オーバーロードに野生のラスボスが現れたの竜王RPするプレイヤーが居る作品   作:野生の生蛇

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第17話

 街中に一人の女が居た。

 美女、という単語がこれ以上ない程にあっている女。

 紅の髪に黒だけで構成された瞳。

 女性にしては高身長──鍛え上げられた戦士の様に背が高い。凡そ180cm程の長身。

 胸と尻。女性的な部分もまた強く主張している。特徴的なのは頭部と尻。

 頭からは一対の角。山羊の様な角が髑髏を巻いている。

 尻からは蜥蜴の尻尾が生えうねうねと動き回っている。

 また着ている服もまた異様。

 一着で家が買える程の値段がする服。バトルドレス──とでも言うべきか。動きやすさと美を兼ね備えた髪色と同じ紅の衣装。

 構造上尻部分と背が空いているのは見る者が見れば欲情しそうだ。

 

 だが誰も欲情しない。感じるのは恐怖。

 

 誰もが恐れ、崇め、畏怖する。そうするしかない怪物。

 見てくれに騙されては行けない。ただの美女にしか見えないが正体は怪物──いや、そんな言葉すら生易しい超越者。

 たった数日で国を幾つも滅ぼし、新国家を立ち上げた国家元首。

 

 竜王ラ―ドゥン。その人なのだから。

 

 

 そんな中、竜王ラ―ドゥンは周囲の視線と感情を敏感に感じ取っていた。

 竜種が持つ高度な知覚能力を用いて、民の感情を把握し、歓喜する。

 

 気持ちがいい、と。

 

 自分が支配者。それ以外は支配されるべき者。

 誰もが自分を畏怖する。崇める。王だと称えてくれる。

 何と気持ちのいいことか! 竜王は歓喜した。

 

 かつてこの地に来た同胞──六大神や八欲王もこのような気持ちだったのだろう。自分より先に感じていてずるいと子供の様な事さえ思えてくる。

 

 女と目があった。畏怖を抱き頭を下げている。

 屈強な男と目が合う。恐怖を抱き膝を付いてきた。

 

 何と心地よいことか。現実での富裕層はこんなことを感じていたに違いない。

 

 現実では絶対に出来ない。考えることすら許されないことができる──そのことを思考するだけで絶頂する気分にあった。

 

 そうして歩くこと数分。屋台が並ぶ地にたどり着いた。

 モンスターの肉や家畜の肉の焼ける匂いがする場所。

 幾つもの匂いが混じっているが竜王はこれもまたいいと歓喜する。

 何かいい店は無いか、と最も人気の無い店に向かい歩く。

 道中に周囲の人間が避け、店主がこちらに気づき「え? 俺?」と顔を驚愕にそめている。

 

「店主。串焼きを一つくれ」

「は、はい! わかりました!」

 

 恐怖と尊敬が混じった声だ。店主は即座に保存の魔法が掛かった容器から串焼きを一つ差し出した。

 

「幾らだ?」

「い、いえ! 国王様から──」

「……それは少し困るな。対価という物は何に於いても必要だ」

「わ、わかりました……銅貨十枚になります」

「そうか」

 

 正しい値段だ、と竜の知覚で相手の言葉が嘘かどうか判断する。

 即座に虚空から物質──アイテムボックスから財布を取り出し開く。

 中に詰まっているのは主に銅貨と銀貨。こういった細かい買い物専用の財布。

 

「これで」

「ありがとうざいます!」

 

 面白いぐらいに頭を下げ、店主が感謝を伝えた。

 

(嗚呼、嗚呼、何と心地よい)

 

 肉を噛み締め、串ごと喰らう。

 現実では決して食せない肉だ。それをこのように手軽に食べれる。

 それだけにあらず。国家元首としてこれよりも更に素晴らしい食事を毎日のように取れる──ただ毎日豪華な食事となると飽きが恐ろしいので食のレベルは下げているが。

 

 さて次は何をしようか。

 

 政務をさせに来る神官が来るまで竜王は街を練り歩いた。

 

 

 

 

 ■

 

 エ・ランテル。冒険者組合の一室。

 非情に広い部屋だ。モモンガが講習を受けたのと同じか──それ以上に広い。

 だが設備が違う。椅子一つとっても明らかに値段が違うとわかる。それ以外にも防音対策などもされている高級な部屋。

 その部屋に五人の者が居た。

 

