(書籍発売中!)逃げる魔法使い 〜寿命を削って魔法を使っていただけなのに、なんだか周囲の様子が変です〜   作:うちっち

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『続いてゆく物語』(終了後スレ〜エピローグ)

【もしも】魔法使いちゃんを止められていたら【あり得た未来を描くスレ】

 

1:風の名無しさん

 あんなバッドエンドは認めない

 俺がちゃんと書き直してやった

 お前らもこれ見て心を癒せ

 

【1枚目のイラスト】

 勇者が、魔法使いちゃんから杖をそっと取り上げる。

 魔法使いちゃんは首を傾げながら、素直に手を離す。

 勇者は、何も言わずに、ただそっと彼女の頭を撫でる。

 

 

 

5:風の名無しさん

 神

 

7:風の名無しさん

 これだよ!!!これしかない!!!!

 

9:風の名無しさん

 勇者、ちゃんと気づいてたんだ……!!!

 

12:風の名無しさん

 やっぱり勇者は、魔法使いちゃんの兄ポジなのがいい……

 

17:風の名無しさん

 この未来なら、救われるんだよ……

 

 

 

 

 

 

21:風の名無しさん

 

【2枚目】

 王女が、研究班に厳しい顔で指示している絵。

 背後には、膨大な研究資料。

 王女の目は、真っ直ぐに希望だけを見据えている。

 

 

 

25:風の名無しさん

 王女様かっこよすぎィ!

 

28:風の名無しさん

 王女様、ほんと好き……こんな上司についていきたい……

 

33:風の名無しさん

 これ、絶対寿命戻す研究だろ⁉

 

37:風の名無しさん

 王女様が本気出せば、国家が動くからな。救える、救える未来だこれ……!

 

 

 

 

 

 

 

45:風の名無しさん

 

【3枚目】

 剣士が夜空を見上げながら、魔法使いちゃんに毛布をそっとかける。

 魔法使いちゃんは、ぐっすり寝ている。

 剣士は無言で、それでもどこか優しげに微笑んでいる。

 

 

 

49:風の名無しさん

 剣士……お前……そんな顔もできるのか……

 

55:風の名無しさん

 だめだ泣くわ

 

59:風の名無しさん

 無言の優しさって最高すぎ!

 

64:風の名無しさん

 この世界線、絶対に幸せになるしかないじゃん……

 

 

 

 

 

 

 

69:風の名無しさん

 

【4枚目】

 タイトル

 「あの子は記憶を失ったけれど、寿命は戻った」

 4人が地図を広げて大はしゃぎしている

 魔法使いちゃんは地図を逆さに持っている

 台詞:「わたしたち、どこへだって行けるね!」

 

 

 

76:風の名無しさん

 記憶はまあ、しゃーない

 

78:風の名無しさん

 これ! これだよ!

 

81:風の名無しさん

 また旅できるんだ!!!!!!

 

83:風の名無しさん

 寿命戻っただけじゃない、笑顔まで取り戻してる……

 

87:風の名無しさん

 ありがとう世界……ありがとう作者……

 

 

 

 

 

 

 

90:風の名無しさん

 

【5枚目】

 大きな花を見つける魔法使いちゃん

 草原に咲くバカでかい花

 魔法使いちゃん、花を頭に乗せてぴょんと跳ねている

 勇者たちが後ろで笑っている

 台詞:「見て見て〜! おっきな花だよ〜!」

 

 

 

92:風の名無しさん

 花になりたい

 

93:風の名無しさん

 花になってあの子に乗っけられたい

 

95:風の名無しさん

 元気すぎて泣ける……

 

97:風の名無しさん

 こっちまで春だよちくしょう……

 

 

 

 

 

 

 

 

99:風の名無しさん

 

【6枚目】

 山道の夕陽

 頂上で手を広げる魔法使いちゃん

 勇者が隣で手を置き、王女と剣士が並んで立っている

 背中を押すみたいに、風が吹いている

 台詞:「これからも、ずっと一緒だよ!」

 

 

 

 

104:風の名無しさん

 もうこの絵だけで生きていける

 

107:風の名無しさん

 ずっと一緒って言ってくれた……

 

110:風の名無しさん

 ありがとう、ありがとう……これ以上望むものなぞない

 

115:風の名無しさん

 もう何も怖くない

 

