オーバーロードに野生のラスボスが現れたの竜王RPするプレイヤーが居る作品 作:野生の生蛇
竜帝国が気づき上げられ、スレイン法国が従属を表明した。
これにより馬鹿が多い王国も賢者の帝国も「なんで?」と混乱した。
続けさま何年もビーストマンの脅威にさらされていた竜王国に竜王が征き、ビーストマンを殲滅し竜王国も支配。
更にエルフの国を支配地にし、トブの大森林を支配。
そこに住まうトードマンなる物やリザードマンを服従させ、更には三大と自称していたナーガや森の賢王、巨人を配下にかつてトブの大森林に居たというエルフを主軸に領土化。
正式な竜帝国の領土となったのだ。
更に更にアルゼシリア山脈の霜の竜、ドワーフにクアゴアを支配──等々。
これによって最も混乱したのは帝国である。
まるで何処かの甲冑を着た剣士のビジョンを持つ者の様に、混乱しきった。
熟考した結果──選択肢は静観。
なにしろ何もかもがわからない。意味が解らない。
人としての価値観ではまるで判断できぬと、情報の収集に全力を用いて竜王の力が自分に来ないようにと願った。
そして最も変わったのは王国である。
まず、パルプロ第一王子が何者かによって暗殺され死亡。
そしてザナック第二王子が王位を継ぎ即位──ランポッサ三世は退位した。
そうして八本指の完全な殲滅と、取り込みである。
かつて八本指の武力として君臨した六腕は全員、例外なく新王国軍に取り込まれた。
ゼロ。ペシュリアン。デイバーノック──全員が心のうちは兎も角、服従したのだ。
ただ、この結果は彼らにとっては大したことではない。
六腕は警備部門であり、やっていたことは本当に警備──麻薬の売買や違法賭博などではないし、そもそもが大半が"力を行使する"ということを第一にしていた連中である。
甘い汁を啜ることで堕落するよりも、力を行使したい、力を示したいという連中の集まりである。
いわば暴力という麻薬にはまってしまった者達だ。
……まぁたった一人というか一体は"魔法の研究に専念できる! "と軍ではなく新設された魔法省に行ったが。
故に彼らにとっては八本指が消えようと"雇い主が変わった"程度の認識に過ぎない。
無論これだけの強硬策ができたのには理由がある。
まず帝国軍の進軍が無かったこと。
時間にして凡そ二年。帝国は変わり続ける周囲の国に対応しざる負えなかった。
そもそもが毎年戦争をしていたカッツェ平野は竜王国の領土である。
これまで永遠にアンデッドが湧き出てる上、そもそも竜王国には対処できる力が無かったが故放置されてきただけ。
今ではたった一月で二国も滅ぼした竜のいる地だ。
王国に進軍しようにもどうしたって竜帝国を刺激する。藪をつついて竜王を出してはたまらないと王国を諦めた。
次にガゼフ・ストロノーフに匹敵する剣士──ブレイン・アングラウスを味方にし元イジャニーヤを有する青の薔薇を、言葉巧みに味方に
これによって八本指の殲滅という武力が枷だった事柄を実行できた。
しかし一番の功労者はラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフの知略である。
暴力の具現化が"竜王"ラ―ドゥンであるならば。
知略の具現化は"黄金の姫"ラナーである。
ラナーは頑張った。それはもう全力で頑張った。
元よりただのメイドの世間話から世界情勢を知ることができる程の知略の持ち主。それが表に出て──レェブン候とザナック王子を味方にして全力全霊で働けばどうなるか。
その胸には「クライムとイチャコラしたい」という少々不純な動機であれど、それを手に入れるべく頑張った。
なぜこれほどまでに頑張ったのか、理由は竜王ラ―ドゥンは思ったより馬鹿だとわかったからである。
力ある存在である。己の影響力をわかっている。
だがラナーにも、ジルクニフにもレェブン候にも劣る頭脳である。
これは本当に力を持っただけのガゼフ・ストロノーフ──とでも言うべきか。
いやガゼフの方が頭は回るだろう。一部隊の指揮や戦争という物をわかっている。
完全な愚者ではない。だか知者でもない。
例えるなら本当に"力を得ただけの一般人A"だ。
愚者で居続ける気もなく、努力はしているだろう。だがその歩みは遅い。
一を知り五を知るのが賢者ならば、竜王は二を知って一を知る者。
だからラナーは表に出て頑張った。これまでの"裏で操る者"のような隠れ潜むのは辞めて、表に出て全力でアピールした。「自分は有能だ」と。
なにしろ竜王にラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフは有能であると認識されないと話にならない。
だから表に出た。全力で頑張った。
表に出て全力でザナック王の参謀という表の地位につき、全力でサポートしまくった。
もし表に出ず裏からいろいろするとなれば時間も手間もかかるが、何よりも裏からだと"そもそもラ―ドゥンが気づきようがない"からである。
万が一──非常に確立が低くく、運要素が絡みまくればワンちゃん"裏で操る者がいる"程度には気づくかもしれない程度。
元より頭脳は人外級。その気になれば籠の鳥に過ぎぬ身で帝国に王国を滅ぼすよう仕向けることが可能な程の知能の持ち主だ。
