何気なく漫画の神様のキャラ二人に、後にクロスオーバーで出演する作品のキャラ三人も出演しております。
次ページからは、それから更に日にちが経過し、およそ大戦から一ヶ月後の話と成ります。其処で主人公の真実等を暴露していきます。
更にヒロインのトンでも設定も明かしていきます。
作品についての感想やコメント、質問等がありましたら遠慮なくコメント欄やメッセージにて送信してください。
これは現代社会に生きる全ての悩める若者達にも痛感できる話と心得ております。
※最後の「時は過ぎて」の文章は、皆さんも良く知っている「アナと雪の女王」のレット・イット・ゴーの歌詞から引用しております。主に成長した主人公の真情を表現した文章に若干変えております。
[戦い終わり……]
此処は聖龍隊管轄内のとある総合病院。
そこではフロアが丸ごと貸切状態だった。
そして、その貸切のフロアの病室では、激しい戦いを終えて心身ともに消耗しきってしまっている聖龍隊のメンバー達が総出でベッドに臥せっていた。
皆それぞれ、身体の状態などから治療の種類は様々ではあったが、殆どがベッドから起き上がれなかったり、起き上がれたとしても弱い足取りで歩行するのが精一杯の状態だった。
そんな皆々、床に就いている中、聖龍隊副長のバーンズと参謀のジュニアは同じ病室そして隣同士のベッドで包帯やガーゼだらけの状態で臥せっていた。
「ああ……シンドイな」「うん……」
共にベッドの中で横に成りながら会話するバーンズとジュニア。
この時、バーンズは自分達が居る病室の中を寝ながら見渡した。
同じ病室で横に成っているのは、早見青児に銀天狗こと田能久健。隣同士のベッドに腰を下ろして座りながら何やら会話をしている月影トシに雪見ソウシ。天井を見上げながら大人しく布団の中に臥せる李・小狼(リ・シャオラン)。疲れ切った表情でベットの上で鎮座するシュウジ。
そして最後にバーンズが視線を向けたのは、病室の一角のベッド、其処で顔まで完全に布団で覆い隠しつつ就寝している小田原修司本人であった。
修司は病院で床に就いてからと云うもの、誰とも顔すら合わせようとはしないでいた。
そんな修司をみて、バーンズが思わずジュニアに口を零した。
「あいつ……あれから一言も喋ろうともしねえよな」
「うん、何だか僕等を避けているみたいだよね」
バーンズの言葉にジュニアも言葉を返す。
「まっ、今はみんながみんな、それぞれ療養に徹しなきゃイケねえだろうし、修司に訊くのはまた後でも良いだろ」
「そうだね、今は義兄さんだけでなく、他のみんなも色々と思っている事が沢山有るだろうし、質問をぶつけるのは後回しでも良いよ」
二人は布団に潜り込む修司を見詰めながら語り合った。
一方、別の貸切フロアでは。
此処は女性陣が主に療養に当たっているフロアであり、ヒロイン達は皆満身創痍で戦い抜いたために、身体が思う様に動かなくなるほど疲労困憊の身であった。
ある者は戦闘で傷付き負傷した個所を気にして擦り、ある者は身体に張られた包帯やガーゼを気にしてばかりいた。更には、何とか動こうと松葉杖を突きながら必死に歩行する者の姿も見られていた。
そんな女性及び女子達の一人、加賀美あつこは窓際のベッドの上で静かに座っていた。そして窓からの木漏れ日を浴びつつ、窓の外を気欝そうに眺めていた。彼女は一体なにを想っているのだろうか。
その頃、聖龍隊が寝泊まりしている病院の手術室で緊急手術が行われていた。
手術中の赤いランプが表示されていたが、それが消灯し、手術室の中から手術用の白衣を全身に纏う二人の男性が出て来た。
「いや~~、無事に終わって良かったですな」「はい、全くで」
その内の一人で、大柄な体格で頭の両側にふわりとした白髪、そして顔の部位では最も目立つ大きな鼻の老人が,もう一人の男と会話を交わし始めた。
「それにしても、手術が無事に済んで良かったわ」
これに対しもう一人の男、白衣で頭や顔を隠していながらも、左目の部分が異様に他の肌とは異質な色合いの、継ぎ接ぎが目立つ目元を覗かせる男が老人に話を返す。
「はい、彼女の容態は一刻を争う状態でしたしね。でも、あなたの御蔭で彼女の問題ある個所はある程度治す事が出来ましたよ」
老人は男に愛想よく返した。
「いやいや、ワシはただ技術者として彼女の改造されてしまった身体の各所を多少ながら改善しただけじゃ。医学に関しては素人のワシだけでは彼女を処置する事は出来んかった。君の様な天才的な医術者が協力してくれたからこそ彼女を、ちせ君を処置する事が出来たのじゃよ」
「フッ、本当なら、こんな大手術(オペ)八千万は貰いたいところですけど……あの手塚先生の御願とあらば無視する事もできませんしね。何より、あのちせって子を始め、聖龍隊の子供達の奮闘が有ってこそ私達の居るこの二次元界は護られたのは紛れもない事実なんですし、多少の事は大目に見てあげませんと」
「はは、相変わらずじゃな、君は」
初老の男性は微笑むと、継ぎ接ぎの男性に手を差し伸べ言った。
「どちらにしろ、これでワシ等の役目は一旦終わりじゃ。後は手塚先生も仰っていた通り、彼等の力強い前向きな意思に全てを任せましょう。……協力ありがとう、ブラック・ジャック君」
差し伸べられた手に拍手を交わす継ぎ接ぎの男は老人を見詰めながら言葉を返した。
「此方こそ、ご協力感謝します。お茶の水博士」
更に同病院内、とある一室にて
「……それで、俺達に何の用なんですか?」
一室に用意された長テーブルの椅子に着席しつつ、顔に多少のガーゼや怪我の痕を残すタキシード仮面こと地場衛(ちばまもる)が不機嫌そうに言葉を発する。
怪我や疲労、それによる治療により精神的にも参っているのか、多少不機嫌そうな情状の衛の傍らには、同じ聖龍隊の宇崎星夜(うざきせいや)とデューイの姿も在った。
二人も衛同様、身体の各所に治療を施された跡が垣間見れ、その表情も疲れ切り参っていると言った面持ちであった。
そんな三人とテーブルを挿んで向かい側に着席している三人の男女。その内の大柄で角刈りの男が三人に話し掛ける。
「いや、ほんとに申し訳ない。激しい戦いの後で、かなり疲労が溜まっているうえ身体の傷も完全に癒えてないと云うのに……」
申し訳なさそうに頭を下げる男に、デューイが不機嫌そうに言った。
「それで、僕達に何の用なんだい? 冗談抜きで本当に未だに体が痛くって参っているんだから、早く要件を言ってよ」
すると大柄な男の右隣に座っていた赤いスーツを着用した若い女性が三人に話し始めた。
「お疲れの所、本当にすみません。私達は、あなた方の超能力について多少の関心が有りまして……」
「俺達の超能力に?」
困惑する星夜の言葉に、大柄な男の左隣に座っている若い眼鏡を掛けた青年が事情を話した。
「僕達は、とある政府機関の人間でね。今回の戦いで活躍した君達の特殊能力を高く評価している。そして、僕達の機関では前々から超能力つまりエスパーの研究やその人権保護に務めているんだ」
「成るほどね……それで? 俺達の事をどうしたいんだ?」
衛が言うと、それに女性が答えた。
「私達の機関は、今後聖龍隊と全面的に協力していきたいと、そう思案しています」
女性が語ると、続け様に青年が三人に力強く語り明かす。
「君たち特殊能力者は世間から見たら、時おり異質な存在として見られ、下手をすれば迫害を受けてしまう恐れもある。僕達の機関は、そんな能力者を保護しつつ、その能力を平和利用の目的で日夜研究しているんだ」
「そっか……ところで、さっきからアンタ達の言っている機関って何なんだ?」
衛が訊ねると、若い眼鏡の男は胸のポケットから一枚の名刺を取り出し、三人に見せる様に手渡した。
「これって……び、B(ビー)、A(エー)、B(ビー)、E(イー)……」
名刺に記載されている並んだローマ字を読んで行く星夜に、大柄な男が伝えた。
「B.A.B.E.L (バベル)。それが私達の所属する機関の名だ。今後、我々B.A.B.E.Lは君達が所属する聖龍隊とは協力関係を布いて行くつもりだ」
そして最後に、大柄な男に若い女性、そして眼鏡の青年は衛、星夜、デューイに各々名乗った。
「私はそのB.A.B.E.Lの局長を務める桐壺帝三(きりつぼたいぞう)と云う」
「私は局長の秘書を務めています柏木朧(かしわぎおぼろ)と申します」
「そして最後に……僕は皆本光一(みなもとこういち)。今後とも宜しく、聖龍隊の若き英雄(ヒーロー)達」
『…………』
最後に愛想よく言葉を発する皆本と云う青年の発言に、三人は思わず唖然としてしまう。
こうして、聖龍隊の面々は各々自身の治療を受け、安静にする日々を送ったのであった。
[明かされる闇の心理]
それから更に日が経ち、激戦からおよそ一ヶ月後のある日。
「……う~~ん……う~~~~ん……」
「……バーンズ、少し落ち着いたら?」
聖龍隊の地下施設、その広大な一室に大戦に参加した聖龍隊メンバーに駆け付けて来てくれた皆々が集合している中、バーンズは落ち付きの無い様子で室内を行ったり来たりと歩き回り続け、そんなバーンズにジュニアが声を掛ける。
するとバーンズは腕を組んだ状態でジュニアに返した。
「だけどよ、ホントにどうなるか不安でしょうがないんだよ。そう言うお前だって、内心不安で仕方ないんじゃないのか?」
「そ、そりゃ……そうだけどさ」
ジュニアが呟き返すと、其処に同室に集っていた火野レイと水野亜美がバーンズに言った。
「バーンズ落ち着きなさいよ」
「心配なのは貴方だけじゃないわ。此処に居るみんなが、心中不安で一杯なんだから」
「…………」
二人に言われながらも落ち着きを取り戻せないバーンズ。
その時であった。部屋の扉の向こうから足音が室内の皆の耳に聞こえて来た。
「ん、足音が……三人!」
扉の向こうから此方にやって来る足音を聞き、それが三人分の足音と識別したバーンズ。
そしてバーンズや部屋に集う皆が視線を集中させる中、両開きの扉から一人まるで飛び込むほどの勢いで部屋に入って来た。
「皆さん! 国連から正式に、ちせさんとシュウジさんの身柄が聖龍隊に渡されました。これで二人は晴れて自由の身です!」
飛び込むように部屋に入って来たウッズの一声に、部屋に居た全員が歓喜した。
「よっしゃァ!」
「これで二人はずっと聖龍隊に居られるな」
皆が歓喜する中、ウッズの後ろから話題の中心である、ちせとシュウジが歩み出る。
「みんな……ありがとう」
涙目で皆に礼を述べるちせに続いて、シュウジも皆に頭を下げて述べる。
「みんな……心配掛けて済まなかった」
すると頭を下げるシュウジに衛と青児が歩み寄り、青児が彼の頭をグシャグシャに撫でながら言葉を掛ける。
「はは、もうそんな他人行儀は良いんだぜシュウジ」
「そうだとも。お前とちせは身柄を聖龍隊に譲渡され、晴れて自由の身に成れたんだ。これからも引き続き宜しくな」
二人の言葉に、シュウジもちせも心から感激した。
そんな喜び合うシュウジとちせ、そして他の聖龍隊の面々を前に、バーンズが言葉を発する。
「はは、それじゃ……二人とウッズが合流した事だし、肝心の話をと」
そう言うとバーンズは人混みの方に手を突っ込み、集団の中からキーオを前へと引き摺り出した。
「うおっと」
襟を掴まれ半ば強引に引き摺り出されるキーオに、彼を引き摺り出したバーンズが厳つい顔立ちで言った。
「キーオ、本題だ。お前が知っている事を全て話せ。此処に居るみんなに、な」
「あ……ああ、解ったよ」
バーンズに問い出されたキーオは険しい表情で語り出した。
「……それじゃ、キーオ君は初めっから、私達の生まれ育ったこの世界が全て創作上の、おとぎ話の世界だって知っていたの?」
「ああ、そういう事に成るかな」
愛野美奈子の言葉に表情を厳つくさせて返事をするキーオ。
「で、でも……何故……」
神妙な面持ちで訊ねる冥王せつなに、キーオは真実を告げた。
「前に言わなかったか。俺の生まれ育った鏡の国は全ての異世界に存在している鏡を通して見る事ができる。それはこの二次元界とは別の次元、修司が来た三次元界をも見通す事が出来るんだよ」
「つ、つまり! 鏡の国は、既に二次元界と三次元界の存在を周知していたのか」
驚く衛にキーオは説明した。
「そうだぜ。知っての通り、鏡の国は全ての鏡に繋がっていて、それで鏡を通して色んな景色や情景を目にする事が出来るんだよ。鏡が存在している異世界はもちろん、三次元の鏡にも俺の世界は繋がっている訳よ」
「そ、それじゃ……キーオ君は最初から、私達が三次元界で創作された物語だって知っていた訳なの?」
水野亜美が震える指でさしながら訊ねると、キーオは神妙な顔で語り出した。
「そうだ。そして、お前達が本来どの様な話だったか、どんな物語なのかも周知している。例えばセーラームーン、あんたは日本で最も古い物語である【竹取物語】そのヒロインで有るかぐや姫をモデルに生み出された二次元人だ」
「……」
キーオからの指摘を無言で聞き入れる月野うさぎ。彼は更に語り明かした。
「他にも確か……そうだコレクターズ、あんた達は南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん)の物語を元に創られた話だ」
「え、確か里見八犬伝って、江戸時代後期に広まった冒険活劇の……!」
「わ、私達……そんな有名な物語を元に生み出された物語だったんだ……!」
「驚きですわ……!」
キーオの語る話に驚きを隠せない篠崎愛に春日結、そして如月春菜の三人。
「あ、あの……」「ん、なんだ? 花丘イサミ」
躊躇いを見せながらも訊ねてくるイサミに訊き返すキーオ。イサミは意を決してキーオに訊ねた。
「あ、あの……私達が創作上の、いわゆる作り物の架空の存在だとすると、まさか私達の御先祖様が加わっていた新撰組は……」
恐る恐る訊ねてくるイサミに、彼女の傍らで不安そうに見詰めてくる月影トシと雪見ソウシの表情を見たキーオは彼等の心意を察し、平然と答え返した。
