聖龍隊 気高き二次元人達   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 聖龍隊メンバーから見た現状を各々執筆していきます。
 続いてナースエンジェルこと森谷りりかや仲間からの視点です


聖龍伝説 ――ナースエンジェルVision――

[chapter:不安な胸中]

 

 聖龍隊、基地施設の一室にて総長小田原修司の公然の前での言動に驚き、愕然となってしまっている三人。

 白衣の天女、ナースエンジェルこと森谷りりか。その親友であり恋人の宇崎星夜(うざきせいや)。そして当初は彼女達の敵であったデューイがテレビに放映されている修司の公言に見入っていた。

 

 そしてデューイが唐突にテーブルの上に置かれているテレビのリモコンを手に取り、テレビを消した。

 テレビを消したデューイはリモコンを放り投げる様に置くと「ふぅ」と軽く溜息を衝いた。

 

 それから三人はしばしテーブルの席にて座り込み思い更けていた。

 

「…………ね、ねぇ……二人とも」

「ん……」「なんだい、りりか……」

 暗鬱な表情で星夜とデューイに声を掛けるりりか。

 彼女にデューイが訊き返すと、りりかはそのまま二人に不安そうに呟いた。

「ふ、二人も心配なの? 修司さんの発言に、ついて……」

 りりかの不安そうな言動に一瞬黙り込む二人であったが、暗く重い空気の中デューイが口を開いた。

「……ああ、正直……修司のあの話し方じゃ、僕たち聖龍隊が世間から危険視されても可笑しくないよ……」

 そしてデューイに続き星夜も口を開いて気欝な感じで語った。

「そうだよなあ……何時もの事だけど、不敵な態度で何処か挑発交じりな言動だし……修司さんってなんか、敵とかそんな対立関係を生み出しちまう様な素振りが目立つ様な気が……」

 修司の言動に不安の色が隠せないでいる星夜にデューイ、そしてりりか。

 だがその時、りりかが意を決して声を出した。

「……ふ、二人とも」「「?」」

 りりかの発言にキョトンとする二人に対し、りりかは暗鬱な表情から力強い眼差しで見詰めながら語り出した。

「わ、私……修司さんの話の内容については未だに納得できてない面もあるし、何より不安で胸がいっぱいよ。だけど今はそれよりも、本当に世の中の人達からの信頼がどうのとか世間体がどうとか言う前に、まずその世の中の人達の命を護って行く為にも、今は必死に自分達が出来得る事をしていって戦いに備えて行かないと……! 何もしなければ本当に世界は終わってしまうのかもしれないんだし、今は修司さんの指示通りにしましょう。修司さんには修司さん成りの考えがある筈なんだから……!」

「「………………」」

 りりかに言われ黙り込んでしまう星夜とデューイ。

 

 そして。

「……まぁ、今は考えていても仕方ないね。癪な気もするけど、今は修司の言う通りに新しいメンバーとも共闘できるように努めるとしますか」

「でゅ、デューイ……」

 仕方が無いと云う面持ちで述べるデューイの言葉に歓喜するりりか。更に

「ま、考えていても仕方がねえ。今は取りあえず戦いに備えて新しい連中とも意気投合できるようにやって行くか」

「星夜……」

 星夜もデューイに続き気分を変えて発言した。りりかは二人の言葉に静かに感動し、そして星夜とデューイに告げた。

「二人とも、最後まで頑張りましょう。多くの命を護り抜き、そして無事に戦いを終わらせて此処に居る三人……いいえ、聖龍隊のみんなでまた笑い合える平和な時を過ごしましょう!」

「ああ!」「もちろん!」

 りりかの力強い掛け言葉にデューイと星夜も力強く返事をして、三人は共に激戦を乗り越えて行こうと決意する。

 

 

 

[己が果たせる務めを]

 

 そして新メンバーとの意気を合わせる為に行われる共同訓練。

 其処で森谷りりかことナースエンジェルは、メインメンバーとは少し離れた所でウエルズを筆頭とした独立部隊【聖龍別働隊】の面々と各々の役割について話し合っていた。

「……と云う訳だ。ナースエンジェルは大抵の怪我を瞬時に回復させる事が可能なんだが、それでも瀕死の重傷に対しては完全に完治させる事は難しいし、更に怪我人を治癒していく度に段々と力が弱まっていく。だから俺達も成るべく傷を負わない様に仲間同士で互いに護り合いながら攻めて行くのがベストだろう」

 新メンバーを含めた別働隊に、リーダーのウェルズがナースエンジェルの能力そして自分達の戦い方を釈明していた。

 そしてウェルズの隣でナースエンジェルも別働隊の面々に笑顔で話した。

 と、その時。別働隊の一人である新人のシュウジがムスッとした顔付きで言い出した。

「ケッ、互いに護りながらって……そんな悠長な事言っていて大丈夫かよ。そもそも、こんな女子供ばかりの組織で本当にまともに戦えるのか不安だぜ」

 そんなシュウジに同じ別働隊の一員である早見青児が告げた。

「おい新入り。お前は入って来たばかりだから解らないのかもしれないが、女子供だからって侮ってちゃいけないぜ。聖龍隊の女共の強さは目を瞠るモンなんだぜ」

「……フン」

 だがシュウジは自分に告げた青児の一言に対しても態度を改めなかった。

 そんなシュウジに星夜とデューイが続けて言う。

「そんなに不安がらなくても大丈夫だぜシュウジのにいちゃん」

「そうだよ。最低限の被害や損傷だけで済ます為には此処に居るみんなとの協力性が必要なんだから」

 しかしシュウジはそんな二人に対しても言い放つ。

「だからよ……女や子供ばかりだから不安なんだよ。第一、どんな事態に陥るか解らないのに護り合いながら攻めて行くって考えは甘ったるいんじゃねえか?」

「………………」

 そんなシュウジの態度と言動により、何処か気まずい空気になってしまう別働隊を目の当りにして内心困惑してしまうナースエンジェル。

 すると、そんなナースエンジェルに彼女の隣に居たウェルズが優しく話しかけた。

「大丈夫だぜ、ナースエンジェル」「う、ウェルズさん……」

 不安そうな表情を浮かべるナースエンジェルに、ウェルズは語り出した。

「あのシュウジって奴は、ちせって女の子の事で色々と思い悩んでいるみたいなんだ。その所為もあって少しばかりやさぐれちまっているみたいでよ。少しずつ周りと打ち解け合ってくれれば良いんだが……」

