GAMERA-ガメラ-/シンフォギアの守護者:XV原作IF特別篇集   作:ハヌシナサワマ

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オリキャラ、 IF、グロ注意、妄想オチ、バッドエンド


シンフォギアXV EP5IF-奇襲-Surprise Attack

シンフォギアXV EP5IF-奇襲-

 

 

シンフォギアXV EP5IF-奇襲-Surprise Attack

 

 

songが、民主主義の在り方をほとんど完全に無視した形で成立、強行採決に公布施行させられた《護国災害派遣法》の第六条──『日本政府は国内で起きたあらゆる超常災害に対し、優先的に介入を可とする』を下とした政府の査察と〝特別警戒待機〟の名を借りた監視下に置かれてしまってから、数日後。

 真冬の渋谷は、響発案の気晴らしに出かけていた響、未来、翼、エルフナインの四人はアルカノイズによる襲撃に遭遇。

 未来とエルフナインも含めた民間人が避難している間、応戦していた響と翼だったが、ノーブルレッドが一人も現れず、アルカノイズが〝ただ暴れている状況〟に違和感を覚えた響。

 

「なんで……繋がらないの……未来、エルフナインちゃん……早く出て」

 

 査察部の命令により渋谷区内のアルカノイズ殲滅を優先せざるを得なかった響は、状況終了して程なく未来の携帯に電話を掛けるも繋がらない。

 残念なことに、彼女の〝読み〟は……当たっていた。

 

 

 

 

 

 渋谷に出現したアルカノイズは、特別警戒待機のせいで査察団の許可が下りない限り自由に動けない装者を足止めする陽動。

 

「大丈夫」

「そっちの鈍くさくすっ転んだ方が、エルフナインだろ よくここまでちょこまか逃げられたもんだゼ」

 

 避難中に、狭い路地裏の道にて凍ったアスファルトにより転倒させられたエルフナインを起こす未来の前に、ミラアルクが降り立つ。

 

「友達に手を出さないでッ」

「未来さんダメです」

 

 両手を広げて未来がエルフナインを庇い立てる中、典型的な小物臭がにおい過ぎる嘲笑を浮かべる──髭面の査察官までも現れる。

 

「なんで貴方が……」

「エルフナイン、お前を本部の外に連れ出す為さ、なぜああも簡単に外出許可が下りたか、微塵も怪しまなかったのは見物だよ」

「そして本部(かご)の外に出たお前を分捕るのが、アタシらの役目だゼ そしてそっちのアンタをどうするのかと言うと──」

 

 ミラアルクは、思念通話でヴァネッサからの指示を受け。

 

「悪く思うないでほしいゼ」

 

 ミラアルクが紅色な五指の内、人差し指の爪を伸ばし。

 

「危ない」

「未来さんッ」

「テレビではすっかりお目にかかれなくなったシーンにわたくし、あちこちの昂ぶりを抑えきれないッ」

 

 未来が慟哭するエルフナインを抱きしめる様に庇い立てる。

 殺意、献身、号泣にある種の混沌さまでも蔓延る裏通りで、大量の鮮血の水粒子が迸る惨劇が起きかけた──。

 

 

 

 

 

 ──だが、それは突如空から斜線を描いて降ってきた〝銀色の杭〟が二発、大気ごと状況そのものを阻止し、打ち破り。

 

「ぐあっ」

 

 時間差を置き、一発目の杭はミラアルクの右肩を突き破り、背後の外壁に叩き付けられた、二発は人さし指の爪が伸びる右手の掌へ、磔に処するが如く串刺しにされた。

 咄嗟にミラアルクは、右肩に刺さった杭を引き抜こうと左手で掴んだ瞬間。 

 指鳴らしの音色を合図に、杭は二つとも爆発、ミラアルクの左手に、右腕など肩ごと爆音轟く〝プラズマ〟の焔で吹っ飛び。

 

「があぁぁぁーーーーーー」

 

 狭き路地内で、ミラアルクの悲鳴が盛大に響いた。

 直後、上空から垂直真下に一同の中央の地に降り立った者が一人。

 

「朱音」

「朱音さん」

 

 口に逆五角形状かつ防毒型に似たマスクを付けた朱音は、着地して間をおかず《フォニックビュート》で喜色悪いにも程がある恍惚に興奮していた査察官の両腕と腰を電柱ごと縛り付けると同時に、両手を消失したミラアルクの首を左手で鷲掴み、右手の画手甲から伸ばした三爪(ドライフォトンクロー)を、敢えて刃を赤熱化させず相手の脇に突き刺し入れ。

 再びミラアルクの口から、呻き悲鳴が大きく木霊する。

 

(ギアを纏ってるとは言え、あの爺より……)

 

 左手のギアスーツの指から伸びた爪も首に深々食い込み、朱音は彼女を持ち上げる。

 抵抗しようにも、戦闘能力の源であるミラアルクの貴重な血が彼女の身体を通じて何滴も、彼女の力ごと氷結した道路上に落ちていき、アルカノイズを召喚する暇すら与えられない。