「今回の件。本当に感謝する……!」

 

 そのうちの一人。男が頭を下げた。

 名はパナソレイ・グルーゼ・デイ・レッテンマイア。

 豚の様に肥え太った体。貴族らしい豪華な服。

 だが見てくれに騙されてはいけない。その外見に対し知性は非常に高く、王直轄領であるエ・ランテルにおいて他貴族の謀略をものともしなかった曲者だ。

 そのパナソレイが頭を下げ、感謝を伝えている。

 

「いえいえ。都市長。私は冒険者として責務を果たしただけです」

 

 軽く答えたのは全身をローブで覆った素肌が見れない者だ。

 顔には仮面。服はローブで姿を隠している。

 だがローブは見る者が見れば一目で高級品とわかるだろう。これだけでこの者が非常に力と金銭を持っているとわかる。

 勿論モモンガだ。例え都市長の前でもアンデッドとバレるわけにはいかないので姿を隠す。

 逆にアルベドは姿を晒している。黒いドレスを纏う姿はどう見ても冒険者の姿ではない。だが骸の竜(スケリトル・ドラゴン)を蹴り上げ両断できる程の力を持つ者。

 

「そうは言うがモモンガ君。依頼でも無いのに事態解決に動いてくれた。このことには感謝してもしきれないとも……!」

 

 男がまた頭を下げた。

 プルトン・アインザック。冒険者組合長。

 元冒険者としてがっしりとした、この中でも最も筋肉質な体をしている。

 

 

「さて。今回の件だが非常に厄介なこととなっている」

 

 と、この中で細い──流石にモモンガには劣る──体を持った者が声を出す。

 優男、という印象がこれ以上ない程に合う男。魔術師組合の組合長であるテオ・ラケシルだ。

 なんか神経質そうだとモモンガは失礼なことを考えた。

 

「まず。今回の件が起こった原因が、これだ」

 

 懐からラケシルは石の破片を取り出した。

 何処にでもある──道に落ちてそうな石。

 

「……こんなものが、今回の件の原因だと?」

「ああ。と言ってもその一部ですが」

 

 パナソレイの疑問にラケシルが答えた。

 

「先日ゼロ──警備隊長が捕らえた女がすべて吐きました。ンフィーレ・バレアレ氏の誘拐理由。自身の所属。全て──その中。原因と思われたのがこれです」

 

 クレマンティーヌは捕らえられた。

 そして、全てを話した。隠すことなく。

 どういうことか──そのことに全員が疑問を抱いたが、話した内容がヤバかった。

 元漆黒聖典隊員。現ズーラーノーン所属。法国から盗み出した秘宝。

 

 単純に妄想で片付けられる言葉ではないモノばかり。いや妄想の方が助かっただろう。

 だがそれを事実として受け入れざる負えない。事実クレマンティーヌはゼロと──アダマンタイト級と戦いが成立するほど強く、国の暗部を実際に見て来たかのように話す。

 道中目から光が消えていたのも闇を知っているからだろうと尋問菅は言った。

 

「これは死の宝珠──の欠片です。持つ力はアンデッドの支配力の上昇と所有者の精神操作

 捕らえた女……クレマンティーヌが言うカジッちゃんなる者の死体を調べましたが、経歴は不明。

 ですが脳細胞が通常より少なく。またモモンガ氏画見たというアンデッド。実際に現場に残っていた死体から考えるに全て事実でしょう」

 

「……ということは、今も精神を操られている者がいると?」

「いえ。恐らくその可能性は非常に低いと見ていいでしょう。

 何処までの規模で精神操作が出来るのかは不明ですがこのアイテム自体スレイン法国にて管理されていた物らしく。

 カジッちゃんなる物が盗み出した可能性が高いです。ですのでこのアイテムが街にあるという可能性は考えなくてよいかと……それに」

 

 一拍置いて、ラケシルが続けた。

 

「この街に複数の"死の宝珠"があるというのなら──既に出来ることはありません。まぁ対策も何も出来ないので。考えるだけ無駄ですね」

 

 そう。そうなのだ。

 

 死の宝珠は生者を操る。本人や周囲の者が気づかないレベルで。

 クレマンティーヌはカジッちゃんと親しかったという。だが最後の最後──死の宝珠がカジッちゃんを乗っ取るまで死の宝珠のその力に気づけなかった。

 更に死の宝珠の外見も問題。川にありそうなありふれた石。子供が拾った石一つに躍起になって鑑定魔法をかけて回る訳にはいかないし、街に石など幾らでもあるし幾らでも持ち運べる。