 若干困った様子で語るウェルズの話を聞いて、ナースエンジェルは居た堪れない心境だった。

 

 そして別働隊は各々、特訓を始めた。

 宇崎星夜とデューイはそれぞれ超能力の向上の為、互いに精神を集中していた。

 そんな二人を見て徐に青児が一言。

「ふぅ、俺もあんな超能力がありゃ楽に戦えるんだけどな」

 すると青児に側にいたウェルズが語る。

「青児無い物ねだりは止めろ。何より能力だけが全てじゃないぜ。俺等には俺等だけの役割が有るんだから、まずはそれをしっかりと務めないと」

「ま、まぁな……」

 ウェルズに指摘され戸惑う青児。

 すると其処へ別働隊や主力メンバーの特訓を見に来ていた修司が歩み寄って来た。

「みんな、やっているな」「お、修司」

 修司に気付き声をかけるウェルズ。その時、同じく修司に気付いて星夜とデューイの二人も駆け寄って来た。

「修司さん」「修司、来たのかい」「ああ、まあな」

 やって来た修司に声をかける星夜とデューイに対し、修司は平然とした態度で返した。

 その際修司は、一人自身の能力に対して集中力を研ぎ澄ませていたナースエンジェルに気付き、彼女に声をかけた。

「ナースエンジェル」「あ、修司さん……」

 修司は集中しているナースエンジェルに対して毅然とした態度で話し出した。

「ナースエンジェル、お前はほぼ戦闘では無く戦闘で怪我した隊士の治癒が主な任務内用だかんな。忘れるんじゃねえぞ」

「は、はい! もちろんです」

 修司の言葉にハッキリと返答するナースエンジェルに、更に修司は態度を変えず話し続けた。

「解っているなら良い、お前の役割はあくまで同士の回復及び治療だ。今までお前が戦ってきたダークジョーカーが相手では無いんだし、無理に戦う必要は無い。お前はお前で自分が果たせるいや果たさなければいけない務めを懸命にこなして行けば良い」

「…………」

 思わず無言になるナースエンジェルに、修司は険しい顔付きで告げた。

「良いかナースエンジェル。本来お前は戦うべき存在では無い、無論それは此処に居る連中全てが同じ事だ。ただ今現在、世界が置かれている現状に置いては皆の強力な戦闘力がどうしても必要であり、俺たち聖龍隊が今後活動していく為にも今回の戦いは避けては通れない道だ。それは解ってくれ」

「……修司さん」

 修司の険しいながらも力強い面持ちに彼の心中を察するナースエンジェル。

 そして修司は最後にナースエンジェルに言った。

「優しいお前が成るべく戦わなくても良い様に、俺がお前や皆の分まで存分に刀を振るう。だからお前はお前で怪我をした同朋の治療だけを考えて行動してくれ……大丈夫だ、お前なら存分に新しい連中の傷だって治せちまうよ」

「………………!」

 普段から何処か思い更けた様な重苦しい雰囲気を醸し出している修司の口から出た、力強くも温かい優しい言葉にナースエンジェルは内心感極まった。

 

 更にそれから時間が経過し。

「キャッ!」「うわ、なんだッ?」「え゛ッ!?」

 突如辺りに響き渡る轟音に驚愕するナースエンジェルに星夜そしてデューイ。

 そしてナースエンジェルを始めとしたその場の面々がふと目を向けてみると、其処には壁に巨大な穴を開けてしまった腕を機械化しているちせが蒼褪めた表情で立ち尽くしていた。

 すると壁の穴から黒焦げのメタルバードが這い出て来て、ちせに何かを言うメタルバード。

 そんな二人を見ていた修司も別働隊の面々が居た所から歩み寄り、しばしメタルバードとちせの二人と何やら会話をし出した。

 更にその際、修司は聖龍使いになってちせと一戦やろうとちせに言うが、相手のちせは困惑してしまっていた。

 

 周りの皆がちせの能力の凄まじさを目の当りにして愕然としている中、ナースエンジェルは愕然としつつもちせの身体の方が気になって仕方が無かった。

 

 

 

[共に癒せる能力(ちから)で]

 

 その後ナースエンジェルは、しばしセーラームーンと会話をしていた。

 ふとセーラームーンが「疲れた」とくたびれた一言を呟いてから徐に変身を解除したのを切っ掛けに、ナースエンジェルも変身を解き普段の森谷りりかの姿に戻った。

 そして通常の姿に戻った二人は再び話を続けた。

「ふぅ~~、別に訓練なんかしなくても、私たち充分強いんだけどなぁ。りりかちゃんもそう思うでしょ?」

 くたびれた様子で話す月野うさぎに対して、りりかは微笑みながら言い返した。

「はは、でも新しい人達とも上手く共闘していく為にも一緒に訓練させたんじゃないでしょうか修司さんは」

「そうかもしんないけどさぁ……もう、修司君も少しはゆとりを持って訓練させてくれても良いのにィ」

 顔をムスッとさせて可愛らしく愚痴るうさぎ。そんな彼女を見て余計に顔の筋肉が緩み微笑んでしまうりりか。

 

 そして二人は自身の能力について語り出した。

「……そう言えば、私とりりかちゃんの能力って、怪我した人を瞬時に治せるから結構似ているよね」

「へっ? そ、そうです、ね……」

 突然口に出すうさぎの言動に若干困惑するりりか。

 確かに自分とセーラームーンの能力は傷付いた人を治癒させる事ができる能力が目立つが、セーラームーンの場合はその能力は単なるオプションの様なモノで基本は戦闘に適した能力者であったからだ。

