葦原学園の授業には、一般的な授業よりもダンジョンダイブのためのサバイバル知識や武器の使い方を学ぶことが重視されている。筆記テストはあるが、ダンジョンに潜る特別実習さえ規定ラインに達していれば白紙でも問題ない。これは学園の運営側が普通科生に求めているものが、ダンジョンから資源を運び出す炭鉱夫としての働きだからだ。むしろレベルが上がれば身体能力以外にも記憶力等も強化されるため、余計な知識を付けられたくないとして、SEX漬けにしているという考察もされていた。
そういったダンジョンで役立つ授業は、できるだけ出席している。持ち歩ける武器の量に縛りが少ないため、主武装の片手剣はもちろんのこと、大剣やハルバート等の重量級の武器も使えるようになりたいし、戦槌の授業はアイも受けているので一緒に受けている。
午前の授業が終わり、今日は涼香さんとゆかりさんも回復したのでフルメンバーでのダイブだ。
冬子が運よく
その甲斐もあり、次々と玄室を攻略していく。最初はゆかりさんは魔弾マジックボルトの発動に手間取ったが、今は普通に使いこなし、ピクシー、カハクに続く3基目の砲台になってゴブリンを殲滅している。
涼香さんの槍使いも様になり、スムーズにゴブリンを倒していく。
そして玄室のゴブリンを殲滅した時に、先ほどまで存在しなかった物が突然現れた。
「おー、
初めての
「忠一、どうする?必然的に開けるのは僕か君のどちらかだと思うけど」
そう、このメンバーの中には
火は数秒で収まったのだが、あまりの光景に皆しばらく動くことができなかった。
「いや、明らかに箱より長いじゃない。おかしいでしょ」
「薙刀か。使うとしたら涼香さん?」
「え、ウチが使っていいん?」
「いいんじゃない。私やゆかりは必要ないだろうし、アイはハンマーだし、でヒカルや忠一には合ってなさそうだし、で涼香しかいないでしょ」
「ありがとう!こんなすごそうなのもらっちゃっていいのかな?」
「使わなかったら売ることになるんだから、使える人が使うべきでしょ」
「オッケー、それじゃあ涼香さんが使ってよ。でも呪われていないか鑑定してもらわないといけないから、一旦預かっておくね」
まれに精神汚染や呪い状態にしてくるアイテムも存在するので、未鑑定のアイテムは直接触らないことを推奨されている。そのため厚めの皮手袋で掴んで、ドロップ品の薙刀を
クラスアップにより遊び人系とはいえ二次職の
「いえ~い!」
ゴブリンキングが瘴気に返り、前衛を担当したアイと涼香さんがお互いにハイタッチをしている。
「いや~、私たちも強くなったね~」
「クラスアップってスゴいね!体の動きが全然違う」
「すごいね。すぐに飛び込めるようにはしていたけど、予想以上に危なげなく倒しちゃったね」
あまり強くはなかったとはいえ、
脱出後、アイテムの清算と薙刀の鑑定を依頼。
クリスタルなどの売却金は全員で山分け。薙刀は『銘器《ネームド》』で、名を『燈《あかり》』といい、
「薙刀、呪われてなくてよかったね」
「本当だよ。あー、早く使ってみたいな」
リザルトの精算が終わり、アイ達を雲雀荘まで送り、そこで男子二人はいったん別行動をする。
ヒカルはその足でカテドラルに向かう。ダンジョン解放の初週ではスカウトの張り込みもいない様で、利用者もいなかったため、すぐに入ることができた。石室に入っても前回のような反応はなく、念のため石碑にも触れるがやはり無反応だった。落胆はしたものの、やはりという納得感も感じていた。
外に出ながらステータスを開き、レベルを確認する。
神木光 Lv97
職種:
定型技能
剣術(剣操作に補正)Lv3
蹴術(蹴り攻撃に補正)Lv1
聞き耳(足音等を聞き取りやすくなる)Lv7
振り分けポイント:25
力35
速35
防40
精10
操37
運0
取得可能技能
称号:霊落者
そう、今日のダイブで
やはり第三段階職の解放は、ダンジョン10階層
しかし、このまま既知外領域を進めばまだまだ先は長いし、出現するモンスターの強さも、既知領域とは比べ物にならないくらい厄介なモンスターが増える。既知領域で普段からオークの群れを相手にしているパーティーでも、オークの群れがオークナイトの群れになり、その群れを上位種のオークロードに率いられていれば全滅も覚悟する。
そのようなモンスターが闊歩するのが既知外領域であり、既知領域とは難易度がまったく違う。よって早く十階層に行くのなら、既知領域を進む一択になる。だが一つ問題があり、ヒカルはファーストダイブを生還しているので、普通の一般生徒なら、ファーストダイブで死に戻り、既知領域第壱階層からのスタートになるのだが、ランダム転移で飛ばされた既知外領域第参階層からのスタートになっている。もしここから既知領域に向かおうとすれば、それだけで数日はかかりそうなほど距離がある。
