聖龍隊 気高き二次元人達   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 戦いもヒートアップ!
 今回はオリキャラや魔法騎士の激しい空中戦も執筆しています。
 更にキャラクター達に告げられる衝撃の事実とは。


聖龍伝説 ――気高き二次元人達――激戦

[chapter:辛き心情を乗り越えて]

 

 結成時より聖龍隊の面々を心身ともに支えくれていたウッズ・j・プラントから告げられた言葉と託された想い。

 聖龍隊はウッズの思想全てを心から受け止め、悲しみにくれる暇もなく戦いを続けていた。

「はぁ……はぁ……ッ!」

 そんな聖龍隊の中でも一際苦痛に喘ぐ胸の内を必死に押し殺して戦い続ける大地の申し子ジュピターキッド。

 父であるウッズの事を思いながら、只ひたすら目の前の敵を次々に薙ぎ倒していく。

「き、キッド……大丈夫?」

 キッドの心中を案じたウォーターフェアリーが恐る恐る訊ねると、キッドは

「フェアリー……ああ、僕はもう大丈夫。心配してくれてありがとう」

 と、無理やり顔に笑みを作ってはフェアリーの問い掛けに答えた。

 そんなキッドを見て、フェアリーは心苦しく感じた。

 しかしウッズの息子であるキッド以外の聖龍隊メンバーも、ウッズの実情に苦悩していた。

 どんな状況だろうと、その冷静沈着で温厚な心境のウッズが導くサポートは、今まで聖龍隊の面々を幾度となく危険から救ってきた。

 相談者として、時には親身に話に耳を傾けてくれるウッズは紛れもない父親のフレーズが最適と言うべき人物であった。

 聖龍隊の誰もが、自分達にとって紛れもない【聖龍隊の父】を思いながら、戦いに身を入れる。

 

 地上には大破したコンクリートの地面や破損した車の残骸が散らばり、その中を敵の軍勢は活発に動き回り聖龍隊に容赦なく攻撃の手を上げる。

 上空には青い空と白い雲を覆い隠してしまうほどの大軍勢が悠然と空を滑空し、時おり地上で奮戦している聖龍隊の面々に飛来しては攻撃してくる。

 そんな激しい戦場を英雄達は脇目も振らず己が持てる力を全て出し切るほど腕を振るっていた。

 

 しかし、そんな彼等の前に巨大なドラゴンなどの怪物が多数現れた。

 怪人などの自分達と同等の大きさの敵勢だけでも苦戦を強いられているというのに、そんな苦境の中で立ち塞がる巨大な敵に英雄達は困惑した。

「くそ……いくら何でもデカ過ぎる……!」

 目の前に現れた巨大な怪物に見下ろされながら苦悶の表情を浮かべるメタルバード。

「何なのだ? この竜は……それに他にも、今まで見た事の無い怪物までもが犇めいているとは……!」

 巨大なドラゴン、更には今の今まで見た事もない未知の怪物に驚きを隠せない導師(グル)のクレフ。

 すると眼前のドラゴンは地上の聖龍隊目掛けて激しい炎を口から放出した。

「うわぁ!」

「や、やっぱりドラゴンと言えば火炎攻撃かッ?」

 突如自分達に放たれる激しい火炎に驚愕するウエルズ率いる別働隊の面々。

 更に別の巨大な翼竜は、その巨体から成る大きな翼で激しい突風を起こして聖龍隊を苦しませる。

「うわあ!」

「くっ、今にも吹き飛ばされそうだ……!」

 激しい突風に飛ばされまいと、態勢を低くしながら周りの物にしがみ付く苺鈴と小狼。

 更に続けて上空から、まるで矢尻の様な形状をしている銀色の光沢輝く身体の飛行型クリーチャーが、地上の聖龍隊目掛けて急速落下してきた。

「うわ!」「きゃっ!」

 降り注ぐ敵の直撃落下に慌てながらも懸命に避けて行く月影トシと花丘イサミ。

 地面に落下したクリーチャーは、鋼鉄の身体なのかコンクリートの道路に身体を埋めるほど激しく直撃する。

 聖龍隊は地面に埋まり込んだ敵の姿に動揺しながらも思わず立ち尽くしてしまっていた。

 しかし敵の上空からの猛攻が止んだと思い少しばかり安堵した、その時。

 地面に埋まった敵が穴から這い上がってきては再び空高く舞い上がったのである。

「ゲッ!」

「ま、まさか……また空から来るんじゃ」

 這い上がっては再度空に飛来していく敵の群れを見て顔色を悪くさせる聖龍隊の面々。

 そして案の定、空に舞い上がった敵は再び地面に向かって垂直落下してきたのであった。

「うわあっ」

「ひぃ~~、いくらなんでも避け切れないよ~~っ!」

 自分達目掛けて垂直落下してくる鋼の身体を持つ矢尻状の敵相手に半ば混乱し始めるセーラー戦士達。

 と、皆が空から突進攻撃してくる敵に混迷しているその時、落下しながら突進する敵目掛けて光線が次々に放たれた。

 鋼鉄の身体を持つ敵も、光線に直撃すると次々に力尽きては地面に墜ちて行った。

「こ、これは……?」

 聖龍隊が光線の放たれた上方を見上げてみると、其処に居たのは最終兵器のちせだった。

「ち、ちせちゃん!」「あ、ありがとう……!」

 ちせの咄嗟の救援に驚き喜ぶキューティーハニーに偽りない礼を申すミスティーハニー、そんな二人にちせは軽く微笑みを返すと再び敵の撃墜の為空高く飛んで行った。

 しかし未だに眼前に聳え立つドラゴンを始めとした巨大な怪物が聖龍隊の前に立ち塞がっていた。

「くそ……せめて、この巨大な怪物達を何とかできれば」

 苦悩するメタルバード、とその時であった。突然メタルバードの通信機のアラームが鳴り響いた。

「な、何だ?」

 驚き動揺するメタルバード、しかし実は鳴っていたのはメタルバードだけでは無かった。

「な、何?」「これって……」「何なんでしょう?」

 メタルバード同様、自分達の通信機が鳴り響く事に不思議がる魔法騎士の光・海・風の三人。

 すると次の瞬間、怪物が群がる空の彼方から四つの光が輝いた。

 そしてその小さな光が聖龍隊が戦闘を続けるアニメタウン上空まで素早く飛来した。

「こ、これは……!」

 飛来してきた四つの光の正体にメタルバード達は驚愕した。

 それはメタルバードことバーンズの一族が治めていた超獣族の王家が彼に遺してくれていた愛機シルバー・ウィング。そして残りの三機は魔法騎士三人が異世界セフィーロでも乗り回していた、赤い一角の獅子の様な姿の炎神レイアース、青き龍の姿の海神セレス、そして対の翼がある緑色の鳳凰の姿の空神ウィンダムの三体の魔神であった。

「な、なんで此処に俺ら専用の戦闘機が……」

 前触れもなく飛来してきた自分達の愛機を見詰めて呆然としているメタルバード達。

 と、四人が呆然としていると、突然メタルバードと融合しているチップバードがメタルバードに話し掛けて来た。

「王子、王子! これはウッズはんが王子たちの為に寄越してくれたんやっ」

「え、ウッズが……!」『……ッ』

 チップバードの言葉に思わず固まるメタルバードと魔法騎士たち。

 チップはそのまま四人に事情を話し始めた。

「実はさっき、ウッズはんからワテの内蔵コンピューター宛てにメッセージが送られてきたんや。ウッズはんは先ほどの急襲で自分の身が危ういと言うのに、最後の力を振り絞って王子たちの為に機体だけを基地の外に発出さてたんや……! そして王子達はこの機体をフルに使って聖龍隊のみんなやこの世界を護る為に精一杯頑張って欲しいと……メッセージに記して、そのまま……!!」

「ウッズ……お前って奴は……!」『…………』

 ウッズ・j・プラントの託された思想を伝えられたメタルバード達は心が締め付けられそうなほど歓喜した。

 そして彼等は、そんなウッズの意思を嬉しく思いながら同時に颯爽と自分達の愛機に搭乗した。

「よしチップ、機体の調子は?」「ハイ! 何もかもバッチシでっせ」

 チップに機体の調子を確認して貰ったメタルバードは、すぐに機体のエンジンをフル作動させた。

「よし……発進!」

 銀色の滑らかな光沢輝く機体シルバー・ウィングはメタルバードを乗せて敵撃墜の為大空へと飛んで行った。

 そしてシルバー・ウィングに続き、魔法騎士たちを乗せた三体の魔神も大空へと飛び立ち、空を覆う無数の敵を撃墜しに向かった

 

 

 

[芽生える不穏と大空中戦]

 

 無数の飛行型クリーチャーが空を覆い尽くし、地上の在りと在らゆるビルや街灯そして道路や車を次々に爆撃し破壊していく。

 そんな大空を舞う敵に対しても、地上の聖龍隊の面々は持てる力の全てを出し切り攻撃していく。

 しかし彼等は地上の敵だけでも苦戦している中、上空の敵にまでも集中して戦う事は困難であった。

 地上で戦う聖龍隊は、まさに天と地の狭間で苦戦を強いられていた。

「……はぁ……はぁ」「はぁ……ま、街が……」

 戦闘による疲労が重なり肩で息をするマーキュリーとジュピターが辺りを見回してみた。

 激しい戦禍により破壊された自分たちの町。砕かれたガラス、鉄屑と化した自動車、折れ曲がった街灯、そして大破し切ったコンクリートやアスファルトの道路を見て、二人のセーラー戦士達は居た堪れない心境に駆られた。

「……いつまで、続くんだろう」「え……?」

 突然のジュピターの言葉に動揺するマーキュリー、ジュピターはそのままマーキュリーの傍らで語り続けた。

「いつになったら平和に暮らせるんだろう……昔からそうだった。どんな強敵を倒しても、どんなに窮地を乗り越えても、また現れ続ける敵達。……私達は何時になったら平和で穏やかに過ごせるのかな。亜美ちゃん……」

「………………」

 友のジュピターの問い掛けに返す言葉が見つからず悲痛な思いに駆られるマーキュリー。

 

 そんな地上の格闘の最中、上空では先ほど自分達の愛機に搭乗したメタルバードと魔法騎士(マジックナイト)の光・海・風の計四人が各々の戦闘機で飛来する敵を次々に撃墜していった。

「よしッ、この調子でドンドン行くぞ!」

「うん!」「ええ!」「解りましたわ」

 メタルバードの呼び掛けに威勢よく返事する光と海と風。

 四人は更に上空の飛行する魔物やクリーチャー・モンスターの類を撃破していく。

 銀の翼を鋭い刃にして飛行しながら敵を一刀両断にし、時には遠方の敵目掛けて一筋の光線を連射してみたり、更には光線のエネルギーを溜めて巨大な光の弾にして発射したりと、丸みを帯びた銀色の機体を自在に変形させて思うがままに滑空しつつ戦うメタルバードのシルバー・ウィング。

 そしてシルバー・ウィングに負けず劣らず、上空を我が物顔で飛行する敵を瞬く間に倒していく魔法騎士たちが搭乗する三体の魔神。

「はあァッ!」

 凄まじい炎の剣で周囲の敵を次々に斬り落としていく三機の中では最強の剣の使い手、獅堂光(しどうひかる)が搭乗する赤き一角の炎神レイアース。

 敵の猛攻を目にも止まらぬ俊敏さで回避しつつ反撃を繰り出す龍咲海(りゅうざきうみ)が搭乗している青き龍の海神セレス。

 周囲の敵からの猛攻を耐え凌ぎつつ、的確に反撃に転じては敵の群れを撃墜していく鳳凰寺風(ほうおうじふう)の空神ウィンダム。

「よし、良い調子だなオレ達の戦いっぷりは」

 魔法騎士らの空中戦を見て、自分たちの戦いに順調さを感じるメタルバード。

 そんなメタルバードや魔法騎士たちが激しく空中で無数の怪物の群集に一歩も怯まず対峙している、その時だった。

「あッ、アレは……!」

 メタルバード達の目に飛び込んで来たのは、怪物の群れに囲まれて身動きを封じられてしまっている最終兵器のちせの姿だった。

 ちせは飛行しつつ空中に停止しており、完全に自分の周りを敵の群れに取り囲まれ、思うように動く事が出来ずにいた。

 困惑するちせ、するとそれを見兼ねたメタルバードが声を荒げて魔法騎士の三人に言った。

「お、オイ! ちせが追い詰められてる、早く助けるぞッ!」

「う、うん!」

 突然の呼び掛けに戸惑いつつも、光たち三人の魔法騎士は全速力で窮地の状態であるちせの方に滑空していく。

 そして四人は、ちせを取り囲み彼女を追い詰めていた怪物達を一瞬で撃墜して、ちせの窮地を救ったのである。

「大丈夫かッ、ちせ!」

 機体のマイクで彼女に呼び掛けるメタルバードの問い掛けに対し、ちせは唖然とした表情で固まっていた。

「大丈夫でしたか、ちせさん」

「す、少し怪我しているわね……」

「だ、大丈夫なの? 少し休んでいても良いんじゃない……?」

 少しばかり顔や体に怪我を負っているちせを見て心配する風・海・光が声を掛けると、ちせは静かに答えた。

「あ…………だ、大丈夫。ちょっと傷付いただけだから……まだ戦えます」

 すると、このちせの言葉を聞いた光が強くちせに言い返した。

「何言ってるの! 例え少しだろうと、ちゃんと怪我は治して置いた方が良いよ!」

「……」

 光の言葉に目を丸くして固まってしまうちせに、光に続いて海と風の二人も話し掛けて来た。

「光の言う通りよ。さっきからちせさん、戦い過ぎです。無理せず少しは休んでも良いんですよ」

「…………」

「光さんや海さんの仰る通り。ちせさん、何も貴女だけが戦える訳では無いんですし、御無理を為さらず御休息を摂っても構いませんわよ」

「……」

 三人の言葉にちせが呆然としていると、メタルバードがそんな状態のちせに問い掛けた。

「どうしたんだちせ。三人の言うとおり、無理をせず少しは休んでいても良いんだぜ。オレ達はこの愛機で思う存分お前の代わりに戦っといてやるからよ」

「う……うん、その…………ありがとう」

 もどかしい態度で言葉を返すちせに、メタルバードは愛想よく話し返した。

「良いって事よ。何より、女に無理させちゃオレの名折れだぜ」

 メタルバードはそうちせに言い残すと、そのまま魔法騎士の三人と再び戦闘に突入した。

「…………………………」

 思いも寄らない言葉を掛けられて、ちせは穏やかながらも心と頭の中が真っ白に成ってしまっていた。

 今の今まで、兵器と成ってしまった自分に掛けられる戦闘中の言葉は全て戦いの際の命令や指令ばかりで、誰も自分に労わりの言葉を掛けてくれる者など皆無であったからだ。

 ちせは、こんな悍ましい兵器と化してしまった自分に向かって掛けてくれる労わりと優しい言葉に、内心感動していた。

 

 更に空中での戦いは激しさを増し、一向に減る様子の無いクリーチャー達に増加していく新手の敵モンスターの群れ。

 減る処か戦力を増していく敵軍勢に気が滅入り始める聖龍隊士たち。

「はぁ、はぁ……」「はぁ……き、キリが無いわ」

 互いに背を合わせながら向かってくる敵を倒していくものの、敵からの猛攻に次第に疲れが見え始めるキューティーハニーとミスティーハニーのハニー姉妹。

 そして彼女達の周りで戦い続けている聖龍隊の面々も疲労が溜まる一方であった。

 そんな切羽詰った状況下の中、疲労により大破した自動車に背を付け座り込むシュウジの姿を確認したウェルズが、心配して歩み寄る。

「おい……大丈夫か、シュウジのあんちゃん」

 疲れ切った顔で問い掛けるウェルズに、シュウジも同じく疲れ切った表情で答えた。

「あ、ああ……なんとか」

 そしてウェルズは疲労で腰を下ろしているシュウジに自分の肩を貸してやり、シュウジを担ぎながらウェルズは歩み出す。

「い、いや……すっかり舐め切ってたぜ。まさか此処まで激しい戦闘になるとはよ……」

「ああ……ちせ、それに他のみんなも……大丈夫なのか」

 肩を担がれながら呟くシュウジの言葉に、ウェルズは微かに苦笑を浮かべながらシュウジに話し掛けた。

「大丈夫、みんなも疲れは出ているが大事無い。でも疲れ切っているとはいえ、みんな必死に戦い続けている。ほら、あのちせだって頑張っているじゃねえか」

 そう言うとウェルズは上空の方に顔を向け、ウェルズに続いてシュウジも空の方に目を向けた。

 其処には背中を中心に機械の部分を突出させて飛行しつつ周囲の敵を撃破していくちせの姿が在った。

「………………」

 懸命に戦い続け、機械の翼を広げて飛行するちせの姿を見て、思わず呆然と見惚れてしまうシュウジ。

 すると、そんな状態のシュウジにウェルズが唐突に声を掛けた。

「……そう言えば、まだ聞いてなかったな」

「え、何を?」

 唐突に訊ねられたシュウジが唖然としつつも訊き返すと、ウェルズは平然と訊ねる。

「ほら、お前とちせの名前だよ。まだ下の名前しか聞いてないから」

「な、名前なら既に教えて……」

「だから、上の名前。姓名って奴だよ。まだ俺やみんなは聞いてもいないんだぜ。この戦いが終わったら改めて俺達に名乗ってくれや」

「…………!」

 ウェルズの話を聞いて、シュウジは目を見開いて表情を固めてしまう。

「ん……ど、どうしたんだ? そんな顔して……」

 突然表情を変えて固まるシュウジを目の当たりにして戸惑ってしまうウェルズが訊ねると、シュウジは思い詰めたような神妙な面持ちでウェルズに呟いた。

「な、名前……名前……」「……?」

 愕然とした表情で呟き始めるシュウジに困惑するウェルズ。

 すると次の瞬間、シュウジの口から思いも寄らない言葉が出た。

「名前……俺の名前って……名前って、有ったか?」

「…………へっ?」

 シュウジの発言にきょとんとしてしまうウェルズ、そして彼はシュウジに問い返した。

「あ、有ったかって……な、何を言ってるんだ……?」

 険しい表情で問い返すウェルズの言葉に、シュウジは神妙な面持ちで答えた。

「俺……今の今まで、下の名前でしか呼ばれた事が無いし……上の名前なんて、記憶に無い……!」

「ッ……!?」

 シュウジの言葉を聞いたウェルズは驚愕し言葉を失った。

 