 

『ミラアルクだったな……今度こそ逃がさないぞ』

 

 生やした爪に匹敵する鋭利な翡翠の眼差しで朱音はマスクをしたまま、勾玉から声を発した。

 この状態を朱音は《ヘッドフォンモード》と呼んでおり、伴奏は脳内で直接響かせ、口から歌唱する歌声も防音マスクで遮断しつつ、周囲に歌が駄々漏れとなるシンフォギアの弱点をカバーしたまま、戦闘力をキープできる様に施されていた。

 これによりミラアルク達に悟られぬまま、アップグレードを繰り返しながらも最初にギアを纏った日から使い続けているアームドギアの基本形態の一つ──《プラズマライフル》から銀の杭を遠距離から飛ばし、爆発させて敵の腕(ぶき)を破砕し、見事奇襲攻撃を果たせたのだ。

 

「くそ」

 

 どうにかして朱音から逃れようと、催眠魔眼を発動し、翡翠の瞳に叩き込もうとしたミラアルクは、自分の肉体にさらなる異変に気がつく。

 

(あ……熱い)

 

『逃がさないと言った筈だ』

 

 真冬の真っただ中と言うのに、ミラアルクの体内は灼熱に魘され、全身の肌から蒸気が漏れだし、立ち昇る。

 蒸気の正体は、体内で蒸発されたミラアルクの血液と水分だった。

 前世の頃より朱音──ガメラには、熱エネルギーを自由自在の吸収、放出、温度の上昇下降、制御できる能力を有している。

 朱音は爪を通じ、その能力でミラアルクの血液内の熱エネルギーを乗っ取り、そのまま水分ごと蒸発させた。

 

『魔眼を使う暇もな』

 

 なけなしの切札だった魔眼も血が沸騰破裂し、ミラアルクは完全に戦闘能力を根絶させられた。

 

『残る〝錆びた赤色〟よ、聞こえているだろう』

 

 朱音は勾玉からの電子声と同時に、敵の脳髄を通じて歌唱で高められたフォニックゲインを用いた思念を発し、ミラアルクここにはいない彼女の家族(なかま)に呼び掛ける。

 

『私の祖父(かぞく)も言っていた、〝悪魔の囁きは時に天使か神からの福音に聞こえてしまう〟ってな』

 

 最初にして、最後通牒(アルティメイタム)の言葉を。

 

『悪魔の誘惑に屈した時点で、お前たちは諦め、負けて、統制局長と同じ奈落に堕ちたんだ………人ならざる肉体にも確かに残っていた───〝人の心〟を代価(ひきかえ)にしてなッ』

 

 辛辣かつ痛烈かつ厳めしく……突きつけた。

 返答はない、だが微かながら確かに、向こうから戦慄する思念を朱音は感じ取った。

 

『安心しろ、ミラアルクは、お前達の家族は殺さない……だが生かしもしない、天国でもまして地獄でもない、あの世とこの世の境界に存在する闇──〝煉獄〟に彷徨ってもらう、私から残党(おまえたち)に送る言葉はもう一つ──それでも〝人間〟に戻りたいなら、ならばいっそ、もう一度人に転生できることを祈って、私が直にその異形の肉体から引導(かいほう)させてやる………閻魔様の寛大な処置を願うんだなッ──私からの話はそれだけだ、もうお前達に語る舌は持たないぞ』

 

 言い終えると同時に、朱音の大事な友である未来とエルフナインにまで手を出そうとしたミラアルクから、右手の爪を引き抜き、首を鷲掴みにしていた左手をさらりと離した。

 体内の血と水分を全て蒸発し尽くされたミラアルクは、見る影もないミイラ姿となって、その場に力なく倒れ込み、それでもまだ肉体に宿る魂は、朱音の宣言通り、煉獄の奈落(せかい)へと沈没していった。

 

「処理班、残党の回収をお願いします」

 

 他に敵はいないと確認して変身を解いた朱音は通信を行い、程なく宅配車に偽装した、現在は風鳴八紘情報官を長とする《内閣情報調査室》の傘下にある現《特異災害対策機動部》の聖遺物回収及び二次災害の後処理を職務とした処理班とエージェントの黒セダンが到着。

 防護服を着た処理班は手早くミイラ化したミラアルクをシートに入れてキャスター付き担架に乗せ、そのまま車内に入れて撤収していった。

 ちなみに未来とエルフナインは、朱音がこの場に到着すると同時に別のエージェントによって既に保護されこの場から退避させられており、今は既に現特機部本部内にて、変化する事態の把握と整理が纏まるまでの間、匿わられている格好だ。

 

「あ、ありがとうございます………実は私もノーブルレッドの支援組織に脅される形で──」

 

