聖龍隊 気高き二次元人達   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 聖龍隊メンバーから見た現状を各々執筆していきます。
 修司&側近そしてミラーガールからの視点です。


聖龍伝説 ――修司&側近&ミラーガールVision 前編

[chapter:堂々たる公言]

 

 その日、大勢の報道陣が国会議事堂前で群がり、そして取り囲むように一人の少年の周りに群れていた。

 辺りが騒然と成っているその時、一人の女性記者が少年に問い掛けた。

「お、小田原修司! 貴方は本当に、自らが結成させた自警団組織であり英雄集団【聖龍隊】と異次元からの脅威を戦わせるお積りなんですか!?」

 問い掛けられた少年、小田原修司は平然とした態度で問い掛けて来た女性記者に無表情で答えた。

「ああ、その通りだ。そもそも聖龍隊はその為に結成した様なもんだからな」

「! そ、それじゃ……聖龍隊結成の真の目的は……!」

 修司の返事に驚いた男性記者が訊ねると、これに対しても修司は平然と無表情で答える。

「その通り、聖龍隊は最初っからこの為だけに設立していたと言っても過言では無い」

 右手の人差し指を立てながら平然と記者達に公言する修司。

 更にその時、一人の記者が修司に向けて質問をぶつけた。

「し、しかし小田原修司。貴方が結成させた聖龍隊のメンバーは、言っては何ですが殆ど年端もいかない女子供ばかりじゃないですか。そんな彼等に世界の命運を賭けさせても大丈夫なんですかッ?」

 これに続いて他の記者達も修司に問い掛ける。

「その通りだ! 異世界からやって来るバケモノ達は大軍勢なんだ、それを女子供に戦わせるなんて非常識だ!」

「相手は日本の自衛隊はもちろんの事、世界の名立たる国の軍隊ですら勝てなかった怪物の群れなんですよ! そんな脅威にまだ結成してから日も浅い組織を戦わせるんですか?」

 これらの質問に対し、修司は態度を改める事無く平然と返した。

「確かに聖龍隊はまだ結成したばかりの組織です。しかしメンバーは常識を超えた特殊な能力を使える者達ばかりです。彼等の能力なしには異次元からの脅威と向き合う事はできません」

 更に修司は続けて記者達に話す。

「更に今までの面々に加えて、新たなメンバーも招集しました。これにより聖龍隊の組織力及び戦力は格段に増大しております」

 その時、この修司の発言に一人の記者が異議を唱えた。

「お、小田原市長! その新たなメンバーについてなのですが、耳にしたんですけど未だに自分の能力が制御できないでいる能力者も居るとか……」

 更に別の記者も声を荒げる。

「そ、その能力者はもちろん、他の新しい面々もまだ若い子ばかりだと伝わっています……! そんな能力者達に私達の命運を委ねても大丈夫なのですかッ?」

 更にこんな事を小田原修司に告げる記者達が。

「そもそも聖龍隊の特殊能力者だって異次元からやって来る怪物と似た様な輩じゃないか! そんな奴等に世界中の人間の命運を預けても良いと言うのかッ!」

「聖龍隊の様な子供達にこの計画を任せても宜しいんですかッ。彼等の様な能力者に任せていたら返って危険なのでは……!」

 これ等の発言に修司はピクリと自前の福耳を微動させ、そして記者達に無愛想かつ冷静な面立ちで言い放った。

「確かにそうです。聖龍隊はまだ若い子供達、それも中には自身の特殊能力を制御できない存在も居ります。故に不安や彼等に対しての危険性も考慮してしまう方も大勢いる事でしょう」

 そして一瞬の間を開けて修司は再び報道陣に向けて公言を発した。

「しかし皆さん、既に日本の自衛隊はもちろんの事、世界各国の軍隊では異次元からの脅威に立ち向かえなくなっているのです。更にアメリカのヒーローチームは母国であるアメリカを中心とした日本外の諸国を護るので精一杯の状況下なのです。自身は既にこうなる事を予見しておりました。アメリカなどの欧米諸国にはジャスティスリーグやアベンジャーズと云った英雄集団が結成されているのに対して、日本を始めとしたアジア諸国を護る為の英雄集団は今だ結成されては居りません! 自分は今回の異次元からの脅威である軍勢を打破する為だけでなく、後々までアジア諸国の国々を護る事が出来る優秀な英雄達を一纏めに結束させたのであります……!」

「し、しかし……未だ能力の制御が不完全な者や、強大な特殊能力を使用できる者達なんかに、アジアや世界の命運を委ねても大丈夫なのでしょうか……?」

 修司の堂々たる公言に記者が不安そうに訊ねると、修司は大声で断言した。

「やらなければいけないのです! 最早我々の祖国日本はもちろん、アジア各国は自力で自国を護れるほど異次元からの軍勢に抗う戦力は無いのです。今この日本を護れるのは聖龍隊しか居ないのであります!」

「か、彼等は大丈夫なのですか? 危険なのでは……」

 記者がぶつけた質問に修司はこれまた堂々と威勢良く言い返した。

「大丈夫です! 何より皆さん、アメリカの核武装を思い出してください。アメリカの所持する核と云う絶対的兵器の存在により、今世界は大きな争いも無く平和が保たれております。それと同じで私達も危険に近い力で異次元からの脅威に立ち向かわなければ生き残る道は無いのです!」

 修司の公言に愕然と成りしばし黙り込んでしまう報道陣。

 そんな報道陣を前に、修司は続けて公言する。

「すなわち、平和的な力で対抗できるほどのレベルでは無いのです、例の異次元からの軍勢は! 最早この非常事態を打開するには異次元からの脅威と同じレベルの危険で高度な能力を持った驚異的な特殊能力者達の力が必要なのであります!」

 更に修司は堂々とした心構えで記者達に公言したのであった。

「つまりですよ皆様方、危険極まりない異次元からの敵勢力を阻止するには最早普通の軍隊や武力では力不足なのであります! 未知なる勢力に対抗できるのは未知なる能力を扱える者! 強大な異形の軍勢に対抗するには、同じく強大な畏敬の者等の戦力が必然と成るのであります!!」

 己の拳を振るいながら勇ましく言い放つ修司の公言を聞いて愕然と成る記者ら。

 そして修司は記者達に「それでは……自分はこれより国会にて総理や大臣、ゆくゆくは天皇家の方々と意見を述べ合うので失礼します」と告げて国会に入って行った。

 その際、国会の門の前で待機していたウッズと合流して二人で奥の方へと姿を消して行った。

「あっ、市長!」「小田原氏、まだお話したい事が……」

 必死に呼び止めようとする記者達であったが、時すでに修司はウッズと共に国会にの奥へと歩み進んでいた。

 

 そんな報道機関の前での修司の公言を。聖龍隊の基地でテレビ越しに眺めていた者たちが居た。

「……遂に始まってしまったね、聖龍隊の大一番が」「そうだな」

 テレビの報道を見ながら、聖龍隊の参謀を務めるジュピターキッドことジュニアと、副長であるメタルバードことバーンズが険しい面持ちで語り合っていた。

 すると彼等の傍らで共にテレビを見ていたウォーターフェアリーことアプリコットと、ミラーガールこと加賀美あつこの二人も口を開いて自分の意見を述べた。

「修司さん、最初っから聖龍隊を危険な戦争に投じさせる為に結成していたのかしら……」

「だ、だけど……結局、異次元からの脅威に立ち向かわないと私たちの世界が壊されちゃうのは事実なんだし、言っちゃなんだけど修司の意見通り、私達が戦って弱い人達を護ってあげないと……」

 悲痛な面持ちで述べるアプリとアッコ、するとアッコの意見に対してアプリがすかさず言葉を返した。

「だ、だけどアッコさん。修司さんの言葉だと、まるで私達までも異次元からの脅威と呼ばれる怪物等と変わらない言い方じゃないですか。私なんだか憂鬱で……」

 自分達までも異次元からの脅威と呼ばれる怪物や怪人と同じ存在だと取れる表現を述べられた事に憂鬱に感じてしまうと述べるアプリ。

 そんな彼女にキッドが優しく話し掛けた。

「アプリ、義兄さんが少し口が悪いのは重々知っているだろ? 別に大丈夫だよ、どんな容姿そしてどんな能力で人から言われようと人は人、自分は自分。アプリを始め聖龍隊のみんなが心優しい人だって事は解っているさ」

「ジュニア……」

 優しいジュニアの言葉に少しばかり表情が明るくなるアプリ。

 ジュニアはアプリやアッコに更に話してあげた。

「義兄さんが言いたいのはだね……異次元からの脅威と呼ばれる怪物や怪人による軍勢に対抗するには、例え他人様(ひとさま)から危険極まりない輩と見られ兼ねない様な能力者の存在が必要不可欠であり、そんな能力者達を纏めて一つの英雄集団に結束させる事で、この先も日本を始めとしたアジアなどの国々の平和も護る事が出来るって事だよ」

 他の者達からどんな目で見られようとも、心がけ次第で世界を護れる重要な存在が必要と成る事、そしてその様な能力者達を一纏めの英雄集団に結束させる事そのものが後々のアジアを始めとした世界平和に貢献できる事で在ると、アプリコットやアッコに語るジュニア。

 更に其処へバーンズも不安に駆られる女子二人に言った。

「まぁ、お前さん達はもちろん他の聖龍隊のメンバーには申し訳ないが、修司の言う通り特殊能力者ってのは不思議な力が使えるってだけで危険視されてしまうのが道理だしな」

「そ、そんな……バーンズ、貴方までそんな事を……」

 バーンズの発言に悲痛な心情に成るアッコが言うと、バーンズはアッコの顔を見詰めながら話し出す。

「アッコ、お前はまだ解っていないが、特殊能力を持っていると言う事は周りの皆と全く違うと言う事なんだぞ。世間ってのは、自分と相手を比べてしまうのが実情だ。故に少し周りと違うだけで、危険な存在や異常な者と偏見されてしまうのが悲しいけど現実なんだよ」

「そ、そんな……」

 悲観するアッコにバーンズは容赦なく話し続ける。

「人間ってのは基本的、弱い生き物なんだよ。自分達と少しでも違う存在を危険に思ってしまう思想、つまりは防衛本能が働いてしまうんだ。そしてその防衛本能により、人は自分と違う存在を危険視しつつ排除しようと躍起になってしまう。……悲しいが、それが現実ってモンなんだ」

「…………」バーンズの話を聞いて悲観の余り言葉を失うアッコ。

 アッコはそれ以上バーンズに何も言えなかった。

 バーンズ、本名バーンズ・ウィングダムズ・キングズ。彼は超獣族(ちょうじゅうぞく)と云う高度な文明を携えていた種族の王家の人間、しかも王位継承者であり簡潔に云えば王子なのであった。幼少の頃まで何不自由なく暮らしていたバーンズであったが――超獣族の高度な文明技術、更には一人一人にも特殊な能力が備わっている種族であった為、人間達から恐れられてしまい遂には武力で徹底的に虐殺されてしまったのであった。しかもその際、超獣族の王つまりバーンズの父は武力による衝突を好まず、一人武装した人間達に和平の話を持ちかけようと玉座に鎮座していたのであったが、人間はこれを聞かず容赦なく超獣族の国王を、バーンズの父親を殺害したのであった。

 アッコはそんなバーンズの過去を知っている故に、彼に対してそれ以上何も話し返す事が出来なかったのだ。

 人と違うだけで、異形の存在であるだけで迫害され、そして虐殺されてしまった超獣族だからこその話であったからだ。

 

 そして自分の意見を述べたバーンズは、ふぅっと一息入れて神妙な面持ちでその場の三人に向かって話した。

「ふぅ、まぁ、ここ等で聖龍隊の絶対的な存在意義を世間に証明しない限り、俺達聖龍隊が今後も末永く英雄活動を行えない訳だしな。何よりニュースで修司が言った通り、本場モンのヒーローチームであるジャスティス・リーグやアベンジャーズは自分達の本国で有るアメリカを中心に護らなきゃイケねえし、日本を始めとしたアジアの国々は俺たち聖龍隊が護って行かなきゃ」

 調子良く語って行くバーンズは飄々(ひょうひょう)とした素振りでアッコ達に話し続ける。

「その為にもオレ達は今、目の前に立ち塞がっている課題を……そっ、異次元からの脅威と立ち向かって見事これを撃退しねえと。世界的功績の一つも挙げなきゃオレ達は国連に認めて貰えねえんだからな」

 そして最後にバーンズは自信に溢れる顔立ちで言い放った。

「異次元からやって来るバケモノ共を撃退して、オレたち聖龍隊は国連に認めて貰うんだ。オレたち自身が戦いに勝って生き残る為にも……そして、ゆくゆくは聖龍隊を更に巨大な組織に成長させえる為にも、な……!」

 自信の強い意志を浮かび上がらせながら語るバーンズの話を聞いて、アッコジュニアそしてアプリは互いに顔を合わせてそれぞれ決意する。

「……うん、そうよね。私達が頑張らなきゃ、アニメタウンだけじゃ無く生まれ故郷の日本ですら危ないわよね……。分かったわバーンズ」

「バーンズの言う通り……以前父さんからも聞いてはいるけど、聖龍隊はそもそも特殊な能力や身体を持っている存在を保護して行く為にも設立したって云う。……それには世界的認可が必要と成る訳だし、その為にも僕達が力を合わせて異次元からの脅威と戦って功績を挙げないと……!」

「私は、この世界にとっても必要な存在に成れるのか不安だけど……でも、共に戦いを乗り越えてくれる心強い仲間達が居るなら私……。みんなと一緒に戦える勇気が胸の奥から湧いてきます……!」

 

 こうして四人は互いに決意を固めて、共に異次元から来襲してくる軍勢と立ち向かおうと静かに心に決めた。

 

 

 

 

[駆け引きと不安]

 

 一方の修司は、国会にて大臣や天皇家の一家とも話を終えて聖龍隊の基地に帰還していた。

 

 その聖龍隊の基地施設、その地下深くのあるフロアに修司の姿は在った。

 彼のいるフロアは壁全体が丸みを帯びたスクリーンと成っており、修司はその中央に背筋を立てて直立していた。

 そしてスクリーンには数人の外人の姿が映し出されており、修司は映し出されている外人等と話をしている最中だった。

「……御蔭さまで日本政府も承諾してくれましたよ。これで心置きなく聖龍隊の大々的な活動が行えます」

 真剣な顔つきで外人等と無線による通話をする修司。すると相手の外人たちも修司に話し返して来た。

「ま、事が事だからな。協力しない訳にはいかない」

「異次元空間から来襲してくる怪物共も、未だに勢力を衰える様子がないからな」

「日本政府には前もって聖龍隊への協力要請を告げていますしね」

「アメリカのヒーロー達は本国の防衛活動で一杯一杯である故に、アジアの防衛活動は君等に任せるしかないのが現状だからな」

 それぞれ切羽詰まった表情で語る外人達。

「……しかし小田原修司、遂に君は、自分の側近であるウッズ氏に念願だった異次元亜空間ゲートを完成させたのだな。これで不足していたエネルギー物質の供給や、圧迫していた人口の行き場も確保できるし万々歳だな」

 突然言い出して来た外人の言葉に対して修司は慌てる事無く平然と答え返した。

「なに、例え完成できたとしても、その異次元からやって来る敵の勢力を叩かなければ宝の持ち腐れの如く使えませんよ。全てはこの戦いに勝たなければ意味が有りませんよ」

 修司が言い返すと、すぐさま別の外人が何やら気難しい表情を浮かべながら話し掛けて来た。

「しかしな……Mr修司、本当に日本のヒーロー達に任せて大丈夫なのか?」

「と、云うと?」

 修司が訊き返すと相手の外人らは気欝な面持ちで言った。

「いやな、私には日本(ジャパン)の英雄(ヒーロー)達にもアメリカのヒーロー達の様に卓越した団結力が生まれるとは、到底信じられぬのだよ。正直、日本の英雄達だけのヒーローチームなんて、ちゃんと組織として機能できるのかい?」

「そもそも君は、本当に日本の英雄達を一つのチームに纏められるのか?」

 外人らの疑問に修司は無言と成る。

 更に、それに続いて他の外人達も口を揃えて言って来た。

「それに付いては私も同感だ。アジアの、それも日本の英雄達だけで結成したヒーローチームなんて前代未聞だ」

「それも日本の英雄は、その殆どがまだ年端もいかない子供、それも女子じゃないの。そんな子供達だけで結成させたヒーローチームなんて戦力に成るの?」

 これに対し修司は閉じていた口を開いて答え出した。

「確かに、アジアでの英雄集団は聖龍隊が初の試みですし、しかもその殆どが年端もいかない女子ばかりなのは反論致しません。しかし彼女達の今までの戦歴データを見てみれば、十二分に異次元からの敵勢力と渡り合えます。それどころか互いに協力して行けば確実に来襲してくる軍勢を根絶できるでしょう」

 意志強き振る舞いで語る修司の話に耳を傾ける外人達。

 しかし再び外人達は修司に、この計画に感じている自分達の考えを修司に述べた。

「だが、この計画は余りにも無謀ではないのかね?」

「日本の、それも子供達だけの英雄集団を起用するなんて自殺行為ではないの?」

「それに聞いた所によると力の制御もできない輩も居るんだろ。危険じゃないのかね」

「彼女達の殆どは科学では解明できない不可解な能力を持っているんだろ。そんな未知なる存在に、未知なる敵を片付けさせようというのかい?」

 外人達の話を聞いて修司は黙り込んでしまった。

 

 そして、しばし無言の状態であった修司は何の前触れも無く、再び口を開いて話し始めた。

「……しかし、既にこの計画は軌道に乗ってしまってます。誰かが異次元からの脅威と戦い、そして撃破しない限り、この世界に平穏が戻る事はないでしょう」

 そう話すと修司はスクリーンに背を向け、そのフロアから立ち去ろうとした。

 その時、修司は去り際にスクリーンに映し出されている外人達に不敵な眼(まなこ)を向けながら言葉を発した。

「まぁ、安心してくださいよ。どっちにしろ、聖龍隊が勝たなければアジアが戦火に包まれて、俺はもちろん皆様までもが危うく成ってしまいます故、手は抜きませんよ」

『ッ……!』修司の一言に愕然と成る外国の重役たち。

 更に修司は不敵な態度で発する。

「それに聖龍隊には少なからず、日本だけでなくアジアの経済までにも影響を持つ協力者たちも居りますから。彼らの援助も在りますので既に十分な資金と武力の調達及び準備が整っていますし大丈夫ですよ。何より……彼等は聖龍隊の事を快く思っておりますし、もし聖龍隊の事で何かしらの非難や蔑視が有りましたら彼等が何かしらの支援をして下さる事ですしね」

『…………!!』修司の発言に言葉を失くし驚愕する外人達。

 修司は遠回しに、聖龍隊の協力者には経済的に多大な影響力を持っている企業や団体、更には個人等が後ろ盾に存在している故に、もし聖龍隊に何かしらの非難や危険が降り掛かりそうになっても、すぐさま対処できるので大丈夫であると言う事。

 更には、もしも聖龍隊に何か有ったりされたりした場合は、そう云った協力者達に根回しさせて自在にアジアの経済を操作できると云う、修司の脅迫にも取れる発言であった。

 

 そして最後に、修司は別れ際にスクリーンに映し出されている外人達にこう告げた。

「それでは、聖龍隊の活動に対する支援のほど、宜しくお願い致しますね。――国際連合の方々」

 そう告げて修司はスクリーンフロアから退去した。

 

 

 

 その日、アッコは通常通り学校に通学していた。

 しかし学校の教室、アッコの隣の席には、いつも一緒に登下校するほど仲の良い修司の姿が無かった。

 修司は聖龍隊の活動の為、一時的に学校を休んでいるのだ。

 アッコは一人、空席となっている隣の修司の席を虚しさに満ちた表情でジッと見つめていた。

「…………はぁ」修司の居ない席を見詰めながら溜息を吐くアッコ。

 その時、そんなアッコに二人の児童が話し掛けて来た。

「どうしたんだアッコ? そんな溜息衝いちまってよ。いつもの元気はどうした」

「大将……」

 まず最初に話し掛けてきたのはクラスメイトの男児で赤塚大作(あかづかだいさく)通称大将だった。

「アッコ、顔が暗いわよ。しっかりして」「モコ……」

 次に話し掛けて来たのはアッコの幼馴染で大親友の浪花元子(なにわもとこ)通称モコ。

「アッコ、元気が無いけど……やっぱり、修司の事……?」

「モコ……うん、そうなの……」

 親友のモコの発言に悲しげな面持ちで頷くアッコ。其処に続いて大将がアッコに話し掛ける。

「そりゃ心配しちまうよな。修司が結成させた聖龍隊が、本当は異次元からやって来る怪獣たちを倒す為に作ったチームなんてよ」

「…………」

 大将に言われ、アッコは不安の余り遂に黙り込んでしまった。

 するとその時、アッコに大将やモコが話し掛けていると、他の生徒達がアッコの席に集まって来た。

 集まって来た生徒達を見て戸惑うアッコに一人の生徒が唐突に話し掛けて来た。

「なぁ加賀美、修司は一体なにを考えているんだ?」

「え……そ、その……」

 突然聞かれたアッコは困惑してしまうのだが、生徒達は容赦なくアッコに質問攻めをする。

「加賀美さん、あなた良く小田原君と一緒にいるでしょ? だったら何か知ってるでしょ」

「最初(はな)ッから聖龍隊は異次元からやって来るバケモノ共を倒す為に作り上げた組織なのかよッ」

「どうなっちゃうの私達! そもそも本当に聖龍隊は異次元から来る脅威と戦えるの!?」

「ホントに大丈夫なのかよッ、聖龍隊は俺達を護り切れるのかよッ!」

「ちょ、ちょっとみんな落ち付いて……」

 次から次にアッコに質問を掛ける生徒達相手にアッコは困惑してしまう。

 と、その時「ちょっとみんな、止めなさいよ!」咄嗟にモコがアッコに言い寄る生徒達の間に入り制止する。

「も、モコ……」

 自分の身を挺して間に入ってくれる親友の姿に感銘を受けるアッコ。

「そうだおめえ等! そんなにアッコに言い寄らなくても良いだろうがッ」

 モコに続いて大将もアッコを庇う。

 しかし生徒達はそれでも悲痛な表情で口々に言った。

「だ、だけどよモコ……」

「大将、そういうお前達は気に成らないのか? 修司が聖龍隊と異次元からの怪物達をぶつけようという魂胆が……」

「そ、それは……」「…………」

 生徒達に指摘され口を噤んでしまう大将とモコ。

「………………」

 アッコはそんな二人を見て何処か居た堪れない心境に駆られてしまう。

 更に其処へ二人の男児生徒が声を掛けて来た。

「大将……」「あっし等もみんなと同じ意見です」

「お、お前等……!」「あ、あんた等までも……!」

 二人を見て驚いてしまう大将とモコ。その二人は大将の子分の二人であるギョロとゴマであった。

 ギョロとゴマの二人は大将とモコに言った。

「俺達だって不安なんですよ、はい」

「そ、そりゃ……修司が何を考えているかは解りやせんが、少なくとも此処に居るみんなは考えている事は一緒でっせ。修司は異次元から来る大軍隊と聖龍隊を衝突させて、本当に勝ち目が有るのか。みんな知りたいんですよ」

「「…………」」「…………」

 ギョロとゴマの言い分を聞いて何も言い返す事はもちろん話し返す事すらできない大将とモコそしてアッコ。

 そして、そんな情景を教室の傍らで見ている一人の少年 姿桐男(すがたきりお)ことキーオは静かに見届けていた。

 