 誰がただの石にそのような恐ろしい力があると思うだろうか。手荷物検査時にマジックアイテムの類は探知・鑑定されるが石に対して鑑定するようなことは無い。

 

 如何にスレイン法国の秘宝の力があったとはいえ、アンデッドの大群の召喚に骸の竜(スケリトル・ドラゴン)の召喚。

 更にモモンガの発言を真とするならば既知のアンデッドの融合による上位のアンデッドの作成。

 流石にスレイン法国にて管理されていた抱けはある。国宝にも匹敵。ないしは上回る程だ。

 

「このことについて。モモンガさん。あなたの──そう。第四位階魔法が使えるあなたの意見が欲しい」

 

 少し目を輝かせながら、ラケシルが問いかけた。

(いやそんなこと全然わかりませんけど???)

 

 モモンガは混乱した。

 現地の特殊なアイテムだ、とは思っていた。だがこれほどまでに凄まじいとは思ってもいなかった。

 確かに見ずぼらしい外見に反して悍ましい力を持つアイテムというのはユグドラシルにも存在する。ワールドセイバーなどがいい例だ。

 

「……そうですね。私としては、まぁごく普通に──同じような事が起きないよう墓地の見回りの強化

 人気の無いところで何かされてないかの警備の強化、ですかね」

 

 至極当然。当たり前のことしかモモンガは言えない。元がただのサラリーマンに過ぎない故。

 

「——確かにそれぐらいしかできない、か」

「うむ。では次の問題だが……これを」

 

 パナソレイが声を出し、アインザックが立ち上がる。

 

「モモンガ君。これを」

 

 手渡されるのは袋。

 ジャラジャラという金属音を鳴らす大きな──モモンガの手には収まらない程大きい袋。

 

「これが今回の件に対する報酬となる。重ね重ね礼を言う……この街を救ってくれて、ありがとう……!」

「え、いや、あの。これだけ渡されても困るというか。ここまでのことをした覚えは無いというか」

「何を言うモモンガ君! アダマンタイト級の相手をたった一人で倒し、街を救ってくれた英雄だ! もっと誇ってくれてもいいのだよ」

「ああ。それに今の君のランクはミスリル──本当ならアダマンタイトにしたいのだが、流石にまだ無理だった。直ぐにアダマンタイトになれるよう手配しよう」

 

(みっ")

 

 モモンガの心が弾けた。

 辞めてくれ。ここまで期待しないでくれほめたたえないでくれこっちはただの一般人だぞ畜生。モモンガは心の中で叫んだ。

 

「——ありがたく頂戴させていただきます。都市長。組合長」

 

 変わりに、アルベドが答えた。

 それに合わせ、モモンガが──沈静化の終わったモモンガが答えた。

 

「この報酬に合うだけの働きは、まだ出来ていません。ですが必ずやこれだけの報酬と期待に答えれるよう努力いたします」

 

(これでいいよね? あってるよね?)

 不安を抱き、アルベドを見る。

 大丈夫です。とアルベドは目で訴えた。

 

 ノックが入る。

 こんこん、という優しいノック。

 

 入れ、と都市長が答えた。

 

「失礼します」

 

 入ってきたのは鎧を纏った少年だった。

 まだ若い。青年ですら無い者。青年と少年の狭間──その様にすら感じられた。

 

「ラナー殿下がお見えになりました」

 

(何? ラナー……黄金の姫だと?)

 

「では。モモンガ君。ついて来てくれるかね?」

 

 ──はい? 

 間抜けな声が出そうになるのを、気合でモモンガは抑えた。

 

 

 

 ──エ・ランテル。地下牢。

 石性の階段。

 埃一つ無い綺麗な道。モモンガのよく知る牢──ゲームの物とは違い生活感がある。

 だが気分的にはいいモノではない。見てくれが良くてもここが"地下牢"という事実はモモンガの気分を下げる。

 

 案内するのはミスリルの鎧を纏った少年──名はクライムという。

 そして冒険者組合長プルトン・アインザック。

 モモンガとアルベドの二人組。

 

 最後に──黄金の姫。ラナー。

 

