今回はコレクターズの結、春菜、愛からの視点です。
[胸中に溜まる不安]
聖龍隊の基地施設、その一室では。
テレビに映し出される聖龍隊総長 聖龍使いことアニメタウンの市長小田原修司の報道陣の前での公言に、新しい聖龍隊のメンバーであるコレクターズの春日結(かすがゆい)/如月春菜(きさらぎはるな)/篠崎愛(しのざきあい)の三人。
彼女達は暗鬱な表情で部屋のテーブルに腰を据えていたのだが、しばし修司のテレビ報道を閲覧していると愛が無言のまま黙ってテレビの電源を切断して画面を消した。
そしてテレビを消した愛が再び自分の座っていた席に着いたその時、結が重い口を開いて二人に話しかけた。
「ね、ねぇ……」
「……」「な、なぁに? 結ちゃん……」
結に話しかけられた愛と春菜は結に顔を向け、春菜が結に訊き返した。
すると結は不安な心境の中、二人に言った。
「は、春菜ちゃんも愛ちゃんも、不安なのは凄く良く解るよ、むしろ私だってそれは同じだよ……。だ、だけど、あの修司君だって言っているじゃない。このまま手を拱いていたら本当に世界が終わるだけだって。確かに、突然私達にも聖龍隊に加盟して一緒に戦えって言われて凄く戸惑っているし困っちゃうわよ。で、でも私は……」
「「…………」」
結の話に耳を傾ける春菜と愛、そして一方の結は不安交じりな険しい真顔で二人に話し続けた。
「わ、私さ……実を言うと少し、少しね……聖龍隊に入って、周りの人達と一緒にやって行こうかなって。そう、思ってるんだ……」
「なっ、何を言っているの結!」「結ちゃんそれ本気なの?」
結の発言に驚愕してしまう愛と春菜。だが結は、そんな驚く二人を目の当りにしながらも話を続ける。
「た、確かにさ。私達は今ままでコムネットでしか……電脳空間でしか戦って来られなかった。それを今回のプロジェクトでは、ウッズさんが犬養博士と一緒になって現実空間でも戦える全く新しいコレクトスーツを開発してくれるって。修司君は其処まで私達の力を認めてくれている訳だし、同時に必要としてくれているんだよ! 私はそんな修司君の期待に応えたい、そして聖龍隊のみんなと一緒に世界中の人達の幸せを護りたい!」
そして「春菜ちゃん、愛ちゃん! またコムネット同様、私達の力を一つにして一緒に戦って、お願い!」と結は力強い顔付きで二人にお願いする。
結の決意を聞き、しばし考え込んでしまう春菜と愛。
しかし二人はスグに笑顔で結に答えた。
「……ふぅ、解ったわ結、やれるだけやってみましょう」
「あ、愛ちゃん……!」
愛の返答に感極まる結。更に、愛に続き春菜も微笑みながら可愛らしく結に答えた。
「そうですよね。何より、もう聖龍隊の計画そのものが国連に認可されてしまっていますし、今更後戻りする事も難しい訳ですし、とことんやっちゃいましょっ」
「は、春菜ちゃん……うん、頑張ろう! 現実の世界でも、そして聖龍隊の一員としても、また三人で力を合わせて乗り越えていきましょう!」
「「ええ!」」
春菜の返答に対して、満面の笑顔で歓喜する結。そんな結の意気込みに春菜と愛も力強く返事をする。
そしてコレクターズの三人は、コムネット空間のみに非ず、今度は現実の世界でも三人力を合わせて戦いを乗り越え、それと同時に周りの聖龍隊とも精一杯協力し合っていこうと誓うのだった。
[chapter:認められるには……]
その後、コレクターズの三人は聖龍隊の新メンバーを交えての訓練を行った。
三人は試作段階である現実空間用のコレクトスーツを着用して訓練に参入したのだが、思った以上にスーツの調子が上がらず、返って周りのメンバー達に迷惑を掛けてしまった。
そして合同訓練が終わり、スーツを犬養博士とウッズに託して三人は一息入れていた。
「はぁ~~、もう全然ダメだよぉ……」
合同訓練で失敗続きの結は、深々と溜息を衝く。
「結ちゃん元気出して」
そんな気落ちする結に、春菜が優しく話し掛ける。
「まぁ、まだまだ私達のスーツは調整が足りなかっただけだし、そんなに落ち込む事無いわよ結」
腕を組みながら不機嫌そうな面構えで結に言う愛。彼女は先ほどの合同訓練でセーラーウラヌスとネプチューンの二人に言われた発言に立腹していた。
そんな三人は、犬養博士とウッズが共同でスーツを調整している聖龍隊基地施設の研究室にそのまま足を運んだ。
すると部屋の中から、明らかに犬養博士とウッズ以外の人物の声が聞こえてきたのであった。
「あ、あれ? 誰か居るみたい……」
「ほんと、誰でしょうか?」
結と春菜が謎の声に気が行っていると、一緒に居た愛がハッと気付いた様に口を開いた。
「こ、この声…………そ、そうよっ、この声は――ネプチューン、セーラーネプチューンの声よ……!」
声の主がネプチューンで有ると気付いた愛に結/春菜の三人は、部屋の中から聞こえてくるネプチューンの声に耳を傾けた。
すると聞こえてきたのは、自分達コレクターズに対する不満と苛立ちの言葉であった。
このネプチューンの語りを赤裸々に聞いた愛は思わず研究室の電子ドアを開けて、ネプチューンに言い返した。
「貴女、言ってくれるわね」
険しい顔付きで部屋に入りながらネプチューンに言う愛。彼女の後からは結と春菜も慌てて入室する。