 

 

[追い詰められる英雄達]

 

 激しい戦禍の中、聖龍隊の誰もが己の力を使い果たしては次々に地面に膝を着いて力尽きて行く。

 そんな状況下でも聖龍使いだけは持てる力の全てを出し切って、限界ギリギリまで刀を振るい続ける。

 そして、そんな聖龍使いの姿を見て、彼を慕うミラー・ガールも必死に聖龍使いの補佐を務めながら共に敵中に身を投じるのであった。

 自然の力を応用した様々な剣術を使いこなし見事に戦い続ける聖龍使いと、そんな彼の死角を無我夢中で己の能力を用いてカバーしつつ応戦するミラー・ガール。

 刀と盾、闘と護、まさに攻防の役割を物の見事に果たしている武人と聖女。二人の戦う様を見た聖龍隊の面々はその勇姿に思わず目を奪われてしまう。

 強き意思を持つ武人と、優しき慈愛の精神に満ちている聖女を見た聖龍隊の面々は、最後の力を振り絞って懸命に戦う二人の許に駆け寄り、再び戦いに加わるのだった。

「み、みんな……!」

 自分の許に駆け付けてくれる仲間を見て、疲労の表情で驚くミラーガールに仲間達は言った。

「二人が頑張っている姿見てると、なんだか放っておけなくて」

「セーラームーン……」

 優しい笑みを浮かべて言葉を掛けてくれるセーラームーンに続き、キューティーハニーとミスティーハニーのハニー姉妹も言葉を掛ける。

「私達も、まだ戦えるわ……!」

「みんなで町を……この世界を護り抜いてみせよう!」

「キューティーハニー、それにミスティー……」

 全身傷だらけだというのに笑顔で言葉を掛けてくれる二人の姉妹戦士に感銘を受けるミラーガール。

「諦めたくないっ。また此処に居るみんなで笑い合える日の為にも……絶対勝って、生きて戦いを終わらせよう」

「そうよ……此処で死んじゃうなんて、そんな終わり方はゴメンだわッ!」

「さくらちゃん、ナースエンジェル……!」

 自分より一つとはいえ年下だというのに、健気に穏やかな笑みで言い放つ二人。

「私達だって同じ気持ち……ッ! みんな生きて、自分の家に……私達の帰りを待っていてくれる、家族の許に帰ろう」

「そうだぜ……!」

「可憐な聖女が戦っているのに、自分だけが休んでいるなんて……男として恥ずかしい事は出来ないしね」

「イサミちゃん……トシくん、ソウシくん」

 しんせん組の三人が放った力強い言葉に、胸の奥から熱いものが湧き出てくるのをミラー・ガールは感じ取っていた。

「わ、私も……ううん、私達も最後まで戦うよ」

「結さん……!」

 更に新しく聖龍隊に加わったコレクターズの一人コレクターユイも、埃塗れの顔でミラーガールに話していく。

「私、本当は凄く困ってたの。……思わずテレビでよく見ていたヒーローヒロイン達のチームに入れるって、表向きは凄く嬉しい振りをしていただけで……実際は、コムネットの中だけでしか戦った経験しかない私達が現実の世界でもセーラームーンやミラーガール達の様に行くかなって凄く不安だった」

「……」

 結の言葉に呆然と成るミラーガール。

 結は更に続けて話した。

「……だけど聖龍隊のみんなは、本当に弱い人たちの力に成りたいって想いがいっぱい何だなって、一緒に居て凄く解った。前にウラヌスが私達の事を強く非難したのも、私達に対しての気遣いの裏返しだって、今ではちゃんと理解しているし」

「え……」

 以前コレクターズの三人に、現実世界での実績が無いという名目で、強く彼女達を非難しつつ危険な行為を本来は避けて貰う為、敢えて否定的な発言を結達に言ったウラヌスは、結のこの言葉に驚いた。

 そして結に続き、コレクターハルナとコレクターアイの二人もミラー・ガールや他の聖龍隊の面々に語った。

「私も結ちゃんと同じです。最初は凄く不安で正直怖かったですけど、それでも懸命に弱い人たちの為に戦い続ける皆さんの御姿を見てたら自然と勇気が湧いてきて……私、最後まで皆さんと一緒に頑張りますっ」

「私だって結や春菜と同じ。せっかく此処まで頑張って来られたんだし、何より諦めたくは無いわ! みんなと最後まで戦ってみせる……!」

「……!」春菜と愛の力強い言葉に感激するミラーガール。

 すると今度は、聖龍隊メンバーの話を聞いていた助勢に駆け付けた銀天狗が口を開いた。

「はっはっは、威勢の良いお譲ちゃん達だ。宜しい、この銀天狗も……いや、我々黒天狗党も最後まで御供致そうではないかッ。なぁ諸君!」

『オオゥッ』

 銀天狗の呼び掛けに逞しく返事をするニイハオ姉妹やからくり天狗ゴールデン天狗を始めとしたカラス天狗達の黒天狗党。

「僕達も最後まで……! 特にミラーガール、君には色々と助けられているんだ。クィーン・アースの為にも、この星を……地球を絶対に護り抜いて見せる!」

「やれやれ、お篤い方々だ。まぁ、私も此処に来た時から覚悟は決めていましたし、最後まで戦わせて貰いますよ」

 銀天狗や黒天狗党に続き、以前ミラーガールに様々な形で接触し追い詰めたり救われた事のあるクィーン・アースから駆け付けたカノン、そしてパンサーゾラの息子で元敵であったプリンスゼラの二人もミラーガールに話し掛ける。

 更に其処へ同じく駆け付けたスターライツの三人も、自分達を取り囲む敵陣と向き合いながら語った。

「そうよっ、此処で諦めたらそれこそ全てが終わっちゃうわ!」

「決して諦めない……その強い心が奇跡を呼び寄せるという事を、私達はあなた方に教わりました」

「私達自身、諦めたくない……! みんなと過ごしてきたこの街を、この星を……絶対護って見せる!」

 ファイター・メイカー・ヒーラー、三人の力強い闘志は周りの者たちに敏感に伝わっていく。

「この世界の人々が此処まで闘志を滾らせて努めているんだ。私達も最後まで戦うぞっ!」

「ええ、それ以上にこの怪物達の好き勝手など認められませんからね」

「よっしゃッ! 気合い入れてコイツ等全部やっつけよう!」

 師であるクレフの言葉に同意するランティスに、意気込みを昂らせるフェリオ。

 駆け付けて来てくれた聖龍隊の友等の真情に、ミラーガールはもちろん聖龍使いも心の内で静かに感極まった。

 と、ミラーガールが皆々の言葉に耳を傾けているその時。

 談話をしている皆々に、一体の怪物が大きな光の弾を放ったのだ。

「あ!」「い、イケない……!」

 怪物が放った光の弾に気付き戸惑う結にネプチューン。

 その時ミラー・ガールは躊躇することなく咄嗟に飛んでくる光の弾の前に立ち塞がった。

 そしてミラーガールは右手のリストバンドに変形しているコンパクトを盾に変化させると、その盾ミラーシールドを前に突き出して言い放った。

「ミラー・ウォール!」

 言葉を放った瞬間、前方に巨大な鏡の壁が現れ、前から飛んで来た光の弾を意図も容易く弾き返しては、弾を放った怪物に返し当てた。

「グオオォッッ」

 自分の放った球を弾かれ、返り討ちにあった怪物は断末魔を上げながら消滅した。

 だが、そんな時であった。

 無数の敵達に取り囲まれる聖龍隊を見下ろすかのように、敵の群集の真上に一人の黒ローブが空中に姿を現した。

「あ!」「あいつ……!」

 黒ローブを見て顔つきを険しくさせる星夜にトシ。

 そして黒ローブは、まるで指揮を促すかのように右手を前に突き出して怪物の軍勢に指示を出した。

「ヤレ、一斉に襲い掛かるのだ……!」

 指示を受けた怪物の群集は、一気に取り囲んでいた聖龍隊の皆々に飛び掛かった。

「来たぞッ!」

 怪物達の一斉攻撃に声を上げるウエルズ。

 そして聖龍隊は皆、迫りくる怪物達に休む暇も無く次々に応戦していった。

 しかし迫る敵の軍勢は休みなく聖龍隊に襲い掛かり、隊士達の方は一息入れる暇もないほど戦意を振るい続ける。

 と、皆が敵の猛威に悪戦している、正にその時。

「おりゃあ!!」

 空からメタルバードが何の前触れもなく落下しては、真下の敵勢の中に飛び込んでは次々に敵を薙ぎ倒していった。

「め、メタルバード!?」

 目の前に突然落下してきたメタルバードに驚いた聖龍隊の面々、ミラーガールの声に振り返ったメタルバードは愛想よく返事をする。

「ヘヘ、空の敵は一通り片付け終わったからな。地上では何やら苦戦しちゃっているみたいだから速急に駆け付けてきたぜっ」

 美少女達の前という事もあり、調子よくミラーガール達に笑顔を見せて乱戦に加わるメタルバード。

 するとメタルバードに続いて魔法騎士(マジックナイト)の光・海・風の三人も聖龍隊の目の前に飛び降りては参戦するのだった。

「光!」「海……!」「風……三人とも無事かい?」

 三人の魔法騎士を見て微笑みを浮かべながら、それぞれ名を呼ぶランティス・クレフ・そしてフェリオの三人。

 名を呼ばれた三人は、名を呼んだ男三人に力強い微笑みで言葉を返す。

「地上でみんなが追い詰められているのが目に入ったから、慌てて駆け付けたの」

「そもそも、いくら能力者や助っ人が大勢居る今の聖龍隊でも、こんな数相手じゃ苦しいわよ……!」

「でも、皆さんで力を合わせればきっと道は開かれますわ。だから皆さん、どうか私達も一緒に戦わせてください」

 駆け付けた光・海・風の言葉を聞いたミラー・ガールは、威勢よく三人に言った。

「ええ! 一緒にお願いします。光さん、海さん、風さん!」

 そして魔法騎士の三人もメタルバードに続いて聖龍隊の面々と激しい乱戦の中を入り乱れた。

 

「ええいッ!」「この野郎!」

 誰も彼もが自分達に牙を向けてくる敵達に対して必死に応戦し続けた。

 もはや乱戦の域を超えて混戦状態の戦場の中、各々懸命に数多の怪物達を打ち倒していく。

「ショット(撃)!」

 さくらもカードの一枚、ショット(撃)で周囲の敵に魔法の弾を放っては貫通させて撃退していく。

 更に上空からは最終兵器のちせが光線を放っては地上の怪物達を撃破しつつ、聖龍隊の支援砲火を自ら行う。

「樹念縛(じゅねんばく)!」

 聖龍使いは日本刀の聖龍剣を地面に突き刺し、技の名を唱えると刀を突き刺した地面から無数の植物のツタが生えて来ては、複数の敵にツタが纏わり付き締め上げる。

 と、皆がそれぞれ周囲の敵を蹴散らしている時であった。

 一体の怪物が必死に応戦しているナースエンジェルの死角から彼女を襲い掛かろうとしているのを聖龍使いは気付いた。

 怪物はナースエンジェルが眼前の敵達に集中している隙を突いて彼女の真横から迫りつつある。

 そして一気に怪物はナースエンジェルに襲い掛かる。

 次の瞬間、怪物に気付いたナースエンジェルであったが既に遅く、怪物は彼女の寸での所まで迫っていた。

 赤くギロリとした大きな目玉でナースエンジェルに襲い掛かる怪物、そして怪物に気付くものの一瞬の出来事ゆえに応戦する事が不可能であるナースエンジェルは蒼然の表情を浮かべて愕然となった。

 だが、その瞬間である。

 ナースエンジェルと怪物の間に聖龍使いが割って入り、左腕で怪物の攻撃を防いだのだ。

「! 聖龍使い……!」

 自分に降りかかる攻撃を代わりに自身の左腕で防いでくれた聖龍使いの突然の行動に驚愕するナースエンジェル。

 一方、怪物の攻撃を防ぎ受け止めた聖龍使いの左腕の甲冑部分は激しく破損してしまうのだが、聖龍使いは平然とした様子で何事も無かったかの如く攻撃してきた怪物を袈裟斬りに一刀両断する。

「聖龍使い! 腕が……」

 自分を護る為に左腕で攻撃を防いでくれた聖龍使いに声を掛けるナースエンジェルであったが、聖龍使いはそんなナースエンジェルに恩着せがましくする事無く言葉を返した。

「なに、利き腕で無いし大した事ではない。それよりも戦いに集中せい」

 そう言うと聖龍使いは再び混戦状態の敵勢の中に突っ込んで行った。

「…………」

 今までも何度か自分の身体を盾にしては仲間や一般の人たちを死守してきた聖龍使いではあったが、再びその自己犠牲の護り方にナースエンジェルは悲痛な心境に駆られるのであった。

 

 大軍の敵勢と激しい混戦をしていた聖龍隊であったが、次第にその場の全員が長引く戦いの疲労が溜まり次々に膝を付いていってしまう

 大方の敵勢力は削れたものの、極度の疲労が積み重なっている聖龍隊の面々にとって、もはや戦いは苦難であった。

 そんな同志の姿を見て、聖龍使いは決意する。

「ミラーガール」「え、何……?」

 聖龍使いはすぐ隣に居たミラー・ガールに言葉を掛ける。ミラー・ガールが訊き返すと聖龍使いは敵方を睨み付けながら言った。

「ワシが単身、敵勢に一直線に攻め込む故、お主は疲労が溜まった同朋達を引き連れて一旦身を隠せ。そして戦力が戻り次第、再び戦いに馳せ参じるのじゃ」

 これを聞いたミラーガールは血相を変えて聖龍使いに言い返した。

「な、何言っているのよ! そりゃ最初よりもかなり敵の数が激減しているとはいえ、たった一人で太刀打ちできる数でも無いでしょっ! 危険だわ」

「……俺の事など気にするな。俺は、お前等が無事であればそれで良い……では!」

 ミラーガールにそう告げた瞬間、聖龍使いは単身数多の敵勢に駆け出した。

「っ……!」

 力尽きた自分達の代わりに一人戦いの渦中に身を投じて行く愛しき人の姿に愕然と成る一人の聖女。

 そして聖龍使いは敵陣の中に飛び込んだ。

「修司ーーッ、死ぬなーーッ!!」

 聖龍隊で一際付き合いの長いメタルバードは、単身敵の渦中に飛び込む友の姿に騒然と成り、思わず叫ぶ。

 多種多様の怪人・怪物・魔物の類が犇めき合う敵勢の中で、聖龍使いは果敢に刀を振るっては猛然と立ち向かう。

 そんな聖龍使いの姿を見て、上空で敵勢力の軍団に指示を出していた黒ローブが狂気に満ちた口振りで叫んだ。

「ヒャーーハッハッ! 良いぞ、ヤレ、殺せ! 嬲り殺しちまいなッ!!」

 まるで激闘の中で傷付いていく聖龍使いを見て狂喜するかの如く配下の勢力に命ずる黒ローブ。

 そんな最中、聖龍使いは怯む事なく次々に敵を斬り捨てていった。

 時に激しく、時に荒ぶり、時に執拗に、時に冷静に、聖龍使いは刀を振るい迫りくる敵を斬断していく。

 しかし時に敵の攻撃を身体に受け、時に敵の猛攻を静流の川に流れる一枚の葉の如く自然に流れるように回避し続け懸命なる戦いに挑み続ける。

 だが、戦い続ける聖龍使いの甲冑は敵の猛攻を喰らう度、激しく破損して遂には左腕・右膝・左腹・右の顔側面の部分が曝け出した状態にまで成り果ててしまう。

「し、修司……!」

 幾度となく攻撃を浴びて破損だらけの甲冑になってしまった聖龍使いの容姿を見て、悲痛な思いを抑えきれないミラー・ガール。

 そして聖龍使いは遂に片膝をついてその場にしゃがみ込んでしまう。

「あッ……!」「こ、このままじゃ遣られる……!」

 力尽き、しゃがみ込んでしまう聖龍使いを目の当たりにして蒼然と化す聖龍隊の面々。しかし既に自分等も激しい戦闘により著しく力を消耗してしまっているが為に、ただ現状を見守る事しか無かった。

「はぁ、はぁ……」

 肩から息をする聖龍使いを見て、ミラーガールは胸に溜まっていた思いを吐き出すかの様に叫んだ。

「修司!!」

 

 

 

[奇跡を呼び起こす魔鏡と変動無き武人]

 

 ミラーガールが叫んだ、その瞬間。

 彼女の左腕に装着していたリストバンドに変形していた魔法のコンパクト、通称セイント・コンパクトが突然眩いほどに青白く輝き出した。

「え?」「な、何!?」

 突然発光し出すミラーガールのコンパクトに驚愕する面々。

「! ……!」

 突如輝き出すコンパクトに、黒ローブは聖龍隊の面々と少し違い、異常なまでに愕然と驚く様子を見せる。

 するとミラーガールのコンパクトから光のベールが球状に広がっていき、彼女の周囲の聖龍隊や駆け付けて来た助っ人、更には傷付き疲労困憊している聖龍使いをも包み込んだ。そして光のベールは光の粉をシャワーの様に降り注ぎ、中に居る聖龍隊の皆は光のシャワーを浴び続けた。

 そして光の放出が治まると同時にリストバンドのコンパクトから発生した光のベールも青白い輝きも次第に治まっていく。

「い……今のは?」

 突然の光に思わず目を閉じ、更に出現した光のベールに呆然としていた面々は辺りを見回してみる。

 すると一同は、ある事に気付いた。

「あ、セーラームーン! あなたの傷……」

「え? ……あ、治ってる!」

 スターファイターに指摘されたセーラームーンは自分の身体を見回してみると、なんと先ほどまで体中にあった傷が全て消えている事に気付いて驚嘆した。

「姉さん、傷が……!」「ミスティー、そういう貴女も……」

 互いに相手の身体の傷が消失している事を言い合うキューティーハニーとミスティーハニーの姉妹組。

「あ、あれれ? 傷だけじゃなく、なんだか疲れも消えているみたい」

「し、信じられないけど……傷だけじゃなく疲労までも癒えたみたい」

 自分達の傷の消失だけでなく身体に蓄積されていた疲労感でさえも嘘の様に消えて、驚異の意に至る木之元桜とナースエンジェル。

「き、傷が……体の痛みがウソみてえに消えた! ヤッホゥ」

「信じられない……傷が全部消えてる……!」

「それに……何だか体がとっても軽い!」

 身体の傷が跡形もなく消えて跳び上がるほど驚喜する月影トシに、驚きつつも喜びに溢れる雪見ソウシ、そして傷の消失だけでなく身体に積み重なっていた疲労という重みすらも消滅した為、身体が嘘の様に軽く感じる事に嬉々となる花丘イサミのしんせん組三人。