118:風の名無しさん

 これが俺たちの……ハッピーエンドだ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

120:風の名無しさん

 

【7枚目】

 倉庫の扉を開ける魔法使いちゃん

 廃墟になった倉庫

 魔法使いちゃんが無邪気な顔で扉を開けている

 背景はあたたかい夕暮れ

 手には何も持ってない、ただ探検しているだけ

 台詞:「秘密の宝物、見つかるかな~?」

 

 

 

 

145:風の名無しさん

  きゃわいいいいいいいいいいい

 

149:風の名無しさん

  探検モードの魔法使いちゃん世界一かわいい

 

153:風の名無しさん

 あれ? なんか、雰囲気が……

 

153:風の名無しさん

  こんな穏やかな夕暮れに、不吉なことなんか起きるわけがない(断言)

 

157:風の名無しさん

  子供かよ……もう護りたい通り越して崇めたいわ……

 

 

 

 

 

 

 

136:風の名無しさん

 

【8枚目】

 埃をかぶった木箱を開ける魔法使いちゃん

 箱の中に、禍々しい一本の杖

 魔法使いちゃんが「わぁ、きれい~」って顔をしている

 背景はまだ明るい

 杖の先端はまだ光っていない

 台詞:「すごーい、魔法使いさんごっこできるかな?」

 

 

 

137:風の名無しさん

 やめろやめろやめろやめろやめろやめろ

 

139:風の名無しさん

 それ触ったらだめなやつ!!!!!!!!!

 

140:風の名無しさん

 でも……まだ光ってないから……まだ……!

 

141:風の名無しさん

 誰か止めて!

 

144:風の名無しさん

 勇者! 王女! 剣士! 今すぐ走ってこい!

 

 

 

 

 

 

 

 

148:風の名無しさん

 

【9枚目】

 杖を拾い上げる魔法使いちゃん

 杖を両手で持ち上げて、嬉しそうに笑っている

 まだ、何も知らない顔

 背景に夕陽の光、ほんの少しずつ杖が赤味を帯び始める

 

 

 

 

 

 

149:風の名無しさん

 

 【10枚目】

  絵はなく、黒の背景に台詞のみ

 

 『また、がんばろうね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

151:風の名無しさん

 ぎゃあああああああああああああああああああ

 

154:風の名無しさん

 やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ

 

157:風の名無しさん

 助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて

 

160:風の名無しさん

 こんなこと、こんなことって……!!!

 

163:風の名無しさん

 守ったじゃん!!救ったじゃん!!!!!

 

165:風の名無しさん

 なのに、なのに、また、また、また!!!!!

 

166:風の名無しさん

 無邪気なまま……命を削るんだ……

 何も知らないまま、また……!

 

(この後、スレは更新されず)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【考察スレ】『逃げる魔法使い』を読み解くスレ

 

1:風の名無しさん

 最終話見た直後にこれ立てた

 もう考えずにはいられない

 

4:風の名無しさん

 あの子、最後まで名前呼ばれなかったの、本当に意図的だと思ってる

 名前がない=どこにも所属しない存在だったってことじゃないか?

 

9:風の名無しさん

 それ、海外のフォーラムでも言われてた

 名前を与えられる=誰かの物語に入るって意味で、彼女はずっとその外側にいたんだって

 

18:風の名無しさん

 寿命の杖の設計が狂ってる。赤が1回で5年て何だよ

 その魔法を何の躊躇いもなく日常で使ってたって事実、改めておかしいだろ

 

23:風の名無しさん

 お湯がぬるいから温めるとか、剣士に空見せるために雲払うとか積み重ねがえぐい

 日常を守るために寿命使うなや

 

28:風の名無しさん

 「計算したんだけどな〜」が一番狂気を孕んでる……

 あの子は悲壮感なかったのが逆に怖い

 

32:風の名無しさん

 本人は本当に“80年で済んだ〜よかった〜”って思ってたんだと思う

 寿命を「自分のリソース」ってだけで見てた

 「助けられてよかったな〜」に直結してるのがもうね……

 

37:風の名無しさん

 「役に立てた」「助けられてよかった」ってあの子の言葉

 あれ、自分が誰かに必要とされることだけが、存在理由だったってことだろ……

 

42:風の名無しさん

 受け取られることじゃない

 愛されることでもない

 役に立ったという事実だけで満足して、消えていった

 