 既に姫という地位ではない。しかし長いことそう呼ばれていた為定着してしまっている二つ名。

 黄金の髪を靡かせ、青い宝石にも思える瞳を持つ少女。

 黄金という二つ名がこれほど似合う者は居ないだろう。それにナザリックの──"美"を求めて作られた者達と遜色ない……あるいは上回る美貌。

 天然物でこれとは。異世界とは恐ろしいとモモンガは戦慄した。

 

「この先です」

 

 クライムが扇動した先。

 そこは牢屋だった。広さはそこそこ。犯罪者を入れる場所ならば平均的な地。

 簡易的なベッドとトイレ。そして机だけの部屋。

 

 そこに女が一人、いた。

 金髪のボブカット。煌めくような紫色の瞳。

 まるで借りてきた猫用に大人しくしている女だ。

 手には天井と鎖で繋げられた枷がつけられており、自由に動けるのは部屋の中のみ。

 鉄の鎖ではなくミスリルの鎖。如何に英雄級であろうと破壊は困難。力業による脱獄は非常に厳しいだろう。

 だが不可能ではない。英雄級とはそれ即ち単独で戦局を変える超越者。装備次第だが何万の軍をたった一人で殺し尽くせる者。

 ならばこの女が大人しくしているのは即ち自身の意思による物。

 名はクレマンティーヌ。首謀者の片割れ。

 

「──こんなところに黄金の姫様が来るとか。何の用?」

 

 クレマンティーヌがこちらを煽るように喋りだした。

 ガシャガシャと鎖を鳴らし、自由にしてくれと行動で主張する。

 

(ここに俺いる必要あるかなぁ)

 

 そんなことをモモンガは考える。

 ここにモモンガが居るのは黄金の姫の護衛だ。

 クライムという騎士は単純に弱い。アダマンタイト級相応の相手と相対するには不安を覚える程に。

 その為護衛としてモモンガが選ばれた。

 本来ならばゼロが適しているがゼロは負傷して減った冒険者と兵士の代わりにモンスターを倒しに行った。休みと家が消えたゼロは泣きながら戦っている。

 

 首謀者を倒し、第四位階の魔法を使いこなす大魔法詠唱者──これほど適した者は居ない。ラナーがそう主張した。

 

「単刀直入に言います。元漆黒聖典所属のクレマンティーヌさん。王国に雇われませんか?」

「──はぁ?」

 

 クレマンティーヌが顔を歪めた。

 

「それってゼロみたいに? なんでよ」

「王国は今危機に陥っています。増加するモンスター。犯罪。それらを抑えるのには戦力が足りません」

「その為に犯罪者も雇うって? 終わってんね」

「終わらないために雇うのです。あなたが望むだけの報酬は支払えますよ」

「へぇ。何? 何があるっていうの」

 

 クレマンティーヌは小娘が、と煽るように顔に青筋を立てながら問いかける。

 

「そうですね。最短二年──最長四年。その間真面目に労働してくだされば"自由"を与えましょう」

「……はぁ?」

 

 口には出さないが、モモンガもクレマンティーヌと同じ気持ちだった。

 犯罪者の解放。そんなことが許されるのか? 

 

「自由。自由ね。そりゃ嬉しいけどさぁ。私元漆黒聖典の隊員よ? 国が黙っちゃいないよー?」

「大丈夫です。国王陛下から許可は頂きました」

「……なんで王国の王の許可が出るのよ、わたしゃすれ……竜帝国の者だったのよ」

「ああ──言ってませんでしたね。既にリ・エスティーゼ王国は竜帝国の属国となりました」

 

「……はい?」

 

 眼を天にして、クレマンティーヌが間抜けな声を出した。

 そしてモモンガもまた、同じように声を出したい気分だった。

 

 

(待て待て待て待て?! 既にこの国が竜帝国の属国だと?! 不味い! ナザリックがバレたら──)

 そこまで考えたところで沈静化が起き、冷静になってラナー殿下の話を全て聞くべきだと判断する。

 

「まぁ属国と言っても一時的ですが。最終的には竜帝国の正式な領土となります」

「……マジかぁ。え、ラ―ドゥン様なんて?」

「……『ブラック勤務させてすまん。だからと言って秘宝盗んだのは簡単に許せんからそっちで多少働いてくれたら辞めていいよ』とのことです。そのことに当たって失業保険等も出るようです」