 見え透いた言い訳を発する査察官へ、朱音はコート内のホルスターに忍ばせていたSIG SAUER を、瞬息の速さで抜いて振り向きざまに銃口を突きつけ。

 

「ひぃっ」

 

 査察官に情けない声を上げさせ黙らせ、手を挙げさせた。

 他のエージェントたちの拳銃を向け、抵抗は無意味だと査察官に突きつける。

 

「な、何の真似だ草凪朱音 今は私がを束ねているのだぞ」

 

 それでも小物極まる虚勢を張る査察官に、朱音は答える代わりにスマートフォンを翳し見せ。

 

『エルフナイン、お前を本部の外に連れ出す為さ、何故ああも簡単に外出許可が下りたか、微塵も怪しまなかったのは見物だよ』

『そして本部(かご)の外に出たお前を分捕るのが、アタシらの役目だゼ』

「なっ……」

 

 端末から再生された自身とミラアルクの声に、査察官は絶句する。

 

「お前が支援組織の差し金だと言う物的証拠の数々は、今の音声も込みでとっくに掴み、日本政府に開示している、の指揮権も、正式な手続きをちゃんと踏んで査察を中止し、元の鞘に収まり済みさ」

「ま、まさか……その為に現〝突起物〟に」

「ご名答、調査を進めていればいずれ護災法第六条を盾にを乗っ取る可能性があったのでね、特機部への一時出向はその対策だったのさ」

 

 八紘情報官指揮の下特機部含めた内閣情報調査室の面々と朱音は、正式な手続きの下行われた査察部のメンバーの中に、不明瞭な経歴の持ち主と、〝鎌倉の意志〟の介入の痕跡があったことが判明。密かに進められたさらなる調査で、査察官そのものが支援組織の一人であることも掴んでいた。

 何より実際に介入される以前から、こうなる事態を弦十郎と八紘情報官は見越し、正式な手続きの上で、所属装者の内、朱音と切歌と調の三人を一時特機部の傘下に置かせた。

 お陰で査察部の枷を受けることなく、真相究明と敵の狙いの阻止の為に動くことができたのだ。

 

「お前がそれを微塵も怪しまなかったのは見物な上に無能の証明だよ………査察官殿」

 

 朱音は不敵な笑みで意趣返しも含めた皮肉(ブラックユーモア)の濃度もたっぷりに〝種明かし〟を伝えつつ、SIG SAUERP320の銃口を下ろし。

 

「そう言えば〝テレビではすっかりお目にかかれなくなったシーン〟をこの目で見たいとご所望でしたっけ……」

 

 ホルスターに収めながら、こう述べると同時に──。

 

「Mother Fuckerッ(このくそったれがッ)」

 

 査察官の小物顔へ、打撃技の中でも強力かつ回避も困難なロシアンフックを盛大に打ちこみ、頬がめり込み歯の一部が砕くほどの威力な拳撃をクリティカルヒットさせられた査察官は、呻き声すら出せずにそのまま頭から凍る路面に受け身も取れず存分に叩き付けられ、脳震盪を起こして気を失った。

 パンチの勢いで少し乱れた髪を整え直している朱音は、これでも手加減した方である。

 

「連行して下さい」

「了解、このヒゲヤローからは洗いざらい真相を吐かせてやりますよ」

「お任せします、脅迫のお手伝いなら、いつでも受け付けてますから」

 

 朱音と軽くジョークも交し合うエージェントたちに手錠を嵌められ、査察官は気絶したまま彼らの車に乗せられて連行されていった。

 すると、耳に付けていた小型通信機の着信音が鳴り。

 

「こちら朱音、どうぞ」

『こちら切歌と調デス』

『渋谷に現れた陽動役のアルカノイズは、響さんと翼さんとともに殲滅』

『状況終了したデ~ス』

 

 切歌たちから連絡が入った。二人も朱音同様特機部に一時的ながら出向していたので特別警戒待機の網に掛かることなく、渋谷の戦場に馳せ参じ、響達とともに被害を最小限に抑えた上で陽動役のアルカノイズを掃討することができた。

 

「こちらも残党(ノーブルレッド)の一人と、査察に紛れていた〝虫野郎〟を確保できた、二人ともご苦労様、一旦特機部本部の方へ戻ってくれ、まだ一応、私達はそこに出向中だからな」

『『了解(です)』』

 

 調と切歌との状況報告、通信を終えると。

 

「朱音さんも乗って下さい」

「ありがとうございます、本部に戻ったらカレー皆さんにご馳走しますよ」

「おお~~そりゃみんな喜びますね」

 

 現在の特機部の大半は、元一課に所属していたメンバーである、特異災害を通じて朱音と交流を深め、彼女のファンとなったメンバーばかりで、彼もその一人だった。

 久々に朱音のご馳走を味わえると知ったエージェントは、任務は一応終了したのもあって、陽気に口笛を吹きながら朱音を乗せた黒セダンを、特機本部へと向かわせるのであった。

 

 