三人が部屋に入って最初に目に入ったのは、変身を解除しているネプチューンこと海王みちると、彼女に話し掛けられていた犬養博士とウッズの三人であった。
部屋に入るなり、愛は自分達コレクターズについての不満を吐き続けていた海王みちるに反論した。
しかしみちるは、そんな反論する愛に対して態度を変えずコレクターズの不甲斐無さを言い続ける。
遂には感情が昂る愛を、結と春菜の二人が駆け寄り宥める始末。
そんな三人にみちるは、生と死の境地は決してゲーム等の遊びでは感じる事が出来ないものと告げて部屋を出て行った。
海王みちるからの指摘を受けて、コレクターズの三人は悲痛な想いに駆り立てられ黙り込んでしまった。
と、その場の空気が重くなったその時「……み、皆さん」ウッズが口を開いた。
「皆さん、御気を確かに……」
しかしみちるに指摘を受けた愛は険しい面持ちでウッズに言い返した。
「ウッズさん……私……私達は……!」
実際、現実の世界では戦った事の無い少女達は、心の中では色々と言われても仕方ないと自覚はしていた。
だが今まで自分達が懸命に戦ってきた事柄を「遊び感覚」と言われてしまった事に、凄く切なくそして悲痛な想いに駆られてしまう。
「皆さん……」
悲痛な面持ちに成ってしまう三人を見て、苦心の心境に駆られてしまうウッズ。
そしてウッズは三人に、まるで父親の様な優しい口調で微笑みを向けながら話し出した。
「皆さん……大丈夫ですよ。みちるさんだって、いや……他のセーラー戦士の皆さんや聖龍隊の人達も、三人が遊び感覚で今まで戦って来たんじゃないって解ってくれますって」
「う、ウッズさん……」
ウッズの優しい言葉に、結は目に涙を溜めて顔を向けた。
そしてウッズは三人に優しい温厚な表情で話し続けた。
「あのみちるさんは……いいえ、あのセーラーネプチューンとそのパートナーであるウラヌスの二人は、ちょっと他のセーラー戦士達よりも複雑なんですよ」
「ふ、複雑……?」
ウッズの話に悲痛な表情で困惑する結、ウッズはそんな愛を始めとしたコレクターズに語り始めた。
「はい、話すと長くなるのですが……あの二人は当初、セーラームーン率いる他のセーラー戦士達はもちろん私たち聖龍隊とも、戦士としての考えの行き違いでそれぞれ別々の行動を取っていたんです。更に聖龍隊の目の前に現れては「考えが甘い」とか「躊躇いや悩みは戦意を損なう」など、軽く挑発染みた発言も多々言ってしまって、余計双方の仲が悪かった時期が有ったんです」
「あ、あの二人……ウラヌスとネプチューンは最初、聖龍隊はもちろん同じセーラー戦士達とも、始めは仲が悪かったんですか?」
話を聞いて驚いてしまう愛に、ウッズは優しい微笑みで答える。
「ええ、それはもう……でもね、そんなお二人も次第にセーラームーンやミラーガール、聖龍隊の女の子達と触れ合っている内に、お互いに解り合って行ける様になっていけたんです。時間は掛かりましたが、二人のセーラー戦士は確実に他のセーラー戦士や聖龍隊と交友を深めていったんです」
「「「………………」」」
ウッズの話に無言で耳を傾ける三人。そしてウッズは再び話し出した。
「皆さん、人との繋がりとはね、簡単には結べないものなんですよ。それぞれの考えは人として違うのは当り前ですし、それ故に意見の行き違いなんて当然です。だけどそれでも、時間を掛けてでも確実に相手との信頼関係を築いて行かなければ組織として成り立てません。だから結さん達も落ち込まず、少しずつで良いから聖龍隊の皆さんと仲良く成って行きましょうっ」
最後にウッズは、ユイ・ハルナ・アイの三人に告げた。
「信頼と言うのは難しいものです。相手との信頼を築くには時間が掛かってしまいますが、逆に信頼が消えてしまうのは一瞬なんです。貴女達も先ずは周りの聖龍隊の皆さんの事を良く理解して、お互いの事を解り合ってから気長に信頼関係をこれから築いて行けば良いんですよ」
にっこりと微笑むウッズの言葉に、三人は心の中で衝撃を受けた。
人から認められるには沢山の努力と時間が必要である。
しかし、逆にその信頼は一瞬で消えてしまうものでもある。
だが、それでも人は解り合えなければいけない生き物。
時間を掛けてでも良い、まずは相手の気持ちを知り、相手を理解する事こそが和解への第一歩なのだ。
コレクターズの三人は、まず自分達を周りに理解して貰うのではなく、此方から相手を理解してから自分達の事を理解して貰おうと心に決めたのだ。
[戦士としての経験]
コレクターズの三人、結と春菜と愛はウッズの提案の元、聖龍隊の各メンバーの内情を知って少しでも互いの理解を深めて行こうと考えた。
一方、現実空間用のコレクトスーツをウッズと犬養博士、更に新スーツの開発に携わってくれる花丘魁(はなおかかい)の三人に更なる改良を施して貰い、その間コレクターズはウッズから手渡されたフロッピーディスクに目を通していた。
ディスクの中には、各聖龍隊員の個々の個人情報や今までの経歴など事細かく詳細が記されていた。
「……ふぅ、何だか色々と有ったのね。聖龍隊の人達も」
PCに映し出された聖龍隊の今までの出来事を閲覧した篠崎愛が憂鬱な表情で言葉を吐く。
