みなさんありがとうございます。
朝は暑さで目が覚めた。左右はアイと冬子、上には先輩がいるものだから、春とはいえどもさすがに暑い。
声をかけて起こして離れてもらう。由良さんと楓さんも目が覚めるとハグをしてくるものだから、順番に皆ハグをすることになり、連れ立ってシャワーに向かう。さすがに一人では利用できないが、パートナーと利用するのは普通のことだと説得されてしまった。朝食を済ませて寮を出る。
今日は念のため一限目の授業は出席せずに、三人のパートナー登録を優先する。
形式上はパートナーのいる女子に手を出すのはご法度であり、すぐに学園の治安部員が飛んでくるので、ある程度の抑止力にはなるだろう。
左右の腕には由良と楓が巻き付いている。しかし昨日までは由良も楓も被保護者として見ている割合が多そうだったが、今は完全に恋人のような空気を醸し出している。呼び方もさん付けはやめてくれとお願いされたし、そんな二人の姿に冬子と先輩は仕方のないという者を見る目で見ているし、アイは少し膨れている。
そんな感じで三人のパートナー登録を済ませ、放課後になり、今は忠一と羅城門に侵入していた。
第『捌』階層、『既知』領域
「ん?ここが八階層なのか、随分瘴気圧が薄いな」
これまで既知外領域でしか活動してこなかった忠一は、既知領域の瘴気の薄さに驚く。モンスターの討伐サイクルの早い既知領域は瘴気が停滞せず、モンスターの出現率も低く、既知外領域で問題なく活動できる者からするとメリットは無きに等しい。
「さあ行こう、今日中に10階層に到達したい。しかしこのマスクは本当に必要なのか?」
そう、現在二人は忠一が持ってきた白いホッケーマスクを装備している。
「当たり前だ。ここでは他の生徒と遭遇する確率が高いだろう。自分たちにつながる情報はできるだけ少なくするべきだ」
「わかったよ。事前の打ち合わせ通り最速でゲートを目指す。だからレベルの低い忠一がペースメーカーになってくれ。僕がナビゲートしながら並走する。モンスターも人間もできるだけ無視する。それじゃあ行こう」
そう言って二人は走り始めた。本人たちには小走り位の感覚だが、レベルの低い忠一でも
よってあまり広いとはいえない迷宮型ダンジョンの薄暗い通路を、二つの白いホッケーマスクがかなりの速度で迫ってくることになる。
途中で立派な鎧を着たでかいオークと対峙しているパーティーに遭遇したが、巨大なオークが邪魔だったので横殴りになりマナー違反だが切り捨てさせてもらい、そのまま走り抜けることができた。ほかにも何組かのパーティーに遭遇したが、皆道を開けてくれたので無事に9階層に向かうゲートに到着することができた。
ここにも
「ここが
「そうだな。
「そうだね。まだ
「それなら先に入ってるから、中で合流しよう。ヒカルなら場所もわかるだろ」
「了解~。じゃあクラスアップ終わったら中で合流しよう。少しでも稼がないとね」
そうして二人とも
神木光 Lv98
職種:
定型技能
剣術(剣操作に補正)Lv3
蹴術(蹴り攻撃に補正)Lv1
聞き耳(足音等を聞き取りやすくなる)Lv7
対神特効Lv1
振り分けポイント:16→17
力35
速35
防40
精10
操37
運0
取得可能技能
称号:霊落者
「ふう…予想通りクラスアップできた。
ず羅城門に向かうか」
そうしてまたレベルを上げるためにダンジョンに潜るのだった。
第『参』階層、『既知外』領域
「さて、忠一はどこかな」
「どうしようか……。まあ今の4人なら問題ないだろうから、忠一と合流しよう」
そう考え、忠一と合流するために一つのマーカーの方へ向かい始めた。
忠一と合流するまでに幾つかの玄室を掃討し、
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「あっ」
パーティーのマッパーを担当する冬子は、味方のアイコンが増えたことに気が付き声を出す。その声を聞いた涼香が気になり声をかける。
「ん?どうしたん」
「いや、今味方のマーカーが増えたから、ヒカルか忠一君が入ってきたのかなと思ってね」
「そういえば言ってたね。どっちかが一人で入ってるって」
150cm位の小柄な体で自分の身長位の大型の杖を手に持ち、つばの広い尖り帽子をかぶったゆかりが会話に加わる。ちなみに被っている帽子はファッション的な意味しかない、ただの帽子である。
「うーん、多分今入ってきた方がヒカルだと思う。ヒカル、