 その時だった。

「おいみんな、どうしたんだこの騒ぎは?」「あ、先生」

 教室の引き戸を開けて男性教諭が部屋に入って来た。生徒の一人がスグに教師に気付く。

 そして教師は教壇の前に歩みそして生徒達の方を向いたのを認識した生徒達は一斉に自分達の席に着席する。

(た、助かった……)アッコは心の中で安堵した。

 そして日常通りの朝礼が行われたのだった。

 

 

 

 

[二人の友の真情]

 

 その日の昼休み、アッコは開放されている校舎の屋上に出向いていた。

 最初、屋上に出た時、彼女が感じたのは既に屋上に居た生徒達の視線であった。

 アッコと修司がほぼ常に一緒に居るのが周知の関係であったからだ。

 今、噂に成っている聖龍隊の最高責任者、アニメタウン市長の修司と親しい間柄のアッコは皆の視線の的であった。

 皆の視線に戸惑いながらもアッコは平然さを装いながら屋上を見渡した。

 すると一人の女子生徒がアッコを見つけて声を掛ける。

「あっ、アッコちゃん」「あ、瑠璃ちゃん!」

 アッコも自分を呼んだ少女に笑顔を向けた。

 アッコに声を掛けて来たのは、授業と授業の合間の短い休憩時間の内にアッコに昼休み屋上で話したいと告げていたクラスメイトの碧井瑠璃(あおいるり)であった。

 瑠璃とアッコは屋上の片隅で二人っきりで話をした。

「アッコちゃん、今朝は大変だったわね」「う、うん……」

 瑠璃が今朝方の出来事を話すと、アッコは小さく頷いて返事をする。

 そんな自分を気に掛けてくれる瑠璃に、今度はアッコの方から訊ねてみる。

「と、ところで瑠璃ちゃん……なにか私に用?」

「あ、うん、実はね……アッコちゃん、修司はその……どうしてるの?」

「え、どうしてるって、その…………う、うん、多分、今ごろ聖龍隊の施設で色々と仕事していると思うわ。……詳しい事は私にも解らないけど……」

「そう……大変だよね、アニメタウンの市長で聖龍隊の総長、何より聖龍使いじゃ……」

「………………」

 瑠璃の言葉にアッコは無言と成った。

 瑠璃は以前、修司が地域興業の為に購入したサファイアを自分の父親が館長を務めている美術館に展示させてもらった事が有る。しかも瑠璃の父親が館長を務めるその美術館は赤字であり、その赤字を埋める為にも修司はわざわざ其処の美術館に宝石を納めてくれたので瑠璃は修司に大変感謝していた。

 更に、その宝石を狙った事件には修司こと聖龍使いを筆頭とした聖龍隊が関与したのだが、最終的に瑠璃は聖龍使いの正体が修司本人であると解ってしまった。

 それに瑠璃は以前より修司の事を好意に思っていたらしく、そんな事情をアッコは知っているので彼女の話を理解していた。

 故に瑠璃の聖龍隊の、小田原修司に対する関心も熟知していたのである。

「ねぇアッコちゃん、大丈夫なの? 修司は……聖龍隊の人達は……」

「…………」

 瑠璃の質問にアッコは答えられなかった、アッコ自身も未だに不安の感情が心の中に有るからだ。

 そんな何も答えられずにいるアッコに瑠璃は続けて問うた。

「修司も、聖龍隊のみんなも大丈夫なのかな? 今度彼女達が戦う敵は途方も無い大軍隊だってニュースで報じられているけど……」

「…………」

「私、心配なの……。聖龍隊の人達も、修司自身も、本当にどうなっちゃうのか不安で一杯で……」

 悲痛な想いで一杯の瑠璃の心情を感じ取るアッコは、彼女に何と答えて良いか迷いに迷った。

 そして一間の時を空けてアッコは瑠璃に声を掛けた。

「瑠璃……」「…………」

 アッコは意を決して瑠璃に語り始めた。

「瑠璃……修司や聖龍隊のみんなが心配なのは凄く解る。何より、私自身も全くおんなじだもん」

「アッコちゃん……」

 アッコの言葉を聞いて瑠璃は思わずアッコの瞳を見詰めつつアッコの顔と向き合った。この時、瑠璃はアッコの力強い意志が汲み取れられる鏡の様な美しい瞳に思わず見惚れていた。

 そんな輝かしい瞳をしているアッコは、穏やかな笑みに表情を変えて瑠璃に言った。

「でも修司は、聖龍隊のみんなは大丈夫。瑠璃だって知っているでしょ。修司はもちろん、聖龍隊のみんなが今まで力を合わせて、どんな困難も乗り越えて来たのを。今度だって絶対大丈夫よ」

「…………」

 温厚な微笑みにも拘らず、自分の主張をハッキリと強く語るアッコの言い分に、瑠璃は言葉を失くし驚いた。

 そして瑠璃は神妙な面持ちでアッコに言った。

「……やっぱり凄いね、アッコちゃん」「え?」

 瑠璃の発言に思わずキョトンとしてしまうアッコに、瑠璃は話した。

「だってさ、どんな状況だろうと心から相手や自分を信じていられるじゃない。いくら修司の、聖龍使いや聖龍隊のみんなが強いと言っても、アッコちゃんの様に大丈夫だって自信満々に言う事、少なくとも私にはできないわ。ほんとに凄いよ、アッコちゃん……」

「る、瑠璃ちゃん……」

 瑠璃の感極まった台詞に、アッコは内心驚きで一杯に成った。

 と、アッコが瑠璃の台詞に内心驚いていると、瑠璃は唐突に質問を投げた。

「そう云えば……アッコちゃんは何で修司のこと好きになったの?」

「え……!?」

 不意に訊ねられたアッコは困惑してしまった。

「確か、修司が学校に転入した初日に、彼が大将達に絡まれていた所をアッコちゃんが騒ぎを聞き付けて現場に駆け付けて来たのよね。其処で興奮しちゃった大将が思わず石を投げつけちゃって、それを修司が咄嗟に弾き返したんだけど、弾き返した石が運悪く窓ガラスに直撃しちゃってアッコちゃんにガラスの破片が降り掛かる所を、修司が身を挺して護ってくれたのが切っ掛けだったんだっけ?」

「そ、それは……」

 しばし下を俯きながら考え込むアッコ、そしてしばし考え込んだアッコは戸惑いながらも瑠璃に話した。

「……確かに、それが私と修司の友好的な関係を築く最初の切っ掛けだったのかもしれないわ。だけど、それとは別に修司に対する感情の揺らぎは有ったのよ」

「え……そ、それはどういう……?」

 瑠璃に訊ねられ、アッコは神妙な面持ちで思い詰めた様子で語り出した。

「そうね、上手く言えないんだけど…………なんだか、最初修司を見た時から、何かしら彼に対して感じたの」

「そ、それって……つまりは一目惚れってやつ?」

「ううん、それとは全く違う感覚。なんと言ったら良いのか……」

 考え込んでしまうアッコは、しばし発言しなくなってしまった。

 そして考え込んでいたアッコは再び瑠璃に語り出した。

「そうね、敢えて言うと……なんか修司とは恋愛感情以外の、もっと別の何かを感じたのよ。そう、何か強く惹かれてしまう、修司の内側からの何かに……」

「………………」

 真剣に語るアッコの話を聞いて、瑠璃は思わず固まってしまった。

 と、その時「おーーい瑠璃ーー。もうすぐチャイム鳴るから早く行こうぜッ」と、一人の男児生徒が声を上げて瑠璃を呼ぶ。

「あ、うん、今行くーー」

 瑠璃も笑顔で自分を呼ぶ少年に返事をする。

 それを見てアッコは微笑みながら穏やかな心情で瑠璃に言った。

「ふふっ。瑠璃ちゃん、彼氏が呼んでいるから早く教室に戻ろっ」

「もっ、もうアッコちゃんったらっ。言わないでよ、もう~~」

 アッコに自分の彼氏の事を言われた瑠璃は、未だに慣れてない情事を指摘された為、顔を赤くさせて照れながら言い返した。

 

 そして二人はそのまま教室へと戻って行った。

 

 

 

 学校が終わり帰路に着くアッコ、しかし彼女の心は晴れてはいなかった。何故なら。

「……えーー、と云う訳で、しばらく学校は休みとなる。しかし、みんなは自宅で待機している間でも自ら自習やら補習やらを行う様に」

 放課後のホームルームで教師が生徒達に告げた話。それは、いつ異次元からの脅威と呼ばれる軍勢が攻めて来ても大丈夫なように、生徒各自に自宅待機をさせる様言い付けたのだった。

 そんな訳でアッコはもちろん、生徒全員が複雑な心中で下校するのだった。

 

 と、その時だった。アッコが一人歩いていると、後ろから彼女を呼ぶ声が聞こえて来た。

「アッコーー」「っ……も、モコ……!」

 アッコを呼び止めた声の主は、アッコの親友である浪花友子ことモコであった。

「ど、どうしたの? なんか用……」

 アッコが訊ねるとモコは不安感じられる表情で言った。

「あ、アッコ、その……少し話がしたいの……。良い……?」

「え……う、うん、良いわ」

 そして二人はそのまま近くの公園、其処のブランコに隣同士で座りながら話に入った。

「ど、どうしたのモコ。なに心配事?」

 親友であるモコの顔色を見てアッコが訊ねると、モコは不安交じりの顔でアッコに話し出した。

「ね、ねぇ……アッコ」「うん」

「アッコ、あなたは大丈夫なの?」「な、何が?」

「だ、だから…………アッコ、あなたもやっぱり一緒に戦うんでしょ。ミラーガールに変身して、修司や聖龍隊と共に……」

「っ……」モコの発した言葉に驚き口を噤んでしまうアッコ。

 モコは以前、偶然にもミラーガールから元のアッコの姿に戻る所を目撃してしまい、ミラーガール=加賀美あつこである事実を知っているのだ。

 モコはそのままアッコに話し続けた。

「私、今ではちゃんとアッコの素性を受け入れているし、何よりアッコと修司の仲も認めてはいるわ。だけど今の聖龍隊の状況を見てると不安で……。もしアッコにも何か遭ったらと思うと、私……」

「モコ……」

 親友の口から発せられる悲痛な口振りに悲感するアッコ。

 そしてモコは大声でアッコに向かって言い放った。

「私! 街や世界の命運よりもアッコの身に何か起きる方がよっぽど怖いの! アッコに何か遭ったら、私……ッ」

 モコは遂に耐えていた感情を曝け出し、目から涙を滲ませ始めた。

「モコ……」

 そんな親友のモコの真情を目の当りにしたアッコは締め付けられるような、悲痛な感覚を胸に感じた。

 そしてアッコは自分の胸に感じる締め付けられる痛みを感じつつ、泣き出してしまうモコを宥め始めた。

「モコ、安心して。私は大丈夫だから」「アッコ……」

 笑顔で安らぎの言葉を掛けてあげるアッコに、掛けられたモコは涙目の顔を上げてアッコの顔に目を向けた。

「大丈夫だから。私は絶対、モコやみんなを悲しませないから安心して」

「アッコ……」

 アッコの口から出る優しい言葉に感化するモコ。

 モコはそんな優しい言葉を掛けてくれるアッコに涙目で訊ねた。

「……本当に? 本当に、アッコは危険な戦場から還って来てくれる? 無理はしないって約束してくれる? また笑顔で私と一緒に、過してくれる?」

 涙目で訊いてくるモコに対してアッコは優しい微笑みで答え返す。

「うん、約束するわ。何より、正義のヒロインは何も死ぬために戦うんじゃないのよ。みんなと幸せな平和な時を一緒に過す為に戦うんですもの」

 アッコは笑顔のままモコに言った。

「だからモコ、戦いが終わったらその時はまた一緒に遊びましょう。確かに私は修司や聖龍隊のみんなの事を気に入っているけど、小さい頃からの大親友であるモコだって私にとっては大切な人なんだから」

「アッコ……!」

 慈愛に満ち溢れたアッコの言葉に感銘を受けたモコは、咄嗟にアッコの両手をギュッと握りとってアッコの顔を見詰めた。

「えっ……も、モコ?」

 突然自分の両手を握られ、軽く困惑するアッコ。

 するとモコはアッコの目を見詰めながら熱い眼差しで語った。

「アッコお願いよ。私、アッコが居なくなったら辛いの、寂しいの……!」

「も、モコ……?」モコの言動にただただ困惑するしかないアッコ。

 そんな困惑するアッコに、モコは潤んだ瞳で更に言い続ける。

「アッコ、無事に還って来てよ。私、アッコの居ない日常なんて考えられない。また、その綺麗な瞳で私を見ていてちょうだい……」

「モコ……」

「私、いつもアッコの顔を見る度、その瞳を見ていた……アッコのその鏡の様な綺麗な瞳(め)を、いつも飽きもせず眺めていたいのよ」

「わ、私の瞳を……」

「そうよ。アッコの瞳は、正真正銘の鏡そのもの。アッコの目を見詰めていると……ううん、こっちの方から見詰めていても何だか自分自身と向き合っているような、そんな不思議な気持ちになれる瞳をアッコは持っているのよ」

「……………」

「私はねアッコ、あなたのそんな微塵の汚れも感じさせない綺麗な瞳が……! そんな瞳を持っているアッコが……好きなのよ」

 モコの突然の告白に愕然となるアッコ。

 今までも何度か周りから【アッコの瞳は鏡のように綺麗で、かつ見ていると不思議と自分自身と向き合っている様な】そんな不思議な感覚に陥るのだと云う。

 そしてモコは自分の真情をアッコに告白し尚、アッコの瞳を見詰め続けた。

 見詰められているアッコは、悲痛ながらも必死の心情でモコが自分の身を案じている事を感じ取る。

 そんなモコの気持ちを汲み取り、アッコは微笑みながら優しい眼差しでモコを見詰めつつ言った。

「安心して、モコ。私は必ずまたモコ達の前に還って来るから。そしたらまたみんなで一緒に楽しく過していきましょう、ねっ」

「アッコ……! ウグ……ッ」

 アッコの優しい言葉に、モコは再び涙ぐんでしまう。

「ほら、もう泣かないで。本当に私の瞳が鏡の様に綺麗な瞳だって言うのなら、私の瞳に泣き顔なんて映さないで。私自身、人の泣き顔なんて見たく無い、一番目に焼き付けたいのは人の笑顔なんだから。笑ってモコ」

 涙ぐむモコに、アッコは優しく言葉を掛けつつ宥めてあげた。

 

 そしてモコと一通りの話を終えたアッコは再び帰路に着いたのだが、その道中、彼女はある事を思っていた。

(モコも私の瞳の事を鏡みたいに綺麗な瞳(め)って思っていたのね。……みんなは良く、私の瞳の事をそう言ってくれるけど、自分じゃあんまり自覚無いのよね……。そういえば……みんなはちゃんと私の瞳(め)を見て話してくれるのに、修司だけは私の目を合わせようとは余りしてくれてないわ……)

 アッコは以前より、修司が自分と目を合わす事を極力避けている事に薄々気付いていた。

 自分と話している際の修司の目線は、自分の目線よりやや逸れているのである。

 修司は今まで一度も自分の目を直視してくれた事が無かった事実を思い出し、少しばかり虚しく想い感じるアッコ。

(修司は、私の瞳(め)をちゃんと見てくれた事なんて……私と向きあってくれた事なんて無い……)

 アッコは、修司が自分と目を合わせてくれてない事実に悲しい虚しさを感じた。

 

 一途に想っている少年が、自分と目を合わす事が無い事実に、少女は悲感した。

 少女の鏡の様な眼(まなこ)は、空虚な悲しみがひっそりと感じられながらも、汚れ無き輝きだけがその鏡の眼から解き放たれていた。

 

 

 

[親の想い]

 

 その日の夕刻、アッコは家に帰るなり、すぐさま夕飯の準備を母親と一緒にした。

 そして全ての食事を食卓に並べ終わった丁度その時、玄関の戸を開ける音が家に響いた。

「只今ーーッ」

 玄関の戸が開く音と共に、一人の男性の声がアッコと母親の耳に入る。

「あ、パパ、お帰りなさい」「パパお帰りーー」

 アッコの母/加賀美恭子(かがみきょうこ)が帰宅した恭子の夫でアッコの父の加賀美健一郎(かがみけんいちろう)に快く返事すると、それに続いて娘のアッコも笑顔で返事した。

 健一郎はそんな愛する妻と娘の笑顔での出迎えを喜びなつつも、疲れが感じられる言動で言った。

「ママーー、アッコーー、お腹空いたよ。早くメシ喰わせてくれ」

 疲労し切った健一郎は、糸が切れたように食卓の席に腰を下ろした。

「はいはい、今ちょうど食事の準備を済ませた所よ。さぁアッコ、パパも帰って来た事だし食事にしましょうか」

「うん、食べよう食べよう」

 健一郎が席に着いたのを見計らい、恭子とアッコも食卓に着いた。

 

 そして飼っているペットのシッポナ、訳あって一緒に暮らしている動物タレントのペンペンに御飯を与えると、アッコも家族三人でいつもの夕食に舌鼓した。

 そして食事をしつつ、母が徐に父に訊ねた。

「そう言えばパパ、今日はお仕事で修司君の家に行ったのよね」「!」

 母親の言葉に内心驚くアッコ、そして母の言葉に父は答えた。

「ああ、ニュース雑誌の編集長からの依頼でね。しかもちょうどその雑誌編集者の人と向かう途中に出くわして一緒に彼の家に出向いたんだ」

「へぇ……」

「その人、普段はティーン雑誌の記者なんだけど、編集長から「今はティーン雑誌の編集をやっている場合じゃない! 今は人手が足りないんだから市長の家に取材に行ってこい」って言われたみたいでね」

「まぁ、大変ねその人」

「うん、まあ、その人が修司君に色々と聖龍隊の事を取材しながら、僕がその様子をカメラに納めていったんだけどね」

「ふぅん……なんて人?」

「確か、月野謙之(つきのけんじ)って人だったな」

(あ、うさぎさんのお父さんじゃない)

 両親の会話を食事をしながら聞いていたアッコは父の語った雑誌の記者が、同じ聖龍隊の一人であるセーラームーンこと月野うさぎの父親である事を知った。

 

 そして夕食を終えて、父は真っ先に風呂に向かい、その間アッコと母親は二人で夕食の後片付けを行った。

 そして父親が風呂から出ると、次はアッコが母親より一足先に風呂に浸かった。

 風呂に浸かりつつ、アッコは人知れず想っていた。

(なんだか凄い事に成って来ちゃったな……。修司は元々、聖龍隊を世界を襲ってくる異次元からの怪人や怪物達から護る為に設立していたのかな……?)

 アッコは修司が聖龍隊を設立した真の目的が、異次元からの脅威と呼ばれる軍勢に立ち向かう為であったのか、未だに想い更けていた。

 と、アッコが湯船に浸かりながら想い更けていると、アッコは有る事に気付いた。

(あ、そういえば! 異次元から来襲してくる敵の存在を修司はいつどうやって知ったんだろう? それに……なんで異次元から襲い掛かって来る敵の中には、かつて私達が倒した筈の怪人や妖魔の姿が有るんだろう? う~~ん、不思議よね……)

 湯煙り籠る風呂場、熱気が充満する中でアッコは考え続けた。

 

 何故、修司は今の今まで世間に公に成っていなかった異次元からの脅威を知っていたのか。

 そして、なぜ敵の中にはアッコたち聖龍隊が過去に倒した筈の怪人や怪物達の姿があったのか。

 のぼせあがる直前まで湯船で考え更けたアッコであったが、遂に解らないまま風呂場を出た。

 

 そしてアッコは一人、自室で就寝の準備をしていた。

 髪を止めているカチューシャやリボンを髪から取り、いつも昼間には決めている髪型を解いた。

 すると、アッコの髪は肩よりに長目の、ふわふわのお下げ髪に変貌する。

 アッコはそのふわふわな髪質の髪をくしで丁寧に梳かし、梳かし終わるとアッコはそのままベッドまで歩み枕を整えた。

 と、その時だった。ドアを軽くノックする音が響き、アッコは自室の戸に向かって声を発した。

「ん、誰?」

 アッコが戸に向かって告げると、戸の向こうから声が返って来た。

「アッコ、ちょっと良い?」

 声の主はアッコの母親であった。

「あ、ママか。うん、良いわよ」

 アッコの承諾を得た母親は、静かにアッコの部屋に入った。

「どうしたのママ。なにか用?」

 アッコが訊ねると、母親は何処か悲痛な面立ちを浮かべながらアッコの顔を見詰めた。

「ま、ママ、どうしたのよ。そんな顔して……」

 普段はなかなか見せない様な悲しげな表情をする母を見て戸惑ってしまうアッコ。

 すると母は、アッコが腰を下ろしているベッド、そのアッコの隣に腰を下ろして話し出した。

「アッコ、その……」「?」

 様子のおかしい母を見て困り顔で不思議がるアッコ、そして母は躊躇っていた口を動かして言った。

「アッコ、あなた……修司君と一緒に良く居るけど、大丈夫よね?」

「え……な、何を言っているの、ママ……」

 母親の突然の言動に困惑してしまうアッコ、母は更にアッコに話した。

「アッコ、あなたが修司君の事を慕っている事はママ凄く良く解っているわ。だけどママ、何だか怖くて……」

「ま、ママ……」

「修司君が聖龍隊の最高責任者で街の市長である事はママ、以前から知っていたしアッコの友達として彼の事を受け入れていたわ」

「…………」

「だ、だけど……ママね、不安になっちゃって。もしアッコも何らかの形で聖龍隊に関わっちゃって、それが切っ掛けでアッコの身になにか遭ったらと思うとママ、凄く不安なの……」

「ママ……」母親の悲痛な言葉の数々にアッコは心痛な想いに駆られた。

 母親の恭子は、遂に目に涙を薄らと浮かべながらアッコに話し続けた。

「ママ、ママね。アッコに何か起きて欲しくないの。大切なアッコに何か起きたら、ようやく授けられた子供に何か遭ったら……ママ、死にたくなっちゃう……!」

「ま、ママ……!」

 母親の心の叫びにアッコは驚愕しながらも同時に胸が張り裂ける想いだった。

 それはアッコ自身が自分の出生を知っていたからである。

 実は母親がアッコを身籠る前に、既に別の女児を腹に宿していたのである。つまりアッコの姉を母は身籠っていたのだ。しかしその女児は、運悪く未熟児の様態で産まれてしまい、それから僅か三日後に亡くなってしまった。故に母親が第二児のアッコを身籠った際、母は子を身籠る喜びよりも不安の心情の方が勝っていたと云う。そして細心の注意を払いつつ、無事に元気な女の子を出産した。産まれ出た女の子は、待望の子供を無事に産み落とせた事に歓喜する両親、そして親族らの途方も無い愛情を一身に浴びながらすくすくと育てられた。それが加賀美あつこである。

 アッコはそんな自分の出生、そしてその際の両親の心情を知っていた為、母が感じる不安と語る言葉の重みに凄く申し訳なく思った。

 自分が実は、聖龍隊の隊士の一人であるミラーガールで有り、危険な戦いに身を投じていると母が知ったら、母はどうな想うのか。アッコは不安に感じた。

 

 アッコは不安に感じて涙目に成る母親を懸命に宥め、そして落ち付いた母親と就寝の挨拶を交わし、母が部屋を出ると同時にアッコも部屋を消灯して床に就いた。

 

 しかし暗闇の中、アッコは布団の中で悩んでいた。

(ママ、本気で泣いてた。本心から私の事を想ってくれているから、あんなに不安に感じたのよね……)