「そうですね。テレビでは決して公開される事の無い経緯なだけに、何だか忍びない心情ですわ」
愛同様に聖龍隊の情報を見た如月春菜も悲壮感が漂う面持ちで言う。
「あのセーラー戦士のみんなはもちろん、他の聖龍隊の人達も辛い事がいっぱいあったんだね……」
出会ってから幾日も経過していないとはいえ、普段の様子からは決して見せない聖龍隊の者達の過去を知った春日結は悲しそうな表情を見せた。
そして愛が徐に自分のPC画面を二人に向けて言った。
「ほら二人とも見て。あのキューティーハニーことハニーさんと、妹の聖羅さんについてのデータよ」
愛に言われ、結と春菜が彼女のPC画面に目を向けると、其処にはキューティーハニーの今までの経歴及び戦歴が詳細に載っていた。
それを見た二人は悲しい心情に駆られ、沈痛な面持ちとなった。
「……あのハニーさんに、こんな過去が……」
「まさか……自分が人では無かったなんて……」
キューティーハニーの出生を知って暗鬱な表情で重い口を開く結と春菜。
「そうね……自分が人工生命体だって知って、彼女どんなに苦しんだんでしょうね……」
暗鬱な表情で言う結と春菜に続き、愛も真顔で悲しそうに言った。
更に愛は続け様に言った。
「それに……同じ人工生命体であった妹の聖羅さんは犯罪結社に利用されてハニーさんと戦わせられて……一言では言い表せないほど、辛い日々を過してたのね……」
愛の台詞に答える様に、春菜と結も話し出した。
「そうですよね……例え血も繋がっていない上に人工生命体とはいえ、記憶を操られてお姉さんであるハニーさんに対して憎しみを植え付けられて戦わせられていたなんて……」
この時、春菜の目には薄らと涙が浮かんでいた。
「ハニーさん、聖羅さん……可哀そう……」
目に涙を浮かび上がらせる春菜に続き、結までも目から涙を零し始めた。
「ふ、二人とも、泣かないでよ。もうっ……ぅっ」
涙を零し始める二人を見て、どうにか宥めてあげようとする愛であったが、彼女の目からも自然と涙が流れ出そうになってしまう。
そして三人はどうにか落ち着きを取り戻しつつ、再び話を始めた。
「――ふ、ふぅ……ど、どちらにしても、聖龍隊の人達の戦士としての実績には目に瞠るものが多いわ。正直、コムネットでしか戦いの経験が無い私達とは天と地の差なのは間違いないわ」
愛の話に、春菜と結も賛成の言葉を返す。
「そうですわね、私達とは桁違いに聖龍隊の方々は辛く苦しい戦いを乗り越えて来られた訳ですしね」
「私達の戦いも辛い事が沢山あったけど……聖龍隊の人達はそれよりも多くの悲しい戦いを経験して来てたんだね……」
下を俯きながら悲しそうに呟く春菜と結。彼女達は自分達の戦いよりも、激しくそして辛い戦火を聖龍隊の面々が経験してきた事に深い衝撃を受けていた。
[能力の多様]
コレクターズは、次にカードキャプターである木之本桜に関するデータに目を通した。
彼女は家の書庫に封印されていたクロウカードの封印が解けてしまった事から、その日以来カードを全て封印するべく日夜カードの収集に駆け回っていた。
そんなある日、出現したカードの前に聖龍使いとメタルバードが一足先に現れた事から互いの意見の一致により共闘、無事にその時のカードの封印に成功できた。
それ以来、聖龍使いとメタルバードの面識が成立した事により、木之本桜も聖龍隊に加盟する切っ掛けとなったのだ。
コレクターズはそんなカードキャプターの経緯や、カードに関する様々な事の件や人間関係を知って愕然となった。
「……あ、あの子……さくらちゃんの関与したカードの事件って、こんなにも多彩なのね」
目を丸くしてさくらの件を言う愛。
「色んな事を経験して、あの子は今の様に芯の強い女の子に成長したんですね……」
思い詰めた表情でさくらの明るくも強い心根を口に出す春菜。
「楽しくも辛い日々を一生懸命過してきて――それであの子は、さくらちゃんは芯の強い優しい女の子に成長できたんだね」
春菜同様、さくらの芯が強く優しい心に感銘を受ける結。
その時、愛が突拍子に口を開いて二人に告げた。
「私達も、少しはあの子の様に多種多様な技が使えれば有利に戦いをこなしていけるのかもね」
「そ、そうですわね」
「確かに、さくらちゃんのカードは本当に色んな種類が有ってレパートリーも豊富だもんね」
愛の発言に対し、動揺しながらも返事する春菜に愛の意見に賛同する結。
「私達もさくらちゃんみたいに色んな技を使えるように成りたいよね」
結が呟くと、彼女に続いて春菜も口を揃えて言った。
「そうですわね、せめてコムネットでも着用できていた多くのスーツも現実空間でも着られれば幸いなのですが……」
春菜が言うと、愛が神妙な面持ちで台詞を返した。
「そうね、其処んとこ後でウッズさんと犬養博士に言ってみましょう。上手くいけば、私達コレクターズのコムネットでの戦闘経験を生かせるかもしれないし」
愛の意見に対し、結は微笑みながら明るく言った。
「うん、そうだね。聖龍隊のみんなも、いろんな経験を乗り越えてきたみたいだけど、私達だって沢山の戦いを乗り越えられたんだもの。その経験を少しでも生かして行かないと」
この結の言葉に、春菜も愛も穏やかな笑みを浮かべて賛同した。
