GAMERA-ガメラ-/シンフォギアの守護者:XV原作IF特別篇集   作:ハヌシナサワマ

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・戦姫絶唱シンフォギアXV IFです
・オリキャラ出てきます
・妄想オチ


GAMERA-ガメラ-/シンフォギアの守護者 特別篇:戦姫絶唱シンフォギアXV/EP IF2.3-救え!掴め!

戦姫絶唱シンフォギアXV/EP IF2.3-救え掴め

 

 本部内ラボにてパヴァリア残党の敵情推察を行っていた朱音、藤尭、エルフナインの三人は、一旦中間報告書に纏め、弦十郎の自室(彼が自身のポケットマネーで購入した最新式のソフト再生レコーダー、プロジェクター、スクリーン設置等による自主改修でかなり本格的なホームシアターと化している)にて。

 

「なるほど……」

 

 デスクに腰かける弦十郎に、藤尭が最終的に取り纏めたレポート用紙(〝念の為〟と、コピー不可で撮影でも文字が映らない特殊用紙とインクで印刷されている)を見せていた。

 このレポートはデータとして他のオペレーターメンバー各位にも一時暗号化して送られており、これまた対策で専用の網膜認証付きゴーグルを付けないと読めない様になっている。元々旧日本陸軍の諜報機関だった特機二課より再編された国連タスクフォースだけあり、機密情報の取り扱いには細心の注意(たいさく)も取られていた。

 

「しかし……向こうのアキレス腱がこちらに露呈する危険を承知で、ライブ会場を襲撃した方の錬金術師の狙いが、元より〝姪(つばさ)〟そのものだったとなると……」

「はい、翼を心身ともに戦意喪失させることに得をするのは、残党以上に、連中を支援している組織であり──」

 

 代表して朱音は、パヴァリア残党の一連の行動に裏側の奥深い〝闇〟に隠れ潜む〝黒幕〟の可能性(こうほ)を口に仕掛けた直前───館内にエマージェンシーの警報が鳴り響いた。

 

「どうした」

『横浜湾岸埠頭付近に、アルカノイズ出現』

「出動します」

 

 それを聞いた朱音は、小型通信機を耳に付けながら弦十郎の自室を飛び出し。

 

『防犯カメラからの映像から、パヴァリアの残党と、彼女らに追跡されている民間人のライダーたちの存在を確認しました』

 

 回廊を疾駆して、大体の状況を聞き取り。

 

(口封じか……It's a misfortune that Bad Riders(とんだ災難だな暴走族たち)

 

 連中の目的を推察しつつ、潜水艦(ほんぶ)の甲板に上がり。

 

〝Valdura~airluoues~giaea~~♪(我、ガイアの力を纏いて、悪しき魂と戦わん)〟

 

 甲板の手すりを踏み込んで跳躍と同時に変身、腰の背部に折り畳まれていた猛禽類と柳星張覚醒頃のガメラ飛行形態時の腕の特徴を掛け合わせた形状の翼──《ブレージングウイングスラスター》を左右対称に広げ、風切部からプラズマエネルギーの粒子を点火して急加速、現場へと閃光して急行した。

 

 

 

 

 

「のぉぉぉぉぉーーーー」

 

 追われる不良ライダーたちの内、二人でタンデムしていた一台が大破炎上し、改造した白学ランを着てカスタムバイクを走らせ必死に逃げるリーダー格も、焦燥の余りスピードを上げ過ぎてバランスを失い、運転を過って東海道新幹線の高架橋付近にて盛大に転倒し、カスタムバイクも火を大きく上げてお釈迦となった。

 

「いてて……おっ」

「気合いが少々入れ過ぎなのは否めない運転でありました」

「それじゃ、そろそろ赤旗を降らせてもらうゼ、ゴールドリーゼントなホワイトヤンキー」

 

 辛うじてまだ命はあったものの、眼前のミラアルクとエルザらを前に。

 

「助けて 神様──」

 

 助かった命も風前の灯火の中号泣し、続いて〝天使様ァァァァ───〟と助けを求めて叫ぶ直前だった。

 ライダーの肉体にロープ状のものが巻かれると同時に。

 

〝~~~♪〟

 

 大自然を想起させる伴奏と滑らかに流麗にして聞く者を力づける澄んだ歌声が聞こえる中、気がつけばライダーはロープに引っ張られた状態で。

 

「ひぇぇぇぇぇーーーー」

 