47:風の名無しさん

 王女が旅の途中で「あなた、長生きしそうね」って言ったこと、思い出してしまった

 どんな気持ちで聞いてたんだろう……

 

52:風の名無しさん

 あんなに無邪気に笑っていたのに

 実際は、自分の終わりを、最初から知ってたんだよな

 

56:風の名無しさん

 勇者が「旅が終わったら何したい?」って聞いたとき、

 「特にない、かな〜」って困った顔してたのも……

 

59:風の名無しさん

 今ならわかる

 もう、「その先」を生きるつもりなんてなかったんだ

 

68:風の名無しさん

 「死ぬ」っていうか、「消える」ってことだったんだよな

 存在を主張しない生き方してたから、いなくなっても痕跡が残らない

 

72:風の名無しさん

 それでも、本人は「助けられてよかった」って言ってた

 それだけが真実なんだと思う

 

77:風の名無しさん

 最終話のED、あの焚き火のカップと青い光……

 あれが、“確かにそこにいた”ことの証で、

 でも誰も触れないでいてくれた余白って感じがして、いまだに泣く

 

88:風の名無しさん

 それでも、私たちは絶対に忘れないよ

 彼女がいたってこと、ずっと

 生きてたってことを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【魔法使いちゃん=長命種説は確定】考察スレ Part2【壁画の少女】

 

1:風の名無しさん

 魔法使いちゃん、絶対長命種でしょ

 旅の途中で勇者が見たあの壁画、絶対あの子だって

 

2:風の名無しさん

 壁画の話、覚えてる人いる?

 なんか勇者が旅の途中で寄った古図書館で見つけた

 「数百年前の儀式に立ち会った少女」って壁画

 あの影の女の子、後ろ姿だけど、魔法使いちゃんにそっくりだったと思うんだよね……

 杖も持ってるしさ

 

5:風の名無しさん

 は?

 

8:風の名無しさん

 いやいやいや

 なんかすげー勢いで電波飛ばしてきたな

 

11:風の名無しさん

 長命種って言葉、出てきたのいつだっけ?

 日記じゃないよね?

 

14:風の名無しさん

 たしか研究班の会話で「時の外側にいる長命種という存在がいる」って表現があった

 たぶんそれのことだと思う

 

17:風の名無しさん

 1話からちゃんと観直してこい

 日記のどこにもそんなこと書いてないし、使える寿命は80年くらいって言ってたじゃん

 むしろ命削って戦ってたからこそ泣いたんだろうが

 

21:風の名無しさん

 しかも壁画のカット、3秒くらいで終わったよね?

 その背景の一瞬を見て「伏線だ!」って叫ぶの

 もう病気だよ……

 

25:風の名無しさん

 仮に長命種だとして、なんで日記で「80年くらいで収まった〜」って超満足げなの?

 1000年単位の寿命の人が、80年でピッタリ収めて満足してたら逆に変でしょw

 

28:風の名無しさん

 「一生を賭けて皆を守った女の子」って物語なのに

 長命種とか言い出したらテーマが崩れるんよ

 

30:風の名無しさん

 長命種だったら、あんな風に消える必要なくね?

 仲間に正体明かせば済んだ話じゃん

 それができなかったから悲しいんだろーが!

 

31:風の名無しさん

 お前さ、「壁画の少女=魔法使いちゃん」って、

 よく見たら耳の形も違うし、あれただの旅の守り神って説明あったやつだろ……

 

36:風の名無しさん

 俺はわりとお前の説好きだけど、「考察」と「妄想」の違い、ちゃんと勉強しよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【魔法使いちゃん】考察スレ Part3【日記に泣いた】

 

1:風の名無しさん

 あんなに静かで丁寧な文体なのに、読んでて泣き止めなかった

 

7:風の名無しさん

 明るくて、誰にも怒ってなくて

 ただただ「助けられてよかったな〜」って思ってる

 なんなんだよそれ……

 

12:風の名無しさん

 子供っぽい言い回しとかまったくなくてさ

 むしろ気を使って、そう振る舞ってたのが分かってしまって地獄だった

 

20:風の名無しさん

 「温泉でお湯がぬるいって言われて、ちょっと温めた」

 「王女様が満足そうだったから、まぁいいか」

 いやよくない。よくないって……

 