「ああ、それなら少しばかりは安心してくれ。お前らの先祖が加盟していた新撰組そのものは、ちゃんと実在している。この二次元界でも伝わっている様に、局長の近藤勇は討ち首に、副長の土方歳三は当時の北海道である蝦夷地で戦死し、最終的に新撰組そのものも壊滅はしたが、ちゃんとした実在の組織と人物だよ。……最も、お前達三人の先祖と、その三人の先祖が勝手に名乗っていた新撰組発明係だけは創作上の、架空の存在ではあるがな」
『………………』
キーオの釈明を聞いて、少しばかり気落ちしてしまう三人。そんな彼等にキーオは上機嫌そうに言った。
「おい三人、良く自分達の名前を思い浮かべてみろ。お前達三人の名は、実在する新撰組の隊士である近藤勇と土方歳三、そして沖田聡氏の名から取られているんだぜ」
この言葉に三人は驚き気付いた。
「ハッ、そう言えば……」
「俺の名前はもちろん、イサミにソウシも新撰組で最も偉かった三人の名前と被ってるな」
「言われてみれば、確かに……」
更にキーオは当たり前の様に語り続けて行く。
「それによ、良く良く考えてみろ。おとぎ話に出てきそうなキャラや存在がすぐ側に沢山居ただろうが。ファンタジー物に良く出てくる小人の一族のウッズやジュニア、正真正銘のヒーローヒロインばかり、お前達が成っていたり周りに出現してきたりして来たじゃねえか」
『……………………』
キーオの話に唖然とし言葉を失くすばかりの一同。
更に、他の面々も続々とキーオに訊ねて行った。
「と、ところでキーオ君、って言ったわよねアナタ。実は前々から気に成っていたんだけど、私達とさくらちゃん達って何だかとっても他人とは思えない不思議な感覚が有るのよ。これって何を意味してるの?」
魔法騎士(マジックナイト)の龍咲海に真顔で訊かれたキーオは呆然としながらもそれに答えた。
「他人と思えないって……そりゃ龍咲海、答えは簡単だ。単に、あんた等三人とカードキャプター組が同じ三次元人から創作されているからだよ。ま、要するに作者が同じだって事だよ」
「ほえ……」「そう、だったんですか……」
簡潔に事実を告げられ、さくらと風は唖然としてしまうばかりだった。
「そ、それと……あれからずっと気に成っていたんだけどよ。……りりかが、ナースエンジェルが死んじまうって結末は、その……本当だったのか?」
星夜の暗然な表情を見ながら、彼の問い掛けにキーオは平然と険しい面差しで答えた。
「……ああ、本当だ。森谷りりかは苦渋の決断の上、ダークジョーカーを滅ぼす為にも自らの命を散らして、命の花を復活させた。それが本来の筋書きだった」
『!』
キーオから告げられた事実に愕然と悲痛な想いに駆られる場に居た星夜、デューイ、カノン、そし森谷りりか本人。
そんな殺伐とした空気の中、キーオは更に皆々に衝撃の事実を語り明かした。
「無論、ナースエンジェルだけではない。本来の物語ではこの場のメンバーでセーラープルート、ミスティーハニー、そしてハニーの親友であるあの秋夏子も死亡していた。更にはアプリコットも死んだままであったし、何を隠そうシュウジとちせ、お前達二人も本来ならこの世に居なかったんだぜ」
「えっ!」「わ、私達も……!?」
驚くシュウジとちせに、キーオは話し明かした。
「そうだぜ。本来ならシュウジは戦場で戦死し、ちせはその後を追う様に世界もろとも滅んでしまう結末である筋書きだったんだ。まぁ簡単に言えば、二人の物語は戦争版のロミオとジュリエットみたいな悲恋話ってとこだな」
「…………」話を聞いたちせは少しばかり表情を暗くした。
ちせが顔を暗くしたその時、シュウジが惑いを浮かべた表情でキーオに訊ねた。
「と、ところでよ……あの修司と俺の名前が同じなのって、何か特別な理由とか……あるのか?」
これに対しキーオは真顔で答えた。
「ああ、それは…………単なる偶然だ。気にすんな」
真顔で答えられたシュウジは、思わず呆然としてしまう。
更に続けてキーオはアプリコットに向かって語り明かした。
「それとアプリコット。お前の場合は物語の後、つまりは最終話の後に修司達が偶然にもお前の世界に来た事により、命の泉で偶発的にコンパクトが作用してお前自身が甦る事ができたんだ」
「つ、つまり私の場合のみ、物語の顛末で死んだ後に修司さんやアッコさん達が私の世界に来た事で、死んでしまった私は生き返れたと云う訳なんですね」
「その通りだ」
動揺しながら訊き返すアプリコットに、キーオは平然とした態度で言った。
その時、冥王せつなが口を開いて語り出した。
「未来で……未来で、彼や聖龍隊の事が記録に無かったのは、やはり私達と彼が全くの別種族だったからなんですかね」
それに対しキーオがせつなに真顔で答える。
「いや、それだけじゃない。確かに修司はこの世界とは別の次元世界、三次元界から来ているから、奴の個人情報が全くこの世界に存在していないのは当然だ。しかし、聖龍隊は別だ。むしろ、聖龍隊と云う組織は、会う事のないキャラクター達が集ってしまった事により結成されてしまった、全くの異質な存在なんだからな」
「い、異質?」
キーオの発言に困惑する獅堂光。キーオは彼女を始め、その場に居る皆に訳を語り始める。
「本来、此処に居るみんなは顔を合わす事はもちろん、出逢う事すら無かった存在ばかりなんだ。それどころか、皆々全く別の物語と云う世界の中でそれぞれ生活していたんだが、小田原修司と云う三次元人の介入により、アニメタウンという一つの国家レベルの町が生まれてしまい、その区域ごとに本来は共存する筈の無かった作品やキャラクター達が住んでいるという形で共生してしまったんだよ。だから、此処に居るみんなが顔を合わせ出逢う事も、一緒に戦う事も、聖龍隊と云う組織そのものが存在しては居なかったんだよ」
淡々と語るキーオの説明に、せつなが呟いた。
「そ、それで……未来には、聖龍隊に関する記述が一つも無い訳なんですね」
驚きの表情を浮かべながら呟くせつな。
すると今度はバーンズがウッズに顔を向けて口を開いた。
「ウッズ、お前も知っている事を素直に白状するんだ」「父さん」
バーンズ同様に、息子であるジュニアにも言い寄られたウッズは正直に語り出した。
「……先程から、キーオさんの仰っている通りです。修司様は本来、この世界に来る事も無かった存在。手塚先生とウォルト・ディズニー氏に認められたからこそ、私達が生み出された世界である二次元界へとやって来られたんです」
「…………」
父であるウッズの話に気欝な面持ちで話を聞き入れるジュニア。
更にウッズは皆々に語り明かした。
「そ、そして……もう一つ告白しますと、私やジュニア、ウエルズ。更には聖龍隊の地下施設で働いている小人族は皆、大気から自然の力を吸収して皆様と同じ大きさに成られていると、以前お伝えしましたが……実はそうではなく、この世界に単身やって来た修司様を陰ながらサポートする為にと、手塚先生やウォルト・ディズニー氏の両名が御力添えをしてくれた事で、今のこの大きさに成れているんです」
「え、ええッ!? そ、それじゃ、お前達小人族が普通の人間の大きさに成れてるのは、神々の力あっての事なのか?!」
「はい、そう言う事に成ります」
余りにも衝撃的な告白に驚愕するバーンズに下を俯いたまま答えるウッズ、そして周囲の皆々も怒涛の事実に愕然とした。
と、その時。深刻な表情で天王はるかと海王みちるがウッズとキーオに訊ねた。
「なぁ、それよりも一番知りたい事が有るんだけど」
「お二人は、あの闇人(やみびと)が一体何だったのか、知っているんですか?」
二人の問い投げに周りの者達も愕然と気付いた。
険しい表情で訊いてきたはるかとみちるに対し、表情を暗然とさせるウッズに代わりキーオが答えた。
「あの闇人か。そうだな……」
キーオは険しくも真剣な顔立ちで語り始めた、聖龍隊の前に幾度となく現れては様々な衝突を繰り返した、あの三次元人の少年 小田原修司と酷似している闇人の事を。
「みんなも既に気付いていると思うが、あの闇人は修司の思想概念から生まれた、一種の修司の分身だ。俺たち二次元人が三次元人の思想概念から生まれるのと同じように、闇人は修司の心の内に巣食ってた負の感情を、あの絶夢鳥が具現化したモノだ。修司の絶望・怒り・恐怖・孤独・悲しみと云った感情のみに非ず、修司が自分自身に抱いていた自己嫌悪そして自暴自棄までも一体化し、一つの存在として生み出されたのが、あの闇人なんだ」
「じこ、けんお……? し、修司君は、自分自身を嫌っていたと云うの?」
戸惑いを見せる月野うさぎの問い返しに、キーオは平淡と語り尽くす。
「あいつは……生まれた時から普通とは異なる心を、異質な心を生まれながらに持ってた。それにより周りの人間とは折り合いが合わず、遂には実の家族とも仲が悪く成る一方だった。修司はそんな自分を、そして自分を存在させている世界そのものを少なからず恨み、そして憎しみを抱いてしまっていた。自分を生み出し、自分を存在し続ける……三次元と云う名の現実そのものを」
『……………………』
キーオの語る凄まじい実情を知って、その場の皆は全員蒼然と化した。
「し、修司さんは……修司さんはそれでも、私達を、二次元人である私達を護ろうとしてくれたよね。自分や、自分を生み出した世界を憎んでいたとはいえ……」
酷く動揺しつつもキーオに問い詰めるさくらの言葉に、キーオは真顔で淡々と答え話した。
「そうだ。修司は俺たち二次元人に心の何処かで親しみを感じていた。自分とは違い、家族や周りの者達に好かれ、愛される存在である二次元人を……。そして、そんな二次元人を護り、時には死亡したりと存在を失ってしまう二次元人を救って行けば、いつかは自分も二次元人の様に愛情を感じ取れる存在に成り果てられると思ったんだろう」
「そ、それにしたって……あの闇人は、そんな修司君とは真逆で、私たち二次元人に対してかなりの憎悪を向けていたように感じたんだけど……」
木野まことが不安そうに訊ねると、キーオは彼女の問いに険しい面持ちで答えた。
「それは…………闇人は、修司の思想を反映しつつ、その心の奥底に潜んでいる激情そのものでもあるからだ」
「げ、激情……!?」
土萌ほたるが思わず言葉を発すると、キーオは皆に語り伝えた。その激情を。
「簡単に言えば、闇人は鏡に映った修司そのものだ。鏡は古来より真(まこと)の、つまりは真実の姿を映し出すものであると同時に、己の姿を反映する代物でもある。闇人を構成しているのは、修司の激しい憎悪や怒り、殺意などの感情でもあるが、それ以外にも修司の心の奥底にある嫉妬や反感をも司っている。……修司は確かに、俺たち二次元人を心から愛し慕ってくれているが、心の奥底では二次元人に対し激しい妬みや其れに通ずる負の激情が見え隠れしている。自分と違い、多くの人々から愛され慕われ続ける二次元人に対し、悲しいほどまでの嫉妬を……」
「そんな……っ」
キーオの話に思わず悲感してしまう李・苺鈴。キーオは更に淡々と語り続けた。
「何より、あの闇人そのものが修司の思想概念を反映している存在だからな。だから修司とは真逆で、修司が護り抜きたい二次元人に激しい感情をぶつけては、二次元界ごと滅ぼし消してしまおうと今まで俺たちの前に立ち塞がって来たんだろうよ。ま、そういう意味では俺たち二次元人も三次元人の思想概念を反映している、一種の鏡みたいなもんだけどよ」
「鏡……ですか?」
キーオの話に如月春菜が思わず唖然とすると、キーオはそれに話を添える。
「そもそも俺たち二次元人は、三次元人の思想概念を極端に反映し、そして形になった存在だ。三次元人が自分達の理想や夢を絵として描いて生まれた二次元人と云う存在こそが一種の鏡だ。そう、人の……三次元人の夢や理想を反映させた鏡、それが二次元人。闇人は鏡を嫌っていた修司の憎悪も反映されていたからこそ、俺たち二次元人を、そして二次元人であり鏡を心から好んでいたアッコを修司と違って忌み嫌っていたんだろう」
「え? か、鏡を嫌っていたって……」
驚き戸惑う春日結を始めとする皆々に、キーオは詳しく話した。
「修司は……アイツは、自分と云う存在を心から憎み、そして忌み嫌っていた。奴にとって、そんな自分を映し出す鏡は真に見るに堪えない代物であったんだよ。修司はいつも鏡に映る自分を、弱い自分を映し出す鏡を嫌い、そんな自分や自分を映し出す鏡を嫌ってしまう自分自身に更なる憎悪や殺意を向けるようにまで陥ってしまった。そんな修司の自己嫌悪に憎悪は、二次元と云う三次元人の思想を反映させる鏡……二次元と云う三次元人にとっては正しく反転世界とも呼ぶべき二次元界で凄まじく蓄積されていき、最終的には三次元界から来た修司の存在の影響で生じた次元の歪みに目を付けた絶夢鳥によって人の形に……そう、完全なる修司の分身として生み出されてしまったんだ」
「そんな……っ、自分を……殺したいほど、自分の事を憎んでいたなんて……!」
「リトル・レディー……」
切実なキーオの話を聞いていたちびうさは、遂に耐えかね自身の悲哀な感情をその幼き顔から浮き彫りにしてしまい、そんな彼女を見て居た堪れない悲痛な心情に駆られる
冥王せつな。
そんな自身が語る話を複雑な心情で受けとめる皆々に、キーオは険しい表情を変える事無く語り続ける。
「あいつは、修司は……自分の様な異端な存在を生み出し、そして苦しい中で生かし続けるだけの現実に……現実と云う名の闇しか存在しない三次元界に絶望しか感じていなかった。そんな様々な経緯も在って、修司は理想や夢と云った微かな光を求めて、この二次元界に……皮肉にも己が忌み嫌っている思想の鏡とも呼ぶべき二次元界に来た訳だ」
皆がキーオの話に深々と耳を傾けている中、キーオは呆気に取られた様な表情に顔を一変させて言い放った。
「まぁ、まさかアイツのそんな闇の心が実は歴史を紡ぎ出す、あの魔王様と同じ魂だったなんて、この俺も初めて知ったけどよ」
その時、キーオの話に黙々と耳を傾けていたケルベロス、通称ケロちゃんが言葉を発した。
「そうか……! そう言う事やったんやな」
「け、ケロちゃん?」
