オーバーロードに野生のラスボスが現れたの竜王RPするプレイヤーが居る作品   作:野生の生蛇

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第23話

「はーはっはっはは!」

 

 笑い声が響いた。

 若い男の声。つまり青の薔薇の面々ではない。

 幽霊船から聞こえてきた声に全員が反応し、船を見上げる。

 それと同時に人型の何かが落ちてくる。

 風切り音を鳴らし、マントを揺らして地面に降りたつ。

 耳をすませば着地する寸前に「<飛行>(フライ)」とつぶやき落下ダメージを無効化している。

 魔法詠唱者──恐らくはエルダーリッチ。

 躯の相貌を隠すことなく晒している。

 

 海賊がつけるような帽子をかぶり、意味があるのかわからない眼帯を付けている。

 

「久しぶりだな青の薔薇の諸君! そしてそちらの方々は初めまして! 私はキャプテン・ジョン。この幽霊船の船長だ!」

 

「──アンデッドが船長? どういうことでしょうか?」

 

 モモンガが問いかけるより早く、アルベドが疑問を発した。

 そう。これまでの調査ではアンデッドは忌み嫌われる物。ならばなぜアンデッドが船長を名乗り船を持ってきた? 

 

「……竜帝国では種族は関係ない。有能ならばアンデッドだろうと採用されるらしい」

 

 その問いに小さな仮面をつけた魔法詠唱者──イビルアイが答えた。

 

「さぁ諸君! わが船に乗りたまえ! <集団飛行>(マス・フライ)

 

 ジョンが全員に魔法をかけ飛翔する。

 上に上にと飛行し、船の上で魔法が解除された。

 

「さぁ! 出発進行! 目的地はトブの大森林。エルフの首都。グローリーホール(栄光への道)へ!」

 

 カタカタと船員の骸骨が笑い出し、船が進む。

 ジョンが舵輪を回し、骸骨が帆を張る。

 他のと比べて大きいゾンビが錨を持ち上げ、霧の海を進みだす。

 

「……すごい」

 

 これほどの移動手段がユグドラシルにあっただろうか。

 ユグドラシルにおける移動手段は三つ。

 転移魔法。動物への騎乗。自力で走るのどれか。

 この場合最も使われるのは転移魔法だ。ワンドなり身内にスクロールを使わせるのが一番早く確実だからだ。

 動物は余り使われない。維持費が嵩むし大荷物を運べるという利点もあるが無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァザック)で代用できる。

 最も見ないのは自力移動だ。移動にのみ特化したプレイヤーは何人かいるがそれは戦闘にも使えるからこそ。

 このように大人数を移動させれる手段というのはユグドラシルでも超貴重品である。

 似たもので言えばアーズガルズの天空城やデスブランドの飛行船だが──そういった物しか類似品に挙げられる時点でこの船の貴重さがわかる。

 

「……この船は竜帝国が作り出したマジックアイテムかなにか──でしょうか」

 

 主w図、質問してしまう。

 

「いいや。この船はマジックアイテムなんかじゃぁない。アンデッドだよ」

「……はい?」

「私と船員はもちろん。この船と霧の海。すべてがアンデッドさ」

 

 

 そんな馬鹿な──とスキルの探知を集中する。

 すれば確かに成程。船と霧の海。両方からアンデッドの反応が。

 

「さぁ! これから森に突っ込むぞ。目ん玉おっぴろげろ!」

 

 私に目はないがな、とジョンが付け加えた。

 

 時速凡そ六十キロ──<飛行>(フライ)とほぼ同等の速度で船は突き進む。

 馬車ならばある馬の疲労や地形による速度の低下。アンデッドという疲労とは無縁であり空を飛ぶことによる地形の無視は驚異的な速度でトブの大森林へと近づく。

 

 そうして森が見えてきて──一切速度が緩まない。

 

「……船長さん?」

 

 このまま突っ込めば船が森の木々に突っ込むんだが。モモンガは不安を感じる。

 

「なぁに問題なし! 突っ込むぞ!」

「ちょま」

 

 モモンガが止める間も──アルベドが何かする間もなく船が森の中に突っ込んだ。

 木にぶつかる──人間だった頃の残滓で思わず目を瞑るが、何も起きない。

 目を瞑るというより視界を閉じたというべきか。兎も角視界を一時切ったというのに衝撃も痛みも何もない。

 再び視界を戻せば──木々を航海していた。

 

「こ、れは──」

「すごいだろ? これがこの船の力さ!」

 

 木の海を、船が進んでいる。

 長くそびえたつ木々を。枝分かれし触れれば傷がつきそうな樹木を無視して船が進む。

 木が船に当たることも、船員が当たることもない。

 少し不思議に思い手を伸ばし──伸ばした手が木に当たることはなかった。

 

「……実体の喪失?」

 

「俺も初めて見たときはビビったけどよ! すげぇだろ!」

 

 わはは、とガガーランが肩をたたいて笑ってくる。

 

「えぇ。えぇ──これはすごい。見たことがない」

 

 

 ユグドラシルにおいてこのような力は存在しない。しえない。

 たった一人完全な非実体化を可能とするものはいたが──他者に対してまで非実体にする能力を持つ者はいない。

 木々を──地形──オブジェクトを無視するなんてことは出来ない。

 如何にレイス等の実態の存在しないアンデッドであろうとそんなことは出来ないのだから。いや現実となったこの世界なら出来るのかもしれん。検証すべきかとモモンガは思案する。

 

「ま。幾つか欠点はあるようだがな」

 

 そこにイビルアイが会話に入ってくる。

 

「ふむ。弱点とは?」

「確か──魔法攻撃に弱いのと、魔法的な防御のある壁の中などは進めないなどだな」

「あぁ。あと土の中とか進むとすげぇ息苦しいぞ。呼吸はいるもんらしい」

「進んだことがあるので?」

「あぁ。あれすっごい苦しかった」

 

 もう二度としたくない、とガガーランが嫌な顔をする。

 

「あれは嫌だな……土の中にいる虫とかミミズとか入らないってわかっててもすごい気持ち悪かった」

 

「思い出させないでよイビルアイ……考えるだけでゾクゾクする」

 

 ああやだ、とラキュースが肩を震わせる。

 どういう原理なのか。単純に実体を消しているだけではなさそうだ。

 異世界というのはこれほど未知に溢れているのか──モモンガは歓喜に震えた。

 

 

 

 

 ──そうして進むこと約一時間。

 青の薔薇と談笑すれば瞬く間に時間が過ぎていった。

 主に内容はこれまでの冒険談だ。

 

 黒鉄の山のサラマンダー。白き山脈の霜の竜。

 古代遺跡。先史文明のダンジョン──青の薔薇のこれまでの冒険談をモモンガは子供の用に聞き入る。

 アルベドもそれに参加するがこちらは至って真面目。ユグドラシルとの違いや話の内容からレベルを推測する。

 

「見えてきたぞ!」

 

 そこに船長の声が入る。

 

 あらゆる障害を無視し一直線に突き進むとなれば案外早くつけるのだろう。

 

 見えてきたのは港だった。

 森の中。海があるという訳でもないのに港──船をつけるための場所が存在している。

 遠目に見れば一際大きい巨木。

 

 

 

「あれが──グローリーホール」

 

 モモンガと青の薔薇一行は再建されたエルフの都市にたどり着いた。

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