聖龍隊 気高き二次元人達   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 聖龍隊メンバーから見た現状を各々執筆していきます。
 今回は魔法騎士(マジックナイト)の三人からの視点です。



聖龍伝説 ――魔法騎士Vision――

[chapter:二つの大切な世界]

 

 聖龍隊基地施設、その一室で三人の少女がジッとテレビの画面を見詰めていた。

 テレビのスピーカーから溢れ出て来る群衆の騒がしい声の数々、そしてそんな群衆と化している報道関係者等に毅然とした態度で堂々と公言していた。

 

 そんな映像を眺めながら三人の内の一人、青い長髪の少女が言葉を発した。

「…………遂に、始まっちゃったわね」

 長髪の少女が呟くと、それに続いて今度は眼鏡を掛けた緑色の衣の少女が話した。

「そうですわね……始まってしまいましたわね、戦いと云う運命が……」

 そして最後に赤髪で短いポニテ、赤い衣の少女が話し出した。

「この世界……ううん、私達の世界だけでなく他の異世界も……セフィーロやアプリちゃんの故郷であるボスコワールドにも映像で見た恐ろしい怪物達が襲ってくるんだよね……」

 深刻な事態に只ならぬ心境で語り合う三人の少女、獅堂光(しどうひかる)、龍咲海(りゅうざきうみ)、鳳凰寺風(ほうおうじふう)。

 

 三人は悲痛な面持ちで語り合い続けた。

「……私達の世界、そしてセフィーロを始めとした多くの異世界。そんな各異世界を護る為の組織……それが聖龍隊……」

「そして私たち三人も……今やその聖龍隊の一員として、多くの人達の命運を背負う立場と成り果てている……」

 自分達に課せられた役目、そして多くの命を背負う事と成りながらも、再び争いの渦中に身を投じてしまう事となった彼女達は、とても心苦しく居た堪れない心境であった。

 そんな苦心痛心な二人に光が話し掛けて来た。

「ね、ねぇ……海ちゃん、風ちゃん……」

「「…………」」

 話し掛けて来た光に顔を向ける海と風、二人に話し掛けた光はそのまま話を続ける。

「わ、私さ……向こうで、セフィーロで多くの戦いを経験して凄く辛い思いも一杯したよ。だけどさ、その分沢多くの人と触れ合う事が出来た、沢山の幸せを護る事が出来た。それなら今度は、聖龍隊でも同じように多くの人と触れ合いながら世界中の人達の為に戦って行こうよッ」

 次第に真剣な顔つきに表情を変化させながら語る光の話に、海と風は何も言わずに耳を傾き続ける。

「そりゃ、私だって本音を言えば戦いたくは無いよ……けれど異次元からの脅威その軍勢から人々を護ってあげられるのは、私達聖龍隊しか居ない訳じゃない。だったら私セフィーロの危機を救えた様に、また多くの人を助けて上げたいの……! セフィーロを救えた様に、今度はこの世界を……私達の世界とセフィーロの様な異世界を護りたい!」

「光……」「光さん……」

 光の真剣な話に真顔で愕然と成る海と風。そんな二人に光は強く言い放った。

「海ちゃん、風ちゃん、お願い! また力を貸して! また三人で力を合わせて一緒に戦おうッ。そして聖龍隊の人達と協力して私達の世界とセフィーロ、二つの大切な世界を護って行こうッ!」

 力強い眼差しで二人に嘆願する光。

 そんな光を目の当りにして、しばし互いの顔を見合わせて考える海と風。

 

 そして

「…………そうね光、今度も私達の力で頑張ってみましょ」

「う、海ちゃん……!」

 親友の海の発言に喜びを感じる光。更に

「そうですわ、こんな非常事態だからこそ私達の魔法が必要されているんですもの。確かに、また戦うのは少し複雑な心境ではありますわ。けれど私達の魔法が少しでも世界の、そして聖龍隊の皆さんの力に成れるのでしたらそれに応えてあげませんとね」

「風ちゃん……」

 同じく風の発言に対しても感極まる光。

 

 そして三人は互いに誓い合った。

「また戦いの渦中に踏み入るのは少し遣る瀬無いけど、それでも三人力を合わせて世界を……私達の世界とセフィーロ、ゆくゆくは全ての異世界を護る戦いに勝って勝って勝ち続けようッ!」

「今度はセフィーロだけじゃ無い、私達のこの世界やアプリちゃんの世界でもあるボスコワールド……ううん、多くの異世界の未来の為に再び力を合わせて頑張ろうッ」

「それに今回は私たち三人だけではありませんわ。心強くも頼もしい、聖龍隊の方々が一緒に協力してくれるんですもの。彼等の期待に応える為にも、辛いでしょうけど頑張りましょう……!」

 光/海/風の三人は、お互いに向き合い中央に手を差し伸ばして互いの手の甲を重ねてそれぞれの決意を固めた。

 

 彼女たち三人はこうして多くの英雄達が協力し合って戦果を挙げる聖龍隊と共に歩んでいくのを決心した。

 

 

 

 

[自分達にしかできない事]

 

 聖龍隊メンバーとの合同訓練を終えて、魔法騎士の三人は休憩を取っていた。

「ふぅ、さすがに聖龍隊の人達は戦闘慣れしているわよね」

「そうですね、体力の方もかなり鍛えているのが窺えましたし……」

「私達も負けずに身体鍛えておかないとね。でないと聖龍隊の人達の足を引っ張っちゃう事に成りかねないし」

 施設内のベンチに腰を下ろしながら語り合う海、風、光の三人。

 三人はその後しばらく休んでいたが、唐突に風が神妙な面持ちで光と海に話し掛けた。

「……ね、ねぇ……光さん、海さん」

「ん? なぁに? 風ちゃん」「風、どうしたの?」

 神妙な面持ちで話し掛けてきた風に返事をする光と海に、風は言った。

「……さっき訓練場で目にしたあの光景……お二人はどう思いました……?」

「え、さっき目にしたって……」

「……そ、それは……やっぱりセーラー戦士の皆さんとコレクターズの仲が余り良くないのと、後……あのちせさんの事ですよ」

「あ…………」「っ…………」

 風の言葉に敏感に反応する海と光。彼女達は先ほど訓練場で目にした事を思い出した。

 セーラー戦士達と共に訓練を行っていると、其処に落下してしまったコレクターズの春日結(かすがゆい)、そして駆け付けて来た他のコレクターズの如月春菜(きさらぎはるな)と篠崎愛(しのざきあい)等がセーラー戦士のウラヌスと一悶着を起こしそうになるのを見て魔法騎士の三人が必死に宥めた。

