オーバーロードに野生のラスボスが現れたの竜王RPするプレイヤーが居る作品   作:野生の生蛇

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第19話

 モモンガ──鈴木悟。

 彼の本質は何か。

 

 ゲーム廃人。

 新しく実装された要素。未知の魔法。新しいモンスター。アップデートでナーフされたスキル。追加種族。

 それらに一喜一憂してきた者。他の者と同じようにゲームを──世界を楽しんできた者。

 

 であるならば。今のモモンガはどう思うか。

 

 不安と歓喜がモモンガの心を蓋う。

 

 ナザリックの者達は恐ろしい。自分に不満を抱かれないか。かつての仲間が残した者達を守れるのか。

 未知の世界だ。自身の知らぬ世界。ユグドラシルの法則根付く地。いったい何がどうなっているのか。

 竜王ラ―ドゥンが何故いる。ボスキャラクターであるアレに敵うのか? 

 

 あの時。あの場所で黄金の姫に話したのは真実。嘘偽りなき事。

 

 そうでなければ、モモンガは──鈴木悟はユグドラシルなどプレイしていなかった。

 

 "まだ見ぬ未知を解き明かそう"ユグドラシルのキャッチフレーズ。

 

 モモンガは憧れていたのだ。まだ見ぬ世界を。

 

 自分を偽るのは辞めよう。自分を騙すのも終わり。

 今こそ一歩前に踏み出る時だ。足踏みしてたら竜王の翼に追いつかれる。竜王の牙で大切な者が食い千切られる。

 自身の感情と大切な者達を天秤にかけた時。驚くほどあっさりと大切な者達(NPC)に天秤が向いた。

 

(気が重いな)

 

 だが心はまだ晴れない。

 

 何処へ行くにもメイドが付いて回り、外に行こう者なら護衛が付く。

 挙句の果てには"そのような些事我々にお任せください"それを聞いた時モモンガは内心"ぶざけてんのかボケ"と叫びそうになった。

 

 外の世界を調べるのは僕に任せてください? ユグドラシルを否定するのか。ユグドラシルから生まれたお前たちが。

 

 "至高の御方々のお役に立つのが僕の存在意義"なるほど確かに。それは間違ってはいないのだろう。ある側面では。

 NPCとはプレイヤーが作る物だ。プレイヤーの夢と希望を詰めて創り出す。

 シャルティア・ブラッドホールン等はいい例だ。ペロロンチーノの"俺の嫁"という意思を持って造られた存在。

 "こうだったらいいな"や"こんなことが出来たらいい"という夢と希望の詰め合わせ。

 NPCは創造主に仕えるように創られる。ならばそのように動くのには何の問題も無い。

 だがユグドラシルというゲーム全般で考えるならば矛盾する。

 自分の足で、眼で、世界を見て回ることこそがユグドラシルというゲームの本質。

 pvpやpveも確かにユグドラシルの一部だがやはり本質は最終日になっても全容が明かされなかった広大な世界。

 ワールドサーチャーズ(探索超特化ギルド)でさせ世界を知り尽くすことは出来なかった。

 

 だというのに僕に任せる? 配下が調べた情報を耳で聞いて眼で文を読めと言うのか。

 そんなことに何の意味がある。それをするのならば動画サイトで見ていればいいだけだ。

 

 心はいまだ重いまま、モモンガはナザリックに一度帰った。

 

 

 

 

 

 

「モモンガ様。全階層守護者。揃いました」

「あぁ……ご苦労。アルベド」

 

 ナザリック地下大墳墓。玉座の間。

 最奥には水晶でできた玉座。白い床には赤いカーペットが敷かれている。

 左右には旗が揺らめいている。総数は四十一。

 骨。スライム。バードマン。悪魔──あらゆる種族をモチーフにした紋章が刻まれている。

 ナザリックの心臓部。玉座は数段高い所にあり、玉座に座るには階段を上る必要がある。

 その中。玉座に座る死が居た。

 

 言うまでも無くモモンガである。

 そして、モモンガを守るように二人の者がいる。

 

 一人はアルベド。白いドレスを纏い、ワールドアイテムであるギンヌンガガブを手にしている。

 もう一人はパンドラズ・アクター。ネオナチの軍服を纏い、手をワキワキと動かしている。

 

 その下に、残りの守護者──第八と第四以外の守護者と、執事であるセバス・チャンが膝を付いている。

 

 その中、アウラとデミウルゴスはアルベドとパンドラズ・アクターの異変に感づいていた。

 

 "警戒をしている"しかも、自分たちに対して。

 

 何故? 自分たちが何をしたというのか。

 確かに何の成果も挙げれていない。だがアルベドはモモンガの護衛として動いており、その成果を元に自分たちを叱責でもしようというのならばわかる。

 だがパンドラズ・アクターもまたナザリックから動けていないはず。この二人の雰囲気はなんだ? 