「そうね、結ちゃんの言う通りだわ。私達だって聖龍隊の皆さんまでとは言えませんが、コムネットで戦ってきた実績が確実に有りますもの。その経験を生かして、少しでも皆さんに認めて貰わないと」
「その通りだわ。いつまでも現実での実績が無いって言われたくないもの。私達の経験だって捨てたもんじゃないって事、知らしめて上げましょうッ」
三人は自分達のコムネットでの実績も充分な物であると聖龍隊に知らしめようと心に決めた。
[回復について]
三人は続いてナースエンジェルこと森谷りりかについての情報に目を配った。
聖龍隊では今まで彼女の治癒能力に対して高い評価がされているのを、コレクターズはデータを見て知り得た。
「回復系、か……」
「どんな傷も瞬時に回復させるなんて、素晴らしい能力ですよね、ナースエンジェルの力は」
「傷を負った仲間のダメージを回復出来るなんて、とっても優しい能力だね」
ナースエンジェルの特殊能力に対して考え込む愛、そして強い感銘を受ける春菜に、笑顔で彼女の能力を誉め称える結。
三人はそんなナースエンジェルの能力である回復・治癒系能力について互いの意見を述べ始めた。
「私達の場合、コムネットではレスキューが主に治療してくれていたけど現実空間では彼女の力は借りられないから、其処はどうしようかしら……」
愛がコムネットで主な治療活動を行ってくれているプログラムソフトのレスキューについて語りながら、同時に現実空間での治癒能力についてどうすれば良いか意見を述べた。
「そうですわね、いくら聖龍隊では怪我を瞬時に回復させる役目がナースエンジェルであるとはいえ、彼女に全て任せっきりと云うのも申し訳ありませんしね……」
暗鬱な表情で春菜も頬に手を当てながら申し訳なさそうに言う。
「だけどどうしよう……私達の場合、今まで全部レスキューや彼女以外のコレクターズの力を借りていたけど、現実ではそうはいかないしね……」
結自身も、現実での戦いでのダメージ回復について本気で考え更けた。
「せめて私達だけでも、ナースエンジェルの手を煩わせない為にも、自力で回復できたら良いんだけどね」
思い更けながら告げる結のこの一言に、春菜が何かを思い付いた様に突然言い出した。
「あっ、そうですわ」
「な、何よ春菜、突然……」
突然発言をする春菜に驚き訊ねる愛。そんな愛に訊ねられた春菜は満面の明るい笑顔で話した。
「はい、私思ったんですけど――現実空間で私達が着用するコレクトスーツは確か、コムネットでの戦闘経験データをそのまま取り込んでコムネット同様に戦えるようにできるんでしたよね」
「え、ええ……ウッズさんや犬養博士の話だと、どうやら修司君がそうしろってウッズさんに言ったらしいわよ」
春菜に答える愛、すると春菜は再び笑顔のままで釈明を語り出した。
「それでしたら――コムネットでの私達の着用して来たコレクトスーツも着用できる訳ですし、それ以外にコレクターズのみんなの力も少しばかり使える様にはできませんかね?」
これを聞いて愛と結はハッと気付いた。
「そ、そうよ確かにそうだわッ。コムネットで着用で来ていたスーツが使用できるって事はそれと同時にコレクターズの役割能力も使えるかも知れないわよねッ?」
春菜の釈明に驚きながら早口口調で語る愛に続き、結も嬉しそうな表情で言った。
「そうだよそれよ春菜ちゃん! コムネットでのスーツが使えるならコレクターズのみんなの役割能力も使えるかもしれないわよね! 早速ウッズさんと犬養博士に聞いてみましょうッ」
結はそのまま脇目も反らずに部屋を飛び出してウッズと犬養の元に行ってしまった。
「あ、結ちゃん……!」
「まったく、いっつも思い立ったら即行動なんだから、結は……」
部屋を飛び出して行ってしまった結に呆れながらも、春菜と愛も彼女に続いて部屋を出て行った。
[思いを力にして]
思わず部屋を飛び出してウッズと犬養博士の元に向かった春日結、そして彼女を追って如月春菜と篠崎愛の二人もウッズと犬養博士の元に足を運ばせた。
そして結は、自分達コレクターズのスーツを調整している聖龍隊の研究室に足を踏み入れた。
「博士ーーっ、それにウッズさーーん、お願いしたい事が有るんだけどーー……ん? その人誰?」
結が部屋に入ると、其処には見慣れない一人の男性がウッズと犬養博士と共に居た。
「あ、結さん、どうしたんですか? 今ちょうどスーツの調整がかなり済んだ所なんですよ」
部屋に入って来た結に、ウッズは微笑みながら言葉を告げた。
すると其処に、続けて春菜と愛の二人もやって来た。
「は、博士、ちょっとお願いが……あ、あれ? その人……」
「博士、それにウッズさん、その人は……」
二人が訊ねると、ウッズは一緒に居たその人物を三人に紹介した。
「あ、そう言えば結さん達は初めてでしたね。この人は花丘魁(はなおかかい)博士、今回私たち共々聖龍隊のサポートに徹してくれる物理学者です」
ウッズに紹介された花丘魁は丁寧に名を述べた。
「初めましてコレクターズの皆さん。私が花丘です、以後宜しくお願いします」
すると名乗った魁博士に対して、愛が突然言い放った。
「えっ、花丘博士って確か最近まで行方不明になっていた上に、聖龍隊のメンバーである花丘イサミの父親の……!」
