IS学園から脱獄した少年   作:ネガ

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どうもです。今年最後の投稿。今回、遂に…




Case12 消えた井上大河

IS学園において織斑一夏と井上大河は特例として保護を名目として入学させてはいるが、ある一部の生徒は「織斑一夏と井上大河は共有財産」や「所有権はウチのクラス」などと物扱いする者もちらほら。

現状の待遇は悪いとは言わないが、何かと彼らの意見が反映されない事もあり、決して良好とも言えない。そんな中、井上大河に予想もしない出来事が降りかかる事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大河が真実を知った3日後…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故だ…! どうして…!」

 

3組に所属しているはずの大河は、どういう訳か1組にいた。何故こうなったのかと言うと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

11月9日。楯無の突然の思いつきで開催された代表候補生ヴァーサス・マッチ大運動会にて、優勝した者が一夏と同じクラスとなり、それ以外はクラス分けというものだ。一夏と大河が見守る中いざ運動会が行われたが、結果は何と生徒会長で現役のロシア国家代表の楯無が優勝してしまった。どうしたものかとなり、何と1年の専用機持ちと代表候補生を全員1組に移す事になったのだ。1組の生徒は男子を独占して狂喜乱舞し、3組の生徒は大河を1組に変えられ酷く落ち込んだ。なお、一夏のセカンド幼馴染の2組の鈴音と4組の簪は1組に変わり、2人ともめちゃくちゃ機嫌が良かったという。一夏はどういうわけか理解してなかったが。しかし…

 

「まさか同じ組になるとはな!よろしくな大河!」

 

「え?あ、あぁ…うん…そうだな…」

 

大河にとっては想定外でしかない。今までは3組にいた事で箒達のドタバタに巻き込まる事は無かったが、1組に移った事で確実に巻き込まれるのは目に見えていた。そして校舎などを損傷させ無給の修繕作業に駆り出させる頻度が増える。

 

(最悪だ…! よりによって1組に…!)

 

厄介事に巻き込まれる事になれば自分の行動に支障をきたす。想定外の誤算だ。頭を抱える大河だが、更に追い討ちをかける事が降りかかる。

数日後、スマホでニュースを見ていた大河に衝撃的な記事が飛び込んで来た。

 

「何…だと…!?」

 

そこに載せられていた記事とは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九龍グループ 日本重工買収

 

スマホを大河の手は震えていた。最も恐れていたシナリオ。とうとう九龍グループに買収されてしまった。いや、父がそう簡単に応じる訳が無い。もしや父に何かあったのでは。急いで寿一の電話番号にかける。頼む。繋がってくれ。その思いだけだった。コール音が耳元で繰り返す中、繋がった。

 

「もしもし!? 父さん!何かあったのか!?」

 

『あら? もしかして、大河君? そちらから電話してくれるなんて嬉しいわ 』

 

「!?」

 

電話の声の主は父ではなかった。ほんの少し訛りがあるが流暢な日本語を話す若い女性の声だ。

 

「…誰だ? 」

 

初次见面(初めまして).私は王龍愛(ワンロンアイ)。この度日本重工の新社長になったの。それから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『君の婚約者にもなったの』

 

「!? ふざけるな…!父さんはどうした…!?」

 

大河は顔を険しくさせた。電話の声の持ち主が突然日本重工の社長を名乗り、それから自分の婚約者になったなどとイラつかせる戯言を吐くこの女に。間違いない。九龍グループだ。IS関連で政略結婚する気だ。恐らく目当ては鉄鋼神と、自分自身の遺伝子。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうカッカしないで。せっかく夫婦になったんだもん」

 

その頃、日本重工の社長室には黒色でサラサラの長い髪に黒いスーツ、太々しく素足で机に足を乗せながら優雅に赤ワイン片手にスマホで大河と電話する整った顔立ちの女性がいた。彼女こそが日本重工を乗っ取った王龍愛だ。右手にはISの待機状態と思われる龍の意匠が入ったブレスレットを巻いている。

 

「君のお父さんってとても我慢強い人なんだね。ちょっとやそっとの事じゃ動じないもん」

 

『…何が言いたい?』

 

「こっちが君にいい事ばかりの事言っても首を縦に振らなくてね…でもそういうとこ嫌いじゃないの。ただ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと調子に乗りすぎたかしら?」

