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[開戦 アニメタウン]
「わあーーッ」「きゃあ~~」
街中で飛び交う叫び声。アニメタウンの市民達は叫びながら所狭しと逃げ惑っていた。
「ウオオッ」「ギャアアァ」
そんな逃げ惑う市民達を手当たり次第に追い掛け回す怪物の群れ。
市民達が逃げ惑っていると、突如上空から数多の閃光が放たれた。
「ウギャッ」「グオッ」
閃光は市民達を襲っている怪物達に貫き、怪物達は死に絶えた。
『……………………』
目の前で突然、その巨体を閃光で貫かれ絶命してしまう怪物達を目の当りにした市民達は言葉を失い立ち尽くしてしまう。
すると上方から声が聞こえてきた。
「皆さん、危ないから早く避難してください!」
市民達が上方に目を向けると、其処には背中に純白の羽を生やした内部系のセーラー戦士達と最終兵器のちせが飛行していた。
「あ、セーラームーンだ!」「やった、聖龍隊が来てくれたぞ!」
飛来し駆け付けて来てくれた聖龍隊のセーラー戦士達を見て歓喜に沸く市民達。
そんな市民等にセーラー戦士の一人マーキュリーが呼び掛ける。
「皆さーーん、此処は危ないですから急いで地下通路に避難してくださーーいっ」
マーキュリーが呼び掛けると、その時市民を誘導していた警察関係者や聖龍隊で働かせて貰っているウッズやジュニアと顔立ちが似ている小人族の係員達が惑っている市民達に呼び掛ける。
「聞きましたか今の! 皆さんは私達の指示の元、一緒に地下の避難場所に行きましょうッ」
「ほら押さないで押さないで。慌てずに地下の避難用通路に誘導しますから、落ち着いて行動してください」
そして市民等は、警察や聖龍隊の係員の案内の元、近場に在る地下通路への出入り口へと誘導されていった。
避難して行く市民達を見て心成しか安心するセーラー戦士達。
すると彼女達と共に駆け付けたちせが徐に戦士達に語り掛ける。
「……町の人達から信頼されているんですね、セーラー戦士は」
何処かしら悲痛な面持ちで話し掛けて来たちせに対し、セーラー戦士のジュピターは優しい微笑みでちせに話し返した。
「大丈夫よ、いつかはちせちゃんだって人から信頼して貰えるからさっ」
「え、ええ……」
ジュピターの元気付ける言葉に対しても困惑の表情を浮かべるちせ。
彼女は未だに兵器の自分が人々から愛されるヒロイン達の様に振る舞えるのか疑心暗鬼に陥ってしまっていた。
と、ちせが憂悶の表情を浮かべていると、マーズが皆に言い放つ。
「よし、街の人達の避難は警察の人や聖龍隊の係員達に任せて、私達はまた仲間達と合流して敵を殲滅して行きましょうッ」
マーズの言葉にセーラームーンとヴィーナスが自信に満ちた表情で言葉を返す。
「よぉしっ、張り切って行っちゃうわよ!」
「よっしゃーー! 一世一代の大勝負、みんなで乗り切っちゃいましょうっ」
二人の明るい返事に、他の戦士達は呆気に感じてしまう。
しかし一人だけ、ちせだけは明るく振る舞う二人に対して別の私情を抱いていた。
(……本当にこの二人は、明るくて元気で……私と大違いだなあ……。私も、こんな風に明るく振る舞えたらいいのに……)
人知れずちせが思い更けている中、五人のセーラー戦士達とちせは仲間達の所に戻って行った。
この時、セーラー戦士達は気付いてはいなかった。
避難する群衆の中に、セーラー戦士達を心痛な面持ちで見詰めている少女の存在を。
「…………セーラームーン、それに他のセーラー戦士達も……それにミラーガールに聖龍使い。どうか無事で……」
人知れずセーラー戦士達と聖龍使いやミラーガールの安否を祈る少女 大阪なるは沈痛な心境の中、彼女達を始めとした聖龍隊の皆々の無事を祈っていた。
更に別の区域で避難する市民達の中にも、大阪なる同様に聖龍隊を心配する者達が居た。
「遂に始まっちゃったわ……ハニー、聖羅……それに修司君にミラーガールも、無事に帰って来てね……」
不安に満ちる心情で親友である如月ハニーことキューティーハニーと彼女の妹である葉月聖羅ことミスティーハニー、更には聖龍使いこと修司や彼を慕っているミラーガールの生還を願う秋夏子(あきなつこ)。
「きゃああっ」「だ、大丈夫?」
避難の際、転んで倒れてしまう少女に少年が駆け寄り気遣う。
「あ、ありがとう貴史(たかし)……」
「さぁ、早く避難しよう。……大丈夫、きっと聖龍隊のみんなが力を合わせて町を護ってくれるよ」
「そ、そうよね……うん、早く行きましょう……っ」
転んだ少女三原千春(みはらちはる)に肩を貸し、共に避難を続ける山崎貴史(やまざきたかし)の友枝町在住の二人。
「はい皆さん、落ち着いて行動しましょう。係の人の誘導に従って慌てず地下の避難通路に……」
「は、はい、みゆき隊長……」
「もう隊長って呼ばなくても良いですわ。……それよりも、今は一刻も早くみんなで避難しなければ」
「そ、そうですね。早く行きましょう」
二人の少女 鈴木栄子(すずき えいこ)と鈴木美子(すずき びいこ)に指示を出す桑野みゆき(くわの みゆき)。
そんな三人を側で眺めつつ、彼女達同様に避難している少女 水原花林(みずはら かりん)は小さく呟いた。
「ふふ、加納先輩が居なくなった後も、相変わらず仲の良い事で」
憧れの人が居なくなった後も変わらない友情を保っている三人を見て笑みが零れる花林であった。
「一太郎(いちたろう)早く! 怪物の群れが迫って来てるわッ」
「わ、解ってるよ……ハァ、やっと追い付いた」
「ほら早く……急がないと地下通路の出入り口が閉まっちゃうわ」
「だ、大丈夫だよ。市民全員が避難しない限り、出入り口は閉まらないからさ」
背が高くすらっとした大人っぽい少女 観音崎(かんのんざき)レイコに急かされる眼鏡を掛けたおたく系の青年 市川 一太郎(いちかわ いちたろう)は、二人揃って地下の避難通路に逃げ込む。
そして
「…………修司、無事で……」 (アッコ……)
避難しつつ、自分達アニメタウンを始め世界の為に戦い続ける聖龍使いこと小田原修司を、そしてミラーガールこと加賀美あつこを心から心配する、かつて修司を想っていた碧井瑠璃(あおいるり)と加賀美あつこの親友の浪花元子(なにわもとこ)の二人。
その時、二人に赤塚大作が(あかつかだいさく)が声を掛ける。
「二人ともッ、早く逃げねえと危ねえぞ! さっさと来いッ!」
大将の一声に、瑠璃とモコは駆け足で地下の避難通路に逃げ込むのであった。
そしてセーラー戦士達と兵器ちせは市民達の避難が安全かつ迅速に誘導されているのを確認した上で、仲間達の元に再び集結した。
「みんなーーッ、調子どうーー?」
セーラームーンが何時もの調子の良い態度で声を掛けると、キューティーハニーがそれに答えた。
「セーラームーン、調子も良いも何も、敵の数が多すぎて対処するのにも一苦労なのよッ。少しでも敵を早急に片付ける為にも、みんなも早く戦闘に入って!」
「は、は~~い……」
思わず冷汗を掻きながら渋々戦闘に加わるセーラームーン。
「はは……よし、私達も行きましょう。あんな雑魚、みんなで力を合わせればあっと言う間に片が付くわ」
「そうね。一刻も早く、この戦いを終わらせる為にも……!」
「今回は頼りになる仲間が一層増えているんだし、負ける気がしないわッ」
「へへ、一緒に頑張ろうね、ちせちゃん」
「え……は、はい……」
強気な姿勢で加勢に加わるマーズにマーキュリーにジュピター、そして笑顔でちせに声を掛けるヴィーナスに対し若干の戸惑いを見せるちせ。
聖龍隊はこうして全総力を挙げて異次元から来襲してくる数多の敵を撃破して行った。
[初陣! 熾烈を極めし猛攻]
摩天楼が犇めく都会の中心にて、異次元空間から次々に姿を現す怪物相手に一歩も退かずに応戦して行く聖龍隊。
「ハアァッ!」「えいっ」
セーラーウラヌスにネプチューン、そして二人の傍らで共戦するプルートとサターンは迫りくる怪物相手に怖気づく事無く見事な戦いを見せていた。
「ええいッ!」「ウギャッ」「グハッ……」
キューティーハニーはシルバーフルーレにて迫りくる敵を次々に斬り付け倒して行く。
「アロー(矢)!」「ギャッ」「グ……ッ」
木之本桜はカードの一枚「アロー(矢)」を発動させ、複数の敵を同時に射抜いていく。
「えいッ」「グハッ」
新撰組、花丘イサミは龍の剣にて近場の敵から順々に斬り付けていく。
「おりゃッ」「グフッ」「ゲヘッ」
同じく新撰組、月影トシは龍の目をサッカーボールの様に蹴り飛ばし、敵の顔面に次々と直撃させていく。
「ハァっ」「ギャッ」「グッ」
そして雪見ソウシは弓の形状に変化させた龍の牙で光の矢を放し続け敵を射抜いて行く。
「インストール!」「これでも食らいなさい!」「好き勝手にはさせませんわよ」
コレクターズの春日結/篠崎愛/如月春菜の三人は、犬養博士と花丘氏によって新たに作られた現実空間用のコレクトスーツを戸惑いつつも使いこなし、コムネットの中と同様に上手く立ち回りしていた。
「炎の矢!」「水の龍!」「碧の疾風!」
魔法騎士の三人は、いつもの調子で三人一緒の連係プレーで敵の軍勢を薙ぎ倒して行く。
するとその時、戦前を離れて市民の避難の様子を見に行っていた内部系のセーラー戦士達とちせが舞い戻って来た。
「みんなーー」「大丈夫?」
「あ、セーラームーン!」「セーラームーンこっちだ!」
皆の所に戻り声を掛けるセーラームーンとマーズに気付いて、セーラームーンの名を呼ぶちびムーンとタキシード仮面。
そして内部系のセーラー戦士達も皆と戦闘に加わる。
「燃え尽きなさいッ」
セーラーマーズは全てを焼き尽くす灼熱の業火で敵を次々に焼失していった。
「受けてみなさい……!」
セーラーマーキュリーは大量の水による大波で敵を溺死させていく。
「愛の天罰、落とさせて頂きますッ!」
セーラーヴィーナスはラブミーチェーンで周囲の敵を薙ぎ倒して行く。
「みんなに負けていられないわッ……私も、ええいっ」
そして仲間達の戦いぶりを見てセーラームーンも俄然ヤル気が湧いて来て、敵を倒して行く。
「よぉし、私達も行こう、まもちゃんっ」
「ああ、一刻も早く戦いを終わらせよう……!」
ちびムーンの掛け声にタキシード仮面は意気込みを募らせる。
と、その時であった。上空から無数の飛行型クリーチャーが、そのゴツゴツした皮膚感に赤い点目から光線を放ち、地上の聖龍隊に向かって爆撃して来た。
光線は地面に着弾すると爆発を起こし、コンクリートの地面は抉れ、路上の自動車は次々に大破していった。
「げッ」「こ、このままじゃ……!」
聖龍隊メインメンバーと共戦していた聖龍別働隊の宇崎星夜と高木はるかが怖気づき声を上げると、すかさず聖龍使いが指示を告げた。
「ミラーガール!」「ええ!」
指示されたミラーガールは光線が放たれていく第一線に駆け込み、そしてミラーシールドを前に突き出して唱えた。
「ミラー・ウォール・バリアー!」
するとミラーガールの前方に巨大な半透明の壁が発現し、光線を全て弾き返した。
弾き返された光線は、光線を放った飛行型クリーチャーに全て撥ね返され、クリーチャーは全滅。彼女を始めとする聖龍隊の誰もが無傷で済んだ。
「良くやった」「ふぅ……緊張するわ」
声を掛ける聖龍使いの言葉に対し、ミラーガールは安堵の表情を若干浮かべる。
更に岩の様に硬い体を持つ子牛程の大きさの魔獣が群れを成して突進して来るのに対し、ジュピターキッドは余裕を感じさせる笑みを浮かべながら大地の鞭を地面に思いっきし叩き付ける。
すると地面から無数の巨大なツタが生えて来て、突進してくる魔獣を一匹残らず掴み取り、身動きを封じてしまった。
「へへ……さてと」
突進してくる全ての敵を捕えたキッドは、徐に上方を見上げる。
そして咄嗟にキッドは自身が生やした巨大なツタを伝って、高層ビルの頂上まで登って行った。
登り切ったビルの屋上にも、既に多数のクリーチャーや魔獣が居り、中には屋上から地上の聖龍隊に攻撃を仕掛けようとしている妖魔や怪人の姿も確認できた。
「そうはさせない……!」
地上を狙う敵の姿を確認したキッドは、すかさず鞭を振り回して妖魔や怪人、更には他の魔獣達に攻撃を仕掛けていった。
しかし敵はすぐさまキッドに攻撃の矛先を変え、キッドに迫る。
「はっ、そりゃッ」
キッドは鞭を振り回しつつ、周囲に無数の草木を生やして攻撃を続ける。
するとその時、敵の中に居た一人の怪人がキッドの前に立ちはだかった。
キッドはその怪人を見て一瞬唖然としてしまう。
そして再び目を険しくさせて向き合ったキッドは怪人に言った。
「やぁ、久しぶりだな……アックス」「グヒヒヒヒ……」
キッドは以前、自分の手で葬った女怪人アックスと睨み合い、そして激突した。
「ぐ……ッ」「ギシシ」
激突し合う二人、キッドは表情を強張らせ、一方のアックスは両手に持った斧を構えて不敵な微笑を浮かべる。
だが一瞬の隙を着いてキッドはアックスを押し退け、大地の鞭をアックスに直撃させた。
「ギャウッ」
悲鳴を上げるアックス、次の瞬間アックスの身体に無数のツタが巻き付き始め、彼女をジワジワと締め付けていった。
アックスがツタに締め付けられ苦しんでいると、其処に先ほどミラーガールが光線を跳ね返し返り討ちにした飛行型クリーチャーとは別の敵が飛来し、キッドの居る屋上に無差別攻撃を放ってきた。
「くっ」無差別攻撃に対しキッドは駆け出した。
飛来する敵の攻撃は、キッドと同じく屋上に居た魔物や怪人達をも播き込んで攻撃され、屋上は一気に火の海と化した。
キッドはそんな無差別攻撃をしてきた飛行型クリーチャーに無数の種を撒き散らした。
種はクリーチャーの身体に付着すると、すぐに芽吹いてクリーチャーの身体から体力を吸い上げていく。
だがその時、応戦して行くキッドは上空からの爆撃を逃れる為走っていると遂に屋上の端まで追い詰められてしまった。
一瞬迷ったキッドであったが、敵の爆撃を逃れる為に止むを得ず屋上からそのまま飛び出した。
「く……ッ」
屋上から飛び出すキッドは、飛び出した瞬間、飛来する敵目掛けて無我夢中で鞭を伸ばした。
鞭は敵の身体に巻き付き、そのままキッドをぶら下げたまま敵は飛行し続ける。
だがその時、ぶら下がるキッドに別の飛行型クリーチャーが気付き、キッド目掛けて攻撃してきた。
「くっ、空中じゃ太刀打ちできない……!」
ぶら下がったままの状態では何もできないキッドが困惑しているその時。
「水手裏剣!」
何処からともなく巨大な水の手裏剣が、キッドを攻撃している敵目掛けて放たれた。
敵は次々に、その巨大な水の手裏剣で切断されていき、それを目の当りにしたキッドは唖然としてしまった。
「キッド大丈夫!?」
そしてその手裏剣を投げた張本人、アプリコットことウォーターフェアリーが虹色の羽で飛来しながらキッドに近づき声を掛ける。
「あ、ああ、大丈夫。ありがとうフェアリー」
キッドは助けてくれたフェアリーに礼を言い、礼を言われたフェアリーは飛びながらキッドに微笑みを返した。
すると二人が話し合っているその時、キッドがぶら下がっていた飛行型クリーチャーの真上から、赤い閃光がクリーチャー目掛けて直撃した。
「な、なにッ?」「え!?」
キッドとフェアリーが驚いた瞬間、キッドがぶら下がり赤い閃光が直撃したクリーチャーが落下し始めた。
「うわっ」「キッド!」
撃墜され驚くキッドにフェアリーが叫ぶ。
