オーバーロードに野生のラスボスが現れたの竜王RPするプレイヤーが居る作品   作:野生の生蛇

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第9話

「おい、あれ……」

「熱くないのか……?」

「……亜人……なのか?」

「ママあれなにー?」

「しっ! 見ちゃいけません」

 

(うわぁ! 凄い見られてる!)

 

 流石にこの仮面は駄目だったかと、今更ながらに後悔した。

 しかし残念ながら男が所有するアイテムの中で顔を隠せるアイテムではこれが一番マシなのである。

 通称嫉妬マスク。ユグドラシルでクリスマスに一定時間ログインしていると問答無用で入手するアイテムである。

 

(どうしてこうなった……)

 

 

 オーバーロード。モモンガはこの"異世界"へ来た日のことを、思い出す。

 

 

 

 

 

 

 セバス・チャンに命じ、外の情報を取得し、ミラーオブリモートビューイングで人の街を見つけることに成功する。

 "外の世界を知るべきだ"とモモンガは自身の足で知るべきだと主張するも、亡き仲間の残したNPC達が反対。

 結果、守護者統括アルベドが完全武装でお供としてついて行くことで納得させられた。

 いや、それを言うならモモンガも完全武装である。

 装備は仮面と小手を除けばフルゴッズという、この世界ではあり得ない装備品である。

 これは何も──カルネ村での戦いを未経験なのが大きい。

 本来の世界線ではモモンガはカルネ村でこの世界の情報を入手し、ある程度強さという物を把握できた。

 だがこの世界ではそれが"無い"以上、力という物に怯えるしかない。

 結果神話級を纏い、守りに特化したアルベドを連れるということになったのだ。

 まぁ、アルベドを連れるのは"そもそも人間に近いシモベかつ、戦士型の者が居なかった"からであるが。

 ルプスレギナやシャルティアも候補には上がったが、ルプスレギナは回復魔法を扱う神官──この世界の宗教がどうなってるかわからない以上動かせないし、シャルティアは外見と言動・行動にもろに影響が出る吸血鬼。

 如何に気を付けようと外から血を浴びて血の狂乱が発動すればどうなるか予測ができない。

 

 結果アルベドの一人勝ちである。

 

 

 

 

 

「……人が多いな」

「そうですね♡モモンガ様」

 

 モモンガたちの設定はこうだ。

 "僻地で研究していた魔法詠唱者──もしくは研究者モモンガとその護衛。アルベド"

 魔法詠唱者もしくは研究者というのは魔法という概念があるかどうかすら定かではないからだ。

 なおアルベドは"妻"という設定を押してきたが却下した。

 しかしながらアルベドを連れたのは間違いだったかと今更ながら後悔する。

 それは何もアルベドに問題があるわけではない。周囲の反応だ。

 人間種には基本翼というのは生えていない。

 腰から翼が生えている──となれば亜人種か異形種か。もしくはマジックアイテムか。

 仮にマジックアイテムだとしても街中で装備しづつける意味がわからないと。

 尚、アルベドは街に入る際その素顔を見られている。

 その場合角が生えていることもバレたが"亜人種"という主張でごり押しした。ビバ美貌。

 

 モモンガたちがいるのは城塞都市エ・ランテル。

 中世ヨーロッパ──というよりはユグドラシルの街なに近い街を、仮面の奥から見る。

 非常に整備されている。

 道路も歩行者と馬車で分けられ、レンガ──モモンガに知識は無いがモルタル等時代を考えれば異質な材料を用いて整備されている。

 かつてはここまで整備されてないのを"黄金の姫"なるものが色々と──軽視されてきた魔法詠唱者や錬金術師を雇い入れ手にしたという。

 

 

 

「……ここか」

 

 そうして歩くこと数分、モモンガたちは目的地にたどり着く。

 冒険者組合と書かれた看板を確認する。

 ギィ、と軋む扉を開ける。

 

 建物の中に居た何人かが視線を向け──ぎょっと、目を見開く。

 

