オーバーロードに野生のラスボスが現れたの竜王RPするプレイヤーが居る作品   作:野生の生蛇

22 / 30
第22話

 それは、炎の中ひっそりと潜り込んだ。

 星をも焼き尽くす業火の中。小さな小さな──されど大きく、だけれど竜王の巨体からすればアリの様に小さかったそれ。

 遥か遠くの彼方から。ユグドラシルでもない、別種の異世界の、ごく普通の植物に過ぎなかったそれ。

 だからそれは、偶々──世界を渡るそれ(プレイヤー)に引っ付いただけのは、根付いた地が見知らる世界だということも気にせず、種としての──命ある者の役割を果たさんと繁殖した。

 全ての命は増える為にある。ならば世界がどうであっても関係ない。増えるのみ。

 だから異世界だと言うことを認識しても気にしなかった。元の世界へ帰るなどはどうでもいい。増えることこそ我が使命。

 本能だけで動くそれは、容易く異世界に根付き──同じく、異世界から来た者達に刈られた。

 まぁそれはいい。生存競争に過ぎないのだから。刈るも狩られるも世の理。

 だが、それにってもあの竜は──竜王は異質しすぎた。

 存在しないはずの恐怖が沸き起こり、繁殖ではなく逃亡を選択してしまうそれ。

 荒れ狂う大波。或いは地割れ。命あるものとして恐れ、逃げ出さすそれ。

 逃亡先は地下深く。炎の届かぬ遥か下。

 上も左右も炎の檻。消去法で逃げだせるのは地下しかなかった。

 

 ──生命は進化する。そして進化とは外的要因によるモノが殆どだ。

 外敵。環境の変化。食糧不足──それらがあって生命は進化する。

 地球においても進化しない植物や動物は環境が何万年。あるいは何億年と環境が変化しないからこそそれもまた進化しない。

 風が吹き荒れ炎が舞う地上に這い出た人類がたかが二百万年で星を食いつぶすせる程に進化したのに対し、暗い暗い海の底という変化がやってこない地で住まう者達は何億年も変わらない。

 ならば今、ザイクロトルの死の植物が死の間際に生み出した新しいそれは、外敵(竜王)に適応した種と言えるだろう。

 

 ゆっくりゆっくりと、本人にしてみれば余りにも遅く──外から見れば驚異的な速度で、それは進んだ。

 

 不運(ファンブル)の後には何時も幸運(クリティカル)がやってくる。

 

 

「GIGYA?」

 

 地下深く。人もエルフもやってこれない遥か地下。

 そこに、ああ、ほらいた。間抜けな顔を晒して、腰みのとがたがたな剣を携えた小さなもの。人よりも小さい、緑色の肌をした最弱の怪物(モンスター)

 村に行けば一人ぐらいは「あんなの俺でも楽勝。追っ払うことができた」と自慢話が聞けてしまう程度のモンスターの名に相応しくないように思えるけど──それでも、村をも滅ぼすことのあるそれ。

 ゴブリン。洞窟の奥深く。散歩をしていたゴブリンはふと、それに触れてしまった。

 新種のキノコか。或いは他の者が置いて行ったのか。理由はどうあれ面白そうだと──子供程度の知能しか持たぬそれは、子供の様に好奇心溢れて触れたのだ。

 

 

 

 

 

 

 "不運(ファンブル)の後には何時も幸運(クリティカル)がやってくる"

 

 

 かつて自身を植えた主の言葉を、ふと思い出した。

 

 

 

 

 

 

 ■

 

 

「トブの大森林の調査……ですか?」

 

 数日後。再びエ・ランテル冒険者組合にて。

 モモンガは完全武装したアルベドと共に組合長──プルトン・アインザックと会話していた。

 

「ああ。竜帝国からの正式な依頼となる」

 

「ふむ。依頼の詳細は?」

「あぁ。これまでトブの大森林で湧き出てきたモンスター。それが突如として消え去った──それを探って欲しい」

「……なるほど。わかりました。具体的な期限などは?」

「凡そ一ヵ月。何かがあった場合は即座に報告に来てもらうが何もなかった場合は一月ほど調査し何もなければないでいいとのことだ」

 

「ふむ……」

 

 モモンガは考える。この依頼を受けるべきか否か。

 受けるべきだろう。竜帝国の依頼──竜王が出した依頼とも言える。ならばここで受ければ竜王にまで名が届くかもしれない。

 自慢の様になってしまうが"モモンガ"という名はユグドラシルでも有名。アインズ・ウール・ゴウンのギルドマスターとして掲示板等にはよく上がっていた程だ。

 ならば竜王とて知っているはず。名が響けば向こう側からやってくるかもしれない。

 