「す、スーツの傷や損傷も無くなってる」

「それどころか、まるで作られたばかりの……そう、新調されたばかりのスーツに戻っているみたいに綺麗ですわっ」

「何が起きたの……? 身体の傷や疲労、更にはスーツの破損個所までも完治しているなんて……」

 身体の傷はもちろん、自分達が着服しているコレクトスーツの損傷部分までも修復されている事に驚きを隠せない結・春菜・愛のコレクターズ三人。

「い、一体何が……?」

「み、ミラーガールの腕に装着しているコンパクトから放たれた光による効果なの……?」

「これも……いいえ、これが魔鏡聖女ミラーガールの力なのでしょうか……!?」

 突然放たれた光を浴びて起こった事態に魔法騎士(マジックナイト)の三人、獅堂光(しどう ひかる)龍咲海(りゅうざき うみ)鳳凰寺風(ほうおうじ ふう)は驚き戸惑うばかり。

 更に聖龍別働隊の面々も主戦の者達と同様の事が自分の身に起きているのに驚いていた。

「小狼、身体の傷が治ってるわよっ」

「苺鈴、お前こそ傷が綺麗に消えている……!」

 喜び合う小狼と苺鈴の二人に続き、ウェルズと青児が指を差し合いながら話し出した。

「青児お前……! 方や顔の出血が止まってるぞッ」

「ウェルズこそ、一切の傷が消えてる……!」

 そしてハイレグレオタード姿の高木はるかと芹沢ルリ子扮する鎧天狗も面を外して語り合った。

「嘘みたい、怪我が全部消えている……!」

「不思議……傷が全て消えているなんて」

 同じく体中の傷や疲労が全て消滅している事実に驚嘆の意に駆られつつある、ミラーナイトこと姿桐男(すがたきりお)の呼び掛けに集まった一同も突然の事態に驚いた。

「こ、これは……そうか! これもミラーガールの持つ奇跡の力による賜なのだな! はっはっは、これで怖れるものは無いわッ」

 傷が消えた事をミラー・ガールによる能力の賜であると豪語する銀天狗を見て、事態を呑み込めない他の黒天狗党ニイハオ姉妹にからくり天狗ゴールデン天狗そして大勢のカラス天狗達は唖然としてしまう。

「これもミラーガールの能力(ちから)なのか……?」

「す、凄い……! クイーン・アースにも、此処までの治癒回復能力を持った者は居ないというのに」

 能力の凄さに驚きつつも歓心を示すプリンスゼラとカノン。

「これが、彼女の魔法なのか? セフィーロで確認されている、どんな回復魔法よりも凄まじい効力だ……!」

「例えて言うなら……あの聖龍使いに対する彼女の想いが、あの子自身に秘められている魔力を向上させたのかもしれない」

「成るほど。つまりは彼女の聖龍使いに対しての優しい感情が此処までの回復魔法に発展したって事なんだな」

 凄まじい程の効力に、思わず感心してしまうセフィーロからの助っ人クレフ・ランティス・フェリオの三人。

 そしてその光景を上空で目の当たりにしていた黒ローブは、怒りと苛立ちを露わにするかの様に激しく歯軋りを鳴らしていた。

 

「い、良いぞッ。これで再びフル戦力で敵勢と立ち向かえる! お前等、一気に敵方を畳み掛けるぞッ!」

『ハイッ』

 ウェルズの呼び掛けに返答する宇崎星夜、デューイ、シュウジの三人。

「良し、オレ達も行くぞッ! 回復した今こそ好機だ!」

 続いてメタルバードも後方の仲間達に呼び掛けて攻撃態勢に入った。

 そして皆が再び、一斉に周囲の敵軍と激突しようとしたその時、セーラーサターンが何かに気付いた。

「え……うそ……?」

「ん、どうしたのほたるちゃん……えッ? まさか……」

「どうしたの二人とも……え。そんな……なぜ」

 サターンの様子に気付いたちびムーンが彼女の視線を追って目を向けると、目に飛び込んできた光景にサターンと同じく愕然としてしまう。そして二人の様子に気付いたミラーガールも視線の先に目を向けた途端、目の色を変えて驚嘆した。

 更に他の面々も挙って目を向けてみると、其処には未だに鎧が破損し体に受けた傷が完治していない状態の聖龍使いが静かに膝を付いていたのだ。

「え! なんで……!?」

「なんで、聖龍使いだけが回復してないんだ?」

 壊れかけの鎧を身にまとう聖龍使いを見て驚倒する星夜とデューイ。

「何で聖龍使いだけ回復できてないの? 私達は綺麗さっぱり傷が治ったっていうのに!」

「可笑しいわ……私達は傷もコスチュームも全て治療修復されているのに、聖龍使いの方は怪我も身に纏う鎧も元に戻って無いなんて……!」

 光が放たれる前と何ら変わり映えしない聖龍使いの容姿を見て戸惑いを隠せないセーラームーンとキューティーハニー。

「聖龍使いだけが治らないんなんて……」

「ま、まさか……さっき私の魔法が効かなかったのと同じ……なのかな?」

 驚くさくらの横で、先ほど聖龍使いに使用した回復能力が効果を示さなかった事と示し合わせ始めるナースエンジェル。

「せ、聖龍使いだけ、まだボロボロだぜ? どう云う事だ?」

「わ、解らないよ、そんな事……」

「なんで……聖龍使いだけ私たちみたいに成らない訳?」

 依然と傷だらけの聖龍使いを目の当たりにして戸惑いを見せる新撰組のトシ・ソウシ・イサミ。

「聖龍使いだけ、まだ傷だらけ……何で?」

「彼だけミラーガールの能力を受け付けないのでしょうか?」

「で、でもなんで……?」

 動揺の色を顔に表す結・春菜・愛のコレクターズの三人。

「何でなの? ミラーガールの魔法の根源は相手を思いやる想いだって聞いているのに……!」

「今発動した魔法は聖龍使いに対するミラーガールの純粋な想いによる魔法なのよっ。それなのに何故、当の本人である聖龍使いにだけ効果が表れない訳!?」

「謎ですわ……」

 険しい顔つきで効果の見えない聖龍使いを言い示す魔法騎士の光・海・風。

 

 眼前の光景に理解できず、頭の中が混乱し始める一同。

 しかしそんな折、上方で騒然と化す聖龍隊の面々を見下ろしていた黒ローブが聖龍使いに向かって暴言を吐き出した。

「ハッハ! やっぱりお前は何の効力も得られないんだなぁ。ま、それが当然と言えば当然だろうけどよ」

「………………」

 黒ローブの暴言に何も言い返さない聖龍使いを見て、他の皆々は更に聖龍使いへの不安を感じてしまう。

 と、その時。聖龍使いはふっと立ち上がると、そのまま後方で騒然と化している聖龍隊の一同に背中越しで告げた。

「皆の衆」『ッ……!』

 声を掛けられ異様なまでに怯む皆々、そして聖龍使いはそんな皆に言った。

「ワシが何故、何の変化も起こらないのか……それは何れ解る事じゃろう。しかし今は! 今は戦いにのみ集中するのじゃ……!」

『………………』

「そして全員、無事に生き延びるのじゃッ。良いな!」

 言葉を失う聖龍隊の一同に強く告げる聖龍使いの言葉に、聖龍隊の誰もが心と頭の中に違和感を抱えながらも小さく頷いて聖龍使いに同意する。

 

 皆の反応を確認した聖龍使いは、再び聖龍剣を両手で構えて戦闘の態勢に入る。

 一方の黒ローブは、そんな聖龍使いや聖龍隊の面々を目の当たりにしてフードで隠している顔の眉間に険しい怒りの皺を浮かべていた。

 

 こうして聖龍使いと聖龍隊は、再び自分達を取り囲む敵の大群と激戦を繰り広げる。

 

 

 

[一掃する大自然の力と絶対防御の魔鏡]

 

 ミラーガールの能力(ちから)により身体の傷や蓄積していた疲労が全て一瞬で消えた聖龍隊の面々は、再び自分達を取り囲む幾多の敵に向かって猛然と戦いを繰り広げる。

「ええいっ!」「こなくそッ」

 男女ともに激しい攻防を繰り広げ、聖龍隊側と異次元からの敵勢側は双方ともに一歩も譲らず火花を散らし続ける。

 それを見ていた黒ローブは右手を高々と上げて、世界各地からアニメタウンに集結した軍勢を全て招集して、聖龍隊の周辺に向かわせた。

 集まってくる無数の軍勢、しかし聖龍隊の誰もが一歩も退かずに果敢に攻めて行く。

 そして彼等を補助する役割を持つ別働隊の面々も、更には駆け付けた助っ人の面々も勇猛に軍勢に対して挑んでいく。

 しかし怪物の軍勢は、すっかり聖龍隊の周辺、地上も上空も全て取り囲んでしまい、もはや聖龍隊は袋のネズミ状態に。

「か、完全に囲まれた……!」

「イケねえ、こんな状況で仮にも一斉攻撃喰らったら、せっかく回復できたって言うのに全員タダじゃ済まないぞ」

 怪物の軍勢に取り囲まれ動揺するタキシード仮面に続き、一斉攻撃に警戒し出すメタルバード。

 皆が完全に敵方に包囲された事実に動揺の懸念を示しているその時、聖龍使いがミラーガールに言った。

「ミラーガール」「え」

 目を向けると聖龍使いの目に力強い闘志が表れているのを、ミラーガールは感じ取る。

 そして聖龍使いはミラーガールに続け様に語り掛ける。

「お前の先ほどの能力(ちから)……アレは見事なまでに凄まじく素晴らしい能力じゃ。だからこそ、今こそその能力を最大限に使って皆を護るのじゃ! 共に戦う仲間、そして駆け付けて来てくれた友……そしてお前が愛してやまないこの町を! 世界を! お前の意思で護れ、魔鏡聖女ミラーガール!!」

 聖龍使いの力強い言葉に、ミラーガールは無言で頷き返した。

 頷くミラーガールをその目で認識した聖龍使いは、一人数歩駆け出し、そして跳び上がった。

 それを見たミラーガールは咄嗟にミラー・シールドを高く持ち上げて技を発動させた。

「ミラー・ドーム・バリアー!」

 次の瞬間、ミラー・ガールを中心に巨大なドーム状の光の壁が出現し、聖龍使いを除いた全ての仲間達を囲んだ。

「な、何をするのっ、ミラーガール!」

「聖龍使いだけ、まだバリアーの外よ!」

 仲間の女性陣に告げられるものの、ミラー・ガールは堂々とバリアーを張り続ける、その時。

「天雷(あまらがみ)!」

 跳び上がった聖龍使いが叫び、その瞬間、彼の周囲に数多の落雷が無造作に発生する。

「グギャアァッ」「グオッ」

 突如発生した落雷に直撃する怪物達は瞬く間に消滅していく。

「……」「す、スゲぇ……」

 落雷の威力のみに非ず、その雷の数に迫力に圧倒される聖龍隊の面々。

 何よりも、自分達の上空からも落雷が発生してはいるが、ミラーガールの作りだした球状のバリアーに護られ無事で済んだ。

「そ、そうか。俺達を雷から守る為にミラー・ガールは……」

「聖龍使いだけがバリアーの外だったのも、技を使うから……」

 二人の行動事実を把握して心から納得する早見青児と恋人のキューティーハニー。 

 皆が聖龍使いの発生させた落雷の威力に愕然としていた、しかし辺りには未だに無数の敵が現存している有様だった。

「ゲッ、まだ死んでないのがいるのかよ……!?」

 蒼褪め引き攣った顔を見せる同志を目の当たりにして、聖龍使いは再びミラー・ガールに言い放つ。

「ミラーガール」「え……うん、分かったわ」

 声を掛けられたミラー・ガールは、そのたった一言で全てを理解し、ミラー・ドーム・バリアーを展開させ続けた。その戦いぶりは、完全に以心伝心の領域であった。

 一方の聖龍使いは、再び両腕を全開させつつ跳び上がり、そして言い放った。

「天変地異(てんぺんちい)ッ!」

 すると今度は辺りに竜巻・雷・炎などが発生し、怪物達を始めとした道路に点在している、あらゆる物を手当り次第に破壊していった。

「グオオオォ」「ギャアアァァ」

 竜巻に巻き込まれたり、先ほど同様雷に直撃したり、灼熱の炎でその身を焼き尽くされたりと、怪物達は無残にも消滅していった。

『……………………』

 見ているだけで悪寒を感じるほどの現状に、聖龍隊の誰もが顔を蒼褪めさせた。

 そして怪物達は、地獄絵図の様な聖龍使いの技を受けて一体も残らず消滅してしまった。

 

『………………』

 跡形もなく消されてしまった怪物達を目の当たりにして、聖龍隊は皆言葉を失ってしまう。

 そしてミラーガールが自身が作りだしていたバリアーを解除して、バリアーの外に居た聖龍使いに駆け寄り声を掛ける。

「聖龍使い」「……ミラーガール。皆は無事か」

 聖龍使いが訊ねるとミラー・ガールは静かにそして穏やかに答えた。

「ええ、みんな無事よ。御苦労さま」「……」

 ミラーガールが掛けてくれる言葉に、聖龍使いは無言で返した。

 一方、他の聖龍隊の面々は、聖龍使いの驚異の技に多大に驚いていた。

 だが、その時。

「な、なんだアレは!?」突如からくり天狗が指差した。

 皆が指差す方に目を向けると、其処には仔馬ほどある鈍い銀色のサイに似た魔獣の大群が突如として出現していた。

「クソッ、ヤラれてたまるか!」

 突如として眼前に現れる白銀の魔獣を見て、メタルバードは一切の迷いも無く魔獣の群れに突っ込んだ。

「メタルバードっ」

 走り出すメタルバードを見てセーラーマーズが声を掛ける。

 そしてメタルバードは一番先頭の方に居た一体の魔獣に、剣に変形させた右腕を振り下ろした。

 しかし剣が魔獣の身体に直撃した瞬間、辺りに激しい金属音が鳴り響き、剣に変化させた腕を振り下ろしたメタルバードは思わず涙目に成っていた。

「かッ……かてェ……」

 信じられないほどの硬度に驚愕すると同時に、振り下ろした腕を中心に激しく痺れてしまうメタルバードは唖然とした。

 と、その時。メタルバードに先制された怪物が、突然メタルバードに突進し激突した。

「うぐッ」

 鳩尾(みぞおち)に激しく直撃されたメタルバードは一瞬で悶絶してしまう。

「ッ!」「メタルバードッ!」

 仔馬ほどはある怪物に、しかも硬度の高い身体を持つ魔獣に突進されたメタルバードに、聖龍使いもミラーガールも驚愕する。

 一方のメタルバードは直撃を受けた瞬間、見事に突き飛ばされ大破している自動車に激突してしまった。

「い、イテテ……ちくしょーー、アイツ等、なんてェ堅さだ……!」

 メタルバードは厳つい顔で苦痛に喘ぎながらも自分を突き飛ばした怪物の群れを睨み付けた。

 その情景を目の当たりにした聖龍使いは咄嗟に気付いた。

「間違いないぞ、あの怪物共の身体は鋼鉄並みに……いや、鋼鉄で出来ておるんじゃッ」

「そ、そんな!」「攻撃が利かねえじゃねえかよッ」

 聖龍使いの言葉に驚きを隠せない苺鈴と星夜。

「ど、どうするんです? 聖龍使い……!」

 ウォーターフェアリーが困惑した面持ちで訊くと、聖龍使いは少し考え更け、そして意を決して言葉を放った。

「よし! これで行こう。さくら、主の出番じゃ」

「え? 私の……」

 聖龍使いに呼び掛けられ多少戸惑ってしまうさくら、そして聖龍使いは彼女を始めとした仲間達に気迫に満ちた眼付きで呟き言った。

「まず主が………………次にメタルバードと…………が…………これで行くぞ」

「……は、はい」「良し、それで行こう」

 聖龍使いの案に、さくらとメタルバードは頷いて同意する。

 

 そして聖龍隊の一番先頭に身構えたさくら、その少し斜め後方に指示を出す聖龍使い、更にさくらの後方にはメタルバードを中心としたセーラーウラヌス・鳳凰寺風、更にコレクターズの結・春菜・愛の三人、計6人がジッと身構えていた。

 そんな折、敵勢である白銀の怪物が一斉に前方の聖龍隊目掛けて突っ込んで来た。

「お前達は作戦の為動くな! 他の者等でそれぞれ対応するのじゃッ!」

 作戦を行うに必要な面々は何もせず、他の者で対処するようにと豪語する聖龍使いは一足先に向かってくる敵方に刀を振るった。

「雷光斬(らいこうざん)」

 聖龍剣から雷の斬撃を放つ聖龍使いに続き、他の者等も応戦していく。

「スター・シリアス・レイザー!」

「スター・ジェントル・ユーテラス!」

「スター・センシティブ・インフェルノ!」

 スターライツの三人、ファイター、メイカー・ヒーラーが各々の必殺技で迫りくる敵に懸命に応戦する。

「はァッ」

 キッドも地面に硬化させ棒状に変化させた鞭を突き刺して、地面から無数の植物のツタを生やして前方の敵の群れを一体ずつ縛り上げ身動きを封じて行く。

「えいっ」

 ウォーターフェアリーも巨大な水の塊を敵の群集の中に発生させて、敵の動きだけでも止めようと必死に成る。

 聖龍隊の各々が鋼の身体故に殆ど攻撃が効かない敵の群集に、自分達に近寄らせないようにするだけの応戦を懸命に続けていた。

 そして、頃合いを見計らって聖龍使いがようやく指示を出した。

「さくら、今じゃッ!」

 聖龍使いの呼び掛けに頷いたさくらはバトンを前に突き出してカードを発動させた。

「ミスト(霧)」

 するとさくらの周囲に濃い霧が発生し、それを見た聖龍使いはすかさずメタルバード達に告げた。

「今じゃ! 急ぎ敵方に向かって風を吹き付けるのじゃッ。霧を全て敵勢の方に吹き飛ばすのじゃ!」

「よしみんな、オレに続けッ」

 聖龍使いに指示され、メタルバードが周囲で態勢をとっていた面々に言った。

 そしてメタルバード・ウラヌス・風、そして風を操れるコレクトスーツ・ウィンドウスーツに着用を変えた三人のコレクターズは各々強風を発生させ、さくらがカードで生み出した霧を敵方に吹き飛ばしていく。

