかしない

 

408:風の名無しさん

「フィリナさん、一緒に卒業しましょうね!」

 お、おう

 せやな

 

410:風の名無しさん

 賭けるか?

 俺は絶対途中で逃げるに一票

 

414:風の名無しさん

 Bet不成立ですねこれは……

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。