愛に言われた魁は低い腰でぺこぺこと頭を下げながら返事する。
「は、はい、いつも娘のイサミがお世話になっております」
「い、いえ……私達だって未だに聖龍隊の皆さんには迷惑を掛けてしまっていますし、そ、それに娘さんであるイサミちゃん達の新撰組とはまだ余り関与してない方ですので、はい……」
頭を下げながら申し告げる魁に対して若干慌てながらも話を返す愛。
その時、部屋に居る犬養博士に春菜が訊ねた。
「博士、なんで此処に花丘さんが居るんですか? 此処は私達コレクターズのスーツ調整用の研究室な筈ですよ」
春菜に訊ねられた犬養は平然と答えた。
「ああ、それはだね春菜くん。実は花岡博士が長年研究してきたある物質を君達のスーツに組み込んでみようと、あの修司君が提案してくれたんだよ。それで今、花丘博士とスーツへの適合性を高める為に話し合っていたんだよ」
「え、な、何ですか? その物質って……?」
犬養博士が口に出した花丘魁が長年研究してきた「ある物質」について愛が訊ねると、魁博士はコレクターズの三人に拳ほどの緑色に輝く不思議な石を手に持ち見せた。
「う、うわぁ……」「き、キレイ……」
神秘的な緑の光を放つ石に見惚れる結と春菜、そして石について愛が魁博士に訊ねる。
「か、魁博士……この石は、一体……?」訊ねられた魁博士は平然と愛に言った。
「うむ、これは【ルミノタイト】という鉱石だ」
「る、ルミノタイト?」
三人が目を丸くして軽く驚いていると、魁博士は説明を始めた。
「うむ、このルミノタイトは、古くは江戸時代後期より日本で発見されつつも表には出る事の無かった鉱石でね。人の精神力……そう、人の想いをエネルギーに変換できる不思議な鉱石なんだよ。ウチの娘であるイサミやその親友である月影トシ君、雪見ソウシ君ら三人が使っている武器にも、この鉱石が組み込まれているんだよ」
「あ、あのイサミちゃん達が使ってる武器に組み込まれている鉱石……」
花丘魁博士の説明を聞いて表情が固まってしまう結。
其処にウッズがコレクターズに話しかけてきた。
「修司様はですね、このルミノタイトを結さん達のスーツに組み込ませれば貴女達がコムネットで活動していた際の経験も精神力つまり心の力としてスーツと連動させ現実世界でもコムネット同様に思う存分活動できるんじゃないかと、そう提案なさってくださったんですよ」
「しゅ、修司君が……!」
総長で有り自分達を聖龍隊に加盟させた小田原修司が其処まで自分等コレクターズを思ってくれた事実に驚く愛。
更に犬養博士も温厚な表情で三人に言う。
「うむ、私も初めてこの鉱石を見たのだが本当に摩訶不思議な物質でね。人の思いをエネルギーに変えられるとは……いやはや、世界はまだまだ未知なるモノで溢れて居るもんだよ、ハハ」
「「「…………」」」
微笑む犬養博士の言動に思わず唖然としてしまう三人。
更に博士は穏やかな態度を変えずに話し続ける。
「まぁ、このルミノタイトのスーツへの適合が上手くいけば、君たち三人のコムネットでの経験がそのまま活かせる筈だ。君等がコムネットで体験してきた全てが身体にしっかりと感覚として刻み込まれている筈。ならばその感覚を最大限に活かしながら戦う事が出来れば、君達は現実の世界でもコムネット同様に充分に戦える筈だよ」
「わ、私達……コムネットで活躍できた様に、現実の世界でも戦って行く事ができるんですか……!?」
博士の話に驚いた愛が訊ねると、博士は微笑んで答えた。
「ああ、可能だよ。いや、君等の強い思いが確かならば、それ以上に戦える筈だ……!」
博士のこの言葉を聞いた三人は感動し、感極まった。
「私達……現実の世界でも、たくさんの人達を助ける事が出来るんですね……!」
「もう、現実の世界で傷付き、そして苦しんでいる人達の助けに成れるんですね……。聖龍隊のみんなの様に、大勢の人達の力に成れるんですね……!」
「現実の世界でも、私たち三人が力を合わせれば誰かの力に……聖龍隊のみんなと協力し合えるんですね!」
喜びの余り、若干感情が昂る愛/春菜/結の三人。
そんな三人に、ウッズが穏やかな表情を向けて優しく語りかけた。
「結さん、春菜さん、それに愛さん……あなた達コレクターズがコムネットで体験してきた出来事は決して無駄な物では無かった筈です。辛く悲しい事も沢山有ったと思いますが、その全てが掛け替えのない経験であった筈。その経験を現実の世界でも起きる戦いに活かせるように私達も全力でサポートしていきます。だから貴女達も気を引き締めて最後まで頑張ってください……!」
そして最後にウッズは力強くも、とても意味が深い言葉を結達に告げた。
「修司様が良く言っています。経験は力成り、と――。どんな経験も生きて行く上には欠かせない貴重な経験と成る筈、ならばその経験を全て出し切ってどんな事態も乗り越えて行きましょうッ」
ウッズの言葉に、結達コレクターズは力強い真剣な顔で頷いたのだった。
どんなに辛く悲しい過去も、全ては生きて行く上には欠かせない貴重な経験である。
この世に無駄な想いが無い様に、無駄な経験も決して存在しない。
