オーバーロードに野生のラスボスが現れたの竜王RPするプレイヤーが居る作品   作:野生の生蛇

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第13話

「で、実際どうしようか」

 

 ナザリックにあるモモンガの私室。

 そこに埴輪が一人──あるいは一体追加されている。

 

 黄色い軍服を纏った埴輪だ。

 見ていると虚無なのか疑いたくなる丸が顔に三つついたのっぺらぼう擬き。

 耳すらない異形。その手もまた異形だ。関節部分などなく粘土のようにぐにゃぐにゃ動くし、指先は三つしかない。

 彼の名はパンドラズ・アクター。モモンガが作り出した唯一のNPC。

 無論彼にも事情は──モモンガが凡人だということは話してある。

 

「……現状ではどうしようもないですね」

「ほう、その理由は?」

 

「"竜王ラ―ドゥンの目的がわからない"からですね。世界征服なのか世界崩壊なのか。あるいは別のことか──それが解らない以上対策もないです。

 まぁできるのはこれまで通りの情報収集と、付け加えるなら守護者やモンスターたち──NPCの訓練といったところですかねぇ」

「訓練、ね。それは同意したいのだけど何処でするの?」

「う~ん……六階層ならどうだ? あそこの円形闘技場なら──」

「それも考えましたが、レベル100同士で模擬戦でもすると闘技場ぶっ飛びますね。自動修理ではどうにもならないので金貨がかかってしまいます」

「──確かに、そうね。……特殊技能禁止での鍛錬なら──」

「いや逆にそれだと身に入らんし逆効果じゃないか? スキル禁止となると」

 

 ナザリックには自動修理機能がある。

 壁が壊れたり床が壊されてもある程度は自動で修理してくれるモノだ。

 天上の剣(ソード・オブ・ダモクレス)や第十位階魔法の破壊となると自動修理はできず、追加で金貨を消費する必要がある。

 それにレベル100の戦いとなれば壁も床もぐちゃぐちゃになって修理費が盛んでしまう。

 この世界でユグドラシルの金貨を会得する方法が余りない以上無駄に浪費するのは避けるべきだ。

 これがユグドラシル時代──ゲームだった頃ならばFF(同士撃ち)禁止で壁など壊せないし、幾つか設定すれば壁の破壊の有無も選べたが、異世界に来てその機能は失われてしまった。

 

「むぅ、仕方ないな……ワールドアイテム──山河社稷図を使うか」

 

 アルベドとパンドラズ・アクターの二人が驚愕する。

 

「お、お待ちくださいモモンガ様! そのようなことでナザリックの秘宝を──」

「いや。これは必要なことだ。それに道具はただ飾るだけでは意味がない。使わないとな」

 

 ワールドアイテム:山河社稷図。

 効果は一定範囲を異空間に置き換えるという、まさにワールドアイテム(チート)の名に相応しい力を持つ。

 選べる異空間は多種多様。一たび使えば千の軍勢だろうと溶岩の中に落として殺す──なんてことも可能となる。

 それを使い、異空間に置き換えれば──確かに破壊をされても元通りだ。

 

「流石に使用はナザリック内のみ。かつ使用する時は脱出路の確保をしておけばいいだろう」

「付け加えるならば、訓練時はお互いにやりすぎないように厳命。かつペストーニャ殿を常に待機させて回復魔法を使えるように。ペストーニャ殿の魔力が三割切ったらそれまで──でしょうか」

「ん-、更に言うならばその訓練自体もある程度日付を決めた方がいいですねぇ。と言っても現状特に出来ることはないので……まぁ三日に一回ぐらいの頻度でいいでしょうかね?」

「確かにな。竜王の機が変わって攻めて来た時に訓練後で戦えませんは話にならんし──」

 

 

 

 ■

 