 アッコは母親が本気で娘である自分の事を想ってくれているからこそ、異常なまでに感情を顕わにしてしまった事実を悟っていた。

(ママはもちろん、パパや親せきのみんなも一心に私の事を愛してくれた。だからこそ、あそこまで過剰に本心を告げちゃったのは私、凄く解るけど……)

 本心で、本気で子を愛しているからこそ、必死な心情を打ち明けた母親の想いを真に感じ取ったアッコ。これによりアッコの心は揺らいでいた。

 今までも危険な目に幾度となく遭って来た、故に自分を無事に産めた事に心から喜びを感じてくれている両親に悲しい想いをさせてしまうのではないかとアッコは憂悶に浸った。

 

 自分の存在を、出生を心から幸せと感じてくれる両親の想い。

 だが、それと反して自ら危険な戦闘に身を投じて大切な仲間や友を護って来たヒロインとしての自分。

 二つの偽り無き想いに挟まれ、アッコの心は今までにない葛藤が生じていた。

 

 

 

[本腰を入れ出す聖龍隊]

 

 翌日、非常事態宣言のため学校が休校しているその日。アッコは休みに関わらず朝早く起床して家を出た。

 そして彼女が向かったのは修司の家、聖龍隊の前線基地と地下で繋がっている修司の自宅に足を運んだ。

 

「お……おはようっ。誰か居ないの?」

 アッコは急を急ぐかの如く珍しくチャイムを鳴らさずに玄関の戸を開けて家に入った。

 するとアッコの声に気付いて、家の中から修司の執事であり聖龍隊のサポートを主な職務にしているウッズが出て来てアッコに穏やかな表情で挨拶を述べた。

「おはようございますアッコさん。どうしたんですか? そんなに慌てて」

「う、ウッズさん。修司は……修司や聖龍隊のみんなはどうしてます?」

 多少慌てている様子のアッコが訊ねると、ウッズは答え返した。

「あぁ、それなら既に皆さん、地下の訓練場に集合していますよ」

「え! そ、それじゃ私もスグに……」

「ああ、アッコさんは大丈夫ですよ」

「え? な、なんで?」

 ウッズの発言に困惑するアッコが訊き返すと、ウッズは口元に若干の苦笑を浮かべて答え返した。

「え、ええ……アッコさんは言っては何ですけど、余り戦闘向けでは無いので、今回は一応訓練の様子を見るだけで良いと修司様の仰せつけで」

「そ、そうなの……」

 ウッズの告げた言葉に、アッコは少しばかりの虚無を感じた。

 

 

 そして、アッコはウッズと共に訓練場に設置されているカメラからの映像を確認できるビデオルームに足を運んだ。

 その部屋は聖龍隊の基地施設全てを見渡せる多くのモニター画面が設置されており、ウッズはその一つのモニターに訓練場の様子を映し出した。

「あ、修司」アッコはすぐさまモニターに映し出された修司の姿を認識した。

 丁度その時、修司はナースエンジェルと何か話をしている最中の様であった。

「なに話してるんだろう、あの二人……」

 アッコが二人のやり取りに気が行っている、その時。

「えッ! な、なに? 今のは……」

 突然訓練場の様子を映し出していたカメラの画像が激しく揺れたのだった。

 それを見たアッコが驚いていると、ウッズは慌ててカメラを切り替えた。

 するとモニターには大破した訓練場の壁と、それに続いていた黒い焦げ跡、その焦げ跡の先にはあの最終兵器のちせが両腕を機械化した状態で顔を蒼褪めたまま立ち尽くしていた。

「…………」「…………」

 驚きの余り表情が固まってしまうアッコ、そして悲愴な面立ちで黙り込んでしまうウッズ。

 すると大破した壁の中から銀色のボディを黒焦げにされたメタルバードが千鳥足で出て来た。

 そんな折、先ほどまでナースエンジェルと会話をしていた修司が歩み寄りメタルバードを黒焦げにしてしまったちせに何かを告げた。

 するとそんな修司にメタルバードが何かを言い返しているのを、アッコはモニター越しで確認できた。

「あ……あの、ウッズさん。あの子、ちせさん……」

 ちせの行為に驚いてしまうアッコが目を丸くして訊ねると、ウッズは悲愴な顔付きで答えた。

「え、ええ……ちせさんは、未だに自身の能力の制御が不安定なんです」

「………………」

 ウッズの答えにアッコは心の中に蟠りの感情を巡らせてしまっていた。

 

 

 

 そして訓練を終え、修司とバーンズ、ジュニアとアプリコットは一室に集まって話をしていた。

「大丈夫かいバーンズ」

「あ、ああ……身体を鋼(メタル)化していたから大事無いが、生身で受けていたら下手すると体の細胞が消滅していたかもしれねえぜ」

 先ほど訓練でちせの攻撃を一身に浴びたバーンズにジュニアが声を掛けると、バーンズは自身の身体に軟膏を塗って処置を施しながら言葉を返した。

「あの女の子、ちせって人だったわよね。……能力が制御できないみたいですけど、どうするんですか修司さん」

「……………………」

 ちせの制御できない高火力の能力に不安を感じるアプリが訊ねるが、修司は険しい面持ちのまま何も話そうとはしなかった。

 と、其処へ。部屋の電動ドアが開いて四人が話し合っている一室にアッコが入室して来た。

「みんな、訓練お疲れ様っ」

「アッコさん」「アッコさん……」

「よぉアッコ、お前も来ていたのか。姿が見えなかったから居ねえのかと思っちまったぜ」

 入るなり部屋に居る皆に労いの言葉を掛けるアッコに、ジュニアとアプリは穏やかな笑みを浮かべ、バーンズは調子の良い笑顔でアッコに話し返した。

 一方の修司は部屋に入って来たアッコに険しい顔付きの虚しい横目を向けながら言った。

「今日はどうした。訓練だけ見ていれば良い筈だが……」

「あ、ああ……いえね、ただみんなの調子はどうかなぁって。やっぱ見ているだけじゃ解らない面もあるだろうし」

「…………そうか」

 アッコの言葉を聞き、修司は再び視線を顔の目線に戻した。だがこの時の修司の視線をアッコは見逃さなかった。

 そう、この時も修司はアッコの目線を直視する事無く、微妙に目線を逸らしていた。

 そんな時、バーンズが修司に話し掛けて来た。

「おい、修司」「……なんだ?」

 訪ねて来るバーンズに修司は無愛想の険しい表情で訊き返すと、バーンズは真剣な顔立ちで訊ね返した。

「修司、どうするんだ今の状況。言っちゃなんだが、今の状態でまともに戦えやしねえぞ」

「………………」

 真剣に訪ねて来るバーンズに、修司は表情を変えずに何も言い返そうとはしない。

「え、ど、どういう事? なんかあったの?」

 バーンズの話に理解できず戸惑うアッコが言うとジュニアが答えた。

「いやね、新しいメンバーについて他の聖龍隊員たちの意見に亀裂が生じちゃっているんだよ」

「え? 亀裂……?」

 アッコが驚いているとアプリコットがそれに付いて語った。

「いえねアッコさん、あのちせさんもなんですが他の新メンバーであるコレクターズの三人についても聖龍隊の中じゃ余り良く思ってない方が居るんですよ」

「な、なんでまた……」

 するとアプリに続いて先ほど修司に言ったバーンズがアッコに矛先を変えて話した。

「それがよアッコ、新しいメンバーのちせやコレクターズの三人に対して良く思ってない同士が居るんだよ。それじゃ激しい戦闘の中での共闘は難しいぜ」

「だ、だからなんでまた新メンバーの事を快く思ってない訳? 同じ聖龍隊の仲間なのに……!」

「それがな……やっぱりちせの方は未だに制御できない能力だから危険だって意見が出ちまっているし、コレクターズの三人は現実空間で戦った経験が無い素人で危ういって意見らが飛び交っているんだよ」

「そ……そうなの……」

 バーンズの話を聞いて憂鬱な気分に成るアッコ。

 一方のバーンズは再び修司に話を振った。

「修司どうすんだよ一体」「…………」

 しかし有無も言わない修司に苛立ちが募って来たバーンズは思わず強めの口調で怒鳴った。

「どうすんだよッ、このままじゃ共闘する為の協調性なんて生まれないぞ!」

 だが修司はバーンズの声にも動じず、静かに立ち上がると同時に無情の面立ちで声を発した。

「そんなに喚くな。先手は事を仕損じるって云うぞ。今は一先ず様子を見るんだ」

「だ、だけどな……」

 気が滅入り困惑するバーンズに、修司は更に言葉を付け足した。

「そうスグにチームワークなんかが生まれる訳が無いだろ。何事も時を隔てなければ積み重ならないのが経験だ。俺やお前らだって最初は衝突しながらも最後には纏まってるじゃねえか」

「「「「!」」」」

 修司の言葉に感極まり、心に衝撃を受けるその場の四人。

 そして修司はバーンズにそう言い残すと部屋の電動ドアに足を運びながら言った。

「それじゃ、俺はまだやる事があるからこれで」

 修司は素気ない態度で部屋を出て行った。

 残された四人は先ほどの修司の言葉に感化され、思わず固まってしまっていた。

 

 

 

 

[支援者達]

 

 聖龍隊のとある一室、其処は広い会議室の様な造りに成っていた。

 修司は其処で、聖龍隊に様々な支援、主に資金援助をしてくれている方々と対談していた。

「……と云う訳で、聖龍隊が異次元からの脅威に向かって行かなければ俺達の世界は破滅の一途しか無い訳だ。更に、今後聖龍隊は更なる活躍の場を広げて行く為にも、異次元から来襲する敵勢に打ち勝って国際的にも認められた組織にして行きたいと云うのが、この俺の考えだ。理解してくれたか諸君」

 己の考えを淡々と同室の支援者達に語る修司。

 一方、修司の考えを聞いた支援者たちは当然の如く反論した。

「し、しかし修司殿。いくら聖龍隊の組織力はもちろん、多くの英雄隊の力が組み合っているとしても、この計画は余りにも危険なのでは」

「そうですとも……。もし万が一、はるか様やみちる様に何か遭ってしまったら……!」

 沈痛な面持ちで修司に語るのはセーラーウラヌスこと天王はるかとセーラーネプチューンこと海王みちるの実家である二つの財閥グループ、その役員達であった。

「うむ。修司君が其処まで聖龍隊を国際的な組織に発展していきたいと云う強い想いは良ぉく解った。しかし! ハニーくんを始め、聖龍隊の戦士と呼ばれる隊士達はその殆どがまだ年端もいかない子供ばかり。少し無謀な気がしなくでもないが……」

「アタクシも心配ですわ。あの子達に何か遭ったら……」

「そうですわね。世界中の軍隊を壊滅させた怪人達の軍勢に、彼女達だけで対抗できるのか不安ですわ」

 修司の意思を知って考え込んでしまうのは、キューティーハニーこと如月ハニーと彼女の妹のミスティーハニーこと葉月聖羅が通う聖チャペル学園の団兵衛(だんべえ)学園長。そして団兵衛の隣には、団兵衛の姉で聖チャペルの理事長を務めるアルフォンヌと教師であるミハルが聖龍隊の面々を心配する。

「私も心配で為りませぬ。もし春菜御嬢様の身に何が遭りましたらこの爺、旦那様と奥様に顔向けできませぬ」

 そう言うのはコレクターズの一人であるお嬢様育ちの如月春菜(きさらぎはるな)の周りの世話をする春菜の執事。

 鬱々と自分達の不安な心中を語る一同。

 しかしその時、重苦しい空気が漂う中、一人の老人が心配の余り暗鬱な表情を浮かべる一同に向かって軽く手を挙げて言った。

「ちょっと宜しいですかな?」「あ、貴方は……」

 手を挙げる老人にその場の皆は目を向けた。

「皆さん、不安でしょうが、もう少し子供達を信じてあげてみませんか」

「な、何を言っているんですか雨宮さん! もし子供達に何か遭ってからでは遅いんですよ!」

 老人の発言に天王はるかの財閥グループの役員が反論する。

 不安の胸中で鬱々となる同室の一同に対して申した老人の名は雨宮 真嬉(あまみや まさき)。雨宮コーポレーションという株式会社の会長を務めている人物。

 雨宮真嬉は自分の発言に尋常な反応を見せる皆に申した。

「確かに聖龍隊の隊士の殆どがまだ子供で、かつ戦う相手が異次元から来る未知の強敵である以上、皆様方が不安に思ってしまうのは当然でしょう」

『……………………』

「……しかし、あの子達は今までも幾度となく危険な戦いを乗り越え、自らも凛々しくそして逞しく成長してきました。今回の大規模な戦闘も彼女達の実力ならきっと乗り越えられる筈です」

「だ、だけど雨宮会長……」

 不安そうな表情で海王みちるの財閥グループの役員が雨宮に言おうと口を開いたその時、雨宮の隣に座っていた女性が意見を申した。

「皆さま待ってください。私も雨宮会長の……祖父の意見に同意です」

「そッ……そんな……!」「貴女までですか、大道寺社長……!」

 雨宮の意見に賛同する一人の女性、名は大道寺園美(だいどうじそのみ)。大道寺トイズコーポレーションと云う玩具会社の社長であり、あの大道寺知世(だいどうじともよ)の母親だ。

 園美は自分の発言に驚きの反応を見せる天王グループと海王グループの役員達、更には他の支援者達にも言い放った。

「皆さま、私だって正直申し上げると不安で仕方ありません。大切な子供達が自らの命を危険に晒し、日本の……いえ、ゆくゆくは世界の為に命を賭けて激しい戦いの場に身を投じるなんて未だに信じられません……!」

 そう言った園美は悲愴な面持ちを一瞬で険しい真剣な表情に一変させて言い続けた。

「ですが……あの子達ならきっと力を合わせ困難を乗り越えて来てくれると信じています……! 私は以前より、聖龍隊の一員である女の子と私の娘が友達同士と云う事で良く交流を深めています。その女の子は心の底から優しい子で、とても気高い一面も持ち合わせています。私は聖龍隊の皆さんはもちろん、その女の子の事も心から信じてあげたいのです」

 強い意志が醸し出される園美の言い分を聞いて一気に黙り込んでしまう一同。

 すると孫娘の園美に続いて、園美の祖父である雨宮が再び言った。

「……皆さん、どうか子供達を信じてあげて下さい。子供と云うのは親の気付かない内に色々と成長し、そして学んで行くものなのです。それを大人である私達が勝手に歯止めを付けて余計な事をするのは返って無粋ではないでしょうか? あの子達が培ってきた経験と結束の力を、此処は一つ信じてみようではないですか」

 最後に穏やかな笑みで堂々と言い放つ雨宮の言動に何も言い返せなくなる場の一同。

 

 雨宮と園美が申し、そして心に過っていた少女は、かの木之本桜(きのもとさくら)の事であった。

 実は雨宮の孫娘にはもう一人、園美とは別の娘が居た。その娘の名は撫子(なでしこ)。実はその撫子、園美とは父方の従姉妹同士であり、同時に木之本桜の今は亡き母だった。

 つまり雨宮は、園美の娘である知世と撫子の子供たちである木之本桜と木之本桃矢(きのもととうや)の曽祖父でもあるのだ。

 当初、雨宮を始めとした撫子の親戚達は彼女の恋した男性、つまりさくらの実父との婚姻を快く思っておらず、二人は周りの承諾を得られない間々駆け落ち同然の結婚をしたという。

 しかし園美の娘である知世が心から慕っている親友のさくらが撫子の忘れ形見と言える女の子である事を知った雨宮は、最初自分の素性を隠してさくらに近づき彼女と触れ合って行くうちに撫子が選んだ男に間違いは無かったと自分の考えを改めたのであった。それから後、雨宮は当の本人であるさくらの父親にも詫びを入れ、ようやく木之本家と雨宮一族の確執が消えた。

 そんな事情もあって、雨宮と園美は今は亡き撫子の娘であるさくらの身を案じながらも、彼女の実力や心の強さを信じてあげたい真情であったのだ。

 

 皆がそれぞれ意見を言い合い物議を醸し出している最中、ただ一人、話に加わらず自前の手鏡で自分の髪を櫛で梳かしていた男が初めて話し出した。

「いやいや、さすが大道寺トイズコーポレーションの園美社長とその曽祖父で在らせられる雨宮コーポレーションの雨宮会長殿だ。言う事が他の皆様方と一味も二味も違いますねぇ」

 男は手鏡と向き合いつつ、櫛で自分の髪型を整えながら皆に調子良く言った。

 そんな男に皆の意見に黙って耳を傾けていた修司が訊ねた。

「そういう健、お前は全く自分の意見を言ってはいないが、実の所どう思ってる。聖龍隊のこれからの事を……」

 すると男は手に持っていた手鏡を下ろして修司の問いに答えた。

「まあそうだね……確かに多くの皆皆さんの言う通り、この僕だって不安ですよ。いくら聖龍隊の強さが半端無いって言ったって、今度彼女達が戦う相手は全世界の軍隊を壊滅させちゃった怪物の群れなんだからね。下手をしたら女の子達が全員死んでしまうかもしれない」

『………………』「………………」

 男の発言にその場の皆も修司も黙り込んでしまうが、男の方は真顔の表情から一変とても明るい表情で軽い態度で調子良く発した。

「まっ、今考えたって意味無いですよ。僕達は僕達でやれる事をやってあの子達の、聖龍隊の支援に身を入れなければいけませんしね。未だに聖龍隊は危険な組織だって新聞や雑誌に掲載されてしまってますし、僕達が力を合わせて聖龍隊を少しでも素晴らしいチームだって事を世間に認めて貰わないと……」

 男がそう言うと、修司は男の意見に賛成するかのように小さく首を頷かせて告げた。

「健の言う通りだ。今、この場に居る者達で出来得る事はそれだけだ。此処の者等は金銭的な支援だけでなく、同時に聖龍隊のイメージアップに成る様な広報活動にも専念して欲しい。そうしなければ類希(たぐいまれ)なる能力を所持している聖龍隊の全員が、異形の者として蔑視の矛先を向けられるかもしれないからな」

 修司は次に、その場に着席している面々に顔を向けて申し告げた。

「田能久健が新たな会長に納まった芹沢グループ、更には天王と海王の二つの財閥グループに雨宮一族という日本有数の巨大財閥。其処に如月家の様な大企業の力に聖チャペル学園の様な各室の高い教育関係者等の力添えが有れば、聖龍隊は今度とも何の支障も無く活動できるだろう」

 それを聞いて険しい面持ちで修司の方を見る支援者達、その中の一人で先ほど皆に自分の意見を申した男、田能久健が再び頭に手を当てながら言葉を零した。

「いや~~まいったな~~。修司君の考えは底が見えなくて追い付けないよ」

 健は更に修司に対して問うた。

「ほんとに君は何を考えているんだい? 聖龍隊を結成させてアジア初のヒーローチームを創りたいって願望をアニメタウンの市長に就任した時から持っていたのかい? それとも、アニメタウンに所在しているヒロイン達の存在を聞き付けて、それでアニメタウンの市長になったのかい?」

 修司は自分に問うてくる健に険しい横顔を向けながら返事をした。

「健、今はそれよりも聖龍隊の周りを着々と固めて行く事が先決だ。未だに週刊誌や新聞などのメディアに、聖龍隊は危険極まりない輩であるなどと報道されてしまっている」

 そして修司は、険しい顔付きの鋭い眼つきを放ちながら、眼前に着席している支援者達に言った。

「良いか、今までは此処に居る支援者達の出費してくれた資金を元手に聖龍隊の活動及び基地施設の建設などに着手する事が出来た。だが俺達の本当の活動はこれからだ。聖龍隊が本気で異次元から攻めてくる敵勢に対して勝利を収めなければ、聖龍隊やお前たち一般市民までもただ生きる道が無くなるだけじゃない。聖龍隊は列記とした平和的組織でかつ弱者を護り抜く存在らで有ると世間に示して行かなければ……そうでなければ聖龍隊は、遅かれ早かれ危険な異種であると認識され迫害される恐れもあるからな」

『………………』修司の台詞に言葉を失くしてしまう支援者達。

 そんな支援者達に、修司は最後にこう云って場を締め括った。

「だからこそ、俺たち聖龍隊は戦い続けなければいけないんだ。生きる事、それすなわち戦う事――俺の人生論だ。懸命に生きる事は最早戦いでしか無い。俺はもちろん、聖龍隊の面々も自分等の存在を認めて貰う為に懸命に生き永らえながら戦いにも身を投じなければいけない。しかし俺等は金銭的な事に関しては無力に等しい。故にその様な問題は資金援助者でもある支援者らの力添えが欠かせなく成る故に、これからも後々まで援助のほど宜しくお願いするよ。可愛い子供達の事を本当に思っているのならね」

 最後に不敵な言葉を支援者達に告げた修司は、着席していた腰を上げて一人真っ先に部屋から出て行った。

 

 聖龍隊の計画(プロジェクト)は、今まさに始まったばかりであったのだ。

 

 

 

[三枚のカードと一面を飾る記事]

 

 ある日、修司は聖龍隊の基地施設の一室にカードキャプターの木之本桜(きのもとさくら)を呼び出して、二人っきりで机を挟んだ状態で向かい合っていた。

「…………」「…………」

 修司は眼前のさくらに対して無表情の強面で向かい合っているのだが、そんな修司の只ならぬ気迫に圧倒されそうに成ってしまうさくら。

 すると修司は、そんなさくらの様子に気付いて声を掛ける。

「おい、さくら」「ッ、は、はい」

 声を掛けられ一瞬驚いてしまうさくら、修司はそんなさくらに再度話し掛ける。

「さっきからどうした。早く占いの続きをしてくれ」

「は、はい……」

 さくらが小さく返事をすると、同時にさくらの背後からケルベロスが出て来てさくらに告げた。

「さくら落ち付けぇや。お前がそんなに緊張した状態でカード占いをしていたら、ちゃんとした結果も出ない上にカード達だって何事かって思うてしまうんやで。もうちっと肩の荷下ろしてリラックスするんや」

「う、うん。解ってるよ、ケロちゃん……」

 ケルベロスに指摘されたさくらは、再び視線を並べられた机上のさくらカードに向けた。

 実は修司からの要望で、さくらの所持している【さくらカード】を使ったタロット占いで聖龍隊の大戦での結果を占ってあげていたのだった。

 修司は聖龍隊でも随一歴史に通じている面が有り、古来より日ノ本の武人や戦人達は重大な出来事や大きな戦の前には、その結果を占いなどで予見して貰っていたと知っていたが故に、カードを使ったタロット占いに長けているカードキャプターの木之本桜に聖龍隊の戦いの末路を占って欲しいと頼んだのだった。

 修司から頼まれたさくらは、自身も聖龍隊がどうなるのか気に成っていたのも相俟って、修司の要望を快く受託した。

 

 そしてさくらは、机上に並べられたカードの内の規定の位置に伏せられているカードを一枚一枚、表にして見せる。

 そして三枚のカードを表表示にし終わると、占いを頼んだ修司、カードを表にしたさくら、そしてさくらの付き添いであるケルベロスが表示されている三枚のカードに目をやった。

「こ、これって……」「な、なんや? これは一体……」

「………………」

 表に成っている三枚のカードを見て愕然としてしまうさくらとケルベロス、そして神妙な強面でカード三枚を見詰める修司。

 さくらが占いで捲り返した三枚のカード、それは。

 ライト(THE LIGHT)「光」/ミラー(THE MIRROR)「鏡」/そしてダーク(THE DARK)「闇」の三枚だった。

「け、ケロちゃん、これって……」

「わ、解らん……一体全体、この三枚が表している戦果……結果って、何なんや?」

 三枚のカードが示している意味が全く理解できずに、困惑してしまうさくらとケルベロス。

 一方の修司は表情を変えず、眉も微動だにせず、沈黙の面差しでカードを見詰め続けていた。

「……し、修司さん? どうしたんですか? す、済みません。私にも、この三枚が何を意味しているのか良く解らなくて……」

 占いの結果を具体的に示せなかった事に申し訳なく思うさくら。

 しかし修司はそんな申し訳無さそうな表情を浮かべるさくらに告げた。

「いや、さくら。これで充分だ。御苦労だったな」「は、はい……!」

 修司の返事に若干怯んでしまいながらも言葉を返すさくら。

 そして修司はスッと立ち上がるとそのままさくらに背を向けて部屋を後にしようとした。

「あ、修司さん……」

 さくらが呼び掛けようとしたが、既に修司は部屋から出てった後であった。

 さくらとケルベロスは占いの結果と修司の予想外の態度に唖然としてしまい、しばらく顔を向き合っていた。

 

 光/鏡/闇 これ等が意味する聖龍隊の結末とは。

 聖龍隊と異次元からの脅威との戦いをどう暗示しているのか?