黒セダンが何事もなく走行すること、約数分。もうすぐ、特機本部へ着くだろうという時だった。

 

 

 

目の前に空から白い物体が、稲妻の如く落ちてきたのが車内から見えたかと思うと、朱音を乗せている黒セダンに急ブレーキがかかる。突然急ブレーキをかけられ、朱音の身体はシートベルトをしているにも関わらず、前に押し出される。

 

 

「ちょっと何 今のは」

 

 

そう言って前方に視線をやると、そこには朱音がもう、二度と会いたくないと思っていた少女が、冷たい無表情でこちらを見据えて立っていた。そう、稲妻の如く落ちてきた白い物体の正体は、以前ミラアルクのライブ会場襲撃時、朱音の前に突如として現れ、朱音の心身を完膚なきまでに打ちのめしたあの少女だった。

 

あの一件以来、翼とマリアは口を聞いてくれなくなり、''救えていたはずの命がなぜ'' と自分に問い返す日々を過ごしていたのだ。

 

少女の顔を見た瞬間、あの時の途方もないトラウマと絶望、そして怒りが込み上がってくる。

 

 

「くっ」

 

 

朱音が奥歯を噛み締めた瞬間だった。少女はこちらに手の平を向けてきたかと思うと、こちらに赤い気弾を放ってきた。少女の手から、幾度となく放たれる気弾は、朱音が乗る黒セダンに見事に命中し、一気に炎に包まれた。

 

朱音は急いで車から降りると、冷や汗を流して、スーッと息を吸う。

 

そんな朱音を見て、少女は顎を上げて言った。

 

 

「どうぞ 歌えば 心配なんでしょ 私を前にして、自分の声がまた醜くなってるんじゃないかって。歌えなくなってるんじゃないかって」

 

 

自分の心理を全て読まれており、ごくりと唾を飲み込む朱音。更に少女は、独り言のように続けた。

 

 

「まぁ、歌えるのも今日で最期なんだけどね」

「黙れっ」

 

 

朱音は鋭い目つきで少女を威嚇すると、息を吸い、喉から澄み渡るような音色を奏でる。

 

 

〜〜〜♪

 

 

すっかり戦士の姿になった朱音を見ても、少女は一切動揺することはなく、変わりにその不気味な程に端正な顔には不敵な笑みが浮かんでいた。

 

 

「今日はあの時みたいに行かんぞ」

 

 

どういう原理かは分からないが、この少女、シンフォギア装者の''力の源''である歌を無力化することが出来るようだ。朱音はヘッドフォンモードになると、少女に鋭い眼光を浴びせる。

 

 

「あははっ そのくらい本気じゃないと、張り合いがないもんねっ」

 

 

朱音の威圧感と緊張感に満ちた表情とは裏腹に、少女は年相応の無邪気な笑みを浮かべた。それと同時に、少女は指でリズミカルに三回音を鳴らす。

 

そう、その小気味の良い音は、あの日朱音の心身がドン底に突き落とされる前に鳴り響いた絶望の序曲だ。

 

 

周りの景色が一気に様変わりし、そこは先程朱音がミラアルクを征伐した路地裏だった。

 

 

「な、何」

 

 

いつの間にか、路地裏に戻っていたことも驚きだが、最も驚くべき事は、征伐したはずのミラアルクが、エルフナインと小日向未来の前に立ち、隣にいた黒服の頚動脈を掻っ切っていた事だった。辺りは鮮血が撒き散らされ、そのあまりにもショッキングな光景を目の当たりにしたせいで、小日向未来とエルフナインは気絶。

 

そんな二人に、彼女にしては珍しく冷ややかな視線を送ると、ここからのミラアルクの行動は分かりきっていた。

 

今見ている光景が幻覚でないとするならば、朱音の行動はただ一つ。

 

朱音はミラアルク目掛けて、〈プラズマライフル〉を構えると、先程同様、彼女めがけて銀の杭を打ち込む。

 

ミラアルクは、自分の方に飛んでくる銀の杭に気づくと、目を見開いた。

 

 

「何だゼ」

 

 

だがそんな驚く必要もなかったのだ。なぜなら、銀の杭はミラアルクに当たる事はなかったのだから。そう、朱音のミラアルクに対する奇襲は、少女の手によって呆気なく妨害されたのだ。

 

少女はミラアルクの前に瞬時に立ち回り、朱音が放った銀の杭を素手で受け止めていた。そして、ミラアルクの方を振り返り言った。

 

 

「この女は私が引き受けるよ。だから貴方は、その子達を......」

「あ、あぁ、確かにソイツはウチじゃ敵わないゼ。こういうのはあんまり好きじゃないが、頼んだゼ」

 

 

ミラアルクは、額に汗を流しながらそう言い残すと、エルフナインと小日向未来を小脇に抱え、カイロプテラで飛び去っていった。

 

その様子を見ていた朱音が、当然黙ってそれを許すわけもなかった。

 

