(書籍発売中!)逃げる魔法使い 〜寿命を削って魔法を使っていただけなのに、なんだか周囲の様子が変です〜 作:うちっち
学校に行こうと誘われた翌朝。
私は白巫女さんとテレサに挟まれて、魔法学校の門をくぐっていた。
昨日のうちに「手続きはこちらで進めます」と言われ、そのまま流れるように制服まで渡されてしまったので、もう逃げる隙はないらしい。白を基調にした上着に、濃紺のスカート。胸元には銀糸で校章が入っていて、見た目だけならかなり可愛い。今の私は十歳くらいの姿なので、似合っているのもたぶん事実だと思う。だからこそ、ちょっと悔しい。制服に説得された気がする。
そして背中には、布でぐるぐる巻きにされた、私の身長より大きな杖。
可愛い制服。
可愛くない長物。
全体としてのまとまりは、だいぶ悪かった。
「よくお似合いですよ」
白巫女さんは満足そうに言った。
「制服は似合っても、授業は似合わないと思う」
「今から馴染んでください」
「雑だなぁ」
隣では、テレサが目をきらきらさせていた。
「本当に可愛いです、フィリナさん!」
「ありがとう。でもそう言われてもあんまり嬉しくないかなぁ」
「どうしてですか?」
「今から学校だから」
するとテレサは、少しだけ不思議そうにしてから、やわらかく笑った。
「学校、楽しいですよ」
その言い方は、行ったことがある人の言い方ではなく、これから行けることが嬉しい人の言い方だった。そう思うと、水を差すのも悪い気がする。私まで一緒なのは納得していないけど。
そして、そうこうしているうちに、魔法学校が見えてくる。
朝の光の中で見上げる魔法学校は、やっぱり大きかった。
白い石造りの校舎が、山肌に沿っていくつも折り重なるように建っている。ひとつひとつの建物だけでも村の集会場よりずっと大きい。朝靄が薄く残っていて、遠目には、建物そのものが少し宙に浮いているようにも見える。
尖塔は空へ向かって何本も伸び、その先端では結界の紋様が朝日に触れて淡く光っていた。丸い訓練場らしき広場、規則正しく並んだ寮棟、ガラス張りの温室みたいな建物まで見える。さらに上の方には、雲に半分隠れた区画まであった。上へ行くほど古い時代のものが残っているのか、壁の色や形まで少しずつ違っていて、長い時間をそのまま積み重ねたような重みがある。
「学校に来た」というより、「知らない大きな街に入る」みたいな気分だった。
「すごい……」
隣でテレサが息をのんだ。
「魔法学校って、こんなに大きいんですね」
「うん。立派になったね」
「前にも来たことがあるんですか?」
「うん、まあ、ちょっとだけ。だいぶ前だけど」
説明すると長くなるので、昔のことはだいたいちょっとで済ませるに限る。
校門をくぐると、受験生たちが何列にも並んでいた。だいたい十五、六歳くらいだろうか。今の私より頭ひとつ、ふたつ大きい子ばかりで、私は完全に混ざる場所を間違えた感じになっている。しかも背中にはめちゃくちゃ大きな杖まで背負っている。目立たないわけがない。
列の前の方には、金髪のツインテールの子がいた。背筋がぴんと伸びていて、持っている書類の端まで綺麗に揃えている。いかにも真面目で、いかにも優秀そうだ。
少し離れたベンチでは、女の子が一人、壁にもたれて寝ていた。試験の日に寝るなんて、やる気がないのか余裕があるのか、その両方なのかもしれない。
もう一人、腕を組んでこちらを見ている男子もいる。口元に少しだけ、面白いものを見つけた時の笑みが浮かんでいた。あれはたぶん、人の失敗を見るのが好きな顔だ。
金髪ツインテールの子がふと顔を上げ、こちらを見ていた。
私はなんとなく手を振ってみた。
彼女は振り返さなかった。代わりに、私とテレサと白巫女様を、順番に二度、三度と見直した。
* * *
【特別編】聖女テレサとの特別編実況スレ
1:風の名無しさん
特別編二話きた
3:風の名無しさん
制服魔法使いちゃんかわよ
5:風の名無しさん
白い上着に紺スカートか
8:風の名無しさん
なお背中
10:風の名無しさん
クソデカ杖で草
13:風の名無しさん
布で巻いても二メートルは隠せんやろw
16:風の名無しさん
可愛い制服+物騒な長物
ビジュアル事故
20:風の名無しさん
魔法学校でっっっっっか
23:風の名無しさん
門くぐっても校舎まだ遠いの草
26:風の名無しさん
学校っていうか街やん
29:風の名無しさん
高い回廊の向こうに丸い訓練場見えるな
32:風の名無しさん
寮っぽい建物も何列かある
生徒数えぐそう
36:風の名無しさん
魔法使いちゃん
「立派になったね」
39:風の名無しさん
おっと?
42:風の名無しさん
その言い方は古参
45:風の名無しさん
しかしテレサこれを痛恨のスルー
49:風の名無しさん
受験生みんな年上っぽい中に
ちっちゃい魔法使いちゃん混ざってて草
60:風の名無しさん
金髪ツインテきた!