そしてフェアリーが真上を見上げてみると、其処には下を見下ろす黒ローブ達が宙に立ち尽くしていた。
「か、彼等が……!」
一目見て、黒ローブ達がキッドがぶら下がっていたクリーチャーを上空から撃墜させた事を悟るフェアリー。
フェアリーはすぐに目線をキッドに戻して、何とか落下する彼を助けようと急降下する。
しかしそんなフェアリーの眼前に、背中に翼を生やした飛行型の怪人が立ち塞がり、フェアリーは困惑してしまう。
「こ、このままじゃ……キッド!」
どうする事も出来ず困惑するフェアリーは思わずキッドの名を叫んだ。
と、その時であった。落下するキッドの手を空中で掴み助ける者が居た。
「あ、君は……!」
自分を助けてくれたその少女を見て、キッドは驚きつつも笑みを浮かべた。
「大丈夫?」「ああ、ありがとう」
声を掛けるその少女ちせにキッドは素直に礼を述べた。
一方のウォーター・フェアリーはキッドの無事を確認して安堵した。
「よ、良かった……」
安堵するフェアリーに対し、攻撃を放った黒ローブ達は人知れず話していた。
「…………よし、行動に移れ」
一人のリーダー格の黒ローブがそう告げると、他の黒ローブ達は小さく頷き一瞬で姿を消してしまった。
そして残された一人の黒ローブは上空高くから地上の英雄たちの戦いぶりを眺め続けた。
[立ち塞がる過去(かつて)の敵と不気味な敵勢]
「この野郎がッ」
聖龍隊が激しい戦闘を繰り広げている中、メタルバードは周囲の敵から順々に攻撃して行き、敵を倒して行く。
「ほれ、これでも食らいやがれッ」
メタルバードは片手を鋭い刃物の様に変形させて、敵を一刀両断して行った。
「おっ、空からも来やがったか。それなら……」
周囲の敵を斬り付けていると、上空から無数の敵が飛来しつつメタルバードに攻撃を仕掛けようとして来た。
それを見たメタルバードは右腕をレーザー砲の様に変形させてエネルギーを溜めると、一気にそれを放出して飛来する敵を一掃した。
「へへ、楽勝楽勝」意図も簡単に敵を一掃したメタルバードは余韻に浸っていた。
すると彼の背後から一人の怪人が歩み寄って来た。
「ん? 何だこいつは?」
振り返ったメタルバードの目に入ったその怪人は、厳つい緑色の顔にギラッとした赤い目、上半身が西洋の鎧の様な硬い皮膚に包まれ、胸の部分と頭部にはまるでモヒカンの様に文房具の分度器に成っており、更に両腕が同じく文房具のコンパスとハサミで出来ている体格の大きい怪人が歩み寄って来た。
その怪人は有無も言わずに、両腕のハサミとコンパスの針の部分でメタルバードを攻撃してきた。
「おいおい、何だよ何だよ」
鋼の身体を攻撃されるメタルバードは動揺しつつも的確に対応した。
「たく、意味のねえ事してんじゃねえよ」
メタルバードは怪人の攻撃するハサミの右腕を自身の左手で掴み押さえると、反対の右腕に電撃を溜め、一気に右手の砲撃から電撃を放ち怪人を黒焦げにした。
「へっ、オレ様にそんな攻撃が効くと思ってるのか」
黒焦げに成り倒れる怪人にメタルバードが吐き捨てると、其処にセーラーマーズが駆け付ける。
「メタルバード、大丈夫?」
「おおマーズか、全然大丈夫だぜ。この野郎、鋼の身体のオレ相手にハサミやコンパスみたいな腕で攻撃して来やがったんだぜ。笑っちまうぜ」
と、メタルバードが余裕ぶった表情でマーズに話していると、マーズはメタルバードに黒焦げにされた怪人を見て声を上げた。
「こ、こいつは……!」
「ん、なんだ? マーズお前、この文房具の塊みたいな奴知っているのか?」
メタルバードが訊ねると、マーズは険しい面持ちで答えた。
「え、ええ……! こいつはブンボーよ」
「ん? ぶんぼー?」
「ええ、私達が前に倒した筈の妖魔よ。でも何で此処に……」
「ふ~~ん、そっかぁ」
メタルバードとマーズが話しているその時、メタルバードによって倒された妖魔ブンボーの肉体が突如漆黒に包まれ、そして消滅してしまった。
「なッ……!」「こ、これは……!?」
突然跡形も無く消滅したブンボーを目の当りにし、メタルバードとマーズは驚愕した。
その頃、目の前に発生した異次元の裂け目から現れた奇妙な怪物相手に、聖龍別働隊の面々が必死に応戦していた。
「クソッ、何なんだ、この不気味なバケモノは!?」
目の前で暴れまわる怪物相手に、銃を乱射しながら応戦する早見青児。
その怪物は尻尾の先から胴体の中間の所までは青い身体、其処から少しばかりは薄い赤毛が生えた胴体に、上半身は緑色の細長い胴体。眼球は若干飛び出した不気味な目に細長い舌を出した細い口。青い身体と赤毛の身体からは、ぞれぞれ鳥の様な足が生えており、緑色の上半身には人間の様な両腕が伸びていた。更にその両腕の少し上の方には目玉の様なモノが不気味に聖龍隊の面々を見詰めていた。
「な、何だよコレは……!」「ぶ、不気味すぎる……」
その不気味な容姿の怪物を目の当りにした小狼に高木はるかを始めとした別働隊は顔を蒼くさせた。
と、別働隊の一同が不気味な怪物に戸惑っているその時、怪物が暴れながら突如その細長い口から紫の液体を吐き出した。
「うわッ」「な、何なのコレ……?」
怪物が吐き出す紫の液体に驚き動揺する宇崎星夜にミスティーハニー。
すると怪物の吐き出した液体が別働隊を指揮しているウエルズに向かって放たれた。
「う、ウェルズさん!」「ああ!」
デューイと苺鈴が悲痛な叫びを上げる中、ウエルズは咄嗟に腰に装着していた携帯用の鋼鉄製の盾を展開させて紫の液体を防いだ。
だが、ウエルズが展開させた盾に紫の液体が付着した途端、盾はジュワッと音を立て変色し、見るも無残に熔けてしまった。
「!?」盾が熔けた惨状を見て愕然とするウエルズ。
そんな中、怪物は辺りを暴れ回りながら徘徊し、それと同時に所構わず紫の液体を吐き散らす。
「う、うわッ」
「気を付けろ! あの液体は金属も溶かしてしまう代物じゃッ」
驚き逃げ惑う別働隊の面々に芹沢ルリ子扮する鎧天狗が注意を呼び掛ける。
そんな混乱状態の中、別働隊の一人シュウジだけが単身紫の液を撒き散らす怪物相手に攻撃を仕掛ける。
「このヤロ……ッ」
無我夢中で機関銃を乱射し、怪物を攻撃するシュウジ。
そんなシュウジに気付いた怪物は、シュウジにその不気味な顔を向けて彼目掛けて毒液を吐き放そうとする。
「あ、危ない!」
無謀にも突っ込むシュウジの行動に危機感を感じ声を上げる高木はるか。
その時であった。
「させないわっ」
上空からコレクターユイが怪物目掛けて急降下し、怪物の頭部に強烈な一撃を加えた。
更に其処へ「結に続くわよッ」「はいっ」コレクターアイとコレクターハルナの二人も続け様に怪物に攻撃を仕掛ける。
「グギャァ……」
三人の連続攻撃を喰らった怪物は痛みによる雄叫びを上げ苦しがる。
そんな怪物にコレクターズは攻撃の手を緩めず攻め続ける。
「まだまだ、こんなもんじゃないわよ。犬養博士に魁博士……二人の博士が作ってくれたコレクトスーツの性能は……!」
強い意志を感じさせる強面で、コレクターユイは怪物に攻撃を放つ。
「ウォーター!」
そう言い放った瞬間、彼女のバトンから大量の水が出現し怪物に直撃する。
「水に続いてこれを喰らいなさい! サンダー」
結に続けと御次はコレクターアイが電撃を水浸しの怪物に喰らわせる。
「ギャアアァ……!」
電撃を喰らった怪物は電撃に痺れ叫び声を上げる。
この時、戦闘の様子を見ていたウェルズが、電撃を浴びた怪物の体から水蒸気が揚がっている事に気付いた。
「ん、まさか……」
ウェルズが気付いたその時、コレクターハルナが怪物相手に攻撃を仕掛けた。
「続いて私も行きますわ。ファイアー!」
コレクターハルナの掛け声を聞いた瞬間、ウエルズが慌てて叫ぶ。
「や、止めろ春菜……!」
ウェルズが春菜を制止しようと声を掛けたが、時すでに遅く春菜は水蒸気の中に居る怪物目掛けて炎の攻撃技を放った。
コレクターハルナの炎攻撃が怪物に帯びた水蒸気に触れた瞬間、水蒸気が大爆発を起こし辺り一面が炎に包まれた。
「ぎゃああぁっ!!」「ヒィィッ!!」
突然の大爆発に驚き、身を伏せて物陰に隠れる別働隊の面々。
爆炎が治まり、皆が静かに顔を上げて辺りを見回してみると、先ほどの異形の怪物は跡形も無く消えていた。
「ひ、ひやぁ……」
先ほどの出来事に驚愕し、腰を抜かしてしまう別働隊。
「な、何が起きたの……?」
そしてコレクターズの三人も、顔を蒼褪めながら酷く動揺していた。
そんな三人にウェルズが怒鳴り散らした。
「バカやろーー! 水に電撃加えたら電気分解で酸素と水素に水が分離して、しかも其処に炎なんか直撃させたら爆発が起きて当然だろうがッ!」
『…………ああ、確かに』
顔を真っ赤にして怒鳴り散らすウェルズの言い分に、コレクターズの三人は呆然としつつも納得する。
一方、聖龍使いはミラーガールと共に敵を次々に撃破していた。
「はッ、ていやぁッ」「ッ」
聖龍使いの剣戟による斬激とミラーガールの防御を主体とする技の数々は、まさに攻防の役割を持った絶好の共闘であった。
しかし、そんな聖龍使いを始めとする聖龍隊を、陰から眺めている者達の姿が在った。
それは先ほどまでリーダー格の黒ローブと共に居た他の黒ローブ達。
「…………………………」
黒ローブ達はしばし聖龍隊の戦闘の様子を陰から見続けていたが、突然スゥっと姿を消して何処かに行ってしまった。
しかし、黒ローブ達だけでなく、別の者も実は聖龍隊の戦闘の様子を別所で眺めていた。
それは聖龍隊と異次元からの脅威が激しい戦闘を繰り広げている道路の脇に設置されているカーブミラーからだった。
「…………」
カーブミラーの向こう側、鏡の国で聖龍隊の戦闘風景を険しい顔付きで見据える一人の少年。
そんな少年に、一人の煌びやかなドレスを身に纏った女性が神妙な様子で話し掛ける。
「……キーオ」「……母上」
ドレスを身に纏った鏡の国の女王に名を呼ばれ、振り返り返事をする女王の息子キーオ。
キーオはそのまま母である女王と対話し始めた。
「母上、遂に始まりましたね……聖龍隊の、世界の命運を賭けた大いなる戦いが」
「……ええ、遂に始まってしまいましたね」
険しい表情で語るキーオに対し、心痛な面持ちで返す女王。
「小田原修司……あいつがこの二次元界に足を運んだ時点で次元の歪みが生じてしまい、更にはアイツの思想概念から生まれた反面的存在も同時に生まれ出てしまった。速急に的確な対処を取らなければ、この物語の世界はお終いだ……!」
険しく気難しい表情で語り尽くすキーオに対し、母である女王は話を返した。
「キーオ……既に戦いは始まり、最早誰にも止められない佳境にまで来てしまってます。後は修司君を始めとした聖龍隊の方々に全ての命運を委ねるしか……」
「しかし母上! もしあの蘇った悪役(ヒール)達が事実を知った事で英雄達に復讐を果たしただけに非ず、加賀美あつこに何か遭ればそれこそ次元は完全に……」
「キーオ、落ち着きなさい! 確かに不安に思うでしょうが、此処まで来てしまった以上、彼等の力を信じるしかないのです……!」
「くッ」母に言われ苦悶の表情を浮かべるキーオ。
すると彼は唐突に歩き出し、母である女王の横を通り過ぎる。
「き、キーオ、どうしたのです?」
女王が訊ねると、キーオは真剣な強面で母に返した。
「母上、俺は黙ってその状況を見ていられる程、肝の据わった男ではないのでね。俺は俺で事を運ばせる積りです」
そう言い残し、キーオは母の眼前から去って行った。
[激突! 謎の黒ローブ]
聖龍隊と異次元からの軍勢の攻防が、より一層激しさを増している中、別働隊の一人であるシュウジが負傷してしまう。
「く……ッ」負傷した膝を抑えて苦痛に喘ぐシュウジ。
「おい、大丈夫か。すぐに治療するから待っていろ」
そんな苦痛に喘ぐシュウジに声を掛けるウェルズ。
すると、そんな二人の元にナースエンジェルが駆け付ける。
「ウェルズさん、シュウジさん! 大丈夫ですか?」
「おお、ナースエンジェルか丁度良い所に。シュウジが怪我しちまった、すぐにお前の能力で治療してくれ」
「解りました、ウェルズさん下がってください」
ウェルズに頼まれたナースエンジェルは、すぐさまシュウジの怪我した個所にナースバトンから放出される光を放射し、シュウジの怪我を見事に完治させる。
「よし、これで大丈夫な筈です」
ナースエンジェルに言われ、怪我していた個所を不思議そうに触りながら、完全に傷が消えている事に驚くシュウジは彼女に礼を述べた。
「あ、ありがとう……ナースエンジェル」
「ふふ、いいえ、お安御用です」
礼を言われたナースエンジェルは微笑みながらシュウジに言葉を返した。
と、その時であった。
「フフフ……いい加減、無意味に人を治すのは止めたまえ。どうぜスグに人は傷付く生き物なのだからね」
『!』
ナースエンジェル・シュウジ・ウェルズは、突然の声に驚愕し振り向いた。
すると其処には高身長の黒ローブが一人立っていた。
「お、お前は……!」「て、てめェ……!」「あ、あなたは……!」
すぐ後ろに立っていた黒ローブの存在に驚くシュウジにウェルズ、そしてナースエンジェル。
と、三人が驚いていると、黒ローブは有無も言わずに右手に巨大な剣を出現させて、シュウジの怪我を完治させたばかりのナースエンジェルに斬り掛かった。
「ああッ!」「な、ナースエンジェル!」「あ……ッ!」
突然の出来事に戸惑うナースエンジェルに、成す術も無いウェルズとシュウジ。
だが、その時。
「させるかッ」
ナースエンジェルと黒ローブの間にデューイが割入り、黒ローブの剣を自身の剣で受け止めた。
「で、デューイ……!」
咄嗟に自分を護る為に間に入ってくれたデューイの名を呼ぶナースエンジェル。
デューイは黒ローブと剣で鍔迫り合いをしながら睨み付ける。
「な、ナースエンジェルには……指一本触れさせない……!」
険しい強面で黒ローブを睨み付けるデューイに、相手の黒ローブはその顔をフードで隠したままデューイに話し返した。
「ふふ、デューイよ。お前は何も知らないのだな……哀れな裏切り者よ」
「え……!?」
不敵に告げられる黒ローブの謎の言葉に困惑するデューイ。
すると黒ローブは咄嗟に剣でデューイの剣を弾き返し、デューイと距離を置いた。
「くっ……」「…………」
しばし睨み合うデューイと黒ローブ、傍らのナースエンジェルにシュウジとウエルズは只見守る事しかできなかった。
更に直ぐ近場では、別働隊である李・小狼と李・苺鈴の従兄妹組が迫りくる大群に悪戦苦闘していた。
「雷帝招来(らいていしょうらい)!」
剣術で敵と応戦していた小狼であったが、余りの数の多さに苦戦する故に、遂に護符を用いた戦闘をも使用し出した。
「えいっ、やっ!」
一方の苺鈴は、得意のカンフーで周囲の敵を次々に薙ぎ倒していたのだが、次第に彼女の顔には疲労の色が見え始めていた。
「はぁ、はぁ……い、一体、どれだけ倒せば良い訳なのよ……」
息を切らしながら膝に手を着いてしまう苺鈴。と、その時である。
苺鈴と小狼の前方から、まるでゴリラの様な体格をした全身黒い鉄の様な肉体を持つ巨体の怪物が迫って来たのだった。
「ま、まだ来たぞ苺鈴!」「えぇ! また!?」
迫りくる巨体の怪物相手に意識を集中させる小狼に対し、苺鈴は渋々顔を上げて態勢に入る。
「これで倒せるか……火神招来(かしんしょうらい)!」
小狼は迫りくる巨体な怪物に炎の護符を投げつけ攻撃をした。
しかし怪物は一瞬怯んだものの、そのまま突進し続け小狼と苺鈴に迫る。