 更にその時、訓練場に響き渡る轟音に皆が驚き目を向けると、其処には機械の翼を生やし、両腕を機械のレーザーに変化させて訓練場の壁を破壊しメタルバードも黒焦げにしてしまったちせの姿を目にしたのだった。

 魔法騎士の三人は、先ほどの訓練場で起こったメンバー同士の衝突とすれ違い、そして能力の高さゆえの危険な面を目の当りにした事を思い出し考え更けてしまった。

 

 聖龍隊、それは様々な思想や能力を持っている者が一堂に集まる集団。

 しかし様々な思想が一堂に存在していると云う事は、同時に相見えぬ思想が複雑に絡み合うと云う事でもある。

 彼女達は全く違う思想が複雑に絡み合う事で起きてしまう思惑や闘争を異世界セフィーロで嫌というほど目にして来たので、聖龍隊でもそんな心の闘争が起きてしまわないか不安に成っていった。

 更に、あのちせに限らず魔法などの不思議な能力には必ずデメリットと云うものが付き物で有り、下手に使用してしまえば自分だけでなく周りの者までも不幸にしてしまう事実を彼女達はセフィーロで経験し学んでいたのである。

 

 故に彼女達は考えた。

 様々な思想に多種多様な能力、それらが一辺に集まったこの聖龍隊で、そんな面々とどう向き合い触れあって行けば良いのか。

 

 しばし考え込んでいるその時。

「……ね、ねぇ。海ちゃん風ちゃん」

 光が考え更けている海と風に話して来た。二人が光に顔を向けると、光は二人に話した。

「た、確かにさ、聖龍隊には色んな人が居るよ。私達とは全く違う系統の魔力が使える人や危険極まりない能力を携わっている人が……。だ、だけど、これから一緒に戦いを乗り越えて行く大切な仲間には違いないんだし、聖龍隊のみんなを信じてあげようよ!」

 更に光は力強い瞳で話し続ける。

「例え、最初はどんなに仲が悪くったって、いつかは仲良くなれるかもしれないじゃんっ。それに危険な能力だって、それで周りやその能力を持っている人が傷付かない様に、周りの人間である私達がしっかりサポートしてあげれば良いだけじゃ無い。心配してたって結果は良くならない、こっちから何か行動しない限り何も変わらないよ。私達には私達にしかできない様な、そんな事を中心にやっていければ良いんじゃないかな?」

「ひ、光……」「光さん」

 光の発した台詞に衝撃を受ける海と風。

 自分にしか出来ない事をこなして行けば、いつか必ず道が開かれる。

 どんなに状況が悪くても、それで立ち止まらず自ら行動する事でその状況を少しずつでも良いから改善していく。

 そうして人は少しずつ確実に前へと前進していく。

 

 三人の少女達は少しずつでも良いから聖龍隊の面々と打ち解け、そして互いに理解し合えながら一緒に行動し共に戦いを乗り越えていける様に努めてみようと結論した。

 

 

 

[どんな存在(ちから)でも助け合う]

 

 だがその後、魔法騎士の三人はやはり戦う事に関して少しばかりの躊躇と不安を心中に抱いていた。

 するとその時、そんな心境の三人の前にセーラー戦士のジュピターこと木野まこととプルートの冥王せつながやって来て魔法騎士の三人と話し出した。

 二人は三人に優しい微笑みを向けながら伝えた。

 確かに戦いは相手だけでなく自分までもが傷付き苦しんでしまう悲しい行為である。しかし誰かが非力な人々に代わり戦わなければ何も護れない現実が目前に有る――故に、普通では無い能力(ちから)を持っている自分達が力の無い人々に代わり戦い続ける事で何万の人々を救ってあげられるのである。

 弱い人々が傷付きそして死ぬ事の無い様に、自らを奮い立たせて戦い続ける。そんな強い意志を自分達に語ってくれる二人のセーラー戦士に魔法騎士の三人は感銘を受けた。

 

 そして、二人のセーラー戦士と話を終えたのち。

「やっぱり、戦闘経験の豊富な人達の話は身に染みるわね」

「ええ、言葉の一つ一つに重みが有って心にグッと来ましたわ」

「やっぱり、私たち以上に辛い戦いを多く乗り越えてきただけあって凄い事言うねセーラー戦士って」

 セーラー戦士のまこととせつなに語られた釈明に感銘した海と風と光は神妙な面持ちで話し合う。

「やはり、私達も覚悟を決めないといけないのかもしれませんわね」

「覚悟……」

 突然、風の発した覚悟の言葉に固まる海。そして風は語り続ける。

「戦いを避けられない運命(さだめ)である以上、覚悟を決めて戦いの場に身を投じる。そうして弱く非力な人々を護って行く。これがセーラー戦士に限らず聖龍隊の真意なのではないでしょうか?」

「「………………」」

 風の語りに言葉を失くす光と海。更に風は神妙な話し続ける。

「激しくも悲しい戦いの渦中でありながらも、聖龍隊の人達は互いに協力し合って今まで激戦の中を生き抜いて来られたんだと私(わたくし)は思います。彼女達が戦いに勝利し、そして無事に生還できて来られたのは……そう、どんな立場で在りどんな存在であろうとも、そしてどんな能力(ちから)を持っているとしても、互いに支え合い助け合って来たからこそだと思うんです」

 風の話を聞いて、光と海は更に考え更けた。

 確かに聖龍隊の面々はそれぞれ当初の目的や思想が違えば、使える能力も炎や水など同じようではあるがその能力の原理は根本的に違うのであった。

 そんな彼等が、今の今まで無事に勝利しながらも生き抜いて来られたのは互いに支え合いながらも協力しながら助け合ってきたからだ。

 