 さくらが発生させたミスト(霧)は敵の群集を包み込むように相手方に吹き飛んでいった。

 するとミスト(霧)に包まれ触れた敵の白銀の身体が、次第に赤茶に近い色に変色。

 身体が赤茶色に変色した敵は、不思議と動きすら鈍くさせて、次第に苦しみながら身動きが出来なくなっていった。

 それを見たクレフが驚いて声を上げる。

「な、なんなんだ? あの怪物達が赤く茶色に体を蝕まれて動かなくなっていく……!?」

 驚くクレフに彼の側に居た小狼が語る。

「さくらが発動させたミスト(霧)のカードは金属を腐食させる効果があるんです。修司さん、いや聖龍使いはそれを見越してさくらにミスト(霧)のカードを使わせたんです」

 小狼に続き、タキシード仮面もクレフに語った。

「まぁ、金属であれば何でも腐食させ錆びさせてしまうからこそ、メタルバードを始めとした風を司る能力者達に突風を起こして霧が敵方の方にだけ飛散するようにしなきゃいけないんだけどよ。下手したら俺達の道具や武器だって錆だらけに成って使い物に成らなく可能性があるからな」

「…………」

 小狼とタキシード仮面の説明を聞いて、クレフを始めとした多くの助人達が頷きながら納得する。

 そして、一方では聖龍使いが錆だらけに成り動く事すら侭為らなくなった敵方の怪物達の様子を目視すると、一気に声を上げて皆に告げる。

「今じゃッ! 一斉砲火!!」

 聖龍使いの掛け声を皮切りに、聖龍隊の一同は一斉に錆付いた怪物の群れに攻撃を放った。

「グオッ」「ギャァウ……ッ」

 聖龍隊の一斉砲火、それによる集中攻撃を喰らった怪物達は、先ほどとは打って変わり意図も簡単に撃破されていく。

 鋼鉄の体故に一切の攻撃を微動だにしなかった怪物達も、ミスト(霧)による腐食効果によって錆付いた自慢の体が攻撃を喰らう度に激しく崩れ落ちては、瞬く間に聖龍隊に倒されていった。

 

 

 

 

[執拗なる増援と兵器の力、そして信じる心]

 

 聖龍隊は眼前に立ち塞がる鋼の体を持つ怪物の軍勢を、さくらのミスト(霧)のカード効果で錆付かせる事により、漸く自分等の攻撃が普通に効く様に成り、一斉に錆付いて身動きすら出来なくなっている敵の軍勢を打ち倒す事ができた。

 そして全ての敵を撃破・消滅させた聖龍隊は、漸く自分等に向かってくる敵を全て倒した事に心から安堵し切っていた。

「はぁ……はぁ……」

 誰もが肩から息をしながら、その場に立ち尽くしていた。

 そして皆、一同にして上空に浮かび直立している黒ローブに視線を向ける。

「はぁ……さぁ、これでお前が指揮している軍勢は全て居なく成ったぜ。どうする……?」

 厳つい顔つきで黒ローブを睨み付けながら眼光鋭くさせるメタルバード。

 すると黒ローブは、そんなメタルバードを含めた地上の面々を見下ろしながら

「……フッ」

 と不敵に笑うと、次の瞬間黒ローブは右手を自分の顔と同じ高さに上げて指を鳴らした。

 黒ローブが指を鳴らした瞬間、上空はもちろん地上にも、再び異次元からの脅威である怪物や怪人の軍勢が黒い渦から出現したのであった。

「そ、そんな……ッ」

 絶句してしまうプルートに続きネプチューンが

「そんな……! まだ呼び出せるというの……あの黒ローブ……ッ!」

 と絶望を隠しきれない面持ちで驚愕する。

「ウソだろ? 未だに軍勢が控えているのかよ……ッ!」

 多勢無勢の状況に再び追い込まれてしまい、顔面蒼白に成って悲観するメタルバード。そして他の聖龍隊や駆け付けて来た助人達。

 そして黒ローブが見下ろす中、現れた軍勢は聖龍隊に対して攻撃態勢を取る。

「おい、相棒……何か秘策か何かないのか?」

 メタルバードの問い掛けに、思案を巡らせる聖龍使い。

 しばし考えた聖龍使いは、ふと視界に最終兵器のちせの姿を捉えた。

 そして意を決して彼女に声を掛けた。

「……ちせ」「っ!?」

 突然声を掛けられたちせは意表を突かれて少しばかり驚いてしまったが、聖龍使いはそのまま平然と彼女に話し続けた。

「ちせよ、此処は一つ……主の力を今こそ最大限に開放して、敵を一体残らず消し去ってしまうのじゃ……!」

「!!」

 聖龍使いからの提案を聞いて、ちせは驚愕してしまう。

 そして彼女は目を丸くして半ば興奮しながら聖龍使いに言い返した。

「そ、そんなの……! 無理ですよ……私の力なんて……」

 何処か怯えた表情に豹変してしまったちせを見て、堪らずちせの恋人で事情を知っているシュウジが二人の間に割り入る様に聖龍使いに言い寄った。

「ま、待ってくれッ。ちせの力はアンタだって既に知っているだろ! 力の制御が未だに難しく、完全に力を解放したらどうなるか……。俺達自身もそうだが、何よりちせ自身の体にどんな影響が出るか予測できないんだぞッ!」

 シュウジの発言に、その場の皆が一驚した。

 特に以前、聖龍隊の訓練場で彼女の能力の一部を間近で見た聖龍隊の面々は、兵器と化してしまったちせの能力の威力とその能力の制御困難な場面の一部始終を見ている為、皆不安に駆りたてられ場の空気が一気に重く成った。

 そしてちせ自身も不安で胸が締め付けられる程に痛心に苦しんでいた。

 自分の体は元より、自分と親しく成ってくれた聖龍隊の皆にまで被害が及んでしまわないかと心配で仕方が無かったのだ。

 聖龍隊に来る前、自衛隊に居た時も、何度力を制御できず暴発したり、高すぎる破壊力によって敵味方問わず殺傷してしまっていた為、彼女の不安は周囲の人間には計り知れないほど大きかった。

 すると、そんな皆の様子を察した聖龍使いは急ぎ伝える。

「大丈夫じゃ。ワシ等には害が及ばんよう、ちせが能力を最大限に使う際にはミラーガールのバリアーで全員をちせの攻撃からも防いでいられるようにしておれば、確実にワシら以外の敵勢のみにしか被害は出ん筈じゃ」

「だ、だけど……」

 聖龍使いの言葉を聞いても、いまだに胸の奥に突っ掛かる不安を拭い切れない聖龍隊の面々。

 そんな、空気が重く成る一同、そして心中苦痛に浸るちせに、一人ミラーガールが意を決して切り出す。

「み、みんな!」

 その場の皆がミラー・ガールに目を向けると、ミラーガールは真剣な眼差しで話した。

「みんな、此処は聖龍使いの提案通り、ちせさんの力でこの場を乗り切りましょう!」

 しかしミラーガールの言葉を聞いて早見青児が反論し出す。

「だ、だけどなミラーガール。もしも、ちせの兵器としての能力がまた暴発してみろ。俺達自身が危うくなるんだぞ、解っているのか?」

 青児に指摘されたミラーガールは、その強い意志が醸し出されている表情を一変させる事無く、力強く皆に話し返した。

「……確かに。ちせさんの能力は未だに制御が困難で、暴発して私達自身が危なく成る危険性が伴っているのは百も承知です」

『………………』

「だけど……今はちせさんの能力(ちから)に賭けてみましょう。みんなさっきから戦い通しで、もうこんな大軍勢と戦う余裕なんて無いはずですっ」

 聖龍隊の皆に伝えるミラーガールが目を向ける先には、今にも一斉に攻撃してきそうな怪人・怪物の類による大軍勢が聖龍隊の周りを取り囲んでいた。

 しかし、それでも尚不安に思う面々にミラー・ガールは力強い顔付きに少しばかりの穏やかな笑みを浮かべて、続けて語る。

「みんなしっかり。今は兎にも角にも、それ以外に手立ては無い訳なんだし……」

 そしてミラー・ガールは最後に、皆に明るい顔で言い放った。

「お願い、二人を……聖龍使いと、ちせさんを信じてあげて」

『!』

 汚れを知らない少女が放った言葉に驚く一同、更に聖女の瞳(鏡)に映る疑心暗鬼に陥っている自分等の顔を目の当たりにし、聖龍隊の面々は己が心の内から今までとは違う感情を湧き起こす。

 そして、思考に想い更けていた内の一人であるメタルバードが口を開く。

「……ああ、そうかも知れねえな。今、この現状を打破するには他に策は無い訳だしな」

「バーンズ……!」

 メタルバードの言葉に感銘するミラー・ガールは思わず彼の本名で呼び返してしまう。

 そのメタルバードは聖龍使いに話しの矛先を変えて、話を続ける。

「聖龍使い……もはや他に手立ては無い訳だからな。多少危険な賭けに近い策だが、この際ちせの高威力の能力とミラーガールの絶対防御の力に、全てを任せよう」

「うむ……」

 厳つい表情で言い寄るメタルバードに対し、聖龍使いは重く気難しい口調で返事を返す。

 更にメタルバードは、すぐ側で強張った表情で怯えているちせにも真剣な顔付きで語り出す。

「ちせ……と云う訳だ。此処は一つ、お前の力量で全ての敵を葬ってくれ」

「……っ」

 メタルバードに言葉を掛けられたちせであったが、その表情には未だに少しばかりの不安と恐怖が垣間見えていた。

 そんなちせに聖龍使いが話を掛ける。

「ちせ。少しばかり辛いが、此処はお主の力が何よりも必要なのじゃ。……怖いのは解る、だけど怖がってばかりじゃイカン。今の今まで、お前は自分の力が制御できず多くの命を奪ってしまった事じゃろう」

「…………」

「だが、今は違う。お主は怖れず、そして自分を信じて真っ直ぐ目の前の敵に、目標に向かっていけば良いのじゃ。大丈夫じゃ……ワシは人命を、人の想いを大切に思える主を信じておる。そしてそれ以上に……大切な人の命を、想いを、絶対に護りたいと思い願っているミラーガールの実力を信じておるッ。だから主も、まずはミラーガールを信じて己の持てる力の全てを出し切って周囲の敵勢力を粉砕しとくれッ。主にしか出来ぬ事なのじゃ」

 聖龍使いの力強い言葉に、身を奮い起される感覚に陥るちせ。

 そして彼女は自然と周りに目を向けてみた。

 聖龍使いとミラーガールの言葉を聞いて自分に視線を、意識を向けてくれる聖龍隊や駆け付けた助人達。自分の様な兵器でも、一人の人として仲間として必要としてくれる聖龍使い。そして、こんな兵器と云う人々から恐れられる存在になり果てていようと、決して己の真情を曲げないが如く自分を信じてくれているミラーガール。

 ただ戦いに勝利する為だけに兵器として身体を改造された自分に向けられる多くの想いを一身に受けたちせは、静かに心の中に自分の心情を溜めて行った。

 そして彼女は口を開いて、ミラーガールに告げた。

「……ミラーガール」「は、はい!」

 その場の空気に押され緊張しつつも返事をするミラーガールに、ちせは悠然と話した。

「……私もあなたを、そして聖龍使いはもちろん、此処に居るみんなを信じる! だからミラーガール……お願い、こんな私でも協力して」

 瞳の奥から、今まで見た事も無いほど強烈な自信を満ち溢れさせるちせの言葉を聞いて、ミラーガールは嬉々しつつも即座に言葉を返した。

「ちせさん……! はい、もちろんです!」

 ちせの言葉を聞いたミラーガールは満面の笑顔で返事を交わした。

 この時、ミラーガールのみに非ず他の聖龍隊も、ちせの瞳から今まで彼女から感じなかった底知れない自信が湧き上がっている事に気付いた。

 特に聖龍使いは、この時のちせの瞳を今生忘れる事は無かった。

 気弱な性格に虚弱な体質、そして己が体を兵器に改造された過去を持つちせの瞳から感じる信頼と勇気の昂りに、一人の孤高の武人は心を打たれた。

 

 そしてちせは意を決して背中に浮き出る銀鋼(ぎんこう)の翼で空へと舞い上がり、更にその際ミラーガールに一声投げ出した。

「お願い、ミラーガール!」「はい!」

 力強いちせの一声に、ミラーガールも力強く言葉を返す。

 そしてミラーガールはちせの声に応えるようにミラー・シールドを己の真上に高々と振り上げて技名を唱えた。

「ミラー・ドーム・バリアー!」

 ミラーガールが技の名を叫んだ瞬間、今まで為し得た事の無い程の巨大なドーム状の光の壁が、ミラー・ガールは元より彼女の周囲に点在している聖龍隊および駆け付けた助人達を一人残らず覆い尽くした。

「ウガッ」「ガウ……ッ」

 出現した巨大な光の壁に阻まれ、聖龍隊を取り囲んでいた怪物や怪人達は思うように手が出せず混迷した。

 一方のちせは、摩天楼のビルよりも高く飛び上がると其処で停止し、改めて真下の聖龍隊を見下ろした。

 見下ろしてみると、自分を信頼してバリアーを出しているミラーガールに、険しくも漆黒の瞳でちせを見上げている聖龍使い、そして自分を恋想い心配してくれている恋人のシュウジ、他にも自分に視線を送り続ける聖龍隊や助人達の姿がちせの目に入る。

 真下の人々の姿を確認したちせは、意識を集中して一気に能力を解放する。

 するとちせの姿が次第に変化していった。

 背中に生え、彼女を飛来させる事を可能としている銀色の機械的な翼が瞬く間に肥大化していき、通常よりも倍以上に巨大な機械の翼へと変貌する。

 自身の機械の部分を豹変させた少女ちせは、まるで祈りを捧げるかのように手を組み、一人静かに思い更ける。

 その様子を真下で眺めていたミラー・ガール、聖龍使い、そして聖龍隊の面々は非常に驚嘆した。

 静かに手を組むちせの姿が、まるで天空で一人祈りを捧げる天使に見えたからだ。

 そして、一人天に祈る天使と見間違う如きのちせは突然、その銀色の肥大化した翼から無数の光の筋を放出した。

 放たれた光は天に向かって飛んでいくと、そのまま落下してきたのだが、上空でその光の筋が一時停止。

 その光景に目を奪われ言葉を失う聖龍隊の面々。

 そして停止していた光の筋は一気に降り注ぎ、地上に居た敵はもちろん上空を飛来していた敵にすら直撃した。

 上空の敵には貫通、地上には激しい爆炎を起こして群れをなす敵勢を続々と消滅させていく。

 一方、聖龍隊の一同はミラーガールが作り出してくれた巨大な球状のバリアー、ミラー・ドーム・バリアーによって傷一つ付く事は無かった。

 

 激しい閃光、そして炎に包まれ、敵の軍勢は跡形もなく一掃された。

 

 

 

[現る 見下ろすモノ]

 

 最終兵器ちせの力によって一掃された敵勢力。

 聖龍隊はミラーガールのバリアーが消滅するなり、自分達の周りを見てみる。

 ちせの凄まじい攻撃によって無残な亡骸と化している怪物や怪人の姿、すっかり原形を留めていない車、抉れるコンクリートの地面、そして起きている火災を目の当たりにして、聖龍隊は改めてちせの能力の威力と恐ろしさを知った。

 そして一方のちせは静かに地上に舞い降り、聖龍隊の目の前に降り立った。

 だが、ちせが降り立った瞬間、彼女は立眩みを起こし、危うく倒れそうになる。

「あっ……!」

 立眩みで倒れそうになるちせを見て、堪らずミラーガールが駆け寄りちせを抱き締め身体を支える。

 そしてミラーガールはちせに一声掛けてみた。

「ちせさん……!」

 ミラーガールが声を掛けると、ちせは虚ろな目でミラーガールの顔を見ながら返事をする。

「ミラーガール……」

「大丈夫ですか? 目が虚ろで……」

 ちせの様態を気にするミラー・ガールが訊ねると、ちせは疲労感じる表情で答えた。

「ご、ごめんなさい……少し疲れて」

 ちせの言葉を聞いたミラーガールは優しさに満ちた穏やかな笑みで言葉を返す。

「ありがとうございます、お陰で敵は全て居なく成りました。ちせさんは少し休んでいてください。……やっぱり貴女自身にも疲労が見えてしまってますし」

「う、うん……」

 ミラーガールに小さく頷いたちせは、ミラーガールの体に預けていた自分の体を起こして一人歩き出した。

 すると其処へ今度は彼女の恋人であるシュウジが駆け寄ってちせに言葉を掛ける。

「ち、ちせ!」「シュウちゃん……」

 切羽詰まった様な顔つきで声を掛けるシュウジにちせが顔を向けると、シュウジは息を荒くしてちせに訊ねた。

「大丈夫か……? かなり疲れが見えるけど……」

 シュウジの言葉に、ちせは口元に小さく笑みを浮かべて答え返す。

「大丈夫。それよりも、シュウちゃん達は大丈夫だった……?」

 自分の能力で愛しい恋人のシュウジや聖龍隊の皆に傷が付いてないか訊ねるちせに、シュウジは答えた。

「ああ、それなら安心してくれ。ミラーガールのバリアーで誰一人傷付いちゃいない、お前は誰も傷付けちゃいない」

 シュウジの言葉を耳にしたちせは表情に若干の安堵の色を浮かべた。

 今の今まで、味方を傷付けず戦って来られた事すら珍しい彼女にとっては何よりの喜々たる言葉であったからだ。

 