コレクターズの三人は自分達がコムネットで感じ取った経験全てを出し切って、少しでも聖龍隊の足枷に成らないよう心に決めた。
[科学と魔法 対なる力]
ルミノタイトを組み込ませたコレクトスーツを新調される事となったコレクターズの三人。
現実世界で着用できるそのスーツは人の精神力をエネルギーに変換し、変換されたエネルギーとコムネットのデータが組み合わさる事により、電脳世界であるコムネットと同様の戦闘が現実空間でも可能になるであろうとウッズは三人に説明した。
更にウッズは、現実での戦闘でコムネット同様の実力を出すにはイメージトレーニングが一番効果的で欠かせない特訓法だと結達に告げた。
コムネットでの戦いをイメージとして連想しつつ、その時の戦いの中で感じ取った心情がそのままスーツのパワーに繋がるのだと云う。
結達は必死に、かつてのコムネットでの苦しかった戦いを思い起こしながらイメージトレーニングを行い続けた。
「…………………うぅ~~~~ん……ふぅ、イメージトレーニングって言っても結構難しいね」
「そ、そうですわね……」
「今までのコムネットでの戦いを思い起こして、それでトレーニングしろって言うけど、案外イメージしながら頭ん中でトレーニングするのって難儀よね」
頭の思考回路を必死にひねりながらイメージを膨らませてトレーニングをする三人。
と、その時。その場に三人の少女が笑顔でやって来て結達に挨拶を交わした。
「やっほ~~、こんにちわぁ! 三人とも元気にやってる?」
「あ、貴女達は……!」
突然やって来て突然笑顔で挨拶を、しかも高いテンションで挨拶を述べる赤毛の少女に、結は驚いた。
そして赤毛の少女の後ろから、青い長髪の少女と茶髪で眼鏡を掛けた少女の二人もやって来た。
そんな三人を見て、愛と春菜が口を開いた。
「あ、貴女達……」
「確か、えぇっと……あ、そうですわ。確か魔法騎士(マジックナイト)の三人でしたわね」
春菜が言うと青い長髪の少女がそれに答える。
「ええそうよ。私は龍咲海(りゅうざきうみ)、そして一緒に居るのが獅堂光(しどうひかる)に鳳凰寺風(ほうおうじふう)よ」
青い長髪の少女、龍咲海が言い終わると鳳凰寺風が神妙な面持ちで思い更けているコレクターズの三人に訊ねて来た。
「どうしたんですか皆さん。何だか顔に疲れが見えますわよ」
訊ねられたコレクターズの三人は、どう言えば良いか迷ってしまい互いに顔を見合わせた。
そして愛が動揺しながらも風に訳を述べた。
「じ、実はですね。私達……」
コレクターズの三人から事情を聞いた魔法騎士の三人は真顔で話し出した。
「ふぅ~~ん、そう。精神力……つまり心の力で戦えるスーツって事ね。その何とかタイトって鉱石を使った貴女達の戦闘服は」
「は、はい、そうなんです」
話を聞いてコレクターズの現状を理解した海に返事をする愛。
「だけど凄い技術ですわね。コムネットという仮想空間と云い、その人の精神力をエネルギーに変える鉱石と云い、春菜さん達のスーツは正に最先端の技術で作られているんですね」
「い、いいえ、例えスーツの出来が良くっても、それを着て戦う私たち自身がしっかりしていない以上、何の意味も有りませんわよ」
穏やかながらも明るく話しかけてくる風に対し、春菜は多少困惑しながらも同じように穏やかに会話を続ける。
「結ちゃん達はスッゴイよ。コムネットっていうコンピューターの世界で大活躍してきただけでなく、遂に現実の世界でも活躍できるように成るんだもの」
「そ、そんなに褒めなくても良いわよ光ちゃんっ。私達まだまだ現実での戦いには慣れていないんだからさぁ」
光に褒められ続けて謙遜しつつも双方共に仲睦まじく会話をする結。
三人と三人、計六人はそのまま和やかな雰囲気の元会話を続けていた。
するとその時、結が光たち魔法騎士の三人に言葉を放った。
「そう言えばさ、私、光ちゃん達に出逢ってから初めて魔法ってものが実在しているんだって知ってビックリしちゃった」
「確かにね……てっきり魔法とかって御伽話だけのものかとばっかり思っていたわ」
「そうですよね……以前より聖龍隊の方々が活躍しているのはテレビで見た事は有りますけど、本当に魔法を使って事件を解決しているとは本気で思っていませんでしたし、まさか魔法が本当にあるなんて驚いちゃいましたわ」
結に続き、愛と春菜も魔法の存在に驚いた発言を述べると、そんな三人に魔法騎士の三人が言った。
「ま、まぁ……私達も実際、セフィーロに行くまでは魔法なんて信じていなかったけど……」
「それでも、魔法が使える様になってからは大分冒険の助けにも成ってくれましたわよ」
海と風がそれぞれの釈明を述べて行くと、最後に光が神妙な面持ちで語った。
「もちろん、魔法が使えるからって何もかもが万能な世界に成る訳じゃないんだよ。現に私達が行ったセフィーロでは色々と遭ったんだし、何よりどんなに素晴らしい力だって使い方を間違えば最悪の結果しか生まないから考え所だよ……」
そんな光の話を聞いて、結が言った。
「そっか……魔法が使えるからって何もかもが上手くいくとは限らないんだね」
この一言を聞いて光がすかさず言い返した。
「そうだよ結ちゃん、魔法が科学を超える万能な技術とは決して言えないんだよっ。そもそも魔法って言うのは強大なもの程危険が付き物で、使うにはそれなりの責任が必要なんだよ」