 三人は思った。

 どんなに強力な戦闘力が有ろうと、命ある者である限り、必ず助け合わなければ激化する戦場を生き抜く事など出来やしないのだと。

 

 そして一時の後、ふと光が口を開いた。

「……うん、そうだよね。どんなに凄い能力や魔法が使えるからって何もかも万能に出来るって訳じゃ無いもんね。私達だってセフィーロでは沢山の人達の協力が有ったからこそ、どんな困難も乗り越えられたんだもんね」

 光に続き、海もセフィーロでの思い出を脳裏に浮かべながら話した。

「そうね、セフィーロでは沢山の人達の協力が有ったからこそ、辛い戦いの数々も乗り越えられたのよね」

 そして海に続き、風も思い詰めた表情で口にした。

「そうですわね。皆さん元気にしていますかしら……クレフ、ランティス、そしてフェリオにアスコット。セフィーロで平和に過ごせているでしょうか」

 少女達はかつてセフィーロで仲睦まじく同じ時を過ごしていた友の事を脳裏に思い浮かべた。

「……良く良く考えたら今回の戦いは、そのセフィーロの為でもあるんだよね」

 光の発した一言に海も風も神妙な顔で話した。

「そう、私達の世界で暴れまわる怪物達は別の世界でも横行している。つまり、セフィーロにも……」

「私(わたくし)達がこの世界で異次元からの脅威と戦い制圧しない限り、両方の世界いいえ、全ての異世界が怪物達に荒らされてしまう事に成りますわ」

 

 そして三人は決断した。

「海ちゃん、風ちゃん。どんな存在だろうと能力だろうと関係ない。私たち三人と聖龍隊のみんな、共に力を合わせて戦い抜こう」

「ええっ」

「全ては、私達の世界の人々とセフィーロの人々、彼等の為にも全力を尽くしましょう……!」

 

 光 海 風の三人は、立場や能力など関係無く、全ての聖龍隊の人達と全面的に協力し、助け合いながら戦いを乗り越えて行こうと心に決めた。

 

 

 

[命有るものなら]

 

 心に強い決意を秘めて魔法騎士の三人はこの日、愛の戦士であるキューティーハニーと悲しみの戦士であるミスティーハニーのハニー姉妹と練習仕合を繰り広げていた。

 実は魔法騎士の三人は、以前キューティーハニーの方と既に仕合を交えていたので、キューティーハニーとはこれで二度目の仕合となる。

 逆に妹であるミスティーに対しては初仕合であり、そういう意味では姉妹揃って相手をする仕合そのものは初で有った。

 

 そして仕合を終えた五人は互いにスポーツドリンクを口にしながら休憩を取りつつ会話を始めた。

「いや~~、やっぱお姉さんだけでなく妹さんのミスティーハニーもスッゴク強いですねッ」

「そんな、あなた達だって中々の腕前だったわよ」

 汗を拭いつつドリンクを飲みながらミスティーハニーを称賛する光に対し、一方のミスティーは微笑みながら謙遜する。

「でも私達、少しずつですけど確実に息が合って来たと思いませんか?」

「これなら一緒に、そして確実に戦って行けますわ」

「ええ、でも更に戦力を挙げる為にも、自分の戦闘技術を磨いて置かないと。マメに身体を鍛えて置かないとスグに鈍っちゃうからね」

 休憩を取りつつ、自分達の連携が次第に良好して行っている事を告げる海と風に対し、少しでも戦力を挙げる為にも身体を鍛えて置こうと自負するキューティーハニー。

 

 するとその時、ふいにミスティーハニーが光たち魔法騎士の三人に言った。

「そう言えば私も姉さんから聞いたわ。あなた達がセフィーロって言う異世界で経験してきた事」

「えっ」「そ、それじゃ、私達が、その……」

 ミスティーの台詞に動揺する海と風に、ミスティーは微笑みを浮かべながら平然と答えた。

「ええ、姉さんがあなた達に私たち姉妹の出生を教えた事もよ」

 この言葉に魔法騎士の三人は言葉を失った。

 以前キューティーハニーと仕合をした時、互いの経緯を教え合ったのであったが、その際キューティーハニーから自分たち姉妹の出生について粗方耳にしていたのであった。

 無言に成る三人に、ミスティーハニーは悲しそうな微笑で言った。

「……大丈夫、私はもう平気だから。……確かに、最初は豹の爪(パンサークロー)の謀略で偽の記憶を植え付けられ、それで姉さんや聖龍隊のみんなと戦ってしまった。そして仕舞いには姉さんや自分が人工生命体であり人間で無かった事実を知ってしまった故に、自分の中からパンサーハニーと云う強靭な怪人を生み出してしまった……そして父として私の身を案じてくれていた如月猛(きさらぎたけし)はそんな怪人から私を庇って死んでしまった……。遂には私も、一度とはいえ、そのパンサーハニーに倒されて死んでしまったと云うわ……」

「「「…………」」」「…………」

 ミスティーの語りに悲痛な面持ちで聴き込む魔法騎士の三人に、悲痛ながらも険しい顔付きでミスティーの傍らで彼女の心情を耳に入れるキューティーハニー。

 そんな四人にミスティーは話を続ける。

「……だけど、そんな私をアッコちゃんが……ミラーガールが起きしてくれた奇跡の力で救ってくれたのよ。そして聖龍隊の総長である修司君は私の今までの所業を許してくれて、聖龍隊のみんなも心良く私を受け入れてくれたわ。姉さんだけでも嬉しいのに、聖龍隊のみんなは人間で無い私を受け入れ更には許してくれた。何よりも、それが嬉しいの。だからこそ、そんな私を受け入れ許してくれた聖龍隊の為にも、私は私なりに懸命に戦って行こうと心に決めているわ。そう、人で無かった私や姉さん、そして他の人達全てが幸せに過せる為にも、この戦いは絶対に避けては通れないのよ……!」