「す、スゲぇ……」「これが彼女の力……」

 ちせの凄まじい攻撃を目の当たりにし、一驚してしまう宇崎星夜(うざきせいや)に駆け付けた助人の一人クレフ。

「ど、どちらにしても……これで敵は全て一掃できたな。良かった」

 自分達を取り囲んでいた敵が全て撃破された事に安堵する早見青児(はやみせいじ)。

 と、その時であった。

 周囲を見渡す聖龍隊の内の一員、李・苺鈴(リ・メイリン)の背後から、突如まだ生き残っていた怪物が、苺鈴の二倍は在ろうかという巨体を爆煙の中から姿を現した。

「あッ、苺鈴!」「え……っ、きゃあぁっ!」

 小狼が気付き呼び掛けるが、背後から迫りくる怪物に苺鈴は悲鳴を上げた。

 と、その時だった。

「退けッ、苺鈴!」

 別働隊の隊長であるウェルズが仲間の隊員や苺鈴を押し退けて、苺鈴に襲い掛かろうとする怪物に拳銃の弾を放つ。

「ギャウッ」

 弾丸が怪物に直撃すると、ウェルズは更に右手に持った銃とは別にもう一丁の拳銃を取り出しては、立て続けに二丁拳銃で怪物に発砲し連射していく。

「グハッ、ガウッ」

 弾が直撃する度に鳴く怪物。

 それでも尚ウェルズは、両手に持った銃の弾が尽きるまで発砲し、怪物に容赦なく弾を浴びせ続ける。

 そしてウェルズがちょうど二丁拳銃の弾を全て撃ち終わると、怪物は力尽きて前のめりに倒れ込む。

『………………』

 咄嗟のウェルズの行動に呆気に取られてしまうその場の一同。

 動揺しつつも、その場の一人であり助けられた苺鈴がウェルズに礼を述べた。

「あ、ありがとうございます。ウエルズさん……」

 礼を述べる苺鈴にウェルズは顔を向けて言った。

「別に良いって事よ。こんな乱戦状態じゃ、もう何が起きたって可笑しくねえ」

 そう言いながらウェルズは空になった二丁拳銃の弾層を抜き捨て、二丁とも新しい弾層に詰め替えた。

 皆がその場の出来事に騒然としている最中、辺りを見回していた月影トシが呟いた。

「こ、これで……終わりだよ、な……?」

 トシに続いて不安そうな表情で雪見ソウシも言う。

「い、今、ウェルズさんが倒した敵で、もう最後なんだよね……」

 誰もが、未だ近くに敵が居るのではないかと不安な心境に駆られ始めていた。

 

 その時だった。

 突然地面が揺れ始め、立っていた聖龍隊の面々は揺れに気付いた。

「なっ、何なんだ。この揺れは……?」

 突然の揺れに騒然と化すランティスに他の聖龍隊。

 更に地面の揺れと共に、巨大な音が一定の間隔で連続で聞こえて来た。

「こ、この音……!」「な、何だが……そう、まるで」

 一定の間隔で地響きと共に聞こえてくる振動音に何かを思い返す春日結と如月春菜。

 そして彼女達と同じコレクターズの篠崎愛が言った。

「そう、まるで……足音?」

 一定の地響きと揺れ、そして足音の様な巨大な音に一驚していく聖龍隊の一同。

 そして巨大な足音は、聖龍隊のすぐ側まで近付いてきた。

 するとその時「ッ、きゃあっ」

 ニイハオ姉妹の末っ子ライチが何かに驚いて叫んだ。

「ら、ライチ!?」「どうしたのっ?」

 妹のライチの叫び声を聞いて驚いた姉のジャスミンとタピオカ、するとライチはビルの上の方を指さしながら姉や皆に言った。

「あ、あれ……」

 震える声と指でライチが差した先には、何とビルの物陰から此方を見下ろす様に覗き込んでいる巨大な怪物が、無言無音でその紅の眼球を向けていた。

『うわあぁッ!』

 巨大な怪物に驚き阿鼻叫喚する一同。

 更に「え、また地震!?」再度地面が揺れ出し、再び驚いてしまう。

 しかし。

「ッ!? ま、また……いや、今度は二つ……」

 何と再三地面が揺れ出したのだが、今度は二つの巨大な振動が重なって地面から足へと伝わる。

「ど、どうなってるんだ? チップバード!」

「ほいな王子」

 状況を確かめる為に、メタルバードは自分と融合しているチップバードに告げて、専用機であるシルバー・ウィングを呼び寄せさせた。

 そしてシルバー・ウィングが自分の真上に飛来すると、一瞬で飛び乗って上空から辺りを見回してみた。

 空から眺めた光景と云う名の現状に、メタルバードは自分の目を疑った。

 そして彼は静かに無線で仲間達全員に伝えた。

「おい、みんな……」「ッ?」

 明らかに言葉が重く成っているメタルバードの口振りに戸惑う仲間達。

 そしてメタルバードは重い口を開きつつ、皆に告げた。

「おいヤバいぜ……オレたち好みなデッカイ怪物だ」

 とメタルバードが言ったその時、彼が搭乗したシルバー・ウィングがビルの陰から聖龍隊の一同の居る方へと飛来して来たのだが、そのスグ後ろから巨大な太い蛇の様な黒金色の怪物が、その太い胴体から生やしている無数の細長い翼で滑空しながらシルバー・ウィングを追いかけてくるのが目に入った。

「うわあぁァッ!!」

「何だよアノ馬鹿デカイのは!?」

 余りの巨体と、その巨体からは想像もできない程の速さでシルバー・ウィングに追い付こうとする。

「クソ……ッ!」

 メタルバードは振り切ろうと、機体を操作してビルの間を抜けたり急旋回を試みる。

 更にメタルバードは、自分を追い回している怪物から離れようとしている最中、仲間達に続けて告げた。

「そ、それに……今、オレを追い掛け回しているコイツも含めて、あと同じのを数体確認した!」

「そ、そんな……!」

「あんな冗談みたいな怪物が、まだ居んのかよ」

 話を聞いて愕然としてしまう皆々。

 しかしメタルバードは更なる事実を皆に告げた。

「そ、それに! さっきオレらの前に顔を覗き込んだ、でっけぇ怪物と同じデカさの怪物っつーーか巨人みたいなのも、あと三体出現していやがるッ!」

「さ、三体!?」

 メタルバードの言葉に驚愕するタキシード仮面。

 そしてメタルバードの言った通り、聖龍隊の視界にも、その巨大な怪物がビルの合間から見え始めたのであった。

「お、大きい……!」

 余りの巨大さに絶句してしまうナースエンジェル。

 最初に現れたのを含め、聖龍隊の視界に四体の巨大な怪物や巨人が、その山の様な巨体を動かし全貌を見せる。

 一番初めに聖龍隊の前に現れてはビルの陰から顔を覗かせた紅く不気味な瞳の、肌が異質な緑色の、まるで骨にそのまま皮が張り付いた様な異色の巨人。

 三頭身に近い体格に肉付きの良い腕や足、顎がしゃくれてて口の両端から巨大な牙を向きだした厳つい強面、そして右手には自身の腕よりも一回り太い棍棒を持つ巨人。

 まるで神話の世界から飛び出してきた様な二体の巨人に混ざり、後の二体はまるで獣のような姿をした厳つい体格に毛だらけの体の怪物達であった。

 その四体の巨大な怪物に混ざり、上空を飛来する何体もの長くて奇怪な怪物。

 聖龍隊は自分等を見下ろす巨大な敵の存在に一瞬絶望し、言葉を失った。

 

「そんな……っ。せっかく、ちせさんやみんなが頑張って全部倒したっていうのに、また……」

 眼前に広がる現状に涙を目に溜め始め悲観するミラーガール。

 誰もが自分達の置かれた現実に絶句し、悲愴に暮れ始めたその時。

「……まだだ。まだ、終わらせねえ」

 ぽつりと聖龍使いが呟き、隣に居たミラー・ガールも周囲の皆々も彼に目を向けた。

「ど、どうするのよっ? いくらなんでも、あんな巨大なの……」

 珍しく、酷く困惑した表情で訊ねてくるセーラーウラヌスに、聖龍使いは鋭い眼光を向けて言葉を返した。

「ワシ等がやらなければ成らん。ワシ等が戦わなければ……誰が街を! 人々を護るのじゃ!!」

『!』

 聖龍使いの喝の籠った一言に、聖龍隊の面々は心を奮い立たした。

 そして聖龍使いは徐に顔に装着していた、真赤な鬼の面を外し、空に向かって放り投げた。

「頼むぞ、怒鬼(どき)!」

 そう言いながら上に放り投げた聖龍使いは、同時に聖龍剣で鬼の面を盾に真っ二つに切断した、次の瞬間。

「ウギャアアァァ」

 目の前に突如、高層ビルに匹敵する程の巨大な、全身真赤な肌色の強面の鬼が出現した。

「えええぇぇえぇぇッッ!!」

「お、鬼!? ウソでしょっ?」

 突如として目の前に現れた巨大な赤鬼に心臓が飛び出るほど驚き喚くシュウジとちせ。

「お、鬼だと?」

「きゃああぁ!」

「そんな……! バカな……」

 驚く銀天狗に、驚きの余り悲鳴を上げてしまう高木はるか、そして突然の事態に目の前の現状を受け入れ難くなっている鎧天狗こと芹沢ルリ子。

「お、鬼だと? まさか……!」

「で、でけェ……」「…………」

 現れた巨大な赤鬼に動揺するクレフ、赤鬼の巨体に圧倒されるフェリオ、鬼を目の当たりにして言葉を失うランティス。

「お、鬼……!」

「それも、あんなに大きい……」

「う、うっそぉ……」

 海・風・光の三人すら、目の前の鬼に驚き唖然としてしまう。

「鬼って……ほんとに居たんだ」

「そ、それも……あんなに巨大で」

「し、信じらんない」

 驚愕し呆気に取られつつ、表情を固めてしまう愛・春菜・結のコレクターズ三人。

 だがしかし、そんな騒然と化している面々を尻目に、他の者達は平然と鬼に話し掛けた。

「わぁっ、久しぶりだね怒鬼」

「いやぁ、久々に見てみると本当にでっかいなぁ」

 平然と、それも親しげに赤鬼に話し掛けるセーラームーンとタキシード仮面に続き、他の者等も鬼に声を掛けた。

「おおっ、すんげぇ久しぶりじゃねえか怒鬼」

「相変わらず近くで見ると圧巻されちまうな」

 巨大な鬼を見上げながら月影トシと宇崎星夜が言う。

「え、ええっと皆さん……この鬼の事、知っているの?」

 フェリオが唖然とした面持ちで訊ねると、木之元桜がフェリオを始めとした初見の面々に説明を語った。

「あ、そう言えば皆さんは初めてでしたね。この鬼さんは怒鬼って言いまして、聖龍使いの鬼の面に封印されている鬼さんなんです」

 すると、さくらに続いて小狼が初見の面々に話した。

「普段は聖龍使いが装着している鬼の面に封じられているんですが、その面を真っ二つに割る事で封印を解除する事が出来るんですよ。以前、ある事が切っ掛けで封印されていた怒鬼が解き放たれてしまったんですけど、今ではちゃんと和解して、聖龍使いが自ら面を割って解放すれば俺達に協力してくれる様に成っているんです」

「そ、そういう事情が……」

 さくらと小狼の話を聞いて、呆然としつつも理解を示すクレフ。そしてクレフ同様、事情が解るものの、依然として唖然とする怒鬼初見の面々。

 そんな最中、鬼の面を取って素顔を曝した状態の聖龍使いが怒鬼に告げた。

「怒鬼、解ってるだろ? お前は街中を徘徊している巨大な怪物を何としても喰い止めるんだ! メタルバードは上空を飛来しながら町を爆撃し続けている巨大な敵と応戦するので精一杯だ。俺達も俺達で何とか怪物共を倒すから、お前も一緒に協力してやってくれッ」

「オウッ、分かったぜ修司! あ、今は聖龍使いか。はは」

 怒鬼は軽く笑みながら聖龍使いに返答すると、速攻で一番近くに居た巨大な敵に向かっていった。

「うおりゃあぁッ」

 巨大な敵の一体、赤く不気味な異質な緑色の肌をしている巨人と怒鬼は取っ組み合った。

 怒鬼は力を込めて自分と組み合う巨人の胴部分に手を回し入れ、相撲の要領で投げ飛ばそうと試みる。

 しかし相手の巨人も細見の外見とは異なり、かなり筋力が有るらしく、中々相手を投げ飛ばす事ができなかった。

 そんな必死に巨人と組み合う怒鬼を皆が見ていると、聖龍使いがそんな傍観している面々に言った。

「良し、俺達は俺達で一体でも良いから敵を撃破していくんだ。良いなッ!」

 そう言うと聖龍使いは厳つい素顔のまま、颯爽と駆け出した。

『…………』

 唖然とする一同、するとミラーガールが逸早く気付き、皆に言い放った。

「……ッ、みんな! 私達も聖龍使いに続きましょ!」

 ミラーガールの言葉に他の皆も気付き、そして全員行動に移った。

 

 

 

[撃墜されゆく巨大な敵と対峙する魔神]

 

 聖龍使いの指示とミラーガールの一声を切っ掛けに、聖龍隊は各々目の前に突然出現した巨大な敵等を倒そうと行動を起こした。

 しかしその戦いは、まるで大の大人達と数匹の蟻に匹敵するほど、力の大差が目に見えて解る戦いであった。

 

 巨人の足元で、必死に攻撃をし続ける聖龍隊。しかし巨人は微塵も痛みを感じてはおらず、時おり足元に居る聖龍隊をその巨大な足で踏み潰そうとする。

 何とか踏み潰しを避けて応戦していく面々、だが一向に勝利への行く末が見えず困惑するばかりであった。

 そうして、巨大な敵に悪戦苦闘し続ける聖龍隊。

 しかしそんな中、聖龍隊や巨人の真上を飛来し地上を爆撃する巨大飛行クリーチャーに、最終兵器のちせが怪物の上に着地する。

 怪物の上に着地したちせは、両腕をレーザー砲に変形して、怪物の後頭部に当たる個所に強烈な光線を放った。

「グオオオオオォォォ」

 光線を当てられた怪物は雄叫びを上げた。

 そして怪物は苦痛により、ちせを乗せたまま近くのビルに体を擦り付けたり体当たりをしたりと、自分の背中に乗っているちせをどうにかして振り落とそうとする。

 ビルに体を擦り付け、そして体当たりしていく度に、雨の様に降り注ぐガラスの破片に少しばかり怯みながらも、ちせは必死に怪物の背中にしがみ付き、振り離されないよう踏ん張っていた。

 そして再度ちせは光線を怪物の後頭部に直撃させ、今度は見事に怪物の体を光線が突き抜けたのだった。

「グオオオォォォ!」

 今まで以上に雄叫びを上げる怪物。

 しかしちせは攻撃の手を緩めることなく、怪物の体を貫通する光線を放ったまま、怪物の体の上を移動しつつ、光線で怪物の長い胴体を縦に切断していった。

 遂に怪物は、頭の先から尻尾の先端まで真っ二つに切断され、地上に落下していった。

 真っ二つに切断され、地上のアスファルトの道路に滑り落ちた怪物の背中から、苦悶の表情でちせが這い上がる。

「…………な、なんとか倒せた」

 ちせは疲労により、少しだけ休もうとその場に座り込んでしまった。

 

 一方、聖龍使いは他の聖龍隊の皆々と共闘して地上から空を滑空する怪物を撃墜させようと試みていた。

 様々な攻撃手段で怪物を撃墜しようとするが、地上からの攻撃は殆ど皆無であった。

 どんな能力も微塵に効かない怪物は、まるで嘲笑うかのように聖龍隊の真上を悠然と飛行し続ける。

 そして再び腹部にある無数の突起物から赤い光線を放って地上に爆撃を行う。

「くッ」

 爆撃による攻撃と砂煙で怯み、苦戦を強いられる聖龍隊。

 すると、そんな状況を見兼ねた聖龍使いが咄嗟に木之元桜に指示を告げた。

「さくら! フロートのカードで其処ら辺に転がっている車や瓦礫の残骸を浮かせてくれッ」

「え? な、なんで……」「良いから早く!」

 聖龍使いに急かされ、躊躇うさくらは理解しないままフロート(浮)のカードを使用した。

「封印解除(レリーズ)!」

 すると聖龍使いが指した車や瓦礫の残骸がフワフワと宙に次々と浮かび上がった。

 その宙に浮いている車や瓦礫に聖龍使いは飛び乗り、次々と宙に浮く物体に飛び移っていった。

 そして遂にビルの天辺、其処に立てられているアンテナに左手で掴まると、反対の右手で聖龍剣を鞘から抜き取り天に向かって突き出し叫んだ。

「雷集(らいしゅう)!」

 すると聖龍使いが突き出した聖龍剣に雷が無数に、まるで集まって来るかの如く落ちていく。

 雷が聖龍剣に直撃する度に、聖龍使いの周りに強力な電磁波が発生し、飛来していた巨大な怪物達は電磁波によって痺れてしまった。

 体が痺れて動きが鈍く成った怪物を確認した聖龍使いは、すぐに下方の仲間達に告げた。

「お前たち今だ! 動きが鈍くなれば今以上に攻撃が通るかもしれない!」

 聖龍使いはそう言うと突然、ビルの天辺から飛び降り、そのまま屋上から痺れて動きが鈍く成った怪物に飛び乗った。

「し、修司!」

 ビルの屋上から怪物に飛び乗る聖龍使いを見て彼の本名を叫ぶミラーガール。

 しかし聖龍使いは怪物に乗ったまま、飛行し続ける怪物共々行ってしまう。

『…………』

 飛行する怪物に乗ったまま行ってしまう聖龍使いを目にして不安に駆られる皆々。

 ミラーガールはそんな皆に気付いて、スグに自分の心情を切り替えて皆に言い放った。

「み、みんな! 聖龍使いの言うとおり、私達は私達であの大きな怪物を一刻も早く倒しましょうっ。聖龍使いは大丈夫だから、ね」

 ミラーガールの言葉に周りの皆も彼女同様、自分の気持ちを切り替えて行動に走った。

 