「う、うわっ、小狼の護符が効かない……!?」
「く……ッ!」
攻撃を喰らっても直進して来る怪物に戸惑う苺鈴に小狼。
と、その時、迫りくる怪物が道路に点在している軽自動車の内の一台を突進しつつ体当たりで弾き飛ばし、有ろう事か弾き飛ばされた自動車は苺鈴目掛けて飛んで来たのだった。
「わッ!」「め、苺鈴!」
自分目掛けて飛んでくる車に驚愕する苺鈴に、咄嗟の事態に動揺する小狼。
その時、車が苺鈴に後一歩まで迫っていたその瞬間。
「はぁッ!」
なんと飛んで来た軽自動車をセーラージュピターが両手で受け止め、苺鈴に衝突する寸での所で停止した。
「じゅ、ジュピター……」
間一髪の所で助けられた苺鈴は唖然としていると、ジュピターが苺鈴に振り返り言葉を掛ける。
「大丈夫、苺鈴ちゃん?」「は、はい。ありがとうございます」
微笑みながら声を掛けてくれるジュピターに、苺鈴は動揺しつつも礼を返した。
そしてジュピターは受け止めた車をそのまま直進して来る怪物目掛けて投げ返した。
「そぉりゃァッ!」
力いっぱい投げ返したジュピター、しかし怪物は投げ付けられた車を片腕だけで弾き飛ばし、そのまま三人の元まで猛進してくる。
「く、来るぞ!」「ああ!」
迫りくる巨体の怪物に惑う小狼と苺鈴。
しかしジュピターだけは、生身の肉体を持つ二人の安否を気にし、単身迫りくる怪物に直進した。
「あ!」「じゅ、ジュピター!」
ジュピターの行動に愕然と成る小狼と苺鈴。
そしてジュピターは自分よりも二倍はあろうかと云う怪物とぶつかり合った。
「うおォッ!」「ギャアォ!」
怪物は大岩ほども有る拳でジュピターを殴り付けようとするが、ジュピターは持てる力の限りを出してその拳を上半身全体を使って受け止める。
「ぐ……ッ!」
何とか受け止められたのは良かったが、次第に怪物の強力(ごうりき)に押され始めるジュピター。
このままでは怪物相手に力負けしてしまうのは目に見えている。
自身の力では何れ負けてしまう事を感じ始めるジュピターに、そんな彼女を只見据えるしかできない為にもどかしく成る小狼と苺鈴。
と、ジュピターが怪物相手に苦戦し始めているその時
「シャドウ(影)!」
と辺りに響いた瞬間、ジュピターと力押ししていた怪物のその巨体に黒い触手の様なモノが纏わり付き、怪物の動きを封じた。
「こ、これは……!?」
突然目の前の怪物の動きを封じた黒い触手に驚くジュピター。
すると彼女に空から背中に翼を生やして滑空しながら木之本桜が、獅子形態のケルベロスと共に駆け付けてきた。
「さくらちゃん!」
「ジュピターさん、それに小狼くんに苺鈴ちゃん、大丈夫?」
「あ、ああ、何とか……」「う、うん……」
駆け付けるさくらの言葉に返事する小狼と苺鈴。
そんな四人が顔を見合わせているその時、さくらカードによって動きを封じられていた怪物がその強力で強引にシャドウ(影)を引き剥がしてしまった。
「あぁ!」「そんな、シャドウ(影)が引き剥がされるなんて……!」
目の前で怪物がシャドウ(影)を力任せで引き剥がしてしまった事態に愕然としてしまう苺鈴に小狼。
騒然と化すその場の面々、するとさくらが唐突にジュピターに伝えた。
「じ、ジュピターさん」「なに? さくらちゃん」
怪物と目を逸らさず睨み合うジュピターに、さくらは真剣な表情で言い伝える。
「私がカードで援護しますから、お願いしても良いですか?」
さくらの真剣な表情から醸し出される意思の強さを感じ取ったジュピターは、躊躇う事無くさくらの言葉に対して合意の念を込めて頷いた。
そしてジュピターは再び怪物相手に突進し、再び怪物と組み合った。
その瞬間、さくらは迷う事無くジュピターを対象にカードを使った。
「パワー(力)!」
するとカードの効果でジュピターは通常以上に自身の怪力が増幅し、何と自分の倍はある巨体の怪物を軽々と持ち上げ、そのまま怪物を放り投げたのである。
「うりゃあぁッ!!」
ジュピターに投げつけられた怪物は、そのまま気を失ってしまった。
怪物を放り投げたジュピターは、手を軽く叩(はた)くとさくらに礼を言った。
「ふぅ、助かったわ。ありがとうさくらちゃん」
礼を言われたさくらは満面の笑顔で微笑んだ。
と、皆が安堵していると、彼女達の目の前に黒ローブが一度に五人も一瞬で出現したのだった。
「あっ!」「く、黒ローブ……!」
突如姿を現した黒ローブに驚き警戒する苺鈴に小狼。
そしてジュピターの方も、目の前に姿を現した黒ローブに対して身を構えると、丁度そこに他のセーラー戦士達が駆け付けて来た。
「ジュピター、さくらちゃん!」「みんな無事!?」
駆け付けたセーラー戦士のマーキュリーとマーズが声を掛ける。
「み、皆さん!」「セーラー戦士、全員で駆け付けてくれたのか……!」
一堂に集まるセーラー戦士達に歓喜する苺鈴に小狼。
すると駆け付けた総勢十一人のセーラー戦士達に対し黒ローブ達は微塵の戸惑いも感じさせずに戦士達と向き合った。
「紅い稲妻(あかいいなずま)!」「蒼い竜巻(あおいたつまき)!」
集団で迫って来る敵勢に対し、強力な魔法である赤き炎から放たれる強力な電撃と水による激しい竜巻を発生させて一気に殲滅する魔法騎士(マジックナイト)の
獅堂光と龍咲海。
すると敵方の魔獣達は一斉に三人の魔法騎士たちに反撃した。
「防りの風(まもりのかぜ)」
だが敵勢の一斉攻撃は鳳凰寺風の強力な円形状の防御壁である防御魔法で全て防がれてしまう。
敵方の全ての攻撃を防ぎきった瞬間、ここぞとばかりに光と海が一斉に強力な攻撃魔法で軍勢の集団を攻めた。
「一気に行くよ海ちゃん!」「ええ、光!」
「炎の矢(ほのおのや)!」「海流の波(かいりゅうのなみ)!」
光と海の魔法が発動し、十数本の炎の矢と強力な津波が敵の集団を襲い一掃した。
そして眼前の敵が全て居なくなった事を確認した風が二人に話し掛ける。
「やりましたわね光さん、海さん」
「うん!」「この調子でドンドン攻めましょうっ」
呼び掛けに対し元気良く返事をする光と海。
だが、三人が続けて別の敵が密集している所に足を運ぼうとした、まさにその時。
「……!」「え!」「な、何ですのっ?」「!?」
目の前に突然、漆黒のローブに身を纏った一人の黒ローブが出現し、三人は驚いた。
「あ、アナタは!」「黒ローブ……!」
突如姿を現す黒ローブに驚き動揺する海と風、すると眼前の黒ローブは唐突に右手から一瞬で長剣を出現させて、その切っ先を魔法騎士たちに向けた。
「ッ……!」
剣を向けられ光は険しい顔付きで咄嗟に自身も剣を構えて黒ローブを睨みつけた。
すると黒ローブは、そんな闘志むき出しの光に対し、まるで悩み抜いている様な重い口調で話し出した。
「……何故だ……何故、私はともかく……猊下までもが、この様なサダメを与えられる……!」
「え……?」「な、何を言っているの? このローブ……」「……」
ローブの発言に困惑してしまう風に海に光の三人。
そんな最中、黒ローブはそのまま魔法騎士等と戦闘に入った。
同じ頃「ハニーブーメラン!」「ぐエッ!」「ギャぅ……!」
敵の群衆の真っ只中、一人キューティーハニーが多数の敵を必殺技のハニーブーメランで一掃していた。
と、ハニーが周囲の敵を一掃した丁度その時、彼女の背後から一人の人物が静かに歩み寄っていた。
「はっ!」後方から近づく殺気に気付いたハニーは、咄嗟に後ろを振り向いた。
するとハニーが振り向いた瞬間、背後からハニー目掛けて鞭が放たれた。
「くっ」自分目掛けて振られる鞭に、ハニーは瞬時にフルーレで弾き返した。
ハニーの後方には、鞭を弾かれ立ち尽くす一人の黒ローブが居た。
「あ……アナタ……!」
後方に立ち尽くしていた黒ローブに衝撃を受けるハニー。
すると黒ローブは再び鞭を振り上げ構えるとハニーに向かって言葉を発した。
「何故だ……何故、我々だけがこの様な運命を与えられるのだ……!」
「…………」
異様な雰囲気を発しながら呟く黒ローブの言葉に愕然としてしまうハニー。
そして眼前の黒ローブは、再び鞭を力の限り振り回してキューティーハニーと対峙するのだった。
一方、別働隊の危機を救ったコレクターズの春日結(かすがゆい)と如月春菜(きさらぎはるな)そして篠崎愛(しのざきあい)の三人は、突如眼前と立ち塞がる一人の黒ローブと睨み合っていた。
「…………」『…………』
重く苦しい空気の中、眼前の黒ローブと睨み合い続ける三人。
「な、何者なのよ……あの黒ローブ」
「一体、私達をどうする御積りなんでしょうか……?」
「此処は、一気に攻めてみる……?」
眼前の黒ローブを目の当たりにし、険しい面持ちになる結・春菜そして愛の三人。
すると眼前の黒ローブはコレクターズの三人に感情を昂らせているような口調で言い放った。
「わ、私達は……私達は……! 私達は、なんなのだ……!」
『……?』
突然の黒ローブの発言に困惑する三人に、黒ローブは更に続けて言った。
「私は、お前たちは何のために……何のために生まれてきたのだ……。ツクリモノに心は、感情は要らないのに……のに、私達が……!」
そう言った瞬間、黒ローブは自身の周辺に数体の怪物を出現させた。
『!』驚くコレクターズ。
そして現れた怪物たちは一斉にコレクターズの三人に襲いかかった。
「そりゃァっ!」「グオオオォォ……!」
しんせん組の一人、花丘イサミは迫りくる無数の敵に対し、怯む事無く果敢に龍の剣で薙ぎ倒し続けていく。
「このッ、このッ」「えいッ、えい!」
イサミに続き、同じ新撰組の月影トシと雪見ソウシの二人も、所持している武器である龍の目や龍の牙で攻撃を仕掛けていく。
しかし、肉体的には普通の人間と差して変わらない三人は次第に体力が衰えていくのを感じ始めていた。
「く、くそッ、キリが無いぜ……ッ!」「も、もうダメ……」
「諦めちゃダメ! 今ここで私達が戦わなきゃ、この怪物達は私達の家族や親友までも襲うのよ」
疲労で力尽き掛けるトシとソウシにイサミが必死に声を掛けている、まさにその時。
「……フフッ」「!」
背後から耳に入る不敵な微笑に気付いたイサミが咄嗟に振り返ってみると、其処には2メートルは在ろうかという長身の黒ローブが単身、イサミを見下ろしていたのだった。
「はッ!」
背後に何時の間にか居た黒ローブに驚愕するイサミ。
すると次の瞬間、黒ローブは自身の手から出す黒い靄を造形させて自分の半身程も在ろうかという巨大な剣を出現させた。
そして、それをイサミ目掛けて勢いよく振り下ろした。
「アッ!」
自分に振り下ろされる巨大な剣に愕然となるイサミ。
と、その時。「イサミちゃん!」
ソウシがイサミに飛び掛かり、イサミの身を救った。
「そ、ソウシ……」「イサミちゃん、大丈夫?」
呆然となっているイサミに、ソウシが声を掛けるとイサミはすかさず言葉を返した。
「う、うん……ありがとう、助かったわ」
唖然と成りながらもソウシに礼を述べるイサミ。
だがイサミに剣を振り下ろした黒ローブは、イサミとソウシを無言で見下ろし続けていた。
「こ、こいつは……!」「…………」「な、何者なんだよ。一体……!?」
無言で自分達を見下ろす黒ローブに只ならぬ威圧を感じる三人。
と、三人が眼前の黒ローブと対峙している処にメタルバードが颯爽と駆け付けて来た。
「大丈夫か、お前ら!」
颯爽と現れたメタルバードはイサミ達三人と黒ローブの間に入る。
「メタルバード!」
「へへ、安心しろ。このオレが来たからには大船に乗った積りでいろ」
声を掛けるイサミにメタルバードは笑顔でイサミ達三人に言う。
すると、そんな浮かれた様子のメタルバードを見て、黒ローブが不敵な口調でメタルバードに話し掛ける。
「フフ、久しぶりだなメタルバード。今、此処で全てを終わらせてやるぞ……!」
「ッ!?」
まるで以前にも自分と会っているような意味深な言葉を告げる黒ローブの発言に驚異してしまうメタルバード。
と、そんなメタルバードに黒ローブは自身の右手からエネルギーの球体を生み出して、それをメタルバード目掛けて有無も言わさず放った。
「うわッ!」咄嗟に放たれる光球を避けるメタルバード。
そして光球を放った黒ローブは、余裕めいた口振りでメタルバードに告げた。
「フフ、精々苦痛と絶望に塗れながら朽ち果てるが良い……! 我々の様な、元から敗北するだけの存在が味わってきた苦痛と悲感をお前達にも……!!」
この時、台詞を吐いた黒ローブの眼は憎悪と殺意に満ちた、実に悍ましい眼付きであった。
丁度その頃。
「きゃっ!」
地上に降り立ったウォーターフェアリーに、地中から無数の触手がフェアリー目掛けてその鋭い先端を突き続けていた。
「こ、この触手……一体全体、なんなの?」
自分を襲い続ける触手に悪戦苦闘しながら必死に避けていくフェアリー。
そんなフェアリーの元に、聖龍使いが駆け付けて来た。
「フェアリーよ、無事か!?」「せ、聖龍使い……!」
聖龍使いは早々にフェアリーを襲い掛かる無数の触手を聖龍剣で次々に斬り落としていった。
「この触手は、一体……」「…………」
互いに背を合わせながら、周辺の地中から出現し続ける触手に警戒する聖龍使いとウォーターフェアリーの二人。
この時、地中には謎の巨大な生命が密かに聖龍隊の面々を狙っている事に、総長である聖龍使いはもちろん他の聖龍隊の面々も気づいてはいなかった。
[対峙する黒き者と魔鏡聖女]
一方、魔境聖女ミラーガールは一人必死に周囲の敵と応戦し続けていた。
「くっ……ふぅ、まだ敵が多いわね……」
未だかつて無いほどの窮地に苦戦苦闘を感じ始めるミラーガール。
と、そんな彼女の背後から忍び寄る一人の存在に、ミラーガールは瞬時に気付いた。
「ハッ、敵……!」
長い間、聖龍隊で多くの戦いを仲間と共に経験してきたミラーガールは何時の間にか本能的に敵の感知を身に付けていたのであった。
そして彼女が後ろを振り返ると、其処には異様な雰囲気を放つ黒ローブが、単身でミラーガールに正面を向けていた。
「あ、アナタは……!」
ミラーガールが声を発すると、正面の黒ローブは口に布を押し当てたような籠った声でミラーガールに話し始めた。
「……ふふふ、ハハハ……。遂に始まっちまったな。お前達にとっては決して避けられない、戦いという名の運命(さだめ)がよ……」
この黒ローブの言葉を聞いた途端、ミラーガールはムッとした表情で黒ローブに言い返した。
「なっ、何を言ってるの! 避けられないって……そもそも、争いを惹き起こしているのはアナタ達じゃない!」
反発するミラーガールの言葉に対し、黒ローブはまりで嘲笑うかのように言葉を返した。
「クハハハハ……幸せだなぁ、何も知らないってのはよ」
「………………」
黒ローブの発言に口を噤み黙り込んでしまうミラーガール。
そんな無言のミラーガールに黒ローブは意味深気な言葉を淡々と言い続ける。
「何も知らずに、ただ娯楽の為だけに戦い争い……そして無残に傷ついていく……これを憐れと言わずに何と言う」
「…………」
「……お前は考えた事は無いか? 自分たちの周りだけで様々な事件が頻繁に起こる、その異様なまでの日常に……。そして周りの時間(とき)が普通とは違う事実に……」
「…………」
「何故、自分なのか? 何故、自分達が戦い、そして変身できるように成ったのか……疑問に思った事は無いか」
「……」
話を聞いている内に、ミラーガールの表情は険しく成っていく。