 

龍愛が居座る血が飛び散った社長室には、激しく争った形跡と顔の原形も分からない程に殴られ、身体はISの近接ブレードで滅多刺しにされた井上寿一と最後まで抵抗した7人の役人達の無惨な亡骸が虚しく残されていた。

 

「!? ……お前らまさか……!」

 

『仕方ないじゃん。交渉決裂しそうだったんだもん。すぐにOKしてれば星にならなくて済んだのに。おかげでちょーっと荒っぽい事しちゃった』

 

龍愛が足を乗せている机には九龍グループによる日本重工買収の最終譲渡契約書が置かれており、署名には明らかに寿一の筆跡ではない井上寿一の名前と血で押された指印が確かに記されていた。それだけじゃない。その隣には龍愛の名前と、明らかに大河の筆跡ではない井上大河の名前と印鑑が押された婚姻届の写しもあった。大河は結婚出来ない年齢の15歳のはずなのに既に入籍済みだった。

 

「お前ら…!」

 

父や役員の死を確信した大河は怒りで顔を歪ませ、スマホを握る手はワナワナと震えていた。

 

『怖い声出さないでよ。ISの進歩の為には犠牲はしょうがないじゃん。大河君のお母さんも喜んでたし。あ、お姉さんは今頃お父さんと再会してるかも?」

 

「ッ!?……そんな……姉ちゃんも…!? 殺したのか!? 関係ないのに殺したのか!?」

 

雅美が喜ぶという事は、自分はもう見捨てられたという事だ。そしてシンガポールにいた異父姉の沙彩も、既に亡き者にされていた。もちろんニュースにはされていない。

 

『こっちで結婚式と北京の一等地へ移住の準備とIS学園の退学の手続きもしてあげる。1月には私と九龍グループが向かえに行くから。じゃ、そういう事で。再见(またね)♪』

 

大河の声に一切耳を貸さずにそのまま龍愛は一方的に電話を切った。父と姉を殺され、女性至上主義の母に見捨てられ、大河は一瞬で家族を失ったのだ。すぐにして大河のスマホに着信が入った。相手は月村。日本重工の鉄鋼神の開発主任だ。大河はすぐに電話に出た。

 

「月村さん!?」

 

『大河君…!九龍グループが研究所にやってきて研究データを渡す様に迫ってきて…!』

 

「やはり狙いの1つは鉄鋼神ですか…!」

 

日本重工買収と同じ頃、九龍グループが日本重工研究所に来訪。開発主任の月村は施設の機材やらを破壊し研究員達と共に3台の大型のバンに残った機材やらデータやらを詰めるだけ詰め込み、逃走しているのだ。

 

「どうしてこんな事に…!」

 

『王龍姫だ…!奴が自分の娘を送り込んで社長と役員達を殺して会社を乗っ取ったんだ…!』

 

「あの九龍グループの会長ですか…!じゃああの王龍愛も…!」

 

『あぁ…!奴の七女で、しかもまだ18歳なんだぞ…既に君と勝手に入籍までしている…!このままじゃ政略結婚で奴らのおもちゃにされるぞ!』

 

「おもちゃ…!」

 

自分がどうなるのかはもうすでに想像は付いていた。

 

『まずい!奴らに見つかる!すぐに出してくれ!また電話する!」

 

『ちょっと!?月村さん!?』

 

電話内では車の走行音と月村と研究員達の慌てふためく声が入り乱れ、そのまま通話は途切れた。大河の手からスマホは床に滑り落ち、再び部屋を静寂が支配する。大河の呼吸は乱れ、頭の中はどうしようもないほどの情報量で埋め尽くされ、次第に呼吸は荒くなっていく。そして…

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

大河は怒りや憎しみやら様々な感情が入り混ざった声で発狂し、そのまま寮の壁を殴りつけた。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

何度も何度も。自分の手が痛くなろうと、出血しようと殴りつけた。何度も。何度も。そしてそのまま発狂しながら自分の部屋の椅子やら教科書やら私物やらを床や壁に叩きつけ、窓ガラスが割れるほどに荒れた。大河の発狂や窓ガラスなどが壊れる音を聞いた一夏達が駆けつけ、箒たちに取り押さえられ、数十分経ってようやく落ち着きを取り戻した。