 一方、怪物に飛び乗った聖龍使いは、飛行し続ける怪物に跨り、懸命に刀で幾度も怪物を攻撃する。

 しかし怪物の方も、自分の体に攻撃していく聖龍使いの行動に嫌気が差し、突然暴れまわっては強引に聖龍使いを振り落とそうとする。

 聖龍使いは必死に怪物の背中にしがみ付き、そして刀を力の限り思いっきり怪物に突き刺した。

「うおおぉぉおおッ!!」

 更に背中に刀を突き刺したまま怪物の背中を走り、怪物の背筋を切り裂いた。

「グオオオォォ……」

 背筋を切り裂かれた怪物は、力尽きてそのまま地上に激しく墜落した。

 地上に墜落した怪物の背中から聖龍使いは降り立ち、しばしの一息を入れるのだった。

「……ふぅ」

 

 同じ頃、ミラーガールを先頭にした他の仲間達は、協力の末ようやく残りの巨大飛行型クリーチャーを全て倒す事に成功した。

 しかし飛来する怪物とは別に現れた巨人や巨大な獣の様な怪物は、未だに猛威を振るっていた。

 その時、上空で戦っているメタルバードが地上の仲間達に通信を入れた。

「修司、アッコ! そっちはどうやらブッとい蛇みたいな怪物を全部倒せたようだな」

「メタルバード」「バーンズ……!」

 呼び掛けに対し返事をする聖龍使いとミラーガール。

 そのままメタルバードは切羽詰まった様子で二人を始めとした仲間たち全員に語った。

「こっちはヤベぇぜ。四体の巨人に巨獣は一向に止まる事もなく町を破壊していくばかりだ……! これじゃ怪物や怪人共の群れの方がまだマシだって思えちまうぜ」

「な、何とかできないの、メタルバード?」

 ミラーガールが心痛な面持ちで訊ねると、メタルバードは重い口調で返した。

「お、オレだって何とかしてえさ。けど今の状況を覆す策が見つからねえんだよ」

「…………」

 メタルバードとミラー・ガール二人の会話を黙然と聴いていた聖龍使い。

 そして聖龍使いは意を決してメタルバードや彼と同じく専用機で戦っている魔法騎士(マジックナイト)の光・海・風の三人に呼び掛けた。

「メタルバード、光、海、風。四人とも聞こえているか」

「何だ? なんか策かなんか思いついたのか?」

「何々? 修司君なんか閃いたの?」

「で、できれば私達でも実行できる範囲内の策でお願いするわよ」

「何より、私達の機体も若干痛手を負っていますので、その点も考慮してくれれば……」

 メタルバード・光・海・風の四人に聖龍使いは策を伝えた。

「良いか。先ず、今俺達が居る大通りに四体の巨人や巨獣を誘き寄せるんだ。魔法騎士の三人は大通りの先端で合図が来るまで待機。メタルバードと地上の俺達は協力して、何としても巨獣共を同じ通りに集結させるんだ」

「だ、だけど……あんな巨大な奴らを思った通りに誘き出せるのか?」

 困惑するメタルバードに聖龍使いは怒鳴り語る。

「良いからやるんだッ。こうなったら、あの手で策を講じるしかない……良いから、みんなもスグに行動に移れッ!」

 聖龍使いの一声に、メタルバードも他の聖龍隊も理解し切れないまま行動を開始した。

 

 まず、巨大な獣人の様な巨人の足元周辺には、ジュピター・キッドを始めとする聖龍隊の面子が出揃い、巨人に攻撃を始める。

「キガ・プラント・ウォール!」

 キッドは鞭を地面に叩き付けると同時に技の名を唱えてみると、地面から無数の太い植物のツタが出現し、ビルとビルとの間に一面巨大な草の壁を造り上げた。

 突如出現した草の壁により移動する通路を阻められる巨人に、今度はキッドと同行しているウォーター・フェアリーと新黒天狗党の銀天狗が揃って前に出て来た。

「行きますよ、銀天狗さん……!」

「いつでも良いよ、ウォーター・フェアリー」

 互いに声を掛け合う二人、そして先ずはフェアリーが巨人の足元に大量の水を撒き散らすと、それに続いて今度は銀天狗が電光流という武術で刀の先から電気の球を発生させ放った。

 放った光の球はフェアリーが巨人の足元に撒き散らした大量の水に直撃し、そして水に高威力の電流が流れた。

「ウギャァッ」

 足元に撒かれた水を伝って電撃を感じる巨人は悲鳴を上げる。

 そして巨人は自身の足元に居るフェアリーと銀天狗に気付く。

「ウオオオォォォオオ……!」

 起こった巨人は二人を踏み付けようと再び歩き出した。

「よしッ、上手く挑発に乗ってくれたな」

「後は上手く大通りまで付いて来てくれれば……」

 銀天狗とフェアリーは自分達に向かって歩き出す巨人を確認すると一目散に駆け出した。

 しかし、当然の事ながら巨人は普通の人の何倍も歩幅が有るのが常識。

 背中に虹色の羽を生やして地上を滑空して移動するフェアリーならまだしも、自力で走る銀天狗の足ではスグに巨人に追い付かれ掛けてしまった。

 そして案の定、巨人は銀天狗をその巨大な足で踏み潰そうとした。

「ッ……!」

 動じる銀天狗だが、次の瞬間。

「喰らえッ」「これでどうだバケモノ!」

 銀天狗と同じ黒天狗党のゴールデン天狗とからくり天狗が搭乗してきたレーザー兵器で巨人に攻撃を仕掛ける。

 攻撃を受けた巨人は、銀天狗からゴールデン天狗とからくり天狗の二人に視線を変えた。

「お、お前達ッ」

 銀天狗が二人に顔を向けると、ゴールデン天狗とからくり天狗は愛想よく返した。

「銀天狗、何もお前さんだけで戦っている訳ではないのだぞ?」

「その通りだ。今は兎にも角にも、聖龍隊や駆け付けて来た者達と協力し合って、一刻も早くこの戦いを切り抜けるのじゃ」

「…………!」

 ゴールデン天狗とからくり天狗、二人の言葉を聞いた銀天狗は感銘の余り返す言葉も無かった。

 二人に続き、銀天狗に話し掛ける者も彼の側に駆け寄る。

「そうだぞ健、此処は協力し合わなければ上手く事は運ばんぞッ」

「健さん、俺達も攻撃して巨人の気を引くよッ」

「私達だってまだまだ戦えるわ……!」

「その通り!」

 何気に銀天狗の本名で彼に呼び掛ける鎧天狗こと芹沢ルリ子に、しんせん組のトシ・イサミ・ソウシの三人。

 四人に続いてニイハオ姉妹(シスターズ)も銀天狗の許に駆け付ける。

「私達も援護します」

「君達……うん、そうだ。この戦いは誰しも一人で戦っている訳ではない」

 駆け付けてくれる友等の姿を見た銀天狗は、再び巨人を誘導し始めた。

 

 一方、聖龍使いが解き放った怒鬼と組み合っている肌が緑色の巨人の所に駆け付けた一同は、どうにか巨人を誘き寄せようと試みる。

「さあ、こっちに来なさいバケモノッ」

 誘き寄せに奮闘するセーラー戦士達、その内の一人セーラーマーズが巨獣に挑発を掛けてみる。

「こっちよ、さぁッ!」

 続いてハニー姉妹のミスティーハニーも挑発を告げる。

 巨大な緑肌の巨人は誘われるままに付いていく。

「おりゃおりゃッ、早くこっちに来んかいッ!」

 聖龍隊からの援護を受けながら、怒鬼も巨人に張り手などで攻撃をしつつ上手く大通りまで押し進めていく。

「君達、余り無理をするんじゃないっ」

「大丈夫ですよ。キューティーハニーにミスティーハニー、そして美少女戦士達は貴方達が思うほど弱くはありませんよ、ハハ」

 果敢に攻めて行く少女たちを見て声を掛けるクレフに、微笑みながらゼラが話し掛ける。

「へぇ、こっちの世界の女の子達もやるねえ」

「ふふ、そうなんですよ。それに皆さん御強いだけでなく、とても心優しいんです」

 奮闘する美少女戦士達を見て感心するフェリオに、コレクターズの如月春菜が温厚な口振りで話を掛ける。

 

 同じ頃、顎がしゃくれてて口の両端から巨大な牙を向きだした厳つい強面の巨人を、ようやく大通りまで誘導できた面々。

 しかし巨人は暴れ回り、下手をしたら大通りから出てしまいそうであった。

「く、クソ……このままじゃ通りから出て行ってしまう」

「だ、だけど……あんなに大きな棍棒を振り回してちゃ近寄れないよ……」

 暴れ足りない巨人は、思うが儘に巨大な棍棒を振り回しては近くのビル等の建造物を破壊し、地上に瓦礫の雨を降り散らすため容易に近づく事が出来ず困惑する小狼と苺鈴。

 その時、暴れ回る巨人が振り回す棍棒に、上空からちせが光線で巨人の肘に攻撃した。

 一瞬怯む巨人、すると今度は巨人の足元から声がした。

「 イレイズ(消)!」

 次の瞬間、巨人が手に持っていた棍棒が一瞬で消えた。

 巨人の足元に居た木之元桜はちせの攻撃で怯んでいる瞬間にカードの一枚「イレイズ(消)」を使用し、巨人の棍棒を消したのだった。

 更にさくらは続けて唱え、カードを使う。

「ウッド(樹)!」

 すると今度は巨人の足元から突如巨大な樹木が生成され、さくらの意志のまま巨人の足を雁字搦めに撒き付いて巨人の動きを封じる。

 動きを封じられた巨人は足に撒き付いた樹木を振り解こうとするが、その時獅子形態に成っていたケルベロスがさくらに告げる。

「さくら! 更に動きを止める為にも他のカードも使え!」

「うん、ケロちゃん!」

 ケルベロスに言われたさくらは、すぐに別のカードも封印解除(レリーズ)して使用した。

「フリーズ(凍)!」

 すると巨人の両足、その足元から氷が張り付き出し、巨人の両足を凍り付かせて動かなくなってしまう。

 必死にもがく巨人を目の当たりにし、今度は小狼がさくらに続いて巨人に技を放つ。

「俺も行くぞ、そりゃッ」

 小狼は巨人目掛けて有りっ丈の護符を投げ付けて攻撃を行い、巨人の動きを止める。

 

「グルル……!」

 低い唸り声の様な音を鳴らして、眼前の聖龍隊に威嚇する獣人型の巨獣。

 一瞬退きそうになる聖龍隊であったが、勇気を振り絞り巨獣に攻撃を仕掛けて行く。

「ミラー・フラッシュ」

 巨獣の目に強烈な光を浴びさせて気を引こうとするミラーガール。

 巨獣の方も余りの眩しさに一瞬怯みはするものの、すぐさま光を放ったミラーガールに巨大で鋭い爪が生えた手を振り下ろした。

「くっ」間一髪で攻撃を回避するミラーガール。

 と其処へ今度はバズーカを担いだウエルズが砲撃を連射して巨獣に攻撃する。

 砲撃を受けた巨獣は更に激情し、足元の聖龍隊に狙いを付ける。

 しかしその時、巨獣が下の方に気を取られている隙を衝いて巨獣の上方からメタルバードがシルバー・ウィングで爆撃を放った。

「グルルル……ッ!」

 更に怒りを昂らせる巨獣を見上げて、聖龍使いが周りを見渡して状況を確認する。

「……よし、巨人に巨獣……四体とも大通りに誘き寄せできたな」

 見渡してみると、二体の巨人と二体の巨獣、計四体の敵は仲間達の奮闘により上手く大通りに誘き寄せる事が出来ていた。

 聖龍使いは通信機で巨体の敵達を足止めしている聖龍隊に告げた。

「お前等ッ、なるべく巨人たちを通りの中央に引き寄せろ!」

 指示を受けた聖龍隊は、すぐさま各々が足止めしている巨人等を、今度は大通りの中央まで敵を誘き寄せ始めた。

 聖龍使いは速決に通信を入れて新たな指示を仲間に告げた。

「よし……魔法騎士(マジックナイト)! 遂にお前達の番だ。今の内に合体しろッ」

「え」「が、合体って……」

 聖龍使いの言葉に風と海がきょとんとしていると聖龍使いが拍車を掛けるように問い続けた。

「お前達三人の魔神を合体させとけって言ってるんだよッ! 炎神・海神・風神の三体を一体の魔神にしとくんだッ」

『え……!?』三人はこの時、非常に驚いた。

 何故なら聖龍使いこと小田原修司に、自分達の魔神が一体に合体する事が出来るとは一言も伝えていなかったからだ。

 聖龍使いが何故、三体の魔神の合体を既に知り得ていたのか戸惑いつつも、魔法騎士は自分達が搭乗する魔神三体の合体を講じた。

「い、今は先ず……! 海ちゃん、風ちゃん! 行くよ」

「え、ええ!」「いつでも宜しいですわっ」

 光の掛け声を皮切りに、海と風も意識を集中させる。

 そして光の搭乗する炎神レイアース、海の搭乗する海神セレス、風の搭乗する空神ウィンダムはそれぞれ光り輝き、やがて一つの光へと成っていった。

 三体の魔神から発行が治まり、三つの光が一つと成ったその時、三体の魔神はその姿を変貌させていた。

 真紅の体、機動性に優れた骨格、左腕に装着された巨大な赤き盾、そして眩し過ぎるほどの純白の翼。

 合体魔神レイアースが今此処に、その美しくも凄まじき勇姿を現した。

「こ、これが……!」

「魔法騎士(マジックナイト)の三人が操縦する魔神の……」

「が、合体した、真の姿……!」

 合体し一つの魔神と成った姿を見て、驚愕し切る聖龍隊。

「き、綺麗……」

「凄い……見ているだけで、なんだか胸の奥から自然と勇気が湧いてくる」

 その合体した姿に思わず見惚れ、驚嘆の余りに感動の情念が胸の奥から湧いてくる者も、聖龍隊には少なからず居た。

「す、凄い……これが、光さん達の魔神が合体した姿……!」

 目の前で三体の魔神が一体の魔神に成った情景を目の当たりにしたミラーガールは、驚きと感動の余り固まってしまっていた。

 そして聖龍使いは魔神の合体を見届けると、すぐさま魔神に搭乗している三人に告げた。

「よッし! あとは巨人達が魔神の前方一直線に並んだ瞬間に攻撃するんだ! 合体魔神の最大火力を四体一片に直撃させてやれッ!」

 聖龍使いの指示を聞いた三人は自分達がするべき事を理解した。

 そして三人は、互いに己の心を一つにする様に、一心に集中を高める。そして合体魔神の見据える視界に、四体の巨大な敵が入った瞬間、合体魔神レイアースは所持していた剣の切っ先を四体の巨敵一直に構えて見せる。

「行くよッ!」「ОKッ」「これで終わらせて見せます……!!」

 そして三人の意識が、一直線上の四体の敵に集中したその瞬間、合体魔神レイアースが構えた剣の刃が左右に開いた。

『閃光の螺旋(ひかりのらせん)!』

 三人が言い放った瞬間、左右に開いた剣から赤・青・緑の放射状に発射された魔力の光が1つの光に収束し、その強烈な光は一直線に放たれ直線上に誘導されていた四体の巨人と巨獣の巨体を一気に貫き、そして消滅させた。

『グオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……!』

 四体の巨体は断末魔の雄叫びを上げながら、合体魔神レイアースの放った最大火力の閃光の螺旋(ひかりのらせん)の激しい光の中で、その身を消滅させて逝った。

 

 三つの魔力が一つの光に、閃光の螺旋(ひかりのらせん)が放たれた後の巨人等が居た大通りには、まるで嵐が過ぎ去った後の様な静けさだけが残っていた。

 

 しかし別の言葉も意味していた。

 

 そう嵐の前の静けさを。

 

 

 

 

[闇の脅威]

 

 魔法騎士(マジックナイト)の獅堂光(しどう ひかる)の炎神レイアース、龍咲海(りゅうさき うみ)の海神セレス、鳳凰寺風(ほうおうじ ふう)の空神ウィンダム。

 三体の魔神が合体した驚異の魔神 合体魔神レイアースによって、聖龍隊によって大通りに誘き寄せられていた二体の巨人と二体の巨獣は一瞬にして消滅した。

 

「…………」「…………」

 先程までとは違い、巨人や巨獣が存在していた大通りには只ならぬ静けさが漂い、敵の姿形も完全に見えなくなっていた。

「た、倒せたんだよな」「う、うん」

 目を丸くして会話をする宇崎星夜(うざき せいや)と月影トシ。

「あ、あんなに大きな巨人が……」「一瞬で……」

「四体とも、消えちゃった……」「……」

 先程まで、その巨体を見せつけていた巨人や巨獣が一瞬で消滅し倒された事実に一驚してしまうナースエンジェルにちびムーン、そして木之元桜(きのもと さくら)にセーラーサターンは呆然と目を丸くしてしまっていた。

「す、凄い……」

「こ、これが異世界のロボット……いや、魔法と云う力なのか……?」

 合体魔神の放った閃光の螺旋(ひかりのらせん)の威力に驚き、思わず呆気に取られてしまうカノンとプリンスゼラ。

「す、凄い」

「こ、これが……光さん達の魔神の力……」

 皆と同様、ジュピター・キッドとウォーター・フェアリーも驚異し身を固める。

「凄い……! これが……これが、魔法騎士(マジックナイト)の、魔神の力なんだ……!」

 合体魔神レイアースの放った閃光の螺旋(ひかりのらせん)を目にしたミラー・ガールは驚きと同時に深く感動し驚嘆した。

 一方の聖龍使いは、木目の無垢な面に成った割れた鬼の面を左手に高く上げて、解き放った怒鬼に向かって告げた。

「怒鬼、戻れ」

 聖龍使いの一声に、怒鬼は大人しく面に戻り、怒鬼が戻った面は切断された箇所が一瞬でくっ付き再び真赤な鬼の面に戻り果てた。

 そしてその場にメタルバードがシルバー・ウィングから飛び降りては、皆の前に降り立つ。

「よいしょッと……ふぅ、なんだか美味しい所全部持ってかれた気分だぜ。まぁ、相手があの光の姉ちゃん達なら文句は言えねえな」

 相手が美人で、かつ親しい間柄ならその殆どを快く許してしまうメタルバード。

 すると、メタルバードに続き魔法騎士の三人も、自分達の搭乗機から降り立ち姿を見せた。

 三人を見たミラー・ガールや聖龍隊の女子たちは感激の余り三人に駆け寄る。

「光さん、海さん、風さん!」

「ミラー・ガール」「皆さん御無事でしたか?」

 駆け寄っては声を掛けるミラー・ガールを見て思わず笑みが零れる光や海、そして風が自分達に駆け寄る聖龍隊の仲間達に無事を訊ねる。

「はい、みんな無事ですよ」

「凄かったね! 一瞬で四体とも消えちゃったよ」

 風の問い掛けにセーラープルートが答えると、立て続けにちびムーンが先程の出来事を目を輝かせて賞賛する。

「三人とも、怪我はありませんか?」

「ナースエンジェル……うん、私達は大丈夫。ありがとう」

 魔法騎士たちの体調を気遣うナースエンジェルに、光は満面の笑顔で返事をし礼を述べる。

「お、終わったのよね。今度こそ本当に……」

「終わった筈よ。そう……」

 今度こそ戦いは終止符を迎えた、そう信じたい心情に駆られるマーキュリーとネプチューン。

「敵は全部倒せた。これで後は……」

 ミラー・ガールが呟きながら辺りを見回していた、その時。

 