その時、ミラーガールと真正面から向き合っていた黒ローブは在る事に気付いた。
それはミラーガールの鏡のように透き通った美しい瞳に映りこむ自分の姿だった。
鏡の如き瞳に映る自分の姿を見た黒ローブは歯を強く噛み合わせ、歯軋りを軽く鳴らした。
そして次の瞬間、黒ローブは一瞬で自身の右手に剣を出現させ、そして一気にミラーガールに直進した。
「わッ!」
突如自分に駈け出して来た黒ローブに驚くミラーガールは、咄嗟に左腕に装着しているミラーシールドから一本のミラーソードを瞬時に取り出し、そのミラーソードで黒ローブが振り翳してきた剣を何とか受け止めて難を逃れた。
必死に黒ローブの剣を受け止め、そして鍔迫り合いをするミラーガールであったが、黒ローブの異常なまでの腕力に、次第に押され始めていた。
「ッ……!」
顔を強張らせて何とか状況を打破しようと必死になるミラーガールに、黒ローブは言葉を投げる。
「……気に入らねえ……お前のその瞳(め)、気に入らねえ……!!」
「……!」
黒ローブが投げ掛ける言葉に異様なまでの真情を感じ取り、愕然と成るミラーガール。
そして黒ローブは押し合っていたミラーガールの剣を弾き、一旦後方に退いた。
「…………」「…………」
異様な雰囲気を放つ黒ローブを見て言葉を無くすミラーガールに対し、肩から息をする黒ローブは無言で目線を下の方に向けていた。
徐に顔を上げた黒ローブはミラーガールに上目で睨み付けると、再び彼女目掛けて攻撃を仕掛ける。
「ッ!」
再び襲ってくる黒ローブに一瞬驚くミラーガールであったが、意を決して今度は冷静にミラーソードを迫りくる黒ローブに向けて攻撃に備える。
そして黒ローブは真正面からミラーガールに斬り掛かったが、ミラーガールは縦一直に斬り付けてくる黒ローブの剣をミラーソードで瞬時に受け止め制止する。
「ぐ……ッ」
必死になって黒ローブの剣を受け止め防ぐミラーガール。
その時、剣を受け止め続けるミラーガールは、ふと黒ローブに訊ねてみた。
「あ、アナタ……闇人(やみびと)って、名前だったわよね……!」
「アア、そうだが」ミラーガールを睨み付けながら眼前の黒ローブ闇人は答える。
ミラーガールはそのまま続けて闇人に問い質していく。
「なんで……なんで……こんな事をするのよ……! 平和な世界を……みんなが仲良く過ごしている世界を、なんで壊そうとするの……!?」
すると闇人は平然と、威圧感溢れる口調でミラーガールに話し返した。
「……なんでかって? 簡単だよ。この俺が単に…………破壊しかできない存在だからな。そう、お前達が単に変身という名の異形でしかないように……な!」
「! ……あ、アナタ達はいったい何者なの……?」
闇人の台詞に驚きつつ再度訊ねるミラーガール、すると闇人は不気味に言葉を吐いた。
「知りたいか……? だったら、直接聞いてみろ」
突然、闇人は攻撃の手を止めミラーガールと間合いを空けると剣を所持している右手とは逆の左手を顔の高さまで上げ、そして指を鳴らした。
「?」指を鳴らした闇人の行為に不思議に思うミラーガール。
だが、その時であった。
別働隊とナースエンジェル組の戦闘の最中
「っ? ど、どこ行った!」「え?」「き、消えやがった!」
突如デューイと剣を交えていた黒ローブが目の前から靄の如く消え、剣を交えていたデューイはもちろんナースエンジェルと星夜も驚愕する。
「あ、あの黒いのは……!?」「ッ……!」「……!」
忽然と姿を消した黒ローブに驚きを隠せないシュウジに言葉を失う高木はるかとウェルズ。
同じ頃。
「あ、あれ?」「き、消えちゃった……」「……?」
目の前で一瞬に姿を消してしまった五人の黒ローブを目の当たりにして一驚してしまうセーラームーンやヴィーナスなどのセーラー戦士達。
「あれ? あの黒い人たち消えちゃったよ?」「な、何がどうして……」「……」
そしてセーラー戦士達と五人の黒ローブ達の接戦を間近で見ていた木之元桜と李・小狼、苺鈴の三人も突然の出来事に愕然とした。
更に――
「あ、あれ?」「消えてしまいましたわ」「ど、どこに行っちゃったんだろう……」
魔法騎士(マジックナイト)の海、風、光の前からも、彼女達と対峙していた黒ローブが姿を消していた。
「! 何処に……!?」
キューティーハニーの目の前で、突然消えた黒ローブにハニーは辺りを見回した。
「え……!?」「き、消えた……!」「……!?」
同じくコレクターズの結・愛・春菜の前からも、彼女達と戦っていた黒ローブが忽然と姿を消した。
「ん!? 何処行った?」「え……?」「き、消えた……!」「……!」
しんせん組の目の前に現れた黒ローブと戦闘中であったメタルバード、彼らの目の前からも黒ローブが姿を消して、思わず動揺するメタルバードとイサミ達。
「あれ……? 攻撃が止みましたわ」「む、どうしたんじゃ……!」
地中からの触手による攻撃が突然治まり、困惑するウォーターフェアリーと未だに警戒する聖龍使い。
そして場は戻り、向き合うミラーガールと闇人の周囲に、突如他の聖龍隊士達と戦い忽然と姿を消した他の黒ローブ達が現れた。
「!」
まるで取り囲むように自分の周りに出現した十人の黒ローブ達に驚くミラーガール。
そして闇人は指を鳴らした左手を再び腰の辺りまで下げると、周囲の黒ローブ達に告げた。
「……ヤレ!」
闇人が命じた瞬間、黒ローブ達は一斉にミラーガールを攻撃し始めた。
「あ!」
一斉に襲い掛かってくる黒ローブ達に驚愕するミラーガールは、相手の黒ローブ達の攻撃を寸での処で回避していく。
ある者は剣で斬りかかり、ある者は手の平からエネルギーの球体を放って、ある者は蹴り技などの肉弾戦で、ミラーガールを容赦なく攻撃し続ける。
ミラーガールは必死に敵の攻撃を避けていったが、次の瞬間、今度は地面から無数の触手が出現し、ミラーガール目掛けて触手が攻撃をしてきた。
「えっ、な、何!?」
周囲の黒ローブ達の攻撃に続いて地面から出現してくる無数の触手による攻撃に深く動揺するミラーガール。
彼女は懸命にミラー・シールドで黒ローブ達の攻撃を跳ね返したり、地中から出てくる触手をミラー・ソードで薙ぎ払ったりして、その場を何とか凌いだ。
しかし元々、攻撃に特化したタイプのヒロインでないミラーガールにとって、一度にしかも複数の敵の相手をするのは至難の技だった。
次第にミラーガールの息が上がり、彼女は肩から息をするまでに追い詰められていった。
「はぁ……はぁ……」
苦境に立たされるミラーガールではあったが、周囲の黒ローブ達は攻撃の手を緩めようとはせず容赦なくミラーガールを攻め続けた。
更に地中から攻撃してくる触手も、ミラーガール目掛けてその鋭い先端の触手を放ち、彼女の体を貫こうとする。
「は、はぁ……(このままじゃ……!)」
止まる事のない攻撃に疲労を感じ始めるミラーガールは困惑していた。
そんなミラーガールの疲労の色に染まる表情を見た黒ローブ達は、口々に彼女に向って言葉を呟き始めた。
「……お前が、お前が……」
「オマエの存在が我々を……」
「私達に、苦渋の運命を与えた……!」
「私達が、こんなに苦しむ事に成ったのは……」
「全て、お前の存在が招いた……結果……!」
「……!?」
黒ローブ達が呟く言葉の数々に意味が解らず更に困惑してしまうミラーガール。
そして黒ローブ達は弱っているミラーガールの周りを取り囲み、完全に逃げ場を奪った。
『…………』「…………」
無言でミラーガールを囲む黒ローブ達に対し、表情を強張らせて自身の危機を感じ取るミラーガール。
そして黒ローブ達は一気にミラーガールに止めをさそうとする。
「ッ……!」もう駄目だと思い感じるミラーガール。
彼女が追い詰められた、まさにその時だった。
[駆け付ける面々]
黒ローブ達がミラーガールに一斉攻撃で止めを刺そうとしたその時であった。
突如、何処からともなく稲光の光弾が飛来し、黒ローブ達の足元に着弾。意表を突かれたローブ達はミラーガールへの攻撃の手を止めた。
「え?」
突如飛んできた光弾に助けられ驚くミラーガール。
すると其処に、舞い上がる砂煙の中から一人の若い男の声が聞こえてきた。
「はっはっは、いや~~久方ぶりに刀を抜いたから腕が鈍っちゃったよ。後もう一歩の処で当てられたのになぁ~~」
何処となく調子の良い物言いでその男は砂煙の中からミラーガールに歩み寄り、その全貌を現した。
「あ、貴方は!」
ミラーガールは自分の目の前に姿を現した男を見て軽く驚いた。
その男はスーツ姿で銀色の天狗の面が特徴的な、あの黒天狗党の田能久健こと銀天狗本人であった。
「ぎ、銀天狗さん?」
突如自分の前にその姿を現した銀天狗に驚くミラーガールに、銀天狗はいつもの調子の良い口調で返した。
「いや~~久しぶりだねミラーガール。はっは、それにしても間に合って良かったよ」
「も、もしかして今の光の弾は銀天狗さんの……」
ミラーガールが訊ねると銀天狗は調子よく答えた。
「はっは、そうだよ。それにしても危なかったね。ボクがあとちょっと遅かったらミラーガール、君は其処の黒い連中に袋叩きに遭っていたよ」
銀天狗が軽く笑いながらミラーガールに語っていると、攻撃を邪魔された黒ローブ達が妨害してきた銀天狗に狙いを移した。
そして十人の内の一人が銀天狗に攻撃を仕掛けようとしたその瞬間、攻撃に転じようとしていた黒ローブにバズーカ砲が撃ち込まれた。
「え、なに?」
突然のバズーカ砲による轟音に驚くミラーガール。
すると其処にバズーカ砲などの銃火器を装備した多数のカラス天の姿が在った。
「銀天狗様ッ」「お身体、大丈夫ですか?」
「はは、みんなも到着したようだね」
声を掛けてくるカラス天狗達に機嫌良く返事する銀天狗。
だがその時、楽しげに会話をしている銀天狗とカラス天狗達に、黒ローブ達は再度攻撃を仕掛けようとした。
その瞬間、黒ローブ達に何処からともなく再び光の弾が飛来してきて、ローブ達の攻撃の手を阻止した。
「え、今度は何?」
再び驚くミラーガールが光弾が飛んで来た方に目を向けると、其処には懐かしい三人組が立っていた。
その三人を見たミラーガールは感極まり、名を口にした。
「あ……す、スターライツ!」
現れたのは己の使命を果たし故郷の星に帰還していたスターライツのファイター・メイカー・ヒーラーの三人であった。
「ミラーガール!」「大丈夫でしたか?」「私達が来たからにはもう大丈夫よ」
三人は颯爽とミラーガールに駆け寄ると笑顔で彼女に言葉を掛ける。
するとそんな三人組に美系の若い男が歩み寄って話しかけて来た。
「ふふ、貴女達も随分と腕が立つようですね。頼もしい」
「え、貴方……!」
若い男を見て三度ミラーガールは驚き、その男の名を叫んだ。
「ゼラさん!?」
その若い美系の男はプリンスゼラ、又の名を黄昏のゼラと言い、あの豹の爪(パンサークロー)の首相であるパンサーゾラの息子であった。
プリンスゼラはミラーガールに微笑みを向けていると、そのゼラの後ろから今度は別の若い青年がミラーガールの方へと歩み寄ってきた。
「おやおや。僕達の他にもこんなに駆け付けてくれる人が居たんだね」
その青年の顔を見たミラーガールは喜びに満ちた顔で名を叫ぶ。
「か、加納さん!」
ゼラに続き姿を見せたのは、既に婚約者であるヘレナ女王の居るクイーン・アースに帰還を果たしていた加納望(かのう のぞむ)ことカノン本人であった。
「久しぶりだねミラーガール……それにしても、一人の女の子相手に集団で襲い掛かるなんて」
加納は笑顔でミラーガールに声を掛けると、そのミラーガール相手に集団で襲っていた黒ローブ達を見て言葉を吐いた。
そんな、その場に駆け付けて来てくれた面々に、目を丸くしてミラーガールが驚いているその時。
「銀天狗さーーん!」「遅くなってスイマセン!」
「おおっ、君達も到着したかい」
慌ててその場に走ってきたのは黒天狗党の香港支部に所属しているニイハオ姉妹(シスターズ)のジャスミン・タピオカ・ライチの三姉妹、銀天狗は三人の姿を見て調子よく言葉を返した。
更に其処へ、三姉妹の後ろから聖龍別働隊に居る芹沢ルリ子や銀天狗以外の天狗四天王である東上別府高丸ことからくり天狗と印堂陽ことゴールデン天狗の二人が三姉妹に続いて大型の移動型兵器に搭乗しながら参上した。
「おーーい銀天狗。新たに改良を施した黒天狗党屈指のレーザー兵器を持って来てやったぞ」
「これで怪物共も一掃できるぞ」
「はは、御苦労二人とも」
兵器に搭乗してやってきた二人に銀天狗は機嫌よく言葉を返す。
「…………………………」
続々と駆け付けてくる知り合いに驚き唖然としてしまうミラーガール。
しかし、そんな現状を見ていた黒ローブ達は再度ミラーガールに、そして駆け付けて来た他の者達にも攻撃してきた。
「あ!」「ま、また攻撃してきたわッ」
攻撃に気付いたヒーラーとファイターが声を上げたその時、突然黒ローブ達が放った技が何かの光によって弾かれ消滅した。
「ッ……?」「い、今のは、一体だれが……!?」
弾くと同時に消滅させてしまった謎の光に驚き戸惑うゼラと加納。
と、その時。驚いている一同に話し掛ける声が皆の耳に入った。
「君達、もう少し気を引き締めて戦わないと」
『ッ』
皆が声の方に目を向けると、其処に居たのは小柄な体格の白い布を羽織った一人の人物であった。
「おやおや。ボクは何処の誰だい? こんな所に居ちゃ危険だよ。早くパパママの所に戻りなさい」
見た目的に少年であると思い込んだ銀天狗が優しく話しかけると、その人物は無表情な顔を変えずに銀天狗に話し返した。
「大丈夫。私も君たち同様、かの少年に呼ばれて聖龍隊を援助するよう言われて駆け付けて来たんだ」
「え?」
少年の様に見える若い人物の台詞に唖然としてしまう銀天狗。
と、その時
「銀色の人、そんな心配は無用ですよ」
「クレフはセフィーロでも最高位の導師(グル)。自分の身は護れるし、あんた等や聖龍隊を手助けする事だってできる」
と銀天狗に話し掛ける二人の青年が、銀天狗を始めとするミラーガール達の目の前に現れた。
「あ、あなた方は……?」
初めてみる三人にミラーガールが訊ねると、まず最初に小柄な体格の人物がミラーガールに名乗った。
「ああ、失礼。御初に御目に掛かる。私の名はクレフ、セフィーロでグルと呼ばれる魔導師だ」
「え! セフィーロって、確か光さん達が行った事のある異世界の……!」
導師(グル)であるクレフの言葉にミラーガールが驚いていると、そんな彼女に話し語りながら後も二人も名乗り始めた。
「ああそうだよ、確かミラーガール……だったよね君。俺の名前はフェリオ。クレフ同様、俺も風たち魔法騎士(マジックナイト)や君たち聖龍隊を助けに来たんだぜ」
「私の名はランティスだ。師であるクレフはもちろん、このフェリオ共々セフィーロより馳せ参じた所存。以後、宜しく御願い致す」
機嫌良く笑顔でミラーガールに名を名乗る頬に傷のある緑髪の青年フェリオと、礼儀正しく自己紹介するクレフの弟子で黒髪の落ち着いた感じのする男性ランティス。
二人がミラーガールを始めとするその場の皆に己が名前を名乗り終えたその時、ミラーガールの危機を察知した他の聖龍隊メンバーが総出で現場に駆け付けて来た。
「ミラーガールッ!」「大丈夫!?」
慌てて駆け付ける面々の中の二人、セーラームーンとヴィーナスがミラーガールに大声を掛ける。
「みんな……!」
駆け付けて来てくれる仲間の姿を見て、ミラーガールの心は自然と嬉々に満ちた。