突然のケルベロスの言動に驚くさくら。そしてケルベロスはその場の皆に顔を向けて迫る様に言い放った。
「そうやッ、そう言う事やったんや! やっとあのカードの意味が解ったで!」
「だ、だから何を解ったのケロちゃん?」
ケルベロスの語りに理解し切れないさくらが問うと、ケルベロスはさくらに言い返した。
「さくら忘れたか? ホラ、あん時。修司はんに頼まれて、聖龍隊の戦果をカードを使うて占ったやんか」
「あ……! あの時の……」
指摘を受けさくらは思い返した。異次元からの驚異との大戦前、修司から聖龍隊の末路をカードを使ったタロット占いで占って上げたのであった。
「確か、その時カードが示したのは……ライト(光)、ミラー(鏡)、ダーク(闇)。この三枚だったよね」
「そうやっ。ワテもあん時は何を意味しているのか、皆目解らへんかった。後で良く良く考えたら、もしかたら光はセーラー戦士やさくらの魔力の如き光の力、鏡はミラー・ガールつまりはアッコはん、そして闇が自身の心の奥に闇と云う負の感情を抱いている修司はんやと最初は思っておった。……しかし、今キーオはんの話を聞いてカードが本当は何を暗示しているのか、ハッキリ解ったさかい」
「な、何が判明したんだケルベロス。その三枚のカードの意味は……?」
小狼が問い掛けるとケルベロスは真剣な顔で皆々に語り明かした。
「あのカード……あの三枚が表してしたのは、本当は二つの世界とその世界の関係についてやったんやっ」
「二つの、世界……?」
ケルベロスの言葉に困惑してしまう苺鈴に周囲の皆々。そんな皆にケルベロスは詳しく話し出した。
「うむ、あの三枚は……。先ずはライト(光)、これはワテらが存在している二次元界……夢や理想と云う光で満ち溢れる二次元界を表していたんや。その逆にダーク(闇)は、夢や理想と云う光の無い現実……現実と云う名の闇で埋め尽くされている修司はんの三次元界を表しておった。そして最後にミラー(鏡)、これはワテらと修司はんの世界、二つの世界の関係を表しておった……! 光と闇、理想と現実と云う 相反する対なる世界の関係を……」
と、その時。ケルベロスの話を聞いて小狼が血相を変えて言い放った。
「そうか! 解ったぞッ」「ほえっ?」「し、小狼?」
突然の小狼の発声に一驚してしまうさくらと苺鈴。すると小狼は強い面立ちで皆に釈明し始めた。
「前々から何でと思っていたんだ……大自然の力を司る七体の聖龍、だけどその聖龍には炎・水・樹・風・氷・雷・地の力を司る聖龍は居るのに自然界では絶対的に必要不可欠な光と闇の自然力を司る龍が聖龍には存在していなかったから可笑しいとずっと思ってた……! でも、まさか……」
小狼は次第に表情を険しくさせ、そして徐に言葉を発した。
「き、キーオ……まさか、世界を形成させる筈の自然の力、光と闇は まさか……!」
真に険しく迫った表情で問い放つ小狼に、問われたキーオは鋭い目付きで小狼の問い掛けに答えた。
「……ああ小狼、お前の思っている通り。光と闇を司る、聖龍に代わる存在それは………………俺たちと修司、二次元人と三次元人こそが光と闇を司る相思相反の存在なんだよ」
『!!』
キーオの告げた言葉に、誰もが衝撃を走らせた。
「それじゃ……聖龍同様、俺達も自然の力を人知れず司っているのか……?」
「理想と云う光を司る二次元人、現実と云う闇を司る三次元人……僕達の種族と兄さんの種族は、全くもって完全な相反する関係……!」
衝撃の事実に愕然となるバーンズとジュニア。
キーオからの話を聞いて、皆納得した。
自分達、二次元人は希望溢れる理想と云う光を司る種族
それとは逆で修司は夢や希望がほとんど無い現実と云う闇が覆い尽くす三次元人
理想の如き光、二次元人 現実の如き闇、三次元人
それはまさしく反し対なる 鏡の如き関係であったのだ。
そして修司は夢や希望が無い三次元界で生まれ暮らし、そんな三次元人が自分達とは違い夢や希望に満ちた存在として生み出したのが自分たち二次元人であったのだと。
そして修司は、そんな二次元人で非業の運命を辿る者たちを救わんとばかり、絶望しか感じられなかった三次元界を捨て、こちら側の二次元界へと赴いた。
生まれて来た事に絶望し、そんな絶望の中だけで生き続ける三次元界を、修司は心から恨み そして激情を向けた。
そんな自分の世界や自分自身に憎悪や怨恨を向ける修司は、自分を映し出す鏡を避け続けた。そして、そんな修司の思想概念から生まれてしまったのが、あの闇人なのであったのだった。
ふと、皆がキーオの口から語られる修司と闇人、惹いては自分等と三次元人等の関係を聞かされ事実を知ったその時。
場の空気が重い中、火野レイがある事に気付いた。
「ん、そう言えば……ねぇ、みんな。、さっきから修司君本人の姿が見えないんだけど」
「そう言えば……」
レイの言葉に皆も辺りを見回して修司の姿を探した。
しかし部屋には聖龍隊のメンバーや駆け付けて来た面々が揃っているのに対し、修司の姿だけが見えなかった。
と、思いきや、此処で月野うさぎが、もう一つある事に気付いた。
「ハッ、そう言えば、アッコちゃんの姿も見えないよ」
「そういや、加賀美の姿も今日は一度も目にしてないな」
うさぎの発言に同意する衛。
皆が修司に続いてアッコの不在にも戸惑う中、突然バーンズが言葉を発した。
「はッ、まさか……!」
[墓前に赴く二人]
その頃、アニメタウンのとある霊園に一人の人物が片手に桶と柄杓、もう片手に白い花を持って園内を歩いていた。
ふと、その人物の進む足が止まり、その者はジッと前の方を見詰めた。
その人物の視線の先には、一人しゃがみ込み墓の前で静かに手を合わせている赤い上着にピンクのスカートそして赤毛の少女の姿が有った。
その人物が少女の姿を目にして一間の時を硬直してしまっていると、少女が自分を見て固まるその人物に気付き声を掛ける。
「っ……修司」「アッコ……」
赤毛のお下げ髪の少女アッコ、そして片手に白い花を持参して彼女の前に現れた修司。二人はアッコが手を合わせていた加賀美の名が彫られた墓石の前で、しばし向き合った。
修司はアッコの供えた花の隣にもう一つ自分が持参した白いユリの花を本当に小さな花瓶に入れては供えた。
そして修司は静かに無言でアッコの隣で彼女同様、墓前に向かって頭を下げて手を合わせた。
するとその時、二人が手を合わせているとアッコが隣の修司に声を掛けた。
「修司」「……なんだ?」
「……ありがとう。お姉ちゃんにお参りしてくれて」
「……別に。俺はタダ、色んな意味で世話になった人に礼の一つぐらい返してやりてえだけだ」
アッコに優しく話しかけられながら無愛想な面構えで会話する修司。
あの日、自ら死を選んだ自分の前に現れ、アッコや他の聖龍隊の想いを聞き入れた、アッコの亡き姉。二人はその姉に感謝の気持ちを伝えに今日この場に赴いていた。
と、しばし黙然と墓前に手を合わせた二人は同時に立ち上がり、一時加賀美家の墓を見詰めた。
その時だった、アッコが無表情で墓を見詰める修司に言葉を掛けた。
「修司、少し聞きたい事が有るんだけど……良いかな?」
「………………なんだ」
無愛想な表情を浮かべながら同意を伝える修司に、アッコは神妙な微笑みで修司に訊ねて行った。
「しゅ、修司はさ……元から、その……私達が創作上の……そう、物語の中の存在だって知っていたの?」
「…………ああ、知ってた」
無愛想な表情で答える修司に、アッコはそのまま訊き続けた。
「わ、私も……それに、私やモコ、それに大将たちに私のパパとママ。更には私達が今いるこの世界そのものが、おとぎ話の世界なの……?」
「そうだ」
「……し、修司は……そんな私達や私達の生まれ育った世界を創った、って言い方は少し可笑しいかもしれないけど、創造した人たちが居る世界から来た訳……なの?」
「……そうだよ」
「…………」
無愛想の実に不機嫌そうな顔を浮かべる修司の受け答えを前に、アッコは思わず噤んでは無言に成ってしまう。
そんな険悪な空気が二人の周りに感じられ始めたその時だった。
「…………憎いか」「え……」
「憎いか。騙し続けて来た俺が……偽りを演じてた俺、お前達を危険に誘った俺、そして……お前ら二次元人に、決められた運命を与え続けて来た三次元人の俺が、憎くはないか」
突然喋ったと思いきや、唐突に訊ね掛けて来た修司に一瞬困惑してしまうアッコ。
修司の重く苦しい言葉と心境を察したアッコは、動揺しながらも言葉を掛けてあげた。
「あ、あの……そ、そりゃ、最初は私達が創作されたおとぎ話の登場人物だって知って凄く驚いたわよ。まぁ、言われてみれば確かに日常じゃ有り得ない不思議な事ばかり起こっていたけど、ハハ」
思わず苦笑しながら修司に答えるアッコは、そのまま修司に話し続けた。
「はは……で、でも、私は別に何とも思って無いわよ。修司だって、そんな私達二次元人達が辿る運命が悲しいモノばかりだったから、こっちの世界に来た訳なんでしょ? それに私達に黙っていたのも何かしらの訳が有ったから言えなかったんでしょ。私はちゃんと解っているから安心して」
「……………………」
微笑みながら平然と話をするアッコに、修司は無愛想のまま耳を傾けた。
そんな一切の表情を浮かべ様とはしない修司に、アッコは再び訊ねる。
「そ、それじゃ……修司が聖龍隊を結成した本当の理由も、実は本来は死んじゃっていた人たちキャラクター達を救う為に結成した訳なの? そ、それと聖龍に認められて聖龍使いに成ったのも……」
これに対しても修司は表情を一変させずに答えた。
「そうだ。それには俺自身が強く成る為に、聖龍に認めてもらう必要が有った……そして俺だけでなく、多くの能力者達の力が必要不可欠だった。何より、そんな能力者同士が協力し合えば如何なる運命にも抗える……そう思った上で、俺は決して出逢う事も無ければ共闘共生する筈の無かったお前達を引き合わせてしまった」
修司の話を聞いて唖然としてしまうアッコは、再度訊ねる。
「そ、それじゃ……私がみんなと、セーラームーンやその他のセーラー戦士達、キューティーハニーやナースエンジェル、多くのヒーローやヒロインに出逢えたのは元々修司がこの世界に来たのが発端だったのね」
「……そうだ」アッコの問いに重い口調で答える修司。
更にアッコは修司への話し掛けに勢いを増して、躊躇なく修司に訊ねる。
「修司は……私達を助ける為に、この世界に来てくれたの?」
「………………」
しかし修司は突然、口を噤んでしまい何も喋らなくなってしまった。
突然喋らなくなる修司に動揺してしまうアッコ、とその時だった。閉ざしていた口を開き、修司は再び言葉を発した。
「…………為、だったのか」「え」
呟くように言葉を発した修司に戸惑うアッコ。そして
「助ける為だったのか……お前を、みんなを……そして、この世界を……」
と、アッコに背中を向けて呟くように話し出す修司の言葉に、アッコは凄まじく動揺した。
そんな様子を、二人の周囲、霊園の彼方此方から隠れて見ている人々の存在に、修司もアッコも気付いていなかった。
「……やっぱ此処に居たか。修司はもちろんアッコも居なかったから、もしやと思っていたんだが」
「二人とも、あの時姿を現してくれたお姉さんの御墓に参っていたんだね」
墓石の影から二人を見詰めるバーンズとジュニア。それに他の聖龍隊の面々も、修司とアッコの周囲に隠れつつ二人の様子を観察していた。
そんな皆に観られている事に気付かないまま、修司はアッコに静かに口を開いて語り出した。
「……俺は、本当に皆の為に……お前やみんなの様に、他人を救う為にこの世界に来たのだろうか」
「っ……」
アッコは語り続ける修司の言葉に戸惑いながらも真剣に耳を傾けた。
「俺は、いつも思ってた。お前も、そして皆も……俺と違って完全な、そして正しい心を 美しい心を持っていた。俺達三次元人は、本当にお前等と違って真逆な心を……暗黒な醜い心を持ち、荒んだ現実を生きている。俺とお前等、三次元と二次元は完全な相思相反の存在だ」
「修司……」
「俺は……俺は、そんな与えられた世界と運命の中で存在し続けるお前達を、何処かで哀れみ同情し……少しばかり羨ましく思っていたのかもしれない」
「え……!?」
思わず困惑してしまうアッコ、すると修司は不意に顔を上へと向けて空を見上げながら話した。
「俺はな、アッコ。この世に生を受けたその時から……元から歪んだ心を持って生まれてきちまった」
「歪んだ、心……?」
動揺するアッコに修司は話し続ける。
「俺は、お前達の持っている様な心が……心と呼べるナニかが欲しかったのかもしれない。生まれながらに人の愛を、優しさを感じ得ないこの歪んだ心とは違う……真に心と呼べるモノが」
「感じ、られない……?」
思わずアッコが訊き返すと、修司は何処か寂しげで神妙な面持ちで空を見上げながらアッコに語り明かした。
「俺は物心ついた頃から周りと自分が極端に違っている事に気付いた。……俺は、どんなに親や周りから優しくされたり愛情を与えられても、まるで砂が水を吸い込むみたいに他人の感情がスゥっと消えて、何も感じられないんだ」
「…………」
「どんなに愛情を欲しても、そして愛情を手に入れても……俺はそれを感じ取る事が出来ず、常に心が空っぽで満たされる事が無かった」
修司の口から飛び出てくる彼の告白にアッコは次第に胸を締め付けられていく中、修司は更に真情を告白していく。
「俺は次第に人の感情、愛や優しさといったお前等が常に人に向けている感情だけを、欲しても決して手に入れる事が出来なくなっていった。そんな俺を親を始めとする家族や身内、そして周囲の人間達は異質なモノとして俺を見たり接したりするように成っていった。親も、こんな俺を……どんなに愛情を注いでも、それを感じなければ逆に苦痛に感じてしまったりする異質な俺と生活する事が困難に感じ始め、俺は自然と親や家族と距離を置く様にして行った。……俺自身、こんな俺と暮らして疲れ果てて行く親と一緒に居るのが辛(しん)どく成って来たからな」
「…………!」