 

 現れたのは素肌を隠す仮面を着けた怪しい魔法詠唱者とこれまた全身鎧に身を包んだ、腰から羽の生えた推定女である。しかも背中にはバルディッシュを背負っている。

 余りにも異様。奇々怪々。

 如何に冒険者には派手な格好をする者がいれど、これほどまでに尖ったのは早々いない。いてたまるか。

 

 ゆっくりと、周囲に視線を向けながら歩く。

 全員の視線を集め、モモンガは羞恥の元受付にたどり着いた。

 

「──冒険者組合に何の御用でしょうか」

 

 

 強い。と全員の──モモンガたち以外の思考が重なった。

 奇怪な格好をした二人組相手でも受付嬢は冷静に対処して見せた。

 

 

「えぇ。冒険者登録をしたいのですが」

「畏まりました。登録ですね。登録手数料として一人銀貨五枚かかります」

「わかりました……こちらに」

「はい、確かに確認しました。それと書類への代筆には銅貨五枚かかりますが……」

「それも頼みます」

「はい、わかりました──」

 

 

 

 必要事項を教えられ、モモンガとアルベドは冒険者に登録を終わらせた。

 プレートは明日の講習後に貰える、とのことだ。

 

(持っててよかった宝石類)

 

 これだけの資金は宝石を適当に売っぱらって手にしたものだ。

 アクセサリー……効果等を考えない外見重視の装備品を作る際に手にしたダイヤモンドやルビー、サファイアなどを持ち込み質屋に二束三文で売ったのだ。

 この地の正しい貨幣価値等もわからないため、相手の言うとおりに売ってしまったが必要経費と割り切った。

 そもそもナザリックには億単位で残っている。数十売っても何も問題は無いのだから。

 なお売る際にアルベドの話術である程度……本当にごくわずかの情報を手に入れることもできた。

 

「……さて、宿に行くか」

「はい♡♡♡」

 

 

 

 

 ■

 

 またもぎいと、軋む扉を押し開ける。

 そして同じように全員の視線が集中する。

 

 ──なんだあいつ。

 

 なんだあれ、冒険者? にしても奇抜過ぎないか? なんで素肌隠してるんだ? 亜人? 横の……女? はなんだ。なんだあの羽。

 二人とも顔隠してるって何かやましいことでもあるのか? 

 

 宿屋──低級の冒険者御用達の宿にいる冒険者たちが困惑する。

 

 冒険者というのは顔が命だ。

 武名を轟かせなければ依頼がこず、その他大勢に埋もれることが多々ある。

 故に髪を染めたりピエロの様なメイクを施したりするものは一定数いる。だが逆に顔を隠すようなことをする者は少ない。

 これが全身鎧でも纏っているのならまだわかるが、それにしても片方はローブを纏って仮面を着けている。

 

「……宿か?」

 

 不安を覚えながら宿屋の店主が問いかける。

 

「えぇ。二人部屋を借りたく」

「……わかった、二人部屋で銅貨十枚だ」

「わかりました。これで」

 

 本来、新人の冒険者には相部屋を勧める。

 新人というのは右も左もわからない。故に同じ新人や先輩と同じ部屋というある程度の共通点を作らせる。

 しかし相手がそれを望まないというのならそれもヨシ。

 今では黄金の姫による改革の影響か、冒険者組合も変化している別に相部屋に拘る必要もない。

 

 

「──よぉあんた。女? を連れていいご身分だな」

 

 ──行った! 行った! 凄いぞアイツ! 