 語りの最後に力強く告げるミスティーの話に魔法騎士の三人は息を呑んだ。

 其処に、光が唐突にミスティーハニーに言った。

「で、でも……例え人間で無くってもハニーさんはハニーさん、聖龍隊にとって掛け替えのないメンバーじゃないですか。生まれはともかく、今は一生懸命に頑張っているなら凄い事じゃないですか。私はとても尊敬しますよ」

「ふふ、ありがとう光ちゃん」

 光の言葉にミスティーは微笑みながら礼を言った。

 更に海と風の二人も、光に続いてミスティーに申した。

「光の言うとおりですよミスティーハニー。過去は過去で見切りを付けて、今を懸命に生きているならそれで充分ですよ」

「そうですわミスティーさん。過去の罪を悔い改める為にも、今を懸命に必死に頑張っている貴女は素晴らしいですわ」

「ありがとう、二人とも」

 二人の台詞にミスティーハニーは悲しげな微笑を浮かべながらも礼の言葉を言った。

 だが、そんな悲しい微笑みのミスティーハニーに光が穏やかな笑顔で明るく言った。

「で……でもさ。ミスティーハニーは最終的にはお姉さんであるキューティーハニーと仲直り出来て、しかも聖龍隊のみんなからもちゃんと受け入れられたから良かったじゃないですか。最後はお姉さんや聖龍隊のみんなと仲良くなれたんだし、これからの自分の人生を大事にしていけば良いだけですよ」

 光の言葉にその場の皆が衝撃を受け言葉を呑んだ。

 そして、光の言葉に感動した海と風が、光に続いてミスティーハニーに言った。

「そ、そうよミスティーハニー、光の言うとおり貴女は最終的にはお姉さんと仲直り出来て更には聖龍隊にも加えて貰えたんじゃないですか」

「そ、そうですわ。それに御耳にしましたけど、ミスティーさんが一度死んでしまった際は、ミラーガールの能力でさくらさんの魔力を増幅させ、それでさくらさんがタイム(時)のカードを発動できた事により時間を戻して聖龍隊の皆さまが助けてくれたから、今でも元気に過ごせているじゃないですか。それで良かったじゃないですか」

 多少慌てながらも、微笑みの顔立ちでミスティーハニーに告げる海と風に対し、ミスティーハニーは微かな笑みを浮かべた。

 そんなミスティーハニーに、最後に光が笑顔で話し伝える。

「ミスティーハニー、過去の過ちを受け入れ、そして其れを一緒に受け入れてくれる掛け替えのない仲間やお姉さん。ミスティーハニーはそんな大切な存在をこれからは大事にして行けば良いんだよ」

「ひ、光……ちゃん……」

 光の優しくも心強い発言に動揺しつつも感動するミスティー、更に光は話を続けた。

「ミスティーハニーはもちろん、キューティーハニーだって、生まれはどうあれ今は歴(れっき)とした聖龍隊のメンバーで私達の大切なお友達じゃないですか。私は例え友達が人で有ろうと無かろうと、友達以外の何者でもないと思いますよ」

「……!」「光ちゃん……!」

 妹のミスティーハニー、姉のキューティーハニーは光の発言に対し大変感化され、とても感動した。

 

 産まれた時、二人の少女は空中元素固定装置から産まれ出た単なる人工生命体だった。

 しかし今は違う。

 今、二人の側に居てくれるのは紛れもない正真正銘の友と呼べる存在。

 自分達の素性を知っても尚、見捨てる事無く共に人生を謳歌してくれる大切な存在。

 

 出生は違えど、姉妹は本当の血縁者以上の繋がりを得て、そして同じ命有る存在(もの)として自分達を友と認めてくれる聖龍隊(なかま)と同じ運命(みち)を歩み続けるのだった。

 

 

 

[感じられし繋がり]

 

 この先の大戦を間近に激しい仕合を行い続ける聖龍隊メンバー。

 しかし、そんな最中でも隊員達は各自、個々で休息を入れていた。

 

 そしてとある休憩ルームでは、魔法騎士の三人とカードキャプターの木之本桜(きのもとさくら)と彼女の親友であり聖龍隊別働隊で共に戦う事を決意している李・小狼(リ・シャオラン)と李・苺鈴(リ・メイリン)の従兄妹組、そして何故か聖龍隊の戦闘メンバーでは無い筈の大道寺知世(だいどうじともよ)までもが一緒に居た。

 合計七人は休憩と称して菓子を摘まみつつ、魔法騎士の三人は知世が持参して来たビデオカメラの映像を知世に勧められ見せて貰っていた。

 映像を見終わった三人は目を輝かせたり半ば興奮したり、はたまた感心したりした様な表情で呆然としてしまった。

「ふふ、どうですか? 私が撮影した貴重映像の数々は」

 そんな魔法騎士の三人に穏やかな微笑みを向けながら言葉を掛ける知世、そんな彼女に対し魔法騎士の三人は唖然としながらも言葉を返した。

「え、ええ……中々、面白い映像でしたわよ」

 苦笑しながら感想を述べる風。

「と、知世ちゃんって、結構色々と撮影しているんだね」

 動揺しながらも複雑そうな表情で言う海。

「はは、それにしてもさくらちゃん凄いね。こんなに沢山のカードを封印できて来られて、今では自由に使える様にまで自分の魔力を成長させる事ができたんだから」

「そ、そんな。み、みんなが……お友達である小狼君や苺鈴ちゃん、知世ちゃん。それに聖龍隊のみんなの協力が有ったからこそ、無事にカードを集める事が出来たんですよ」

「さくらの言う通りです。修司さんや聖龍隊のみんなの協力も有ったからこそ無事にクロウカードを全て集める事が出来たんです」

「ま、小狼は最初、得体が知れない上に赤の他人である聖龍使いに協力して貰おうってのは気が退けていましたけどね」

 ビデオカメラの映像を見た光が笑いながらさくらに言うと、さくらは親友達や聖龍隊の皆の協力が合ってこそ成し遂げられたのだと謙遜する。そんなさくらの意見に同意する小狼に、当初彼が聖龍使いの協力を余り心良く思って居なかった事を打ち明ける苺鈴。