 高速で空を飛んでおり、ライダーが事態を呑み込めず奇声を上げる中。

 

『もう少しの辛抱だ』

 

 手の噴射口から放った光(エネルギー)のロープ──《旋律囃(せんりつそう)──フォニックビュート》で胴体を巻きつけて救出し、機密対策でクリスがかつて使っていたネフシュタンの鎧を参考にしたバイザーで口以外の顔を隠した朱音が帯を引っ張り、ライダーを手繰り寄せ、横抱きの態勢で少しずつ降下。

 

「あんたは」

『通りすがりの仮面シンガーさ、君の仲間(フレンド)たちも無事だ』

 

 歌唱時に、代行で〝口〟となってくれる胸部中央の勾玉(マイクスピーカー)から、ユーモア込みでそう答えた朱音は、のエージェントたちと専用車両が控える横浜市内の公園内へと向かう。

 

「「兄貴~~~」」

「あいつら……」

 

 エージェントに混じって、リーダーと同様朱音のフォニックビュートで爆発に巻き込まれる間一髪のとこで助け出された舎弟たちが、大きく手を振っていた。

 新幹線高架橋周辺では、響とクリスがアルカノイズに残党らと交戦し足止めしている。

 朱音はふわりと園内に着地と同時にリーダーを下ろし。

 

「残党と取引していたと思われる連中は」

「補足済みです」

 

 二課時代より使われていたものを改良され、光学迷彩機能と対錬金術師牽制用の武装も付加された専用ドローンのカメラが捉えていた。

 

「今他のメンバーが追跡中」

「では私もお縄を頂戴に行ってきます」

 

 再び勾玉からメロディを流して歌い出しウイングスラスターを広げると、朱音は垂直上昇。本部の友里らからのナビゲートに従って飛行していると。

 

『例の車両を発見』

『予測進路の全てに検問を張った、遠慮せず車両を止めて確保しろ』

『了解』

 

 弦十郎の指示を受けた朱音は急速降下してあっと言う間にターゲットの車両の真横に並走して張り付き、ガラスをノックして。

 

『そこの黒セダン 法定速度違反です、今すぐ車両を止めなさい』

 

 と呼び掛けるも、当然素直に応じる相手ではなく拳銃を朱音に向ける。

 それを見越してた朱音が横回転して発砲された銃弾を躱しつつそのまま車両の屋根に張り付き、腕のアーマーから伸ばした諸刃の剣《光肢剣──フォトンアームブレード》で天井越しに、ハンドルを深々と突き刺し、引き抜くと同時にガラスを完全に飛び散らせない加減でたたき割り視界不良にした。

 車を操作できなくなって標的たちがパニックを起こす中、朱音は屋根から前方に回り込み、両手両腕でフロントを指先の爪を食い込ませるほどの腕力で抑えつけ、両足も踏ん張り減速。エージェットたちが張った検問の手前で、停止させた。

 朱音が運転席側のドアを丸ごともぎ取ると同時に、エージェントたちは車両内の標的に銃を向けるも、幸い二人とも涎を口元からだらりと流して気絶しており、良い意味で警戒は杞憂に終わった。

 

「お手柄ですね」

『お互いさまですよ』

 

 連係プレーで下手人の一部を生きたまま確保した朱音は、歌唱を維持したままエージェントたちと健闘を讃え合った。

 

『現場近辺に他の残党は』

『響きちゃんたちが交戦している二人組以外には反応はないわ』

「私たちは付近住民の避難を続けますので、朱音さんは響さんたちの援護に行って下さい」

『分かりました、お気を付けて』

 

 朱音は、響たちのいる交戦区域へと急ぎ飛んだ。

 

 

 

 

 

『昨日のライブと言い今日といい、こんな酷いことをして貴方たちは何がしたいのッ』

「答える舌は端から持ってないゼ、立花響ッ」

 

 戦場(そちら)では、広域殲滅に長けたクリスがアルカノイズの殲滅に当たり、響は赤く肥大化させたミラアルクの両手と自分の手を掴み合わせ、真正面から押し合っている。

 

(なんてパワー……イグナイトがあれば……)

 

 ミラアルクの腕力は、パワータイプの響とガングニールでさえ、アスファルトを抉って大きく後退させられる程のパワーであり、歌う彼女の額から冷や汗が流れる程だった。

 

「今イグナイトが残っていればと考えてただろ」

「はっ」

 