 

「待てっ 逃がさん」

 

 

ミラアルクに再び〈プラズマライフル〉を構える朱音。だがそんな朱音の目の前に、少女が笑顔で立ちはだかると、先程素手で受け止めた銀の杭を朱音の両腕に深々と刺す。少女はそのままグリグリと銀の杭で朱音の両腕を抉る。

 

 

「ガァァァァァァァァァァ」

「させるわけないだろ。コレ、返しておくね」

 

 

路地裏には朱音の醜い悲鳴がこだまし、対して少女は真冬の極寒に負けないくらいの、ひどく冷めた口調で朱音に言った。腕の肉を抉られる最中、刺しこまれた杭がついに骨に到達したのが分かる。だがそれでも少女はやめなかった。朱音の両腕の骨は、少女の容赦の無さによって、メキメキと音を立てて砕かれていく。

 

 

「アァァッ アァァァァァァァァァァァァァ」

 

 

朱音が痛みのあまり悲鳴を上げると、少女は杭を朱音の両腕から勢いよく引き抜き、いつの間にか形成したのか、自分の身の丈もあろうかという巨大な鎌を一振りした。

そう、ライブ襲撃の際、最後に朱音の鼻っ柱を打ちのめしたあの巨大な鎌だ。

 

一瞬何が起こったか分からなかった。ただ朱音の動体視力でさえ、捉えきれない速さで少女が鎌を一振りしたかと思うと、もう自分の両腕はそこにはなく、路地裏の傍らに無様に打ち捨てられていた。ようやく自分の腕が切断された事を理解すると、今度は言葉にならないような激痛が朱音を襲う。

 

 

「......あ、あ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 

路地裏にまたしても朱音の醜い悲鳴がこだました。

 

 

「やった やったよ 両腕が無いんじゃ、もう何も出来ないね」

「だ、黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ 最後の希望の名にかけて、絶対に倒す」

「は 何言ってんの 今日でその最後の希望とやらも潰えるんだよ。しかもお前が希望 ありえないでしょ。粗大ゴミの癖に」

 

 

激しく痛がる素振りを見せる朱音に、少女ははしゃぐように言っていたが、朱音からまだ闘志の炎が消えていない事を知ると、すぐにつまらなさそうな表情になり悪態をつく。朱音はそんな少女に激痛に耐えながら問いかけた。

 

 

「な、なぜだ。なぜ...ライブ会場の時と言い......今回と言い......私が助けたはずの命や......正義の為に敵を倒したことが......ック''なかった''ことになっている...それに......ッあの時マリアが言っていた。私が急に現れて、急に消えたと。私は確かにあの場に居て、マリア達だけでは 絶対に救えなかった命を...救ったと言うのにっ」

「おー、痛くてしょうがない癖によく喋るねぇ」

 

 

苦し紛れに、辿々しく言葉をどうにか紡ぐ朱音を見て、少女は目を丸くして感心する。そんなふざけた態度が、朱音の神経を更に逆撫でする。

 

 

「答えろっ イッ」

 

 

叫んだ衝撃で、朱音の切断された腕の断面から、血が滴り落ち、ただでさえ痛くて仕方ない腕はもっと痛みを増し、思わず顔を歪める。

 

 

「いやぁ、教えてもいいけどさ、知ってどうするのどうせ、死ぬのにさ」

 

 

少女はまるで普通に会話するような調子で、サラリとそんな事を言う。そして続けた。

 

 

「まぁそんなに知りたきゃ教えてあげるよ。簡単な話、お前が見てたものは全部幻覚。要は私が見せた幻だったんだよ。救えたはずの命も、さっきのお前の奇襲もね。良かったね 夢の中だけでも、良い思いが出来て でもそれもこれまで」

「幻......だと」

「そう、全部全部幻だったんだよ」

 

 

そう説明し終えると、少女は語尾だけ荒げ、片腕を上に伸ばす。それと同時に、いくつものクリスタルが、少女の周りに顕現した。顕現された全てのクリスタルの先端は、鋭く尖っており、その尖った先の標的が朱音だと言うことは明白だった。

 

そして少女が腕を勢いよく前に倒したのを合図に、無数のクリスタルの雨が朱音の身体に降り注いだ。朱音は立ったまま、自身の身に降り注いでくる、無数のクリスタルの雨に身体の至る所を切り裂かれる。

 

 

「あっははははははははははははっ」

 

 

少女は朱音の身体の至る所から、血が吹き出す様を見て、何かに取り憑かれたように高らかに笑う。その全ての攻撃は、どれも急所を外しており、浅い切り傷だけが増えていく。朱音は少女にとって的同然なのだ。

 

銃弾のような速さで、無数のクリスタルの雨に身体を貫かれる事、約数十分。いつ終わるかも分からないこの責苦に、朱音の身はボロボロだった。至る所から血が吹き出し、何度も同じ場所を攻撃される為、皮膚が抉れている箇所が見られる。