 魔法騎士の三人が知世に勧められ見せて貰っていたのは、知世が今まで撮影して来たさくらがカードをキャプチャーしていく数々の場面で有った。

 

「さくらさんは今まで沢山のカードで起こった事件を、こうして解決していったんですね」

 映像を見終わり、撮影されているカードでの事件解決の場面に対して述べる風。

「は、ははは……でも、大変な事件ばっかりでいっつもヘトヘトでしたよぉ」

 そんな風に対し苦笑しながら話し返すさくら。

 と、その時。ふと海が有る事に気付いてさくら達に訊ねてみた。

「あ、ねぇ、今気付いたんだけど……ビデオカメラの映像にはさくらちゃんだけでなく、小狼君や聖龍隊のみんなが、それも素顔で映っている映像が多数記録されているけど、何故か修司君の……彼が素顔で映っている場面が一つも無いけど、これは……?」

 すると映像を撮った知世が海に答えた。

「あ、それはですね海さん。どうも修司さんは、何だかカメラに自分が撮られるのが好ましくないらしくて、いつも私がビデオを回していると離れて行ってしまうんです」

「えっ、そうなの知世ちゃん」

 海がすかさず訊き返すと、知世は真顔で答えた。

「はい、あの人は市長としての仕事で撮影されるのは致し方ないと割り切っているのですが、基本的に自分を写真や映像に撮られるのは嫌っているみたいなんです」

「そ、そうだったの……」知世の話を聞いて唖然としてしまう海。

 テレビ等では意外と目立った言動をする修司が、意外とカメラに写される事を嫌がっている事実に驚いてしまったのだ。

「そう言えば海ちゃんの言う通りだね。修司君じゃ無く、彼が鎧を着て戦っている聖龍使いの場面は映像に有るのに、何故か素顔の修司君だけ全然映って無いよね」

 海に続き、映像には素顔の修司が全く映り込んでない事を述べる光。

「そうですわね、案外修司さんってカメラ映りを気にする子なのかもしれませんわね」

 続いて風も思い詰めた様な面持ちで呟く様に言った。

 

 そんな他愛も無いお喋りが続いていると、突然苺鈴が口を開いて言い出した。

「そう言えばさ、前にさくらから聞いていたんだけど確かに光さん達って何処か私達と似ているわよね」

「んっ、そうか? まぁ、確かに言われてみると……」

 苺鈴の発言を聞き、小狼も神妙な顔で魔法騎士の三人の顔を見詰めてみる。

「確かに……でも、似ていると云うよりも何処か……そう、何だか他人とは思えないそんな感じが見て取れるな」

 すると小狼に続き知世も穏やかな表情で魔法騎士の三人を見ながら告げた。

「もしかしたら――私達と魔法騎士の皆さん、何かしらの繋がりが有るのかもしれませんわね」

「つ、繋がり……?」

 知世の言葉に動揺を見せるさくらとその場の面々。

 そんな皆に知世は続けて言った。

「そうですわよ。世の中って案外広い様で狭いんですし、もしかしたら私達と魔法騎士のお姉さん達って何かしらの血縁が有るのかもしれませんわよ」

「そ、そうかしら……?」

 呆然とする海で有ったが、そんな彼女に知世がすかさず告げた。

「そうですわよ。私もさくらちゃん同様、お姉さん達を初めて見た時なんだか他人とは思えない様な不思議な気分になったんですのよ」

「ま、まぁ。それは実を言うと、私も同じなんですけど……」

 風が躊躇いながらも釈明を述べると、更に知世は三人に語った。

「案外、私達とお姉さん達って何かしらの繋がりが有るのかもしれませんわ。現に遂最近に成って分かった事なんですが、私とさくらちゃんも実は親戚だったんですのよ」

「えッ、そうなのさくらちゃん?」

 光が驚きながら訊ねると、さくらは困惑しながらも光に答えた。

「は、はい、実はそうなんです……。私も最近に成って知ったんですけど、知世ちゃんと私って又従姉妹(はとこ)だったんです」

「まぁそうでしたの」

 さくらの答えに風は穏やかな口振りで返事をする。

 更にその時、唐突に光が神妙な面持ちで語り出した。

「確かに、人と人には何かしらの繋がりが有るのかもしれないよね。私と海ちゃん風ちゃんがセフィーロに呼ばれた事で巡り合ったのはもちろん、私たち三人が修司君やアッコちゃんと出逢った事で聖龍隊に勧誘されたのも何だか偶然とは思えないんだよね」

 光の話の内容に軽い衝撃を心に受けるその場の皆。

 光は続けて皆に語った。

「人との出会いは全て偶然では無く必然であるって私聞いた事が有る。私達がこうして巡り合ったのも、何かしらの繋がりが有るからなのかも知れないし、もしかしたらそれ以上の繋がりが私達に有るのかも知れない。私が海ちゃんや風ちゃんに出逢えた事も含めて、さくらちゃんや小狼くん苺鈴ちゃん、それに知世ちゃん達聖龍隊のみんなに出逢ったのも偶然では無く必然的な幸運だったのかもしれないねっ」

 

 

 人との出会いは全て偶然では無く必然的。故に自分の側に居てくれるその人物にとっても互いに出逢えた事が運命と云う名の必然であるのかもしれない。

 

 その昔、人と人との出会いを[仕合せ]と書いていたと云う。

 そしてその仕合せを簡略的な文字にしたのが[幸せ]と云う字の語源だと伝えられている。

 

 人との巡り合わせ、それは掛け替えのない一つの幸で有るのかもしれない。

 魔法騎士の三人とカードキャプターの面々、彼女等は自分達がこうして巡り合い出逢えた事を不思議と感じつつ、一種の幸せ(仕合せ)だと心から感じるのだった。

 

 

 

 

[命を救うべく]

 