 辺りに響き渡る音。

 聖龍隊がその音に気付き、聞こえて来た前方に目を向けると、先程の合体魔神レイアースの放った攻撃で舞い上がっている砂煙の中から一体の人影が拍手をしながら此方に歩いて来るのが目に入ってきた。

「ッ!」「ッ……!」

 砂煙の中の人影に驚愕し言葉を呑み込むタキシード仮面と早見青児(はやみ せいじ)。

 そして聖龍隊の誰もが舞い上がる煙の中から歩み寄って来る人影に警戒の念を向けている最中、その影はゆっくりと怪しく煙の中から姿を見せた。

「……くっく……くっはっハッハ……いやいや、実に御見事。鮮やかな手付きでしたなァ」

「て、テメぇ……!」

 煙の中から姿を現した人物を見てメタルバードが顔を激情で歪ませた。

 頭から足の先まで漆黒の黒ローブで全身を覆い、顔ですらフードで覆い隠している身形。首には太いチェーンの様な黄金の宝飾、そして聖龍隊に向かって浴びせている拍手を鳴らす両手には黒い革の手袋を装着している人物。あの闇人(やみびと)、当の本人だった。

「いや流石だよ。まさか四体の巨人に巨獣共を合体魔神で一掃しちゃうとは」

 不敵で大胆な口振りで眼前の聖龍隊に話し出す闇人に、聖龍隊は焦燥の念に駆られてゆく。

「お、お前……!」「…………」

 眼前の闇人に激情が募るメタルバードや聖龍隊の面々、それに対し聖龍使いは無言で闇人を睨み付けていた。

 と、その時。闇人が不意に右手を高く上げ、そして一気に下ろし地面に手を着いた、次の瞬間。

 突如、闇人の周囲から次第に色と云う色が、まるで闇人に吸い込まれるかの様に消えていってしまう。

「な、何だコレはッ!?」

 闇人を中心に色の抜けていく町並みを目の当たりにしたメタルバードや聖龍隊は驚異に陥る。

 大破したコンクリやアスファルトの道路に電灯、瓦礫や車の残骸、そして周りのビルもそのガラス窓も、全て色が抜け落ちた様に灰色と化していった。

 鮮やかな色が、全て消えた灰色の街並みを見て言葉を失う聖龍隊。

 そして闇人は、自分を中心とした都市部を全て殺風景な灰色の景色に変貌させると再び聖龍隊に語り出す。

「ハハハハハ……ッ、そうこの色だ。現実と虚構、白と黒……いや、光と闇が入り混じったこの灰色こそ、今の俺達の関係だ」

 自身の周囲から放出するように灰色の殺風景な景観にしてしまった闇人の行動に驚きを隠せない聖龍隊。

 その時、そんな闇人の言動に苛立ちが募っていたセーラーファイターが言い放つ。

「い……いい加減にしなさいッ。この……!」

 彼女は右手を前に突き出し、闇人に攻撃を放そうとした。

「喰らいなさいッ」

 しかし異変が起きた。

「……え。な、なんでなの……? 技が……技が、出ない……!」

 なんとファイターが闇人に必殺技を放そうとするのだが、肝心の必殺技が出せなくなっていた。

「ど、どうしたのよファイター?」「技が出ないって……一体どうして?」

 突如必殺技が出せなくなったファイターの異常に、同じスターライツのヒーラーとメイカーは非常に困惑する。

 更にファイターのみに非ず、他の聖龍隊の面々にも異変が起きていたのだ。

「アレ? 可笑しいよ。私の技も、なぜだか使えなく成っている……」

「わ、私達のハニーブレスレットも反応しなくなったわ……!」

「ど、どうして……!?」

 セーラームーン、ハニー姉妹。更に他の聖龍隊の能力はもちろん、所持している普通とは異なる武器やバトンなどの道具も突然機能しなくなってしまっていたのだった。

「お、お前! いったい何をした!?」

 メタルバードが突然の事態に闇人に問い質すと、闇人本人は堂々と挑発的な態度で答えるのだった。

「はっはっはッ! 簡単だよ、ただ単にお前等が俺の領域(テリトリー)である闇の領域に居るから、どんな能力(ちから)も特殊な武器も使えなくなっちまっただけだよッ!」

「や、闇の領域……?」

 闇人の言う言葉に困惑する聖龍隊、そんな彼らに闇人は平然と語り続けた。

「そうだ。この灰色の風景、この灰色に染まる全ての世界は俺の領域と化してしまっているのだよ。この中では如何なる能力も、絶対的な尊厳も意味を為さないのだ……ッ!」

 更に闇人は徐に右手を前に突き出してみると、その突き出した右手から突如として黒い靄を噴出させては、靄から黒い拳銃を出現させた。

「ッ!」

 驚愕する聖龍隊、そして闇人は右手に作り出した獣の引き金を引き。一発の弾丸を放った。

「ぐあッ……!」

 そして闇人の放った弾丸は、なんとタキシード仮面の右膝に直撃した。

「まもちゃんっ」「衛!」

 右膝に弾を喰らい、寝転がる様に倒れ込むタキシードを見て悲痛な声を出すセーラームーンと親友の青児。

「ぐあああああああぁぁあああぁ……ッ!!」

 余りの激しい苦痛により転げ回るタキシード仮面。急ぎ青児が暴れ回るタキシード仮面の体を押さえながら弾が直撃した彼の右膝を見てみた。

「大丈夫か衛! ……ってなんだよ、傷ついてないじゃないかよ」

「ぐああぁ……!」

 青児や周りの皆が見てみたのだが、弾が直撃したタキシード仮面の右膝は出血どころか傷一つ付いておらず綺麗な状態であった。

 しかし当のタキシード仮面本人は激痛により未だに地面を転げ回り、顔には苦悶の表情を目一杯浮かべ尋常でない汗を流していた。

 そんなタキシード仮面や、傷付いてないのに激痛に苦しむタキシードを見て混迷状態に陥ってしまう聖龍隊に、闇人は自慢げに語り出す。

「くっはッハッハッハ! それだよ、それが闇の力の真髄だよ」

「え……!?」

 混迷しているミラー・ガールが闇人に顔を向けると、闇人は堂々と悠然と語り続ける。

「闇とは実体のない力、エネルギーなのだ。肉体には全く損傷を与えないが、代わりに精神そのものに直接ダメージを与える事が出来る唯一無二の力! 肉体に損傷が付かなくとも、精神つまり神経に直接ダメージを与える事が出来る! 故に目に見える肉体的ダメージよりも通常以上に、相手に苦痛を与え苦悶に至らせる事が可能なのだよ諸君ッ!!」

『…………!』

 闇人の話に衝撃を受ける聖龍隊一同。

 肉体すなわち体に傷などの損傷を負わせるのではなく、精神に通ずる神経そのものに直接苦痛を与える事で、通常以上に相手に激痛や苦しみを感じ取らせる事が可能となる。それが闇の力なのだと言う。

 だが闇人は更に衝撃の事実をも聖龍隊に告げた。

「それだけでない。闇の力は精神に直接苦痛を与えるだけでなく、お前の持つ能力そのものも吸収する事が出来るのだよ」

「き、吸収……?」

 発言に困惑する面々に、闇人は語った。

「そう、簡単に言えば引力さ。闇の力の基礎はそもそも如何なる物質や能力をも引き摺り込む事が出来得る事なのだよ。俺自身はもちろん、今俺が作り出したこの闇の領域(テリトリー)はお前達の摩訶不思議な能力や道具の力を吸い取り、無力化してしまっているのだよ」

「えっ、そ、それじゃ……!」

 驚く一同に、闇人は冷酷に告げた。

「そうだよ。お前達の能力は俺の……俺の闇の力の前では使う事は出来ないのだよッ!! ハハハハハッ」

『!!』

 自分達の如何なる能力も、全て使用不可に陥ってしまう事実を告げられた聖龍隊は愕然となった。

 そして能力を封じられ、言葉を失くして蒼然と化す聖龍隊を前にして、闇人は言い放った。

「いやぁはっはっは。これでお前等は戦う術を全て無くした……後は闇と光、真実と虚構が入り混じった中で、憐れに駆逐されちまいな……ッ」

「ふ……フザケルな! 例え能力が使えなくったって、お前を倒す術はいくらでも……!」

 闇人の発言に怒り声を荒げて反論するメタルバードに、闇人は甲高い声で嘲笑を吐きながら淡々と聖龍隊に語る。

「クッハッハッハッハ、いや此処までご苦労なこったねえ。最後には真実を知って絶望の念に駆られるというのに大したもんだヨ」

 此方を挑発するかのような素振りと口調で一人語り続ける闇人に、すかさずメタルバードが問い質す。

「おいテメぇ! 一体何者だッ! 何が目的で今の今までオレらを襲って来やがったんだ……!」

 問い掛けられた闇人は、眼前の聖龍隊に対して平然と微動だにせず答え返した。

「何って、そうだな…………オッ、そうだよ。俺はお前等を助けてやろうと思って、今の今まで行動していたんだよ。お前等を救ってやろうとな」

「な、何を言ってやがる! 俺達を助けるだぁ? ふざけた事言ってんじゃねえぞッ!」

 闇人の発言に怒鳴り返す星夜、そして彼に続いてセーラーウラヌスとハニー姉妹らが闇人に問うた。

「君の本当の目的は何なんだい? ボク達が住んでいるこの街だけでなく、世界中にさっきの様な怪物達を出現させては破壊行動ばかり取って」

「アナタは何故こんな真似をするの? みんなが暮らしている街を、世界を破壊しつくして……!」

「私達を助けるだの何だの、戯言を聞く気なんか毛頭ないわッ。大人しく観念なさい!」

 しかし闇人はウラヌス、キューティーハニー、ミスティーハニーの言動を嘲笑うかの如く言葉を吐き返す。

「ヒャッヒャッヒャッ。何も知らないってホントに凄く幸せだよねぇ。でも知らなきゃイケないんだよぉ、俺が直々に教えてあげちゃうんだよォ」

 間延びした小馬鹿にする口調で聖龍隊に語り続ける闇人。もはやその場の誰もが前方の闇人に多大なる怒りを覚え始めていた。

 だがその時、怒りの激情が昂る聖龍隊の集団の中から、一人聖龍使いが前に出て、眼前の闇人に聖龍剣の切っ先を向けてみせる。

「あァん? 何の真似だ、オマエ」

 一人闇人に刀を向ける聖龍使いを目の当たりにし、問い掛ける闇人。すると聖龍使いは刀を向けたまま、眼光を鋭くさせつつ闇人に告げた。

「…………もう終わりだ」「アァ?」

「もう終わりだ。俺とお前の関係も、此処で全て終わらせよう……」

『………………』

 突如闇人に掛ける聖龍使いの言葉の意味が理解できない聖龍隊の面々は唖然とするばかりであった。

 すると突然、聖龍使いの前方で耳を傾けていた闇人が、肩から高々と嘲笑しながら聖龍使いと聖龍隊の面々に向かって語り出した。

「……はっは……ハーーッハッハッ。笑わせんじゃねえぞ修司! 全て終わらせられる訳がねえだろうがッ!!」

『!』突然怒り出しては聖龍使いこと修司に言い放つ闇人の言動に驚く一同。

 そして闇人は、半ば興奮しているのか、息を荒くして聖龍使いに言い放った。

「ハァ……お前だって解っているんだろ? こんな紛い物の世界で何一つ事を為し得ようと、自分には何も手に入らないって」

「……………………」

「解ってるだろッ! そいつ等を……偽りの連中を護っても所詮お前には何も手に入らない! 何も得られない何も実らない! お前の存在を、価値を認めてくれる奴なんて結局は居ねえんだよッ!」

 声を荒げて言葉を投げ掛ける闇人、しかし聖龍使いは黙然を保つばかりであった。

 その時、セーラームーンが闇人に言葉を投げ付けた。

「ね、ねぇ……! 偽りって……紛い物って、何の事言ってるのアナタは? 聖龍使いに……修司君には何も手に入らないって、何言ってるのよっ。彼はしっかりと私達を今まで必死に護って来てくれた。私達が苦しい時、困っている時、必ず助けてくれたのよッ。それなのに……」

 聖龍使いが顔を下に向けている最中、必死に聖龍使いの事を弁論するセーラームーン。

 するとその時、闇人は必死に成るセーラームーンに一言投げ返した。

 

 

 

[真実と虚構]

 

「ほざくな…………たかが物語の中だけの存在が」

「……え……?」闇人の言葉にセーラームーンは固まった。

 この時、闇人の発言を耳にした聖龍使いは人知れず愕然と心を震わせていた。

 そして闇人の言葉に困惑する他の面々が、挙って闇人に言葉を掛けて行く。

「な、何を急に……!」「物語って……何を言い出すんだ?」

 困惑の余り、半ば混乱状態で口を開くセーラーマーズとタキシード仮面。

「物語って……つまりはお伽話の事だよね? でもそれって……」

「わ、訳の分からない事を言ってるんじゃない!」

 頭の中が混乱しそうになるさくらに続いて闇人に言い返す小狼。

 だが闇人は、困惑し混乱し出す聖龍隊の面々に容赦なく悪態を衝きながら語り続ける。

「気付かねえのか? 何故、自分に他の奴等と違う能力があるのか。何故、自分が変身し戦わなければいけないのか……よく考えてみろや」

 闇人の一言一句に、次第に昏迷状態に陥り始める聖龍隊。

 と、その時。「やめろ」「……アァ?」

 語り続ける闇人の言動を聖龍使いが制止した。

「やめろ……それ以上、何も言うんじゃねえ」

 闇人に言い続ける聖龍使い、しかし闇人はそんな聖龍使いの言動や心情を見下し嘲笑うかのように、更に語り続ける。

「良く思い出し、良く考えてみろ。何故、出会った頃は中学生であったセーラー戦士達だけ高校に時が進んだんだ? 何故、自分達の周りの時間だけが他とは違うんだ? 何故……同じ時を過ごして居る筈なのに、各々時間の進み具合が全く違うんだッ?」

「やめろ……ッ!」

 語りの制止を続ける聖龍使い、しかしそれでも尚闇人は嘲笑を上げながら語り明かし続けた。

「何故記憶の中に無いんだッ? シュウジ、ちせ! お前等の上の名前は何で無い! 何故(なにゆえ)姓名が記憶には無いんだァ? そして他の連中もそうだ! 自分等の生年月日は? 西暦何年に生まれた? その日その時の天気は? ……なんでお前らだけが変身なんて芸当ができるんだァ!?」

『…………』言葉を失い黙然と成り果ててしまう聖龍隊。

 闇人は止めを刺す様に、聖龍隊の面々に向かって言い放った。

「簡単な事だ! それはただ単にお前達には必要以上の詳細は、記憶は必要ないからだ! お前らも! この世界も! 全て」

「言うな闇人ッ!!」

 聖龍使いの怒声による制止も空しく、闇人は衝撃の告白を怒涛の如く言い放った。

「全てが……! 単なる虚構でしかないからだよォッ! お前達が勝手に認識している万物……物質や感覚……いいや、『自身』という概念自体は実際には存在してない擬似にしか過ぎないんだよォッ!!」

『………………!』

 闇人の口から出た発言の内容に、聖龍隊の誰もが言葉を失い愕然となった。

「きょ……虚構……」

「私達の……私達の存在、そのものが……!?」

 愕然と成り次第に蒼褪めて行くジュピターとヴィーナス。

 その時、愕然と成りながらも早見青児が闇人に物凄い剣幕で問い質した。

「ふ……フザケルんじゃねぇ! 俺達の存在が無い……? そんな事……そんな事あって堪るか!」

 青児に続き、苦悶に満ちた面持ちでシュウジが問い質す。

「そうだ……その通りだ。何より……何より、それならちせは何だって言うんだよッ! ちせが体を改造されて苦しんでいたのも、全ては決められた事だったと言うのか!?」

 このシュウジの一言に、聖龍使いは人知れず敏感に反応していた。

 しかしそんな絶望感に駆られ始める聖龍隊に、闇人は追い打ちを掛けるかの如くシュウジの発言に答える様に聖龍隊の一同に語り続けた。

「その通りだ! お前達の戦いも、苦しみも、思い出と云う名の記憶も……! 悲しみも喜びも、そして宿命も! 全ては只与えられただけの物語と云う名の虚構にしか過ぎねえんだよッ!!」

 

 そして最後に闇人は、事実を知って暗然と表情を暗く重くさせつつある聖龍隊の一同に一言放った。

「お前等の人生も、存在も、全て……タダのお遊戯(あそび)なんだよォッ!!」

 闇人の放った、このたった一言に聖龍隊の誰もが深く心を傷付き、そして戦意を始めとする全ての思想を消し去った。

「て……てめぇーーッ!!!!!!」

 闇人が己の口から吐いた言動に、聖龍使いは天地が揺らぐほど怒り叫んだ。

 