 さくらとケルベロスは頭を必死に使うも、結局なにも解らず仕舞いであった。

 

 

 

 それから日は経ち、聖龍隊の施設の一室で。

「…………ふぅ……」

 一人、椅子に座りながら新聞を読み更ける聖龍隊副長のバーンズの姿が在った。何やら新聞を読んだバーンズは陰鬱な表情で溜息を衝く。

 と、其処に参謀長のジュニアがやって来た。

「どうしたのバーンズ。新聞に目を通して」

「ジュニアか、ちょいとこれを見ろ」

 ジュニアが訊ねるとバーンズは読んでいた新聞をテーブルの上に放り出してジュニアに見せつけた。

「これは……なるほどね」

 新聞の一面を見たジュニアは、すぐにバーンズが陰鬱な表情で新聞を読んでいたのか納得した。

 バーンズが読んでいた新聞には一面に大きく記載されていたのが。

[聖龍隊 その危険性!] [謎の少年 小田原修司! その真意とは?]

 等と一面を飾ってしまっていたのであった。

「ふぅ……」

 予測していたとはいえ、自分たち聖龍隊の事を非難する記事を読んだバーンズは顔を俯かせ思わず溜息を吐いてしまう。

 更に其処へ、ジュニアが顔を俯かせるバーンズに悲愴漂う険しい面持ちで言った。

「……バーンズ、これも見なよ」

 そう言ってジュニアは手元に所持していた報道雑誌をテーブルに置いた。

「ん……」ジュニアに言われてテーブルに置かれた雑誌に目を通すバーンズ。

 雑誌にはこの様な記事が掲載されていた。

[聖龍隊 背後には日本経済界の重鎮たちの存在が!?]

[聖龍隊の真の目的とは? 彼等の特殊能力は本当に安全なのか]

[経歴全てが謎! アニメタウン市長に就任する以前の小田原修司の経緯]

 と、これもまた聖龍隊に関してのバッシング記事であった。

 雑誌に目を通したバーンズは暗鬱な面持ちで呟いた。

「あ~~あ……どうなるんだが。オレ達……」

 バーンズは自分たち聖龍隊の今後に不安しか感じられずにいた。

 

 

 

[初めての感触]

 

 その頃、修司は一人ある所に向かっていた。

 しばらく歩くと、修司はとある一室の前に辿り付き、両開き式の電動ドアを開けて中に入る。

「よぉ、お前等、調子はどうだ?」

 修司は部屋に入るなり、部屋に居た仲間に声を掛ける。

「あ、修司君」「修司か、丁度良い所に来てくれたな」

「ん、なんだウラヌス」

 部屋に居たセーラー戦士達、修司が部屋に入るなり声を掛けて来たセーラーマーズ、修司に何かしら用向きが有ったらしいウラヌスの声が部屋に響く。

 修司は自分に用事か何かが有るウラヌスに訊き返すと、彼女は険しい真剣な面差しで修司に言った。

「修司、ボクは今まで君の行動には何かしら思う所が有った。確かに君の戦闘時に発揮される状況判断力、そして眼前の敵に対して決して揺らがない闘争心など、戦いに掛けての君のセンスは一級だ、それは認めるよ。だけど……」

「…………」

「修司、君は一体全体ボク等をどうしたいんだい? ボク達セーラー戦士だけでなく、他の英雄達までも続々と勧誘していって……一体どれくらいの戦力を聖龍隊は、いや君は必要としているんだ?」

「……」

「それだけじゃない。普通に考えて今までの聖龍隊だけでも充分な戦力だと言うのに――何で其処に、わざわざ現実世界では戦った事のない未経験者のコレクターズの三人に、あの未だに自分の力も満足に制御できない、ちせって女の子までも加えたんだよ。素人三人に制御困難なサイボーグと一緒に戦っていたら、ボク達だけじゃなく彼女達まで危険な目に遭うんだよ! それを解っているのかい?」

 現実の戦いに関しては未経験者のコレクターズに、自身の能力の制御が不能なちせに対する不満を容赦なく修司にぶつけるウラヌス。

 これに対し修司は険しい顔のウラヌスに迫られながらも、全く動じず冷静な態度を保っていた。

 そして修司は顔色一つ変えず、自分に思いの丈を全て吐き出したウラヌスに平然と話し返した。

「ウラヌス、お前の言いたい事は解る。電脳空間でしか戦闘経験のないコレクターズ、自身の能力の制御に苦しむ兵器少女、彼女達の存在が戦局を大きく揺れ動かしてしまう事を、お前は不安に思っている訳だろ」

「…………」

 睨む様な目付きで修司に険しい面差しを向けるウラヌス。

 そんな彼女に修司は相も変わらない冷静な態度で話し続けた。

「……だがなウラヌス。彼女等の経験と能力は必ず異次元からの脅威との戦いに必要不可欠な戦力には成る事だろうし、後々まで聖龍隊の活動にとっても必要となるだろう」

「…………」しかしウラヌスは表情を変えず、険しい面持ちで睨んだままだった。

 だが修司はそんなウラヌス及び重苦しい空気が漂う状況の中、ウラヌスを始めとしたセーラー戦士達に言った。

「まぁ、今はそれよりも各自の戦力の増強が必要な時だ」

 そして修司は眼前のウラヌスに対し力強い眼力を向けたまま告げた。

「まずはウラヌス、お前からだ。――俺と戦え」

 態度を変えないと云うよりも変わらない修司の戦意溢れる言葉に愕然するウラヌス。

 修司はこの時、ウラヌスの目よりも若干横に視線の先を向けていたのだが、ウラヌスの視点からしてみれば、修司の力強い眼光から放たれる底の見えない戦意に心の中で静かに驚愕していた。

 ウラヌスはしばし沈黙していると、意を決して修司に話し返した。

「修司、君は……」「…………」

 ウラヌスは重い口を開いて修司に言った。

「君は…………戦う事に、怖くないのか?」

「…………」

 ウラヌスに訊かれた修司は表情を変える事無く無言であった。

 そして修司は、口を静かに開きウラヌスの問いに対して話し出した。

「……お前にしては珍しいな。戦いに何の迷いも躊躇も無く、ただ戦い続けていた天王星の戦士はもはや過去の存在だったか」

「……………………」

 険しいながらも神妙な面持ちで修司と向き合うウラヌス、そして修司はウラヌスの問いに答え始めた。

「……確かに、俺だって本音を言わせてもらえば怖いさ。いや、戦いに恐れを感じない者など居やしない。例え居たとしても、それは単なる早死にしてしまうだけの無謀者だ」

 この修司の言葉にウラヌスは迷う事無く訊き返す。

「勇者と無謀者、その違いは?」

 修司は平然と答えた。

「ふっ、勇者だって何も死を恐れてない訳では無い。いや、死を恐れているからこそ勇気を奮い立たせられるのかもしれない。俺は少なからずそう思う」

「…………」

 修司は続けて、ウラヌスだけでなく同室のセーラー戦士達にも語る勢いで話し続けた。

「良いか、人は死を恐れているからこそ生きると云う事に執着できる。それ故に戦いにも常に細心の注意を払いながら周囲の戦況を把握し、そして生き永らえる強さを得られるんだ」

 更に修司は力強い意志が感じられる顔立ちで話し続ける。

「死を恐れず単身猛進する奴など早死にしてしまうだけの馬鹿者だ、愚者だ。人は死を恐れているからこそ自分の身を護りつつ周りの状況も把握できるために共闘している仲間の事も充分に考慮できるんだ」

 セーラー戦士達は修司の力強くも漆黒の闇の如き瞳に意識が持って行かれつつ、修司の話に耳を傾けていた。

 するとその時、修司は唐突に腰に下げていた得物である聖龍剣を抜き、刀の切っ先をウラヌスに向けた。

 周囲のセーラー戦士一同、そして切っ先を向けられたウラヌス自身も言葉を発する暇も無く驚く。

 そんなウラヌスに、修司は刀を向けたまま訊ねた。

「所でウラヌス、お前は…………そういうお前は、どんな感触を得られたのだ?」

「え……!?」

 突然なにを訊ねられたのか解り切れないウラヌスは困惑した。

 そして修司は神妙な面差しで言ったのだった。

「お前も俺と同じ刀を使った戦法が主流だったよな。そんなお前は、最初敵を倒した時どんな心情だった」

「…………!」

「その煌びやかな短刀で敵を斬り殺したり突き刺した時の感触はどうだったかって訊いているんだ」

「…………」訊かれたウラヌスは何も答えようとはしなかった。

 しかし修司はそれでもウラヌスに容赦なく問い続けた。

「赤や緑の宝石が鏤められた黄金の短刀で、初めて敵を斬り付けたり突き殺した時の感触は覚えているか?」

「…………」

 言い詰められるウラヌスは、遂に無表情ながらも真剣さが伝わって来る修司の真顔を直視する事が出来ず、顔を背けてしまう。

 そんなウラヌスの様子を見た修司はウラヌスに向けていた聖龍剣を鞘に納めると、ウラヌスや他のセーラー戦士達に横顔を向けて再び語り始めた。

「それなら俺から言わせて貰おう。……俺が初めて敵を斬り殺した時は、不思議と初めて感じた感覚とは思えなかった。簡単に言えばいつも呼吸をしたり食事を摂ったりする時の感覚と大して変わりはしなかった」

『!!』修司の発した言葉に愕然と成るセーラー戦士達。

 しかし修司はそれでも平然と語り続けた。

「ウラヌス、それにセーラー戦士達。俺が道楽、すなわち趣味で料理をしているのは周知しているよな」

 修司の発言に戦士達は心の中で動揺しつつも小さく頷いて反応する。

 そんな彼女達に修司は表情も態度も一変させる事無く話し続ける。

「俺はいつも、その料理で敵を斬り殺して行く感触を体験している。そう、鶏肉や豚肉を包丁で切り調理をしている時の感覚と全く酷似しているんだよ。敵の体に聖龍剣を突き刺したり斬り付けたりする時の感触が、どうも食肉に包丁を入れて切って行く感触と寸分違わず同じ感覚に感じてしまうんだよ」

『…………』

「敵である怪人や怪物共の肉体を聖龍剣と云う刀で斬り付けて行く感覚、包丁と云う刃物で肉を切り捌く感覚……俺にとって、敵を斬る事は対した違和感も不快感も感じさせないんだよ」

『………………』

 敵の肉体を斬る感触、料理で食肉を切る感触。修司はこの二つの感覚を全く同じ感覚としてしか感じられないとセーラー戦士達に述べた。

 話を聞いたセーラー戦士達は、常軌を逸した修司の感覚に驚き言葉を呑みこんだ。

 そんなセーラー戦士達に修司は静かに訊ねた。

「……異常だと思うだろ。敵を斬る事を、ただの肉を切るだけの感覚にしか感じないなんてよ」

 これに対しセーラー戦士達は何も答え返す事は出来なかった。

 更にこの時、修司は人知れずウラヌスの顔色や表情に浮かび上がる彼女の心情を読み取っていた。

 そして修司はウラヌスに対して、ある一つの真情を察し、彼女に声を掛けた。

「……そうか……ウラヌス、お前は」「…………」

 声を掛けられたウラヌスは静かに顔を再び修司に向ける。

 修司は顔を向けたウラヌスに話し出した。

「お前はウラヌス…………コレクターズの三人、春日結(かすがゆい)如月春菜(きさらぎはるな)篠崎愛(しのざきあい)、更にはあのちせにも味遭わせたくないんだな。――自分が体感してしまった、敵の命を奪う感覚を」

「! ……」

 自身の心中を衝かれ、動揺の色が顔に薄らと浮かび上がるウラヌス。

 そんな微妙に顔色の変った彼女に修司は話し続けた。

「お前は本当に……優しい女なんだな、ウラヌス。自分が味わった不快な想いを、彼女達にも味遭わせたく無かったのか」

「…………」

 修司の問い掛けに口を噤むウラヌスに、修司は無表情な顔色を変える事無く言い退けた。

「しかしウラヌス、残念な事に俺たち聖龍隊の使命は、あくまで己の特殊能力などで力の弱い人々の代わりに剣と成り盾と成って戦いつつ人々の安全を護るためだ。故に戦いを避けて平和な時を作れるほど甘い事態ではないのだよ」

「……」『……』

 修司の重苦しくも、何処か悲痛が感じられる言葉に悲愴感に陥ってしまうウラヌスとセーラー戦士達。

 更に修司は彼女達に悲しい事実を語った。

「何より、以前にも見せたり話したりして既に知っているだろ。異次元からの脅威と呼ばれる軍勢は巨大だ。正直、今までの聖龍隊のメンバーだけでは到底太刀打ちできない上に、新しく加えたメンバーによる戦力を足しても心もとないのが現状なんだよ」

 沈黙に浸る美少女戦士達に修司は立て続けに述べた。

「しかしだ、これは何も傷付けたり殺したりするばかりの戦いでは無い。俺達の掛け替えのない大切な家族や親友、住み慣れた町や世界、そして今此処に居る志を共にする聖龍隊の仲間達の幸せを護る為の戦いなんだ。それは理解してくれ」

『…………』

 重苦しくも険しい、そして強い意志が感じられる面差しで修司に言われたセーラー戦士達は沈黙を保ったまま力強い面持ちに表情を一変させた。

 ウラヌス自身もこの時、初めて敵である怪人を倒した時の事を思い出していた。

 自身の短刀で敵を斬り、そして突き刺した時の不快な感触。使命とはいえ命を傷付けそして奪った時の感覚。それは心に何とも言えない罪悪感を植え付け、己の心に永遠と刻み込まれる苦痛と云う名の傷。

 そんな場の空気が一気に重く苦しく成ったその時、修司は気落ちしているセーラー戦士達に真顔で平然と言い放った。

「ほら、シャキッとしろお前等。それでも俺達が戦わなきゃ、多くの命が無意味に奪われてしまうんだ。本当に命を、そう大切な者を護りたいのであれば、今は考えずただ黙々と自身の戦闘力の強化に身を入れろ」

 そして修司はセーラー戦士達に背を向けると、そのまま彼女達に言った。

「良し行くぞ。俺達は聖龍隊、力無き者たちの剣であり盾である。故に、常に己を鍛えて行かなければいけないんだからなッ。全員これから俺と仕合だ、さっさと付いて来い!」

 修司に言われ、セーラー戦士達は未だ釈然としないまま修司に着いて行った。

 

 修司の後ろを歩きながらセーラー戦士達は思った。

 強いと云う事はすなわち迷いや躊躇を失くさなければいけない事、護る為には結局戦わなければいけない事。

 そして力の無い弱者たちの為にも、自分達の存在は無くてはならないのだと云う事を。

 星の守護者たちは少しずつ己の心の中で自分達の置かれた状況下を理解しつつ整理して行った。

 

 しかしこの時、修司はもちろんセーラー戦士達も気付いてはいなかった。

 セーラー戦士達が居た部屋には二つの扉が在ったのだが、修司達が出て行った扉とは別のもう一つの扉の前で一人の少女が修司とセーラー戦士達の話を聞いていたのを。

 その少女は誰も居なくなった部屋に入り、そして先ほどの修司達の話に愕然としながら呟き始めた。

「修司…………あんな事、想っていたんだ……」

 透き通った様な青白く美しいコスチュームを身に纏うその少女、魔鏡聖女(まきょうせいじょ)ミラーガール本人であった。

 ミラーガールは悲しく儚い現実味のある教訓を口にした修司の言動に愕然とした。

 そして彼女は思った。

(……確かに、戦わなければ命は護れない。それは私にだって解る、だけど……だけど、私も聖龍隊のみんなも本当に望んでいるのは争いの世界なんかじゃない! 誰だって平和に過せる……どう、誰もが笑顔で居られる世界こそ聖龍隊の皆が望んで已まない理想であり夢なのよ。修司……)

 戦う事、争う事、そして命を奪う事までも、心に何も感じないと断言する修司を聖女はどう思ったのであろうか。

 

 

 

[想い感じられるなら]

 

 更に小田原修司(おだわらしゅうじ)こと聖龍使いは愛の戦士キューティーハニーとも仕合を行った。

 聖龍使いの激しく荒々しくも力強い太刀筋に、キューティーハニーは必死に応戦しつつも懸命に聖龍使いの攻撃を受け止めていた。

 仕合の最中、聖龍使いは時おり聖龍剣から激しい斬撃や炎・水等の刃を繰り出して戦い、キューティーハニーもシルバーフルーレで弾き返しつつ反撃をしながら応戦していく。

 

 そして二人は仕合を終えると、互いに掻いた大量の汗を用意されていたタオルで拭い始めた。

「ふぅ~~……前から思っていたけど、修司君って戦う度に強く成って行っているわね」

 タオルで顔の汗を拭いながらハニーが話し掛けると、修司も聖龍使いの鎧兜を脱ぎタオルで汗を拭いながら無表情な顔で話し返した。

「それは当然だろ。戦士として、戦いの中で成長して行かなければいけないのは常識じゃねえか。戦いを乗り越え経験していくからこそ、俺達は今までも勝って来られたんだろ」

「………………」

 平然と無表情で言う修司を見て、ハニーは思わず悲愴に満ちた面持ちに表情を一変させた。

「……どうしたハニー。そんな顔しやがって」

 表情を一変させたハニーに修司が訊ねると、ハニーは悲愴な面持ちのまま修司に語り始めた。

「いえね、私…………時々、修司君が羨ましくなってね」

「?」

 するとハニーはキョトンとしている修司に一言告げた。

「修司君って、本当に戦いの時には迷いとか躊躇いが無くって……少し恐ろしいって思う事もあるけど、同時に凄く強い子なんだなって」

 このハニーの発言に修司は何も言い返さなかった。

 そんな修司にハニーは悲しそうに話し続けた。

「私ね、ようやく豹の爪(パンサークロー)を壊滅できて本望だった。けれどスグに、それも今度は世界中の人々の命運を委ねた今回の大戦が始まってしまって……も、もちろん私達が戦わなければ世界が危ないってのも凄く解るわ、だけど……」

「………………」

「だけど、豹の爪と戦うだけで精一杯だったのに……そんな私が、世界の人達の為に戦えるのかな……って」

「……」

「貴方達には何度も助けられた……だけど、人ではない私に人を護れるのか……」

 人間で無く人工生命体であった自分が人を護れるのか、人を護る資格が有るのか、不安の胸中に駆られる心情を修司に伝えるハニー。

 修司はそんなハニーに無表情で話し掛けた。

「……できる筈だぜ」「え……」

「お前にはできる筈だ。今までも、お前は愛の戦士の力で多くの人達を救って来た。大切な親友、学校の仲間達や教師、それに聖龍隊のみんなや妹の聖羅だって助けられたじゃねえか」

「…………」

「今度はただ、アニメタウンの人間や聖チャペルの人間だけじゃない、世界中の人間の命運を背負って戦うだけだ。俺達が護るべき存在が増えただけで、俺達がやるべき事は対して変わっちゃいないだろ」

 修司の一変する事のない態度と心情に、ハニーは半ば呆れながらも修司に話し返した。

「増えただけって…………ふぅ、良くもまぁ、そんなに割り切れるわよね、毎回毎回。でも、其処が修司君の強さなのかもしれないけれど」

 ハニーは最後に笑顔で修司に言う、すると修司は素気ない態度で言い返した。

「だから何を言うんだ。護る命や存在が増減しようと、俺たちの役目が変わる事はないだろうが。常識だろ」

「ふふ、はいはい。戦士としての常識だったわよね」

 修司の台詞にハニーは微笑みながら言葉を返した。

 更にその時、修司はハニーに続け様に言った。

「それにな、ハニー。お前は確かに人間では無く人工生命体ではあった。しかし充分に人であると俺は思うぞ」

「っ……」修司の言葉に軽く驚いてしまうハニー。

 そして修司はハニーに次の様に話し聞かせた。

「お前は確かに生まれは人では無かった、それは悲しくも辛い出生だったと思う」

「…………」

 修司の何処か悲しみが感じられる漆黒の瞳から放たれる言い知れない威圧感に押されながら、ハニーは修司の話に耳を傾ける。

「だけどなハニー。それでもお前は、今は亡きお前の育ての親である如月猛(きさらぎたけし)から偽り無い愛情を注がれて育てられた。故にお前は学園でも普通の人間以上に周りから慕われていた。これ以上にない裕福な人生を歩めて来られたじゃねえか」

「……」

「それに最初は仲違いしていたとはいえ、無事に聖羅を……ミスティーハニーを助けられたじゃねえか。それもこれも、全てはお前が聖羅を、妹を心から思っていたからこそだ」

「そ、そんな……! 聖羅の事は、もともとミラーガールの力で助けられただけで、私は何も……」

 聖羅ことミスティーハニーを救えたのは、元を辿れば魔鏡聖女ミラーガールの力によるもので、自分は何もしていないと否定するキューティーハニー。

 しかし修司は言った。

「何を言う、お前だって解っているだろ。ミラーガールの能力は人の想いを増幅させるのが、そもそもの能力(ちから)の根源だ。お前のミスティーハニーを救いたいと願う純粋な想いが心から在ったからこそ、ミラーガールの能力が発動できてミスティーハニーを救えたんじゃねえか」

「…………」

 思い更け無言と成ってしまうキューティーハニーに、修司は告げた。

「キューティーハニー、お前は今のままで良い、今のままで充分お前は人だ。俺がそう決めたんだからそうだ、良いな」

「……」

 力強い眼力で言い聞かせて来る修司の言葉に、ハニーは何処か導かれる様な不思議な感覚を感じた。

「お前は人、いや人間(ひと)以上に他人を想いそして愛する事のできる女だ。そんなお前が共に戦ってくれるなら、これ以上心強い事は無い」

「……修司君」

「ハニー、これからもお前は自分が感じられる愛や優しさに対して純粋に信じそして付き従え。その想いこそ、お前がお前である何よりの証だ」

 力強くも何処か温もりが感じられる修司の言動に、人工生命体のキューティーハニーは己の心を奮い上がらせた。

 しかしこの時、キューティーハニーは心の中である不安を感じていた。

(修司君、あなたは本当に他人に対しては前向きな発言を掛けてくれるのね、こんな人間(ひと)で無かった私に対しても、それは変わらずに……)