そして安堵するミラーガールの元に聖龍使いが真っ先に駆け寄り、彼女に声を掛ける。
「ミラーガール、無事であったか!」「聖龍使い……!」
聖龍使いの姿を間近で見た途端、ミラーガールは感極まって危うく瞳から涙を零しそうになった。
「あ、あれ? なんか……」「ふ、増えているわね」
ミラーガールの周辺に居る大勢の人々に軽く戸惑うジュピターとマーキュリー。
するとセーラームーンが最初に、自分達と見知っているスターライツの一人ファイターと面々と話し始めた。
「わぁっ、大気久しぶり! あ、今はファイターだったわよね」
「ふふ、相も変わらず元気そうで何よりね、うさぎ」
久々の再会に喜ぶセーラームーンに対し、ファイターの方も嬉しそうにセーラームーンと会話をする。
「ど、どうしたんだ君たち。確か故郷の星に帰っていたんじゃなかったのかい?」
セーラーウラヌスが訊ねると、メイカーがウラヌスに訳を話した。
「いや何。この地球で暴れまわっている異世界からの脅威が宇宙規模に大変な事態に発展しかねないからって、私達は前々からこの問題に着手していたのよ」
メイカーに続き、ヒーラーも周囲の聖龍隊の面々に話し始めた。
「ええ、私達は私達で異次元空間から来襲してくるこの怪物共の対処に駈けずり回っていたんだけど、遂さっきアニメタウンであなた達聖龍隊が危なくなっているって知らせを聞かされて、慌ててやって来たのよ」
「え、聞かされたって……」
ヒーラーの語った聞かされたの言葉に反応するネプチューン。
と、スターライツ以外の面々も聖龍隊のメンバーに事情を話し始めた。
「ええ、彼女たち同様、私も彼にアナタ達が追い詰められていると知らされましてね。慌てて駆け付けて来たんですよ」
「駆け付けたって……私達のために?」
プリンスゼラの言葉に内心驚いてしまうキューティーハニー。
「ああ、僕もゼラと同じだ。ナースエンジェルや星夜くん、それにデューイ達が危うくなっているから早く応援に行くようにと託されて」
「え? お、応援に……」
キューティーハニー同様、相手の加納の話を聞いて驚き困惑してしまうナースエンジェル。
「だ、誰がみんなを呼んだんだ?」
「いったい、誰が皆さんに私達の危険を知らせてくれたんですか?」
話を聞き驚くトシに駆け付けた面々に訊ねるイサミ、すると駆け付けた内の一人でもある銀天狗がイサミの質問に答えた。
「私達、黒天狗党には余り馴染みがない少年だったけどね。でも君たちの危機を、特にミラーガール、君の危険を必死に伝えて来てくれた少年の話を聞いて、私が新生黒天狗党を引き連れて此処まで駆けつけて来たって訳さ」
「しょ、少年……!?」
ソウシが困惑していると、黒天狗党のメンバーであるニイハオ姉妹(シスターズ)が話し始めた。
「確か、青と白が特徴的なコスチュームを着こなしていたわね」
「そうそう、まるでミラーガールのコスチュームを少年バージョンにしたような、カッコいい服で……」
「それに、ミラーガールとは真逆で盾じゃなく、とっても綺麗で青白い剣を腰に下げていたよ」
「ミラーガールと似たコスチュームに……!」
「盾でなく、剣だと……!」
ニイハオ姉妹(シスターズ)のジャスミン・タピオカ・ライチの話す少年の容姿に驚く様子を見せるタキシード仮面と早見青児。
すると立て続けに今度は魔法騎士の三人が懐かしそうに駆け付けて来てくれた三人と会話を始めた。
「き、来てくれたんだ……! ランティス」
「ああ……久しぶりだね、光」
目を輝かせて話をする光に微笑みを放ちながら話し返すランティス。
「クレフ! 貴方達もこっちの世界に来れたの?」
「まぁ、初めての試みではあったが、何とか無事に着けたから良かった」
自分達の世界に来れた事に驚きながら訊ねる海を前に、平然と冷静に答えるクレフ。
「来てくれたんですか、フェリオ」
「ああ、風たちが危なくなっているから急いでくれって、ある少年に言い寄られてね」
歓喜に満ちる風に、フェリオは穏やかな笑みを向けながら話した。
「少年って……さっきからアンタ等が言っている少年って、誰の事だよ?」
困惑するシュウジが駆け付けて来た一同に問い質すと、銀天狗がそれに答えた。
「お、君がニューフェイスで小田原修司と同名で有名なシュウジって青年だね。その少年は確か……あ、そうだ。鏡の騎士と名乗っていたね」
「えっ、鏡の騎士……!」
ミラーガールが驚いていると、スターライツのメイカーが落ち着いた面持ちで皆に言った。
「ほら、以前にも何度か会っているでしょ。ミラーナイトの姿桐男(すがたきりお)君よ」
「え、キーオが!?」
メイカーの発した言葉に驚くミラーガール。
そしてミラーガールに続きメタルバード達も口々に言った。
「き、キーオがお前達を呼んでくれたってのか……?」
「キーオくんが……!」「…………」
事実を知り驚くミスティーハニーに感激の余り言葉を失くすセーラームーン。
そして他の面々も口々に語り始めた。
「ええ、彼が突然私の前に現れては、急ぎ聖龍隊の力と成るよう言い寄って来まして」
「驚いた事に、僕が帰還していたクイーン・アースにも彼がやって来たんだ」
「私達の世界であるセフィーロにもミラーナイトはやって来られたんだが、一体どうやって来たのか」
ゼラ、加納、クレフの発言に唖然としてしまう聖龍隊の一同。
「キーオが……ミラーナイトが、わざわざ」
多くの援軍を招集してくれたミラーナイトの行為に驚きつつも感謝の心で一杯のジュピターキッド。
そんな中、聖龍使いは一人何かを想い更けているのか沈黙を保っていた。
聖龍隊が駆け付けて来てくれた銀天狗率いるニイハオ姉妹(シスターズ)を加えた新生黒天狗党、プリンスゼラにクイーン・アースから遠路遥々駆け付けてくれた加納望、故郷の星から颯爽と駆け付けたスターライツ、そしてセフィーロから来たクレフ・フェリオ・ランティスの面々と談話をしているその時、その様子をジッと見ていた黒ローブ達、その内の一人であるリーダー格の闇人が指を鳴らした。
と、次の瞬間。上空に無数の黒い穴が出現し始めた。
「な、なんだアレは!?」
上空に突如として現れる黒き穴に激しく驚異する銀天狗、すると現れた黒い穴を見てクレフが冷静に語り始めた。
「あれは、空間の歪みだ。あの黒いローブの者、どうやら空間を捻じ曲げたり開いたりする術を持っているようだ」
とクレフが冷静に語っているその時、通信機からウッズが慌てた様子で聖龍隊に話し掛けて来た。
「皆さん、皆さん!」「どうしたんじゃウッズ!」
聖龍使いが問い返すと、ウッズはそのまま聖龍隊の皆に語り始めた。
「今、レーダーで捕捉致しましたが、先ほどよりも多数の空間の歪みがアニメタウン上空に出現しています! それと同時に多数の未確認生命の反応も感知いたしました!」
「なぬ……!」
聖龍使いが驚いていると、更に其処へウッズと共に聖龍隊の補佐をしている犬養 基継(いぬかい もとつぐ)博士が続けて通話してきた。
「し、しかも……! それと同時に世界中で猛威を振るっていた異次元からの軍勢が次々にその反応を消して姿を晦ましている」
「何ですって!」「え?」「そ、それって……!?」
犬養博士の言葉に驚愕するコレクターアイに動揺を見せるコレクターハルナとコレクターユイ。
すると犬養博士に続いて、同じく聖龍隊の補佐を務めている花丘魁が同じく通信機を通して聖龍隊に神妙な口振りで話した。
「どうやら……世界中で今、猛威を振るっている怪物や怪人たちが異次元の歪みを通って、君たちの処に向かっているみたいだ」
「そ、そんな……!」「世界中のバケモノ共が、此処に!?」「そんな……」
父親の魁に告げられ愕然と成るイサミに困惑するトシ、そして顔を蒼褪めさせるソウシ。
現に世界中で牙を立て、猛威を存分に振るっていた異次元からの脅威と呼ばれる怪物や怪人達は、次々にその姿を世界の名立たる国や地方から消していってた。
「ど……どうした? なぜ急に怪物達が消えたんだ……?」
突如として己の前はもちろんメトロポリスからもその姿を消した怪物達に意味が解らず呆然としてしまうスーパーマン。
「これはどう云う事だ? ……アルフレッド、奴らの反応は?」
「はいブルース様、どうやら怪物達は完全にゴッサムから居なくなってしまわれた様です」
「どう云う事だ……? 先ほどまで奴らの方が圧倒的に優勢だったというのに……」
突然として消えてしまった怪物達に言い知れぬ不安を感じてしまうバットマン、彼が自分に仕えてくれている執事のアルフレッドに状況を確認して貰うのだが、バットマンが護るゴッサムシティから完全に怪物達が消えてしまったという。
優勢だった敵が突如としてその身を消してしまった事実に思わず考え込んでしまうバットマンであった。
更に摩天楼犇めくニューヨークで。
「……どうしたのだ? 敵が一斉に異次元空間の裂け目に消えていった」
「何がどうなっているんだ?」
大軍勢の異次元軍と交戦の最中、突然敵側が一斉に異次元の裂け目に飛び込み姿を消した事に戸惑うアベンジャーズのキャプテン・アメリカにアイアンマン。
「おやおや? 連中あっという間に行っちゃったよ」
敵が自分達の目の前から消え去ってしまった事に呆気に取られてしまうスパイダーマン。
「なんだよ。もう少しで500になってたとこなのによ」
もう一歩で自身が斬り倒した敵の数が五百に成っていた戦歴がダメに成ってしまい残念がるウルヴァリン。
そしてアニメタウン上空。
空にはもちろん、地上にすら異次元からの裂け目である黒い穴が出現し続け、其処から無数の怪人怪物が一斉に飛び出すと、まっしぐらに聖龍隊に向かわせた。
「来るぞッ」
自分達に敵意を剥き出しにして向かってくる軍勢に声を上げるメタルバード。
「よし、皆の者。戦闘に備えるのじゃ!」
そして聖龍使いは自身に付いて来てくれている聖龍隊の仲間に彼らを助けるために態々駆け付けて来てくれた面々に呼び掛けると、彼らは全員敵との戦闘に意識を集中させるのであった。
[増していく戦闘]
魔境騎士ミラーナイトの呼びかけに応じ、聖龍隊の助けに成りに来たスターライツ、クイーン・アースのカノン、プリンスゼラ、銀天狗率いるゴールデン天狗にからくり天狗そしてジャスミン・タピオカ・ライチ達ニイハオ姉妹(シスターズ)を始めとした新生黒天狗党、そして異世界セフィーロから遥々駆け付けて来てくれたクレフ・フェリオ・そしてランティスの三人。聖龍隊は彼等と共に、更に世界中の勢力を呼び出し戦力を増大された敵軍と交戦を再開した。
「はいッ」「そりゃッ」「えぇいっ」
黒天狗党の傘下、ニイハオ姉妹(シスターズ)のジャスミン・タピオカ・ライチは迫りくる敵を得意の拳法で次々に打ち倒していった。
「食らいたまえッ」
銀天狗も自身が編み出した武術 電光流を用いて光弾を放っては怪人達を次々に打ち負かしていく。
「ふんッ」「はぁッ」
プリンスゼラにカノンの二人も、超能力と剣術を巧みに使い分け、敵を次から次へと負かしていく。
「これ以上好き勝手はさせないわッ」「喰らいなさい!」「ええいっ」
自分達に牙を向ける怪物相手に微動も怯まず攻撃を仕掛けていくスターライツのファイター・メイカーそしてヒーラーの三人。
「わっはっは。怪物共め、これでも喰らうがよい」
そう自信満々に言葉を発しながらゴールデン天狗はレーザー兵器の起動スイッチを押し、敵勢目掛けて強力なレーザーを放出、敵陣は一気に消滅してしまった。
「はははッ、やったなゴールデン天狗よ」「うむッ、からくり天狗」
そしてゴールデン天狗と共にレーザー兵器に同乗しているからくり天狗が、レーザーにより敵を大量に消し去った事を喜び声を掛けると、ゴールデン天狗も嬉しそうに返事をする。
「…………ッ」
セフィーロから駆け付けて来たクレフは、空中に魔法陣を出現させ其処から黒紫色の魔力が籠った光を放出させ、敵を攻撃していく。
「えいッ!」「はッ!」
フェリオとランティスもクレフに続き周囲の敵を前に躊躇う事無く討伐していった。
すると其処へウッズが慌てた様子で皆に通信で呼び掛けた。
「皆さん! 先程とは別に新たな異次元空間の歪みを確認、歪みから更に多数の敵影を捉えました!」
先程の歪みとは別に、新たな空間の歪みが発生し、その裂け目から更なる敵が出現していると聖龍隊の一同に伝えるウッズ。
更にウッズは切羽詰まった様子で、高性能コンピューターの画面を真剣な表情で見据えながらその前でキーボードを高速でタイピングしつつ皆に伝える。
「更に多数の敵増援を確認!」
するとそんな慌てた様子のウッズに、聖龍使いが平然と訊ねる。
「……どれくらいの数の敵が増えたのじゃ?」
ウッズはこれに答えた。
「想像を超える敵の群れですよ。最初に皆様が倒していた十万の軍勢に続いて更に十万、そして二十と……増える一方です」
このウッズの釈明に対し、聖龍使いは平然とウッズや周囲の仲間達に告げた。
「成るほど……たったそれだけか」『!!』
聖龍使いの発した一言に驚愕するその場の一同。
「おいおい、たったそれだけって良く言えるよなオイッ」
発言に思わず混乱してしまうメタルバードが言い寄ると、聖龍使いは漆黒の瞳に力強い意志を感じさせながら言葉を返した。
「何を言うておる、今のワシ等にはかつて無いほどの戦力が増しているのじゃ。今こそ皆が一丸となって共に戦えば、必ず勝機は見えてこようぞ」
『…………』
聖龍使いの力強い言動に、周りの者は皆唖然としてしまいつつ心の底から自然と熱い想いが込み上げてきた。
そして聖龍隊は再び、世界中から終結し大軍勢と化した異次元からの脅威と激しい戦闘を繰り広げた。
聖龍隊と異次元から来襲する怪物達が激しい攻防を繰り広げる中、聖龍使いは自然とウエルズ率いる別働隊の面々と共闘していた。
「地表裂(ちひょうれつ)!」
聖龍使いは聖龍剣を地面に突き刺し、地面に亀裂を発生させて敵を攻撃していく。
「ひゅう、それにしてもすげェな……あんた」
聖龍使いと共に戦っている別働隊の一人であるシュウジが、巨大な亀裂を発生させて敵を一網打尽に攻撃する聖龍使いを見て言葉を告げる。
そんなシュウジの言葉に聖龍使いは眼光を鈍く光らせながら返した。
「なに、この鎧と刀に宿っている大自然の力と常日頃から行っている鍛錬の賜じゃ」
この言葉を聞いたシュウジは思わず
「ふ~~ん、それじゃ」「……?」
「聖龍使いの鎧を脱いだら、お前には何が残るんだ?」
と、聖龍使いに訊ねてみた。すると聖龍使いは平然とシュウジに答えてみせた。
「う~~ん、金持ちに街の権力者、そして人脈の広い3枚目な男だ」
「へ、へぇ……」
聖龍使いの発言に思わず呆然としてしまうシュウジ。
そんな中、上空を飛来していた飛行型のクリーチャーが前触れもなく地上の聖龍使い達を攻撃してきた。
「うわぁ!」「きゃっ!」
あるクリーチャーは光線を放ち、あるクリーチャーは鋼の様に堅い体を活かしてそのまま上空から地上まで物凄い速さで落下して、地上で応戦している聖龍隊の面々に攻撃していく。
激しい攻撃に怯んでしまうばかりの一同に対し、聖龍使いは愛用の日本刀 聖龍剣を天に向かって突き揚げるとそのまま唱えた。
「雷光(らいこう)!」
すると天空より多数の雷が突如発生し、まるで引き寄せられるように聖龍剣に降り注いだ。
更に降り注ぐ雷は、聖龍剣に引き寄せられるのと同時に上空に居た無数の敵の体を貫いて、その敵を焼き焦がした。