 

 思わず全員の思考が重なる。

 禿げた──沿っている冒険者だ。

 ランクは銀級という、下から数えた方が早いがそれでも何年も冒険者を続けられるベテランである。

 

 

「なぁ、その女を俺に──」

 

 貸してくれ、という言葉は発せることができなかった。

 

 

 めきゃぐじゃぼき

 

 

 擬音にすればそんなところか。最後まで台詞を言い終えることなく冒険者はその女に殴り飛ばされた。

 射線上にあった机を抉り、壁にぶち当たって破った。

 吹き飛んだ男が二回三回とバウンドし、道路の向こう側まで木片と共に飛んで行った。

 

「蛆虫が、図に乗るなよ」

 

 冷めた声。

 聞く者に恐怖を感じさせる、圧倒的超越者からの声だ。

 誰もが──元冒険者の店主も、殴り飛ばされた冒険者の仲間までも明確な"死"を想起する。

 そのまま、吹き飛ばされた冒険者に止めを刺さんと──

 

「──やめろ、アルベド」

「はっ」

 

 男の声で止まる。

 

 

「すまなかったな。これは詫びだ」

 

 ジャラジャラと、何処からから数枚の金貨と見たことも無い赤い液体を差し出す。

 

「行くぞ」

「はい♡」

 

 二人組はそそくさと二階に上がった。

 

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 

「……生きてるか?」

「わがんね」

 

 吹き飛ばされた冒険者はそれはもう凄い勢いで吹き飛ばされた。

 如何にアルベドがタンク系とはいえステータスに優れる異形種、かつ百レベルなのだから当たり前だが。

 むしろ死んでいない方が奇跡である。

 

 吹き飛ばされた壁が道路に散り、幾人かの通行人がなんだなんだとみて来ている。

 冒険者の宿となれば喧嘩もあるが、それでも壁が綺麗さっぱり藻屑となるようなことは珍しい。店主は泣き崩れた。

 

「とりあえずこれかけるべ」

 

 男が──モモンガが置いて行ったポーションを取り出し、倒れた男に振りかける。

 赤いポーションという彼らの常識からは考えられないが、まぁ効果が無くてもいいかと適当に使う。

 

「お、俺はいったい……?」

 

「生きてたか」

 

 壊れた壁を気にせず、破損個所から宿に戻る。

 周囲の視線が痛いが、冒険者である以上仕方がないことだと気にもしない。

 はぁ、とため息と共に外から丸見えのテーブルに座った。

 

「どう思う?」

「……まぁ、冒険者としてやってくことはできるだろ」

 

 男は兎も角、と最後に付け加える。

 

 こういったチンピラそのものの絡み方をするのは何も彼らが見た目通りのチンピラだからという訳ではない。

 彼らは善意でしているのだ。

 

 女を連れていけばどうなるか、力が無いのにできるのか、冒険者として生きていく覚悟があるのか──等々。

 

 今でこそ黄金の姫の改革により冒険者も講習を受けることも、"冒険者とはどういう職業か"という説明会すら存在する。

 しかしあくまでもそれらは"体験談"であり"体験"にはなり得ない。

 事実冒険者を"夢のある仕事"だと勘違いする者は減ったが、それでもなお"自分なら大丈夫"という若さゆえの妄信をする者を弾くためにやっているのだ。

 

「しっかし男はなんだ? 魔法詠唱者か?」

「だろうなぁ、あの見た目なら第二位階ぐらいなら使えるんじゃないか?」

「いやいや、あんな派手な格好してるんだぜ? 第三位階もいけるだろ」

「俺は逆に第一位階だと思う。研究者が護衛連れて現地調査とか、そういうのじゃないか?」

 

 各々好き勝手に予測し、喋りだす。

 外から会話の内容も丸見えだというのに、誰も気にしない。

 

「おいお前ら、少しは修理を手伝え」

「やだよ店主。自分で直せー!」

「そうだそうだ、大金貰ってるんだから直せよー!」

「俺たちゃ客だぞぉ!」

 

 半分酔った者達が修理の為の工具と木材を持ってきた店主に反発する。

 仕方がないと店主は自分で修理を始める。

 外から丸見えの状態というのは宿としては機能不全だ。今から修理業者を雇う訳にもいかない。完全な修理とはいかずとも外から丸見えはどうにかしないと宿という体裁を保てない。

 

「──しかしあの赤いポーションなんだろうな」

 

 その言葉に、通行人の一人がピクリと反応した。

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