 翌日。エ・ランテル内。

 夕方。東へ太陽が沈みかけ、鴉が無く時間帯。

 子供がもう帰ろうと家路に急ぎ、冒険者たちも仕事を終え家か宿に帰る時。

 道の中央を征く一団が居た。

 整備された道を行くは馬車。荷台にはこれでもかと摘まれた薬草が摘まれたマジックアイテムでもある箱。

 御者はまだ年若い男。目元まで伸びた髪の毛で顔が少しわかりにくいが、この都市で最も有名な人物であるンフィーレア・バレアレ。

 馬車を守るように胸にドックタグをつけた冒険者の一団がついている。

 その中でも異様な雰囲気を放つ者が二人。

 まるで誰かに体を見られたくないかのように体を隠している。

 一人はローブを纏い、仮面を着けた魔法詠唱者。もう一人は全身鎧を着けた恐らく女戦士。

 腰から翼が生えているのはマジックアイテムか、あるいは人間以外──亜人種か。

 そんな一団は気楽にお喋りに興じている。

 

「いやーしかしピニスンさんの薬草園マジすげぇな。大豊作だ」

 

 弓を背負った軽薄そうな男──ルクルットが話を開いた。

 それにこたえるように魔法を詠唱するための杖を本来の目的で──歩行の補助として使っているニニャが答える。

 

「一昔前は自生しているのを摘むだけでしたからね。これも竜王がトブの大森林を掌握したからできることです」

 

 ニニャの何気ない一言に疑問を抱いたモモンガが問いかけた。

 

「自生しているのを? 植物園や栽培などはしていなかったので?」

「ああ、それなんですがどういう訳か栽培──街中で薬草を育てても効果が落ちるんです。だからこれまで危険な森に採取しに行かないと行けなくて」

「なるほど。それが竜王の力で危険性が無くなった、と」

「おう、凄いよなー直接王国に何かした訳じゃないのに、王国もよくなってきた」

 

(うーん。ユグドラシルにもあったフィールド効果かな?)

 

 フィールド効果。

 一部の種族や職業を持つ者は特定のフィールドで強くなれる。

 例えるならフォレストウォーカー。かの職業は森の中でなら地形を──根っこや石──を無視して常に全力で走ることができる。更に上位職業になれば森に居るだけでステータスが向上する。

 それと同じようにンフィーレアなどのアルケミストが採取する場合"森"というフィールドで採取した物の効力が上がりでもしていたのか、あるいはもっと別の要因か。

 もしくは単純に森にあって街にない──地面の栄養等が足りていないのか。

 けど、とルクルットがいう。

 

「これ、ザリュースさんやピニスンさんに摘んでおいてもらって、ンフィーレさんは回収するだけってのがよくね? 時間もかかるしさー」

「あーと、それも考えたんですが薬草って摘んで時間が経つと効果が落ちるんです。保存(プリザベイション)をかけるかマジックアイテムを使えば対処できるんですが

 量的に複数の魔法詠唱者が必要ですし。マジックアイテムとなると今持っている量の倍は必要になります。それに摘むと言っても詰み方一つで効力も変わるので……」

 

 そういうことをやるならもっと規模が大きくなってからじゃないと無理、とンフィーレアは付け加えた。

 

「ま、何物も上手くはいかないということであるな」

 

 そうこう話しているうちに目的地であるンフィーレア・バレアレの家に着く。

 

 収穫できた大量の薬草が詰まった箱を家の中に運んでいく。

 無論モモンガもアルベドも手伝う。ステータス的には複数運ぶこともできるがバランスや何処に置けばいいかもわからないので一つずつだ。

 家の中にも所狭しと薬草が詰められている。ここは主に貯蔵庫らしく錬金に必要な道具の類は一切ない代わりに壁全ての戸棚がつけられ容量を上げている。

 薄暗いが天井に<永続光>(コンティニュアル・ライト)の効果が付いたマジックアイテムがあり、部屋を照らしている。

 一人一人一箱ずつンフィーレアの指示に従い置いていく。

 数が数。部屋に置いてさようならでは筋力の無いンフィーレアと祖母では動かせないのでこれもまた依頼に含まれている。

 