 この日、魔法騎士の三人は毎度の如く仕合で疲れ切った身体の各所に負った生傷をナースエンジェルに治して貰っていた。

「ふぅ、いつもありがとうございます。ナースエンジェル」

「いえいえ。私が一番得意としている能力は治癒能力ぐらいですし、これくらいは御役に立てていかないと」

「そんな、これくらいって。ナースエンジェルが直ぐに怪我とか治してくれるからこそ、私達はまたすぐに仕合を行えてかつ戦闘に戻れるんじゃない。貴女の能力は充分立派よ、りりかちゃん」

 軽い傷を負った風に治療を施しながらも謙遜の発言を述べるナースエンジェルに称賛の言葉を告げる海。

 だが海の発した言葉を聞いた途端、ナースエンジェルは何処かしら沈鬱そうな暗い表情を浮かべた。

「「「?」」」

 突然表情を一変させるナースエンジェルを不穏に思う風と海、そして一緒にその場に居た光。

「ど、どうしたの? りりか、ちゃん……」

 海が表情を変えたナースエンジェルに戸惑いながらも訊ねると、彼女は悲しげな面立ちで答えた。

「は、はい。私の能力は怪我をした仲間を瞬時に回復させる事が出来る、つまりはみんなを戦わせ続けてしまう――そんな能力(ちから)ではないかと、最近思ってしまって……」

「なッ、何を言っているのりりかちゃん!?」

「な、何故その様な事を思ってしまうんですか?」

 ナースエンジェルの悲痛な言動に驚愕し動揺する海と風が彼女に訊ねると、ナースエンジェルは三人に語ってくれた。

 

 それは前日、今自分達が居る聖龍隊の基地施設を見て回っていた二人の軍人、自衛隊特別任務部隊統括司令長官のミナモトと彼の側近である副長官から言われた事で有った。

 二人はナースエンジェルの高い治癒能力は、怪我を負った軍人等の戦場で活躍する兵士を瞬時に回復させ、完治した兵士を再び戦場に戻して再び戦わさられると彼女に言ったのである。

 故にナースエンジェルは思った。

 例え怪我を完治させても兵士はスグに戦場に戻って行き、そして再び怪我を負いまた完治させる、そして再び戦場へと向かい――――こうして兵士や軍人たちは永劫に戦場を駆け巡ってしまう結果にしか成らないのかと。

 それは聖龍隊も同じであった。

 どんなに大切な仲間の傷を回復させてあげても、身体の怪我や痛みが消えれば兵士や軍人の様に再び戦場を駆けずり回る。

 彼女が怪我を治すのは戦わせる為では無い、精一杯生き続けて欲しいが為に怪我を治し続けるのである。

 しかしナースエンジェルは、自分の能力が永遠に人を戦い続けさせてしまうだけの能力でしか無いのかと自責の念に駆られてしまうのであった。

 

 そんな白衣の天女ナースエンジェルの悲痛な想いを彼女の口から聞いた魔法騎士の三人は彼女の心中を察し居た堪れない心境になった。

「……そ、そんな……」

 ナースエンジェルから事の全てを聞いた海は愕然と成り、開いた口が閉まらなかった。

 そんな海を始めとした、蒼然となっている魔法騎士の三人にナースエンジェルは悲愴な面持ちで言った。

「……だけど、軍人さんの仰っている通り。私の能力でいくら怪我した人を治しても、怪我が治ればまた戦場に戻って再び相手と戦い傷つけ合う……私の能力って、結局は人を死ぬまで争わせてしまう、そんな業なのではないのかなって……」

 悲痛な心情が沁み渡ってくる重苦しいナースエンジェルの言葉を聞いて、魔法騎士の三人は咄嗟に発言し出した。

「そ、そんな事無いわよ、ナースエンジェル!」

「そうですわ、確かに私達は貴女に怪我を治して貰えばスグに戦いに戻らなければいけないとはいえ、みんな貴女の能力には心から感謝しているんですのよっ」

 切羽詰まった勢いでナースエンジェルに言い寄る海と風、しかし一方のナースエンジェルは悲愴な面持ちを変えず悲しい表情のままであった。

 そんなナースエンジェルを元気付けようと話し続ける二人。

「た、確かに……いくらナースエンジェルが怪我を治し続けても、争いが絶えない限り傷を負ってしまう人が後を絶たないのは現状よ。だけど、何も私達は傷つけ合う為でも無ければ戦いを好んでいる訳でも無いのよ」

「そうですのよ。私達はその争いや戦いで傷付く人が少しでも減ってくれればと、力の弱い人達に代わって戦っているだけなんです。それに私達だって本当は戦いなんて望んではいません、可能であるなら戦いを避けて平和的に物事を解決して行きたいのが真情なんですのよ」

 悲しみに浸るナースエンジェルに自分達の心情を伝える海と風。更に其処へ光も加わってナースエンジェルに一言掛けた。

「りりかちゃん、あなただって何も怪我をした人達に戦いを続けさせるために治療してあげている訳じゃないでしょ?」

「え、ええ……」

 光に言葉を掛けられたナースエンジェルは小さく返事をした。

 更に光はナースエンジェルに優しくも強い意志の元話し続けた。

「りりかちゃんのナースエンジェルの能力は少なくとも聖龍隊の中では一番純粋な優しい能力だと私は思うよ」

「え? そ、それは何故……」

 光の発言に戸惑うナースエンジェルが訊くと、光はそれに答えた。

「だって純粋に怪我をした人を治す能力って、今ん所ナースエンジェルしか聖龍隊には居ないじゃん。そりゃあ、風ちゃんやセーラームーンにも怪我を治せる事が出来るけど、それ以外にも戦う為の能力や技も持っている。無論それが悪い事だと言わないけど、純粋に回復能力だけを持っているナースエンジェルの存在は聖龍隊では大きいんじゃないの?」

「……」

「聖龍隊には多くの能力者が居て、戦闘力の高い人達が目立つ中ナースエンジェルは回復系の能力を中心とした、最も優しくて平和的な存在じゃない。私はそんなりりかちゃんの存在が聖龍隊では必須だと思うんだけどなぁ」