修司の告発に内心凄まじく衝撃を受けるアッコ、修司はそんなアッコに立て続けに語り明かしていく。
「そして次第に俺は、そんな愛情や優しさと云った感情とは根本的に違う……人の憎悪や怒り、苛立ちそして悲しみと云った感情しか感じ取る事が出来なくなっていった。周りが、こんな異質な俺に対する真情や想い、苛立ちや視線に俺は敏感に反応し理解するように成り果てた。そんな俺は次第に笑うと云う、人間なら誰でも出来得る表情を浮かべる事が出来なくなってしまってた。そんな俺が時たま微々たる笑みをすれば、周りは何事かと思い、時には異質な存在を見る目で俺を取り囲む。……俺は愛情を欲する事はもちろん、笑む事ですら許されなくなっていた」
悲愴な心境で語り続ける修司は、更にアッコに己の胸の内を告発した。
「俺は、お前等二次元人に教えられた。愛とは人が……いいや、心を持つ者なら誰もが感じられ、そして与え与えられる尊い感情なのだと。俺はお前達を見て知り得た。……しかし、この俺にはそんな人として当たり前の愛情が感じられない。感じられないが故に、その愛を持つ事が出来ない宿命なんだよ。愛、それは正しく心そのものだ」
修司の話を聞いたアッコは、次第に顔色を悪くさせ悲愴な面持ちに表情を変えて行った。
そんなアッコに、修司は言った。
「だが、人として当たり前の感情を……愛や優しさを感じられない俺は、完全に異常者として周りから拒絶されていった」
その時、一通り修司の話を聞いたアッコが内に激情を募らせなが声を掛けた。
「……ねぇ、修司……」「……なんだ」
空を見上げ、アッコに背中を向けながら返事する修司に、アッコは悲痛な心境で訊ねる。
「……修司は、私の……私やみんなと過ごして来た時も、そんな風に感じていたの?」
「…………」
「私達と楽しく過ごしていた時も、私やみんなの優しさや愛情が感じられなかったの? 苦痛にしか感じられなかった時が有るの……!?」
悲痛な口振りで修司に問い詰めるアッコ、それに対し無言に至る修司、そんな二人の様子に挙動不振に陥ってしまう姿を隠す周囲の傍観者達。
修司はアッコの問い掛けに対し、冷然と答え返した。
「……そうだ。お前達の、何の変哲もない愛情や友好が苦痛にしか感じられなかったり、良くても何も感じられなかった事の方が多かった」
「!」『!』
この修司の言葉を聞いて、アッコも二人の様子を陰ながら傍観していた面々も愕然とした。
そんな場の空気が一気に重くなった最中も、修司は淡々と言い放った。
「そう、俺は…………愛情が感じられないが故に、愛と云う名の心を……真に心と云った感情を、生まれ付き持つ事が出来ない………………正真正銘の、異常者(バケモノ)なんだ……」
[アナタに救われて]
「…………ごめんなさい……」「……え……っ」
突然背後から掛けられる言葉に動揺した修司、彼は咄嗟に振り向き後方のアッコを見据えた。
すると修司は驚いた、なんとアッコが目から大粒の涙をポロポロと流していたのだった。
なぜ突然謝罪するのか解らず困惑する修司を前にしながら、アッコは涙を流し再び修司に謝罪し続けた。
「ごめんなさい修司……! 私、私……何も知らずに修司の事傷付けていて……! 修司の事、助けてあげたいって思ってたのに逆に苦しめていたなんて……! 私……」
「アッコ……!」
「ホントにごめんね……私の思いやりが逆に苦痛だったなんて……私、修司を少しでも幸せにしてあげようって思ってたのに、何も知らなくて……ごめんね……!!」
涙を流し続ける痛々しい泣き顔で幾度も謝罪の言葉を吐くアッコを目の当たりにして、修司は大層驚き酷く動揺し出した。
アッコの突然の情状に困惑した修司は慌ててしまい、思わず彼女を抱き寄せ涙を流し続けているアッコの顔を自分の心臓に押し当てながら語り掛ける。
「アッコ……! 其処が……其処が、お前の悪いところなんだよ。お前やみんなは悪くない、全ては欠落した心を持っている、そう欠陥品そのものである俺が異常なだけで、お前が謝る事なんて一ッつも無いんだよ」
ひたすら泣きじゃくるアッコの顔面を自身の心臓の部分に押し当て、必死に彼女を宥め様とする修司は彼女に語り掛け続ける。
「お前は……お前は、いつもそうだ。そうやってスグ他人の事で涙を流し心を痛めて……余りにも、余りに……優し過ぎる。何より、謝らなければイケないのは俺の方だ。みんなを、そしてアッコお前を俺の下らない野望に撒き込んじまって……ホントにすまねぇ……ッ! そして」
そして修司は一言、泣き続けるアッコに言葉を掛けるのだった。
「……ありがとう」「ッ……へ……っ?」
修司のその一言に彼の胸に顔を埋めていたアッコは涙で濡れる顔を上げて修司の顔を見上げた。
それと同時に修司は故意にアッコの目線を拒むように、顔を逸らしつつ彼女に告げた。
「アッコ、俺はな……確かに時々、みんなの優しさやお前の愛情に対し、どの様に接していけば良いか解らず困惑した事も少なくなかった。だけど俺には……この俺にも微弱だったけど感じられた。みんなの想い、そして何かに誰かに掛け続ける心と云う感情……そして何より、お前達二次元人達の揺るぎない物語は確実に、この俺の歪んだ心・汚れた想いに伝わった。お前等二次元人の確かな感情(こころ)こそ、俺は後世に伝え遺して行かなければいけないモノであると、改めて再認識させられた」
「修司……っ」
涙を延々と流し続けるアッコに、修司は実に穏やかに彼女の心へと語り続ける。
「だけどな、アッコ。そんな大勢の二次元人であるお前等の中でも、実を言うとお前の存在が……お前の偽りない優しさに、俺は沢山救われたんだよ」
「私、の……っ」
突然の修司の告白に流していた涙を止めて思わず唖然としてしまうアッコに、修司は自身が感じた真情を包み隠さずアッコに打ち明けた。
「俺は、こんな歪んだ汚れまみれの心を……愛と云う感情を感じられない心を持って生まれてしまった。だけど、俺はお前達が常に見せてくれる美しい感受性に みんなの心にどれほど救われた事か。……俺は、この二次元界に来る前から、お前たち二次元人に大切なものを、愛を教わった。例えそれが手に入らない愛と云う感情であったとしても、その大切さ美しさ、そして素晴らしさは確かに伝わって来たんだ」
「修司……っ!」
「俺は当初……そんな汚れ無き心を、三次元人とは違う美しい心を持っているお前達を護る事で、この俺の存在していた証を少しでも遺そうと思い立ち、この二次元界へと赴いた。その為に、俺とは真逆で美しい心を持ち、素晴らしい存在である二次元人を……死ぬ筈だった彼等を救い存命させる事で、俺は少しは変われるかとも高望みしていた時期も在った。だけど、この俺の歪んだ心は未来永劫変わる事無い……永遠に醜く歪み汚れた心でしか無かった。だから俺はあの時、絶夢鳥と対峙して苦痛しか感じられない自分の現状を、命そのものを絶とうと思っていた。……だけど、心の何処かで思っていた。こんな醜い心しか持ってない異常者(バケモノ)でも、もし許されるのなら……可能な限りお前と、みんなと一緒に居たいと。生きる資格のない自分でも、みんなと生きても良いのかと……強く望んでしまった」
「修司、あなた……ッ!」
修司の心意を始めて知って、アッコはもちろん二人の周囲で隠れて様子を観ている聖龍隊の誰もが涙を流し感極まった。
しかし修司はそんな中、真に迫った神妙な面構えでアッコに語り放った。
「しかし、あのとき絶夢鳥が俺に言った。「お前の存在は数多の人や歴史を狂わせる闇」それが俺だと。俺はこのまま、みんなと一緒に居ても良いのかと、実を言うと不安に思い始めてしまっている。こんな己の宿命に苦しみ続け、自暴自棄に囚われ続けている俺が……みんなの様な優しい連中と一緒に居ても良いのかと、時おり不安と恐怖で胸が締め付けられるんだ」
この修司の発言に、アッコは優しく言葉を掛けた。
「……修司、大丈夫よ。みんなだってちゃんと、修司を受け入れてくれるわ」
「アッコ」
その綺麗な鏡の様な瞳に涙を溜めて語り掛けてくるアッコの言葉に耳を傾ける修司、だがそれでも彼女と視線が合いそうになると無意識に目を逸らしてしまう。
そんな目を逸らしてしまう修司の顔を両手で挟むように掴み出すアッコは、修司と真正面から顔を向き合って彼に話し続ける。
「……怖がらないで。私は修司の事を冷たい目で、白い目で見たりはしないわ」
「アッコ……!」
驚く修司にアッコは話し続けた。
「私、今なら修司の気持ちが凄く解る。生まれた時から、親はもちろん周りの人達からの愛情や優しさを上手く感じ取る事が出来なくて、それで人と距離を置く様になってしまって……それだけじゃない。そんな愛情を感じられない自分の心が醜く歪んだ、欠陥品だとばかり自分を追い詰めて……! そんな自分でも誰かの役に、素晴らしいモノを護り遺して行ければ自分は死んでも構いやしないと自棄(やけ)に成っちゃって……っ。辛かったのね、修司は……」
的確なまでに修司の心理状態を衝いていくアッコの言動に、修司は固く閉ざしていた心の壁を少しばかり開放させるかの如くアッコに言い放った。
「アッコッ、俺、俺……!」
遂に修司は抑えきれなくなった感情の余り、思わずアッコの両肩を強く掴み激しく抱き寄せる。そして自分とアッコの体を密着させながら彼女に伝える。
「解ってる、いや解ってたんだ……! 俺の荒んだ、汚れ歪んだ心は一生懸っても良く成らないって……。人として当たり前の、とても綺麗な心から放たれる愛や優しさ……時に、その愛情や優しさを敵にまで向けられるほどの皆の寛大さ。何より、どんな人とも平然と優しく接し合えるお前達は……例え、人為的に生み出された生命体であろうと、身体を改造された人で無きものであったとしても……人の心を持ってない俺から見たら、紛れもない人そのものだ。こんな人として間違った、歪んだ出来損ないの異常者(バケモノ)が言っても、何の意味も救いも無いかもしれないけど」
修司のこの発言に物陰で二人の会話を聞いていた聖龍隊の面々、その中の如月ハニーや葉月聖羅そして最終兵器のちせは感極まり、思わず慟哭を上げてしまいそうになる口を咄嗟に塞ぐ。
自身を異常な存在、バケモノと自負する修司は更に吐き続けた。
「だから、だから俺……浅ましいかもしれないけど、お前達の事を時には凄く妬んでしまった。人として当たり前の、とても綺麗な心から放たれる愛や優しさ……時に、その愛情や優しさを敵にまで向けられるみんなが羨ましく、浅ましくも醜く激しく妬んだ……! そして、何より……そんな皆の姿が、俺の救いに成っていた」
そう話すと修司は抱き寄せていたアッコを振り離し、徐に彼女に背中を向けながらアッコに話し掛ける。
「アッコ。俺は、俺は……正直、これ以上お前を巻き込みたくない。可能であれば、このままお前には聖龍隊から離れて行って欲しいんだ」
「え……!」
困惑し一驚するアッコに、修司は迫真に言い迫る。
「俺は、この世界に来た事で今後生じる歪(ゆが)みに……運命の歪(ひず)みに抗いつつ、二次元界の皆を護ろうと決意している。その為にも、例え俺一人に成ったとしても聖龍隊はこの先も存続させ、この二次元界の問題と真向から向き合おうと決めている」
「…………」
「……だけど、アッコお前は元々戦闘向けの……戦う為の存在では無かったんだ。俺が二次元界に来た事で、二次元人の始祖の一人であるお前に……この世界で最初に俺と接してしまったお前に最大の影響が及んでしまったが為に、お前は魔鏡聖女へと変身する事ができたんだよ」
「だ、だけど……私は、今までどおりに少しでも良いからみんなの力に……! 何よりも、修司の力に成ってあげたい! 例え、例えコンパクトが無くて変身出来なくても私には私なりの……」
修司の話を唖然と聞き入れていたアッコは、それでも修司を始めとした聖龍隊の力に成りたいと強く語らいでいると、咄嗟に修司はアッコの方へと姿勢を向けて徐に自分のポケットを弄り出した。
何事かと戸惑うアッコに、修司はポケットから取り出しては、それを眼前のアッコに突き出した。
「こ……これは……!」
突き出されたモノを見てアッコは非常に驚愕した。
修司のポケットから取り出されたそれは、紛れもないアッコの所持していたあのセイント・コンパクトそのものだったのだ。
自分に突き出された消失した筈のコンパクトを目の当たりに絶句するアッコに、修司は険しい表情で訳を話す。
「気付いたとき俺の手元に有ったんだ。おそらく俺が再び二次元界に出戻って来た事でコンパクトも消える事無く残ってしまったんだろう」
釈然としないまま修司が突き出すコンパクトに目を奪われるアッコに、修司は更に語り明かした。
「実は戦いが終わって、病院で寝泊まりしている最中……俺は皆の目を盗んで、このコンパクトを開けては鏡を通して向こう側の世界 鏡の国の女王に事情を訊ねたんだ。すると女王様が言うには、このコンパクトは確かに鏡の国でも誰もが使えなかった代物であったのだが、同時にお前が以前まで使ってたコンパクト、そして今現在鏡の国に現存する変身が可能なアイテムは全て、このセイント・コンパクトから作り出されたみたいなんだ。つまり、このコンパクトは全ての鏡魔法の原点みたいなもんなんだ」
「! ……」
驚愕するアッコに修司は話し続ける。
「そしてこのコンパクトは、同時に強大な人の念 鏡を愛しつつ鏡に映る自分を愛し美しさを欲する人の果てしない願望を秘めていると云う。そんな強大な思想を秘めたコンパクトは今の今まで誰も扱えなかったのだが、他次元から来た俺の内なる闇に引き寄せられたのか感化されたのか、そんな俺と最初に触れ合いそして関わった上にそれまでコンパクトを使って来たお前が使えるように成っちまったようなんだ」
淡々と驚愕の事実を語り明かす修司の話を聞いて唖然とするアッコ。
すると彼女は意を決したかのような強い顔付きに表情を一変させ目から零れていた涙を一気に拭うと、修司が突き出す様に見せて来たセイント・コンパクトを無理やり手に取り、眼前の修司に言い切った。
[告白]