聖龍使いの刀に落ちた雷に同時に貫かれた敵は消滅し、まだ上空に残っている敵に対して聖龍使いは刀に溜めていた電撃を今度は上空に向かって放った。
「グギャアッ!」「ギャアァアオ」
上空のクリーチャー達は奇声を上げながら黒焦げに成り消滅した。
「す……すごい……!」「これが、この世界の剣士の実力なのか……!」
初めて目の当たりにした聖龍使いの力に、異世界から来たクレフは愕然とし、剣士であるランティスは衝撃を受けた。
と、その時。聖龍使いの目に、背後からナースエンジェルを襲い掛かろうとする怪物の姿が入った。
聖龍使いは咄嗟に駆け出し、ナースエンジェルに襲い掛かろうとしている怪物のその濃い緑色をした異質な体を袈裟斬りにした。
「ぎゃああぁ」「!」
斬り裂かれた緑色の怪物は、血の様に赤い大きな瞳を見開いて絶叫しつつ消滅し、その怪物の断末魔を己の背後から聞いてナースエンジェルは驚いた。
そして消滅していく怪物を目にしながらナースエンジェルは聖龍使いに礼を言った。
「あ、ありがとうございます。聖龍使い」
「気をつけるのじゃ。奴らは何処から攻撃してくるか解らぬぞ」
礼を言うナースエンジェルに対し聖龍使いは険しい声色で返した。
更にその時、地上に降りて戦っていたウォーター・フェアリーとちせ、更には木之元桜の眼前に、まるで水晶の様に透き通った巨体の人型の怪物が姿を現した。
小型トラック並みに巨大なその怪物の体からは、肌に突き刺さる程の強い冷気が放たれていた。
「こ、この怪物……!」「まさか、氷でできているの……!?」
目の前の怪物を見て動揺するちせとさくら、とその時だった。
「ウッ……!」
突然フェアリーが両肩を抱き締め震え出した。
「ふぇ、フェアリー……?」「アプリちゃん?」
突如自身の両肩を抱き締め震い出すフェアリーに困惑するちせとさくら。
するとフェアリーは震える身体で二人に言った。
「ご、ゴメンなさい……身体が急に、寒くて……それに、痛い……!」
「えっ?」「た、大変! アプリちゃんは寒いのが大の苦手だった」
寒さに極端に弱い水の妖精であるアプリコットことウォーター・フェアリーの痛感なる表情と言葉に驚くちせとさくら。
そして氷の怪物はその巨体を、のそりのそりと歩ませて三人に迫る。
寒さで身体を思うように動かせないフェアリーの傍らから動けないでいるちせとさくらは意を決して怪物に攻撃をする。
「えいっ」
ちせは背中の機械部分から光線を放って攻撃。
「ファイアリー(火)!」
さくらはカードのファイアリー(THE FIREY)「火」で激しい炎を出現させ、ちせに続いて怪物に攻撃を加えていく。
光線と激炎、二重の攻撃を喰らって怪物は少しばかり後退りする。
が、しかし。怪物は後退りする足を止め、足腰に力を入れて踏ん張って見せる。
「え?」「! ……」
攻撃を喰らっても足を踏ん張り立ち止まる怪物を見て動揺するさくらとちせ。
そして怪物はちせの光線さくらの火炎攻撃を直撃しつつ、怪物は眼前の三人に歩み迫ってくる。
少しずつ自分達に迫ってくる怪物相手に戸惑いの顔色を隠せないさくらとちせ、そして怪物の巨体から放たれる強い冷気で身体の自由が利かなくなり動けなくなるフェアリー。
怪物がちせとさくらの攻撃に少しばかり自身の体が溶けていく中、三人に向かって丸太の様に巨大な腕を振り下ろそうとした次の瞬間。
「いかんっ」怪物の行動に気付いた聖龍使いが咄嗟に駆け出す。
そして高く跳び上がるとそのまま怪物の天辺から刀を振り下ろした。
「火炎斬(かえんざん)!」
刀は激しく燃える炎にその刀身を包み、怪物を垂直に真っ二つに斬った。
音を立てて溶け崩れる氷の怪物を目の当たりにして、怪物と応戦していたちせとさくら、そして寒さで震える両肩を抱き締めていたフェアリーは愕然とした。
そんな三人に、聖龍使いは真剣な眼差しで言った。
「……大事ないか」
「は……はい……」「え、ええ……」「…………」
強く鋭い眼光で振り返り三人に声を掛ける聖龍使いに対し、三人は唖然としつつも頷いた。
一方、十一人のセーラー戦士達と合流したスターライツの三人、占めて十四人の精鋭達の目の前には、先ほどセーラー戦士達と激戦を繰り広げていた五人の黒ローブ達がその姿を再び現わしていた。しかも彼らの前に突如、人外の怪物が多数現れた。
『………………』険しい面持ちで怪物の群れと睨み合うセーラー戦士達。
彼女達は困惑していた。
何故なら彼女達の眼前に居る怪物達は皆、黒い毛が身体の大半を覆い手足には鋭い爪、イヌ科の様な鋭い牙に蒼く怪しく光る眼――まるで狼の様な怪物なのだが、その不気味で厳つい容姿よりもセーラー戦士達が酷く困惑していた事があった。それは何と、セーラー戦士達の技という技が全く怪物達に効かなかったのである。
「ど、どういう事? 私達の技が全く効かないなんて……!」
「まるで力を吸い取っているのか、はたまた技を無力化させてしまっているのか……!」
眼前の敵に、自分達の技が効かず困惑してしまうマーズとマーキュリー。
「こ、こんな事、確か前にも遭ったような……」
「た、確か、いつだったっけ?」
以前にも似たような状況を経験したような想いに駆られるジュピターとヴィーナス。
すると驚いたようにセーラームーンが大声で言った。
「あぁ! 思い出した! 私達の技が全く効かずに苦戦していたのって……そう、私達がDDガールズと戦った時だよ!!」
セーラームーンの話を聞いたウラヌス達外部系の四人とスターライツの三人が口を開く。
「それって……確か君達が最初、内部の五人とタキシード仮面だけだった時、かなりの苦戦を強いられた……!」
「私達、セーラー戦士の星の魔力に抵抗がある地の理を持った五人組の……」
「話は少し聞いています……確かその時はナースエンジェルの敵であったブロスと当時あなた達が対峙していたクイーン・ベリルが協力し合って産み出した対セーラー戦士への最大の対抗策だった……!」
「……!」
話を聞いて思わず驚くウラヌス・ネプチューン・プルート・サターンの四人。
「ちょ、ちょっと……! まさか、今私達の前に居るあの怪物達にもその地の理が有るって言うんじゃ……」
「有り得ます……これだけ私達の技が微塵も効かないとなると、その星の魔力に打ち勝てる地の理を奴らが持っているとしか考えられません」
「そ、そんな! それじゃ、私達じゃ歯が立たないって訳!? どうするのよっ?」
傷だらけの身体で酷く動揺するファイター・メイカー・ヒーラーのスターライツの三人。
そんな苦戦に追い込まれるセーラー戦士達に、眼前の狼の怪物達は再び牙を向けて襲い掛かる。
「きゃあっ!」「ば、万事休すか……!」
悲鳴を上げるちびムーンに苦境に喘ぐタキシード仮面、誰もが戦いに苦心を感じていた、その時である。
「ウギャッ」「グハッ」
突如セーラー戦士達に襲い掛かろうとしていた狼の怪物達が爽快な音と共に次々に倒れて逝った。
「な、なに?」
誰もが突然の出来事に驚いていると、そんな驚きに満ちた表情のセーラー戦士達にジュピター・キッドが駆け寄って声を掛ける。
「みんな大丈夫?」『キッド!』『キッド君!』
駆け寄るキッドを見て表情を明るくさせて言葉を返すセーラー戦士達。
キッドはセーラー戦士達と狼の怪物の群れの間に入り、そして怪物達を睨みながら背後のセーラー戦士達に告げた。
「……成る程。確かに、こいつ等には僕と同じ地の理が備わっている。同じ理を司っているから、身に沁みて理解できる」
と、戦わずに相手の怪物達に自分と同じ地の理があると告げるキッドの言葉に、セーラー戦士達は焦った表情を浮かべた。
「や、やっぱり……!」「どうすんのッ? 私達じゃ敵わないわ!」
顔色を変えて戸惑うマーズとヴィーナス、するとそんなセーラー戦士達にキッドが緊迫しきった顔つきで話し返した。
「みんな、此処は僕に任せてくれないか」「え! キッド、そんな……!」
キッドの言葉に一驚するちびムーン、そんな彼女の言動にキッドは顔色一つ変えずに返した。
「ふ、大丈夫。一応は僕にだって地の理が備わっているんだ……少しは相手の技や手の内が理解できる、平気だよ」
「で、でも……」
話を聞いても尚不安で仕方がないセーラームーンに、キッドは顔に余裕を見せながら言い返した。
「大丈夫だって。この僕を誰だと思っているんだい? かつてその栄華を極めた天星の戦士たち全員を徹底的に打ち負かした事がある大地の申し子ジュピター・キッドなんだよ。それは君たち自身が一番解っているだろ?」
不敵に挑発交じりの態度で口に出すキッドの言葉を耳にし、セーラー戦士達はジュピター・キッドに打ち負かされ傷だらけにされた過去を思い出して、思わず口元に微笑を浮かべた。
そしてキッドは再び意識を眼前の怪物達に向けた。
怪物達は此処ぞとばかりに、一気にキッドや彼の背後に居るセーラー戦士達に向かって猛進し攻めて来た。
キッドは愛用の鞭を叩きつけ、爽快な音を響かせながら向かってくる怪物達に応戦し始めた。
[名刀の如き信念]
キッドとセーラー戦士達が地の理を持っている敵達と応戦しているその頃。
聖龍使いはミラー・ガールを始めとする他の聖龍隊士と共に刀を振るい大いに戦っていた。
「氷烈斬(ひょうれつざん)!」
氷の刃で斬り付けつつ相手を氷漬けにしたり。
「雷鳴剣(らいめいけん)!」
高く跳び上がると思いきや、そのまま地面に落下して相手に強烈な電撃を当てたり。
「風斬昇(ふうざんしょう)!」
突然風の刃を繰り出しながら上方に飛来してくる敵に強烈な一撃を当てたりと、その戦い様は変幻自在。
「す、凄い!」「これが聖龍使いの実力……! 我々が敵う訳がなかったのだ」
聖龍使いの戦い振りを見て、かつて彼を始めとした聖龍隊と戦った事がある黒天狗党のゴールデン天狗とからくり天狗は納得していた。
「何と、凄まじい。これが聖龍使いの自然の力を巧みに使った技の数々か……!」
「その一刀一撃、荒々しくも何処か気高い精神を感じられる太刀筋だ……」
(おやおや。クレフにランティスが見取れちゃうとは……あの聖龍使いの実力は確かなんだな。風たちを認めてくれたのが確かな人で良かった)
溢れんばかりの気迫と荒ぶる太刀筋に、魔導師(グル)のクレフとその弟子である剣士ランティスが見取れている様子を見て、一人思うフェリオだった。
その時。
一人の女怪人が駆け付けて来てくれた幼いライチの背後から忍び寄り、彼女を襲おうとしているのが聖龍使いの目に入った。
「ッ」
聖龍使いは咄嗟に駆け出し、背後からライチを襲うとしている怪人に斬りかかった。
「ふんッ」「ぎゃあああっ」
女怪人は悲鳴を上げ消滅し、叫び声に気付いてライチが後ろを振り返る。
そして聖龍使いと目が合うと、戸惑いつつも礼を呟いた。
「あ、あの……あ、ありがとう、ございます」
聖龍使いは何も返さず、無言で頷くと再び周囲の敵に刀を振るい出した。
更に聖龍使いの目に飛び込んで来たのは、小さい羽根に長い首、頭部は細い角が生えた龍の様な面立ち、長い脚に馬の様な蹄、怪しく光る眼の体毛が黒い不気味な怪鳥が、その蹄で獅堂光(しどうひかる)の頭部に跳び蹴りしかけているのが目に見えた。
視界に捉えた聖龍使いは思わず光と怪鳥の間に入り、光に代わって怪鳥の跳び蹴りを己が左手で受け止め防いだ。
「せ、聖龍使い!」
身を挺して自分を護ってくれた聖龍使いの咄嗟の行為に驚く光。
そして聖龍使いは身を立て直して大型犬程の大きさもある怪鳥の長い首を斬り落とした。
「聖龍使い……!」
聖龍使いを見て驚いている光に続き、光の危機に駆け寄ってきた龍咲海(りゅうざきうみ)も聖龍使いに声を掛ける。
「聖龍使い、あなた」「……なんじゃ」
海に返事をする聖龍使いに、今度は鳳凰寺風(ほうおうじふう)が声を掛けた。
「あなた……怪我していますわ」
見てみると聖龍使いの兜と胴部の隙間から微量ながら血が滲み出ていた。
「何ともない、戦闘には支障無い故気にするでない」
「で、でも……」
平然とした態度で返す聖龍使いの言葉に戸惑う光。
と四人が話しているその時、岩石でできた巨体の怪物がミラー・ガールに襲い掛かろうとしているのを聖龍使いは目にし気付いた。
それを見た聖龍使いは再び駆け出した。
巨体の怪物は岩石でできた腕を振り上げ、自分よりも小さいミラー・ガールに力一杯殴り付けようとしていた。
ミラーガールは自分よりも等身が二倍以上もある岩石の怪物に精一杯の防御のつもりでミラー・シールドで自身を護ろうとした。
しかし聖龍使いは察した。ミラーガールの鏡の盾ミラー・シールドは魔法で強化された鏡の盾ではあるが、鏡故に如何なる光線をも弾き返す代わりに打撃などの物理系の攻撃には極端に弱い性質であると。
それらを見越した聖龍使いはミラーガールに振り下ろされる怪物の腕を聖龍剣で間一髪の処を受け止めた。
「聖龍使い!」
自分に振り下ろされる巨大な岩石の腕を刀一本で受け止めてくれた聖龍使いの行動に驚きを隠せないミラーガール。
そして聖龍使いは必死で受け止めていた巨大な岩石の怪物の腕を弾き払った。
「ッ……そりゃッ!」
腕を弾かれた怪物は、今度は弾かれた腕とは反対の腕で聖龍使いを真横から殴り付けた。
「聖龍使いッ!」
眼前で殴り付けられる聖龍使いを見て悲痛な叫びを上げるミラーガール。
だが聖龍使いの方は何とか殴り飛ばされそうになる身体を必死に踏ん張り、その場に居続けた。
そして自分を殴り付けた怪物を睨むと、聖龍使いは刀の切っ先をを下から振り上げて水の斬撃を怪物に放った。
「水連斬(すいれんざん)!」
水の斬撃を連続で怪物に放つ聖龍使い。
斬撃を受けた怪物は、山を崩す様にその巨体を斬り刻まれて消滅した。
「ぐっ……」
しかし聖龍使いは先程の光の身を護った時の傷はもちろん、この戦いで体に蓄積された痛みと疲労で遂に膝をついてしまった。
「せ……聖龍使い?」
突然膝をついて崩れ落ちる聖龍使いを見て驚愕するミラー・ガール。
彼女は駆け寄って聖龍使いの肩に手を置いて声を掛けるのだが、当の聖龍使いは肩に手を差し伸べるミラーガールの手を掴み、強引に引き離すとミラーガールに告げた。
「大事ない、気にするな」
「な、何言っているのよ! 早く手当てしないと」
「大事ないって言っているだろッ! 俺の事は放っておけよッ!!」
強がりの言葉を投げ返す聖龍使いに対し、ミラーガールは心配し再度言葉を掛けるのだが、突然聖龍使いが通常の口調で怒鳴り返した。
怒鳴る聖龍使いに驚いてしまうミラーガールに周りの仲間達。
すると周囲に居た仲間の一人であるメタルバードがしかめっ面で聖龍使いに話し掛けて来た。
「おい修司! ミラーガールは……アッコはお前を心配して声を掛けてくれるってのに、その態度と言い分は」
「大丈夫だ……! 今は俺の身よりも、一体でも良い。敵を倒す事だけを考えていろ……! 愚図愚図している間にも、敵は待っちゃくれねえんだぞ」
ミラーガールと同じく声を掛けて来たメタルバードを睨み付けながら言い詰める聖龍使いの言動に、メタルバードはもちろん周りの皆も愕然とするばかり。
そんな現況の中、メタルバードは聖龍使いの左肩を鷲掴みすると聖龍使いの顔を自分に近づかせ、聖龍使いに厳つい目付きで言い寄った。
「お前な、前々から本当に思っていたんだが……余りにも自分勝手すぎるぞ」
「…………」
周囲の皆が見ている中、メタルバードは黙り込んでしまう聖龍使いに容赦なく言い寄る。
「お前はいつもそうだ。オレ達が傷つき死にかけると異常なまでに気にするクセに、自分が弱ったりしてれば何とも思わないで戦い続ける」