 ミラアルクに自分の心情を見抜かれ、歌唱が乱れた為に。

 

「呪われし魔剣が齎した決戦機能はとうに失ったと、こっちはとうに調べはついているんだゼッ」

『だ、だからって──』

 

〝~~~♪〟

 

 負けまいと歌の声量を上げ押し返そうとした響の反撃に、ミラアルクは待ってましたと言わんばかりの不敵な笑みで双眸を光らせ始めるとともに、こちらに意識を向けすぎてがら空きな背後を突こうとしたが。

 

『惑わされるな響、後ろだッ』

 

 両者の狭間のアスファルトに銃弾が当たり、小規模の爆発が起きるてどちらも咄嗟に跳んで引き、朱音の言葉の意味を理解した響は背後に振り向きざま、自分に奇襲を掛けようとした飛行型アルカノイズを赤熱化した首のマフラーで迎撃した。

 

『危なかったな』

『助かったよ朱音ちゃん』

『響はもう一人の残党を』

『うん』

 

 朱音も戦地に降り立ち、ミラアルクと再び対峙。

 

(くそ あいつらじゃ時間稼ぎにもならなかったのかよ……)

 

 先程ミラアルクにエルザと取引していた支援者(スポンサー)の配下は、その模様を見てしまった暴走族の抹殺(くちどめ)を期待していたが、残党の二人も、向こうが朱音の時間稼ぎをしてくれると期待していたので、こんなに早くも戦線復帰し自分を打ち負かした相手と対峙する状況に、内心焦りながらも。

 

「このセカンドマッチでリベンジさせてもらうゼ」

 

 それを顔に出さず不敵な態度のまま飛翔と降下からの、肥大化させた両足による蹴りを繰り出す。

 朱音は響同様、腰と両脚を強く地面に込め、両手で真正面から受け止めようと待ち受ける───。

 

(よし、このままウチの魔眼の〝刻印〟でリベンジ──)

 

───一見は、そう見えたが、実態は違った。。

 

(えっ)

 

 肥大化した両足に、朱音の両手が触れた次の瞬間、ミラアルクに混乱が襲う。

 突如、空中体勢のバランスが崩れ、前回りに彼女が宙を舞ったかと思うと、そのまま戦闘で荒れたアスファルトへ、さらなる亀裂と穴ができ、瓦礫が舞う程かつ、改造実験で肉体強化された彼女の意識が一時飛ぶほどの衝撃を受けた。

 朱音は、相手の両手に触れた際、自身が会得している格闘技の技術で、ミラアルクの〝余分〟な力を利用して受け流しつつ、弦十郎譲りの〝発勁〟の応用で、アスファルトへミラアルクを盛大に投げつけると同時に、相手のキックの際生じた衝撃をそのままお返しして大地へ叩き込んだ。

 余りの衝撃の勢いで、バウンドし浮き上がったミラアルクに爪を立てて突き出し。

 

《激突貫──ラッシングクロー》

 

 ライブの際、翼の前で人質の少女へ行おうとした凶行の意趣返しとばかり、右手から相手の静脈が流れる腹部へと正確に刺突して、串刺しに。

 手を引き抜くと同時に、ストレートキックを弾丸の如く撃ち込み、ミラアルクは後方へアスファルトを転げ回った。

 

「ミラアルクッ」

 

 家族(なかま)のピンチに、エルザは響から振り切って跳躍し、手に持つスーツケースから取り出した狼のものらしい巨大な獣の手(アタッチメント)を尾に装着し、上空から拳撃を打ちこもうとした。

 

〝災いを撒く邪悪よ~~受けるがいい~~♪〟

 

 だが──。

 

「バニシングゥゥゥーー~~フィ~~ストォォォォォォーーーー」

 

 右腕が纏った炎のガメラの拳が繰り出されるアッパーパンチ──《爆熱拳──バニシングフィスト》と衝突、朱音の強力なフォニックゲインが生み出す一撃に、あっさり競り負けたエルザは打ち上げられ、予め空中に鎮座していたシェルシールドⅡの表面と激突。

 盾の特性で今発生した衝撃も受けたエルザは──。

 

「エル……ザ……」

 

 腹部と口より血を垂れ流すミラアルクの傍へと落下し、ミラアルクほどではないが今のダメージで、戦闘継続は艱難なものなった。

 

『玉手箱の中身を見せやがれッ』

 