「修司……私、例えどんな運命が待ち受けていようと迷わない! どんな敵が現れようと、どんな苦境が潜んでいようと躊躇わない。私も修司の……修司が思い描く未来の為に今まで以上に頑張る!」
アッコの力強い熱弁に心打たれる修司。しかし彼は険しい面差しでアッコに告げた。
「……それは、やめてほしい」「! ……なんで?」
修司の返答に強く悲観的になるアッコが訊き返すと、修司は深刻な表情で彼女に語った。
「アッコ……お前は、あの闇人はもちろん二次元界の神である手塚先生やウォルト・ディズニーから聞いているだろ。お前は変身能力や、その類である特殊能力者の根源であり始祖なんだ。もし……もし、お前に何があれば……何か起きてしまったら……」
「…………」
深刻な表情で語って来る修司の言動に尋常でない事態を感じ取るアッコ。
そして修司は真剣な真顔で彼女に言い明かした。
「もし、お前に……お前の身に何かが起きてしまったら、下手をしたら…………お前を基に生み出された多くの特殊能力を持つ二次元人や変身可能な二次元人、彼らが消えてしまうかもしれない」
「え……!?」
「聖龍隊で言えば……お前同様に変身できるセーラームーンに他のセーラー戦士たち、キューティーハニーやミスティーハニー、ナースエンジェルにコレクターズ、魔法騎士(マジックナイト)、しんせん組……そしてバーンズやジュニア。最低でもこの面子が消滅してしまう可能性が有るんだよ」
「…………!!」
修司の衝撃の告白に言葉を失い驚愕するアッコ。
そして彼女同様に変身できる聖龍隊一同愕然としてしまう。
だが修司は、それ以上に真に迫った物言いでアッコに打ち明けた。
「いや……それ以上に俺は……! 俺は、みんなには本当に悪いと思うけど。お前に……お前に、アッコに何か起きてほしくは無いんだ……!!」
「修司……!」
激しい内情を曝す様に言い放つ修司の言動に驚いてしまうアッコ。修司はそんなアッコに自分の切実な真情を伝えるのだった。
「俺は、俺は……この世の誰よりも、生まれて初めて俺に優しく接してくれたお前を……傷付けたくはない」
「修司……」
切実な想いが伝わる修司の話を、アッコは悲痛な面持ちで聞くのだった。
「嬉しかった、嬉しかったんだ……! この街に、この世界に来て……生まれて初めて歪んだ俺に優しさを掛けてくれたお前を……! 誰も愛せない、誰も信じられない俺が初めて感じた優しさと云う名の微熱……その微弱な温もりが、この俺の凍て付いた心にどれほど沁み込んだか、言葉では言い表せない」
「修司……!」
彼から言い伝えられる切実な真情に、心の内で静かに感動に浸るアッコ。
更に修司はアッコへ今までの感謝の気持ちを全く隠さずに伝えていく。
「生まれた時から歪み、普通とは違う俺の心……その心には、いつも常に厚く硬い壁が覆ってしまっていた。でも、そんな俺の心の壁をアッコの……アッコの少し強引ながらも絶対に助けたいって言う優しさが、慈愛が俺を確かに支えてくれていた。みんなはお前のそんな出過ぎたお節介に色々と文句を言っていたけど、俺は……俺は、そんな半ば強引ながらも力強いお前の優しさに、どれほど救われたか……ッ!!」
「し、修司……!」
最愛の人から告げられた真情に目を丸くして驚く加賀美あつこ。
鏨(たがね)の如く強い意志を持つ少年 しかしその心には同じく鏨の如き壁が分厚く覆ってしまっていた。
そんな硬く決して開こうとはしなかった心の壁を 半ば強引に力強く接し、どんな時でも手厚く優しさを向け続けた聖女の偽り無き慈愛だけが、孤独に囚われていた少年の閉ざされた心を開く事ができたのだった。
修司から彼の真情全てを聞き受けたアッコは、再び修司の顔を両手で挟むように持つと互いの顔を向き合わせた。
案の定、人と視線を合わせる事が一種のトラウマになっている修司はアッコと視線を合わせようとはしなかった。
だが、そんな視線を逸らす修司にアッコは優しくも強く言葉を掛ける。
「逃げちゃダメ」「ッ……!」
アッコの言葉に内情を激しく揺さぶられた修司、そんな修司にアッコは顔を間近で向き合わせ話し掛け続けた。
「逃げちゃダメ。例え修司の心がどんなに歪んでいようと、どんなに普通でなくっても、修司にとっては只一つしかない掛け替えのない修司自身の心なんだから。それに……それに、例え周りがどんな風に修司を言っていようと罵っていようと、私だけは修司の味方で居続けるから……! 修司を、孤独(ひとり)にさせないから。今までも、そして、これからも……」
「あ、アッコ……」
アッコの発言に激しく動揺し戸惑う修司。そしてアッコはそのまま力尽くで修司の顔側面を手で押さえ強引に修司の視線を自分に向けさせた。
半ば抵抗しながらもアッコの顔と真正面から、それも鼻と鼻が触れ合う寸前まで顔を近づけさせられる修司は、今まで避けていたアッコの瞳を見てしまった。
一片の穢れもない真に美しい鏡の様な瞳に映り込むのは、この世で最も憎み嫌う 荒んだ上に歪んだ心を持って生まれてしまった自分自身の顔であった。
見たくもない、目に触れたくも無い自分の顔を目の当たりにし、次第に激情が込み上げる修司は力尽くでアッコを引き剥がそうと彼女の体に手を差し伸べようとする。
と、その時
「大丈夫」「!」
突然掛けられるアッコの言葉に躊躇する修司に、アッコは優しく言葉を掛けて行く。
「大丈夫、修司の顔は醜くないわ。あの時、私やみんなに見せてくれた笑顔。私はあれほど優しい笑顔を今まで見た事がないわ。だから怖がる必要なんてない……私が、みんなが居るから、だから自分と向き合って」
そうアッコから言葉を掛けられていく修司は、遂に今まで避け続けて来た自分の顔をアッコの瞳越しで直視してしまった。
美しいものも醜いものも、全てを映し出す正真正銘の鏡そのものであるアッコの瞳に映る修司の顔は、実に弱々しく今にも泣き出しそうな面だった。
と、修司が自分の顔と向き合っていると、アッコは何の前触れも無しに修司の顔に自身の顔を更に近付ける。
それに気付いた修司は思わず拒もうとするが、そんな修司にアッコは再度優しい口調で話し掛ける。
「逃げないで……せめて、せめて私からは逃げないで。今まで人と関わるのを拒んでいた分、私とは逃げずに向き合って。ねっ」
「……!」
そしてアッコは遂に鏡の瞳を閉じると、更に顔を近付かせ修司の唇と自分の唇を半ば強引に触れ合わせた。
その情景を観た周囲の隠れている聖龍隊の面々は皆、凄まじく驚嘆してしまった。
アッコと修司、二人はホンの数秒であったが互いの唇を重ね合わせ、瞬間的な時の流れの静止を感じ取った。
[受け入れられる真情]
しばし口づけを交わすアッコと修司、そして数秒間修司と口づけを交わしたアッコは徐に顔を遠ざけると、ふと閉じていた瞳を開けて修司の顔を確認した。
と、アッコが瞳を開けて修司の顔を見てみると彼女は驚愕した。
目の前の修司が只ひたすら無言で涙を延々と流していたのであった。
「し、修司!?」
突然涙を流し出す修司に驚くアッコは非常に慌て返ってしまうばかりであった。
無理やり半ば強引に口づけをされた事で泣き出してしまったのかと慌てふためくアッコは修司に謝った。
「ご、ごめん。やっぱ嫌だったの? 無理やり、その、キスなんかしちゃって……」
若干混乱しながらも謝るアッコに、修司は涙を流しながら返した。
「違う……違うんだよ」
大粒の涙を幾度となく流し続ける修司は、涙で濡れて行く顔でアッコに言った。
「違うんだ。嫌とかそういうんじゃ無く、訳が解らないんだけど急に涙が出て来て……」
「…………」
なぜ涙を流すのか理解できない修司を前に唖然と成るアッコに、修司は涙で顔を崩しながら語り続ける。
「解らない、解らないんだけど……何だか凄く胸が熱く成って……! これが……これが幸せなのか、そうでないのかも解らねえんだっ。アッコの唇が俺に触れた途端に、なんかこう……熱いモノが胸の奥から感じ始めたと思ったら、急に涙が溢れて来て……! 止めたいのに……涙を止めたいのに止められないんだよ……ッ」
「……」
唖然とし続けるアッコに修司は涙塗れの顔を向けつつ更に話した。
「嫌という訳じゃないんだ。でも、これが幸せだから流しているのか、そうでないのか解らないんだよ……! 生まれてこの方、幸せと云う感情そのものを微塵に感じる事もなく、只ひたすら意味も無く絶望という現実の中で延々と生き続けて来た俺には……今の自分の感情が何なのか、解らねえんだよ……!!」
ボロボロと果てしなく涙を流し続ける修司の痛々しい言葉を聞いて、アッコは愕然となった。
と、愕然となったアッコは次の瞬間、何とも穏やかな表情に一変し、そして微笑みながら涙で顔面を崩す修司に優しく接した。
「……それで良い」「…………え?」
アッコの言葉に驚き、泣き続ける顔を上げて彼女に視線を向ける修司。
優しい微笑みを修司に向けるアッコは、その慈愛に満ち溢れた笑顔で泣き続ける修司に話し続けた。
「それでも良い。解らないのなら、これから知っていけば良いの。持っていないのなら手に入れれば良いのよ。修司が……修司が愛を感じられないのなら、私が幾らでも感じさせるわ。愛と云う感情を持てないのなら、私がその感情を教えてあげる。修司が他人(ひと)を愛せないのなら、私が修司を……修司が他人(ひと)を愛せない分まで、修司を愛し続ける……! だから、だから……もう生きる事に苦しまなくても良いわ」
「あッ……アッコ……! あ、あぁ…………」
加賀美あつこの偽りない、その慈愛の言葉に修司は全身に衝撃が走るほどの感激を覚えた。
そしてアッコは涙を流し続ける修司の顔を、そっと優しく包み込むように両手で抱擁すると、そのまま彼の顔を自分の顔に近づけさせて優々しく言葉を掛けた。
「修司は、生きるの。生きてるって、ね。絶対……絶対、素敵で楽しい事なんだから」
アッコのその言葉に修司は生まれて初めてという程の感激を胸中から膨れる様に湧き上がり、そのまま思わず修司は自身の額とアッコの額を軽く合わせて感激の涙を更に漆黒の瞳から続々と流した。
と、修司がアッコの慈愛の精神あふれる言動に思わず互いの額を合わせていた正にその時。
修司は涙を流しつつ、何かに気付く。
そして徐に忍ばせていた柄から刃の部分まで全て銀色の小型ナイフを手にすると、それを一瞬で放った。
「ぐッ」
修司がナイフを放った瞬間、変な唸り声の次に墓石の物陰から、頭部に諸にナイフが突き刺さったバーンズが倒れて来た。
「えっ! ば、バーンズ?」
物陰から倒れて来たバーンズを目にして一驚してしまうアッコ。そして白眼を向いたまま倒れ込むバーンズに修司が一言発した。
「やっぱりお前か……物音がしたと思ったらやっぱりだったわ」
修司の顔つきは苛立ちの表情へと変化しており、既に目から涙は止まっていた。
そんな修司とアッコに起き上がったバーンズはナイフが突き刺さった個所から血を垂らしながら物申した。
「なんで……なんで、毎回毎回オレばっかこんな目に遭わなきゃいけない訳? お二人さんもさ、俺等は何も言わないから、もっとイチャイチャ続けていても良いんだぜ」
「い、イチャイチャって……」
顔を赤らめるアッコに続き、苛立ちの表情でバーンズを睨みながら修司が言い返す。
「そもそも、なんでお前がこんなところに居るんだよ。何故ここが解った…………ん、ちょっと待て。バーンズお前今何と。……俺等って、まさか」
表情に鮮明な動揺の色を浮かび上がらせていく修司に、バーンズは平然と言った。
「あ、うん。そうそう、実を言うと俺だけじゃないよ」
「へっ?」
バーンズの言葉にアッコが唖然とすると、其処ら中から隠れていた聖龍隊のメンバーが総出で姿を現した。
「み、みんな……ッ!」「い、居たの……!?」
蒼然と驚く修司とアッコに対し、皆は隠れて二人の情景を眺めていた事を涙で溢れる眼差しと泣き顔で謝罪しつつ修司やアッコに話し掛ける。
「す、済まない……ッ」「思わず話に聴き入ってしまって、声を掛けれなくて……ッ」
男性陣に続き女性陣も二人に謝りつつ涙で濡れる瞳を向けた。
「ご、ごめんなさいね、二人とも……っ」
「お、思わずお二人の会話に掛ける言葉も忘れてしまって……」
と、そんな涙ながらに語る皆々の顔を見て、修司は思わず皆に背を向けてしまうのと同時に背後のみんなに語り掛ける。
「お、お前等……何しに来た。こんな大ボラ吹きのクソッたれが無様に泣いているのを眺めて……ッ」
毒舌交じりの悪態を吐き散らしながら肩を震わせる修司の言動に、バーンズが皆を代表して修司に話を掛ける。
「修司、黙ってお前とアッコの話の様子を覗いてて済まない。そしてもう一つ………………辛かったんだな」
「!」
バーンズの最後の発言に肝を抜かれるほど驚愕する修司、更にバーンズは神妙な面差しで話し掛け続ける。
「だけどな……過去にどんな辛い日々が遭ったってよ。現在(いま)を楽しく過ごせない理由には成らないだろ?」
「…………」
「もう、俺達の……二次元人の悲しい運命は避けられ、そして終わったんだ。これからの運命は、未来は……俺達自身で築いていかなきゃイケねえ。お前だって、そんな簡単な事ぐらい薄々気づいているんだろ」
バーンズの話に黙然と耳を傾ける修司に、今度はアッコが背中を向ける修司の肩を叩くと同時に話し掛ける。
「バーンズの言う通りよ修司。私達の決められていた未来、悲しい結末は修司の必死な願いと想いで変えられ、そして避けられた。これからは此処に居るみんなで、それこそ誰にも描かれてない真っ白な未来を築いていきましょうっ」
「ッ……アッコ」
アッコの言葉に、修司は驚きに満ちた表情を振り向かせた。
更にアッコは嘘偽りのない綺麗な瞳を修司に向けつつ、印象的な真情を言った。
「決められた未来は変えられた、変える事の出来ない運命はもう無くなった。私達はこれから本当に、みんなで初めて誰にも描かれてない真っ白な未来を、私達だけの物語を少しずつでも良いから描いて、そして築いては創っていこう」
この加賀美あつこの言葉に、修司はもちろん周囲の皆々も気持ちを飛躍的に押された。
三次元人はもちろん、誰にも描かれてない白紙の如き運命と未来。