から、
「あー、言ってたね。しっかし、ヒカル君ももう
「私もこの杖のおかげで効率が上がった。やっぱり装備は大事」
「何話してるの?」
先頭を進んでいたアイが会話に入ってくる。本来は
「ヒカルがダンジョンに入ってきたみたいだから、多分
「あっ、ヒカルが入って来たんだ。近くにいるの?」
「いや、結構遠いから、合流した時には閉門時間になってると思う。それよりももうすぐ玄室に着くわよ。数は20匹位。最初に私たちが魔法を撃つから、その後突っ込んで。大丈夫だと思うけど無理はしないように」
ゆかり・ピクシー・カハクの魔法で奇襲を受けたゴブリンたちは、アイと涼香の前衛コンビに数分もかからずに掃討された。大物相手の方が得意なアイと違い、薙ぎ払いで数匹まとめて屠られるゴブリンは涼香にとって非常に効率の良い獲物になっている。
「そういえば冬ちゃん、来週から女子のレベル上げを手伝うんだっけ」
ゴブリンのドロップ品を拾いながら涼香が冬子に尋ねてくる。ドロップ品はヒカルがこの前入手した
「そうなのよね。まったく、まともな男子が少なすぎる。舞も頑張ってるけど、今のままだとろくなことにならないのは目に見えてるわ」
「だよね~。この前も真理が男子に拉致られそうになってたし。それにほとんどの男子、ろくにダンジョンにも行ってないんだって?放課後はクレハ先生の準備室にずっと屯してるんだって。クレハ先生怒ってたよ。
「不良じゃない男子って何人だっけ?」
「ヒカル君と忠一の他には3人だけ。大地君と拓海君に吉彦君」
「そういえばヒカルが言ってたわね。明日のダイブは大地君を連れて行くって。だから彩音に連絡しといてほしいと」
「あ~、あの凸凹カップルか~。確かに早いとこレベルを上げとかないと悲惨なことになるのが目に見えるもんね。絶対この学校、寝取り趣味の奴とかウジャウジャいそうだし」
「多分拓海と吉彦もヒカルは誘うんじゃないかしら。ヒカル曰く悪い奴らじゃないみたいだし、今のままだと男子が少なすぎるってヒカルも嘆いてたから。それから舞は自分のクラブを立ち上げるみたいだから、うちのクラブとの
そんな風に彼女たちのダンジョンダイブも順調に進んでいた。
羅城門の閉門時間になり、女子チームと合流したヒカルと忠一は、女子チームの希望で
「カンパーイ」
涼香は
外では大した値段ではないこれらの食事も、ここではダンジョンに積極的に入らせるように嗜好品の類は非常に割高に設定されている。本来ならこの時期の一年に出せるような金額ではないのだが、既知外領域を主戦場にして重量のあるドロップ品も問題なく持ち帰れるヒカルたちにとっては、少し贅沢する位の感覚の金額であった。
「本当にこれ食べていいんですか?」
「大丈夫、大丈夫。今日は全部ヒカルの奢りだから」
「何でアイがドヤ顔するんだよ。大丈夫、これぐらいの出費なら毎回は困るけど、たまになら大丈夫だから。遠慮せずに食べてね」
クラブにも捨てられて戦闘職でもないカナデは、銭の蓄えもなく毎日カツカツで寮で出される朝夕の食事で生活してきたため、食堂を使うのも久しぶりで、机の上に並んだ食事に動揺するのも仕方ない。
食事が進み各自の腹もこなれて来ると、会話も進んでくる。
「しっかし、この前の
「本当、あれはビックリしたよね~」
「あんなのも見ると
「ん?なんで
「アイ、あんた授業全然聞いてないわね……。しかし
冬子の質問に誰も答えられない中、忠一が食べるのをやめて口を開く。
「
「なんですって、詳しく教えなさいよ」
「なに、簡単だ。まず、現在既知領域一階層でPKをしているクラブの中に一人、
忠一が提案した内容を理解したら、アイ以外の皆が軽く引いているが、効率だけ見れば悪くはない提案に聞こえてくる。用が済んでもしかしたら命乞いしてくる人間の首を撥ねなきゃいけないという最大の問題があるが。
「おまっ、それでこの前パーティーの追放の機能の有無を聞いてきたのかよ。いや、有効なのは分かるけど、さす
がにそれは人としてダメでしょうが」
「うーむ、やっぱりだめか。そんな気はしていたが」
「そっ、それよりさ、明日のダンジョンダイブ、彩音たちも誘うんだよね」
涼香さんが素早く話題を明日のゲストの話に変える。
「ああ、この前大地とは一緒に潜ったが、十分にやっていけそうだったから、クラブメンバー前提で考えている」
誘導は上手くいき明日のダンジョンダイブの話題になり、打ち上げは続いていった。