「…………」
「……良いか、オレや他の仲間の前なら別に構わねえ。だがな! せめてで良い、アッコの前だけではもっと自分の身も案じろ……!」
「………………」
睨みを利かせながら聖龍使いに告げるメタルバード、それに対し聖龍使いは何も言わずにただ真っ赤な鬼の面越しにメタルバードの顔を見詰めるだけだった。
「バーンズ……」
ミラーガールが悲愴な面持ちで二人を見据える中、メタルバードは更に聖龍使いに強く言った。
「修司……! お前はオレ達の事を最優先に考えて行動しているのは周知している、だけどな! ……少しで良い、自分の身も案じてくれ。お前がオレ達を心配するように、オレはもちろん……いや、オレたち以上にアッコが、ミラーガールが心配の余り一人苦しんでいるんだよ!」
「バーンズ、あなた……!」『…………』「…………」
メタルバードの思想が伝わる言葉に思わず驚嘆するミラーガールに周りの一同、そしてメタルバードの言葉に無言で耳を傾ける聖龍使い。
そして聖龍使いは自分に真情を伝えるメタルバードに対し平然とした態度で返した。
「だから何だと言うんだ」「ッ……!」『!』
思わぬ聖龍使いの一言に驚倒するメタルバードにミラー・ガール達。
そして聖龍使いはそんな愕然としている面々に向かって淡々と述べた。
「お前達の……周りの意見など気にしてはいない。ワシはワシで、自分のやり方で戦っていくだけじゃ」
「な……ッ!」
驚愕するメタルバードに聖龍使いは続けて述べる。
「誰の都合など知った事ではない。ワシはただ戦い、そして斬るだけに死を恐れず眼前の敵と立ち向かうだけじゃ。今までも……そしてこれからもな」
平然と語る聖龍使いの言葉を聞いたメタルバードにミラー・ガール達周辺の者たちは愕然の余り言葉を返す事が出来ずにいた。
そんな中、聖龍使いは淡々と平然とした態度で皆に告げた。
「ワシの事など気にするな、余計な事以前に無駄な事じゃ。ワシは戦いの中で散る事に何の躊躇いも迷いもこれっぽっちも無い。斬るか斬られるか、ワシの未来などその二つしか無いのは既に目に見えている」
そう皆に告げる聖龍使いの言葉を聞いたメタルバードは、途端に顔色を変えて聖龍使いに言った。
「それが……それが、お前の本性か……ッ!」
「…………」
「前々からだけどよ……お前は余りにも勝手すぎる……!」
体を震わせて言うメタルバードの台詞を聞いて、聖龍使いはメタルバード達に背を向けて言い返した。
「身勝手で結構。これがワシ、これが俺の戦い方、そして……これが小田原修司という人間の生き様だ」
そして聖龍使いは何事も無かったかの様に戦闘を再開した
「……」「……」『…………』
聖龍使いの真情を彼の口から聞いて険しい強面に成るメタルバードに悲しげな表情を浮かべるミラー・ガール、そして言葉を失う周りの皆皆。
他人が自分をどう思っているのか、何処まで心配してくれているのか。
そんな自分以外の人間の真情など、聖龍使いの小田原修司にとっては微塵の興味もない事なのであった。
ただ自分がやるべき事、自分が護る存在が大事無ければ修司はそれで良かったのだ。
どんなに自分が傷つこうと、どんなに思われようと、自分が為すべき事は徹底的に貫き通す鏨(たがね)の如き強い意志。
それはまるでどんなモノであろうと切断してしまう名刀のような強い信念。
聖龍使いは名刀の如き強い意志で仲間達の自分への思いすら断ち切ってしまう。
自分達の必死の思いすら平然と斬ってしまう聖龍使いの修司の信念に各々思い起こしていた。
自分の苦痛も含めた何もかもを犠牲にし続け自らを追い詰め続けてまでも戦い続ける男 小田原修司。
名刀の如き鏨の意思と信念を持つ修司には、もはや仲間を護れるのなら己の全てを犠牲にしても構わないと感じているのだった。
[謎めく闇の武人と踏み越えていく苦境]
皆が聖龍使いの言動に衝撃を感じつつも、聖龍使いと共に再び激しい戦闘を繰り広げているその時。
なんと皆の目の前で再び聖龍使いが膝をつき動きを止めてしまっていた。
「聖龍使い!」「やっぱり、無理をしない方が……」
光と風が気遣うのだが、やはり二人に対しても聖龍使いは気遣いを拒む。
「気遣い無用、ワシは大丈夫じゃ……」
そして聖龍使いが立ち上がろうとしたその時である。
「……ッ、ごほっ、ごほっ」
突然聖龍使いが咳き込み始めた。
「せ、聖龍使い?」「だ、大丈夫なのッ?」
苦しそうに咳き込む聖龍使いを見て声を掛けるコレクターユイとコレクターアイ。
しかし聖龍使いは強がりながら返事した。
「大丈夫じゃと言っているじゃろ、ごほっ、ごほッ……!」
次第に激しく成っていく聖龍使いの咳。そして遂に
「ゴホッ、ゴフ……ケッ、ケンッ」
何と突然、聖龍使いの咳がケンケンという一風変わった咳へと変化し、これには周りの誰もが驚いた。
更にその咳は一層激しさを増し、聖龍使いは激しく咳き込む。
「ケッ、ケンッ……ケッケンッ……はぁはぁ……ヒューー、ヒューー……」
見るからに苦しそうなその様子に、ミラー・ガールを始めとした女子たちは思わず目を背けたくなってしまいそうに成った。
と、その時。聖龍使いの様子を見ていたナースエンジェルが慌てて駆け寄ってきて声を掛ける。
「せ、聖龍使い、あなた!」「ピャァ……」
まるで壊れた笛を吹く様な呼吸で返事する聖龍使いにナースエンジェルは血相を変えて言った。
「間違いない、聖龍使いアナタ……喘息(ぜんそく)なのね?」
「ヒュ~~、ヒュ~~……」
苦痛に満ちた呼吸をする聖龍使いに告げるナースエンジェルの言葉を聞いて、ミラーガールが彼女に訊ねた。
「ナースエンジェル、喘息って……」
するとナースエンジェルはミラーガールに答えた。
「はい、以前これと同じ症状の少年を私は見た事があるんです。この呼吸困難に成り掛けるほどの激しい咳、そして呼吸器官が細く成ってしまっているために起きる喘息独特の呼吸音。間違いありません、聖龍使いは……修司さん、貴方は小児喘息(しょうにぜんそく)の持病を患っていますね?」
ナースエンジェルに問い詰められた聖龍使いは息苦しい中、渋々答えた。
「…………そうじゃよ。ごフッ……」
話している最中も咳を起こしてしまう聖龍使いを見たナースエンジェルはすかさずナースバトンを横向きに前に突き出して聖龍使いに言った。
「此処まで激しい発作の喘息に効くかどうか解りませんが、何もやらないよりはマシです。今ナースバトンで治療します!」
すると聖龍使いは突然慌てだしてナースエンジェルに言い放った。
「だ、大丈夫じゃ! ナースエンジェル、お前はもちろん、お前以外の治癒能力を使える者等にも言っておるが、深手を負った同志を治療するためにも無駄に力を浪費するんじゃない」
だがナースエンジェルは表情を一変させて聖龍使いに反論した。
「何を言っているんですかッ! そんなに激しい発作を起こしている貴方だって、もう十分重体なんですよ! 見ていて解ります、咳が酷すぎて呼吸する事自体苦しいんでしょ? 何より……私はそんな苦しそうにしている貴方を見ていられないんです……!」
「ナース、エンジェル……ゴフッ」
自分に言い聞かせてくれるナースエンジェルの熱弁に聖龍使いは、余りの苦しさに思わず涙目に成りながらもナースエンジェルを見上げた。
「りりか……」「ナースエンジェル……!」
ナースエンジェル事森谷りりかの優しい言葉と気遣いに感銘を受ける恋人の宇崎星夜に感動するミラー・ガール。
だがこの時、感動とは別の思考に思い更けていた者達も場に居た。
(ナースエンジェルがナースバトンで聖龍使いを……修司を治療する)
(修司さんは前々からナースエンジェルはもちろん、セーラームーンやキューティーハニーの治癒能力で治療してもらうのを拒み続けてた。……本当に私達が倒して来た邪悪な存在と同じなのかどうか、これで判別できるわ)
大人しくナースエンジェルに治療をされる聖龍使いを見てデューイと苺鈴は思う。
兼ねてより仲間の治癒能力で回復される事を避けていた修司こと聖龍使い。聖龍隊の多くの者らが、そんな修司が実は自分達が倒して来た敵と同様に邪悪な存在では無いのかと懸念していた。
そして少しでも聖龍使いの病症を改善しようと、ナースエンジェルはナースバトンから光を放出し聖龍使いに光を浴びさせた。
ナースバトンからの光を浴びた聖龍使いは自然と立ち上がって見せた。
「せ、聖龍使い」「大丈夫ですか?」
心配するミラー・ガールに花丘イサミが声を掛けると、聖龍使いは普通に答え返した。
「うむ、もう大丈夫じゃ」
その光景を見た他の面々は複雑な心境ながら胸を撫で下ろした。
(あ、アレ? なんだよ、修司さん別にナースエンジェルの治癒能力受けても何とも無いじゃん)
(よ、良かった。もし修司君に対して治癒能力が逆に苦痛に感じられるのなら、また疑ってしまいそうだったわ)
聖龍使いに放たれた治癒能力は邪悪なものを討ち滅ぼす力故に、修司自身もそんな邪悪な存在とは違う存在だと認識できて安心する月影トシに高木はるか。
そして聖龍使いは再び戦闘を開始しようとする。
「よ、良し。もう大丈夫じゃ、これで少しは楽に……ッ、ゴホッ、ゴフッ」
「! せ、聖龍使い?」
「そんな……やはり軽度の症状じゃないから治せないのかしら」
歩もうとした際に再び咳をしてしまう聖龍使いを見て動揺するコレクターハルナ、そして軽症で無い故に完治できないのかと落ち込むナースエンジェル。
すると聖龍使いは皆にこう言った。
「な、なに。これぐらい、元から大したことでは無いわい。大丈夫じゃ、まだ戦える……!」
そして聖龍使いは苦境の中、再び戦禍の中にその身を投じて行った。
そんな一人の武人の姿を見て、他の聖龍隊士達そして駆け付けて来てくれた者達は、自然と心の奥から闘志が湧いてきて、まるで聖龍使いに付いていくかの如く彼に続いて戦禍の中を駆け回っていった。
そして再び無数の敵である怪物達と激しい攻防を繰り広げて行く聖龍隊。
しかし敵の数は一向に減る気配がなかった。
次第に疲労の色を顔に見せ始める聖龍隊の同志達、そして彼らの力に成りに駆け付けて来てくれた面々にも疲労の色が見え始めていた。
「いかん、このままでは……」
仲間たちの様子を見た聖龍使いは困惑していた。
このままでは何れ戦う事すら侭為らなく成ってしまうと。
聖龍使いは自分の周辺で戦っている仲間たち以外の同志の様子も見てみた。
ビルの合間を縫って滑空するちせは、地上である道路上で活動している無数の怪物達に爆撃を施していた。
舞い上がる爆炎の中、怪物達は次々に消滅していった。
「はぁ、はぁ……」
しかし、そんな激しい爆撃を完遂したちせの表情には疲れの色が濃く表れていた。
「……」
疲れが見えるちせを一目見た聖龍使いは続けて別の同志の様子も視界に入れた。
先程、十一人のセーラー戦士とスターライツの前に現れた自分達星の魔力を持つ者が苦手とする地の理を得ている無数の狼の怪物相手に苦戦している時、彼女達の窮地を察してジュピターキッドが颯爽と駆け付けては同じ地の理を持つ者同士で眼前の狼の怪物の軍勢相手に一人立ち向かっていたが、ようやくにしてその狼の怪物たちを全て倒し切れていた。
しかし時すでにキッドは、ほぼ全ての力を出し切り、肩から息をしながら膝をついてしまっていた。
一方のセーラー戦士達も、自分達が苦手とする地の理を持つ敵相手に悪戦苦闘しながらキッドと共闘していた為、その体には疲労が溜まっていた。
「いかん、このままじゃ……」
この状況では何れ疲労により戦う事すら不能になってしまうと感じた聖龍使いは苦悩し始めた。
更にその時、何の前触れも無しに異次元からの出入り口である黒い渦が出現し、更に無数の増援が聖龍隊の目の前に立ち塞がったの。
「な、なに!」「そんな……幾らなんでも、この数じゃ……!」
眼前に現れる大軍を目にして愕然と成る銀天狗に鎧天狗。
そして困惑する聖龍隊は、一旦一ヶ所に集まり、そして互いに背を向き合わせながら自分達を取り囲む大軍団に睨みを利かせていた。
取り囲む無数の敵、上空にすらまるで自分達の優勢を見せびらかしているかの如く悠然と飛び回る無数のドラゴンを始めとした飛行型クリーチャーの群れ。
聖龍隊の誰もが、肉体的にも精神的にも追い詰められていた。
「どうする、このままじゃ……!」
「ああ、マジでヤベえよ……!」
隣同士で語り合う戸惑うキッドとメタルバードの二人に、そして同じく険しい面持ちで敵軍に向き合う聖龍隊士たちに駆け付けてくれた同朋達。
するとそんな状況の中、彼らの前方より上方で空に立ち尽くしていた一人の黒ローブが、追い詰められている聖龍隊に向かって言葉を掛けた。
「ハハハ……大分数が増えたみたいだが、所詮は単なる掻き集め。敵う訳ねえだろ」
不敵な嘲笑で話してくる黒ローブの言葉に若干の苛立ちを覚える聖龍隊の面々。
苛立ちの感情の中、ミラー・ガールが自分達に話し掛けてくる黒ローブに問うた。
「アナタ……いったい、なんなの……!?」
彼女の問いに黒ローブは不敵な口振りで答え返した。
「前にも名乗った事はあるだろ、そう……俺は闇人、ドス黒いが全てを呑み込む事が出来る存在、かな?」
挑発染みた口調で語る闇人の言葉に、タキシード仮面と早見青児が二人続けて問い掛けた。
「お、お前と同じ格好の連中は誰なんだ!?」
「お前達は何を企んでいやがる!」
二人の発言を聞いた闇人は、少しばかり驚いた素振りで返した。
「おいおい、誰とは酷い事を言うんだなぁお前等は。自分達が消し去った存在の事は記憶に留めておく気すら無いのかい?」
『……?』『?』
闇人の発言に対し唖然としてしまうタキシード仮面と青児の二人に他の面々。
闇人は続けて言った。
「それに企むって人聞きの悪い……俺はただ、お前等も含めて全ての因果を断ち切ってやろうと行動を起こしているんだよ。……解る? 俺はこの紛い物の世界を消し去り終わらせてやる事で、己が胸の内に在る限りなき隙間を埋め様としているのよ。そして同時にお前達の悲しき因果も業も消してあげるんだ、感謝してほしいね」
この闇人の言葉に意味が解らず極度の苛立ちを募らせて男達が怒鳴り散らす。
「何言ってやがる!」「意味が解らないよ」
「チンプンカンプンな事言ってんじゃねえよッ!」
怒りを表す星夜にデューイそして月影トシに続いて小狼とソウシの二人も闇人に言い返す。
「世界を終わらすって……! それに、この世界が紛い物?」
「意味不明な事言わないで貰いたいね」
しかし闇人はそれでも態度を変えずに挑発交じりの言葉を投げ掛ける。
「ワハハハハッ、何も解らない何も知らないってのは実に幸せえだな。自分達はもちろん、この世界の事実すら知る事無く延々と災いと悲劇の中を生かされ続けるのだからなッ!!」
腕を広げ堂々と公言する闇人の言葉を聞いた聖龍隊の一同は、皆唖然とし固まってしまっていた。
だがこの時、聖龍使いだけは微動だにせず、その瞳は何かを思い更けているのか超然と空に立っている闇人に向けていた。
そして上空から地上の聖龍隊の面々を見下ろす闇人は、今度は自分を見つめ続けている聖龍使いに話し掛け始めた。
「……聖龍使い、此処では敢えて本名では呼ばん。しかしお前も薄々は気付いているんだろ? 所詮、此処に居る連中を救っても……生かし続けたとしても、結局お前は変わる事も無ければ自分に無いアレを手に入れられないと」
「…………」
闇人の問い掛けに聖龍使いは無言で睨みを利かせていた。