 そんなセーラームーンこと月野うさぎにりりかは話しかけた。

「で、でも……セーラームーンは私と違って戦闘力高いじゃないですか。私にはうさぎさん達の様な強力な技は使えないし、ウラヌスさん達の様に武器を持って戦うなんてできませんし、ハッキリ言って戦闘には不向きな存在なんですよ」

「…………」

 りりかの発言に耳を傾けながら横目で彼女を見詰めるうさぎ。

 そしてうさぎは静かに、穏やかにりりかに言った。

「…………それで良いのよ」「……え?」

 うさぎの一言に驚き、豆鉄砲を喰らった様な顔付きで固まってしまうりりか。

 そんな動揺を隠しきれないりりかに、うさぎは再び優しく話し出す。

「それで良いのよりりかちゃん。そもそも、戦うのに適してないあなたが私、少し羨ましいわ」

「え……そ、それって……?」

 再びうさぎの一言に動揺してしまうりりか。

 するとうさぎは優しさ溢れる微笑みでりりかの瞳を見詰めながら彼女に話した。

「私達セーラー戦士の前世の事は知っているでしょ? そして未来での出来事も……。私達は強大な力を秘めていた為、幸せとは程遠い結末を迎えてしまった。未来ではその力で多くの人達を導いているみたいだけど、その所為で娘であるちびうさには淋しい想いをさせてしまったし、時には未来世界を破滅させてしまった事も多々あるわ」

「……………………」

「…………結局、戦う為だけの力だけでは、人は最後には滅んでしまうのが現実。本当は戦う力では無く相手を、いいえ、全ての人達を癒しそして温もりを与えるそんな力以上の想いが大事なのよ」

「相手を癒す、想い……」うさぎの言葉に表情を固めて愕然と化すりりか。

 そしてうさぎは続けてりりかに話す。

「私の、いえ、私達セーラー戦士の力や能力だって本当は戦う為のものじゃない。たくさんの人達を幸せに導く為の素敵な力でないと…………りりかちゃんのナースエンジェルの力だってそうでしょ」

「ッ……」

「そう……本当なら戦いなんて私はしたくない、だけど戦わなければたくさんの人達が傷付き倒れてしまう。だからこそ私達が、そして聖龍隊が一つになって一刻も早く争いを終わらせなければいけないのよ……。例え争う事を嫌っていても、何もしなければ何も変われない、それが事実……」

「……」

「そして、戦いを終わらせる為に戦う力で全てを丸く治めると云う矛盾……これもまた強大な力が生み出す悲しい結果なのよ」

「うさぎさん……」

 悲痛なうさぎの話を聞いて居た堪れない心境になるりりか。

 そしてうさぎは口調を一変、明るい口振りに変化させてりりかに言った。

「だからりりかちゃん、戦う以前にまず周りのお友達を、同じ聖龍隊の仲間達を思いやる心を見失わないで。現実派のウラヌスや修司君にまた甘い考えだって言われるかもしれないけど、私達の能力は決して戦いの為なんかじゃ無い。傷付きそして苦しんでいる人達を救い続ける素晴らしい能力なのよ」

「うさぎさん……!」

 うさぎの台詞に衝撃を感じたりりか、そしてうさぎは満面の笑みでりりかに告げた。

「りりかちゃん、私達はお互い多くの人を苦しみから救い出せる素敵な能力(ちから)を持っているんだから、もっと自信を持って。多くの人を救うためにも、お互いの人の心を癒せる能力(ちから)で一緒に頑張って行きましょう!」

「うさぎさん…………はい! 私、頑張ってみます! 私のこの能力で……ナースエンジェルとしての力で多くの人を、そして聖龍隊のみんなを助けながら共に戦いに出ます!」

「うん、頑張ろうね、りりかちゃん!」

 うさぎに言われ、りりかは笑顔で元気良くうさぎに返事をした。そしてうさぎも、そんなりりかの発言を聞いて笑顔で言葉を返すのだった。

 

 そして二人は互いに両手で握手を交わし双方の健闘を祈ったのだった。

 

 

 

[命ある存在なら]

 

 セーラームーンこと月野うさぎに励まされた森谷りりかはその後、あの愛の戦士であるキューティーハニーに自分の能力を見てもらいつつ、彼女と仕合を組んだ。

 ナースエンジェルの能力を観察しつつ、どの様な能力で異次元の魔獣に対して効力が有るがどうか把握しながら彼女と闘うキューティーハニー。

 そして二人が仕合を終えるとナースエンジェルがキューティーハニーに問い掛けて来た。

「は、ハニーさん。私の能力どうでした?」

 訊かれたハニーは神妙な面持ちで答えた。

「…………ごめん、良く解らなかったわ。確かにあなたのナースエンジェルとしての魔力は、あのブロス率いるダーク・ジョーカーの魔物に対しては効果的面ではあったけど異次元からの勢力に対しても同じように有効がどうかまでは把握できなかったわ」

