オーバーロードに野生のラスボスが現れたの竜王RPするプレイヤーが居る作品   作:野生の生蛇

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第10話

「──さて、これで無事……無事? 街に入ることができたな」

「はい。モモンガ様」

 

 ベットが二つあるというのに横並びで座る。

 アルベドが胸を押し付けようとするが感じられるのは魔法金属の硬さだけである。

 

「では、情報の整理と行こうか」

 

 

 

 

 

 

 モモンガたちが異世界に来て凡そ三日。

 三日間、モモンガはナザリックの把握に努めた。

 異世界転移で何か変わったか、変わってないか──結果は特に問題なし。

 強いていえばアルベド達NPCやモンスターに自我が芽生えたことぐらいだが。

 

「しかしよかったのでしょうか? 私がモモンガ様の護衛で……いえ、決して嫌とかそういう訳では──」

「アルベドの懸念もわかる。だが現状適したのがお前しかいなかったからな」

 

 アルベドは本来守護者統括であり、至高の四十一人が居ない場合の全権代理者である。

 無論フレーバー……肩書だけではあるが、それでもナザリック内の地位は他の守護者等よりも一番上に座する。

 そういった地位を抜きにしてもナザリック運営に関して守護者統括というナザリックの把握に秀でたアルベドが不在というのは少々痛い。

 

「まぁ、ナザリックはデミウルゴスと……パンドラズ・アクターに任せれば問題はないだろう……多分」

 

 パンドラズ・アクター。

 モモンガが唯一作成したNPCであり、その能力はアルベドにも匹敵する。

 

 現在のナザリック運営はデミウルゴス主導の元、パンドラズ・アクターが補佐として動いている。

 といってもナザリックは現状大きく動いてはいない。

 単純にまだ"やれることがない"からだ。

 精々がトラップの見直しや侵入者対策。地形を弄ったことによる変化の確認程度であり、大したことはない。

 

『モモンガ様』

「と、すまんなアルベド──メッセージだ。どうした? アウラ」

 

 

 アウラ・ベラ・フィオーレ。

 ナザリック第六階層の守護者の一人であり、ダークエルフの幼子だ。

 容姿こそ可憐であり庇護欲をそそる姿だが侮ることなかれ。

 そこらの人間よりも遥かに強く、レンジャーやモンスターテイマーとしての能力に長けた、群での最強の存在だ。

 

『はい。ご命令通り森の探索時に集団──エルフ。ゴブリン。オーガの街を発見しました』

 

 アウラはナザリックにほど近い森──トブの大森林の調査を命じられていた。

 何がいるのか。何が無いのかを知るために。

 

「なに? そうか。誰にも気づかれず探索はできるか?」

『はい。問題なく可能です』

「そうか……いや、やはりなしだ。この世界の現状が解らない以上下手に刺激するのは危険だ。即刻ナザリックに戻りこのことをデミウルゴスにも報告しろ」

『畏まりました』

 

 同時に伝言の魔法が終わる。

 

「──全く、未知を知るというのは思ったよりも苦労する……」

 

 そして同時に、楽しい。

 そう思う。

 

 ユグドラシルは"未知を探求する"ゲームであった。

 ポーション一つの作り方すら──材料すら教えられることのない、"すべてを自分で探す"必要のあるゲームだった。

 まるで初心者に戻った気分だと、モモンガは心が湧き上がり──

 

「——沈静されるか」

 

 こういったときの鎮静化は無駄だな、と少々苛つくも沈静化されるほどではない高揚感がまた湧き上がる。

 

 完全な未知。近道も何もない。全てを手探りで探さなければならない現実。

 これに心躍らず何がゲーマーか。モモンガはこれまで以上に無く高揚している。

 

「モモンガ様」

「どうした?」

 

「やはり、プレアデスや他の守護者を使うべきだったのでは? そうでなくても隠密系のシモベを召喚すれば、より早く情報の入手が可能では──」

「……まぁ、そうなんだがな」

 

「……っ! 申し訳ございません。出過ぎた真似を──」

「いや、謝ることはない。実際それも検討していたが……」

 

 現状、ナザリックから出ている者はこの場にいる者達のみ。

 護衛としての隠密系のしもべすらなく。外にいるのはモモンガとアルベド。そしてアウラの三人だけだ。

 いや、現状アウラはナザリックへの帰還が決まった。もはや二人のみだろう。

 

(それも考えたんだけど──うん。リスクが高すぎるな)