「す、すごいですねモモンガさん……同じ魔法詠唱者なのに軽々運ぶなんて」

「ん? そうですか」

 

 そんな時、箱一つ持ち上げることすら苦労しているニニャに話しかけられる。

 

「確かにモモンガさん凄い楽に運びますね」

「うむ。よく考えれば旅の中でも疲労一つ見せていなかったであるな」

「僻地で研究してたってのに筋肉凄いんだな」

 

(やっべ)

 

 やらかした。

 モモンガの設定は今のところルクルットが言ったとおり"僻地で研究していた魔法詠唱者"である。

 そのためこのような力があるというのは、確かに筋力が少ない傾向にある魔法詠唱者には可笑しいかもしれない。

 

「モモンガ様は健康の為にもある程度トレーニングをしていらっしゃたんです。と言っても戦士職の方たちには及びませんが──ですよね。モモンガ様」

「──え、えぇ! そうなんです。たまに体を動かしてインスピレーションを沸かせたりしていたので」

 はは、と軽く笑う。

 

(ナイスだアルベドォ!)

 凄いぞアルベド。流石だアルベド。流石は守護者統括アルベド。

 思わず心の中で称賛し精神が沈静化させられる。

 ちなみにアルベドの設定は"モモンガの護衛"である。

 僻地から出た時にモモンガが勧誘した腕利きの護衛。

 尚本人は"モモンガの妻"という設定を押してきたがモモンガとシャルティアに却下された。

 

「──ありがとうございました。こちらが依頼達成の証明書になります」

「はい。ありがとうございました」

 

 一党を代表しペテルが受け取る。

 

「なるほど。報酬はこれを組合に持っていくんですね」

「えぇ。前は直接報酬を渡していたんですが中抜きや規定より少ないというのもあったので、変わったんです」

 

 ンフィーレアが渡したのは木の板。

 板にはンフィーレアの名前が刻まれている簡素な代物。

 かつては依頼のみ冒険者組合に頼み、報酬等は依頼達成後依頼主から直接貰う、というシステムだった。

 だがこれには幾つか問題があり、前述したように報酬が足りなかったりする場合も多々あった。

 多いのは主に村からの依頼。ゴブリンが出たやオーガが出たなどの依頼を受け退治したはいいモノの村に報酬が無かったという事例。

 更には貴族からの依頼も問題。逆に報酬が多かったり少なかったり、金銭以外で支払おうとする者もいた結果がこれである。

 これもまた黄金の姫の改革の一つであり──まぁ、変わった理由はこれ以外に大きい要素があるが、この者達では気づけないだろう。

 兎も角ただの木の板に過ぎないこれを組合に持ち込めば既定の報酬が貰えるのである。

 結果として依頼途中に追加の依頼を受けたり別途報酬を受けたりするのに依頼主も組合に来なければいけなくなったり度面倒ごとが増えたが。

 

「ではンフィーレアさん。これで。ありがとうございました」

「こちらこそありがとうございました」

 

 頭を軽く下げ、ンフィーレアの店から出る。

 数歩、歩いたところでニニャが会話を切り出した。

 

「しかし、森の賢王には会えませんでしたね」

「それなー。数百年を生きるっていう魔獣。一目だけでも会いたかったぜ」

「確か、今はエルフの都市に居るんだっけ?」

 

「……森の賢王? それにエルフの都市? 幾つか聞いても」

「おっモモンガさんも興味ある感じ? エルフの都市って言うのは──」

「確か、昔トブの大森林にあったというエルフの国を、竜王が復興させたていう国ですね。薬草園も確かエルフの都市の一部とかだったはずです」

「なるほど」

 

(アウラが見つけたエルフ達も、関わっていたのだろうか?)

 

 そんな、気の抜けたことを考えていた時。

 

 がしゃんと、何かが砕けた。

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