「せ、責任……」
光の発した責任の言葉に若干驚き困惑する結、そんな彼女に光は続けて述べる。
「そう、強い魔法ほどそれだけデメリットも大きいし、下手に扱えば自分だけでなく周りの人達も傷付いてしまう。私達はそんな魔法や現状をたくさんセフィーロで見て来たんだよっ。」
更に光は述べ続ける。
「強い力ほど周りに与える影響も大きいの。だからこそ、そんな力を魔法を使える私達は精一杯自分の力に責任を持って自分の能力を使って行かなきゃいけないの」
光の話の数々に愕然と成り言葉を発する事を忘れてしまうコレクターズの三人。
そんな三人に、海が光の話の内要を説明しながら光の話に付け足していった。
「よ、要するに光は、どんな力にも少なからず責任が必然であるって言いたいのよ。特に、その力が強大で有ればそれに対する責任も大きくなるってね」
これを聞いてコレクターズの三人は真剣な顔でそれぞれ言った。
「……ん、確かに。どんな力にも責任が付き物なのが当然よね」
「今回、私達が参加する戦いそのものが世界の命運を賭けた大戦で有りそれに対する責任そのものが大きいですけど――」
「私達の使える能力が、例え魔法で有っても科学で有っても等しく同じ――責任あるものだって事よね、光ちゃん」
「う、うんっ」
真剣な顔つきで語る愛に春菜、そして最後に笑顔で光に告げる結に対し光は笑顔で返事した。
科学と魔法、それらは全く原理も違えば法則も違う対なる力。
しかしその二つは等しく同じ、使い方を間違えば多大な被害が出てしまう危険な技術でもある。
そんな対なる力に必要なもの、それはその力を扱うに伴う責任がある。
かつて、あるアメリカのヒーローがこんな言葉を世界に伝えた。
「大いなる力には、大いなる責任が伴う」と。
どんな高度な科学技術や知識も、それを使う人間の意志一つで人を救える力と人を滅ぼす力の二つに分かれてしまう。
コレクターズの三人と魔法騎士の三人は、双方の能力に対しての責任を改めて再認識するのだった。
[誤った科学の道と浮かび上がった疑惑]
それからコレクターズの三人は。
施設の通路を歩いているとガラス窓のある一室に差し掛かった。
ガラス越しに部屋の中に視線を向けると、其処には一人暗い顔で塞ぎ込んでいる少女ちせの姿が在った。
彼女を見て何処か悲しい複雑な感情が心に溢れる結達。
「あの子……」
「ちせって子よ。あの子も私達同様、聖龍隊の新メンバーに加盟された女の子だけど……」
悲しくも虚しい心情で室内のちせの姿を見て呟く春菜と愛。
と、その時。そんな悲愴な表情で満ち足りたちせを見ていた結が、何を思ったか彼女が悲愴に暮れている部屋に有無も言わずに入って行った。
「あッ、結!」「結ちゃん、どうしたんですか?」
突然部屋に入って行ってしまう結に驚き戸惑う愛と春菜。彼女達は結に続いてちせの部屋に入って行く。
そして少女達は其処で自衛隊によって兵器に改造されてしまった少女ちせに対し、若干戸惑いながらも彼女と対話をした。
一方、その頃のコレクターズの現実空間用のスーツ調整用の研究室では。
「だから、其処ん所を解って欲しいんですよ、我々は」
「「……………」」
研究室で結たち三人の為のコレクトスーツを調整改良している犬養博士と協力者の花丘魁博士に言い寄って来る一人の軍人、彼は自衛隊特別任務部隊統括司令の副長官でありその隣には上官であるミナモトの姿も有った。
しかし副長官に言い寄られても顔色一つ変えずに脇目も振らずPCに向かい続ける犬養博士と魁。
そんな二人に副長官は更に話し続けた。
「良いですか犬養博士、それに花丘殿。こんな奇人変人ばかりで得体の知れない聖龍隊に居るより、我々自衛隊の下で活動していた方がよっぽど為に成るんですよ」
しかし犬養と魁が言葉を返す事は無い。
だがそんな二人に今度はミナモトが冷徹な表情そして人を見下したような眼差しを向けて博士達に執拗に話し掛けてきた。
「……犬養博士、そして花丘博士、いい加減ご理解して頂けませんか? 貴方方の優秀な頭脳と知識は我らが自衛隊の為に使ってこそ真の価値が有るんです。こんな悍ましい連中が蔓延(はびこ)っている聖龍隊に関わること事態、異常な事なんです」
ミナモトの発言を然りと耳で捉えている犬養と魁はそれでもまだ無言を衝き通す。
そんな二人にミナモトは容赦なく言い続けた。
「犬養博士、貴方のコンピューターに関する優秀なプログラマーの知識と技術は自衛隊で発揮した方が正しい選択なんですよ」
犬養に対し、博士のコンピューターに関する知識を自分達自衛隊で発揮し続けた方が正しいやり口で有ると、半ば脅す様な目付きで犬養に言寄るミナモトは続けて今度は魁に対しても態度を改めずに迫る。
「そして花丘博士、貴方が発見した新鉱物それを自衛隊の戦力増加の為に提供してはくれませんか? 無論、博士自身にも御協力をお願いします。博士の鉱物に対する知識と学力、そして今までの研究成果を自衛隊に提供し博士自身も私達と共に祖国日本の為に戦果を挙げて行きましょう」
淡々と博士達に自分ら自衛隊での参加を促し続けるミナモト。
しかし博士達はミナモト等に対し言い述べた。