そんな先の見えない、誰も知らない未来を自分たちで創り、そして自身の意思で運命を力強く歩み続ける。
未来と運命 誰も決められない、誰も創れない そんな先の時代を彼らは自分達の意思と思想で築きそして進んで行こうと、今 魔鏡聖女の心からの言葉を胸に深く刻み付けたのであった。
と、その時。修司とアッコ二人のやり取りを間近で眺めていた為、目から涙を零し続ける火野レイと愛野美奈子の両名が、唐突に修司に温かく接し更には今彼や自分達を含めた周囲の皆に印象的な自身の真情を語り明かしたアッコに話し掛けた。
「そ、それにしても……なんだかアッコちゃん、まるで本当の母親みたいに修司君に優しくしていて……」
「ほんと。実は気の弱かった修司君にとって、本当のお母さん。ううん、弱虫な弟に話し掛けてあげるお姉ちゃんみたいだった」
涙目で微笑みながらアッコに話し掛けるレイと美奈子の言葉に対し、アッコは照れながらも笑顔で切り返した。
「そ、そりゃ……私はいつも修司の気弱な処を気にしていますし、年上の女の子として少しでも励ませれば良いなって、そう思っていますし」
この加賀美あつこの発言を聞いた途端、レイと美奈子はもちろん他の者等も皆、そして修司までも激しく驚倒した。
『……って、年上だったの!?』
「うわーーッ! 一番知られたくない事バレちまった!!」
目を丸くして、初めてアッコの方が修司より年上だと知り驚いてしまう皆々に対し、自分がアッコよりも年下だと明かされてしまった修司は涙目で叫喚してしまう。
「し、修司って、アッコよりも年下だったのか……?」
「初めて知った……」
目を丸く見開いて呆然と驚いてしまう地場衛と早見青児。すると驚いていたバーンズが思わず手をポンと叩いて発言した。
「あっ、そう言えばそうだった。確か修司の誕生日、アッコの誕生日よりも若干遅かったんだったけ」
「えっ! バーンズ、修司君よりもアッコちゃんの方が早く産まれているの?」
唖然とした表情で訊ねる海王みちるに、バーンズは真顔で答えた。
「あ、ああ確か……修司が産まれた一月その前の年の九月にアッコが生誕している訳だったしよ」
これを聞いてジュニアがぽつりと零した。
「うわぁ、聖龍隊で年上の彼女持ちは僕だけだと思っていたら、まさか義兄さんが最初だったとは」
一方の修司は、今まで明かされてなかった自分とアッコの年齢関係が暴露された事に甚く痛感した。
「ああぁ……最後の最後でバレちまうとは……」
そんな悲観する修司に如月ハニーが優しい微笑みで言葉を掛ける。
「で、でも修司君。別に何の問題も無いじゃない。……まぁ、私達からしてみれば年季の入った事ばかり口にする修司君が、まさか年相応の言動であるアッコちゃんよりも年下だった事に凄く驚いちゃったけど……」
ハニーに続き森谷りりかも思わず苦笑を浮かべながら落ち込む修司に話し掛ける。
「ま、まぁ、二人の仲はもちろん私達の今後の関係には全く支障はない事ですし、そんなに落ち込まなくても」
そんな中、未だに事実を明らかにされて気落ちする修司に、あのちせが静かに話し出した。
「で、でも……これからは、此処に居るみんなで、修司君とも一緒に成って、私達だけの未来を築いていけるし……何より、これからも修司君やみんなと一緒に居られるね」
「!!」
ちせの発言に修司は愕然し、そして突然周囲に響くほどの爽快な音が出るほど自分の目元に手の平を力一杯に叩き付け、それと同時に膝から崩れる様にその場に座り込んだ。
「うわぁッ!」「なんだイキナリ!?」
突然の修司の行動に驚愕する皆、そして自分の目周りを覆う様に思いっきり手を叩き付けた修司にアッコが何事かと訊ねてみる。
「し、修司。どうしたの? 突然自分の顔叩いちゃって……」
すると修司は目元を手の平で覆い隠しながらアッコに答えた。
「お、俺は……俺も確かに、みんなと一緒に居たいと願ったからこそ、この二次元界に未だ居続けられる訳だけど……!」
「……?」
急変する修司の様子に困惑するアッコに、修司は目を押さえながら続けて述べた。
「そもそも、こんな俺が……俺の様な三次元人が、汚れた男が……! 愛情を感じられない異端の存在が、みんなと一緒に居ても、良いのかなって……ッ! そう思っで」
「……!」
「生まれてから、ずっと苦しかった俺が……! 生きる事に絶望しか感じられなかった俺が……! 皆と共に、幸せに成れるのが……ッ!」
次第に鼻が詰まっている様な声質に変わっていく修司の声に衝撃を感じるアッコ。
そして修司は、目を押さえ込む手の僅かな隙間から怒涛の涙を流し出しては、震える口調でアッコ達に言い放った。
「ごんな゛お゛れ゛が……ごんな゛みに゛ぐい異常な奴゛が、みんな゛の様なごごろや゛ざじい、う゛つぐしいお前だぢと一緒にいでも…………良いのがなっ、で……!!」
自分の様な人として当たり前の愛情や優しさを感じられない存在が、心の優しく美しい想いを持った二次元人の皆と一緒に居ても良いのか。修司は涙を延々と流しながら自分の真情を曝け出し、眼前の皆に涙ながらに訪うた。
そんな修司の切なる言動に、聖龍隊の皆もアッコも騒然とする。
そしてアッコは、自分の想いを包み隠さず曝け出していった修司に、自分の現状に絶望し悲観する一人の少年に対し温もり溢れる微笑みを浮かべて優しく話し掛けた。
[ヘンシンする少年]
「これからは、ずっと一緒だからね」
アッコは自身の温かい両手で延々と涙を流し出す目を押さえる修司の両手を取り、そして包み込むように握りしめる。
一方の修司は、目を押さえ隠していた手をアッコに取られ、自身の涙で崩壊した顔で自分の手を取ったアッコの顔を見上げる。
見上げたアッコの顔は、とても他人とは思えないほど慈愛と母性が溢れ出る、言葉では言い表せない優しい微笑みが泣き続ける修司に向けられていた。
温もり溢れる言葉で、生まれてこの方、孤独しか感じられなかった少年の凍て付いていた心を、少女はふわりと解していった。
修司は思わず涙を流しながらアッコに、そしてアッコの後方で自分に目を向けてくれる皆に訊ねた。
「ずっと……ずっと一緒に居ても良いのか? こんな、鬼にも劣る畜生が……」
少女と仲間たちは少年に向かって優しさ溢れる笑顔で首を前に振った。
「そうよ。ずっとずっと一緒よ。みんなで誰も描いてない未来に向かって楽しく生きて行きましょう」
己の存在に悲観する少年に、少女は優しく言葉を掛けてあげる。
このとき少年は、今まで自身が感じられなかったほどの熱い感覚に襲われた。
まるで胸の奥から湧き上がって来る、計り知れないほどの灼熱の熱さが少年を襲った。
「熱い……胸が、胸が焼ける様にあつい……っ」
少年は自分を襲う熱い感情の意味を理解していなかった。しかしその熱は確かに少年の凍て付いた心に伝わっているのである。
少年は自身の瞳から更に大粒の涙を延々と流した。しかしそれは、かつて少年が一人心の内で流していた悲しみの涙などでは無かった。
少年の瞳から溢れる、その涙は少年の胸の内を焼き焦がす程の熱い熱い涙であった。
悲しみの涙とは根本的に違う、その熱い涙に少年は更に自身の情状を激しく揺さぶられるのだった。
優しさ愛情、そんな温もりを感じさせる感情のみを感じられなかった少年の心に張り付いていた硬く厚い氷の壁。そんな氷の壁は少年が産まれて初めて感じ取った、自分を愛し優しく接してくれる一人の少女の偽りのない温かな言葉で瞬く間に融けだし、融けた氷は少年の漆黒の瞳から熱い水(涙)として溢れ出し、乾いた大地を潤す様に少年の顔を濡らしていった。
そして初めて感じられた心の熱で自分の心に張り付いていた氷の壁は見事に融け、少年は本当の意味で堅く閉ざしていた自身の心を開く事が出来たのだった。
胸の中で滾る、この熱いナニかが 愛なのかどうか、俺には解らない
そう焼ける胸中の少年は一人、自分の中で何度も思考を繰り返す。
闇の様に暗く冷たい少年の心、その心に堅く張り付いていた孤独と云う名の氷の壁
しかし少年の真っ暗で独りぼっちだった心に初めて灯された愛情と云う名の光は、少年の闇の心を微かに明るくさせ、更には今まで張り付いていた殻という名の氷の壁を融かし出しては少年の閉ざされていた心をも解放されたのである。
生まれた事に、苦しみしか感じられなかった。
生きる事に、絶望しか抱けなかった。
自分の中に芽生えるのは、いつだって苦しさと悲しみと絶望だけ。
本当に欲した 幸せ、希望いや……何より、人として最も純粋で必要な感情(こころ) 愛ばかりが自分には無かった。
少年は昔から、こんな歪な心を持つ自分を嫌い、そして何とかして変えたいと心から願った。
そして少年は今、全ての希望や愛情を司る変身ヒロインの始祖である少女から、どんな存在にも変身できる少女によって変わる事が出来た。
少年は二次元の皆の御蔭で、自分の心を 変心(へんしん)させる事ができたのだった。
[姿見せる 黒き者]
と、修司がアッコの言葉に激しく励まされ元気づけられている、正にその時。
一人の人物が歩み寄り、修司やアッコ達の前に姿を見せた。
「成るほど。どうやら私が、とやかく言う必要な無いようだね」
「えっ。あ、あなたは……!?」
目の前に姿を現すその人物を目の当たりにして動揺するアッコと仲間たち、そしてその者の顔を見て修司は涙で濡れる顔に驚きを浮かべた。
「あ、あなたは……ッ!」
涙目の涙声で言葉を発する修司の前に居たのは。
黒いマントを羽織り、首元には赤い紐状のネクタイ。そして何と言っても継ぎ接ぎだらけの顔に左側の頭髪が白く変色している顔立ちの男だった。
「あ、あんたは一体……!」
謎めいた男を一目見て警戒し出す衛、だが一人宇崎星夜が男を見て言った。
「あ、この人! 確か俺達が入院していた病院で何度か会ったぞ!」
星夜に続き、あのカノンも怪しげな風貌の男を見て発言する。
「そうだ、そう言えば……確かこの人、手術室に出入りしているの目にしたよ」
するとその時、何かを思い出したかのように花丘イサミが叫んだ。
「そうよ、この人! もう一人、大柄で大きな鼻が目立つお爺さんと一緒に、ちせさんの手術をしていた……!」
「そ、そうだ……この人が、私を……」
イサミの発言に、ちせ本人も男の顔を思い出した。自分の負荷と成り、更には暴発を防ぐための処置等を、科学者の風貌をしている老人と二人で精一杯尽くしてくれた男性であった事に。
すると眼前の男は、自分が執刀したちせに言葉を掛けた。
「ああ、君はあの時の。なに、私は手塚先生の要望でお茶の水博士と共に君の問題であった個所をオペしただけさ」
と語る眼前の男に修司は戸惑いながらも言葉を掛けた。
「あ、あなたは……なぜ、こんなところに……?」
修司の質問に、継ぎ接ぎの男は答えた。
「いや何。君がまた自分の産まれ持った障がいに対して自己嫌悪に陥って無いか気になってね。まぁしかし、この私が口を出すまでも無かったようだ。いや、私なんかが色々と口喧しく言うよりも効力のある言葉を君に直接言ってくれる少女が傍らに居てくれているのなら問題は無さそうだ」
男は加賀美あつこに視線を向けながら修司に対して言葉を語っていく。
その時、徐に天王はるかが眼前で修司に語り告げる男に言った。。
「て、手塚先生って……! 貴方はあの神である手塚先生と、どの様な関係で……!」
男が口にした神の名に驚き、思わず神である手塚治虫氏との関係を男に問い質す天王はるか。すると男は不機嫌そうな表情ではるかに話し返した。
「なんだい、君等も手塚先生の事をそんな風に言うのかい? 別に手塚先生は神様でも何でもない、タダの人だ。そもそも人が神に成り上がるなんて、おこがましいにも程がある」
そして男は皆に背中を向け、その場を立ち去ろうとしながら更に述べた。
「そう、あの人は神様なんかじゃない。ただ人としてはかなり面白みのある、そしてこの私を生み出してくれただけの……タダのひょうきんな漫画家なだけさ」
男はそう言うと、その場から去ろうとした。
と、その時。男は最後に修司に向かってこう告げた。
「修司君、君の本当の試練は此処から始まる。多くの二次元人の運命を救った、そんな形で数多の二次元人の運命を大きく狂わせてしまった……君には、その責任を取ってもらわなければ為らない。無論、この私も少なからずの援助はして行こうとは思っているが、その前に君自身が自分の運命を切り開いていかなければ何の意味も無い」
「………………」
男の言葉に思わず黙然としてしまう修司に、男は更に続けて言った。
「大丈夫だ、君なら……いや、君にだって出来る筈だ。手塚先生も口々に言っていたじゃないか「効率でも才能でも無い。妥協せず諦めない思いこそ、一番大事な事なんだ」と。手塚先生は、手塚治虫と云う一人の人間は決して完璧で誰よりも秀でた才能を持っていただけで素晴らしい漫画家に成れた訳じゃない。自分の夢に、そして自分の信じた想いに只管真っ直ぐ突き進み、何事にも妥協せずに諦めなかったからこそ、今では誰もが認める漫画の神様に成れたんだ」
そして最後に男は、自分が羽織る黒マントを靡(なび)かせながら、修司達に告げた。
「大丈夫。手塚先生にだって出来たんだから、君達にだって出来る筈だよ」
男は口元に爽やかな微笑を浮かべながら、修司達の前から去っていった。
男の言葉に唖然としている面々で、修司だけが涙で濡れる真顔でその場から立ち去る男の後ろ姿を無言で見届けた。
「……し、修司。もしかして、あの男の人、修司は知っているの?」
そんな修司に唖然としながらもアッコが訊ねると、修司は涙塗れの顔をアッコに向けて答えた。
「ああ……あの人は正真正銘、誰もが認める天才的な技術と神業を持った……ただの無免許医さ」
「え?」修司の返した台詞に呆気に成るアッコ。
そして修司は男が立ち去って行った方を見詰めながら、涙で煌めく瞳で内心思っていた。
(そう言えば、アンタも手塚先生が最も苦境に喘いでいた時期に生み出されたキャラクターだったな)
修司は最後に心の中で黒マントの男に感謝と御礼の言葉を人知れず口ずさんだ。
(ありがとう……! B・J!)