「…………」

 光の語りにナースエンジェルが耳を傾けていると、海と風の二人も再び話に入った。

「要するに光は、ナースエンジェルの高い治癒能力は戦闘力の高い聖龍隊の面々の中では一番優しい存在だって言いたい訳よ、ねぇ風」

「その通りですわよナースエンジェル。そもそも、貴女の能力は最初から戦う為の能力では無く、傷付き倒れてしまった人達を少しでも苦痛から解放してあげる為の尊い能力ではないですか。私はそんな貴女が同じ聖龍隊に居てくれて心から嬉しいですわ」

「う、海さん、風さん……」

 光の話に解釈を付ける海に、優しい微笑みを浮かべてナースエンジェルの存在の素晴らしさを述べ続ける風に、ナースエンジェル自身は唖然としてしまった。

 

 そして満面の笑顔で光は力強くナースエンジェルに話した。

「りりかちゃん、ナースエンジェルの能力は決して争いを続けさせるような力なんかじゃ無いッ。傷付いて苦しんでしまう人を少しでも苦痛から救ってあげる立派な能力だよ。そりゃあ、私達も怪我を治して貰ったらスグに戦いに戻らなきゃいけないけど、それはあくまでも戦いを終わらせるためであって戦い続ける為じゃない。そして、そんな私達の怪我を瞬時に回復してくれるナースエンジェルだって立派に戦いを終わらせる事が出来る一人なんだよ。そんな君が自分の能力について悲しむ必要なんでこれっぽっちも無いよッ」

「光さん……!」

「もっと自分の能力(ちから)に、自分がナースエンジェルだって誇りを持ってよ、りりかちゃん! りりかちゃんはこれから先も今まで通り変わらず傷付いた人を治し続けていけば必ず良い結果に結びつく筈だよッ。私達だって出来得る限りの範囲だけだけど協力するよ」

 光に続き、海と風もナースエンジェルに言い放つ。

「そうよナースエンジェル、貴女の能力は決して争いを続けさせるための力じゃ無く、人を癒してあげられる素晴らしい能力よ。だからそんなに悲観的にならないで」

「りりかさん、貴女は貴女でこれからも多くの人を治し癒してあげて居れば、必ず平和な世界を築く事が出来る筈です。私達も同じ事ですが、決して諦めず最後まで自身の能力でみんなを助けて行きましょう」

「海さん、風さん……!」

 二人の温かい言葉にナースエンジェルは心を打たれた。

 

 そしてナースエンジェルは表情を一変させ、凛とした力強い顔立ちで三人に言い放った。

「はい、解りました。そうです、私の力は、ナースエンジェルの存在は、決して人々を争い続ける為の物では無い……! 傷付き、苦しむ人々を救うための能力(ちから)です」

 

 ナースエンジェルは最後に魔法騎士の三人にこう告げた。

「戦いで嘆き、悲しむ人達の命を救うのがこの私――ナースエンジェルとしての使命です!」

 

 白衣の天女はこうして己の中で苦悶し続けていた自問自答を乗り越えられた。

 

 争い事に限らず、人は生き続ければ何かしらの戦いに身を投じなければいけない。

 それが国の、世界の為なのか。はたまた、己個人の為なのか。

 故に人は人である限り、傷付き苦しんでしまう。

 そんな現状の中でも、白衣の者は傷を負い苦しんでしまう者達を救い続けるのだった。

 

 生きる事は戦う事、すなわち生きる事は傷付く事。

 そんな人を治す事は、人が永遠に傷を負い続けなければいけないと云う事でもある。

 

 しかし、それは人と人とを永遠に争い続ける為に治療を施しているのではない。

 人と人が互いに衝突し傷付け合っても、いつかは訪れる平和な時に、共に生きて居られる時の為に、そう生かし続ける為に治しているのだ。

 

 白衣の天女ナースエンジェルは、いつか争いの無い平和な時が来るのを信じ願いつつ、これから先も傷付いていく仲間や人々の苦痛を少しでも拭って行こうと、命を救って行こうと、新たに心に決めた。

 

 

 

[未来に伝え遺して行きたい意志(おもい)]

 

 ある時、魔法騎士の三人が仕合を終えて一段落していると、其処にしんせん組の一人である花丘イサミが魔法騎士の三人と話がしたいとやって来た。

 どうやらイサミが後世に遺して置きたいと云う聖龍隊の記録を記し続けているノートに、少しばかり解釈に無難になってしまう個所が有った為、其処の部分だけ再度魔法騎士の三人に訊ねたいとの事であった。

 

 魔法騎士の三人は以前イサミに話し伝えた様にその時も事細かく丁寧に述べて行った。

 

 そして粗方の話をイサミに聞かせ伝えると、今度は光の方がイサミに訊ねた。

「ね、ねぇ。イサミちゃん」「何ですか、光さん」

 唐突に訊ねて来る光にイサミは平然と返事すると、光は神妙な面持ちで平然とした態度で訊いてきた。

「イサミちゃんって、あの幕末に活躍していた新撰組の子孫だったよね。確かトシ君とソウシ君の先祖もイサミちゃんの御先祖と一緒に活動していたって子耳にしたんだけど……」

 光の質問にイサミは一瞬困惑しながらも、しっかりと光に対して答えた。

「え……あ、ああ、そうですよ。だけど私やトシ達の御先祖は、あくまで別働隊でして史実に載っている京の守護職の新撰組とは別の組織なんです」

「えっ、そうなんですか? 私てっきりイサミさん達の御先祖も、あの近藤勇や土方歳三らと共に京の都で活躍なさっていたとばかり思っていましたわ」

「じ、実を言うと私達の御先祖様は京の本隊とは別に活動していた組織で、しかも私たち三人の先祖は発明好きなもんだからその別働隊でも勝手に発明係って名乗っていた三人組なんですよ、はい」

 イサミの語りについて返して来た風に対して、イサミは若干の動揺を見せながらも自分達先祖の真情を話した。

「ふぅん、有名な新撰組とは別の組織として活躍していたって訳だね、イサミちゃん達の御先祖たちは」

「そ、そうなんですよ、はい」

 自分達の先祖について答えるイサミに再び話しかける光、そんな光に少しばかりの焦りを見せてしまいながらも答えるイサミ。

 