「わかりました。その依頼受けましょう」

「ありがとう。モモンガ君。エ・ランテルの外に今回の依頼の同行者がいる。彼女たちと共にこの依頼にあたってくれ」

「──? はい。わかりました」

 

 同行者がいる。それほど組合側──というよりは竜帝国が重くて見ているのか。モモンガには判断が突かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──エ・ランテル。外。

 そこに完全武装したアルベドと同じく神話級で固め、嫉妬マスクを被ったモモンガがいた。

 二人は歩き、依頼の詳細を思い出す。

 

『トブの大森林の調査。依頼の同行者は青の薔薇の五人。移動手段は別途あるので馬等は必要なし。

 日時は既に決まっているのでエ・ランテルの外にて合流後トブの大森林へ移動』

 

 さてはて。この移動手段とはなんだろうか。馬などでは動きにくい森の中を移動するとなれば専用の手段でもあるのか。

 あるいはトブの大森林に住まうエルフ達独自の移動手段でもあるのかもしれない──モモンガはちょっとした好奇心を抑えながら合流地点へ進んだ。

 

 

 そうして歩くこと十分程。合流地点にたどり着いた。

 遠くから見れば既に女性が数人──恐らく青の薔薇が居る。遅れてしまったかと社会人である己を叱責する。

 

「……彼女たちかな」

 

「……でしょうか」

 

 モモンガとアルベドは警戒する。

 エ・ランテル。城壁の外。

 門より少し離れた場所に、乙女の花園があった。

 いや二名ほど怪しい者がいるが。

 二人は草を踏みつぶしながら、ゆっくりと歩いてく。

 あくまでも友好的に。されど警戒心は残して。

 

 そこにいたのは五人の女性だった。

 鎧を纏った女騎士の様な格好をしたもの。スパイクの付き出た鎧を纏い、ウォーピックを背負った筋肉が良く見えるぱっと見女性には見えない者。

 そして仮面を着けた小柄な者。

 

 彼女たちならまだいい。だが約二名モモンガ達が警戒せざる負えない者が居た。

 

 ノースリーブにちょんまげ。網状のインナー。更に前掛け。

 何処からどう見ても忍びそのものである。

 単純に異世界の技術で偶々それっぽい服装になった──などと考えるのは余りにも愚かだ。

 彼女たちが竜帝国の依頼。つまりはユグドラシルの者からの依頼で来た者達ならばその格好に相応しい職業だろう。

 これが意味するのは何か──モモンガにはよくわからない。それに今色々考えて警戒心を抱かせるべきではない。ならば考えるのは後だ。今はごく普通に対応しよう。

 モモンガはそこまで考え、女たちに──青の薔薇の面々に近づいた。

 

 

「……ボス。来た」

 

「あら? もうそんな時間かしら」

 

 

 道中二人で歩いてけばそんな声が聞こえた。

 はてさて。偶々一番早く気付けただけか──あるいは忍者だからか。まぁいいかとモモンガは歩みを続ける。

 ゆっくり歩き。全員の顔がよく見える位置まで進むとモモンガは停止し、軽く頭を下げた。

 

「初めまして。私はモモンガ。こちらはアルベド。トブの大森林の調査の依頼を受けた者です。あなたたちが同行者──ということでよろしいでしょうか」

「…………あ。はい。初めまして。モモンガさん。私は青の薔薇のラキュースです。こちらがパーティメンバーになります」

 

 一人が元気よく拳を上げた。

「おう! 俺はガガーラン。よろしく頼むわ」

 

「好きな者はショタです。よろしくお願いします」

「そこの鎧の人──アルベドさんは絶対美人。鎧を脱いでもらっても?」

 

「……二人とも。失礼でしょ……すみませんモモンガさん。仲間が失礼を」

「いえいえ。お気になさらず」

 

 なんか苦労してそうだなぁ。モモンガはふとそう思った。

 

「……私はイビルアイ。よろしく頼む」

「ええ。よろしくお願いします」

 

 声が変だ。

 老婆の様に声が聞こえる。見かけは子供の用だが中身は老婆なのか。あるいはもっと別か。

 はてさて。幻惑系統のマジックアイテムか。あるいは声そのものを変換するのか──後者だとモモンガは判断する。

 幻惑系統ならば余程それにのみ特化しなければアンデッドという精神系無効能力を持つモモンガには通じない。だが声を変質させるならば通じる。

 だが声を変え、顔を隠しているのはどういうことか。何かやましいことでもあるのか。

 

(……いや俺も仮面付けてるから人のこと言えないか)

 

 ふと、自分と同じようにアンデッドかもしれない──なんて、考えてしまった。

 

「……その。モモンガさん──で。あっているんですよね」

「……えぇまぁ。私はモモンガですが」

 

(これは──当たりか?)