 

 モモンガ達はこの世界について知らなすぎる。

 常識一つ、何もわからない。

 言葉が通じることすらわからず、あらゆる対策を施した上でこの街に来た。

 最悪の場合、自分が死ぬことすら予見したうえで。

 それらは無駄にはなっていないと、モモンガはそう思う。

 

(何も知らないというのは、やはり危険だ)

 

 

 "よろしく! "と握手をしようとすれば"こいつヤバい奴だ! "と認識される可能性がある。

 誇張でも何でもない。何もわからないのだ。

 中指をたてるのが相手への挑発の様に、動作一つが何を意味するかわからない。

 そもそも魔法があるのか? スキルは? モンスターという概念は? 

 なにも、何もわからない。

 自分がこれまで培ってきた常識が何も通じることはない異世界。

 

 ……本来ならばカルネ村に赴き、村人との会話。そして陽光聖典の捕縛による情報の入手があった。

 しかしながらこの世界ではそれがない。結果モモンガは必要以上に警戒する必要がある。

 

「……やはりだめだな。この世界について何も知らない以上やはり旅人……"冒険者"以外の選択ができない。その状態で複数の冒険者を送ったとしても確かに情報の入手速度はますがそれだけだ。リスクが大きすぎる」

 

 商人なりスパイなり遅れたら楽だが、それをした瞬間全世界を敵に回す可能性がある以上やはりできないと。モモンガはそう判断する。

 

「やるなら最短でも一月後──この世界について把握出来てからだな……近場に犯罪者とかいれば話が早かったんだが」

 

 この国治安めっちゃいいしな、とぼやく。

 

 そう、この国──リ・エスティーゼ王国は非常に治安がいい。

 モモンガは知る由もないが、もちろん黄金の姫ラナーの努力の賜物である。

 かつては山賊やら盗賊やらが跋扈しており、三歩歩けば盗賊に合うような国だったがもはや賊はこの国にはいない。

 元八本指を取り入れることで犯罪者が居やすい場所や犯罪に走りやすい原因の究明が終わり、犯罪率の低下に役立ったのだ。

 無論意味も無く犯罪をするような者もいるが、そういった者達は普通に王国騎士に殺される。

 結果生きるために犯罪しなければならない者が消え、洞窟などに隠れ潜んでいた者はガゼフ・ストロノーフやブレイン・アングラウスに切り捨てられた。

 まぁこれだけできたのは転移魔法が使える青の薔薇等が居たということも大きいが。

 

 結果として拷問などによる情報の入手が出来ていないからか、慎重に慎重にナザリックは動いている。

 しかしこれは"初動が遅れた"というだけだ。時間が経ち情報の入手と精査が終われば派手に動くことができる。

 

「ま、残りは明日の講習に期待……なんだが」

 

 チラリ、と横のアルベドに視線を向ける。

 

「脱ぎましょうか?」

「脱がんでいい」

 

 

(重いんだよなぁ……)

 

 期待が、忠誠が。

 重く、重くのしかかる。

 移動阻害に対する耐性はあるはずなのに、水の中を歩くかのような重量感がモモンガを襲う。

 

(そんなに期待されても、俺はただの一般人だぞ。サラリーマンだぞ)

 

 確かにモモンガはギルドマスターにはなっていた。しかしそれはほぼほぼな目だけの名誉職のようなものだ。

 仲間内のいざこざの解決やイベント時に多数決を取ったりなど、誰にでもできることしかできないとモモンガは思う。

 魔法の取得数や記憶力では自慢できるかもしれない。だがそれは戦闘能力や交渉術の類であり、チームのリーダーどころではない組織の頭というのは無理だろうとモモンガは悩む。

 しかも明確に頭がいいと設定されているアルベドだ。如何に他に候補がいないとはいえ知恵者のアルベドが相手となれば

 

 

 自分が凡人だとバレるのではないか。

 

 沈静化される。

 バレるよりは、ばらした方がいいのかもしれない。

 これから先、どれだけ短く見積もっても一年は冒険者として共に行動する。

 ならば確実にバレる機会というのはあるはずだ。その時に"騙していたのか"と憤慨されるよりは、自分の意思でばらした方が──

 

「……モモンガ様?」

「────いや、何でもない」

 

 

 

 

 問題を先送りにする。

 

(……もしも、バレそうだったり、どうしようもできなくなったら……打ち明けよう)

 

 

 

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