「そ、そうですか……」

 ハニーの話を聞いて悲痛な面持ちで下を俯いてしまうナースエンジェル。

 そんな彼女を見てハニーは優しく声をかける。

「ま、まぁ……少し休みましょう。それからまた考えましょ、りりかちゃん」

「は……はい……」

 ナースエンジェルは悲愴な面持ちのまま、ハニーに言われるがままに腰を下ろして休息を取った。

 そしてしばし無言の一時が過ぎて行き、二人は口から言葉を出さない間々時間だけが経過していく。

 そんな中、意を決してナースエンジェルがキューティーハニーに言葉を掛けた。

「あ、あの……ハニーさん」「ん? なに? りりかちゃん」

 声を掛けられたハニーはキョトンとした顔でナースエンジェルに訊き返した。

 するとナースエンジェルはハニーに思い詰めた様な表情からも、意志の強さが垣間見える眼差しを向けながら訊ねた。

「ハニーさん、私……私は、みんなと違ってほとんど治療系の能力しか秀でてないじゃないですか。そんな私でもハニーさん達の様に戦えないでしょうか……」

「り、りりかちゃん……」

 ナースエンジェルの発言に戸惑うキューティーハニー。

 そしてハニーは、そんな複雑な心中のナースエンジェルの心情を察してか、彼女に優しく話しかけた。

「……りりかちゃん、あなたがそんな心配しなくても良いのよ」

「え?」

 キューティーハニーの一言に軽く驚くナースエンジェル。ハニーはナースエンジェルに話し続けた。

「あなたはあなた、ナースエンジェルの役目を、そう傷付いた人々を癒してあげていれば、それで良いのよ」

「………………」

 ハニーの言葉に無言になるナースエンジェル。更にハニーは悲愴な表情を浮かべて話し続ける。

「あなたの、ナースエンジェルの使命は戦う事では無い。傷付き苦しむ人々の傷を、癒しそして治療してあげる事。そうじゃなかった?」

「…………」

「あなたは私達と違い、本来は戦う為では無い、傷付きそして苦しむ人々を救ってあげるのが使命じゃなかった。私はそんなアナタに、ナースエンジェルに戦って欲しくは無いわ」

「そ、そんな……ハニーさん、でも……」

 ハニーの言葉に戸惑い、何とか言葉を返そうとするナースエンジェルであったが、ハニーは不意に悲愴な面立ちから一変、微笑みを浮かべてナースエンジェルに告げた。

「私は元々、人間ですらなかった。だけどアナタや他のみんなは違う……産まれた時から人であった、そして人として大事な家族や親友が側にいた。そんなアナタ達が死ぬ事は、私はとても居た堪れない心境よ。だから私は今でもこうして聖龍隊の一員として此処に在籍しているわ。人で無い私が人を護るなんて可笑しいかも知れないけど、私はそれでも掛け替えのない人の命や想いを懸命に護り抜きたいのよ。無論、それは聖龍隊のみんな、そうりりかちゃんも同じよ」

「そ、そんな……! 可笑しいだなんて……」

 ハニーの発した言葉に衝撃を受けるナースエンジェル。

 そして最後に、ハニーはナースエンジェルに心痛ながらも真剣な心境で語った。

「りりかちゃん、あなたは無理に戦わなくても大丈夫よ。あなたは自分に合った役割を懸命にこなし、そして戦っていかなきゃ。前にも修司君が言っていたでしょ「仲間にしかできない事を仲間に任せ、仲間が出来ない事を自分がやる。それが本当の協力性である」と。だからりりかちゃんは無理やり戦いに参加しなくても良いのよ。戦いは戦闘慣れしている私達に任せて、あなたはナースエンジェルとして聖龍隊の誰よりも高い治癒能力で傷付いた仲間を治療してあげるのが適任なんだから、その事を忘れないでしっかり頑張ってね」

「…………」

「りりかちゃん、ナースエンジェルとして私や他のみんなが傷付いたら、その時は宜しくね。頼りにしてるわよ」

「はっ、ハニーさん……!」

 キューティーハニーの発した「頼りにしている」の言葉に、ナースエンジェルは感銘を受けて内心非常に嬉しく思った。

 

 ナースエンジェルとキューティーハニー、彼女達は出生が極端に違うものの同じ命ある尊い存在である事には変わりない。

 

 ナースエンジェルは自分が最も適している治癒能力、そう白衣の天女としての使命はあくまで戦う事では無く傷ついた者を助けてあげる事で有ると再認識し、ハニーの助言を深く胸に受け入れたのだった。

 

 

 

[任せて]

 

 その後、ナースエンジェルこと森谷りりかは同い年で有る木之本桜(きのもとさくら)と対話をしていた。

 二人はそれぞれの使用できる能力について語り合っていた。

「はぁ~~……」

「ど、どうしたのさくらちゃん? そんな深い溜息なんか衝いて……」

 突如溜息を吐くさくらに、りりかが訳を訊ねると、さくらはりりかに対して語り始めた。

「はう~~、別に……ただ、りりかちゃんの能力って良いなって思って……」

「えっ、私の能力……?」

 さくらの発言に不思議がるりりか、そんな彼女にさくらは話した。

「だって、私のカードには一枚も怪我とかを回復させる事が可能なカードが一枚も無いんだもの。私だってりりかちゃんの様に傷ついた人を助けてあげたいのに……」

 残念そうな面持ちでりりかに話すさくら。

 確かにクロウカード現在のさくらカードには一枚も怪我などを回復させる事が出来るカードのみが無いのであった。

 カードには強力な攻撃系のカードやトリッキーな効力、更には元の持ち主であるクロウ・リードの性格から反映された為に奇妙奇天烈(きみょうきてれつ)なカードも有るのだが、回復系のカードは一枚も無いのが現状であった。

「あ~~あ、私もりりかちゃんのナースエンジェルの様に体の傷とかダメージを回復させる事が出来ればなぁ……」

 残念そうな表情を浮かべるさくらの話を聞いて、りりかはさくらに告げた。

「そ、そんな……さくらちゃんの方が凄いと思うけど。聖龍隊でも多種多様な技や魔法が使えるのは、さくらちゃんのカードだけじゃ無い。私は逆に回復系の技しかほとんど使えないから、実際戦闘では余り活躍できないし……」

 りりかが言うとさくらがすかさず話し返した。

「何を言っているの! りりかちゃんの回復技はとっても凄いじゃない。どんな怪我だって瞬時に回復させられるし、普通じゃないウイルスや病気だって治せちゃう。あのセーラームーンやキューティーハニーさん達だって其処まで突出した治癒能力は無いんだよ」