28:風の名無しさん

 「ちょっとだけ」とか「まぁいいか」って言い方が、本当に普通すぎてしんどい

 本人の中では問題じゃないって処理されてるのが分かるのがつらすぎる

 

36:風の名無しさん

 で、魔王戦で「80年くらいで収まった! やった〜〜〜!」ってはしゃいでるの

 あそこだけ妙に語尾が弾んでて、余計に泣いた

 

43:風の名無しさん

 “これで怒られない”って安心してる子どもみたいな感情が見えてくる

 

48:風の名無しさん

 なのに、それが悲壮とか犠牲じゃないんだよ

 本人はただ「役に立ててよかったな〜」って思ってて

 それが日記全体からにじみ出てて、もう救いようがなさすぎる

 

56:風の名無しさん

 「すごく、すごく楽しかった」って日記の終わり方、

 どこにも悲しみとか寂しさとか書いてないのが逆におかしい

 どんな精神構造してるんだよ

 

66:風の名無しさん

 あれって遺書じゃないんだよな

 むしろ「最後までちゃんと秘密守れたよ〜」って、満足した報告なんだよ……

 

82:風の名無しさん

 ページの隅にちょこんと書かれてた「ばれないようにしよう!」って

 あの笑顔の顔文字、怖すぎる

 

88:風の名無しさん

 だってその時点で、もう寿命使いきってるんだよ……

 

91:風の名無しさん

 気づいてなかったんじゃないんだよな

 「これで助かるなら安いもんだ」って

 贈り物みたいな感覚で寿命捧げてるんだぞ、この子……

 

99:風の名無しさん

 “逃げる魔法使い”って、「愛されることから逃げた」って意味にも見えてきた

 言葉をもらうことも、想いを受け取ることも、全部スルーして消えていった

 

107:風の名無しさん

 どうしてこんな、明るくて丁寧な日記なのに

 読み終わった後、数時間動けなくなったんだろう……

 

114:風の名無しさん

 彼女は寿命を捧げた魔法使いじゃなくて、

 感謝もされずに去っていった女の子だったのかもしれない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【逃げる魔法使い 考察スレ Part4】魔法使いちゃん、結局何者だったのか

 

1:風の名無しさん

 もう何周も見返したけど、未だに分からない

 なんで彼女だけ、どこにもいなかったの?

 

9:風の名無しさん

 EDで手を振る後ろ姿、アレどこなんだろう。背景の草原、作中で出てきてないよな?

 

22:風の名無しさん

 幼なじみだったはずの勇者が、家どころか出生の記録も知らないって

 かなりヤバいよな

 旅に出る前まで一緒にいたのに

 

33:風の名無しさん

 ぶっちゃけ勇者も王女も剣士も、それぞれ彼女に恋とか感謝とかあったと思う

 でも何一つ届いてなかったのが一番つらい

 

41:風の名無しさん

 いや「届かなかった」んじゃない

 最初から「届かせる気がなかった」んだよ、魔法使いちゃん側に

 

47:風の名無しさん

 そういうところが「逃げる魔法使い」なんだよな……

 何かを拒んでたわけじゃない

 ただ、最初から距離を決めてた

 

55:風の名無しさん

 最終話、視聴者にだけ見える彼女の手のひらがあったやん

 あれ、いつもフルーツ持ってた手なんよ

 食べ終わって、全部終わって、何も持ってない手で「またね」って

 あの子がもう持ってるもの、もう何もない

 あの杖すらない

 

62:風の名無しさん

 「役に立てた」「助けられてよかった」ってあの言葉

 自分の存在価値がそれしかないって決めつけてるみたいでつらい

 愛されていいのに、愛されることから全部逃げてた

 

69:風の名無しさん

 本人にとっては「助けられてよかったな〜」って満足感だったのかもしれないけど

 周りにとっては、それだけを遺して消えるなんて地獄なんだよな……

 

76:風の名無しさん

 これ、「魔法使いちゃんを知ってる誰か」が物語に存在しなかったのが怖い

 本当に、誰にも見つけられないように作られたキャラだったんだと思う

 

83:風の名無しさん

 「魔法使いちゃん」って、もうキャラじゃなくて、現象なんだよな……

 癒して、支えて、救って、そして何も言わずに去っていく、っていう象徴

 