 キューティーハニーの感じていた不安、それは

(だけど修司君、貴方はそうやって聖龍隊の仲間に対しては前向きで力強く生きて居られるような言葉を掛けてくれるのに……自分は戦いの最中に死んでも良い様な発言や行動が目立って、私は凄く不安なのよ)

 自分は生きて居なくても良い、仲間達が無事なら自分は死んでも良いと思っている修司の言動に一抹の不安を感じるキューティーハニー。

 

 人である証、それは他人を想いやり、そして愛という感情を共有していく事なのかもしれない。

 小田原修司は、そんな美しく素晴らしい感情(おもい)を感じられる愛の戦士を存分に期待し、そして人間以上に素晴らしい人材であると認識していた。

 だが、それを告げた当の本人には、そんな素晴らしい感情を持ち合わせていないと、このとき誰が思ったであろうか。

 

 

 

[変わらない想い]

 

 同じ頃、ミラーガールも自分は自分で自身の強化に打ち込んでいた。

 聖龍別働隊、そのメンバーである葉月聖羅(はづきせいら)ことミスティーハニーに願い出て彼女と仕合を行っていた。

「ぐっ……!」

「み、ミラーガール、もう良いんじゃないの? 少し無理しすぎじゃ」

「だ、大丈夫です……! 続けて下さい」

 取っ組合いの最中、戦闘力の低いミラーガールは必死にミスティーの攻撃をミラーシールド(鏡の盾)で受け止めて行った。しかしそれでも、自身より格段に攻撃力の高いミスティーハニーの攻撃を受けるのは至難の技であった。心配したミスティーが気に掛けるものの、ミラーガールは続けて欲しいと強がりを見せた。

 そんな二人の仕合の様子を、ミスティーハニーと同じ聖龍別働隊である早見青児(はやみせいじ)、そして聖龍隊メインメンバーのメタルバード/ジュピターキッド/ウォーターフェアリーの四人が眺めていた。

「ミラーガール、なんか張り切っていると言うよりも、偉く無理している様に見えるんだが……」

「ああ、自分だけ聖龍隊メンバーフル参加の合同訓練に参加できなかったのを僻んでいるのかね?」

「い、いや……ミラーガールはそんな事で僻む様な女の子じゃねえだろ」

 ミラーガールとミスティーハニーの仕合を眺めながら会話する青児とメタルバード。

 そんな二人の会話に傍らに居たキッドとフェアリーが入って来た。

「うん、多分……ミラーガールはミラーガールで、自分も激しい戦闘にも立ち向かえるように成りたいって思って、それでミスティーハニーにお願いしたのかも」

「うん、多分そうよ。ミラーガールだって誰かの力に……ううん、きっと修司さんの力に成りたいって心から思っているからこそ、少し無理をしちゃっているのよ」

「ふぅ~~ん……あいつも変わったな。昔は戦闘慣れしてないから、ちょっとばかしみんなの足を引っ張っちまった事も多々有ったって言うのに」

 キッドとフェアリーの会話を聞いて昔のミラーガールを思い出すメタルバード。

 かつてのミラーガールはスーパーヒロインに変身した経験が全く無く、良く皆の足を引っ張ってしまった事も一度や二度では無かった。

 それでも傷ついた人を助けてあげたい、困っている人を見捨てては居られないなどの、本来の加賀美あつこの優しい性格も相俟って何とか無事に事件や戦闘を乗り切れているのが実情。

 

 そうこうして二人の仕合が終わりを迎えた。

 ミスティーハニーと仕合をしたミラーガールは一人息を荒くしながら膝に手を付いてしまっていた。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 そんな息の切れ掛かっているミラーガールに、彼女と仕合をしたミスティが優しく声を掛けた。

「大丈夫? ミラーガール」

「はぁ……み、ミスティーさん。はい、なんとか……」

 顔から尋常でないほどの汗を発汗しながら返事するミラーガール。

 ミラーガールはそのままミスティに付き添われながら、施設内の休憩所まで足を運んだ。

「お疲れ様……と言いたいけど、少し無理しすぎじゃないのかい? ミラーガール」

 休憩所で腰を下ろして休んでいるミラーガールに、半ば呆れた表情で話し掛けるキッド。

 そんなキッドにミラーガールは「だ、大丈夫よ、これ位、ハハ……」と口元に微かな笑みを浮かべながら言葉を返した。

 そんなミラーガールを見て、今度はメタルバードがミラーガールに話し掛けた。

「お前なぁ、自分が戦闘に向いて無い能力者だって事、理解しているだろ。だったら無茶するな」

「だ、だって……」

 メタルバードに指摘され弱々しい表情を浮かべるミラーガール。

 と、その時メタルバードにミスティーハニーが話を掛ける。

「メタルバードそんなに言わないで上げて。ミラーガールは少しでもみんなの力に成りたいって、そう思ったからこそ私に仕合を申しこんだのよ」

「解っているけどよ、だけど無理しすぎて異次元からの敵が来襲して来た時、戦えなかったら結局無駄になっちまうだろうが」

 ミスティーハニーとメタルバードが賑やかに言い合っている時、そんな二人を見たミラーガールが微笑みながら二人に声を掛けた。

「ふ、それにしても聖羅さん、良く喋る様に成りましたよね」

「え、えッ?」突然の発言に動揺するミスティーハニー。

 するとミラーガールに続いて青児も笑顔で話し出した。

「確かに……最初の頃の聖羅って陰気臭かったからな」

 青児に続いてメタルバードも言い始めた。

「そう言えばそうだな。まだミスティーが豹の爪(パンサークロー)に居た頃は、今みたいに笑う事なんて無かったからな」

「そ、そんなっ。私はその、あのね……」

 青児とメタルバードに言われ、思わず赤面で少々困惑してしまうミスティー。

 更に其処へ、当時のミスティーを見た事が無いキッドとフェアリーも話に加わった。

「そう言えば父さんや兄さんから聞いた事が有るな。その頃のミスティーハニーって余り笑う事も無く、無愛想で冷静沈着なキャラだったって」

「へえ、今では笑顔の素敵な綺麗な人なのに、少し前までは笑っていなかったなんて信じられない」

「………………」

 皆の会話に、遂にミスティーハニーは耳まで真赤に成るほど照れてしまった。

 そんな皆の会話で照れているミスティーに、最初に微笑みながら話し掛けて来たミラーガールが再び話し掛ける。

「ふふ、でも聖羅さんが私達と一緒に過してくれる様に成って良かった」

「え?」

 ミラーガールの何気ない発言に思わず反応するミスティーハニー。

 そしてミスティーと同じくミラーガールの発言に対して意識を彼女に向ける周囲の皆。

 ミラーガールはそんな皆の前でミスティーに平然と何気なく話し始めた。

「だってそうじゃないですか。最初は豹の爪(パンサークロー)に利用されて悪事に加担させられていた上に、お姉さんであるハニーさんと戦わせられていた聖羅さんが、今ではこうして私達と何気なく笑い合って居られるなんて凄く喜ばしい事じゃないですか」

「ミラーガール……」

 ミラーガールの話に只々驚嘆してしまうミスティーハニーに周りの皆。

 皆がミラーガールに注目する中、ミラーガールは照れているミスティーハニーに話し続けた。

「聖羅さんが、ミスティーハニーが今こうして私達と一緒に仲良く過ごしてくれて、私は凄く嬉しいですよ」

「ミラーガール……! あなた……」

 ミラーガールの嘘偽りのない一言にミスティーハニーは心の底で感極まった。

 

 かつて自分は豹の爪の一員として姉のキューティーハニーや聖龍隊の皆を傷付けていた。

 しかし今、そんな姉や聖龍隊とは争う事も無く、平和にそして仲睦まじく過して居られる。

 ミスティーハニーはそんな自分の実情に対して、今の平穏な幸せを何気なく平然と語るミラーガールの言動に心から感動した。

 

 だが、ミラーガールの言動に感動したのはミスティーハニーだけでは無かった。

「……そうだよな。もうミスティーハニーと俺等が争い合う事は無くなったんだもんな」

 ミラーガールの話に感化したメタルバードが自然と口を開いた。

「そうだな。もうキューティーハニーとミスティーハニー、二人の姉妹が争ってしまう悲劇は遠い昔の事だよな」

 メタルバードに続き早見青児も過去(かつて)の悲しい争いの日々を思い出しながらミラーガールの意見に共感する。

「うん、昔は敵で今は友。そんな辛かった思い出も、今では絆が深まった良い思い出だね」

「そうねキッド。その頃のミスティーハニーの事は私あんまり良く知らないけど、二人っきりの姉妹が仲良く過ごせるようになれて本当に良かったわよね」

 そしてキッドとフェアリーの二人も笑顔で現在のミスティーハニーの現状に心から喜びを話し表した。

 そんな皆の話を聞いて、ミスティーハニーは若干照れながらも話を振った。

「そ、そんな。私が今こうしてみんなと一緒に居られるのは……ううん、何よりも無事に過ごせていられるのは全てミラーガールの御蔭じゃないの」

「え……」ミスティーハニーの発言に惑うミラーガール。

 するとメタルバードがミスティーに続いて話し出した。

「そういやそうだったな。最初ミスティーハニーが自身の憎悪の化身でもあるパンサーハニーと同士討ちして死んじまった後、ミラーガールに変身したばかりのアッコがセーラー戦士達やナースエンジェル等、それにさくら達を引き連れて駆け付けて来て、それからミラーガールのコンパクトで周りの皆の想いの力を増幅させる事で、かなり魔力を消耗しちまうタイム「時」のカードを使用できたからこそ、ミスティーハニーがパンサーハニーと相討ちになる前まで時間移動(タイムワープ)できたから、ミスティーハニーも今こうして存命している訳だしな」

 メタルバードの話に続いて青児も語り出した。

「その通りだ。ミラーガールが来てくれなかったらミスティーハニーは……いいや、ミスティーハニーやキューティーハニーに俺達だけじゃない。同時刻にその頃の強敵達と相見えていたセーラー戦士達にナースエンジェル達も生きてはいなかった。全てはミラーガールの御蔭って訳だ」

「そ、そんな、青児さんまで……」

 青児の話に謙遜するミラーガール。

 しかしそんなミラーガールにミスティーハニーが穏やかな笑顔で話し掛ける。

「……確かに。全てはミラーガールが駆け付けて来てくれたからこそ、私はもちろん、セーラー戦士やナースエンジェルも助けられたのよね」

「せ、聖羅さん……!」

「私こそ感謝しないと。ミラーガール、本当にありがとう。あなたの優しい心と慈愛の精神が有ったからこそ、私も聖龍隊のみんなも今なお元気に笑って過ごせるのよ」

「…………」ミスティーハニーの話に無言と成るミラーガール。

 するとその時、唐突にウォーターフェアリーもミラーガールに話し出した。

「ミスティーハニーだけじゃないですわ。私だってアッコさんが居なかったら此処には居ませんでした」

「あ、アプリちゃん……」フェアリーの突然の話に驚くミラーガール。

 フェアリーはそのままミラーガールに優しい眼差しを向けながら話し続ける。

「アッコさんが私の世界に偶然とは言え来てくれなかったら、私はずっと世界を巡る水脈として再びこの姿に戻れる事は有りませんでした。今、私がこうして地に立ってみんなと過せていられるのも、全てはアッコさんのお陰です。アッコさん、本当にありがとうございます!」

「アプリちゃん……」フェアリーの言葉に感銘を受けるミラーガール。

 すると今度はキッドが語り出した。

「そうだよアッコさん。確かにアッコさんは聖龍隊でも余り戦力に成らない弱いヒロインだけど、それでもみんなから感謝されている、認められている立派なスーパーヒロインだよ」

「ジュニア君……」

「アッコさん、アッコさんはそのままでも良いんじゃないかな。無理に強く成る必要なんて無い、無理に自分を変える事なんて無いよ。聖龍隊のみんなはそのままの加賀美あつこの事を気に入っているんだからさ」

「…………」キッドの話に衝撃を受けるミラーガール。

 そして最後にメタルバードがミラーガールに話した。

「そうだぜミラーガール。別にお前が無理に強くなって変わる事は無いんだ。お前はお前で自分にしか出来ない事を精一杯努めればそれで良いんだ。オレはもちろん……いいや、あの修司だってそれで良いって言う筈だぞ」

「メタルバード……うん、そうね。別に無理してまで変わる事は無いわよね」

 メタルバードの話に納得するミラーガールは、続けて語った。

「私は今までも沢山の物や人に変身して来た。でも決して強くは成れなかった。いいえ、敢えて強くは成りたく無かったのかもしれない」

 そんな話を口にするミラーガールに周囲の皆が耳を傾ける中、ミラーガールは語り続けた。

「強くなったって、それで本当に困った人を救えるとは限らないもの。本当に人を救う、人を助けるのに必要なのはいつだって力じゃない。助けてあげたい、力に成ってあげたいって想える人の心そのものが大事なのよ。何より聖龍隊のみんながそうだものね」

 ミラーガールの偽り無い優しい真情に感銘を受けるメタルバードやミスティーハニー達は、ミラーガールの思考に同意するかのように小さく首を頷けた。

 

 

 

 

[鏡の国からの伝達と二人の少女の優しき想い]

 

 修司が聖龍隊の施設一室で多種多様な書類に目を通している時、すぐ手元に置かれていた電話機が部屋に鳴り響いた。

 すぐに修司は受話器を手に取り電話を取った。

「もしもし、こちら小田原修司だ」

 修司がそう言うと受話器から聞き覚えのある声が修司の名を言いながら通話して来た。

「おい修司、俺だ俺」

 修司はスグに返事した。

「あぁ、お前かキーオ。どうした、何か用か?」

 電話の相手は修司とアッコのクラスメイトである姿桐男(すがたきりお)、しかしその実体はアッコに魔法のコンパクトを託した鏡の国の女王の息子つまり鏡の国の王子であるキーオであった。

 キーオは電話越しで修司と互いに緊迫した様子が感じられる口調で話し始めた。

「修司、遂に始めるんだな。アッコを始めとした二次元界のヒロインや登場人物達を巻き込んだ、この大戦に」

「ああそうだ。俺が此方の次元に来た事で歪んでしまった次元の軸が巻き起こした異常現象の数々。本当なら俺一人で戦いのだが、なにぶん相手の戦力の方が勝っているからな。何より、この大戦を経験させ、そして乗り越えさせる事で聖龍隊の隊士同士が結束を固めてくれれば、例え俺が居なくなっても聖龍隊は今度も安泰だろうしな」

「………………」

「いや、それ以上に聖龍隊の面々が国際的にも認められれば少しは世間体も良くなる。今の聖龍隊のメンバーだけでなく、今後聖龍隊に加わる多くの異能力者達も擁護して行く事が出来る。これは聖龍隊の今を護るだけじゃない、聖龍隊の未来を勝ち取る為の戦いでもある訳だ」

「その戦いの根本の原因を生み出しちまったのが、他次元から来ちまったお前だとは聖龍隊の連中も知る由も無いだろうがな」

「…………」

「……いいや、今の話は忘れてくれ。お前が今考える事は聖龍隊の事だけで良い。何よりアッコの事を重点的に、な」

「……ああ、解ってるよキーオ。他の聖龍隊隊士はもちろんアッコの事も護り通してみせるさ。アッコに何か有れば二次元世界そのものに影響が出るのは、今や理解しているからな」

「解っているなら良いんだ。……修司、お前は最初自分の勝手な解釈だけでこの二次元界にやって来た。それが今や、多くのキャラクター達と面識を持ってしまったが故に二次元界に多大なる影響を与えちまった。何よりアッコの身に何か起きれば、それこそ二次元界そのものが消滅しても可笑しくないんだからな」

「解ってるって。お前はそんな俺に周知の事を伝える為だけに電話なんか掛けて来たのか?」

「いや、他にもお前に訊きたい事が有ってな」

「なんだ?」

「いやな、お前は異世界セフィーロでしか戦った事のないレイアースの三人組に、コムネットという電脳世界でしか戦闘経験が無いコレクターズの三人、そして兵器に改造されちまったちせって女までも聖龍隊に加えたけど、どんな魂胆で聖龍隊に加盟させたんだよ」

「ああ、それはな……魔法騎士の場合は正真正銘の戦力に成ると踏んで聖龍隊への参加を呼び掛けたんだよ。何より彼女達の巨大ロボットも、これからの聖龍隊加盟メンバーに必要と成って来る巨大ロボメンバーの発端としても起用できるしな」

「きょ、巨大ロボット?」

「そうだ。この戦いが終わった後なんだが、俺はウッズと共に協力して聖龍隊の戦力や組織を更に拡大する為にも巨大ロボットだけの独立した聖龍隊組織を築こうとも思っているんだ」

「きょ、巨大ロボットって……例えば機動戦士ガンダムとか勇者ロボットの面々とかの事か?」

「その通りだ。その巨大ロボットの組織を結成する為の発端としても魔法騎士の三人を誘ったんだよ。それにあの三人とカードキャプターのさくら達とは気が合うだろうと思ってよ。新メンバーと現メンバーが少しでも気を許せる間柄に成っていれば、周りの連中も釣られて親睦を深めていけると思ってな」

「まあ、その二組は同じ作者だしな。気が合っても可笑しくないかも……それで、後の四人に関しては?」

「うむ、コレクターズの三人だが……これは彼女達のコムネットでの戦歴と経験を考慮して聖龍隊に加盟させたんだよ。それに彼女達のように電脳世界で活躍する戦士達は恐らく今後さらに増えて行く事だろうし、先の時代に見合った戦士もスカウトしていかなきゃな」

「成るほど……それじゃ、あのちせって女はどうなんだよ」

「彼女の場合は自衛隊を始めとする国家権力から保守する為に聖龍隊に加盟させたんだ。彼女を兵器にし、かつ手中に収め様としているのが力の有る権力なら、こっちも同じく権力で対抗して行かなきゃ勝ち目が無い」

「権力(ちから)には権力(ちから)か? そりゃまた何とも……」

「そう呆れるな。ちせやシュウジの身柄を今後とも護って行く為の正攻法の策なんだ。相手が自衛隊などの国家権力である以上、此方もそれなりの権力や権限を所持している連中と仲を取り持っていかなきゃいけないからな」

「あ、それでお前は聖龍隊の支援者に天王はるかや海王みちるの財閥グループに雨宮コーポレーション、それにあの田能久健を新たな筆頭に据えた芹沢ジャパンを加えているのか。彼等の経済影響力を見越して、経済的視点から日本政府に圧力を掛けてちせやシュウジ、更には聖龍隊と云う組織そのものを護り切る魂胆か」

「そういう事だ。聖龍隊はそもそも蔑視される能力者の保護も活動目的として結成させたからな。しかし現実は簡単なものじゃない。能力者だけでなく組織そのものを保護して行く為には経済的や権威的に優位な立場に立つか、又はそう云った立場の人間を後ろ盾にしていかなきゃ世の中は渡って行けねえしな」

「……さすが三次元と云う現実から来ただけの事は有るな。世の理ってモノを理解していやがるとは」

「俺はただ正論を言っているだけだ。ところでキーオもう良いか? 俺はまだまだやらなきゃいけない事が山のように有るんだ。お前が懸念している実情は俺自身理解しているから安心しろ……とは言えないが、此処は俺に任せて置いてくれねえか。俺だって手塚先生やウォルト・ディズニー氏が遺した二次元世界を、護りたいだけで壊したくは無いんだよ。……俺が壊すのは、もう家庭だけで沢山だ」

「…………ああ、解った。済まなかったな、長々と話しちまって」

「いや、別に良いさ。俺の方こそ済まないな、お前に心配させちまって」

「うん……それじゃ、聖龍隊の活動頑張ってくれ」

「ああ、ありがとうキーオ」そして修司は受話器を置いた。

 それから修司はしばし考えに更けた。

 自分が居なくなった後も、聖龍隊は二次元界の多種多様な存在を擁護しつつ多くの存在と繋がりを得られる素晴らしい組織で在り続ける為にも経済的かつ権威的な立場の人々を後ろ盾にする必要が有る。

 それこそが小田原修司が夢見て已まない理想の聖龍隊なのだから。

 

 

 その頃、加賀美あつこことミラーガールはカードキャプターの木之本桜と対話をしていた。

「さくらちゃん、あなたは怖くない?」

「え、怖いって……」

 話の最中、さくらに訊ね掛けるミラーガール。

 ミラーガールは不安そうな表情でさくらを見詰めながら話を続ける。

「私……修司はもちろん自分の身も当然の事ながら、何か遭ったら怖いって思うんだけど、けど……」

「…………」

「……けど、やっぱり自分よりも、さくらちゃんやりりかちゃん達の様な小さな女の子が戦うなんて、私は凄く心配なのよ」

「アッコさん……」

 悲愴な面持ちで語るミラーガールに対し、さくらは悲痛な心境に駆られる。

 更にミラーガールは心痛な境地に駆られるさくらに語り続けた。

「私ね、欲深い考えかもしれないけど、さくらちゃんはもちろん他の聖龍隊のみんなが戦わずに済めば良いなって思ってるんだ」

「…………」

「確かに……修司の言う通り、私達が戦わなければいけない状況だってのは解ってるわよ。だけど私や修司より幼いさくらちゃんやりりかちゃん、それに特殊能力が全く無いイサミちゃん達にまで戦わせるなんて非常識だわ」

「アッコさん……」

「いっくらさくらちゃんのカードやりりかちゃんのナースエンジェルの能力が優れているからって戦わせる必要なんて無いのよ! ホントにもう……」

 自分よりも年下のさくらやりりか、更には特殊能力の無いイサミ達までも戦場に駆り出そうとする修司の考えに立腹するミラーガール。そんな彼女の言動に、さくらは呆気に取られながらも耳を傾け続けていた。

 

 そして……――「……ぷっ」突然さくらが唐突に小さく吹いた。

「!?」さくらの小さな微笑に驚くミラーガール。

 そしてさくらは笑いで目から零れ出る微かな涙を指で拭いながらミラーガールに言った。

「ご、ごめんなさい、遂……だってそう言うアッコさんだって、まだ子供じゃないですかぁ。私やりりかちゃんとだって歳は一つしか違わないし」

「そ、そりゃ、まぁ……そうだけど……」

 さくらに指摘されミラーガールは思わず視線を逸らす。

 そんなミラーガールに対して、さくらは微笑みながら話し出した。

「ふふ、それにしても前から思っていたんだけど、アッコさんって……」

「??」

「アッコさんって、まるでお母さんみたいな事、口にしましすよね」

「え、え? そ、そう?」

 ミラーガールが訊き返すと、さくらは満面の笑みで答えた。

「うん! 何だか話しているだけで心が穏やかに成って来て……お母さんって、こんな感じなのかなって私は思うんです」

「さ、さくらちゃん……」

 さくらの発言にミラーガールは言葉を呑みこんだ。

 木之本桜、彼女の母親がさくらが幼い頃すでに他界していたのをミラーガールは知っていたからである。

 そんな木之本桜は言葉を呑みこむミラーガールに話し続ける。

「私、小さい頃に母を亡くしているから、母親に対する思い出はもちろん愛情に関する記憶も曖昧なんです。もしママが今でも生きていたら、アッコさんのように私の事を心配してくれるのかな……」

「………………」

 最後に悲愴な面持ちで呟くさくらの発言を目の当りにして、ミラーガールは心を痛めた。

 自分は母はもちろん父も健在で、何より死んでしまった姉の分まで両親に愛され可愛がられて来た彼女にとって、さくらの様な親を亡くしてしまった子供の心境は自身の心に深く突き刺さるのだった。