 だがしかし、りりかも不安そうな面持ちでさくらに言葉を返した。

「だ、だけど……いざ戦いの時になると、ほとんど聖龍使いや他のみんなに任せっきりの事が多いし、もし敵の群れに遭遇したとき私みんなの足手まといに成らないかって心配で……」

 そんなりりかの言葉を聞いたさくらは優しい言葉で話し掛ける。

「……大丈夫だよ、りりかちゃん」「さ、さくらちゃん」

「何があっても私や他のみんなでりりかちゃんを助けるから。その代わり、りりかちゃんはナースエンジェルの飛び抜けた治癒能力で怪我した私や聖龍隊のみんなを治してあげて」

「さくらちゃん……!」

 さくらの優しさ溢れる台詞を聞いた森谷りりかは表情を一変し、さくらに笑顔で話し返した。

「……うん、解った。私は私で自分が出来る事を、他の聖龍隊のみんなよりも突出したこの能力でみんなを助けて行くわ。それが私の、いいえ、ナースエンジェルとしての戦い方! 私は私なりに、みんなの力に成りながら戦いに備えるわ!」

「りりかちゃん……うん、それなら私は少しでもカードが使用できるように自分の魔力を向上させて行くね」

「頑張ろう、さくらちゃん!」「うん!」

 

 二人の少女は笑顔で互いを励まし合った。

 

 

 

 

[自分が出来得る事を]

 

 りりかはその後、ナースエンジェルとしての自分の能力の向上を目指していた。

 だがどうすれば能力を向上させられるのか考えていると聖龍隊の総長である修司から助言を貰い受けたのだった。

 

 能力に限らず全ての物事において、普段から鍛えたり使用して居れば自然と向上できるものだ、と。

 

 修司から言われたりりかは、すぐさまナースエンジェルとして戦いに備えて仕合をし傷付き疲労しきっている仲間の所に赴き、仲間達の怪我や体力を回復させて行った。

 

 そして今、ナースエンジェルは花丘イサミ/月影トシ/雪見ソウシの「しんせん組」の三人の所に赴き、仕合で消耗した体力や傷を回復させてあげていた。

「ふぅ~~助かっちゃった。ありがとうナースエンジェル」

「どう致しましてイサミちゃん」

 微笑みながら自分達の傷や体力を回復させてくれたナースエンジェルに礼を言うイサミに、ナースエンジェルも微笑み返した。

「ふぅ~~、しっかし、他のみんなとの共闘仕合は流石に骨が折れるぜ」

「同感、あっちの方が格段に戦闘力だって有るんだし、本当に桁違いの強さだもんね」

「ふふ、それでも二人とも良く頑張っていたわよ」

 疲れ切った面持ちで呟くトシとソウシ、そんな二人にナースエンジェルは称賛の言葉を優しく掛けてあげた。すると二人は思わず顔を緩めて微笑みを浮かべた。

 ナースエンジェルはナースバトンから光を放出させながらイサミに話しかける。

「それにしても……イサミちゃん達も良く頑張っているわね。ハニーさんやセーラー戦士のみんな、そしてバーンズや修司さんに対しても果敢に挑んで行って」

 これに対しイサミは微笑みながら話し返した。

「まあね、少しでも戦いに備えて鍛えておかないと、それこそみんなの足手まといになる前に敵にやられちゃうもん。ほんの少しでも戦力の足しに成れるよう、聖龍隊のみんなと仕合って体を鍛えてないと」

「大変ねぇイサミちゃん達も……」

 イサミ達の気苦労を労わる言葉を口にすると、ナースエンジェルにイサミは笑顔で言った。

「それはお互い様よ、ナースエンジェル。貴女は貴女で傷付いた仲間の治療に専念して、私達の様な戦闘に向いた隊士が代わりに戦って行けばそれで良いのよ」

「イサミちゃん……」イサミの言葉に感銘を受けるナースエンジェル。

 するとイサミに続き、トシとソウシの二人も笑顔でナースエンジェルに話しかける。

「そうだぜ、りりか」

「ああ、りりかちゃんはりりかちゃんで自分が出来る事を最大限に発揮すればそれで良いんだよ」

「と、トシ君、ソウシ君……」

 二人の言葉にも心静かに喜びを感じるナースエンジェル。

 そして最後にイサミが満面の笑みでナースエンジェルに告げた。

「りりかちゃん、戦闘は私達に任せて。私達、戦いの時まで今以上に戦えるように特訓しているから、りりかちゃんはナースエンジェルの力を最大限に生かしながら戦いを乗り越えて。私達も成るべく怪我はもちろん、死んじゃう様な危険な事は避けて行くから、りりかちゃんは怪我してしまった私達や他のみんなを治していって」

「イサミちゃん……」

 イサミの想いやり溢れる台詞を聞き、ナースエンジェルは意を決したかの如くイサミに告げた。

「ええ、私は私で自分が出来得る事を懸命にするわ! だからイサミちゃん達も思う存分戦ってね、どんな怪我も私がスグに治してあげるから。あ、だけど無茶だけはしないでね」

「て、思う存分戦えって言いながら無茶はするなって、それこそ無茶ぶりだぜ。まるで修司さんみたいだよ」

「はは、修司さんみたいか……それは言えてる、はは」

 ナースエンジェルの台詞に思わず苦笑するトシに彼の意見に賛同して微笑してしまうソウシであった。

「はは、確かに、はは……」

「は、ははは……」

 そんなトシとソウシに釣られてイサミとナースエンジェル本人も思わず笑みが零れた。

 

 

 

[自分を信じて]

 

 しんせん組の三人に続き、ナースエンジェルは次にコレクターズの春日結(かすがゆい)、如月春菜(きさらぎはるな)、そして篠崎愛(しのざきあい)の三人の所に出向き調整中のコレクトスーツのテストを終えて傷付いた体を治療してあげていた。