いかにも優等生っぽい
63:風の名無しさん
書類の角まで揃ってるのがもう強い
67:風の名無しさん
ベンチで寝てるの女の子かよw
試験前だぞw
70:風の名無しさん
腕組み男子、顔がもう口悪そう
74:風の名無しさん
魔法使いちゃん手振ったけど
無視されて草
83:風の名無しさん
初対面から距離-100スタート
88:風の名無しさん
受け付けきた
91:風の名無しさん
まず年齢確認だよな
94:風の名無しさん
そらそうよ
97:風の名無しさん
見た目10歳やぞ
100:風の名無しさん
答案映った
103:風の名無しさん
魔法理論 二点
106:風の名無しさん
二点wwwwwwww
またかよwwww
110:風の名無しさん
赤ででかく「2」ついてるの草
113:風の名無しさん
魔法使いちゃん本人も
「知ってた」みたいな顔してて草
116:風の名無しさん
見た目10歳
テスト二点
もう二翻です
132:風の名無しさん
クソデカ杖でドラも乗ってるから
136:風の名無しさん
金髪ツインテの子
めっちゃ反応したな
139:風の名無しさん
「二点で、受験を?」
そらそう
142:風の名無しさん
ぐう正論
145:風の名無しさん
テレサ
「いえ! この子は天才です!」
148:風の名無しさん
おいやめろ
154:風の名無しさん
あっ(察し)
161:風の名無しさん
その無邪気な擁護は
未来の自分に刺さるやつやぞ
165:風の名無しさん
曇らせRTAやめーや
169:風の名無しさん
あんなこと言うんじゃなかったと後悔するんやろなぁ
173:風の名無しさん
儀礼具確認きた
176:風の名無しさん
布の隙間から見える杖の先がもう凶器
こんなねじ曲がった儀礼具があるか
179:風の名無しさん
白巫女様
「神殿預かりの貴重な一品です」
185:風の名無しさん
その押し通し方で大丈夫か?
189:風の名無しさん
腕組み男子
「ふはっ……! でかくないか?」
192:風の名無しさん
そこなんよ
195:風の名無しさん
火の玉ストレート
203:風の名無しさん
魔力測定きた
あの石を触るんだな
206:風の名無しさん
金髪ツインテの子、光つよい
209:風の名無しさん
優等生やん
212:風の名無しさん
テレサの光きれいだな
聖女感ある
216:風の名無しさん
さあ魔法使いちゃんの番です!
222:風の名無しさん
うん……
225:風の名無しさん
無
228:風の名無しさん
ゼロで草
231:風の名無しさん
もう一回手を置いたぞ
バンバン叩いてる
234:風の名無しさん
やっぱゼロです……
237:風の名無しさん
永遠のゼロやめろ
241:風の名無しさん
見た目10歳
二点
魔力ゼロ
244:風の名無しさん
満貫に育ったな
253:風の名無しさん
草
256:風の名無しさん
そりゃ優等生っぽい子もキレるわ
259:風の名無しさん
「こんな子を、どうして」
正論100%
263:風の名無しさん
言ってること全部正しい
282:風の名無しさん
テレサ食い下がる
「でもこの子は本当にすごいんです!」
288:風の名無しさん
善意100%やめーや
291:風の名無しさん
隙あらば未来の曇りゲージ貯めるな
295:風の名無しさん
白巫女様が前出た
298:風の名無しさん
来たわね
301:風の名無しさん
政治の時間だああああ
307:風の名無しさん
「神殿案件」
「特例」
「保護下」
「保証」
「推薦」
310:風の名無しさん
便利ワード連打で草
デンプシーロールかな?
314:風の名無しさん
権力の暴力やめろwww
318:風の名無しさん
試験官の顔www
「困る」じゃなくて「めっちゃ困る」になっとる
322:風の名無しさん
優等生っぽい子、当然納得しない
326:風の名無しさん
そら学校側からしたらバグやろこんなん
330:風の名無しさん
腕組み男子、完全に見世物見てる顔で草
338:風の名無しさん
あ、通した
341:風の名無しさん
ファッ!?
344:風の名無しさん
え、入れるの!?
347:風の名無しさん
通った!!!
350:風の名無しさん
公衆の面前で不正入学《new!》
353:風の名無しさん
役満に進化して草
356:風の名無しさん
満貫で済んでたのに白巫女が役満に
コンビ打ちかな?
360:風の名無しさん
見た目10歳
クソデカ杖
理論二点
魔力ゼロ
神殿パワー不正入学
はい役満
368:風の名無しさん
優等生っぽい子からしたら悪夢でしかない
372:風の名無しさん
でもテレサだけは純粋にうれしそうなんよな
375:風の名無しさん
「やった、一緒に通えて嬉しいです!」
10年後もそう言えたらいいね
378:風の名無しさん
「……あの時わたしが誘わなければ……」
382:風の名無しさん
魔法使いちゃん、まだ何もしてないのに
空気だけ最悪で草
386:風の名無しさん
存在そのものが不穏分子
389:風の名無しさん
本人はめっちゃやめてほしそう
今すぐ退学したいって顔してる
400:風の名無しさん
次から学校生活とか絶対荒れるやん
403:風の名無しさん
波乱の予感しかしない
408:風の名無しさん
「フィリナさん、一緒に卒業しましょうね!」
お、おう
せやな
410:風の名無しさん
賭けるか?
俺は絶対途中で逃げるに一票
414:風の名無しさん
Bet不成立ですねこれは……