オーバーロードに野生のラスボスが現れたの竜王RPするプレイヤーが居る作品   作:野生の生蛇

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第24話

 船が動く。

 本来の船ならばあり得ない──物理運動をガン無視した挙動。

 まるで生命の様に──というかアンデッドなので死んでいるが──六十キロでの高速移動からの急停止。からの半回転。

 酔いそうなものだがモモンガ──アンデッドの体ならば問題ない。青の薔薇の面々も特に問題はなさそうだ。

 船がつけられたのは港。

 本来ならば鉄やらコンクリートが使われる場所もすべて木製というのは驚異的だがそれ以外は至って普通の港である。

 森の中に海にあるべきものがあるというのは非常に変だが。

 

 カタカタと骸骨が蠢き、物資を運び出す。

 運ぶのは主に木箱。中身がいったい何なのか気になり、骸骨に視線を向ける。

 船を森の港に横付けし、きれいにはまる様に作られた階段。

 そこを一体につき一つずつ。大きいものは二体で運んでいる。

 自分たちも降りよう、と青の薔薇が提案しモモンガも会談に向かう。

 スケルトン。青の薔薇。モモンガ──という本人たちは知らないが骸骨に前と後ろを防がれ青の薔薇一行は進む。

 

(この中で全裸になっても気づかれない気がする)

 そんなくだらないことを考えるも、アンデッドは忌み嫌われていたのではず──あるいは単に竜帝国が可笑しいだけか。

 

「ようこそ。青野の薔薇の皆さま。モモンガ様とアルベド様」

 

 そこに一人のエルフがやってきた。

 妖艶な美女──といったところか。

 正しく歳を取ればこうなるのだろうという外見だ。

 金の髪に金の瞳。とがった長い耳。

 肌から察するに三十代ほどか──だが相手はどう見てもエルフ。外見と年齢は合致しないとモモンガは警戒する。

 服装もまたこの場──労働する場においては相応しくないドレス。

 

「私はグレロッド。この都市の長をしております」

「これはご丁寧にありがとうございます。私はラキュース。この一党のリーダーを務めさせていただいております」

 

 この一党のリーダーはラキュースということになっている。

 青の薔薇の方が先輩だし冒険者としての技量ならばどう考えても青の薔薇の方が上のためモモンガに不満はない。

 というよりは冒険者歴一月未満。それなのにキャリアの長い青の薔薇がいるというのにリーダーを名乗る勇気はなかった。

 

「ジョン様もお久しぶりです。今回の荷物は?」

「はっはー! 久方ぶりだなグレロッド! 今回のは主にドワーフのマジックアイテムだ! 竜王様が望むルーン製のマジックアイテムになる!」

 

 ジョンが高笑いしながら懐から書類を取り出す。

 それをグレロッドは確認し、了解しましたとしまいこむ。

 

「では俺はこれにて御免! 次の都市へ向かわねばならんのでな!」

 

 ジョンはそう叫び、またも飛行魔法で船に戻る。

 そうして船はまたカタカタと骨の震える音を鳴らしながら森の中を進んでいった。

 

「さぁどうぞこちらへ。屋敷へ向かいましょう」

 

 グレロッドに連れられ一党はエルフの都市を進む。

 

(森の中に家が……いや。木を家にしている?)

 

 興味深いとモモンガは仮面の奥で考える。

 薬草採取のために行ったトブの大森林の浅瀬とは風景がまるで違う。

 

 木々の上。

 下を見れば大地が非常に遠い。

 また街並みもすべてが木だ。

 木がツボ上に膨らむことで居住空間となり、木の枝が絡み合うことで橋となる。

 すべての生活要素が木で構成された未知なる空間。

 ユグドラシルでは見かけない光景にモモンガは心を躍らせる。

 

 そして次に住人だが──主に肌が黒いエルフ……ダークエルフが非常に多い。

 ダークエルフ八に対しエルフ二程度。

 

 この差はなんなのか。単純に差別やらそういうのが思い浮かぶが都市長がエルフというのを考えるとそういう問題ではない気がする。

 

 そうしてたどり着いた先は巨大な樹木。

 ほかの木々を圧倒する巨大差。遠目から見てもよくわかる程の樹木。

 

「どうぞ。中にお入りください」

 

 ぎちぎちと木が蠢く。

 まるで意思を持つように扉の形をしていた木の枝が蠢き、歓迎するように開いた。

 

 魔法か。あるいはマジックアイテムか──よく見れば見覚えのある文字が刻まれている。これが原因かといろいろ考えながらモモンガ達は樹木の中に入る。

 

「これは……」

 

 中に入ったモモンガは思わず感嘆の声が漏れる。

 明るい。異常なまでに。

 

 松明の光や魔法の光ではない。太陽を思わせる暖かい光だ。

 ぽわぽわと壁や天井が発光している。

 

 よくよく──アンデッドの暗視能力を含めてみれば苔が発光している。

 これぞファンタジー。幻想世界。

 ブループラネットさんが見れば歓喜乱舞しそうだ。

 

「もうすぐ日も暮れますし。食事はどうですか?」

 