 そんなさくらの事で複雑な心境に駆られるミラーガールに、さくらは再び微笑みを浮かべながらミラーガールに言った。

「なんかアッコさんって、本当の意味でお母さんって云うか、不思議と落ち付いて話し合える……そんな親の様な温もりを私は感じちゃうんです」

「お、親って……なんか照れちゃうな……」

 さくらに言われたミラーガールは頬を赤くさせて少しばかり照れてしまう。

 そしてミラーガールは再び表情を元に戻すと、さくらに面と向き合った。

「さくらちゃん」「はい、アッコさん」

 ミラーガールはさくらと向き合うと彼女に自分の思いを伝えた。

「さくらちゃんお願いね。私も同じだけど、あなたにだって自分を大事に思ってくれる大切な人達が居るんだから無理はしないでね。私自身、さくらちゃんはもちろん折角お友達になれた聖龍隊のみんなを失いたくないの」

「アッコさん……」ミラーガールの言葉を聞いて険しい表情に一変するさくら。

 そしてミラーガールは最後に真剣な眼差し、そして穏やかな笑みで木之本桜に告げた。

「さくらちゃん、私を始め聖龍隊のみんなで絶対生きて戦いを乗り切りましょう」

「は、はい!」

 ミラーガールの何時に無い真剣な言葉に、さくらは強く返事を言った。

 

 

 

[白衣天女の憂悶]

 

 此処は聖龍隊基地施設の総長の自室。

 修司は単身、部屋に籠り多くの書類に目を通していた。

(……ふぅ、いつにも増して書類の量がハンパないねぇ……)

 机に置かれている書類の山に気苦労を感じながら心の中で愚痴を呟く修司。

(あ~~あ、いつもデスクワークはウッズに任せっきりだからなぁ。目はもちろん頭もいてぇ……)

 アニメタウンの市長や聖龍隊の総長としてのデスクワーク等は、その殆どを執事で秘書でもあるウッズに任せてばかりいた修司は、正直その手慣れていない書類の整理に苦戦していた。

 

 と、その時。

 両開き式の電動ドアが開き、部屋に誰か入って来た。

「ん、誰だ?」

 修司がドアの方に顔を向けて見ると、其処には白い看護服を模したコスチュームに身を纏った少女ナースエンジェルが立っていた。

「ああ、なんだナースエンジェルか。どうした、俺に何か用か?」

 修司が訊ねるとナースエンジェルは「あの……少し、お話したい事が……」と悲愴な面持ちを修司に向けて言った。

「……そうか、解った聴こう」

 修司は悲愴に満ち思い詰めている表情を浮かべるナースエンジェルの只ならぬ様子に気づき、彼女の話に耳を傾けた。

 

 そしてナースエンジェルは修司に話し始めた。

「しゅ、修司さん、私……」

「…………」修司は無言の無表情でナースエンジェルの話に耳を研ぎ澄ませる。

「修司さん、私……このままで良いのか、不安で……」

「……何がだ?」

 修司が訊き返すとナースエンジェルは答えた。

「わ、私……自分が今のままで良いのかなって、思って……」

「…………」

 修司が無言で話を聴く中、ナースエンジェルは悲痛な声立ちで修司に話し続けた。

「私だけ……みんなが必死に戦いの訓練を受けているのに看護の任をしていても良いのかと思って……」

「……」

「確かに戦う為では無く、戦いで傷付いた人々の傷を治し、そして労わってあげるのが白衣の天女である私の使命です。だけど、やはり戦わなければ護れない人命も有るのが現実です。それを私は聖龍隊に入って知りました」

「……………………」

「誰かを思いやる事も大事です、しかし思いやると同時に行動もしなければ何も護れないのが現実です。けれど私には行動する事が、戦う為の力が余りにも無い……修司さんや他の皆さんの様に、弱い人達を護れる程強くは無いです」

「…………」

「私は聖龍隊のみんなが傷付いたら、スグに治療してあげる事が可能です。けど本当は、みんなが傷付かない様に私が代わりに戦ってあげたいのが本音なんです。……そりゃ、周りのみんなからすれば私は治療していれば良いだけかもしれませんが、それ以上に私はみんなを護りたいんです! 護る為にもみんなと一緒に戦いたいんです……!」

 悲痛な心境が感じ取れるほど切羽詰まった口調で修司に語り続けるナースエンジェル、修司はそんな彼女の話に黙って耳を傾け聴き入った。

 

 そして一通りナースエンジェルの話を聞いた修司は閉ざしていた口を開いた。

「……ナースエンジェル」「は、はい……!」

 無表情の鋭い眼光を向けられながら名を呼ばれたナースエンジェルは緊張しつつも背筋をピンと伸ばして返事をする。

 そして修司はそのままナースエンジェルに話し始めた。

「……お前は、ただ怪我をした同士を治療するだけでなく、自分も皆と共に戦いたいと……そう思っているのか」

「は……はい」返事をするナースエンジェル、すると修司は重い口調で彼女に告げた。

「お前は……戦う事を、どう思う」

「え……」

「戦いをどう思い、そしてどう感じるんだ」

「…………」訊ねられたナースエンジェルは言葉を失う。

 修司はそんなナースエンジェルに、陰気漂う険しい表情を向けて告げ続ける。

「戦う事がどういう事か解っているのか? 壊し殺し……そんな行いを延々と続ける。それが戦いと云うものだ」

「…………」

 ナースエンジェルは口を噤んだまま下を向き、修司と顔を合わす事ができなくなった。

 だが修司は俯くナースエンジェルに容赦なく話し続ける。

「ナースエンジェル……お前は戦う事では無く怪我を治療する事だけ考えていれば良い」

「…………」

「……確かに、お前が悟っている通り、誰かを護るには行動つまりは戦わなければいけない時が有る。しかしだ」

「……」

「俺は今まで多くの敵を斬り、それと同時に多くの命を護れて来れた。しかし結局は【自分の護りたい命を護る為に、別の命を奪う】行為に過ぎない。……戦いとはそんなもんだ」

 哀愁漂う修司の発言をナースエンジェルは黙然としつつも耳に入れていた。

「ナースエンジェル、お前は今まで多くの命を護って来られた。それは戦い、つまりは破壊の才しか持ち合わせていない俺には到底できない素晴らしい能力でありそして使命だ。そんなお前までも戦いたいと云うとは……正直嘆かわしい」

「……!」修司の一言に激しく心を痛めるナースエンジェル。

 そんな心を痛めるナースエンジェルに修司は厳めしい面構えで述べた。

「ナースエンジェル、お前にはお前の、俺には俺の……それぞれの役割が有る筈だ。個々の役割を各々がしっかりと果たす事で人は大きな成果を挙げられるものなのだ。それはチッポケな仕事(にんむ)はもちろん、大一番と呼べる巨大な職務であろうと同じ事だ」

「…………」

「確かに聖龍隊は戦いで己の存在を示すしかできない組織だ。しかし、だからと言ってお前の様な心優しい白衣の天女までも辛く虚しい戦いの渦中に無理やり身を投じる事は無いんだよ」

 ナースエンジェルは返す言葉も無く、ただ修司の言葉を聞き入れた。

 そして最後に、修司はナースエンジェルに何処か寂しさが感じられる言葉遣いで言った。

「戦いと云う【破壊と殺戮】を体感するのは、俺で充分だ」

 その言葉にナースエンジェルは言い表せない修司の心意を感じた。

 

 

 

 そしてナースエンジェルは修司との話を終えて一人施設を歩いていると、目の前からミラーガールが歩いて来た。

「あら、りりかちゃん」「……アッコさん……」

 声を掛けて来たミラーガールに、ナースエンジェルは哀愁感じられる面持ちで返事した。

「……ど、どうしたの、りりかちゃん。なんか顔が暗いわよ」

 暗い面差しのナースエンジェルを気にするミラーガールが訊ねると、ナースエンジェルは静かに口を開いた。

「はい……実は……」「…………」

 ナースエンジェルは先ほどの修司との会話をミラーガールに話し伝えた。

 

「……そう、修司がそんな事を……」「はい……」

 ナースエンジェルから修司が彼女に言った話の全てを聞いたミラーガールは、何処か悲しそうな思いが伝わって来る、そんな表情を浮かべていた。

「私……確かに修司さんの仰る通り、苦しんでいる人々を救ってあげるのがナースエンジェルの使命だとは解っています、けど……!」

 ナースエンジェルは悲しくも強い表情で、目を潤ませながらミラーガールに話し続けた。

「だけど私、辛抱できないんです……! 修司さんやメタルバード、それにキッドやアプリちゃんはもちろんセーラームーン達やハニーさんら姉妹、あのさくらちゃんだって危険な戦闘に参加しているのに、自分だけ戦闘に入らずみんなが戦っているのを指を銜えて見ているだけなんて……!!」

「りりかちゃん……」

 ナースエンジェルの悲痛な心境を知ったミラーガールは心を痛めた。

 そして周りの皆が戦う中、自分だけは戦闘に参加せずに辛抱していなければいけない心情のナースエンジェルに、ミラーガールは彼女の肩に手を置くと、笑顔で優しく話し掛け始めた。

「りりかちゃん、そんな深刻に考えなくても大丈夫よ」

「あ、アッコさん……」

 ナースエンジェルが俯かせていた顔を向けて見ると、ミラーガールは穏やかで優しい微笑み、そしていつにも増して綺麗な輝きを放つ鏡の様な瞳で気落ちしている自分を見てくれていた。

 そんなミラーガールは慈愛に満ちた微笑みでナースエンジェルに話し続けた。

「りりかちゃん、修司のその意見に付いてなんだけど、それは私も同じよ」

「……っ」

「何もアナタまで戦う必要なんて無いわ。りりかちゃんはナースエンジェルとして、私達が怪我してしまったらその怪我を治してくれればそれで良いのよ。……何より、傷を負った人を治し助けてあげるのがナースエンジェルとしての、そもそもの役目であり使命でしょ」

「…………」ミラーガールの言葉に驚異し言葉を失くすナースエンジェル。

 するとミラーガールは少しばかり悲しそうな表情を浮かべて話し出した。

「まぁ正直言うと、私はりりかちゃんだけでなく他の子達……そう、さくらちゃんやちびうさちゃんにほたるちゃん、それにジュニア君やアプリちゃんにも戦って欲しくは無いわ」

「……」

「もっと本音を言えば、修司にだって戦って欲しくは無い。だけど修司はもちろん、聖龍隊のみんなは今のりりかちゃんと同じ。誰かが傷付かない為に、自分が戦って護りたいと決意している人達ばかりだわ」

「…………」

 ミラーガールの言葉に悲痛な想いに駆られ床を見詰めてしまうナースエンジェル。

 そんな彼女にミラーガールは話し続けた。

「だからこそ、アナタの様に敢えて戦闘には参加せず、戦闘で負傷してしまった人をすぐさま治療してあげる人が居なきゃ、みんな困るでしょ。別にナースエンジェルが戦いに不向きなんじゃなく、逆に怪我した隊員の治療に最も相応しいからこそ、修司はアナタだけ戦闘に参加させずに近くで戦況を確認していて欲しいのよ」

 ミラーガールの優しくも心に響く言葉の数々に、ナースエンジェルは自然と心の底から活力が満ちて来た。

 更にミラーガールは彼女の言葉に聞き惚れているナースエンジェルに優しくも強い口調で言った。

「期待しているわよ。私はもちろん、他の聖龍隊のみんなだってりりかちゃんの……ナースエンジェルの力を必要と認めているんだから」

「アッコさん……!」

「それぞれの役割分担は違えど、一緒に頑張って行く事には変わりないわ。だからお互い、張り切っていきましょう」

 そして最後に、ミラーガールは満面の笑顔でナースエンジェルに言った。

「修司はもちろん、他の聖龍隊のみんなを私は戦いながらでもサポートして行くわ。だから負傷してしまった人の治療は宜しくね、ナースエンジェル!」

 この言葉にナースエンジェルは表情を一変させて、意思の強い面立ちでミラーガールに言葉を返した。

「……はい、任せて下さいミラーガール!」

 ミラーガールも優しく温かく、何よりも母性を感じさせる発言を聞いて、白衣の天女ナースエンジェルは自身の役割に対する責任を再確認したのだった。

 

 

 争いを嫌い、他者を思いやる慈愛の精神を持っている聖女ミラーガール。

 そんな彼女がニ次元界に多大なる影響を秘めている事にこの時、誰が知りえたであろうか。

 

 

 

[容赦ない少年]

 

 ナースエンジェルと話をした後日、ミラーガールこと加賀美あつこはこの日、聖龍隊の基地施設の一角にある休息場で三人の少年少女らと対談していた。

 その三人は花丘イサミ、月影トシ、雪見ソウシのしんせん組の三人だった。

 

 アッコはその三人と丸いテーブルを囲んで対話をしていた。

「……イサミちゃん達は、どう思う?」

「「「…………」」」

 何時に無く真剣な顔付きで向き合っている三人に問い掛けるアッコ。そんな彼女に三人は動揺しつつも黙然としていた。

「大丈夫なの? 三人は怖くない……? 今までの様な生易しい戦いじゃないのよ」

 真剣な顔付きで語るアッコの言葉を、イサミ達三人は無言で聞き入れていた。

 するとその時、意を決してイサミがアッコに話し返した。

「アッコさん」「……」アッコは険しい顔付きでイサミに目を合わせた。

 イサミはそんなアッコの視線から目を逸らさず、視線を合わせたままアッコに言った。

「私達……相手がどんな敵であれ、仲間たちと一緒に戦えるのであれば……」

「…………」アッコが見詰める中、イサミは強く言葉を告げた。

「頼れる仲間が……掛け替えのない聖龍隊のみんなが一緒なら平気です……!」

「イサミちゃん……」力強いイサミの言葉に愕然と成るアッコ。

 更にイサミに続いてトシもアッコに言った。

「イサミの言う通りだ。みんなが一緒なら立ち向かえますッ」

「と、トシ君……」

 更に続いてソウシも言った。

「アッコさん、貴女の様な美少女に心配してもらえて僕はもう嬉しいですよ。だけど安心してください。僕達だって力を合わせれば他の聖龍隊の皆さん同様に、充分戦えます!」

 ソウシの言葉を聞いたアッコは、再び三人に深刻な面持ちで告げた。

「今度私たちが戦う相手は、全くの未知の存在なのよ」

 するとイサミ達三人は決意に満ちた表情でアッコに言葉を返した。

「アッコさん、私達は三人とも、もう充分に覚悟を決めています……! 逃げも隠れも……しません!」

「ああっ!」「……もう、怖くなんかないですよ……!」

「み、みんな……」

 多少の不安は感じながらも固い決意を述べるイサミ達の発言を聞いて、アッコは心中驚嘆した。

 

 そしてイサミ達はアッコことミラーガールと大戦に向けて練習仕合を催した。

 ミラーガールとイサミ達三人は肩で息をするほどまでに激しい組み合いを続けていた。

 すると其処へ、黒いズボンに白い長袖シャツをまくって己の逞しい両腕を露出させた修司がやって来た。

「お、やってるなお前達」「あ、修司」「修司さん」

 やって来た修司に気付き声を掛けるミラーガールとイサミ。

 修司は相も変わらず厳つい顔付き、そして暑がりの汗っかきによる癖でシャツの一番上のボタンを外し、少し胸元や両腕を曝け出した風貌でその場に居たミラーガール達に話し始めた。

「どうだイサミ、それにトシソウシ。調子の方は」

「は、はい! 順調です」「俺達も絶好調です!」「同じく僕もです!」

 訊かれたイサミ達は緊張し動揺しながらも修司の問いに返した。

「うむ。……それでミラーガール。お前の方はどうだ」

 ミラーガールにも訪ねる修司、ミラーガールは修司のいつも以上に厳めしい顔付きに怯みながらも答えた。

「え、えっと……え、ええ。私の方も順調よ」

「そうか」修司は一言返した。

 そして修司はイサミ達三人に再び顔を向けると、三人に言った。

「精が出るな、お前等」「は、はい……」

 無表情で言う修司の言葉に動揺しつつもイサミは返事する。

 すると突然、修司はイサミ達に告げた。

「丁度良い……イサミ、トシ、ソウシ。俺と交われ」

「え……ッ」「な……!」「……!」「し、修司……?」

 突然の修司の発言に驚愕するイサミ、トシ、ソウシ、ミラーガールの四人。交われとはすなわち仕合えの意味で有ったからだ。

「わ……解りました。それではお願いします」「うむ」

 突然修司と仕合う事になったイサミは困惑しながらも仕合を承諾し、修司もイサミの発言を聞いて渋く返事をする。

 しかしこの時、修司の行動にイサミ達新撰組はもちろん、イサミ達と先ほどまで仕合っていたミラーガールも驚倒した。

 何故なら修司は本来聖龍使いに変身してから戦うのだが、この時の小田原修司は変身する為の鬼の面を取り出す事無く、黒ズボンに両腕を曝け出した白シャツのままで拳を前に突き出し身構えたからだ。

「しゅ、修司さん……」

「へ、変身しなくて良いんですか?」「う、うん……」

 変身しないで仕合おうとしている修司に驚くイサミ達が訊ねると、修司は険しい顔付きで拳を構えたまま答えた。

「お前たち相手なら素手でも充分に戦える。それにこの恰好のままでも平気だ。だから懸かって来い」

『…………』

 修司の言動を目の当りにして言葉を失くすほど驚異する新撰組の三人。

 そして修司の台詞を聞いたミラーガールも目を丸くして驚いてしまっていた。

 

 そして修司は少しずつ少しずつ摺足でイサミ達三人に近づいて行った。

 イサミ達は最初、修司の言葉に驚き黙然としていたが、いくら自分達が先祖が遺してくれた武器しか戦う取り柄が無いとは云え、私服でしかも武器も持たずに素手で立ち向かえると豪語する修司の言葉にカチンと来たのか、表情を一変させて修司に向かって仕掛けて行った。

「はあぁッ!」

 まずはイサミが先攻で修司に向けてビームサーベル状の武器である龍の剣を振るって行く。

 しかし修司は、まるで暖簾(のれん)に風が当って戦(そよ)ぐかの様にヒラリヒラリとかわして見せる。

「おりゃあッ!」

 その時、イサミが振るう龍の剣を見事に避けて行く修司に、トシが大きめのスーパーボールほどの龍の目を光らせサッカーボールほどの大きさに形成させ、それを力一杯修司目掛けて蹴り飛ばした。

 だが修司はイサミの龍の剣をかわしつつ、飛んで来た龍の目も軽く上半身を逸らして、これまた見事にかわして見せた。

 其処にソウシが、普段は根元が四角い2本の牙である龍の牙を発動させ、2つの牙が光で繋がり弓の形状に変化させると、すかさず光の矢を修司目掛けて連射していく。

 修司は飛んでくる光の矢に気付き鋭い眼光で光の矢を視界に捉える。そして飛んで来た複数の光の矢を空手チョップで次々と叩き落としてしまう。

「ッ!」

 光の矢を空手チョップで叩き落としてみせた修司を見て、ソウシは予想だにしていなかった一手に驚愕してしまう。

 そんなソウシと同じく、自身の攻撃の一手を見事にかわし通ける修司を見て、驚きの余り表情が固まるイサミとトシ、そして言葉を失うミラーガール。

 その時であった。聖龍使いに変身していない上に武器も所持していないのにも拘らず自分達の攻撃を意図も簡単に回避し続ける修司を見て驚いてしまっているイサミ達に対して、修司はすぐさま行動に移った。

 まず最初に修司は、弓矢を放った雪見ソウシ目掛けて一直線に駆け出した。それに気付いたソウシはすぐさま弓を引いて攻撃に移ろうとしたが次の瞬間。

「ひッ!」

 修司はソウシの左横、やや斜めに体勢を低くしながら入り込み、軽くではあったがソウシの腹に一発拳を入れた。

「ぐッ……!」

 軽く、しかも利き腕では無い左手では有るものの、修司の重い拳を腹に入れられたソウシは痛みの余り膝を着いて崩れ落ちる様にしゃがみ込んでしまった。

「そ、ソウシ!」「……!」

 崩れ落ちるソウシを見て愕然と成るイサミと言葉を失うトシ。

 すると修司はソウシに続いて、今度は龍の目を蹴り飛ばしたトシに一直線に向かって来た。

「う、うわッ」

 目の前まで向かってくる厳つい表情の修司に怯んだトシは慌てて龍の目を再び修司に向けて蹴り飛ばした。

 しかしトシの蹴り飛ばした龍の目は、トシが慌てた状態で蹴り飛ばしたために、修司の方向とは全く別の、思わぬ方向に飛んで行ってしまった。

「し、しまった……うわッ!」

 龍の目を外してしまったトシが動揺してしまっていると、すかさず修司が無防備と成ってしまっているトシに近づき、トシの左膝/右脇の下/そして左肩に空手チョップを、それぞれ一発ずつ一瞬の内に喰らわせた。

「グッ」

 一瞬で三か所も左手の空手チョップを当てられたトシは苦痛で声を上げる。

 そして最後に修司は、まるでボクサーの要領で両腕を構えながらイサミに向かって突進してくる。

「……ッ!」

 イサミは修司の攻撃に備え、龍の剣を修司に向けて構え応戦の体勢を取った。

 そしてイサミが龍の剣を構えている中、修司はイサミと彼女の龍の剣に恐れる事無くイサミ目掛けて拳を振るった。

 イサミは必死で龍の剣で応戦して行くが、修司は剣をかわしながらイサミの肩や腕などの上半身目掛けて拳を飛ばして行く。

 そんな修司の拳をイサミは懸命に避けていきながら同時に修司に何とか一撃でも攻撃を当てたいと強く想い願っていた。

 しかしイサミの応戦は長くは続かなかった。

 懸命に攻めて行こうとするイサミが振るっていた龍の剣。修司はその剣を振るうイサミの手目掛けて拳を直撃させた。

「うッ」

 剣を持っていた手に拳を喰らったイサミは、痛みで思わず剣を握っていた手を緩めてしまい、龍の剣を落としてしまった。

「あ……ッ!」剣を落としてしまい動揺し出すイサミ。

 修司は険しく厳つい戦意剥き出しの顔で、素手と化してしまったイサミの顔目掛けて左の拳を突き出した。

「ッ……!!」

 もうダメだ。イサミはそう想い、思わず目を瞑ってしまう。

 しかしイサミの顔には拳どころか何の衝撃も感じられなかった。

 恐る恐るイサミがそっと目蓋を開けると、修司はイサミの顔から寸での所で拳を止めていた。

「……はっ……はぁ……」

 イサミは身体の力が一気に抜け、膝から崩れる様に地べたに座り込んでしまった。

「………………」

 四人の仕合を間近で見ていたミラーガールは、余りにも息を呑む攻防に思わず言葉を失い愕然と成っていた。

 

 そして修司は辺りを見回し、拳を入れられた腹を抱えるソウシ、膝・脇下・肩にそれぞれ一発ずつチョップを喰らわされて痛がるトシ、そして最後に顔の寸前まで拳を突き付けられて驚きの余り体の力が抜けてしまっているイサミの様子を見詰めた。

 三人を見た修司は、すかさず眼前のイサミに厳しい顔を向けて言った。

「イサミ、どうだ。これで少しは解ったか」「……え」

 突然の修司の言葉に、意味を理解できないイサミが困惑していると、そんなイサミに修司は話した。

「お前は今、俺に手を殴られたが為に唯一の武器でもある龍の剣を落としてしまった。その隙に俺は、お前の顔面目掛けて拳を入れようとする事が出来た。解るか?」

「…………」

 言葉を発せないイサミに修司は険しい顔付きで語り続けた。

「唯一の攻撃手段である剣が無い状態で敵が攻めてきたら、お前は一たまりも無い。もし俺が敵だったら、拳は刀で有り、その刀は寸での所で止まらずにお前の体を切り裂いていただろう」