「……解るだろ? どんなに足掻こうとお前はアレを手に入れる事はできない性(さが)、変わる事の無い異質なる存在だ。この世界の英雄達を助ける事で自分を変えられると思っているなら無駄な足掻きだぜ」
再び話を聖龍使いに投げる闇人に対し、聖龍使いは眼光を放ちながら己の言葉を闇人に返した。
「……今さら立ち止まる気などは無い。俺はもちろん此処に居る誰もが自分の事はもちろん、他の者の為にもその力を出し切り努めている者らよ」
そして最後に聖龍使いは闇人に告げた。
「それに……世界を救えずに最強の英雄集団と名乗れるのか。賛否評論はあるが、俺は此処に集っている者たちこそ真に強き猛者共と自負しておる」
この聖龍使いの言葉を聞いた聖龍隊の一同は、半ば呆気に取られながらも心の内では感極まっていた。
聖龍使いの意気込みを聞き取った闇人は、不意に右手を高く上げ地上の聖龍使い達に問うた。
「ふふ、それじゃ……お前達に乗り越えられる覚悟はあるか?」
『…………』
闇人の突然の問い掛けに呆然としてしまう一同、そして闇人は上げて見せた右手の指を鳴らした。
次の瞬間、上空に今まで出現していた黒い渦とは桁違いの、更に巨大な黒い渦が現れた。
「な、何なんだアレは!?」
桁違いに巨大な黒い渦を見て叫ぶメタルバード。
まるで全てを吸い込むブラック・ホールの如く不気味な渦、すると其処から更に無数の怪物達が続々と飛び出してきた。
「う、うそ……!」
自分達の周囲を取り囲む敵勢だけでも追い詰められている状況だというのに、そんな最中更に現れる増援に苺鈴はもちろんその場の誰もが愕然とした。
そんな聖龍隊の面々に闇人は言った。
「乗り越えられるかな? 今の今まで、どんな苦境をも乗り越えられてきたお前さん達でも越えられない壁……逃れられない運命が有る。そうだろ?」
更に闇人は右手の指を再び鳴らした。
しかし今度は何も起こらず闇人も無言で直立しているだけであった。
呆然とする聖龍隊の面々だったが、その時であった。
突然無線機のアラームが鳴り響き、聖龍使いが無線に出た。
「どうした、ウッズ」
聖龍使いが問うと、ウッズでは無くそのウッズと共に聖龍隊のメンバーを後援する犬養博士と花丘氏が無線に慌てた様子で答えた。
「修司くん大変だ!」「現在、私たち聖龍隊の基地施設に敵の攻撃が!」
「な、なんだと!」『え!?』
花丘氏の言葉に聖龍使いと聖龍隊の面々は驚いた。
その時、聖龍隊メンバーの支援や補助を主に行うサポートフロア、その施設が内部に建造されているアニメタウン郊外に位置する小高い山に、無数の魔物や怪物の群れが物凄い勢いで攻めていた。
「は、花丘さん! それに犬養博士! 父は、父のウッズはどうなりました!?」
話を聞いたジュピターキッドは即座に犬養と花丘に、彼等と共に聖龍隊の後方活動をしていた父のウッズ・j・プラントの安否を尋ねる。
すると二人は悲しげにキッドに答えた。
「そ、それがキッド君……」
「ウッズ氏は、私たち二人を先にフロアから退出させて……恐らくはまだフロア内に」
二人の話を聞いた女子たちは愕然とした。
「そ、そんな……!」「ウッズさんが……」
結とさくらが悲観し声を上げたその時、すかさずキッドが駆け出そうとした。
「おいキッド!」
タキシード仮面が咄嗟にキッドを呼び止めると、キッドは振り返り答えた。
「急がないとッ、早くしなきゃ父さんの身が……!」
キッドの必死な面立ちにその場の誰もが事態の深刻さを身に沁みて理解した。
と皆がキッドに続き、急ぎウッズが居るであろう強襲されているアニメタウン郊外の小山内に建造されている基地施設へと向かおうとしたその時だった。
「……皆さん……皆、さ……」
通信機から途切れ途切れではあるがウッズの声が聞こえて来た。
「う、ウッズか! どうした、大丈夫か?」
聖龍使いが咄嗟に通信に出ると、今度は途切れる事無くウッズの声が機器から聞こえて来た。
「も、申し訳ありません……! 先ほど急に敵の軍勢が私達が在席していたフロアが建造されていた小山に突然の攻撃をしてきまして……」
「そんな事は良い! お前はどうなんじゃ!?」
聖龍使いが訊ねるとウッズは苦痛に喘ぐ口調で答えた。
「は、はい……無事に犬養博士と花丘さんをフロアから退出させる事はできましたが、私はフロアから出遅れてしまい大破した部屋の一部に身体を挟まれて身動きが……」
「ウッズさん……!」
現状を知り悲愴に喘ぐミラーガールに聖龍隊の面々。
そして現状を聞いたメタルバードが皆に告げた。
「い、急ぐぞ! 急いでウッズの所に向かわねえと」
とメタルバードが皆に言った次の瞬間。
「来てはダメです!」
なんと無線先のウッズが皆に自分の所に助けに来る事を制止した。
「な、何故だウッズ?」
聖龍使いが訊ねるとウッズは落ち着いた様子で、自分に訊いてきた聖龍使いはもちろん他の聖龍隊の面々にも言い聞かせた。
「これは敵の策略です……皆さんが私を助けるために、そう一人でも私の方に駆け付ければ、それだけ其方の戦力が欠けます。そんな時に敵が一斉に攻撃してくれば抗う術はありません……!」
「だ、だけどウッズ……!」
早見青児がすかさず反論しようとすると、ウッズは更に皆に言った。
「皆さんは眼前の敵だけに意識を集中させてください……! それが……それが街を、ゆくゆくは世界を護る英雄の取るべき行動です」
「あ、兄貴……!」
兄のウッズの言葉に衝撃を受ける弟のウェルズ。
「だ、だがウッズ」
更に聖龍使いが話し掛けようとすると、ウッズは思い詰めたような真剣な口振りで聖龍使いに述べた。
「修司様……あなたが聖龍隊を結成したのが、全て無駄に成らない為にも……全員、其処に留まって戦い続けなければいけないんです……!」
「ウッズ……!」
己の執事であるウッズの言葉に心を揺さぶられる聖龍使い。
そしてウッズは最後に聖龍使いに呟いた。
「……大丈夫です。……あなたは、あなたは…………もう、一人じゃ無いんです。自分の信じた道を、自分が信じたい人達と共に……力強く、進んでください」
「ウッズ……!!」
「大丈夫……大丈、ぶ……」
その時、突然通信機にノイズが雑じりウッズとの通信が切れてしまった。
「ウッズさん!」「ウッズ……!」
擦れた声で己の意思を伝えきったウッズとの通信が切れ、嘆きの表情で名を叫ぶセーラームーンとタキシード仮面。
「ウッズさん……!」「父さん……!」
自分を始めとした聖龍隊の誰もに優しく接してくれていたウッズが、この世に残された唯一の実親であるウッズの言葉を聞き愕然と成る、ウォーターフェアリーと息子である
ジュピターキッドことジュニア・j・プラント。
誰もがウッズの言い残した言葉に衝撃を受け、その心に深く突き刺さった。
そして意を決して数人の聖龍隊士たちが駆け出し、その場を走り去ろうとした瞬間。
「行くなッ」
彼らの前に聖龍使いが立ち塞がり去ろうとする面々を制止した。
「せ、聖龍使い!」
「行かせてください! 今ならまだウッズさんを助けだせるかもしれません!」
自分達の眼前を立ち塞ぐ聖龍使いに驚く雪見ソウシに、必死に語るミスティーハニー。
しかし聖龍使いは鋭い眼光で己の前方で酷く動揺している聖龍隊の一同を睨み付けながら皆に言った。
「行っては成らん……! 今ウッズを助けに向かえば、それこそウッズが懸念している通り敵の思う壺じゃ! 全員、此処から離れる事は成らん!」
「だ、だけどそれじゃ……!」
李・小狼が困惑した険しい面持ちで言葉を返すと、聖龍使いは再び皆に言い聞かせた。
「成らん……! 今此処でワシ等が分散すれば、それだけ聖龍隊の戦力が欠けてしまう事となる。戦力を失えばそれだけ無数の敵に対しての立ち回りも難しく成っていくばかりじゃ! 今は心を押し殺して、全員でこの場に現れた敵の増援を撃退するのじゃ」
『…………………………』
聖龍使いの正しい力説に誰もが理解はするものの、同時にとても居た堪れない心境に駆られるのであった。
[chapter:命(死)を乗り越えて]
「……でも、修司君……!」
涙目でセーラージュピターが聖龍使いに言葉を掛けると、聖龍使いは睨みを利かせながら言葉を返す。
「耐えるのじゃ……今耐えなければ、全てが無意味と成ろうぞ」
「……」言葉を失うジュピター。
すると場の重苦しい空気の中、ジュピターキッドが突然駆け出す。
「ジュニア!」
「お願いだ聖龍使い、いや義兄さん……! 父さんの所に向かわせて……」
走り出すキッドをすかさず止める聖龍使いに、キッドは今にも泣き出しそうな表情で聖龍使いに言う。
しかし聖龍使いは、その迷い無い眼光のままでキッドに言い聞かせる。
「ジュニア……お前の父の覚悟を無駄にしては成らぬ。辛いかもしれんが、此処を離れる訳にはいかんのだ」
「……!」
必死に涙を堪えながらも聖龍使いの話に耳を傾けるキッド。
だが、キッド以外の面々もウッズの身を案じる余りにその場から駆け出そうとしてしまう。
すると突然、聖龍使いが 駆け出そうとした聖龍隊の前に立ち塞がり、オマケに苦渋に満ちた表情の聖龍隊一同に聖龍剣の切っ先を向けたのだ。
「! 聖龍使い……!」「修司君……!」
ウッズの所に向かおうと駆け出そうとした自分達に刃を向ける聖龍使いの行動に驚愕してしまうデューイにセーラーヴィーナス。
聖龍使いは仲間である聖龍隊の皆に聖龍剣の切っ先を向けたまま、眼前の皆に言い放った。
「行くんじゃない! もし一人でもこの場から去ろうという輩が居るのなら、この俺が斬り捨てるッ!」
『!!』
聖龍使いの口から出た言葉に驚愕し衝撃を受ける聖龍隊一同。
そして聖龍使いは震える唇で皆に告げた。
「行くな……ッ! ウッズの覚悟を無駄にするな……! 俺達が背負う大任を捨てるんじゃない……!」
その時、ミラー・ガールを始めとした聖龍隊の面々は気付いた。自分達に刃を向けて語る聖龍使いの目が潤んでいる事に。
「聖龍使い、でも……」
「でもではない! 今我らが手を拱いていれば、敵勢力は容赦なく攻めてくるのじゃ!」
悲痛な表情で言葉を投げ掛けようとするちびムーンに、聖龍使いは強く言い返してちびムーンを言い包める。
そんな聖龍使いに、思わず魔法騎士(マジックナイト)の龍咲海が言った。
「聖龍使い、あなた」「……」
「あなた……強すぎるわ」「…………」
暗く悲しげに話し掛けて来た海に無言で彼女の話を耳に入れる聖龍使い。
そして海は続け様に聖龍使いに一滴の涙を零しながらも語り出した。
「強すぎるわよ、あなたは……! でも、私はあなたみたいにそんな強くは成れないわよ……!」
「…………」
「確かにウッズさんは覚悟を決めていた、私達に来ないように言ったのも私達自身が不利に成らないようにする為なのは重々解ってる。だけど……!」
「……」
「だけど修司君は強すぎる! ウッズさんが、自分を今まで助けてくれていた人が危険に陥っているのに平然と目の前の敵だけに集中して戦って……! 私達はあなたみたいに成れない……自分を想ってくれていた人の命が危うい時に、そんな迷わずに戦えるほど強くは無いのッ!!」
「海ちゃん……!」「海さん……」
海の悲痛に満ちた台詞に共感する光と風。
だが聖龍使いは、そんな自分に悲痛な真情を伝えて来た海に向かって眼と言い放った。
「……そうじゃ、ワシは戦いには何の躊躇いも迷いもない、眼前の敵にのみ集中する事ができる。しかしワシはそれを過ちだとは思ってはおらぬ。迷いや躊躇いを失くしてこそ、心身ともに強くそして平然と敵を斬り捨てていけるのじゃ。……非情かもしれんが仲間の死を無駄にしない為にも、ワシはただこの刀を振るい続けるだけなんじゃよ」
平然と皆に自分の真情を言い伝える聖龍使いに、聖龍隊は深い哀愁感と共に心に衝撃を受けた。
そして仲間達に自分の思考を言い聞かせた聖龍使いは振り返り、自分達に襲い掛かってくる無数の敵である魔物や怪人相手に刀を振るい次々に薙ぎ倒していった。
そんな迷いの無い聖龍使いの果敢な姿勢を見た聖龍隊士たちは、複雑な自分達の心境に苦しみながらも、再び敵である怪物の群れに飛び込んで行った。
「…………」「ジュニア……」
一人体を小刻みに震えさせて必死に父への思いと格闘するキッドに、彼を案ずるフェアリー。
だが漸くキッドも意を決して敵軍にその身を投じてみせた。
それを見たフェアリーもキッドに続いて戦乱の中に鮮やかな虹色の羽を羽ばたかせながら参入していった。
聖龍隊の誰もがウッズの安否を気にしつつも戦いに集中しようと決心していた。
いつも自分達を本当の子供や家族の様に分け隔てなく接してくれたウッズ。
親はもちろん家族すら居ないジュピターやメタルバードにさくらに対して本当に親だと思えるほど真に優しく接してくれていたウッズ。
何か問題があればスグにでも解決に導いたり話を聞いてくれたウッズ。
誰よりも聖龍隊の皆の事を考え、そして思ってくれていた父親の様に心優しかったウッズ。
それはつい最近聖龍隊に加盟したコレクターズや魔法騎士、そしてちせやシュウジの面々も同じ気持であった。
現実世界での実績が無いために周囲から色々と思われてきたり、自信が無かった自分達に精力的に手助けしてくれたウッズ。
聖龍隊の事を余り知らなかった自分達に、色々と教えてくれたウッズ。
兵器として多くの命を奪ってきてしまった自分に、優しくも温かく接しながらも心身の調子を見ていてくれたウッズ。
そして、そんなウッズの身内である聖龍別働隊の隊長である双子の弟であるウェルズに息子であるジュピターキッドことジュニアも心中とても苦しい中で懸命に敵勢力と交戦した。
自分とは正反対で常に穏やかで落ち着いた知能値数の高い兄のウッズ。
母と死別した自分にとっては、たった一人っきりの親であったウッズ。
弟と息子は心中にとても重い枷を付けたような息苦しい心境の中、果敢に眼前の敵を片づけて行った。
ミラーガールもそんなウッズの事を考えていた。
素姓の解らない修司に対して、おそらくは唯一なにかしらの事情を知っていたであろうウッズ。
しかし自分を始め、聖龍隊の誰とも心を開いて接してくれた、正に父と呼んでも可笑しくなかった人物像のウッズ。
そんな彼の覚悟と、自分達聖龍隊に彼が託した思いを汲み取り、ミラーガールは周りの仲間たちと協力しながら敵を一掃していった。
更に一人、聖龍使い自身もウッズの事を思い起こしていた。
聖龍隊はもちろん、この二次元界ではおそらくキーオや鏡の国の女王以外では唯一自分の素姓を知っているウッズ。
彼は時折、自分が迷い悩んだ際には修司の話を真剣に聞いて上げては、迷う修司の背を押してくれた事も一度や二度ではなかった。
聖龍使いはそんな自分を始めとした聖龍隊の支援に誠心誠意尽くしてくれたウッズの想いを噛み締めながら、聖龍剣を振るい周囲の敵を次から次に一刀両断していった。
「み……皆さん……どうか、頑張って……。そして修司様……どうかあなたの心に、私たち同様の感情(こころ)が得られる事を……」
攻撃され続けて瓦礫の山と化したサポートフロア、その中で瓦礫に埋もれたウッズは密かに聖龍隊や主である修司の事を思い更けながら、爆炎の中に消えて行った。
聖龍使いは吠えた。
己の迷いを打ち消す為に、そして自分達の身を案じ自分等の未来を思い願った男ウッズの為にも。
己の意思の如き輝く鏨の刀を振るい続ける。
迷いも躊躇いも、全てを断ち切る決して折れる事の無い屈強の刃(意思)で、自分達に向かってくる敵を平然とそして勇猛に斬っていく。