 

 

「も、もう辞めて......くれ」

「えぇぇぇぇぇぇぇ もうやめて欲しいって」

 

 

朱音の口から発せられた微かな命乞いに、遠くから攻撃を仕掛けようとしていた少女は、耳に手を当て応答する。それと同時に、顕現されていたクリスタルも光る粒子となって消失する。少女は困ったような表情を浮かべ、頭を掻くと、貼り付けた様な笑顔で言った。

 

 

「しょうがないなぁ、じゃあちょっと休憩しよっか」

 

 

嫌な予感がする。こちらに笑顔で近づいてくる少女から、少しでも距離を置きたいが、身体が動かない。そこで朱音は、切歌と調との連絡手段の為に耳につけている小型通信機の事を思い出す。

 

 

「こちら朱音 敵がもう一人居た 私一人ではどうにもならない 応援を頼む どうぞ」

「......」

 

 

朱音は必死に小型通信機越しに連絡を試みる。だが応答がない。

 

 

「どうぞ」

「......」

 

 

再び呼びかけるもやはり応答はない。朱音は少女を睨みつけ、ドス黒い声を放った。

 

 

「貴様、何をした」

 

 

翡翠の鋭い眼光で睨みつけられるも、少女は怖気付く事なく、戯けた様子で言った。

 

 

「何もしてないよ。お前が優先されてないだけ」

「どういう事だ」

「どういう事もクソもないよ。そのままの意味。みんな攫われた、あのエルフナインと小日向未来って子の事で頭がいっぱいなんだよ。ほら、見てみなよ」

 

 

少女が何もない空間に手を翳すと、そこには悲痛な表情を浮かべている、翼、マリア、クリス、響、調、切歌の姿があった。

 

 

「ね みんなお前に加勢する暇なんてないんだよ。分かったら、死ぬ前にショーを楽しもうか。草凪朱音ちゃん♪」

 

 

少女は、蹂躙され続けておきながら、辛うじて上体だけ起こしている朱音の頭に手を置くと、耳元でそう囁いた。

 

 

「何するつもりだ、貴様」

「こうするつもりだよ よぉぉぉぉぉく目かっ開いて見とくんだぞ 汚物」

 

 

そう言って少女が地面に手を置いたかと思うと、その部分だけ円形に黒く染まる。大きさは、直径約cmくらいだ。一体何をしようと言うのだろうか。少女は邪悪な笑みを浮かべつつも、朱音を見ながら黒い円に片手を突っ込んだ。嫌な予感を覚えるも、朱音は黒い円から少女に鷲掴みにされ、徐々に姿を現していくソレから目を離せなかった。

 

 

そう、黒い円から少女に頭を鷲掴みにされて出てきたのは、皮膚は干からび、目があったであろう場所には眼球がなく、おまけに朱音同様両腕も切断されている、見るも無惨な''誰か''だった。そして少女は、そんなミイラ化した身元不明の誰かを、頭を鷲掴みにしたまま、見せしめのように前に突き出して言った。

 

 

「これ、だぁぁぁれだ」

「......」

 

 

あまりにも変わり果てた姿になっていたので、最初は全く分からなかった。だが、朱音はすぐに知ることになるのだ。このまま知らない方が良かったと思うほど残酷な事実を......

 

いつもはその''黒いリボン''で髪はきちんとまとめられているが、今は完全に乱れきった長い黒髪に絡まっている見覚えのある''黒いリボン''。これが今目の前に突き出されている変わり果てた''誰か''の正体を朱音が悟すまで時間はかからなかった。

 

 

「そ、そんな......嘘だろ 静音・・」

 

 

そう、その見るも無惨なミイラの正体は、風鳴家の養子でありながら、風鳴翼のマネージャーでもある風鳴静音だった。当然朱音も面識があり、並行世界では戦場を共にした事もある。

 

 

「あっはは 気づいちゃった もっといい事教えてあげようか 風鳴静音をこんな風にしたのはお前だよ 草凪朱音」

「な、何だと 嘘だ...嘘だ...そんなの...だって私が攻撃したのは......」

「そう、ミラアルクだったね。でも、さっき言ったでしょ 全部お前の見た幻だったって。実はお前が攻撃していたのは、なぁんの罪もないコイツだったのでぇす さぁ、甘い夢を見るのはここまでにして始めようか。楽しいショーを」

「そんな......私、翼に何て言えばいいんだ」

「何も言わなくていいよ どうせお前もこれから死ぬんだし、こんな奴が死んだって何とも思わないよ そもそも風鳴家に養子なんて居ないんだから。目を覚まそうね」

 

 

少女は冷や汗を流し、ガタガタ震えている朱音に向かって片手を向けたかと思うと、突如として朱音の後ろに巨大な十字架が現れる。そして次の瞬間、少女はミイラ化した静音を乱雑にその場に置くと、銀色の杭を片手で形成しながら、韋駄天走りに朱音と距離を詰めてくる。

 

少女からただならぬ狂気を感じた朱音は、よろめく足で逃げようとするが......