 その時、光や風に続いて海もイサミに話し掛けた。

「イサミちゃん、そう言えば貴女は私達を含めた聖龍隊の真の姿を記録に遺して置きたいって云うけど、実際聖龍隊のどんな事を記録に遺して行こうと思っているの?」」

「え、それは……」

 しばし無言に成るイサミ、そして彼女は意を決して海の質問に答えた。

「私……私は、聖龍隊が今まで経験してきた数多くの戦いの中で、聖龍隊のみんなが感じ取った多くの気持ちを……そう、戦いの中で学んできた教訓や想いを後々の時代の人達にも知って貰いたいんです……!」

 話しながら力強い眼差しを向けてくるイサミの言葉に衝撃を受け何も言い返す事が出来ないで居る魔法騎士の三人。

 更にイサミは力強くも心に来そうな温かい口振りで語り続けた。

「聖龍隊は今まで数多くの激戦を経験し乗り越えて来ました。でもそんな戦いの中でも聖龍隊は決して諦めず、希望を仲間を信じて来れたからこそ戦い続けられたんです。そんなみんなの力強い意志を、想いを私は後世の人々にも知って欲しいんです」

「「「……」」」

「聖龍隊の力強くも絶対に諦めない生き様を、私は伝えて行きたいんです……!!」

 イサミの力強い釈明に魔法騎士の三人は心を打ち抜かれた。

 

 そんなイサミの真情に感銘を受けた三人は、それぞれイサミに言った。

「イサミちゃん、あなた其処まで聖龍隊の事を……」

 聖龍隊の皆の事を想い、そんな彼等の真情を後世に伝えようとしているイサミの心情を知って、如何にイサミが聖龍隊の事を快く思っているか理解する海。

「イサミさんは心の底から聖龍隊の皆さんを慕い、想っていらっしゃるのですね」

 イサミの心中を知って心から感銘を受けた風は穏やかな笑みでイサミに語る。

「イサミちゃんは聖龍隊の歴史と云うよりも……聖龍隊のみんなが感じて来た想いを未来に遺して行きたいんだねッ!」

「は、はい! そうなんです。私自身、聖龍隊のみんなと一緒に頑張って来れたからこそ、此処まで逞しくなれたんです! 私は、そんな聖龍隊のありのままの心情を記録として遺しつつも伝えて行きたいんです!」

 花丘イサミが遺して行くのが聖龍隊の記録と云う名の聖龍隊メンバーの熱い生き様で有ると解った光が明るくイサミに言うと、イサミは元気良くはっきりと光に自身の決心を強く述べた。

 

 そして魔法騎士の三人は、イサミの心情を知って改めて決意した。

「私達も、今までの聖龍隊の活躍に負けない実力で頑張って行きましょうッ」

「そうですわ、私達だってセフィーロで多くの戦いを乗り越え、そして沢山の事を学んで来られたんですもの。それを聖龍隊でも活かしていきましょう」

「うん! 私達、魔法騎士(マジックナイト)だって未来の人達に凄いなって思える様な活躍していこうねッ、海ちゃんッ、風ちゃんッ」

 

 戦いとは、何も戦人や弱い人々に傷や痛みを負わせるだけのものでは無い。

 人は愚かで弱いが為に戦いや争いを繰り広げてしまう。

 しかし人は、その戦いの中でしか学べない現実や感じられない悟りを知る事ができるのである。

 そして、そんな戦いの中で知り得た事は少なからず後世の未来でも多くの人々の生きる糧となるのである。

 

 魔法騎士の三人は、自分達も聖龍隊の面々に負けない様に、自分達がセフィーロで学び培ってきた経験を戦いの中で活かしていこうと一致決心するのだった。

 

 

 

[知って貰いたい想い]

 

 魔法騎士の三人は、自衛隊によって身体を改造されたと云う少女ちせが籠っている一室の前に立ち尽くしていた。

 三人は聖龍隊の合同訓練以来塞ぎ込んでしまっている彼女にどうにか元気になってほしいと想い願い、彼女と少しばかり話をしてみた。

 

 するとちせは悲しげな顔を三人に向けて言ったと云う。

 自分はどう足掻こうと聖龍隊(ここ)に居るみんなとは違う。

 どう頑張ろうと自分が悍ましい兵器には変わらないのだと。

 どう生きようと、過去に殺めてしまった命は還って来ないのだと。

 

 そんな悲愴な言葉を述べるちせに対して魔法騎士の三人は悲しみに暮れた。

 ちせ本人も聖龍隊の皆々から励ましや元気付けの言葉を掛けて貰ってはいたが、皆に励まされれば励まされるほど自分が皆とは違って末恐ろしい兵器(そんざい)であると感じてしまうと云うのだ。

 

 三人は考えた。

 どうすれば彼女を、ちせを元気づけられるのだろうか。

 どうすればちせに幸せを感じて貰えるのだろうか、と。

 

 かつて彼女達が召喚された異世界セフィーロにも、ちせとは根本的な事情が違いながらも己の心中で葛藤し続け自らを苦しめていた人物が少なからず居た。

 

 魔法騎士はそんな人物達も可能な限り救って来た。

 それと同様に、あのちせにも救いの手を差し伸べたいと三人は思ったのである。

 

 しかしセフィーロの時とは違い、かなり難しい問題だった。

 

 それはちせ本人の心の気構えが一番の問題であり、彼女自身が自ら元気に成らなければいけないからだ。

 更に、この聖龍隊で決起しようとしている【異次元からの脅威】との戦いにも立派な功績を挙げなければ、再びちせが自衛隊や国家の手中に戻されてしまうと耳にしたのだ。

 

 

 魔法騎士の三人、獅堂光(しどうひかる)/龍咲海(りゅうざきうみ)/鳳凰寺風(ほうおうじふう)は自分達の世界やセフィーロを始めとした多くの異世界の命運の他にも、一人の少女の行く末も自分達に懸かっている現状に、事の重大さを噛み締めたのだった。

  

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