 一方の聖龍隊の一同は、各々闇人の発言に

「そんな……」「私達が……単なる、モノ……」

 落胆する春日結と獅堂光。

「モノガタリ……私が、私達が……」

 失望の余り膝を着き顔面蒼白と成り果てるセーラーマーズ。

「虚構……偽り……私達が……」

 蒼褪めた表情で唇を震わせるキューティーハニー。

「嘘よ、私が……私達が、物語の中の存在だなんて」

 口を押さえて必死に動揺を抑えようとするナースエンジェルは悲痛に満ちた言葉を呟く。

「ウソだよね、私達の世界が……大好きな友枝町や友達……お兄ちゃんや知世ちゃん、小狼くんに苺鈴ちゃんとの思い出も……! 全て作られた物なの……!?」

 自身の悲痛な思いを、心苦しく成る胸の奥から必死に絞り出し口から出す木之元桜は、目から薄らと悲しい涙を浮かべていた。

「嘘……嘘よそんなのッ! 私達が作られただなんて……私達の思い出が全て創作だなんて……!」

 半ば興奮しながらも意気消沈する花丘イサミは、自分の中に溜まる悲痛な思いを全て出し切る様に叫び放つ。

「そんな、私達が……私達のこの世界が、物語の」

「物語の世界……そんな……!」

 今にも卒倒しそう表情を見せる春菜と愛。

「それじゃ……それじゃ、私達の今までの戦いは何だったのよ……ッ!」

「沢山の人が傷つき、倒れていった戦いは……何のために……ッ?」

「……ッ……ッ」

 セフィーロそして此方の自分達の世界で繰り広げて来た戦いの日々を思い返し、苦悩に頭を巡らせる海・風・光の魔法騎士たち。

「何だよそれ……俺達の町が壊され、俺達の周りの人たちが死に……挙句の果てには、ちせが改造された事までも……! 全て……全て決められちまってた事かよッ!!」

「…………」

 行き場のない焦慮に怒りと鬱々な心情を吐き出すシュウジの側目でちせは悲しげな顔を俯け暗然としていた。

「……何なのよ。何だって言うのよっ。……私が、私が今まで味わってきた苦痛や絶望は一体……!」

「それじゃ何だ……! 俺の親父が殺されちまったのも、全てはこの世界が物語の世界だからだって言うのかよッ……!」

 悲愴な面持ちで自分の想いを言葉として口から出す早見青児とミスティーハニーは失意のどん底に陥る。

「私達も……私達も、セーラー戦士や聖龍隊の人たちと同様……単なるツクリモノ」

「そんな……っ」「ッ……」

 暗く失意に満ちた表情で呟くスターライツのメイカー、ヒーラー。そして言葉を失うほど心を抉られるファイター。

「ウソだろおい……俺達が、ただのおとぎ話……!?」

「……!」「そんな……!」「……し、信じられない。まさか……!」

 驚愕し戦意喪失になる宇崎星夜、そして言葉を失くすデューイに愕然と成るカノン、闇人の言葉を鵜呑みにできずに居るゼラ。

「私達が……! そんな……」

「私達が、創り出された存在……まさか……!」

「信じられない……そんな事、信じられぬものかッ!」

 俄かには受け入れ難い事実に騒然と化す高木はるかや芹沢ルリ子、そして銀天狗率いる新天狗党の面々。

「ウソだろ……嘘だろオイ……! 俺らが……俺達が……そんな……ッ!」

「物語……この世界も、そして……僕達自身も……全て」

「この世界の出来事も、私達が感じ入る全てが……創り出された、幻想……!?」

「…………」

 事実を知り落胆するメタルバードに、自分を含めた全ての存在や物質が予め作られた存在である事に愕然と成るキッド、全てが幻想と云う名の虚構であったと知り失意の念に駆られるフェアリー、そして余りの内容に言葉を失ってしまうウエルズ。

 そして一人、憮然と化してしまっている聖龍隊の中で、自身の苦しい心境を抑えつつミラーガールが動揺に震える顔で闇人に問うた。

「……嘘よ……ウソよ! 私達の世界が……家族が、友達や、周りのみんなが……私達自身が存在していなかったなんて!」

 目に涙を一杯に溜めて叫ぶミラーガールの悲痛な思いを、聖龍使いは一人静かに感じていた。

 

 そんな失意と絶望の概念に陥ってしまう聖龍隊の面々を、闇人は微動せず静かに見据えていた。

 そして彼は悲愴に暮れる聖龍隊に向かって吐き告げた。

「ふふふ、だから言っただろう? 俺はお前達を助けに来たんだよ。単なるツクリモノの世界で苦しむお前等の悲しみを拭う為に、俺はお前達を完全なる無に……そう、その創られた存在を虚構なだけのこの世界と共に消し去って上げるんだよ。……ふふ、ふふはははははははは…………」

 聖龍隊が沈黙している中、辺りには闇人の不敵な嘲笑が虚しくも響き渡っていた。

 更に闇人は、徐に右手を上げて手の平を天に突き出しながら開くと同時に、眼前の聖龍隊に向かって言った。

「ま、そんな事で……これで本当に終われるぜ。お前達の苦しみも、悲しみも……争いも、全てがなァ」

 言葉を告げ終わった瞬間、闇人は上げていた右手を地面に振り下ろした。

 

 

 

[蘇る強敵達と本性(おのれ)を表す鬼]

 

 闇人が右手を振り下ろし手の平を地面に付けると、それと同時に彼の手から黒い靄の様なモノが噴き出ては、彼と聖龍隊の狭間である間隔に拡がっていった

「こ、こいつは……!?」

 突然自分等の眼前に広がっていく黒い靄に驚き戸惑いを隠せないメタルバード。

 そして聖龍隊が見ている最中、拡がった黒の靄から何かが浮き出る様に這いずり出て来た。

「な、何よ、いったい……っ」

 先程の闇人の言葉に失望を感じては目に涙を浮かべるヴィーナス。

 聖龍隊が見ている中で黒い靄から出て来たモノ、それを見た一同は更に愕然となった。

「そ、そんな!」「嘘だろ……こんな時に」

 何故なら黒い靄から出て来たのは、先程までの戦闘で倒したり、以前に別所で討ち滅ぼした事がある怪人や魔獣・妖魔達ばかりであったからだ。

「そんな、何故……!」

「あいつ等まで居るの……!」

 キューティーハニーとミスティーハニーの姉妹は落胆した。何故なら目の前に広がる黒い靄から出て来た軍勢の中には、以前自分達が倒した事のある豹の爪(パンサー・クロー)の女怪人や下っ端までもが多数確認できたからだ。

「何故……何故、彼らが此処に……!」

 目の前に再び姿を現した倒した事のある敵達を目の当たりにして、キッドが酷く動揺しているその時。

「……分からないか? 全てはお前達に復讐を……いや我々が味わった絶望を感じさせるためじゃ……ッ!」

「え……!?」

 突如耳に入ってきた謎の声に戸惑う一同。

 そして怪人や妖魔達に続いて黒い靄から、心を揺らがせている聖龍隊の前にその姿を現した。

「お、お前等……!」

 その者達を見てメタルバードが叫んだ。

 靄から噴き出る様に姿を出現させたのは、先程まで聖龍隊の面々と激戦を繰り広げていた、闇人以外の黒ローブ達であった。

「お前等、いったい……!」

 驚き黒ローブ達に指差すメタルバードを見て、黒ローブ達は口々に聖龍隊に告げて言った。

「お前達は、実に妬ましい程優遇されている存在なのだな……ッ!」

「お前達だけが生かされ続け、我々だけがこんな惨めな最後を遂げていくなんて……ッ」

「なんでだ……何でなんだ!」

 怒りや憎悪に滾る言葉で聖龍隊に告げていく黒ローブ達、すると彼等は唐突に自分が着服している黒のローブを徐に掴み、そしてそのまま剥ぎ取った。

「え……そ、そんな……! バカな、こんな事って……ッ!」

 メタルバードはもちろん、他の聖龍隊の面々も自分の目を疑った。

 黒いローブを脱ぎ捨て己の姿を現した彼等の正体に、誰もが驚愕した。

「ッ……DDガールズ!? 何で?」

 ローブを脱ぎ捨てた五人の黒ローブ達、それは以前セーラー戦士達を苦境に追い詰めた実績のあるDDガールズ達。

「そんな……なぜ、貴女が此処に居るのッ? ……シスタージル!」

 黒ローブを脱ぎ、その全貌を現した、今は死んでいる筈のシスタージルの存在に驚きを隠せないキューティーハニーや妹のミスティーに、当のジル本人に父を殺された早見青児。

「ぶ、ブロス! 何故あなたが……!」

 既に消滅した筈の敵ブロスを目の前にして蒼然と化すナースエンジェルに星夜、そしてブロスの元部下であるデューイに、ブロスに体を乗っ取られた経緯を持つカノン。

「そんな、貴方は……!」「何故、貴方までも此処に……」

「い……イノーバなの? なんで……!」

 異世界セフィーロで魔法騎士の三人と対峙した事のある、今は亡きイノーバの姿が目に入り驚愕する海・風・光の三人。

「あ、貴方が何故ここに……!?」

「貴方は、私達が……そう、結ちゃんと私達それにコムネットのみんなが力を合わせて……」

「……そう、貴方は私が……ううん、私にみんなが力を貸してくれたから、無事に眠らせてあげられた筈。なのに何故、何故ここに貴方が……黒川博士!」

 コレクターズの愛・春菜・結の前にその姿を現した黒ローブの一人は、何と以前、結達が協力してコムネットの中に死しても尚精神だけで生き永らえ暗躍していたプログラマー博士 黒川良(くろかわ りょう)その人。

「お、お前はダァク! 以前オレやキッドそれに修司が、ミルモや楓達と協力して完全に消滅させた筈……!」

 メタルバードは自分の目を信じる事が出来なかった。以前、聖龍隊の面々とは関係なく別件でその存在を抹消させた筈の強敵ダァクが目の前に平然と腕を組んで此方を見据えているのだった。

 更にその時、地面が揺れ出し立っていた聖龍隊の面々が驚いた瞬間、なんとアスファルトの道路を裂いで地面から巨大な虫の様な怪物がその全貌を聖龍隊に見せ付けた。

 その虫の様な怪物を見たウォーター・フェアリーは、只ならぬ様子で叫んだ。

「そんな! す、スコーピオン……!? なぜ此処に……!」

「え! スコーピオンって……確かアプリ、君の居たボスコワールドで君やフロークさん達と対立してた……!」

 フェアリーの只ならぬ様子にすかさずキッドが話し掛けた。スコーピオン、それはウォーター・フェアリーことアプリコットが居た異世界ボスコワールドで水の妖精の王女であるアプリコットを亡き者にしようと陰謀を講じていた巨大な虫に酷似した魔物だった。

 

 かつて自分等の手によってこの世から姿を消した者達の姿を目の当たりにした聖龍隊は、驚愕の余り立ち尽くしてしまっていた。

 そんな聖龍隊の面々に、倒された者達は挙って自身の無念を語っていった。

「我は……我々はだなハニー姉妹! 私達はお前達と違って……最初からお前等に倒され消されるだけの存在だったのだ! 分かるか? お前達は優遇された生涯を……運命を与えられたというのに、我々はそんなお前達に倒されるだけの存在でしか無いのだッ!! この苦しみが……絶望がお前等に解るかッ!?」

 消されるだけの存在でしかない事に多大成らない無念さを感じ取るシスタージルに続き、ナースエンジェル達と対峙したブロスが怒りに満ちた目で睨み付けながら述べていく。

「ナースエンジェルよ。そして私に無様にも体を乗っ取られていたカノンに裏切り者のデューイ! おまけに宇崎星夜。私がお前等と対峙し、そして死闘を繰り広げたのも、全ては単に与えられただけの筋書きだったのだよ。何より私によってお前等が苦しんでいたのも、私がお前達に倒された事も……全ては定められた事だったのだよッ!」

 怒りに震えるブロスに続いて、今度は魔法騎士の三人に倒された事のあるイノーバが後悔の念に満ちた面持ちで語り放つ。

「魔法騎士(マジックナイト)よ! そしてクレフにランティス、フェリオよ。私達のセフィーロでの戦いも全ては……全ては創られ決められていた結果だったのだよッ。我が主が死に絶えたのも……あの柱制度ですら! 予め与えられた筋書きだっただけなのだ……!!」

 イノーバの発言に愕然の心境を隠せない三人の魔法騎士にクレフ、ランティス、フェリオ達。

 更に悲痛な心境で顔を歪ませる黒川良も、眼前のコレクターズを始めとした聖龍隊の一同に語り出してゆく。

「コレクターズよ……! 私は人が作り出したプログラムに人間同様の感情や知性は不必要だと、そう思っていた。しかし……! しかし、そんな私自身が人によって創り出された創作物でしかなかったなんて……! 死してもコムネットの中で生き永らえてしまっていた私も、そんな私を倒した君等も……全てが虚構の存在だとは……!」

 黒川良の悲痛な心情を彼の口から聞いたコレクターズの春日結・如月春菜・篠崎愛の三人は悲愴な心境に駆られながらも居た堪れない気持ちになる。

「メタルバード。私は人の絶望や悲しみ、そして恐怖より生まれ出た存在。しかしこの世界はもちろん、この世界で産まれ生きているモノ全てが私の元となった絶望や悲愴、それ等と同じ人の思想概念から生まれ出た存在なのだよ……!」

「…………!」

 ダァクの言葉にメタルバードは衝撃を感じつつも何も返す事が出来なかった。

「プリンセス・アプリコットよ。まさかボスコワールドとは別の次元世界にてエイユウと云う存在に成り果てていたとは、驚きだよ……! だが、所詮はボスコワールドもこの世界も……全てが他次元に存在する者等の思想概念が寄り集まって生まれ出た異次元の世界なのだよ! なに、今度はお前もボスコワールドも……そして全ての世界を! 物語の世界全てを我々が総力を挙げて消し去ってやるわァッ!!」

 自分が生まれたボスコワールドも、聖龍隊のみんなが暮らすこの世界も、そして全ての世界を消滅させると豪語するスコーピオンの話に、失望の念で耳を傾けるアプリコットことウォーターフェアリー。

 目の前に突如として現れた怪人や妖魔の軍勢に続き正体を現し見せ付けるかつての強敵達を眼前にし、ミラーガールは己が心の中を空虚にしてしまっていた。

「そんな……私が、私達が……私達の世界が……」

 自分も、友も、家族も、そして住み慣れた世界そのものが単なる虚構の物語の世界である事実を知らされた彼女は、その活き活きとしたかつての明るい表情を一転、失意に暮れる暗然とした面持ちに豹変してしまっていた。

 

 そんな失意や悲愴に駆られる聖龍隊に、今にも襲い掛かろうとする軍勢。

 軍勢に直接指揮を与えるのは、かつて聖龍隊の英雄達によってその身を消され滅ぼされた「消えるだけの存在として生み出された」司令塔である強敵達。

 そして強敵達を指示するのは一際怪しさと不気味さを漂わせる、未だに黒いフードにその顔を隠す謎の存在「闇人(やみびと)」

 彼らを前にしても、聖龍隊の誰一人として闘志を湧き上がらせ立ち向かおうとする者は皆無であった。

 しかし、そんな状況下の中、ただ一人、怪人や妖魔等の軍勢に向かって歩を進める者が、失意の渦中である聖龍隊の中から歩み出た。

「!」その者を見て顔色を一変する司令塔達。

 そして聖龍隊の皆々も、その者に視線を向けた。

 単身、敵軍の前に歩み出る武人。それは聖龍隊の総長、聖龍使い本人であった。

 聖龍使いは眼前に群がる敵軍に、その闇の如き瞳で睨み付けた。

 鋭くも殺意に満ちた眼光を放つ聖龍使いの闇の様な瞳で睨まれた敵軍に司令塔は一瞬怯んでしまう。

 更に聖龍使いは仲間達が見ている中、徐に自身が装着している戦闘で粗方破損してしまっている鎧や甲冑、兜を次々に脱ぎ捨てて始める。

「ッ!」「ッ……!」

 目の前で聖龍使いの鎧を脱ぎ捨てる様を見て大変驚嘆する聖龍隊。

 そして全ての鎧を脱ぎ捨て、その身が露わに成った時。その身は夜空の如き黒の和衣、帯は体に滾り流れる血水の如く赤い身形の小田原修司の全貌が姿を現した。

 小田原修司の全貌が露わになるのを見て、闇人は人知れず口元に笑みを浮かべていた。

「………………」

 全てを脱ぎ捨て、己の姿を曝した少年 小田原修司(おだわら しゅうじ)は闘志に滾るその漆黒の瞳を鋭くさせつつ、眼前の敵勢に聖龍剣を向けて己の戦意を表現した。

 そんな小田原修司の行動に唖然とする聖龍隊、そして彼を目の当たりにして自然と表情を険しくさせる敵方の司令塔達、そして怪しく黙然としている闇人。

 緊迫する状況の中、小田原修司は後方の聖龍隊の面々に背中を向けたまま言葉を掛けた。

「……お前達」『ッ……!』修司の一声に過敏に反応する聖龍隊。

 修司はそんな仲間達に空虚漂う背中を向けて言った。

「お前等、例え自分がどんな存在であろうと……どんな人生を歩ませられていたとしても……お前達は確実に、多くの人々から必要と認められ、そして愛される存在なんだ。……それは紛れもない事実だ。だから俺の様に……俺の様な男でない以上、この世界に居ても良いんだ」

『…………………………』

 修司の言葉に思わず固まってしまう一同。

 

 

 そして修司は日本刀の聖龍剣を鞘から抜き取り、光り輝く鏨(たがね)の刃を敵陣に振り翳すと同時に、再び後方の仲間達にその顔を振り向かせながら話を掛ける。

「良いか、これからお前等が目の当たりにする光景を……お前達は決して目を逸らさず見届けろ。そして己が心に刻み付けろ……ッ。これが……これがお前達が」

 修司は何処か悲しく、そして虚しさを感じさせる面立ちを仲間達に向けて、一言述べた。

「……決して、成り果てちゃいけない……存在(バケモノ)の姿だ」

 悲愴に、空虚に満ちたその横顔を見た聖龍隊は、心を深く締め付けられるような感覚に陥る。

 

 小田原修司は一人、聖龍剣という刀一本で。見積もっても軽く百は居るであろう敵陣の中に単身駆け出すのであった。

 

 

 次回、一人の少年は、その孤独で悍ましい素顔(ほんしょう)を現す

 

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