91:風の名無しさん

 物語の中で誰一人、彼女の名前を呼ばなかったのって偶然じゃないよな

 呼ばせなかった

 だって、勇者とか王女とか剣士は名前あったじゃん

 「彼女自身が、呼ばれることを拒んでた」のかも

 

104:風の名無しさん

 誰かの悲劇ではないのに、あまりに静かな喪失だった

 ずっと一緒にいたはずなのに、誰もその存在を掴めなかったって……なにそれ……

 

114:風の名無しさん

 みんな、彼女を助けたかった

 でも、彼女はもうとっくに自分のことなんか諦めてたんだろうな

 

119:風の名無しさん

 それが、「逃げる魔法使い」ってタイトルの意味か

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【――文化評論:彼女が教えてくれたこと】

 

 人は、名もなき善意に、いかなる意味を与え得るのか。

 

 『逃げる魔法使い』という作品は、あまりに静かに、あまりに穏やかに、その問いを突きつける。

 

 主人公とされる“彼女”は、物語の中で何かを成し遂げたわけではない。

 魔王を討ったのは勇者であり、剣士であり、王女である。

 彼女はただ傍らにいただけで、ただ“魔法を使っていた”に過ぎない。

 

 だが、物語の最終盤に明かされる「寿命82年6ヶ月の消費」という事実は、その“傍ら”のすべてを根底から書き換えてしまう。

 

 彼女は、他者のために生き、他者のために死に至った。より正確に言えば、「彼女自身の死」は描かれない。描かれないがゆえに、視聴者はその“沈黙”に耐えられなくなる。

 

 彼女の“生の痕跡”は、日記という形式で遺されたが、それは彼女が自らの死を予見していた証左ではない。

 

 あくまで「自分がこの程度、寿命を使えば人間の一生分だろう」という、ひどく無邪気なライン引きに過ぎない。

 

 自らの命に、人間一人の人生を照準として据える。

 

 その事実が、作劇上もっとも残酷であり、視聴者の倫理観を鋭く問う。

 

 

 彼女は、“与えること”に意味を求めなかった。感謝されようとも思わず、誤解されることにも怯えず、何も残さず、ただ風のように立ち去った。

 物語はその不在をもって終わり、観測者たる視聴者には“彼女が居た”という記憶のみが与えられる。

 

 この構造は、物語を閉じるのではなく、永遠に開いたままにする。

 誰も彼女に「ありがとう」と言えなかった。

 彼女は「助けられてよかった」と笑っていた。

 その非対称性が、物語に決定的な断絶をもたらし、救済ではなく沈黙の持続へと導く。

 

 

 我々は、彼女の存在によって初めて、無償の贈与という概念の限界を見る。人は、何も返せなかったものに、どう向き合えばいいのか。

 「自分の一生を、誰かのために使い切る」ことが“存在の証明”たり得るとするなら、その証明は、誰のために行われたのか。

 

 それを解く鍵は、おそらく、彼女の旅路をともにした誰かの、たったひとことに残されている。

 

 ――「ありがとう」。

 

 視聴者がその言葉を呟いたとき、作品はようやく、わずかに閉じられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【逃げた魔法使い】旅の続きは、どこまでもスレ

 

1:風の名無しさん

 あの子は、今もどこかで旅を続けている気がするんだ

 そんな彼女の旅を想像するスレです

 

6:風の名無しさん

 誰にも知られずに、知らない街で

 誰かを助けたり、パンを焼いたり

 知らない空を見上げたりしているかもしれない

 

13:風の名無しさん

 たまに、空に流れる光を見るとき

 そっと思う

 あの子が、どこかで手を振っているんじゃないかって

 

30:風の名無しさん

 あの子、今はどんな景色を見てるんだろうな

 

35:風の名無しさん

 たまに、風の強い日に、誰かの笑い声を聞いた気がする

 きっと、あの子の笑い声だったんだと思ってる

 

41:風の名無しさん

 パンの匂いがすると、今でも思い出す

 焦げたパンを笑いながら差し出してきた、あの子の顔

 

46:風の名無しさん

 夜、星がきれいな日は、なんとなく話しかけてる

 「そっちの旅は、楽しい?」って

 答えは返ってこないけど、それでもいいんだ

 