「…………」

 もし今の仕合が本当の戦闘で有り敵との戦いであったのなら、龍の剣を失っていた自分は容赦なく死んでしまっていたと修司に告げられたイサミは、恐怖の余り顔から血の気が引いて行った。

 更に修司は、イサミに続いてトシに対しても険しい面立ちで言った。

「トシ、お前も同様だ。蹴ろうと投げようと、龍の目を一度敵に向けて放ったらお前の態勢はガラ空きだ。さっきの俺の様に龍の目をかわした敵が、すぐに無防備と化したお前を襲ってくる事も容易に考え付く」

「…………」

 修司に指摘されたトシは、呆然と目をパチパチさせる。

 そして最後に修司はソウシにも厳つい顔から向けられる横目で見ながら厳しい発言をする。

「そしてソウシ、お前が遠距離から弓矢で敵を攻撃している時だが……もしも敵が近距離、それもお前の間合いまで接近して来た時、どう対処する」

「…………」返す言葉が見つからないソウシに、修司は話し続けた。

「敵が近距離まで迫って来た時、お前の様に弓などの遠距離型の武器を主な戦闘手段にしている奴は限りなく不利だ。何故なら遠距離からの攻撃に慣れているが故に、敵が間近まで接近して来た時の対処に慣れてないからだ。何より弓矢を始めとする遠距離からの攻撃に適した武器は、逆に接近戦では極端に不利となる欠点が有る。それを克服するか、何とか仲間との連携でカバーしなければ、お前はスグに死んでしまうぞ」

 修司の口から出る数々の手厳しい指摘の発言に、イサミトシソウシの三人は何も言い返す事ができなかった。

 

 と、その時。修司は突然、顔を仕合を見ていたミラーガールに向けて、彼女に厳つい顔を変えずに言った。

「アッコ、お前もイサミ達同様、気を緩めるなよ」「え……っ?」

 修司の言葉に愕然するミラーガール、そんな彼女に修司は話し続けた。

「お前は敵との直接対決は極力避けていろ。お前は盾による防御はもちろん味方の援護や補助に対しては文句ないが、逆に攻撃に関しては聖龍隊でも最低ランクだ。無理に戦闘に参加せず、少しでも良いから仲間の補助に徹しろ」

「…………」呆然となるミラーガールに修司は話を続けた。

「そもそもミラーガールとしてのお前の能力は完全に盾の役割を持っている。故に俺を始めとした攻撃に適した隊士の完全なサポートに徹した方がお前には御似合いだ」

「…………」

 ミラーガールは自身への指摘だけでなく、何かを見据えている様な圧倒的威圧感を放つ修司の雰囲気に呑まれて言葉を失っていた。

 

 そして修司はイサミ達三人に告げた。

「イサミ、トシ、ソウシ。お前達は武器が無ければ只の小学生だ。俺の様に武術に長けている訳でも無ければ他の隊士の様に特別な能力を備えていないお前達が、自身を護り抜きながら戦場で生き残るには他の聖龍隊メンバーと協力して行く事が何より不可欠だ」

『…………』

「俺が言いたいのはだ。武器を失ってしまったり主流の武具が効力を発揮しなくなった無防備な状態に陥っても焦る事無く落ち着いて対処しろと云う事だ。そして危険な状況に陥った場合こそ仲間との連携が、助け合いが大事になって来る、それを忘れるな」

 修司に言われた三人は小さく首を頷かせた。

 そして最後に修司はミラーガールに横顔を向けた状態で話し告げた。

「そしてアッコ、お前は決して一人で戦おうとはするな。さっきも言ったが、お前の能力は誰かを護ったり手助けしてやる事に長けている能力だ」

「…………」

 アッコが呆然としていると修司は「良いか、決して無理はするな。それはお前だけでなく他の聖龍隊の連中も同じだ」と言い残して部屋から出て行った。

 

 修司が部屋から出て行った後も、イサミやトシソウシ、そしてミラーガール達四人は修司の言動に圧倒してしまい、しばらく動く事が出来なかった。

 

 

 

 

[苦悩の電脳戦士達]

 

 基地の一室、其処では机の前で椅子に腰を掛ける修司と三人の少女達が何やら意味深な表情で話し合っていた。

 それは異次元からの脅威との大戦に向けて新たに聖龍隊に加盟させた、電脳世界コムネットで活躍しているコレクターズ三人組の少女、春日結(かすがゆい)、如月春菜(きさらぎはるな)、そして篠崎愛(しのざきあい)達だった。

「……それで。何が言いたいんだ」

 気難しそうな険しい表情で三人に訪ねる修司。

 すると三人の内の一人、篠崎愛が最初に修司に言った。

「だ、だから私達……現実の空間での戦いには、やっぱり参加できないの……!」

 険しい顔付きで愛が言うと、彼女に続いて春菜も悲痛な面持ちで修司に言った。

「私達は今までコムネット……そう、ネットの世界でしか戦った事しか無いんです。そんな私達が聖龍隊の皆様方と一緒に戦うなんて、絶対に足手まといにも成ってしまうと思うんです」

 そして最後に結が、これまた深刻そうな面持ちで修司に言った。

「そ、そりゃ……最初は世界を護る為の計画に誘われて、凄く不安に思ったし同時に多くのヒーローヒロイン達と一緒に戦えるって少しは喜んだわよ。だけど……」

「…………」

 修司は険しい顔付きのまま無言で結の話に耳を傾ける。

「だ、だけどやっぱり、現実の戦闘を経験した事が無い私達が経験豊富な聖龍隊の人達と一緒に戦って行くなんて無謀なのよ。そ、そりゃ少しは役に立ちたいとは思ってはいたけど……」

 三人の心からの真情に対し、修司は表情や態度を変える事無く、まず結に言った。

「役に立ちたいと思っているだけ、まだマシだ。お前達はお前達で、自分が出来得る事を少しでも良いからやり遂げて行けば良い」

「だ、だけど……!」

 修司の言葉にすかさず言い返そうとする愛だが、そんな彼女の発言に間髪入れず修司は三人に言った。

「確かに、お前等は現実空間での戦闘に関しては全くの未経験者だ」

『…………』修司の発言に三人は返す言葉が無かった。

 そんな三人に修司は言い続けた。

「……しかしだ。俺はお前達のコムネットでの戦歴を、学び培ってきた経験が実に見事で秀でていたからこそ、俺はお前達を聖龍隊に加盟させたのだ」

「わ、私達の戦歴って……コムネットでの私達の活躍を修司は知っている訳!?」

 修司の発言に驚いた愛が咄嗟に訊ねると、修司は無愛想ながらも涼しい顔で平然と答えた。

「まあな。グロッサーの件に黒川良(くろかわりょう)との確執……お前達がコムネットで味わい経験してきた出来事の大半は既に知っているよ」

 自分達がコムネットで経験してきた出来事の大半を知っていると告げられ、結達は同時にかつてのコムネットでの戦いや経験を想い返していた。

 そんな三人に修司は机の書類に目を通しつつ背中を向けて三人に告げた。

「ま、俺が言いたいのは、そんなコムネットでの経験は現実の戦いにも大いに役立つだろうって事だ。そう、経験は力成り……てな」

 修司の言葉に心の中で静かに感銘を受ける結達コレクターズの三人。

「さ、俺は俺で色々とやる事が有るんでな。お前達は少しでも現実の戦いに慣れる為にも、犬養博士やウッズと協力して現実空間用のコレクトスーツを着用して戦える様にしておけ」

 修司に言われるものの、釈然としない三人は立ち尽くしてしまっていた。

 そんな三人に修司は書類に目を通しながら思わせ振りな発言をした。

「大丈夫だ。お前達の経験と結束があれば並大抵の事が無い限り、ちゃんと戦えるさ。何か有れば、それこそ聖龍隊で助け合えば良いだけだしな」

 三人は修司の発言に何も言い返す事が出来ないまま部屋を出て行った。

 

 

 三人は先ほどの修司の言葉を頭の中で何度も思い返しながら基地施設の廊下を歩いていた。

 すると目の前から大量の書類を必死に抱えながら運んでいる一人の少女が三人の視界に入った。

「あッ、だ、大丈夫?」「ほら、無理しないで」

 書類を抱え、ふら付きながら歩く少女を見て、堪らず結と愛が駆け寄り少女を手助けする。

 駆け寄った三人が少女の持っていた書類の山を少しばかり持ってあげたその時、書類で隠れていた少女の顔を見て声を上げた。

「あ、君は!」

「た、確か……み、ミラーガール……だったっけ?」

 結と愛に訊かれた少女は名乗りながら書類を持ってくれた三人に話した。

「は、はい。ミラーガールこと加賀美あつこです。ありがとうございますコレクターズの結さん愛さん」

 笑顔で礼と名を述べるアッコ、するとそんなアッコを見て春菜が訊ねる。

「ど、どうしたの? そんな大量の書類を一人で運んでいて……」

 春菜の問いにアッコは少量の汗を額で輝かせながら答えた。

「はい、これはどうも聖龍隊の活動に必要な書類みたいで、修司の所に運んでいる所だったんです」

 これを聞いた愛は顔色を変えて言った。

「ま、まさか……! 彼に言われて運んでいたの? こんな大量の書類を一人で、しかも女の子に運ばせるなんて……!」

 すると愛の発言にアッコは慌てて訳を述べた。

「ち、違います。私が自ら進んでやっているだけで、修司はもちろん誰からも強制された訳じゃないんです!」

 アッコの言い分を聞いて、結と春菜が落ち付きながら一言ずつ述べた。

「そ、そうだったの」

「ふふ、それにしたって良く働くわねアッコちゃん」

「そ、そんな……」春菜に褒められ、若干照れるアッコ。

 そんなアッコに対して彼女の書類を少しばかり肩代わりしてあげていた愛が軽く溜息を衝きながら述べた。

「ふぅ、それにしても……あなた、良く其処まで小田原修司に尽くしていられるわよね。あんな傍若無人な子なのに……」

 するとアッコは間髪入れずに愛に言葉を返した。

「あ、愛さん、そんな事言わないで下さい。修司は修司なりに街の事はもちろん、聖龍隊である私達の為に精一杯頑張っているんです」

「ふぅん……」

 アッコの発言に対し、愛は不信そうな表情を浮かべ鼻で返事をした。

 更に結も、自ら進んで書類の山を運んでいたアッコに告げた。

「それにしたって、アッコちゃん頑張り過ぎよ。何だか働いてばかりいるみたいに見えちゃう……」

 この結の発言にアッコは笑顔で言葉を返した。

「大丈夫です結さん。それに私は聖龍隊でも弱い方なんですし、少しでもみんなの役に立たなければいけませんし」

「真面目ねぇ、あなた」「ふふふ」

 アッコの発言に呆然となる愛に微笑む春菜。

 そんな中、結が再びアッコに話し掛ける。

「でも疲れない? 修司君はもちろん聖龍隊で活動して居てさ。彼、結構気難しいし」

 結の問い掛けにアッコは満面の笑顔で答え返した。

「まあ、確かに疲れますけど……でも、遣り甲斐はありますよ。私自身、修司はもちろん聖龍隊のみんなの役に少しでも立ってあげないと」

「え?」アッコが発した言葉の意味が解らず困惑する三人。

 そんなコレクターズの三人にアッコは笑顔を絶やさず平然と語り続けた。

「だって聖龍隊やアニメタウンの事を真剣に考え思ってくれている修司はもちろん、そんな修司と一緒に努力している聖龍隊の力に私は少しでも成りたいんです。……私は聖龍隊でも余り戦力に成らないほど非力ですし、私は私で自分がやれる事を精一杯全力で努めていきたいんです……!」

 アッコの言葉に衝撃を受けて言葉を失くす三人に対し、アッコは一言云った。

「誰かの役に立ちたい、大切な人の力に、私は成りたいんです」

『…………』

 笑顔で平然と語るアッコの発言に感銘を受けて言葉を失い真顔で固まる三人。

 その時、アッコは笑顔で三人に言った。

「ふふ、それじゃ早く修司の所に行かないと。修司せっかちですから早く書類を読み終えたい筈ですし」

 三人はアッコの言葉に軽く首を頷けて、そして四人で一緒に修司の所まで書類の山を運んでいった。

 

 この時、コレクターズの三人はアッコの発した言葉に対して心の中で想っていた。

(この子、私達より年下なのに此処まで……!)

 自分達より年下の小学生のアッコが発した言葉に衝撃を受ける愛。

(自分には力が無い、自分は非力だって理解しているのにも拘らず、それでも尚……聖龍隊の力に成るために自分の出来得る事を精一杯励んでいる)

 己が弱い存在であるにも拘らず、それを否定せずに受け入れ、自分が出来る最低限の行為を精一杯励むミラーガールの一面を知って驚愕する春菜。

(この子は……この子は、誰よりも周りの人や他人を思いやれる、そんな子なんだ。周りの人達の力に成ってあげたいと、心から想い願っている)

 周りに居る友や知人を始め、他人をも優しく思いやれる心を持っているアッコ。そしてそんな人々の力に成りたいと願っているアッコに、心の奥で静かに感動する結。

 そして三人は密かに心の中で、奇しくも同じ事を想い感じていた。

(この子は……正真正銘の、慈愛の精神に満ち溢れる……聖女……!!)

 他者を労わり、他者を優しくそして懸命に支えてあげたいと心から思っている……そんな慈愛に満ちた少女加賀美あつこの言動に、コレクターズの三人は途方も無い感銘を受けたのだった。

 

 そして三人は思った。

 自分達よりも歳下の女の子までもが、非力だからと言って何もしないのではなく自分にできる事を可能な限り努めている事実を知り、そして決意した。

 この子の様に、自分達もやれる事を精一杯励んでいこうと、結/春菜/愛の三人は固く決心した。

 

 

 

[能力が使える限り]

 

 とある日、ミラーガールに変身しているアッコが施設内を歩いていると何やら激しい物音が何処からか聞こえてきた。

「ん? なんだろう……」

 音の出所を耳を澄ましながら探索していると、ある一室にミラーガールは辿りついた。

「こ、此処は確か……小さいけど、訓練場だったわよね」

 其処は聖龍隊メンバーが使用している訓練場とは大分小さめではあったが、それでも壁の強度が高く能力を使用した訓練に打って付けのトレーニングルームで在った。

 ミラーガールは電動式の両開き型のドアを開けて部屋に一歩足を踏み入れた。

 と、その時であった。

「うおおッ」「え゛?」

 何と部屋に入ったミラーガールの眼前に、突然あのメタルバードが突っ込んで来たのだった。

「わ、わっ」

 ミラーガールは慌てながらも寸での所で飛んで来たメタルバードを回避した。

「ぐわッ!」

 メタルバードはそのまま、ミラーガールが入って来た電動ドアから室外の廊下の壁に物凄い衝撃音を響かせて激突した。

「な、なに……今のは……?」

 自分目掛けて飛んで来たメタルバードに驚き表情と顔色を一変させるミラーガール。

 するとその時、目を丸くして驚いているミラーガールの所に駆け寄って来る者たちがミラーガールに声を掛けた。

「だ、大丈夫かい? ミラーガール」「き、キッド……!」

 まず最初にミラーガールの身を案ずる言葉を掛けるのは、聖龍隊で修司の信頼を得ている為参謀に抜擢されているジュニア・j・プラントこと大地の申し子ジュピター・キッド。

「け、怪我有りませんでしたか、アッコさん」

「あ、アプリちゃん……ええ、私は大丈夫よ、ありがとう」

 次に声を掛けるは水を司る妖精の王女で現在はウォーターフェアリーと呼ばれるヒロインに変身していたアプリコット。

「ご、ごめんなさい。アッコちゃん大丈夫だった? バーンズが物凄い勢いで飛んで来たけど……」

「う、海さん。ええ、私は寸での所で避けたんで何とも無いんですが……」

 キッドとフェアリーに続いて声を掛けて来たのは、コレクターズや最終兵器ちせと同様、新たに聖龍隊のメンバーに加わった魔法騎士(マジックナイト)の内の一人、龍咲海(りゅうざきうみ)。

「もっ、申し訳ありません! メタルバードさんやキッドさん達と一緒に仕合っておりまして、私の風魔法をメタルバードがまともに受けてしまって、その反動でアッコさんの所まで……」

「ふ、風さん、そうだったんですか……」

 海に続いてミラーガールに謝罪しながらメタルバードが飛んで来た事情をミラーガールに釈明するのは、魔法騎士の一人、風の魔法を使う事が出来る鳳凰寺風(ほうおうじふう)であった。

「ぐ、ぐぐぐ……お、オイお前等……! オレに直撃しそうだったミラーガールを心配するのは当然だが、風の魔法を喰らって壁に激突しちまったオレ自身にも気を掛けてくれよ。あイテテ……」

 壁に激突し痛む身体を擦りながらミラーガールに駆け寄り声を掛けている面々に言うメタルバード。

「アハ、大丈夫メタルバード? いやぁそれにしても派手に激突しちゃったね~~、ハハハ」

「わ、笑うとこじゃ無いよ……光……」

 笑いながらメタルバードに話し掛ける魔法騎士の一人で炎の騎士、獅堂光(しどうひかる)に対して回る目で手を突き伸ばしながら言葉を返すメタルバード。

「み、みんなどうしたの? これは」

 馴染み深い聖龍隊の三人メタルバードとキッドとフェアリー、そして魔法騎士の光/海/風の計六人が揃っている現状に訳が解らないミラーガールが訊ねる。

 するとキッドがミラーガールの問い掛けに対して答えてあげた。

「いや何、魔法騎士の三人と僕等で仕合を組んでいたんだよ。ほら、僕等は以前アプリの故郷であるボスコワールドで一緒に戦っていたから、お互いの戦法や能力は周知しているだろ。だけど三人はコッチの世界に来た後で能力を開花させたアプリの【水を操る能力】に関しては初見した事も無かったから、それならアプリコットの能力を知り得ながら同時に三対三で仕合ってみようかって意見が出たから今まで組んでいたんだけど……」

 神妙な面持ちでミラーガールに説明するキッドに続き、風が申し訳なさそうにミラーガールに話した。

「で、ですけど私が放った風魔法をメタルバードさんが真っ向から直撃してしまって、その勢いでアッコさんの方まで飛んでしまわれたんです」

「は、はぁ……そうだったんですか……」

 唖然とした表情を浮かべながら返事するミラーガール。

 その時、目を回してしまっているメタルバードを起こし立たせてあげている光が皆に言った。

「ねぇみんな。メタルバードもこんな調子だし、ちょうどアッコちゃんも私達の所に来た事だし、一旦休まない?」

 光の意見に皆が賛同した。

「それもそうね。少し休憩しましょうか」

「そうですわね。皆さんで休憩がてら、お茶にしましょう」

 海、風に続いてキッドとフェアリーも言った。

「そうだね。休憩しながら互いの能力や戦法の事を話し合って、少しでも本番で上手く立ち回りが出来る様に相手の事を理解して行かないと」

「それもそうだわ。互いの事を理解しないままじゃ協調性なんて絶対生まれる訳無いものね」

 それに続いて光と未だに目がクラクラするメタルバードが皆に賛同を述べた。

「うんうん! アッコちゃんも来た事だし、みんなでお茶しよーーッ」

「へ、へぇ……け、結構激しく仕合ったって云うのに元気が良いこった……」

 目を回しながら言うメタルバードに海が呆れながら言った。

「メタルバード当然よ。光の体力は桁違いなんだからね。セフィーロでも光だけ先にドンドン進んで行っちゃって追い付くの大変だったわよ」

「ふふふ、今思い返してみると本当に懐かしいですわね」

 海の発言にかつてのセフィーロでの出来事を思い出し微笑む風。

 そしてミラーガールを新たに加えた皆は、共に一息入れるのであった。

 

 魔法騎士の三人にメタルバードを始めとするジュピターキッドとウォーターフェアリーそして六人と合流したミラーガールは施設内の各所に設けられている休憩所で、キッドの実父であり修司の執事でもあるウッズが用意してくれた紅茶で一息入れていた。

「くんくん……うぅ~~ん、ウッズさんが淹れてくれた紅茶、とっても良い香りね」

 紅茶が注がれたティーカップを鼻に近づけ香りを堪能する海。

「そうですわね。おそらくとても良い茶葉を使っているんでしょうね」

 海に続き風も淹れられた紅茶から漂う香りを感じながら気分を落ち着かせていた。

「ほんと、ウッズさんが取り寄せてくれる茶葉って味も香りも最上よね」

「ああ父さんはいつも、僕達を始めとした聖龍隊のみんなが心からリラックスして過していられるよう、お茶だけでなく色々と細かい気配りをしてくれてるんだよ」

 紅茶を飲みながら茶葉を取り寄せたウッズを称賛するフェアリーに、そんな父親の事を語るキッド。

「まぁ、オレは良い茶は関係無く、美女が淹れてくれたモンなら舌も心もウキウキなんだがな」

「なに言ってるのっ」

 メタルバードの発した一言に思わず彼の後頭部を引っ叩くミラーガール。

 そんなほのぼのとした雰囲気の中、徐に風が言葉を呟いた。

「それにしても……まさか、あのアプリコットさんが此方の世界に来てから能力を開花させていたなんて驚きですわ」

「え……い、いえ……」

 風に言われ若干照れる様子を見せるフェアリー。

「でも凄いわアプリちゃん。まさかあなたまで私達同様に不思議な能力を得られたなんて」

「うん! 水を操って戦えるなんて、水の妖精のお姫様であるアプリちゃんらしいよ!」

「そ、そうでしょうか……」

 風に続いてフェアリーに笑顔で話す海と光の発言に対し、戸惑う表情を見せるフェアリーであった。

 その時、再び風が神妙な顔立ちで言った。

「だけど少し憂鬱ですわ……」「え、何がなの? 風ちゃん」

 光が訊ねると、風は暗く悲しげな表情で話し始めた。

「だって、アプリコットさんはこれで私達と一緒に戦う事に成ってしまったじゃないですか。元居た世界でも悲しい事が多々あったと云うのに、此方の世界では再び辛く激しい戦いの渦中に身を投じなければいけないなんて……」

 風のこの発言に彼女の話を聞いた光と海、そしてメタルバードとキッドそれにミラーガールは悲愴な面持ちに表情を変えた。

 だが、この風の言葉を聞いたアプリコットことウォーターフェアリー本人は険しいながらも落ち着いた面立ちで話し返した。

「……確かに、生まれ故郷の異世界で私は干からびた大地を蘇らせる為に世界を循環する水脈に成りました。そして此方の世界では新たに能力を得て、それ故に聖龍隊の一員として戦う事に成ってしまいました。しかし……」

『…………』

「しかし、私は風さんが言うほど気にしていませんし、何より後悔なんか感じていません。アッコさんが私の世界に偶然とはいえ来てくれた事により、私は再び元の姿で大地に足を着く事が出来ました。だからこそ懐かしい友達にも再会できましたし修司さんやジュニアにも逢う事が出来ました。それに比べたら此方の世界で変身して戦うなんてどうって事はありません」

 ハッキリと告げるフェアリーの発言に周りの皆は言葉を失い、それぞれ思い更けてしまう。

 そんな中、フェアリーは黙り込んでしまう皆に続けて語った。

「た、確かに……正直に申しますと、私だって戦うのは怖いですよ。だけどみんなが戦っているのに私だけが戦いを避けていてはいけないって……そう思うんです」

『…………』

「何より今の私には、皆さんと同様に戦える力が……運命に抗える力が有るんです! この能力(ちから)で私はもう、決して手放したくは無いんです……大切な人達を。そして掛け替えのない世界を……」