 

既に大ダメージをその身に受けている朱音が少女から逃げ切れるはずはない。少女は朱音の首を勢いよく掴むと、そのまま後ろの十字架に朱音の身体を叩きつけ、足を杭で思いっきり刺す。足だけ十字架に固定されている状態で、当然上半身を支えきれるはずもなく、倒れてくる朱音の上半身を少女が自分の肘で支える。

 

 

「アァァァァッ」

「うーん、両腕さっき切断しちゃってないからなぁ。参ったなぁ.......そうだ いい事思いついた」

 

 

少女は考え込んだかと思うと、急に陽気な声を出し、肘で支えていた朱音の上半身を起こす。そして次の瞬間、朱音の前髪を乱雑に掴むと、身体を仰け反らせ、その手に持っている杭を、朱音の豊満な胸に力いっぱい刺したのだ。女性の最大の急所とも言える場所を、的確に狙われ、朱音は激痛のあまり身悶える。

 

 

「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァ」

「ごめんねぇ 休憩って言ったけど、ちょっと我慢してね 後片方だけだからさ」

 

 

もう片方の胸にも同じように杭を打ち込まれる。

 

 

「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」

 

 

少し様合いは違うものの、その様はまるでイエスキリストの処刑を彷彿とさせていた。両胸からは真っ赤な鮮血が滴り落ち、痛みのあまりどうにかなってしまいそうだが、磔にされている為身を捩る事も出来ない。そんな朱音を少女が気にかけるわけもなく、今度はミイラ化した静音の髪を引っ張りあげると、静音の腹に手の平を当てる。

 

 

「さてと始めますか」

 

 

少女が不敵な笑みを浮かべたと同時に、静音の腹に当てられた手の平から、黄金色をした電撃が放出される。その瞬間、静音の身体はその電撃にみるみる包まれ、ものすごい勢いで痙攣しだす。少女は静音の身体に何か計り知れない電気を流し込んだのだ。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「あっはははははははははははははっ」

 

 

高電圧の電撃攻撃によって断末魔の悲鳴を上げる静音を見て、心の底から楽しんでいるように笑う少女。少女は朱音の目の前で、静音の身体に電撃を放出したり、放出しなかったりを何回も繰り返す。元々ミイラ化し赤黒くなっていた静音の肌は、何度も電撃を浴びせられたせいで、黒く爛れ、もはや原型をとどめてはいなかった。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「や、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

「やめて欲しい」

 

 

少女はにっこり微笑んだまま、朱音の方を見る。だがすぐに静音の方に向き直ると、静音を再び電撃地獄へ浸らせる。

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「やめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

「あっはははは 辞めるもんか あっはははははは」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 

そうやって、静音が拷問されるところを見せつけられてどのくらい経っただろうか。冬の乾燥した時期であることも原因の一つだろう。だが、一番は高電圧を身体に幾度となく流し込まれ、尋常じゃない苦しみ方をする静音を目の当たりにして、何度も辞めるよう大声で少女に懇願していた事が原因だろう。

 

朱音の喉からは、既に声が出なくなっていた。頑張って出そうとして、せいぜい掠れた声が出るくらいだ。

 

 

「ふぅ。飽きた」

 

 

少女は焼け焦げた静音の身体からサラリと手を離す。その様子はまるで、おもちゃに飽きた子供のようだった。

 

 

「おい、静音.......?」

 

 

その場に力なく捨てられる静音に向かって、掠れた声で呼びかけてみる。当然返事はなく、小刻みに身体を痙攣させてるだけだった。口を大きく開き、舌をだらし無く出した状態で、空洞となった真っ黒な瞳をこちらに向けてくる静音を見て、朱音はその場に激しく嘔吐する。

 

 

「おえっっっっ ゴホッ ゴホッ」

「散々正義面しといてみっともないなぁ。お前」

 

 

そう言って少女は朱音の方に近づいてくると、朱音の両胸と両足に深々と刺さっている杭を容赦なく引き抜いた。傷口が開き、更に血がドバドバと溢れ出る。

 

 

「イッッッ」

 

 

精神的にも激しく消耗している朱音は、その場に立つことも出来ず、自身の嘔吐物の上で四つん這いになる。その時だった。朱音の頭を少女が上から踏みつけてきたのだ。

 

 

「おらっ」

「グフッッッ」

 

 

朱音の顔面は嘔吐物が飛び散った地面に打ちつけられる。正面から派手に嘔吐物に顔を突っ込んだ為、ツーンとした胃酸の臭いが朱音の鼻腔を支配すると同時に、顔面がドロドロしたものにまみれる感覚を覚える。

 

 

「ゴホッ ゴホッ」

「咳してる場合かな」

 

 