 すかさずクリスの中折れ式リボルバーから発射された弾丸は、エルザが持っていたもの内、テレポートジェムを破壊し、もう一つの箱(アタッシュケース)の留め具に当て、中身の一部が盛大に飛び出した。

 

『よっと』

 

 それを響のマフラーがキャッチして、こちらに手繰り寄せ、朱音に手渡した。

 それは──血の入ったパックであり。

 

「……スイル式」

 

 内部の真紅の血液がはっきり見えるパックの表面には、確かにそう表記されていた。

 

「これって、輸血パック」

「Yeah(ああ)、それも中身は、百四〇万人に一人しか持たないとても貴重なタイプだ」

「んなっ──マジかよ」

「マジさ、さて………お前達はこれを定期的に輸血しないと今日を生きるのにも精一杯、そうだろう BAT GIRLにWOLF GIRL?」

 

 朱音からのその問いに、ミラアルクたちは驚愕の表情を見せたのを経て睨みつけてきた。

 

「その様子だと、特賞(ジャックポット)らしいじゃねえか、錬金術師」

 

 朱音とクリスは、決死の反撃に備え、各々の拳銃(アームドギア)の銃口を向ける。

 

「抵抗は止めた方がいい、特にBAT GIRL、お前の静脈は焼いて塞いである」

 

 朱音はラッシングクローで刺突した際、突き裂いたミラアルクの心臓に繋がる静脈の一つを焼いて塞いだ。

 これで血液の循環が困難な上、今の戦闘によるダメージで貴重な血も大分流されてしまった……本調子なら直ぐに治癒してくれる再生能力も碌に働いてはくれなかった。

 二人にとっては、まさに万事休すな芳しくない状況、それでもミラアルクは満身創痍の身体でエルザを庇っている。

 対する朱音らは、銃口を下ろしながら。

 

「今投降すれば、毎日の輸血(しょくじ)は保障する、だから──」

 

 ここまで投降勧告を伝えたところで、朱音の背中が殺気の悪寒を感じ取り。

 

「散開しろッ」

 

 朱音の叫びを機に三人が同時にその場からバラバラに散らばると、直前までいた箇所へ、ありとあらゆる方角から、銃撃の驟雨が降り注ぎ──その上新手のアルカノイズが出現して三人を襲い、それらの攻撃に対応している間、ミラアルクの足下に銃弾が当たった音が鳴り。

 

「Jesus(しまった)!」

 

 二人はテレポートジェムの現象そのものである、錬成陣の輪の中で、消えつつあった。

 

「「させるかッ」」

 

 せめてもと、朱音とクリスは輸血パックを携えたアタッシュケースを弾き飛ばすも、ミラアルクたちには一部のパックごとテレポートで逃げられてしまった。

 

「クソッタレどこからジェムをあいつらに」

「おそらく、超遠距離から、鉛の代わりにジェムを付けたライフル弾による仲間の狙撃で運ばれたってとこだな」

 

 ミラアルクとエルザが逃げられた絡繰りを朱音が述べた直後、耳に付けた小型通信機が鳴る。

 

「こちら朱音、申し訳ありません司令、またしても逃げられました」

『いや、逃げられこそしたが収穫は多く得られたし、人命も救えた、三人ともご苦労、帰還用の車がそちらに向かっているから、それに乗って本部に戻ってくれ』

「「「了解」」」

 

 二度目の戦闘も、パヴァリア残党には逃げられてしまったが………今回は一人たりとも民間人の犠牲者を出さず、さらなる手がかりを得ることはできた、一同だった。

 

朱音が残党に逃げられた悔しさと、更なる手がかりを得た達成感の両方を噛み締めていた時だった。

 

突然、周りの景色がぐにゃりと歪む。一瞬自分の目がおかしくなったのかと思ったが、そうではない。つい先程まで自身が見ていた景色は、まるで''作られた世界''だったと言わんばかりに歪曲しながら、全く別の景色に様変わりしていく。

 

そう、朱音の周りにはいつのまにか誰も居なくなっており、代わりにどこまでも暗い闇と、その闇の中で銀色の輝きを放つ鏡がいくつも鎮座していた。

 

別世界になったような、目の前の神秘的な光景を目の当たりにして、呆然と立ち尽くす朱音だったが、次の瞬間だった。

 