どうするか考えながら、一応既知領域の地図を買うために購買に行くことにした。
次の日、6人でダイブするのは中2日開けると決めたので、今日はパーティーでのダイブはないため、女性陣は涼香さんが音頭を取り学生街で女子会をするらしい。忠一は授業が終わるとどこかに行ってしまったので、一人で羅城門に向かう。装備一式を身につけ、直接ゲート鳥居には向かわず手前にある広場に向かう。この広場は生徒達が野良のパーティーを募集するために利用されていて、一年を中心に賑わっている。
今日この広場に来たのは、既知領域にダイブするために、既知領域で活動している人に連れていってもらおうと考えているためだ。
ヒカルが広場に入りパーティーを組む相手を探していると、一部の女子がヒカルの容姿に気がつき、連れの女子生徒に目線で促していたりしている。ここにいるということは特定の相手を持たない、いわゆるフリーの女子だ。
まだ入学から一月も経たない時期だが、既にこの学園の洗礼を受けた女子は多く、少しでも早くマトモな男子を探さないといけないことを分からせられる。
そんなヒカルはアピールしようとする女子に気がつかず、ヒカルは一人の女子生徒に目が止まる。その女子は壁にもたれ、隣に武器と思われる金砕棒を立てかけ、下を向いている。
ヒカルの目が止まった理由は、彼女がとても大きな胸をしていたこともあるが、彼女が着けているスカーフの色が一年生ではなく二年生であることを現していた。気になったヒカルは彼女に声をかける。
「すいません、まだ募集中ですか?」
ネトゲの募集のような声かけを行うヒカルに、彼女は驚いて顔を上げヒカルに気がつく。
「えっ、まっ、まだ募集してます!」
彼女はヒカルと目が合うと慌てて答える。
話してみると、彼女の名前は「カナデ」と名乗り、この前まで、とあるクラブに所属していたのだが、新入生を入部させるためにクラブを首になり、最後に潜っていたのが第七階層だったこともあり、単独でダイブしてもモンスターを倒すこともできないので、ここで何度かパーティーを募集して潜ったのだが、全て死に戻りしてしまい、段々入れてくれるパーティーもなくなってしまい、ここで立っているだけになっていたのだとか。
「なるほど、色々と大変ですね……。そういえば先輩、クラスは何なんですか?ソロで戦えないってことは非戦闘系の職なんでしょうが」
そう先輩に尋ねると、非常に言いづらそうに小さな声で「職人クラフターです」
その小さな声を理解したら、思わず声が出てしまった。
「それを先に言ってくださいよ!」
先輩はビクッとして謝り始める。
「すいません、やっぱり職人クラフターじゃ駄目ですよね。他の人達も私が職人クラフターだと知ると断られてばかりですし」
「いや!是非パーティーを組んでください、お願いします」
思わず手を取りお願いすると、カナデ先輩は目を瞬かせ固まっていた。
第『漆』階層、『既知』領域
なんとかカナデ先輩を説得し、既知領域第七階層にダイブさせてもらえた。いくら戦闘職とはいえ、この時期の一年がオークの徘徊する七層に行くのは無謀すぎると反対していたが、手を握って真剣にお願いしたら了承してくれた。
「ここが七層か」
「き、気をつけてください。ここはオークが出現しますから、出会ったら逃げないと、捕まったら大変なことになってしまいます」
そういって先輩は金砕棒を持ちながら、挙動不審に辺りを見回す。オークはゴブリンと並んでセックスモンスターの代表みたいな輩だから、先輩が怖がるのも無理はないが、おそらく問題ないだろう。原作でも主人公たちが第二階職レベル20前後でオークナイトをなで斬りしていたので大丈夫だろう。
先輩が後ろから付いて来ているのを確認しつつ、ゲートを目指す。やはり既知領域だとよく掃除が進んでいるのか、空の玄室が結構確認できる。オークを想定して、今は先日ゴブリンロードからドロップしたバスタードソードを手に持ちつつ、近くの玄室に反応が一体確認できるので覗いてみることにする。玄室には2メートルほどの豚のような顔に太鼓腹の、これぞオークといった風貌のモンスターがいた。そしてオークはこちらに気がつくと、手にした棍棒を振り上げ突進してこようとするが、素早く近づいたヒカルに左足を切断される。崩れ落ちたオークは絶叫をあげるが、すぐに首を切られ瘴気に返っていく。
「ヒカルくん、ホントに一年ですか……」
あまりにもあっさりと倒されたオークに唖然としたカナデ先輩が、思わずそうこぼす。