「うっ、イタタタ……」

「ゆ、結ちゃん大丈夫?」

「まだスーツは完璧じゃないんだし、あんまり無理はしちゃいけないわよ」

 テストの最中、怪我をした個所をナースエンジェルのバトンから放出される光で治療を受けながらも痛みで顔を歪ませる春日結。そんな彼女に労わりの言葉を掛けてあげる同じコレクターズの春菜と愛。

 だが、そんな二人に結は笑顔で強がってみせる。

「へ、平気よこれくらい……ツッ」

「あ、まだ傷が完全に治っていません、無理はしないで下さい」

 強がるも痛みで再び顔を歪ませる結に、ナースエンジェルがすかさず声を掛ける。

 

 そしてコレクターズの三人はナースエンジェルの治療を受け切り、そして先ほどまで体の個所に有った傷の部分を触りながら呆気に取られた表情でナースエンジェルに話しかける。

「す……凄い……」「傷口が完全に塞がって、いえ……」

「か、完全に、消えちゃってる……」

 春菜、愛、結は自分達の傷を物の見事に完治させたナースエンジェルの能力に目を輝かせながら驚いた。

 そんな三人にナースエンジェルは優しく微笑みながら声を掛ける。

「もう大丈夫ですか? まだ痛い所は有りませんか?」

「あ、はい、もう大丈夫……です……」

 笑顔で訊かれた愛は咄嗟の事で思わず戸惑ってしまったが何とかナースエンジェルに返事をした。

 そして、三人の傷を回復させたナースエンジェルは微笑みながら三人に告げた。

「それでは、私はこれで。また何かあったら呼んでください。私がスグに治療いたしますので」

 ナースエンジェルは三人に告げると、そのまま場を去ろうとした。

 

 と、その時。

「あ、待って……!」「ん? まだ何か?」

 立ち去ろうとするナースエンジェルに突然コレクターズの一人、春日結がナースエンジェルを呼び止めた。

 ナースエンジェルが不思議そうに訊ねると、結は心痛な面持ちで話し掛けて来た。

「あ、あの……あなた確か、ナースエンジェル、ってスーパーヒロインだったわよね」

「え……あ、はい、そうですけど……」

 ナースエンジェルが答えると結は沈痛な表情で言った。

「あ、あの、ナースエンジェル……実は私達、あなたに少し訊きたい事が有るの……」

「な、何ですか……?」

 突然、結に訊ねられ戸惑うナースエンジェル。

 すると春菜と愛も沈痛な面持ちで口を開いた。

「じ、実は私達……」「このまま聖龍隊に居ても良いのかな……て……」

「え……そ、それはどういう……?」

 二人の言葉に困惑しどうようするナースエンジェル。

 そんな彼女に結が事情を伝えた。

「じ、実は私達ね……このまま聖龍隊に居ても大して役に立たないんじゃないかなって、そう思え初めて……」

「…………」

「私達、今ウッズさんや犬養博士が調整をしてくれているスーツが無ければ何もできないし、未だに現実空間でも上手く戦う事が出来ない……例えスーツが完成しても足手まといに成るだけかもしれないし……私達、此処に居る意味あるのかなって……」

 沈痛な面持ちでナースエンジェルに語る春日結。そして彼女同様、沈痛な表情を浮かべる如月春菜に篠崎愛。

 ナースエンジェルは三人の居た堪れない心境を感じ取っていた。

「……大丈夫ですよ」

「へっ?」「……!」「……」

 煩悶な心境の三人にナースエンジェルは満面の笑みをで言葉を発した。三人はナースエンジェルの言葉に不意を衝かれたかの如く反応する。

 そしてナースエンジェルはそのまま三人に笑顔で話した。

「大丈夫ですよ皆さん、貴女達にだって何かできる筈です。だからこそ聖龍隊(ここ)に居るんでしょ?」

「だ、だけど、ナースエンジェル……」

 笑顔のナースエンジェルに悲痛な面持ちで言い返そうとする愛、だがナースエンジェルは表情を変えずに言い放った。

「大丈夫ですって。今はまず、ウッズさんや犬養博士って言う学者さん達にスーツの事は任せて置いて、お姉さん達は今まで通り三人で力を合わせて協力していけば絶対みんなの力に成れる筈ですよ!」

「で、でも……」

 不安な気持ちで一杯の春菜、そんな彼女にもナースエンジェルは語った。

「私達だってアイテムや特別な道具が無ければ変身だってできないし戦う事もできないんです。時には変身する為のアイテムを敵に奪われて変身できず、苦しい状況に追い詰められた事も多々有ります。でも、そんな時助けてくれたのがいつだって聖龍隊の掛け替えのない仲間達なんです。聖龍隊では協力して戦って行く事は有りますけど、一人だけで戦う事はありません!」

「だ、だけどナースエンジェル。私達……」

 心揺らぐ結、彼女達にナースエンジェルはさらに拍車をかける。

「それに貴女達だけじゃ有りません、聖龍隊のみんなは誰だって最初は戦闘に慣れていた訳では無いんです。みんな何かの理由や事情で、ある日突然戦わなければいけなくなった人達ばかりなんですよ。それに比べたらお姉さん達はまだ良い方ですよ。みんな最初は一人だけで戦いに慣れて行かなければいけないのに、お姉さん達は聖龍隊って組織でちゃんと戦いのサポートを受けられるなんて優遇されている方ですよ」

「「「…………」」」

 遂に何も言えなくなってしまう結達三人。

 そして最後に、ナースエンジェルは結たち三人に笑顔で述べた。

「そんな心配しなくても大丈夫です。何かあったら他の人達で協力し合いながら助けますし、私だってお姉さん達が怪我したらすぐに治療が出来る様万全の態勢を整えています。そんなに不安にならなくても大丈夫ですよ」

「「「……」」」

「……何より、あの修司さんが招集したって事は何かしらの可能性が有るから何です。修司さん、そう言う眼力は人一倍は有るんです。彼がお姉さん達を呼んだのは、修司さんが本心でお姉さん達コレクターズの力が必要だと認識したからこそ聖龍隊(ここ)の一員として認めている訳なんです。もっと自信を持って。もっと、自分を信じて見てください」