一方、修司達に粗方の言葉を告げて言った男は霊園の出入り口から外の歩道に出ていた。
その時、霊園から出て来た男に、茶髪のおかっぱ頭の後頭部に四つの赤いリボンを付けている可愛らしい女の子が駆け寄って来た。
「ちぇんちぇーー」「おっ、ピノコ。待っててくれたのか」
自分に声を掛けてくる女の子に男は先程とは打って変わって、愛想の良い表情で返事を交わした。
女の子は男に駆け寄ると、顔を男の顔に向かって上げながら訊ねた。
「ちぇんちぇい、あの修司って子にちゃんとちゅたえられた?」
すると男は女の子に向かって穏やかな表情で答える。
「私がやるべき事、そして伝えるべき事は全てした。後は彼の、そして彼を信じてくれている聖龍隊の皆に全てを託すさ」
男の言葉に女の子は笑顔で男と話し合った。
「そうよねっ。だって、あの子にはせーりゅーたいが、ちょして自分のちょなりにいつもしゃいっこーーの友達が居てくれるから、大丈夫なのよさっ」
「そうだな。彼には、もう死ぬ理由なんて一つも無い。共に生きたいと思い願ってやまない、掛け替えのない親友が側に居るんだからな。もう簡単にへこたれる事は無いだろう」
「これで、あの修司君もじちゃつする事ないわよね?」
「ああ無論そうでなければ困る。医者として命を無暗に投げ捨てる愚かな事はして欲しくは無いし、何より彼にはこれから本当に先の見えない未来が有るんだ。私たち二次元人の行く末を彼には共に築き、そして私達と一緒に歩み続けて貰わないとな」
男と女の子は話しながら歩道を歩き進んで行った。
「ちゃんちぇ、せっかく街まで来たんだから、どっかで美味しいパフェでも食べに行きまちょうよ」
「ああ、たまには良いかもな」
この時、男は女の子と他愛も無い会話をしながら一人、心の奥で思い更けていた。
(それにしても……まさか発達障害者の少年を二次元界に連れて来て、その子の心に少しでも光を差し込んであげようとするとは……手塚先生、そしてウォルト・ディズニー氏。あなた達は途方も無い事を御考えに成られたんですね)
一人、険しい真情の中、男は更に思い更けた。
(誰にも理解されない、誰からも見向きもされる事のない存在それが障害者。身体障害者で有れば、我々医術に長けた者が治療を施してあげれば幾らでも改善させる事が可能だ。しかし知的や発達の障害はそうはいかない。未だに混乱や誤解が多く、また生物学的なメカニズムも不明な点が多い事から確かな治療法は存在せず、それ故に周囲と軋轢(あつれき)を起こしたり変人扱いもされ、様々な偏見や差別の対象と成ってしまう。だが、そんな医術では決して癒してあげる事の出来ない障害者を……誰にも理解されにくく生まれながらの障害と云う宿命を背負いながら永遠の柵(しがらみ)に囚われ苦しみ続ける健常者とは根本的に違う存在にも、微かな生きる希望と云う光を心に射す数少ないモノ、それが漫画と云う人々の思想を形に現したモノかもしれませんね)
男は眩いほどの木漏れ日が差し込む木々の真上を見上げながら神妙な面差しで思った。
(手塚先生。私達、医学に長けた者でも完治させる事の出来ない障害者に、微かな生きる望みを与えられる漫画を生み出した貴方は、そして多くの漫画家たちは、ある意味……この私以上の名医かも、知れませんぜ)
と、男が神妙な顔付きで思い更けている正にその時、男の手を女の子が引っ張って声を掛ける。
「ちぇんちぇー、早くどっかのお店でおいっしいパフェ食べようよさぁ」
「ああ、そうだな。おい、急かすな急かすな」
自分の手を引っ張りながら男を急かす女の子に、男は微笑みながら返した。
と、その時。男の所持していた携帯が鳴り、男はすぐさま携帯を懐から取り出しては通話に出た。
「はい、もしもし…………成る程、うん……………………解りました、今すぐ其方に伺います。はい」
男は険しい表情で電話を切り、携帯を懐に戻すと男は自分の前を行く女の子に声を掛けた。
「ピノコ……済まないが、パフェはまた今度だ」
「ほえっ?」
男の言葉に女の子が振り返ると、男は真剣な顔つきで女の子に言った。
「いま緊急の手術(オペ)が入った。場所はカナダ、これから速急に患者の所に向かわなければならない」
だが女の子は顔色一つ変えず、不満の様子も見せずに男に言葉を返した。
「あらっ、それなら今すぐ行かないとっ。天下の外科医ブラック・ジャックのお出ましねっ」
「うむ、行くぞピノコ。まずは空港まで急ぎ向かわなければ……タクシー」
女の子の返事に頷いた男はすぐさま空港に向かう為に、手を振り上げタクシーを止めると女の子と揃って停車したタクシーに乗り込み、そのまま空港まで向かうのだった。
[先の見えない未来への思想と不安]
男と女のこの二人組が霊園の入り口から去っていってから、しばらく後。
霊園の入り口から涙で頬や瞳を濡らし続ける修司と、その修司の傍らで付き添う様に一緒に歩く加賀美あつこ。
そして二人に続いて続々と聖龍隊の面々が霊園から出て来た。
一行は歩きながら、それぞれの想いや先の戦いでの苦労、そして何より修司の真情について色々と語り合っていた。
そんな中、修司とアッコも二人だけで穏やかな様子で話していた。
「修司、ほら。まだ涙が零れているわよ。さ、これで拭いて」
「ああ……ありがとう」
未だに僅かながらの涙を流す修司を見たアッコは、彼にハンカチを手渡して涙を拭かせる。
その時、アッコは涙を拭っている修司に訊ねてみた。
「ね、ねぇ。修司」「っ、なんだアッコ」
涙を拭いながら返事する修司に、アッコは再度訊ねた。
「修司はさ、これから聖龍隊で……この二次元界でなにしていくつもり? 私でも協力できる事があったら何だって言ってちょうだい。私だって、聖龍隊の一メンバーなんだから」
アッコの堂々とした言葉を聞いた修司は、微笑を浮かべて彼女に答えた。
「そうだな……先ずはやはり、聖龍隊を今後更に強化していき、本当にアジアでは最強の、ゆくゆくは世界最強の存在として世界に示していきたいと思っている」
「世界に示せる……」
「そうだ。聖龍隊には今後とも特殊な能力者や存在が加盟していく事だろうし、そんな連中の中には俺の様に異端な存在も多くいる筈だ。故に、理不尽な迫害や差別に遭ってしまう者も少なくはないだろう。俺はそんな連中も、聖龍隊に加盟させる形で保護していき、彼等に安息の時を与えてられる居場所としても聖龍隊を絶対的な組織に発展させたいんだ」
迫害や差別を受ける能力者や人々を護り、そんな人々にとっての安息の時を得られる居場所としても聖龍隊を発展させたいと思い願っている修司の寛大なる思想に、アッコは感心しつつ驚いてしまう。
更に修司は続けてアッコに述べた。
「それにな……俺はな、アッコ。俺みたいな異端な存在でも、お前たち二次元人と関わる事で自分の中を、自分の現実を大いに変える事が出来た。俺は、そんな素晴らしい想いを他のみんなにも知ってほしいんだ」
「知ってほしいって……どうするつもりなの?」
アッコが訊ねると、修司は迷いの欠片も無い力強い顔付きで語った。
「うん、最初はかなりの混乱も起きるのは間違いないと思ってはいるのだが……俺は、この二次元界と三次元界の二つの世界を一つにし、互いに交流しながら共に未来を築いていきたいと思っているんだ」
「え? つ、つまり修司は、自分の居た三次元界と此方の二次元界を交流させて、双方の人たちを接触させていきたいと思っている訳?」
驚いてしまうアッコに、修司は更に神妙な面差しで述べていく。
「俺は、決して一人では強く成る事も無かったし、何より生きようとする意思が心に芽生える事も無かった。全ては二次元人であるアッコや皆の存在があっての事だ。俺は、そんな感動を、想いを自分以外の大勢の三次元人達にも体感させ、そして正しく変わっていってほしんだ。未だに三次元界では無意味な争いや衝突が多発している……だからこそ俺は、そんな無駄に傷付け合う人々にも和解そう平和の未来も在る事を知ってほしいんだ」
「……………………」
「夢や理想、そして思いやりの心の象徴である二次元人。そんな二次元人達を生みだした三次元人。二つの相反する存在らが共に生きる……共存共栄していく世界いや未来こそ。この俺が最も築き、そして後世に残していきたい未来そのものなんだ……!」
自分が体感して来た心を揺さ振られる経験や想いを知ってもらい、自分の様に変われる三次元人を更に増やしていきたいと思い願う修司。
絶対的に相反する二つの種族でも、共に生き、共存共栄の更なる発展に結び付く筈だと称える修司。
誰も見てない、誰も知らない 白紙の如き未来に描いていきたい修司の途方も無い無限の思想に、アッコは愕然としつつも心の底から感動し驚嘆してしまうのであった。
そんな二人の微笑ましい様子を見て、修司とアッコの後方から二人の後を歩く聖龍隊の面々は幸せ一杯の微笑みで楽しく会話をしていた。
「ふぅ、まぁ一応は何とかなったわね」
「そうですわね。修司さんと皆さんの蟠りも見事に無くなりましたし」
修司とアッコの話し合いを後ろから眺めていた火野レイと鳳凰寺風は微笑みながら話してた。
「どっちにしろ、聖龍隊はこれからが本当に大変だな」
「そうだな。聖龍隊の権限は、すなわち俺達の権限だ。蔑にされないよう気を引き締めて活動していかないと、聖龍隊と云う組織そのものが危うく成る」
早見青児と地場衛は気難しそうな顔で話し合う。
「まっ、今は考えたって仕方がない。取り敢えず今はゆっくりと身体を休めて、それから折を見てオレ達の今後を話すとしようぜ」
「そうねっ。まだみんな戦いの疲労がちょこっとだけとは言え残っているんだし、何よりも別に慌てる必要も無いんだからね」
バーンズに続き春日結が語っていると、最後尾から皆の後ろを歩いていたジュニアが突然歩ませていた足を止めた。
「ん、ジュニア? どうしたの?」
突然立ち止まるジュニアに、彼の前で歩いていたアプリコットが心配して声を掛ける。
するとジュニアは俯いたまま、アプリコットや突然立ち止まるジュニアを気にして此方に目を向ける聖龍隊の面々に訳を話した。
「いや、なに……別に、大丈夫とは、思うけど……さ」
『?』
皆が不思議がっているその時、ジュニアは晴れ晴れとしない顔を上げて皆に言った。
「いや、義兄さんは、その大丈夫だとは思うんだけど…………もし……もし。兄さん以外の三次元人で……兄さん以外の全ての三次元人が、僕たち二次元人の存在を必要と見なくなったら……僕達はどうなるんだろうと、思って」
『!!』
ジュニアの発言に誰もが心身に衝撃が走るほど愕然とし、その中の一人であるバーンズが暗鬱な面持ちで口にした。
「……余り……考えたくは、無いな」
もし三次元人達が、自分たち二次元人を必要と見なくなったら 自分らはどうなってしまうのか。彼等の心には一抹の不安が過った。
その時、皆の会話を己の背中越しから聞いていた前方の修司が立ち止まり、背後の皆に声を掛ける。
「お前等、何を言っているんだ? 確かに俺達は先の解らない、先が全く見えない未来に向かい始めている。だから、この先の未来で一体なにが起きるのかも、誰にも解りやしねえ。故に不安に思っちまうのも仕方ねえけどよ」
『…………』「…………」
修司の返し文句に唖然と成る聖龍隊の面々に彼の隣で修司の顔を見詰めるアッコ。
そして修司は背中を皆に向けたまま、力強く語り出していく。
「だが……不安に思ってばかりじゃ、描ける未来も描けなくなっちまうぜ。誰にも描かれない、俺達だけの未来を……俺達だからこそ形にできる物語を築く前から、そんな不安がってちゃ、進める未来(さき)にも進めなくなっちまうぜ」
そう言って修司は背後の聖龍隊の皆に顔を振り向かせた。その振り向いた修司の顔は、今までのどんな表情よりも格段に穏やかで満足気な笑顔だった。
そんな修司の真なる笑みを目の当たりにした聖龍隊の面々と彼の傍らに居たアッコは驚きながらも言葉を失った。
そして笑みを浮かべる修司に、バーンズが穏やかな神妙面で言った。
「お前でも……そんな顔できるんだな」