「……折角ですが、私達は聖龍隊での参加に対し既に同意を承諾してしまっています。故に貴方方への御協力は今の所、無理なんですよ」
「ッ!」「な……ッ!」
犬養博士の台詞に愕然と成る副長官とミナモト。更に魁博士も賛同を述べる。
「私も犬養博士と同じです。何より、貴方達自衛隊の人が聖龍隊の事をどう思っているか知りませんが私達は私達で聖龍隊の事を気に入っているんです。なので聖龍隊から離別する気は有りませんので」
と花丘魁もミナモト等にあっさりと告げた。
そんな二人に対しミナモトは表情を一変させ、強面の冷酷な面構えで言い放った。
「宜しいのですか、そんな事を言って。私達への協力を拒めば今後の貴方方の活動に多大なる支障が出ますよ。もう自由に開発研究が出来なくなるのはもちろん、博士号の剥奪も致し方有りませんが……」
自分達自衛隊への協力を拒む博士達に対し態度を変えて脅してくるミナモト。
だが博士達はそんなミナモトの発言と姿勢に怯む事無く平然と言い返した。
「……どうぞ、お好きなように」「ええ……」
PCに目を向け、一向にミナモトと目を合わさずに素気ない返事をする犬養と魁。
と、その時。ミナモトが発した一言に魁が反応した。
「……特に花丘氏、アナタ確かご家族が居ましたよね。確か小学五年生の娘さんとニュースキャスターを職務としている奥さん、そして貴方の実父の計三人が」
「…………それが何か?」
ミナモトの言葉に険しい面持ちで横目をミナモトに向ける魁、彼に対しミナモトは薄らと嘲笑を浮かべながら吐き捨てた。
「……良いですか、もし貴方が我々の協力を拒み続けたらどうなると思うのですか? 貴方方は非国民と周りから罵られる事に成るんですよ。そしてその蔑視の眼差しは当然家族である娘さんや奥さん、そして年老いた貴方の父親にまで向けられるんです。貴方は祖国である日本を護る自衛隊への協力を拒み、更には異形の者共が度等を組んでいるだけの聖龍隊のみに協力をし続けると云う事は、紛れもない国家への反逆罪に匹敵するんですよ」
「「……………………」」
ミナモトの外道な発言にしばし黙り込む魁と犬養。
そんな二人を冷徹な視線と嘲笑が浮かぶ顔で睨みながらミナモトは博士達に告げた。
「まぁ、どうぞごゆっくり検討してください。貴方方が本当に利口なら解ってくれる筈、聖龍隊の様な異常者ばかりの群衆と健全な自衛隊と云う軍隊、どちらに就くべきか解る筈です。では」
そう言い残しミナモトは副長官共々、研究室から去って行った。
「……くッ、嫌な連中だ」「ええ、まったく……!」
部屋を立ち去って行ったミナモトと副長官が去ったのを目で確認した犬養と魁は苦々しい面持ちで呟いた。
「……あんな連中に、あのちせって子は良い様に身体を改造されたのか……。全く、自衛隊も地に堕ちたな」
「ええ、同感ですよ犬養博士。あんな連中が上官である限り、日本が平和になる所か余計に争いの火種に増えてしまう一方ですよ」
ミナモトと副長官の言動に対し、不快の感情で胸が一杯に成る犬養と魁は各々の鬱憤を吐き続ける。
「そもそも科学と云うのは、我々人間が快適に暮らして行く為に、そう人を幸せにする為の技術。それをただ勝利の為だけに一人の罪もない少女の身体を改造してしまうとは……実に嘆かわしい」
「同感です」
自分達の分野でもある科学を用いて一人のあどけない少女を兵器に改造してしまった事実に対し蟠りの感情を吐く犬養に同意の言葉を述べる魁。
と、その時。二人が目を向けていたPCの画面がいきなり変わり、黄色のマスコット顔が出現した。
「は、博士……」
「おっ、IRか。嫌済まんな、今花丘博士共々、気分を害されてしまってね、はは……ところで何か用かい?」
画面に出現したのは犬養が創り出したプログラムソフトであるコムコンの一体、IR(アイアール)だった。
「は、博士。実は博士に頼まれて彼の履歴などをコムコン総出で調べて来たのでありまするが……」
「ん……あ、ああ、兼ねてより君等に頼んでおいた彼に対する調査結果だね」
「え……ああ、あの子の事ですか犬養博士。貴方はもちろん私自身も気に成っていた彼の経緯についての……」
何やら複雑そうな表情を見せて話すIRに対し微笑みながら納得する犬養、そしてそんな犬養とIRの話の内要に理解を示す魁に犬養が答える。
「ええ花丘博士、彼の調査を前もってIR達に調べてみるよう言付けしておいたんです。彼の事は信頼している積りですが、なにぶん彼に対する記述が少ないのでね、遂気に成ってしまって……」
魁に話し終わった犬養は再びIRに話し掛けた。
「それでどうだIR、彼について何か解ったかね?」
すると犬養に訊かれたIRは何処か不安そうな表情を浮かべて呟いた。
「そ、それが…………」
「「……?」」
IRの反応に惑い顔を向け合う博士達。
そして次の瞬間、IRはPC画面を切り替えて博士達に自分達の調査報告を掲示した。
「……え……!?」「こ、これは……!」
調査報告を目の当りにした花丘魁と犬養基継は、目の色を一変させて愕然となった。
犬養博士はIRらコムコン達に何を調べさせたのであろうか。
そして一体、博士達は何を見たのであろうか。
二人の博士達が目にした事実とは、一体。