 ──来たか。モモンガは身構える。

 モモンガはアンデッド。食事ができない種族だ。

 食事行為そのもの──というよりは粗食は出来る。だが味はわからないし骨の体ではぽろぽろと零れ落ちる。

 対処法としては口と袋を繋げるなり幻術で全力でごまかすなりあるが毎度毎度幻術で誤魔化す訳にもいかない。

 ならば誤魔化すのに最適な手段──それは。

 

「──申し訳ない。実は私は食事が取れない身でして」

「あら? それはどういう……何かしらの病でしょうか?」

「いえ。そう大したものではなく──私が所持しているマジックアイテムに食事が不要になるという物がありまして。これを装備している間は食事ができないのです」

 

 ローブと小手をめくり、腕輪を見せる。

 無論腕は幻術で人間の腕の様にする。

 見せるのは中央にダイヤモンドがつけられたマジックアイテムだ。

 名は食事は要らない(ノー・イート)。名前そのままで食事不要になるマジックアイテムである。

 相手に疑われてもいいように本当に効果がある物をパンドラに探させたという逸話もあるアイテムだ。

 維持する指輪(リング・オブ・サステナンス)と違い睡眠無効は得られないし、食事がそもそも不可能になるというデメリットもある装備だ。

 維持する指輪(リング・オブ・サステナンス)では得られる食事のバフなども一切取れないというデメリット要素が強い分維持する指輪(リング・オブ・サステナンス)よりかは序盤かつ安価で手に入る。

 

「実は結構な希少品でして──一度外すと壊れてしまいますし、これをつけたまま食事をしても壊れるという、中々に厄介な代物でして」

 

 無論そんな効果はない。

 食事は出来なくなるだけだし外すことも容易。

 だがこういう言い訳を用意しなければ食事の感想などを求められても非常に困る。

 それに目指す先はアダマンタイト級──となればこういった食事会もあるかもしれない。

 そういったときに一人食事出来ませんでは何かしらの理由があった方がいいだろうと用意した言い訳である。

 

「それは……失礼しました」

 

 本当に申し訳なさそうな顔でグレロッドが頭を下げるのを見てモモンガは失ったはずの人の心が痛むのを感じた。

 

 

 

 

 

 ■

 

 

「……綺麗だ」

 

 夜。モモンガとアルベドに与えられた一室。

 そこでモモンガはアルベドと共に夜空を見上げる。

 一際大きい月に幾千の星々。現実では失われて久しいそれを眺め続ける。

 青の薔薇の一行はグレロッドと楽しく食事会中である。

 ああいった中に入れない、というのは少々寂しくもあるが食事が出来ない異形種である以上仕方がないことだと割り切るしかない。

 与えられたのは少々豪華な部屋だ。

 ベットから机に至るまですべてが木製。

 流石にベットには柔らかい布団があるが。

 

「……モモンガ様。やはりパンドラズ・アクターに命じて何かしらの食事を可能とするマジックアイテムを探した方が良いのでは?」

 

 バルコニーから夜空を見上げるモモンガに、アルベドが声をかけた。

 アルベドは既に素顔を晒しているし、食事が出来る異形種──悪魔だ。

 ならば食事会に参加してもいいとモモンガは言ったが「主が参加しないのに従者が参加するわけにはいきません」と拒否。

 青の薔薇とグレロッドのみという、モモンガとアルベドにすれば少々疎外感を感じてしまう食事会と会いなった。

 

「……異形種のペナルティを軽減する方法ならあるが──無効化する手段は恐らくは、ない……俺が知らないだけという可能性もあるが」

 

 異形種のペナルティは絶対。

 人間種。亜人種。異形種と差別化されているユグドラシルではこの壁は越えられない。

 人間は異形の力を使えないし、異形は人間の力を使えない。

 吸血鬼等は一部装備で日光ペナルティの緩和。あるいは無効化が可能となるがそれも普通の手段では不可能。レアアイテムが必須となる。

 モモンガの種族であるオーバーロードはアンデッド。生ある者が死してなお生にしがみついた慣れの果ての姿。

 この場合食事──死したものが生あるものの特権である食事をするというのは恐らくは不可能とモモンガは判断する。

 だがユグドラシル運営九年目か十年目以降──つまりユグドラシルが落ち目になってサービス終了が予測されてきた時。

 その時運営が狂ったように追加した要素やコラボアイテム類ならばあるかもしれない。

 だがその間もユグドラシルをプレイし続けたがそんなアイテムは見たことも聞いたこともない。ならば期待するだけ無駄だとモモンガは判断する。

 別に食事がしたくないわけではなく、むしろ普通にしたいぐらいだ。

 肉が焼ける匂い。幼子が食べるパン。サンドイッチの粗食音。

 街に行けば嫌でも耳に入り匂いを感じ取るそれらに対しモモンガは興味が尽きない。

 現実ではまともな食事など空想上の物に過ぎなかった。それが現実として物理的に存在するならば──欲するのは人の定めだ。

 だがモモンガは既に人でない以上望むことが出来ない。

 

「ままならないな……人生は」

 

 人生ではなく骨生かもしれんが、とモモンガは自虐する。

 

 

 それを見てアルベドは必ず。必ずやモモンガに人としての生を感じさせると決意した。

 

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