少女の声で吐瀉物塗れの顔を上げると、何と黒焦げになった静音の身体を、少女と全く同じ姿をした三人の少女が拘束していた。正確に言うならば、三人それぞれが、静音の残った身体の部位、頭、右足、左足をニヤニヤした笑みを浮かべながら、拘束している。

 

 

「な、何をするつもりだ」

「何って こうするつもりだよ」

 

 

静音の頭を掴んでいた少女が叫んだと同時に、静音の頭、右足、左足は鈍い音を立てて、引きちぎられた。辺りには血が舞い散り、その様子が朱音の目にはスローモーションで見てるかのように、ゆっくりと写る。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 

声が万全だったらきっとこう叫んでいただろう。だが今の朱音はそんな声すら出せなかった。目の前のあまりに信じられない光景に、ただただ掠れた声で何かを唱えるだけだった。

 

 

「う、嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。これが現実なんて嘘だ」

 

 

焦点の定まらない目で呟く朱音を見て、一人に戻った少女は、朱音の腹に飛び蹴りを食らわせる。後方に吹っ飛ばされ、腹部を押さえうずくまる朱音に少女は嘲笑うかのように言った。

 

 

「痛いでしょ」

「くっ」

 

 

朱音は翡翠の瞳で少女を睨みつけると、目を瞑り伴奏を脳内で響かせはじめる。少女がシンフォギア装者の歌を無力化することが出来ると言うのならば。

 

 

「まぁだ何かやってるよ。この状況で何をするつもりで」

 

 

朱音には他のシンフォギアにはない、これがあるのだ。口から歌唱する歌声も防音マスクで遮断することのできる〈ヘッドフォンモード〉が。その朱音にしかない特異で更に力を解放しようとする。

 

が、次の瞬間、少女が地面を蹴りこちらに真っ直ぐ飛んできたかと思うと、脳を何かに刺されるような痛みと喉を焼かれるような感覚が朱音を襲う。朱音の視界はグラリと揺れ、その場に倒れる。真冬の真っ只中だと言うのに、喉から全身にまで燃えているかのような感覚が広がる、と同時に体内から水分が蒸発していくのが分かる。

 

 

(な、何っ)

「どう 自分の技にやられる気分は お前の喉にこれ仕込んじゃった もう二度と歌えないね」

 

 

少女はジリジリと焼けるような灼熱感に耐えながらも、地面に這いつくばる朱音に、真っ赤に輝く先の尖ったクリスタルを朱音に見せびらかす。静音同様身体の全ての水分を持っていかれ、自慢の美貌とやらもあっという間になくなり、醜い干からびたミイラと化す。また脳を直接何かで刺された朱音の死は近く、もう二度と輝きを放つことのない翡翠の瞳を見開いたまま、身体はピクピクと痙攣している。

 

 

「流石に脳みそを直接刺されたら、そのヘッドフォンモードとか言うズルい技も無力化出来るね。お疲れ様。そんな醜い姿になってもまだ生きてるなんて可哀想。さっさと死ねよ」

 

 

少女は、朱音の見開かれた翡翠の両目を素手で抉り取ると、足で踏み潰した後、トドメと言わんばかりに朱音の顔面も踏み潰した。何かが潰れるような鈍い音と、少女の真っ白な靴と靴下は真っ赤に染まった。

 

 

「あーあ、翡翠の瞳なら、死体の一部を集めてる人、何て言うんだっけ。そう言う人達に売ったら高く売れそうなのに、勿体無い事しちゃった」

 

 

先程二人の人間を殺したとは思えない調子で言う少女。少女は最後の仕上げと言わんばかりに、静音の引きちぎった身体の部位を、朱音の醜い亡骸のある方に一つ一つ放り投げる。

 

 

「跡形もなく消えちゃえ」

 

 

少女が呟いたと同時に、二つの醜い亡骸の前方と後方に、アイアンメイデンの様な針を無数に備えた、高さ数十mはあろうかという円柱が鎮座する。

 

 

「回れ アイアンメイデン」

 

 

少女が嬉しそうに言った瞬間、少女の言葉通り、二つ円柱は竜巻のごとく回り始め、朱音と静音の亡骸に向かって迫ってくる。発生源が風ではない為、辺りが強風で吹き飛ばされることはない。ただただ朱音と静音を消し去るためだけに形成されたのだ。

 

そして、ついに前方後方二つの回るアイアンメイデンが朱音と静音を挟み撃ちにすると、そこからは真っ赤な血の噴水が吹き出し、とっくに息をしていない二人の身体を無数の針で貫き、原型をとどめないくらいに蹂躙していった。

 

 

気が済んだのか少女がパンっと両手を叩くと、二つの回るアイアンメイデンは、光の粒子となって消失していく。路地裏には、真っ赤な血の海と、生前のご自慢の美貌とやらはどこへやら。何千ピースにも細かく切り刻まれた、見る影もない肉片となった朱音と静音が散らばっていた。

 

 

BAD END

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