無数にある鏡の全てに、幼い少女の姿が映し出されたのだ。胸元まで伸ばした切り揃えられた白銀の髪、病的に白い肌、少女が持つそれらの特徴を誇示するかのような純白のミニドレス。この闇の中では、あまりにも浮いた容姿をしたその少女は、以前ライブ襲撃の時に朱音の前に突然現れ、完膚なきまでに朱音を打ちのめしたあの少女だ。そういえば、鏡に自分自身の姿は写っていない事に気づく。

 

 

「お前は、一体何者なんだ。なぜ、救えたはずの命が救えていなかった」

 

 

朱音は無数の鏡の中の少女に問いかける。だが、そう朱音が問うと、鏡に写る''少女達''がクスクス笑う声が闇に響く。そして、笑うのを辞めた鏡の中の少女達は一斉に朱音の方に視線を送る。何とも言えない居心地の悪さに、朱音は眉間に皺を寄せる。

 

 

「なぜって、そりゃあ救えてなかったからじゃない それより見てよ。お前の為に用意したんだよ この前みたいにただ真っ暗じゃ殺風景かなぁって思って」

 

 

少女は小さな両手を広げて、瞳を輝かせながら言う。相変わらず、何を考えているのかさっぱり分からない。ただ無邪気な笑顔の裏に、そこはかとない邪悪さを秘めていることを朱音は感じ取っていた。

 

 

「ふざけるな 何を企んでいるッ」

 

 

朱音の警戒心から来る怒鳴り声が闇にこだまする。すると少女の表情は無邪気な笑みから、ニヤリとした嫌な笑みに変わった。そして、先ほどよりも低い声で言う。

 

 

「草凪朱音フルボッコステージパート」

 

 

少女がそう言った瞬間、無数の鏡の中の''少女達''が次々と鏡をすり抜けていく。

 

 

「何っ」

 

 

朱音が、目の前で起こっている予想外の現象に慌てていると、鏡の中からすり抜けてきた''少女達''は一斉に朱音の方に飛びかかってくる。突然攻撃を仕掛けられ、防御の体勢に入るのが遅れた朱音は、そのまま少女の群れに袋叩きに遭う。

 

カシスベリーがかった黒髪は引っ張られ、顔や身体には容赦なく拳や足が飛んでくる。朱音はあっという間に立つことも出来なくなり、少女の足蹴りを喰らったと同時に、後方に吹き飛ばされ仰向けに倒れる。

 

しかし、それだけでは終わらない。少女の一人がその隙を逃すまいと、助走をつけてジャンプしたかと思うと、長いクリスタルの棒状のものをその手に顕現させる。そして着地すると同時に、朱音の腹めがけてクリスタルの棒を叩きつける。硬いクリスタルが、朱音の腹をしっかり仕留め、内臓を圧迫されるような痛みが走る。

 

 

「グハッッッッっ」

 

 

朱音の口から大量の血が吐き出される。

 

だが、痛みに身を捩る事さえも許されない。更に頭皮を凄まじい力で引っ張られ、顔や身体は殴られ蹴られ痛ぶられる。まさに少女数十人による暴力だった。

 

 

「う......うぅぅぅぅぅぅぅ...」

 

 

どのくらい時間が経ったかも分からない。すっかり朱音の全身はアザだらけになり、至る所から血が流れている。度重なる暴行で、口腔内も切れ、歯も折れており、微かに鉄の味がする。

 

 

「あっははっ そろそろ限界迎えてそうなお前に、ご褒美をあげる」

 

 

仰向けになっている朱音に、少女がニッコリ微笑みながら言う。そして表情は崩さないまま、その後ろ手に持っていた真っ赤な唐辛子を、まるで小動物に餌を与えるかのような仕草で朱音に見せつけてくる。

 

 

「な、何を......」

 

 

朱音が息も絶え絶えの様子で言うと、少女は隣に居る自分と全く同じ姿をした少女に目で合図を送った。合図をされた少女はしゃがみ込むと、何と腫れ上がった朱音の目を無理矢理開かせる。

 

 

「な、何をするつもりだっ や、やめろっっ」

「まぁまぁ、そう遠慮なさらずに。受け取って下さいよっ」

 

 

朱音の必死の抵抗は虚しく、唐辛子を持った少女は、その刺激物を朱音の翡翠の瞳に遠慮なく押し当てた。グリグリグリグリと、唐辛子をすり潰すように朱音の目に押し当ててくる少女。視界は一気に真っ赤になり、目は灼熱の痛みに襲われ、ダムのごとく涙が溢れ出てくる。

 

 

「あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「もう一つの目も開けましょうねぇ」

 

 