 

 探知系職業であるアウラと知略に優れたデミウルゴスだけが、他の守護者も気づかない程度の違和感を感じ取っていた。

 

「さて、皆の者集まってくれたことに感謝する」

 

 モモンガがそう話だし、デミウルゴスは意識をモモンガに向ける。

 

「さて、早速だが──お前たちに一つ、話しがしたい」

 

 何の話か。アルベドとパンドラズ・アクター以外の思考が重なる。

 

「まず一つ。お前たちは俺を至高の御方とかいうがそんなことは無い。俺はお前たちが劣等種と蔑む人間だ」

 

 ──何を。同じく階段下の守護者たちの思考が重なった。

 

「シャルティア。お前は美の結晶と言ったな。この姿はユグドラシルにおいて凡庸な姿だ。美も何もない」

 

 淡々と、モモンガは述べる。

 

「コキュートス。俺を守護者よりも強いと言ったな。そんなことは無い。単純なステータスならばシャルティアに負けるし、戦闘技能では……まぁ、勝るかもしれん。

 だが1対2等になれば俺は間違いなく負けるぞ」

 

「アウラ。慈悲深い……のは、まぁそうかもしれん。だが配慮に優れたと言ったがそんなことは無い。ギルドマスターとしてごく普通のことをしてきただけだ。誇れるようなモノではない」

 

「マーレ。優しいと言ったがそれは間違いだ。優しいのではなく優柔不断なだけ……強く言うことで嫌われるのを恐れて来ただけだ」

 

「デミウルゴス。正直に言うと端倪すべからずと言ったが言葉の意味がわからん。多分賢いとかそういう意味だろうがよくわかってない。

 判断力と行動力に優れたと言ったが……それは戦闘時、PVPで……自分の命に危機が無い時だけだ。本当に自分やお前たちが危ない時俺はどう判断し行動するかわからん」

 

「セバス。見捨てず残ってくださっというがそれも誤りだ。残ったのではない、ただしがみついていただけだ。俺にはこれしか残っていないのだと思考を放棄してただ無駄に無意義に過ごして来ただけに過ぎん」

 

「そして俺は……お前たちが至高の御方々と呼ぶ者達は全て人間だ。お前たちが劣等種と蔑み見下す人間。その実この力は努力して得た者でも何でもない

 偽りの姿を作り出し、お前たちの世界に──ユグドラシルにアバターとして君臨しただ世界を遊んでいた訳だ。お前たちがどう思っているのか考えもせず、ただ子供の様に騒いで居ただけ」

 

 

 それを聞いて、どう思う? 

 

 モモンガは最後にそう言い残した。

 

 

 モモンガは恐怖する。NPC達がどう思うか。

 蔑んで来るか、見下して来るか。あるいはもっと別か。

 

 NPCは戦慄する。

 嘘か、そんなことは無い。至高の御方が何故嘘をつく。

 ならば真実? そんなことは無い。偉大なる死の支配者が人間等と、そのようなことがあるか。

 

 だが、あの二人は何故狼狽えない? 

 

 デミウルゴスの優れた頭脳は頭を回しながら、周囲に目を配れた。

 

 自身も……セバスやコキュートス達は混乱している。アウラ等はその混乱が直に顔に出ている。

 しかしなぜアルベドとパンドラズ・アクターは狼狽えない。驚愕しない? 

 先に話されていた? 何故? ならば

 

 今この話は、真実? 

 

 モモンガにとって意外にも、最初に口を開いたのはセバスだった。

 頭のいいデミウルゴスが最初に何か言うだろう、という安直な推測は外れた。

 デミウルゴスはまだ混乱から抜けれていない。与えられた優れた頭脳が邪魔をし、こうかもしれない。あるいは何かしら試されているのか。

 色々と──頭を回し続けてしまった。

 

「モモンガ様。仮にあなたが人間であっても。いえ。人間以外であろうと変わりません。モモンガ様であることに……今日この日まで。ナザリックを守ってくださったことに変わりはないのです

 ならばこの忠誠は変わりえません。私セバス・チャンは変わらぬ忠誠を誓います」

 

 深く、深くセバスが頭を下げた。

 その事にモモンガは多少動揺する。沈静化が起こらない程度に。

 次に話すのもまた、モモンガにとって意外な人物だった。

 

「モモンガ様。私はただ貴方様の外見だけで判断したのではありません。モモンガ様の魂が。心のありようこそが美しいと感じたのです。……確かに外見も美しいとは思います。

 ですがその心の方が、私には輝いて見えるのです」

 

 間違った廓言葉を使うことなく。シャルティアがモモンガを称賛する。

 

「モモンガ様。ワタシハタダモモンガ様ノ直接的ナ力デ判断シタノデハアリマセン。シャルティアガ言ッタヨウニソノ心ノ強サヲ称エタノデス。

 カツテノ大進行。ナザリックト相手ノトノ戦力差ハ火ヲ見ルヨリモ明ラカダッタノニモ関ワラズモモンガ様ハイツモト変ワラズ指揮ヲ執ッテイマシタ。

 ソノ心コソ。我ラ守護者各員ヨリモ強イト、称エタノデス」

 

 コキュートス。

 

「ギルドマスターとしてごく普通のことをしてきただけ……そうなのだとしても。それは私にとってはとても、とても素晴らしいことだと思います」

 

 アウラ。

 

「モモンガ様はやっぱり優しいです。このように真実を言わなくてもいいのに、話してくださった。僕たちに歩み寄ってくださった──だからこそ、僕は優しいと、そう思います」

 

 マーレ。

 

 

 最後に、デミウルゴスが口を開く。

 頭を回さず、ただ心の赴くままに話す。

 

「モモンガ様。偉大なる死の支配者。私が仰った意味が解らないと言いましたが……"分からない"と答えてくださっただけでも、ただの愚者ではありません。

 まずは謝罪を。私のこの曇ってしまった目で、モモンガ様を見ていないかった。私たちにとって"都合のいい主"だと妄信していました」

 

「……そうは言うがな、お前たち。俺のしてきたことはお遊びだ。遊戯。たった一人オモチャで弄んでいただけだ。お前たちが大侵攻で死した時も、"まぁ蘇るからいいか"と何も思っていなかった。

 お前たちにとって懸命に生きたかった一日を、俺たちはただの遊びとして浪費してきただけだぞ」

 

「だとしても。私たちをお造りになり──今日まで我らを守ってくださった。その事実は揺るぎようのない真実です」

 

「そうか……そうか」

 

 モモンガは少し、顔が緩んだ。

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