初めて自分達に見せた穏やかな笑みを前にバーンズは修司に言うと、それに対して修司は穏やかな笑みのまま平然とバーンズや皆に言い放った。
「当たり前だろ。お前達が笑っていられるから、この俺も笑えるんだ。……鏡みたいに、単純だろ?」
友が、周りが笑んでいるからこそ 自分も笑んでいられる。
これは後に、鬼神と恐れ慄けられる武人が 自分に感情(こころ)と人との仕合(幸)せを齎(もたら)してくれた
一人の穢れ無き 心優しい鏡の聖女から教え与えられた心得であった。
[chapter:時は過ぎて]
此処は気の遠く成りそうなほど未来の世界 処の名は
クリスタルトーキョー
目覚ましく発展している未来のその都市には、一人の少女の姿があった。
煌びやかな白いドレスにピンクのシニヨンツインテールの少女は一人、腰を下ろしては手にしている本を開いて黙々と本と向き合っていた。
そんな黙然と本と見詰め合っている少女に、後ろから少女の肩に手を置いては声を掛けてくる者が。
「どうしましたか? リトル・レディー」
「あっ、ヴィーナス」
本と向き合っていた少女が振り向くと、其処には金髪のロングヘアーのセーラーヴィーナスが穏やかな表情で立っていた。
「リトル・レディー、また読んでいらっしゃるのですね。過去の時代から持ち帰って来た、その本を……」
「う、うん」
ヴィーナスからの言葉に少女は小さく頷いた。
するとその時。
「プリンセス」「プリンセス、一体どうしたんだ? 一人でこんなところに」
「あ……! ま、いや……お母様、お父様」
少女に声を掛けたのは、白い煌びやかなドレスを身に纏った美しい金のツインテールの女性と、凛々しい黒の服装の男性であった。
二人の男女に、少女は駆け寄り、そして微笑ましく会話し始めた。
「プリンセス、また一人でその本を……聖龍隊の伝記を読んでいましたね」
「は、はい。お母様……」
女性の問い掛けに顔を俯かせながら答える少女、すると女性の傍らに居る男性が少女に話し掛ける。
「何をそんな顔してるんだい? 私も母も、何も咎めている訳ではないんだぞ。ただな、その…………なぁ、ちびうさ。もし良ければ、お前が読み漁っているその伝記、私達にも読ませてくれないかね?」
「へっ?」
男性の問い掛けに軽く驚く少女に、女性が訳を語り出す。
「私達はね、ちびうさ。この世界、この未来とは別の時間軸つまりパラレルワールドに成ってしまった、もう一人の私やまもちゃん。そして他のセーラー戦士達と共に自分達の世界を護り抜いた英雄達……何より、そんな英雄達を纏め上げた少年の物語を少しでも知りたいの。残念だけど、アナタが行った過去の、聖龍隊の人々も伝承も、今のクリスタルトーキョーには伝えられてもなければ遺ってもいません。それでも、あなたと共に激しくも悲しい現実を戦い抜いた少年少女らの活躍を、そして意思を生き様を私達は知っておきたいのです。生まれながらに孤独の心に囚われ続けた少年が、自分の宿命と抗いながらも最後は向き合うまでの葛藤を、別の時間軸に存在する私達も彼の力強い意志、その本当の姿を心に刻み付けたいのです」
「お……お母様……!」
女性の言葉に少女は目を輝かせて歓喜した。
そして少女は、女性と男性との間に座りながら三人で腰を据えて過去の時代 今と成っては別の時間軸の時代から譲り受けて来た本を家族共々読み耽っていった。
少女が自分の母と父である女性と男性と一緒に読み耽っている本の表紙には、こう綴られていた。
【聖龍伝説 英雄達の本当の姿と偽り無き意思 著者 花丘イサミ】
そんな本を読みながら、少女は昔の事を思い返していた。
自分が本来還るべき時代である未来世界に帰還する際、聖龍隊の面々とその隊員の一人である花丘イサミから手渡された一冊の本。
それは花丘イサミが後の時代に遺して置こうと、聖龍隊の面々の細かな性格や生き様、そして揺るぎない信念を綴った聖龍隊の伝記。かつて既に死亡したミナモト長官に破り捨てられた聖龍隊の記録を綴った本を基に、著者であるイサミ自身が綺麗な一冊の本に改めて書き綴ったものを、未来に帰還するちびうさに持たせたのであった。
王女であるちびうさと、時間軸の異なるクリスタルトーキョーで新たな統治者として君臨する母のネオ・クイーン・セレニティと父のキング・エンディミオンの三名は、本を読んでいる最中に、本と共にちびうさに贈られた一枚の写真を穏やかな表情で見据えていた。
その写真には、最早この時代には存在しないであろう聖龍隊の一員として活躍し続けている自分達星の戦士達に他の多種多様な英雄達、そしてその聖龍隊を結成させた孤高の少年、その隣には少年の腕に纏わり付く様に抱きついては満面の笑顔でカメラ目線を向ける少女、そんな聖龍隊の全隊員達が総出で写っていた。
三人の家族は過去の自分たちはもちろん、孤独だった少年に離れようともせずベッタリと腕に抱き付く少女とその仲間達の幸せそうな様子が撮られた写真に、心から和やかな気持ちに浸ったという。
そして時は戻り、此処はアニメタウンの巨大な建造物の屋内。
其処で一人の青年が腰掛けに腰を下ろしながら、眼前の鏡台と向かい合っていた。
鏡と向き合いながら己の身だしなみをキッチリとする青年は、鏡に映った自分を見て自身の客観を確認すると徐に立ち上がった。
立ち上がった青年は自分の居る部屋のドアに一直線に向かって歩き出し、ドアを開けると同時にドア横に立てられていたハンガーラックに掛かっていた一枚のマントを颯爽と羽織ると再び足を前へと歩ませる。
全身黒の衣に身を纏い、裏地が黒 表が赤のリバーシブル構造のマントを羽織った青年の腰には、一刀の日本刀が下げられていた。
青年は長い長いレッドカーペットが敷き詰められた通路を歩く。
青年は、長い赤絨毯(じゅうたん)の道をひたすら歩き続けながら想いに耽る。
心に降り積もった闇は 生きる意思をも消して
真っ黒な世界に 自分は孤独(ひとり)ぼっち
強がりなプライドが心に囁き続ける
このままじゃ ダメなんだと
そんな自分に声を掛け、意思を向けてくれた 掛け替えのない人々
戸惑い、傷付き 誰にも自分の苦しい宿命を打ち明けずに 悩んでた
それももう やめよう
通路を歩く青年 その青年に付き添う様に続々と通路の脇から次々に、青年を慕ってくれる輝かしい心の持ち主たちが、青年の後ろに就いていく。
ありのままの 姿見せられる
ありのままの自分で居られる
何も怖くない 風よ吹け
もう怖くなんかないさ
自分に従い、自分を信じてくれる 自分を真に受け入れてくれる
そんな仲間の存在を間近で感じ、青年は今までの自分の苦悩が幻だったかのように晴れやかに消えていくのを感じてた。
悩んでた事が 嘘みたいだ
だってもう自由だ なんでもできる
何処までやれるか 自分を試したいんだ
そう今からでも変わってやるんだ この俺は
ありのままで様々な世界に
ありのままで世界に飛び出すんだ
二度と悲しみの涙は流さない
青年は激戦と葛藤を共に乗り越えた仲間達と広大なバルコニーに足を運んだ。
其処には青年と青年の仲間である方々に尽くし、そして父親の様に接しながら彼等を補佐する人物が、広大な半円状のバルコニーへのガラス扉を開いて青年らを屋外へと誘う。
バルコニーの眼前、その地上には大地を埋め尽くさんばかりの無数の軍服姿の人々が縦横無尽に入り乱れていた。
人々の中には、翼を広げた青い鳥を背景に七体の色取り取りの龍が描かれた軍旗を掲げる者の姿も在った。
青い鳥に七体の龍が描かれた軍旗を高々と掲げながら、人々はバルコニーに姿を現した黒服姿の青年と、彼の周囲に居する英雄達の姿を見上げて、歓声混声の声を上げ続ける。
『聖龍隊! 聖龍隊! 聖龍隊! 聖龍隊! 聖龍隊! …………』
冷たい心を包み込む
高く舞い上がる 理想という名の未来を描いて
花咲く心の結晶の様に 輝き続けたい もう決めたんだ
これで良いんだ 自分を受け入れて
これで良いんだ 自分を信じて
希望という光 浴びながら 歩き出そう
漆黒の衣を纏い、黒と赤地のマントを羽織る青年は 徐に自身の左腰に下げている日本刀を抜刀し、勇ましい出で立ちで刀の切っ先を眼前へと突き出すと同時に力強く猛烈に唱えた。
「いざ行かん! 我らが存在(いし)! 世界(ここ)に示せぇッ!!」
『ウオオオォォォオオオ……!!』
魂をも揺さぶる、その強烈な一声に 地上の隊員達は一同に怒涛の大歓声に雄叫びを上げる。
自分等の存在の証明と成る強き意思 それをこの世界に示し尽くそうと熱く群衆に熱弁する青年。
青年の周囲には、星の力を司りし美少女戦士達。科学から生まれ出た異端の乙女。多種多様な魔力を秘めたカードを操る少女。全ての傷を癒す白衣の天女。主に電子世界での問題を解決しつつも、新たに得た仲間達との協力のため、今では現実空間でも戦う事を決意した三人の訂正執行者の少女達。紅蓮の如き赤き鎧に、清き海の如き青の鎧、そして癒しの風の如き緑の鎧に身を纏う三人の少女がら連なる魔法騎士。そして身体を改造され、本来ならば世界を滅ぼし自らも破滅の道を辿る筈であった一人の健気な少女。そんな彼女等も、青年と同様に地上に溢れる数多の同朋達に気高くも優しい微笑みを浮かべる。
更に、その青年の御側役には、大地の化身 後に地神と呼ばれる緑の衣を纏う青年と 風を感じ操る、後に風神と呼ばれる人外の青年の姿が見られた。
だが一際、地上の皆々の目を奪うのは、意思強き熱弁を奮う青年の傍らに居ずる、ふわりとした赤いお下げ髪の、穢れ無き美しい輝きを放つ鏡の瞳を持った少女の姿が在った。
かつて孤独に囚われ、生まれながらの宿命に苦しみ続けた少年は今、己の全ての真情を受け入れてくれた数多の友と共に決起した。
障害者という世間から弾かれた者が、自分を受け入れてくれた無限の可能性を秘めた者等と、世界に向けて自分達の力強くも輝かしい意志を示さんと奮い立った。
これは後に十年と、いや二十・三十と長きに渡り続いていく伝説
伝説という名の物語の 単なる序章に過ぎない話である
~~~~Fin~~~~
話を読み続けてくれた方々は既にお気づきでしょうが、主人公 小田原修司は発達障害者をモデルに書いております。
多くの障害者は、その多種多様な症状から様々な誤解や偏見を受け 未だに世間の白眼に曝されております。
今現代、若者に多く見られるようになった「コミュニケーション障害」も同じく発達障害者であります。
その様な障害者が、障害者学校を卒業したり、また卒業せずに社会に出るとき履歴書などに自分はコミュ症だと記載しているだけで周囲の人々は危険な存在だと誤った価値観を向けてしまうのが現状です。
世間の多くが、知的や発達の障害者は「何を考えているか解らないから怖い」「突然訳もなく暴れ出して人に危害を加えるから、刃物を身近な所に置いておけない」と言った激しい誤解と偏見で、世間が満ち溢れております。
この物語の主人公 小田原修司も、そんな障害者をモデルに書いております。
彼は物心つく頃から他人と自分の違いに気付き、それ故に他人との間に溝を作ってしまい、周囲からの蔑視の視線でより自分の殻に籠ってしまった少年です。
そんな彼も、自分を受け入れてくれる人と出会った事で、少しずつ嫌っていた障害者としての自分と向き合える様にまで成っていきました。
この話を読んでくれた方は、本当に少しでも良いので 障害者という健常者とは違う存在の方々を理解してほしいと思います。
因みに一つ伝えておきますが
主人公の修司は発達障害者として、親や他人からの愛情や優しさを全く感じられないとしております。
しかし実際には発達障害者の中には[他人の愛情を感じ取る能力が薄い・もしくは欠如した障害]を持つ人が殆どであり、小田原修司の様な愛情を全く感じ得ない特殊な症状は本当に極々稀に存在しているだけです。
最後に
この様に人からの感情を感じにくい人々にも、そして大勢の人々から愛され続けるキャラクターや作品を手掛けて、生み出してくれた多くの漫画家の先生方に、心から感謝と慈しみの御言葉を申し上げます。