目を抑えながら、激しく暴れる朱音のもう片方の腫れ上がった瞼も、少女の手によって無理矢理開かされる。

 

 

「や、やめろっ」

「やめるわけ、ないじゃん」

 

 

片方だけしか見えないが、少女がニッコリ微笑んでいるのは、ハッキリ見える。少女の手に持たれた唐辛子が、朱音の視界を支配したら最後、朱音の痛みと苦痛に満ちた絶叫がこだまする。

 

そんな悪夢のような所業が、少女の気が済むまで行われ、その間ずっと朱音は叫び続けていた。それはもう、聞くに耐えない絶叫だ。

 

 

「はぁ...」

 

 

すり潰された唐辛子をゴミのように投げ捨てると、少女は飽きたとでも言うようにため息を吐く。朱音はと言うと、身体をピクピクさせながら完全に失神していた。そんな朱音の姿に少女は腹が立ったのだろう。

 

 

「勝手に失神してんじゃねぇぞ、こら」

 

 

真っ赤に輝くクリスタルの棒を顕現させると、それを朱音の膣に挿入した。瞬間、膣内に焼けるような痛みが走り、無理矢理意識を回復させられる。

 

 

「アァァァァァァァァァァァァァ」

 

 

惨めだった。ここまで無様にやられるとは......

一体自分が先ほどまで見ていた景色は何だったんだ。膣が焼けるような痛みに耐えながらも、朱音は何とか涙で歪んだ視界に映る少女の細い足首を掴む。せめてもの抵抗のつもりだ。その手にギューっと力を込める。

 

 

「ちょっと、汚い手で気安く触らないでくれる」

 

 

だがそんな抵抗が少女に通用するわけもなかった。少女は冷たく言い放つと、朱音の脇腹を蹴飛ばした。

 

 

「グホッ」

 

 

蹴飛ばされた朱音の身体は、低空飛行し地面に叩きつけられ、バウンドする。そして運悪く朱音が蹴飛ばされた場所にも、少女が待機しており、朱音の長い髪を引っ張り上げながら、無理矢理立たせる。

 

 

「アッ...アァァァァッ!!」

 

 

髪を引っ張られ、無理矢理立たされた瞬間だった。朱音の腹を何かが突き破ったかと思い、訳のわからないまま視線を自分の腹に落とす。腹からは大量の血が溢れ出し、同時に朱音は口から盛大に吐血する。

 

 

「グハッ」

 

 

そう、朱音の腹は少女の腕によって後ろから串刺しにされていたのだ。自分の腹から少女の腕が伸びている異様な光景。少女は朱音の腹から腕を勢いよく引き抜くと同時に、腸も一緒に引き摺り出した。

 

白目を剥いて、その場に力なく倒れる朱音。

 

朱音の返り血に染まった少女は、そんな朱音を冷めきった目で見下ろすと、パチンと指を鳴らした。

 

 

 

 

次に朱音が目を覚ました場所は、の医務室だった。目の前には、クリスと響の心配そうな顔があった。

 

 

「朱音ちゃん、気がついた」

「ひっっどい怪我と顔で倒れてたんだぞ 一体何があったんだよ」

 

 

響とクリスがそれぞれ心配してくる。だがプライドの高い朱音だ。そんな心配してくれる二人に素直にお礼や謝罪が出来るわけもない。朱音は響とクリスを睨みつける。

 

 

「お前らこそ、何をやってたんだ また残党二人に逃げられたりしてっ 私があれだけ食い止めたと言うのにっ」

 

 

朱音に突然そんな事を言われ、響は困惑したような表情を浮かべ、クリスはムッとした顔になる。そして表情は、嘘をつかない。クリスが朱音を鋭い視線で見返しながら異論を唱える。

 

 

「お言葉だが何もやってないのは朱音、お前だろ」

「何 私は残党を精一杯食い止めた」

「はぁ 食い止めてたのはあたしらで、お前は何もやってないんだよ。そりゃ残党に逃げられたのは、あたしらの不始末だが。だがな、戦闘に居合わせても居なかったお前に、偉そうに言われる覚えはない。お前、ライブ襲撃の時から何か変だぞ」

 

 

クリスはきっぱりそう言い残すと、響に「行くぞ」と言わんばかりにアイコンタクトを取ると、医務室を後にした。一人取り残された朱音は、何かが噛み合っていない違和感を感じながら、クリスと響が出て行ったドアを見つめるだけだった。

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