55:風の名無しさん

 旅の途中で小さな花畑を見つけた

 あの子だったら、絶対に「きれい〜!」って言って走っていっただろうな

 

67:風の名無しさん

 どこかの空の下でさ

 きっと今日も「おいしい〜!」って言いながらフルーツ食べてるんだろうな

 その顔を、想像するだけで救われる

 

73:風の名無しさん

 あの子が今いる場所にも、きっと春が来る

 暖かい風と、咲いた花と、光の魔法みたいな季節

 

78:風の名無しさん

 最後に言えなかった「ありがとう」

 きっと、あの子は聞こえてたんだと思う

 だから、もう大丈夫

 

90:風の名無しさん

 きっと、あの子も、どこかで同じ空を見上げてる

 誰にも知られず、でも、誰かを助けながら

 

95:風の名無しさん

 それでいいんだ

 それが、あの子の選んだ旅だから

 

113:風の名無しさん

 あれで終わったって思いたくない

 でも、終わったのかもしれない

 でも……どっかで生きてるんじゃないかって、思いたいんだよな

 

 

 

 

 

 

 

270:風の名無しさん

 視点が変われば、物語も違う

 彼女が今、どこで何してるのか

 俺たちにはもう分からないけどさ

 それでも、あの世界では物語が続いている、って信じたい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

(エピローグ)

 

 

 

 ぱちり、と私は目を開けた。温かい布団の誘惑を何とか跳ね除け、んー、と伸びをすると、ボキボキ、と背中から健康的でない音が聞こえた。そのまま、洞窟の壁を見上げる。いち、に、さん……。うん、そろそろだ。あの王宮から逃げ出して、そろそろ10年が経つ。

 

 

 なぜ10年が大事なのか。これまでの経験から私は知っている。人というものは、ほんの10年くらい経てば、過去に問題があっても水に流してくれるものなのだ。

 

 そろそろ、あの王宮の研究員たちも、「杖の解析結果がおかしかったけど勘違いかな?」と思ってくれている頃だろう。というかいい加減、洞窟の中で寝泊まりするのも飽きてきたし。

 そこで私は洞窟の寝床で、作戦会議を開始した。なんでもこういうとき、人間は評決を取るらしい。

 

 

 「そろそろ街に降りてもよくない?」「うん、いいと思う!」会議に参加しているのは私1人しかいないので、もちろん出た意見はすべて全会一致で賛成である。会議は非常にスムーズに進み、賛成多数で「街に降りてもいいよ説」が無事に可決された。

 

 勇者たちも元気にしているだろうか。まあ、私が日記に挟んでおいたメモに、「大丈夫」とか「またね」とちゃんと書いておいたし、そんなに心配はしていないはず……さて。

 

 

 

 

 

 私は、手早く荷物を纏め、数年の宿としていた洞窟を後にした。いちおう、念のため、杖は洞窟の中に隠しておいた。また調べられたらたまったものではない。気づいたらなくなっていた、と弁明する準備はできている。

 

 

 

 洞窟の外に広がる草原を、私は1人、街に向かって降りていく。久しぶりに人里に降りるので、ちょっと自分の匂いが気になり、確認。うん、特に感じないけど……。いちおう、お風呂に入っていった方がいいかもしれない。身だしなみ、大事。

 

 ……そういえば、前にみんなで行った温泉宿、けっこう雰囲気良かったっけ。ここからそんなに遠くなかったよね。寄っていこうかな。

 

 私がそんなことを考えていた、そのときだった。

 

 

 

 ――ふと、後ろから、誰かに呼ばれたような気がした。

 

 

 

 

 

 振り向いて辺りを見回してみたけれど、誰もいない。風に揺れる緑の草原と、遠くには、私の元ねぐらである、洞窟だけ。そういえば、あそこにもお世話になったよね。

 

 

 

 

 私は、そちらに向かって、大きく片手を振った。

 

 

 

 

 

 

「……うん。じゃあ、行ってきまーす!」

 

 

 

 

 

 

 

 

                     (終)

 

 

 

 

 




これにて完結です!

読んでいただいた皆様、ありがとうございました!

また、感想や評価をくださったり、しおりやお気に入りに入れていただいたり、ここすき(こんなのあるんですね)してくださった方々、ありがとうございました。励みになりました。皆様のおかげで、無事に完結することができました。感謝です。
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