 ウォーターフェアリーの悲痛ながらも決意に満ちた言葉の数々に、ミラーガールはもちろんの事、彼女の現在の恋人でもあるジュピターキッド、そして副長のメタルバードに魔法騎士の三人は感極まった。

 

 この時、フェアリーの話を聞いたミラーガールは思った。

 フェアリーに限らず、自分も能力が使える限り、この能力で出来得る限りの命や想いを護り抜いていこうと心には決めていた。

 弱い人々の優しい想いや温かい命を護る事が出来る存在になろうと、彼女は自信に誓っていた。

 しかしこの青白い神秘的な鏡の盾で、自分は本当に力の無い弱い人々をどれだけ護って行けるのか。彼女は戦闘時に左腕に装着しているミラーシールドを見て思った。

 ミラーガールは自分が世界の命を護り切る事ができるのか、一抹の不安を感じてしまっていた。

 

 

 

[兵器の少女と聖龍隊]

 

 聖龍隊基地施設、その内部には様々な設備が設けられている。

 喉を潤す為の自販機や給水場はもちろん、広い施設内を歩き回り疲れてしまった足を休ませる為の休憩室、体を鍛える為の様々な器具が置かれたトレーニングルーム等、必要最低限の設備が各所に設けられている。

 

 その内の一つ、シャワールームにて一人の少女が立ち籠る湯気の中、体を濯ぎ洗っていた。

 未だ体から滲み出る己の血を複雑な心境で洗い落として行くその少女 最終兵器のちせは腕や腰周りを撫でる様に洗い続けていた。

 

 そんな中、ちせがシャワールームの一室で体を洗っている最中、彼女が使用している個室に近づく影が一人。

 少しずつ、少しずつ、少女ちせが入室しているシャワールームにその影は近づいて行く。

 影は遂にちせが入室しているシャワールームの個室前まで迫る。

 そして影はゆっくりと、ちせが入室しているシャワールームを遮断しているビニール製のカーテンに手を掛けようと、自身の腕を忍ばせた。

 

 だが、その時〔ガシッ〕「!?」影がシャワー室のカーテンを掴もうとしたその瞬間、その影の肩を別の者が強烈な握力で掴んだ。

 ちせのシャワーシーンに忍び歩んでいた影は驚き、そして次の瞬間。

〔ガッ バキ グシャッ ゴギッ ドガ……〕

 肩を掴まれたまま、ちせに忍び寄っていた者はシャワールームの壁に叩き付けられ、そのまま壁際で何度も殴打され続けた。

「っ!」

 個室の外で鳴り響く突然の物音に気付き、非常に驚くちせ。

 彼女がシャワー室のカーテンから顔だけを出し覗いてみると、立ち籠る湯気の中あの修司がちせのシャワールームに忍んでいたもう一人を、バーンズを壁に叩き付けながら何度も殴っていた。

「…………!」

 眼前で行われる行為に驚いたちせは、余りの事に言葉を失っていた。

 その時、修司はちせの視線に気付き彼女に目を向けた。

「っ」「!」

 修司もちせに気付いたのだが、それと同時に彼女の現状(裸体)にも気付いた為、無表情な顔付きを変えず顔だけを背け、すぐさま視線を逸らした。

 そして修司は視線を逸らしたまま、ちせに話し掛けた。

「す……済まねえ。すぐにコイツを連れて出て行くからよ」

 無愛想な面立ちながらも何処がぎこちない様子で話す修司に、ちせは驚きながらも目で頷いた。

 そして修司は壁に減り込んでいる血だらけのバーンズを引っぺがす様に掴むと、ちせに視線を逸らしつつシャワールームから出ようとする。

 するとその時、部屋から出ようとする修司は徐に壁に掛かっている未使用のバスタオルを手に取りちせに目を向けないで投げ渡した。

「あ……っ」

 ちせは不意に投げ渡されたタオルを受け取ると、修司は背中越しでちせに話し掛けた。

「それじゃ、湯冷めする前に体拭いておけ。早く着替えないとまたこのバカが覗きに来るぞ」

 多少照れているのか不機嫌なのか曖昧な口調でちせに言った修司は、そのまま殴打され過ぎて顔が変形し頭から血を流すバーンズを引き摺りながらシャワー室から出て行った。

 残されたちせは驚きの余り、しばしその場に立ち尽くしてしまっていた。

 

 そして修司が血だらけのバーンズの頭を掴んで引き摺りながらシャワー室の前から立ち去ろうとした丁度その時、現場に二つの足音が駆けて来た。

「ど、どうしたの一体!?」

「何だか凄い音がシャワー室から聞こえて来たけど……!」

 慌てて駆け付けて来たのはハイレグレオタード姿のくノ一高木はるかと武者鎧に身を纏い顔を曝け出している芹沢ルリ子の二人であった。

 修司は二人に真顔で答え返した。

「見れば解るだろ、見れば」

 修司にそう言われた二人は、改めてシャワー室の入口から続いている真赤な血の痕を目で追って行くと、修司に頭を掴まれ顔面が異様なまでに変形した血塗れのバーンズの姿を認識した。

 頭から血を流すバーンズとシャワー室の二つを頭の中で結び付けたはるかとルリ子は『……ああ、成るほど。それで』と頭の天辺から足のつま先まで状況を理解し納得した。

 二人がシャワー室から響いて来た異音が何だったのか理解したのを、修司は横目で確認すると彼はそのままバーンズを引き摺りながら去って行った。

 それから、ちせはタオルで体の水気を拭き取りながら用意して貰っている部屋の一角に座り込み、しばし沈黙していた。

 

 

 

 そしてその翌日、ちせは聖龍隊の訓練用のフロアで一人佇んでいた。

 彼女は単身フロアの壁を見詰め、何やら思い更けていた。

 と、そんな時、ちせに一人の少女が歩み寄って来て彼女に声を掛けた。

「ちーーせさんっ」「えっ……あ、あなたは確か……」

 ちせが声の聞こえた方に顔を向けると、其処には青白い衣を身に纏った笑顔のミラーガールが居た。

「た、確か、あなたは……」初めて一対一で顔を合わせたちせは懸命に相手の名を思い出そうと困惑していた。

 そんなちせにミラーガールは笑顔を向け軽くお辞儀をしながら名乗り始めた。

「私はミラーガール、本名は加賀美あつこと言います。二人っきりで顔を合わせたのは初めてでしたね、ちせさん」

「…………」

 兵器と化した自分に対して笑顔で平然と自己紹介するミラーガールの言動に、ちせは言葉を失うほど衝撃を受けた。

 ミラーガールはそのまま平然とちせに話し続けた。

「ちせさんお身体の調子どうですか? また体が痛くなったら何時でも誰にでも良いので言って下さい。すぐに治療しますから」

「…………」

 自分を気遣ってくれる言葉を普通に何気なく口から出してくれるミラーガールの発言にちせは逆に返す言葉が中々見つからなかった。

 そしてちせは、自分に話し掛けてくれるミラーガールに意を決して話し返した。

「あ、あの…………み、ミラ」「え、何ですか?」「あ……」

 話し掛けようとミラーガールの名を口にしようとした瞬間、ミラーガールが先に訪ねて来てしまった故に発言が途切れてしまい困惑してしまうちせ。

 しかしちせは勇気を出してミラーガールに再び話し掛けた。

「あ、あの……あ、アッコ、ちゃん?」

「ん、何でしょうかちせさん」

 声を掛けられたミラーガールはちせに笑顔を向けて返事した。

 返事をしてくれたミラーガールに、ちせは如何にか落ち付きながら話を始めた。

「あ、あの……だ、誰か探しているの?」

「え、いえ、誰も探してはいませんけど……なんで?」

「あ、それは、その…………此処には私しか居ないから。他の誰かを探しているのかなって……」

 ミラーガールが自分に声を掛けたのは、他の聖龍隊の誰かを探しに来ただけなのかもしれないと思ったちせはミラーガールに訊ねてみた。

 人殺しの兵器に成った自分に己と話しかけてくれる人など居やしないと、この時ちせは心の中で思っていたからだ。

 すると訊ねられたミラーガールは平然とちせに答え返した。

「い、いえ私はただ、ちせさん本人と軽くでも良いからお話してみたいなと思って、それで声を掛けたんですけど……め、迷惑でしたか?」

「え……っ」ミラーガールの発言に、ちせは再び衝撃を受けた。

 話し掛けられる以前に自分の様な兵器と好き好んで関わろうとする人間が殆ど皆無であったちせは、ミラーガールの何気ない発言に驚き続けた。

 ちせがミラーガールの発言に衝撃を受けている中、ミラーガールの方からちせに話し掛け始めて来た。

「ちせさん、少しは聖龍隊に慣れましたか? 色々と大変みたいですけど」

「…………!」

 ミラーガールの笑顔での問い掛けにちせは口を噤み思わず俯いてしまった。

「……ちせ、さん……?」

 下を俯いてしまったちせを見て彼女の様子が一変してしまった事を悟るミラーガールは困惑した。

 ミラーガールは恐る恐るちせに話し掛けてみる。

「ち、ちせさん……大丈夫ですか? まだ、聖龍隊のみんなとは馴染んでいなかったんですか?」

「……………………」

 ちせは下を俯いたまま何も言おうとはしない、いや口から言葉というものを発する事が出来なかったのだ。

 ミラーガールはそんな無言のちせを目の当りにして、いささか居た堪れない心境に駆られた。

 そしてミラーガールは意を決して再度ちせに微笑みながら話し掛けた。

「……ちせさん」「…………」

 ミラーガールの言葉にも反応せず俯いたままのちせ、ミラーガールは優しい微笑みを変えずに話し掛ける。

「ちせさん、大丈夫ですよ。聖龍隊のみんなは、とっても優しい人達ばかりですから。な、中には気難しかったり個性的な人達も居ますけど、基本みんな友達想いの良い人達ばかりですから、ちせさんも少しずつで良いからみんなと触れ合って行きましょう。ね」

「…………」

 ミラーガールの優しい言葉に、ちせは俯いていた顔を上げてミラーガールの顔に目を向けた。

 ちせの目に飛び込んできたのは、一瞬後光が顔の後ろから射していると思ってしまう程に輝いているミラーガールの慈愛に満ちた優しそうな笑顔。そして汚れなど微塵も感じさせない程の燦然とした輝きを感じさせる鏡の様に綺麗な瞳であった。

「……」ミラーガールの鏡の様な瞳にしばし見惚れるちせ。

 その時ちせは不意にミラーガールの瞳に反映している自分自身に気付いた。

 兵器に身体を改造されて以来、余り笑う事が無かった彼女の顔は、何処か悲しみと空虚さが感じられた。

 ミラーガールも自分をこの鏡の様な瞳で捉えている時同じ事を持っているのだろうかと、ちせは心から思った。

 

 そんな中、ミラーガールはちせと向き合いそのまま話に入った。

「ちせさんどうしたんです? ちょっとこの部屋を覗いてみたら、一人で立ち尽くしていて」

 訓練用のフロアで誰とも居ず、一人で居たちせを気に掛けミラーガールが訳を訊ねると、ちせは悲愴な面持ちで答えた。

「え、ええ、ちょっと考え事を」

「考え事? ……失礼ですけど、何を考えていたんですか?」

 ちせが何を思い考えているのか気になったミラーガールは訪ねてみると、ちせは悲愴な面持ちのまま語り始めた。

「ええ、私そのね……せ、聖龍隊に連れて来られた時はその……少し、ううん。本当の事を言うとかなり困惑したし、何より凄く怖かった。もし自衛隊の指令で私やシュウちゃんを連れ戻したのなら……私を連れ出したシュウちゃんにどんな罰が下されるのか凄く不安だったし、シュウちゃんに凄く申し訳なかったって思ったの……」

「そ、そうだったんですか……(ちせさん、自分を連れ出してくれた恋人のシュウジさんの方を心配してたんだ……)」

 自分達が聖龍隊に連れて来られた時の心情を語ってくれるちせの話を聞いたミラーガールは、ちせの心痛な想いも感じ入った。

 のだが、同時にミラーガールは心の中で現状に似合わない心情も思っていた。

(そ、それに……! 恋人のシュウジさんの事をシュウちゃんって……! まさかちゃん付けで呼んでいるなんて……ッ! 私も修司の事そんな風に一度でも良いから呼んでみたい!!)

 と同じ名の異性が居る身としては、ミラーガールはちせとシュウジの間柄を少しばかり羨ましく感じてしまっていた。

 そんな他愛も無い嫉妬心に駆られるミラーガールの心情を尻目に、ちせは話を続けた。

「だ、だけど私……此処に来て少しずつ聖龍隊のみんなと触れ合って行く内に、皆さんが本当に偽り無く優しい人達なんだなって解ったの」

「…………」

「私、戦場では沢山の命を……敵味方の分別無く、能力の暴走で多くの命を奪って来てしまった。でも、そんな私でも聖龍隊の役に立てるのかもしれないって感じ始めてしまって……。みんなと違い多くの命を奪って来た私なんかが、聖龍隊のみんなと一緒に居ること自体場違いなのかも知れないけど、それでもみんなの役に立ちたいって思い始めて来たの」

「……」

「……ご、ごめんなさい。人殺しの兵器が聖龍隊の……人の役に立ちたいだなんて思って」

「そっ、そんな事無いですよ! 誰かの役に立ちたいって思えるのは素晴らしい事じゃないですか」

 兵器如きが人の役に力に成りたいと思い始める事を申し訳なくも思うちせの思考に対し、ミラーガールはその考えは列記とした素晴らしい思想であると言い返した。

 ミラーガールは引き続きちせと対話を続けた。

「ちせさん、其処まで思える様になるまで変われたんですね」

「え……」

「だって最初は連れて来られて多少は困っちゃっていたんでしょ? そして自分なんかが聖龍隊の人達と関わるなんて、おこがましいって感じていて……」

「…………」

「でも今じゃちせさんは、心から聖龍隊のみんなの力に成りたいって思える様に成ったんでしょ? それって凄く立派な事ですよ!」

「あ……」

 ミラーガールの慈愛に満ちた穏やかな笑みを目の当りにしながら彼女の口から出てくる言葉の数々に、ちせは自然と心が温かく成って来た。

 更にミラーガールはちせに語り始めた。

「何だかちせさんを見ていると少し前の修司を思い出します」

「え……しゅうじ……」

「あ、もちろん、ちせさんの恋人の方では無い修司の事ですよ、ハハ……(はぁ、名前がおんなじだとホントややこしい)」

 ミラーガールは心の中で少しばかり呆気に感じながらも、ちせに修司の事を語り出した。

「修司も昔は今のちせさん同様、口数が少なかったんですよ。だけど少しずつ変わってくれて……。ちせさんも少しずつで良いから自分を変えていきましょう」

 話の最後に笑顔でちせに告げるミラーガール、ちせはそんな平然と述べるミラーガールに言葉を掛けた。

「あ、あの……」「ん? なんです」

 ちせは意を決してミラーガールに訊ねる。

「あ、あのミラーガール……修司君ってどんな子なの?」

「え、修司? そうですね……」

 訊かれたミラーガールはしばし考えると、ちせの問い掛けに対して答え始めた。

「修司は少し前までは余り人と関わりを持とうとしなかったんです。聖龍隊の活動の時だけは仲間内での触れ合いはしていたみたいなんですけど……あ、実は私、聖龍隊が結成してしばらく経ってから入ったもので、修司が聖龍隊ではどの様に過して来たのか始めは知らなかったんです」

「……」

「修司はほんとに何を思っているのか読めない人間なんです。少なくとも周りのみんなの為に何かを考えているのは解るんですが……今もそうですが、修司はほんと口数が少ないから多少誤解などは生まれてしまうんだけど」

「……」

「ふぅ……何だか、同じ修司(シュウジ)でも全然違いますよね。私の知っている修司と、ちせさんの恋人であるシュウジさん」

 穏やかながらも神妙な表情を浮かべて語り続けるミラーガールに、ちせは言葉を発する事無く耳を傾け続けた。

 そんな話に耳を傾けるちせに、ミラーガールは顔を明るくして更に語った。

「でも、私は修司の事を信じていたいし、これからも今まで通り……いいえ、今まで以上に仲良く過していけたらなぁって思っているんです。人付き合いも口数も少ないとはいえ、それだけで修司の本質を決めたくも無いし、これから修司自身がもっと自分を変えてくれる為にも、私は今まで以上に修司はもちろん聖龍隊のみんなと付き合って行きたいんです。……あ、もちろん新しいメンバーの結さん達コレクターズ、魔法騎士(マジックナイト)の光さんや海さん風さん、そしてちせさんとだって、これからずぅっと仲良く過して行きたいですよっ」

「……!」

 笑顔で平然と口に出すミラーガールの言葉にちせは愕然となった。

 だが、ミラーガールは更にちせに言葉を投げ掛けた。

「ちせさんも、修司の様に変わって行きましょう。人は誰だって変わる事が出来る……私はそう信じています」

「…………」ミラーガールの言葉に、ちせは再び衝撃を受け言葉を失くす。

 兵器と化し、多くの命を奪って来てしまった……人で無くなってしまった自分に平然と他の人と同じように接してくれるミラーガールの言葉に、ちせは胸を熱くさせた。

 そして彼女が自分に掛けてくれた「人は誰だって変わる事が出来る」この一言に、ちせは言い様の無い衝撃と感動を覚えた。

 

 その時、ちせと一通り話し合ったミラーガールは不意にちせに話し出した。

「よぉし……ちせさん、それじゃやりますか」「え? な、何を……?」

 突然の言葉に動揺するちせにミラーガールは堂々と微笑みながら言った。

「ちせさんは少しでも聖龍隊の、私達の役に立ち力に成りたいって思っている訳でしょ? だったら少しでも能力をコントロールできるようにする為にも一緒にトレーニングしましょう」

「えっ。そ、そんな……危ないわ、私なんかと一緒になんて……」

 自身のパワーを制御できないちせはミラーガールと一緒に仕合(トレーニング)をするのを躊躇ってしまう。

 しかしミラーガールの方は明るい表情で平然とちせに言い続ける。

「大丈夫ですよ。私これでも聖龍隊では防御面に優れている方ですので」

「で、でも……」

 躊躇い続けるちせ、するとミラーガールは左手のリストバンドに変わっているコンパクトを右手で摘まみミラーシールドを出現させ構えると、ちせに元気な微笑みで告げた。

「大丈夫です……何より、ちせさんの放つ攻撃手段は全て、そう絶対的に私には効きませんので」

「え……」ミラーガールの言葉に困惑するちせ、そしてミラーガールは盾を構えたままちせに言う。

「さぁ、遠慮なく来てください!」

「…………」躊躇うちせ、するとミラーガールは力強い顔付きで告げた。

「お願い、私を信じて……!」「……!」

 ミラーガールの力強い発言に、ちせは先ほどのミラーガールの言葉を思いだした。誰でも変われる……ちせは自分にそう言ってくれたミラーガールの言葉と想いを信じてみようと思い立った。

 そして――――「……ッ」ちせは自身の両腕を機械化させ、強力なレーザーをミラーガール目掛けて放った。

「ッ……!」ミラーガールは自分に直撃したちせのレーザーを盾で受け止めた。

「あ……!(み、ミラーガール……!)」

 自分の攻撃を真正面から受けたミラーガールの安否を気にして不安に駆られるちせ。

 ミラーガールの周囲には爆煙が舞い上がり、すっかりミラーガールの姿を隠していた。

 ちせが不安に陥る中、爆煙は次第に晴れて行き、少しずつミラーガールの姿が現れて来た。

「……み、ミラーガール……」

 ちせが恐る恐る声を掛けたその時、煙の中から現れたミラーガールは全くの無傷で、それも笑顔でちせに言葉を返した。

「安心して、ちせさん。私は全然大丈夫だから」

「み、ミラーガール……で、でもなんで?」

 自分が放った攻撃を受けたミラーガールが無事で在った事に喜ぶちせではあったが、同時になぜ彼女が無傷なのか疑問に思った。

 するとミラーガールは笑顔で平然とちせに答えた。

「ちせさん。私は鏡を使った魔法や防御系統の技が主流なんです。鏡だから光線なんかは光の反射の要領で全部撥ね返す事が可能なんですよ」

「……!」

 ミラーガールの釈明に愕然と成り表情が固まってしまうちせ。

 鏡ゆえに全ての光線などは撥ね返す事が出来る……まさに鏡の聖女ならではの強みであった。

 ミラーガールとちせは、その後もしばし二人でトレーニングを行い続けた。

 

 

 その後ミラーガールは、ちせとのトレーニングを終了して、一人満足気な表情で基地施設内を歩いていた。

 と、その時。ミラーガールが歩いていると、あの修司とばったり出くわした。

「あ、修司」

「なんだアッコか。どうしたんだ? そんなに嬉しそうで。しかも服がかなり汚れているし」

 喜びに満ちた表情そして青いコスチュームを汚していたミラーガールに修司が訊ねると、彼女は笑顔で修司に先ほどの出来事を語った。

「うん実はね、さっきちせさんと一緒にトレーニングしていたの。ああ、修司の言葉で言う仕合っていうアレよ」

「ちせと…………大丈夫だったか」「え? そ、それって……」

 修司に訊かれたミラーガールは動揺し、そんな彼女に修司は訊き続けた。

「お前も知っているだろ。ちせは未だに能力の制御が困難なんだ。そんな状態のちせと仕合ってお前は大丈夫だったかって訊いているんだ」

 修司のこの質問に対し、ミラーガールは微笑みで言葉を返した。

「あら心配してくれてるの。嬉しいなぁ」「…………」

 ミラーガールの発言に対し、修司は無愛想で冷静を保ったような顔で口を閉じた。

 そしてミラーガールは笑顔で修司に答え始めた。

「大丈夫よ。ちせさんの能力と云うか、あの人のレーザーは光線だから……ほら、私は鏡の能力者でしょ。だから光系統の攻撃は殆ど弾き返せるから安心して」

「……成るほど……」ミラーガールの説明を聞き、修司は小さく呟くいた。

 と、そんな時であった。ミラーガールが突然口に出した。

「それにしても、ちせさん大変よね。私達と対して年齢差が変わらないのに、いきなり兵器に改造されちゃって……」

 この一言に修司はすかさず言葉を返した。

「んッ? アッコ、お前、今何と……」

「ん? だから、ちせさんまだ中学生なのに大変だなって……」

 この言葉に、修司は目を細めながらミラーガールに言った。

「……おい、アッコ。あのちせだが」「ん?」

 次の瞬間、修司はミラーガールに告げた。

「ちせ……あれでも女子高生だぞ」

「…………え゛ッ、ウソ!?」「……ホントだ」

 修司の述べた事実に驚愕するミラーガールに、修司は答える。

「ち、ちせさん……高校生、だったの? てっきり中学生かと……」

 目を丸くして、完全に驚いてしまっているミラーガールに修司は半ば呆れながら述べた。

「ま、まぁ、ちせは生まれ付き病弱だからな。体つきも若干、中学生っぽく見えちまうからな」

「…………」

 修司から聞かされた事実に呆然としてしまうミラーガールに、修司は呆れながらも更に話し続ける。

「……実を言うと、お前以外のメンバーも、お前同様にちせやシュウジの事を中学生かと思いこんでいたらしいぜ。ちせが中学生みたいに小柄な体格だったから、同じ制服を着ているシュウジも中学と思っていたらしい」

「はぁ……」

 事実を知ったミラーガールは口を開けてポカンとしてしまった。

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