その気になれば人類文明事態その知力のみで滅ぼしうる身。それが一国の再建に全力を尽くせばこうもなろう。
更に王国にはいいか悪いか実力者というのが結構いるのだ。
ガゼフ・ストロノーフしかりブレイン・アングラウスしかりゼロなり。
大半が貴族に使いつぶされるか犯罪するか他国へ行くという、宝の持ち腐れにも程があったのを正しく活用していったのだ。
結果として大貴族の大半は死んだり八本指の反乱や貴族が軍を率いたりもするも、まぁ至宝を纏ったガゼフ・ストロノーフやブレイン・アングラウスに叶う訳もなく。
そもそも知略で優れるラナーである。反乱のタイミングも何もかも把握しきれる。
一部本当によくわからない愚者が妙な行動をして痛手を負ったりしたがほぼ誤差。
今の王国は帝国をも滅ぼしうる、強国として再建したのである。
……理由が"愚者に自分は有能である"とアピールするためと、"愛する人と愛し合いたい"というのが、何とも言えないが。
もし、こうした努力をしなければ──既に王国は滅ぼされていただろう。
帝国は周囲の変化に順応し、変わらぬ王国を見下し攻めに来たか、あるいは"愚者だ"と嘲笑った竜王の息吹で消えていたか。
……余談だが、これほどまでに改変を頑張ったラナーは言うまでも無く倒れた。
まぁ、倒れた結果愛する人(クライム)に心配されて新しい側面を観れたと狂喜乱舞していたが。
こうして──二年の月日が、たったのだ。
■
「……凄いな」
空の上と見間違えるほどに高い場所。
竜都"ヤマタノオロチ"
日本神話に登場する怪物の名を名乗る大都市である。
かつてはスレイン法国の聖都であった場所は、竜と亜人が闊歩する都市へ変貌した。
しかし亜人によって支配された訳ではない。
眼下には亜人と人が仲良く暮らし、空を見上げれば霜の竜や飛竜に火竜等が飛び回っている。
単純な警備のみならず、物流などにも竜が使われている。
この竜たちは何か、竜王の力で召喚された竜である。
といってもアンデッドの様に召喚/作成できるわけではない。
正体はただの傭兵NPCである。
世界が終わる日、ラ―ドゥンは各地を飛び回り竜系のモンスターを買いあさった。
買って買って買いまくり、買うのに夢中になってしまった。
結果最後の最後に演出として召喚するはずの竜は召喚する時間が無く、泣く泣く半分ほど全力で召喚したが半分は予定時刻となり召喚することができなかった。
世界が終わる最後の日も竜王は倒されるボスとして君臨した。
だが世界が終わるというのにただいつも通り倒されるのでは味気ないと、高難易度ダンジョンを一月も前から片っ端から攻略しまくり、資金を集め続けた。
その資金を元に、竜を召喚したのだ。
"最後の決戦でただ戦うだけでは味気ない"と。まぁ竜を集めるのに集中しすぎたが。
最後の最後に全力で集めたからか凡そ三千程竜がいる。
最低でもレベルは三十、最高は七十と非常に高いが、大半が最下級の──人間にしてみれば強者である三十代の竜が大半である。
しかし種類としては飛竜に火竜に黒竜と多種多様な種が存在している。
「ラ―ドゥン様」
「む」
人の姿で街を眺めていた竜王に声を駆ける者がいる。
元は法国の騎士であったものだ。
「そろそろ会談のお時間です」
「そうか、向かおう」
顔を向け、城の中に入る。
(……六大神。スルシャーナ、か)
竜王はふと、かつてこの地に来た同胞に思いを寄せた。
「で、お前が王国の王か」
「──はい、閣下」
竜城。玉座の間。
レベル四十の竜が二体も座する場所。
玉座もまた竜を象っており、玉座の上には竜帝国の国章が飾られている。
一段高い玉座から、竜王は二人の男女を見下ろす。
一人は若い男だ。
金髪緑眼の整った容姿をしている。
背も高いが筋肉質という訳ではなく、細い。竜王にとっては小突いただけで死んでしまいそうな優男だ。
更に少々顔がやせ細っている。
彼こそはリ・エスティーゼ王国国王。ザナック・ヴァルレオン・イガナ・ライル・ヴァイセルフ。
元々は少々ふくよかな容姿をしていた彼だが、二年という歳月は人を変えた。
原因は主に二つ。ストレスと過労である。
たった二年で国を根本から変える上、自身が王位を継いで変革するとなれば心労も疲労も尋常ではない。
結果痩せた。
一人はまだ若い、少女とさえ呼べる年齢の女だ。
非常に整った容姿──竜王をして"美人だ"と思わずにはいられない容姿をしている。
彼女はラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフ。リ・エスティーゼ王国宰相の地位に就く者だ。
「で、要件は?」
国家元首に対する態度ではないが、この場にそれを指摘できるものはいない。
なにしろただ竜王がため息をつくだけで二人は死ぬ。それほどまでに存在として格が違いすぎるのだから。
「はい。この度は我がリ・エスティーゼ王国を──竜帝国の末席に、加わらせていただきたく──」
「……は?」
■
竜の国の中心で、今間違いなく世界の中心と言える場所で、世界を変える会合をしている時。
トブの大森林に近く、カルネ村より凡そ一キロ離れた場所で。
──ああ、ほら、やってきた。
遥かとおけき彼方から、世界の壁を乗り越えて、やってきた。
オーバーロードが、やってきた。