 

 この依頼は竜帝国からの物。そしてその依頼の同行者となれば竜帝国からの回し者だ。

 そしてモモンガという名に反応した。ならばこの者達は竜王か──あるいはそれ以外からユグドラシルについて聞いている? 

 あるいは。プレイヤー本人か。

 

「ラキュース。それは今はいいだろう。さてモモンガさん。もう少し待ってくれ。時期に来る」

「それもそうね。イビルアイ。申し訳ございませんモモンガさん」

「ああ。別に気にしてないのでお気にならず──それと。待つということですがまだ仲間が揃っていないと?」

 

「そうですね──それは。来たら分かります」

「……はぁ」

 

 一体何が来るというのか。モモンガは少々不安に思った。

 

「まぁ。来るまで暇だしお喋りでもしようや。んでよぉモモンガさん。あんた魔法詠唱者って話だが、何位階まで使えるんだ?」

 

 ガガーランが会話を切り出す。

 それに対しモモンガはコミュニケーションも大事だ、と設定どおりに話すこと決める。

 

「私は第四位階まで使えます。<飛行>(フライ)を使用したまま攻撃魔法も出来ますよ」

 

 モモンガにとって非常に理解しにくいことだが──この世界では<飛行>(フライ)は高度な魔法ということになっているらしい。

 第三位階という天才しかたどり着けない領域にあるというだけではない。単純に移動するだけでも制御が難しいだけでなく、<飛行>(フライ)を使用しながら別の魔法を使う、というのは超高度な技術を要するという。

 有名どころで言うならばフールーダ・パラダインその人とその高弟程度──という使えるものが非常に限られる技術。

 無論元がゲームに過ぎず、制御も何も知らないモモンガやNPCにとっては苦も無く扱える程度の力だ。

 だがそれでも現地民にとっては珍しいのか。ガガーランは眼を輝かせる。

 

「へぇ。そりゃ凄い。うちのおチビさんも魔法詠唱者でな。あんたと同じく<飛行>(フライ)からの攻撃魔法も出来る」

「ほう。それはすごい──空中戦の時はよろしくお願いしますね」

「……あぁ。よろしく」

 

「そして、だあんた──童貞だな?」

「……えっ」

 

「照れんなよ。どうだ? 依頼の前に俺とイッパツ!」

 

(きゃー! ハレンチ!)

 

 モモンガはそう叫びたくなった。

 

「ガガーラン様。既にモモンガ様のど──それは私に予約済みです。横入りはおやめくださ」

「いやお前に予約した覚えはないが???」

 

 

 全員が軽く笑う中──それは来た。

 

(……何?)

 

 スキル。不死の祝福に反応が出る。

 数は複数最低でも十──いや。それ以上。

 

「……探知魔法に反応がありました。警戒を」

 

 ここでそれは言えない。だが警戒すべきと青の薔薇に告げる。

 

(これだけの数が何処から? ズーラーノーンの残党か?)

 

 十や二十ではない。スキルによる感知で酔ってしまいそうなほど──百に届きそうな程に莫大な数。

 突如現れたにしても数が多い。<不死の軍勢>(アンデス・アーミー)等の一度に大量に召喚するにも多すぎる。

 転移魔法かタレントによる召喚か。そこまで考えたところに正解がやってきた。

 

「……なんだあれ」

 

(なんだあれ)

 

 思わず、言葉と思考が重なった。

 

 現れたのは巨大な船だった。

 種類としてはガレオン船に入る。

 船首やマストにはそれっぽい装飾のない実用性重視とも言える船。

 マストも船体も新品同様。傷一つない。

 可笑しいのは地上に霧の海を作り出し航海しているところだ。

 どういう原理かまるでわからないが──船の底から霧が湧き出し、纏わりつくことで霧の海となり、そこを船が進んでいるらしい。

 そもそも霧からもアンデッド反応があるし船そのものからもアンデッドの気配。

 すべてがアンデッドでできた──まさしく"幽霊船"

 

「来ましたね。あれが今回の移動手段です」

 

「あれが」

 

 

 すごい、と子供の様に──かつてユグドラシルをプレイしていたころの様に、心が躍った。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。