 

 ナースエンジェルの口から伝え出る励ましの言葉を聞き、コレクターズの三人は奥底から歓喜した。

 

 

 

[少年の素性と二つの魔法]

 

 別の場所、別の時刻。

 其処では極度の仕合で疲労が溜まり切ってしまっている魔法騎士(マジックナイト)の三人、獅堂光(しどうひかる)龍咲海(りゅうざきうみ)鳳凰寺風(ほうおうじふう)の三人の怪我と体力をナースエンジェルは治療してあげながら、魔法騎士の三人と交流を兼ねて談話していた。

 

「そうですか……セフィーロでは色々あったんですね、光さん達は……」

「ま、まぁね……」

「今思えば、本当に色々な事が有りましたわ……」

「色んな人の想いが複雑に絡み合って、それで巻き起こる動乱の数々……私達はそんな中、必死に戦いそして多くの人達を護ってきたの。……無論、犠牲も出てしまったのが悲しい所だけど……」

 魔法騎士の三人から異世界セフィーロで体験してきた出来事を聞いて、ナースエンジェルは悲痛な心境であった。

 と、その時。唐突に鳳凰寺風がナースエンジェルに話し掛ける。

「あ、あの……ナースエンジェル、少し御聞きしたい事が……」

「ん? 何でしょうか、風さん」

 訊ねられたナースエンジェルは真顔で風に訊き返すと、風も同じく真顔で訊ねた。

「貴女……あの修司さんの事、どう思いますか?」

「え、修司さんって……」

「あ、もちろん新しいメンバーであるシュウジさんでは無く総長の方の修司さんですよ。彼は普段、どんな子なんですか?」

「どんな子って……ま、まあ、いつも険しい強面の顔で、あんまり笑わない人ですけど、誰よりも他人を思いやる心は持っています。特に私達、聖龍隊の面々が危ない場面に遭っていると一目散に駆け付けては眼前の敵に真っ向からぶつかり合って私達を護ってくれます。あ、余り自分の本心を他人に打ち明けない面もありますけど……」

「そ、そう……」

 ナースエンジェルから修司の事を訊いた風は思い詰めた面持ちで考え込んでしまった。

「……ね、ねぇ、風」「風ちゃん、どうしたの……?」

 考え込む風を見て気になった海と光が訊ねると、風は二人に話した。

「い、いえね……何だか私(わたくし)、あの修司さんを見ていると、とても居た堪れない心境を感じてしまいまして……」

「え?」「そ、それってどういう事? 風ちゃん」

「な、何だか修司さん、まるで自分の命を投げ捨てているみたいに感じてしまって……そう自分の命なんて、どうとでも良いと……」

 風の口から出た語りに愕然と静かに驚いてしまう光と海、そしてナースエンジェル。

 聖龍隊の総長であり、魔法騎士の三人を始め多くの能力者を新たに招集した小田原修司が、まるで自分の命を投げ捨てている、簡単に言えば自暴自棄になっている様に見えると云うのだ。

 これを聞いたナースエンジェルは悲痛な表情を浮かべて話した。

「確かに……言われてみると修司さん、何処かしら自分の事を投げ捨てている様にも見えちゃう……」

 悲痛な面持ちのナースエンジェルに、風に続き今度は海が訊ねて来た。

「ね、ねぇナースエンジェル。修司君って一体何者なの?」

「えっ、何者って……!?」

 海の問いに動揺し戸惑うナースエンジェル、彼女に海は話し出した。

「じ、実はね私……ボスコワールドから帰って来た後に色々と町の市長である修司君について可能な限り調べてみたの。だけど彼がアニメタウンに赴任する前は何処の町で過して来たのか、またどうして小学生の彼が町の市長に就任できたのか、まったく解らなかったの。彼って一体全体何者なの?」

「あ…………」

 海に訊ねられるナースエンジェルであったが、彼女は何も答える事が出来なかった。

 何故なら彼女自身も修司の素性については全く知らないのであった。

 海の質問に考え込み、しばし無言に成ってしまうナースエンジェル。

 そしてその場に重苦しい空気が充満していった……その時。

「大丈夫だよ海ちゃん」「え」「ひ、光さん?」「……!」

 思い更けてしまっている海に風、そしてナースエンジェルに光が笑顔で声を掛けて来たのだ。

 三人に告げる光は更に笑顔で話し出した。

「大丈夫だって。確かに修司君って何処か謎めいているし感情が不安定な面もあるよ。だけど懸命に弱い人達を護り続けたいって云う強い願いは本物だよ。私、彼とはまだボスコワールドでの時と聖龍隊に勧誘されてからしか一緒の時は無かったけど、あの子が真剣に世界を護りたい、大勢の人達を助けてあげたいって思い願っているのはしっかり伝わるよ」

「光……」「光さん……」「…………」

 光の一途な台詞に心から痛感する海と風、そしてナースエンジェル。

 すると光に続き、海と風も明るい顔で言う。

「――そうね、修司君についてはまだ色々と解らない所も有るけど、聖龍隊のみんなを見ていると彼が如何に信頼されているか解るし、一旦この話題は止めましょう」

「そうですわ。何より、これから共に戦って行く仲間でも有るんですし、詳しい事は戦いが終わってから本人に直接訊いてみましょう」

 そしてナースエンジェルも三人同様に明るい表情を浮かべて魔法騎士の三人に言った。

「そうですよ。私も正直、修司さんについてまだ知らない事が多々有りますけど、今はまず異次元からの脅威と立ち向かう事だけを考えていましょう。修司さんに訊ねるのは、その後でもできます」

 

 最後にナースエンジェルは、魔法騎士の三人に笑顔で告げた。

「光さん、海さん、風さん。私達使える魔法は根本的に違いますけど、それぞれに合ったやり方で聖龍隊のみんなを助け合いましょう! あの修司さんだって何時もそうしてくれていました。だから今度は私達が、彼や他の聖龍隊のみんなと連携して上手く激戦を乗り越えて行きましょう!」