「わぁホワイト。できれば国に居る時に聞きたかったなぁ……」

 

 ふぅー、とクレマンティーヌが空を仰ぐ。見えるのは石の天井だが。

 

(うーん。さてどうするか。何が最善か)

 

 クレマンティーヌの目的はなんだ。自由になることだ。

 別に弱者を甚振りたい訳ではない。確かに戦うとき等は感情が高ぶり弱者を拷問にかけたりするのは好きだ。だがそれは罪を犯してまでしたいことか。

 国からは──家族からは逃げたかった。常に優秀な兄と比べれる家族と仲間から。その家族と仲間は過労死するほど労働して悪態の一つ付かれなくなったが。

 

 そう。クレマンティーヌの根本にあるのは"逃げたい"という衝動。

 拷問は趣味。狩りも趣味。だが禁じられれば別にいいかと思える程度。

 

 確かにクレマンティーヌは多数の冒険者を殺してきたが──その中には"スレイン法国の命令"で殺した者の方が多い。

 多少。確かに趣味で殺したのはいる。この街で殺した情報屋の様に。だがそれは単純に殺しても問題の無い者。あるいは殺した方が手っ取り早い者のみ。

 だが殺した冒険者でさえ大半は犯罪者の様な者が多い。力に任せて弱者を甚振るクレマンティーヌの様な者。

 オリハルコン級やミスリル級の者は実力のせいで下手に排除できない。一部の都市では亜人への対策の為実力者である以上下手に排除できない。

 そもそも実力がある以上捕らえることも出来ない。やるならば同格か角上の冒険者を使い殺害でもしなければならない。

 下手に実力をつけた冒険者は横暴な者が多い。酒を出せ女を出せ金を寄こせ。そう主張しそうしなければ都市が危機にさらされる。大体は実力と社会常識を知り大人しくなるが一部はそうはならない。

 そういった者達を排除する仕事をクレマンティーヌはしてきた。鎧もまたその過程で作った物に過ぎない。

 

 そしてクレマンティーヌは考える。実際に黄金の姫の配下になった場合を。

 竜王ラ―ドゥンは嘘を嫌う。おべっかを言った商人がその場で縦に引き裂かれたのをクレマンティーヌは見た。ならば黄金の姫の言葉に嘘は無い。

 いやあったとしても真実となる。する。しなければ次は黄金の姫が裂かれるか、あるいは王国が消し飛ぶだけだ。

 実際に二年か四年。その程度ならまぁいいと思える。その後はどうする? 自由の身だ。あれだけ望んていた自由な生活。家族を気にせず好きなことが出来る。

 

 では断ったらどうなる? 

 その場合は普通に死刑になるだけ。王国としても法国──竜帝国にしても殺して問題の無い存在に過ぎない。

 ならば、自身のすべきことは──

 

「一個、条件つけてもいい? それを受け入れてくれるなら、いいよ」

「わかりました。その条件は?」

「私と漆黒聖典──いや。元スレイン法国の連中と近づけさせないこと。業務上絶対に関わらないといけないとかじゃない限り関わるのは無し。

 それを受け入れてくれるってんならわたしゃ二年ぐらい馬車馬のごとく働いてやりますよ」

「受け入れます。では今日から仲間ですね」

(マジかノータイムで受け入れやがった)

 

 これでいいのか黄金の姫。元犯罪者を身内に入れていいのか。

 クレマンティーヌは不安を覚えるが、隣の騎士──クライムが空を仰いだのを見て"さてはこいつ犯罪者結構引き入れているな? "と悟った。

 

 そもそもゼロは元六腕というバリバリの犯罪者。ブレイン・アングラウスも傭兵崩れ。

 今の王国は六割が元犯罪者で構成されている。ランポッサ三世が草葉の陰で泣いてた。

 

「さて。モモンガさん」

「なんでしょう」

 

 いきなりラナーがモモンガの方を向き、問いかけた。

 いったい何の用か。モモンガは身構える。

 

「私に雇われませんか?」

「……はい?」

 

「クレマンティーヌさんと同じように王国──現竜帝国で働かないか、というヘッドハンティングです。あなたは犯罪者でも何でもないのでいい条件で雇いますよ」

 

 それはそれは、ラナー殿下はいい笑顔で言った。

 クレマンティーヌは"いやそれ犯罪者で無理やり入れられた私の前でする? "と不満をあらわにした。

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