 三人もナースエンジェルの言葉に同意し、言葉を返した。

「うん、そうね」「私達、もう三人だけで戦う訳ではないのですしね」

「うんうん、これからは聖龍隊でもっとも~~っと沢山の人達と一緒に頑張って行けるんだもんね!」

 海に風、そして元気良く笑顔で発言する光。三人はナースエンジェルに満面の明るい顔を向けて告げるのだった。

 

 彼女達は全く違う魔法を使う存在。

 しかし、そんな垣根を越えて共にこれからの激戦を協力し合いながら乗り越えて行こうと、互いに強く団結するのだった。

 

 

 

[治すと云う意味]

 

 ナースエンジェルは更に最終兵器であるちせの所にも出向き、彼女の身体の各所から機械化と同時に出血している部分の治療を施した。

 更に気落ちし悩みこんでいるちせを元気付けようと彼女を励まし続けるナースエンジェル。

 

 そしてしばし、ちせを励まし続けたナースエンジェルは一通り彼女と会話を続けて、その場から立ち去ったのであった。

 

 その道中、ナースエンジェルがちせの自室から出てしばし歩いていると二人の軍服姿の男性と遭遇した。

「あ、こんにちわ」

 男性二人にナースエンジェルは明るく挨拶をする。

 だが軍服の男二人は自分達に挨拶をするナースエンジェルに対し何も言わず冷たい眼差しで彼女を睨みつけた。

「ッ……」

 睨まれたナースエンジェルは一瞬背筋を震わせてしまう。

 すると二人の内の一人が険しい顔付きでナースエンジェルに歩み寄り話し掛けて来た。

「君か、聖龍隊での治療を主な任務とする看護師は」

「え……は、はい。そうです……」

 険しい強面の顔で睨まれながら訊ねられたナースエンジェルは怯みながらも答えた。

 そんな弱気な表情を見せるナースエンジェルに男は言った。

「フッ、話は聞いているよ。君は聖龍隊でも最も優れた治癒能力を持っているそうだね」

「え、あ、はい。一応……」

 男の言葉に動揺しながらも答えるナースエンジェル。すると男は、まるで見下すような眼つきでナースエンジェルを睨みながら吐いた。

「ふ、精々使い捨ての聖龍隊の連中を死ぬまで回復させてやってくれ。どんなに重傷を負おうと君が瞬時に回復させてくれるから、戦力は激減せず攻め続ける事ができるのだからな」

「え……!!」

 男の言葉に驚愕するナースエンジェル、更に男は吐き続けた。

「聖龍隊のバケモノ共に限らず、兵士と云うのは傷付いたら戦力としては役に立たないグズだからな。だが君の治癒能力さえあれば、如何に重傷を負って戦力にならない兵士もスグに戦わせられる様に成るのだから素晴らしいよ。君は戦えない兵士を死ぬまで戦わす事が出来る聖龍隊でも別格の存在だ。まぁ、あのちせの様に危険極まりない輩も治療してしまうのはどうかと思うのだが……あの異次元からの脅威に立ち向かうには、ちせを始めとした聖龍隊の様な悍ましいバケモノ共を戦場に投入するしか策は無いのだからな、致し方ない」

「………………っ」

 男の口から出る言葉に、次第に苛立ちが募り始めるナースエンジェル。

 だが男は容赦なくナースエンジェルに淡々と吐き捨てる。

「君も聖龍隊の連中がしっかり異次元からの脅威を完全に根絶やし出来るまで戦わせられる様に、怪我した者は全て回復させ無理やりにでも戦う様にしてくれよな。まぁ、私としては聖龍隊の様な危険な連中と異次元からの怪物、二つのバケモノのグループが同士打ちしてくれる事を祈っているがね」

 男の発言に苛立ちが頂点に上って怒りの感情を露わにしてしまいそうになるナースエンジェル。

 だが彼女はそんな不快な感情を必死に押し殺した。

 そして男は最後に表情を少し明るくさせてナースエンジェルに言ったのだ。

「あぁ、でも君だけは軍への入隊を進めるよ。君の様に瞬時に怪我を回復してくれる看護師が居てくれれば、動けなくなった兵士をすぐさま戦場に戻す事が出来るのだからな。いや君は重宝出来るよ、うん」

 男はナースエンジェルに一通り好き放題話し終わると、もう一人の男を引き連れてその場を立ち去った。

「さて、まだまだ聖龍隊の基地施設を見て回らなければな」

「はい、ミナモト長官」

「………………」

 二人が立ち去った後、ナースエンジェルは暗い顔立ちで下を俯き立ち尽くしていた。

 

 

 ナースエンジェルには、どんな怪我をも瞬時に治す事が出来る白衣の天女の聖なる力が有る。

 だがそれは軍人や戦士にとって怪我が治れば再び戦場に出向き死と直面しなければならない事でもある。

 

 ナースエンジェルは酷く暗然となった。

 例え怪我を治してあげても、すぐに戦いに出向き再び傷付きそしてまた回復させる。

 こうして人々は争い事を止めずに延々と争い続けて行く。

 

 それは聖龍隊でも同じであった。

 どんなに大切な仲間の傷を回復させてあげても、怪我が治れば皆は再び戦場を駆け巡る事と成る。

 

 自分が怪我を治すのは戦わせる為では無い、精一杯生き続けて欲しいが為に怪我を治し続けるのである。

 ナースエンジェルは己の中で苦悶しながら自問自答を続けた。

 戦えば必ず人は怪我をしてしまう。そしてその怪我を自分が治してあげても、治ればスグに再び戦場にて戦う事と成ってしまう。

 

 ナースエンジェルは自分の能力は、返って争い事を続けさせてしまう輪廻を生み出してしまっているのではないかと思い悩みこんでしまうのであった。

 

 

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