 

 

その後、千冬と楯無による事情聴取を受け、日本重工が九龍グループに乗っ取られた事、父と姉が殺され、新社長と入籍させられて政略結婚させられる事を。千冬と楯無はIS学園のセキュリティを最上級レベルまでに強化を指示し、教職員達も九龍グループが1月に来る事に備える事になり、鈴は本国の指示の可能性が高いと読んで駐日中国大使館へ向かった。あらゆる手を使って大河を守る為動き出した。大河もまた寮の窓に特殊な鉄格子を取り付るなど自分のやれるだけの事をした。

 

「大丈夫だからな大河…!お前は必ず俺達が守る…!」

 

一夏達も大河を守る為にいつも以上に訓練や模擬戦に励む様になった。そんな彼らを見て、大河はさっきまでの荒れっぷりはどこへやら、どこか気の抜けた様な雰囲気になっていた。

 

(ごめんな…一夏…みんな…こんな事に巻き込んじまって…俺のせいで、お前達に戦火に飛び込ませる訳にはいかないんだよ…俺はもう……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、12月になっても九龍グループの襲撃は訪れなかったものの、大河を除いた専用機持ち達の任務の中一夏の白式が三次移行し、シャルロットのラファール・リバイヴカスタムⅡが二次移行してリィン=カーネイションになるなど、様々なドラマを生むこととなった。最も、一夏が一度死亡して生き返るという生命の法則を覆した事を聞いた大河は戦慄したが。

しかし、クリスマスの日には専用機持ち全員でパーティーをして束の間の安らぎを感じた。

 

(一夏達の顔を見るのも…これが…)

 

皆が楽しむ中、大河の心の中は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

年明け前、大河と楯無は寮内のロビーで何気ない会話をしていた。すると…

 

「楯無さん。一度でも自由に生きたいと思ったことはありませんか?」

 

「え? どうしたの急に?」

 

「言葉通りですよ。全てのしがらみから解放されて、背負っている物も全て下ろして自由に生きる……素晴らしいとは思いませんか?」

 

何やら意味深な事をこの時楯無はそこまで深い意味を考えずに聞いていた。やがてその言葉が意味する出来事が起こる事を知らずに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、忘れる事の出来ないあの日がやって来た。

3学期が始まり、生徒達が新年の挨拶で教室が盛り上がる中、一夏達も教室で挨拶を交わした。しかし、誰かがいない。

 

「あれ?大河が来てないな」

 

「ん? 言われてみれば…」

 

「珍しいわね…大河がこの時間になっても来ないなんて…」

 

最初は寝坊かと思っていたが、ある疑念が浮かんだ。

 

「まさか大河…!? 奴らに……!?」

 

「いや、そんなはずは無いよ…!登校日前の夜にはいたもん…!」

 

「1月に来るって言ってたから……!」

 

箒達は不安を募らせながらも待つが、授業開始時間になっても一向に大河は来なかった。そこへ偶然通りかかった楯無が大河を起こしに部屋へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大河くーん?」

 

「大河くーん? 朝よー? おねーさんが起こしに来たわよー?」

 

楯無は大河の部屋のドアをノックするが、返答はない。入ろうとすると…

 

「ん?」

 

(鍵がかかってる…?)

 

ドアに鍵が掛かっている。少なくとも外から入った形跡はない。楯無はヘアピンを取り出すと伸ばして鍵穴に差し込んでのピッキングでものの数秒でドアを開けた。照明をつけて部屋を見渡すと、やけに片づけられている。机には僅かに物があるが争った形跡はない。窓の鉄格子も外された跡はない。少なくとも拉致された訳ではない。ベッドを見るとそこで寝ていた。まだ夢の中にいるようだ。

 

「大河君?朝よ?早く行かないと織斑先生がカンカンよ?ほーら。起きて!」

 

楯無が大河を揺すろうとして触れた瞬間…

 

「!?」

 

楯無は何やら違和感を感じた。軽く押して分かった。柔らかい。明らかに人間の感触じゃない。いやまさか。そんな訳ない。あるわけが無い。自分にいい着せる様に表情を険しくする楯無は掛け布団を握り締め、勢いよく引き剥がした。

 

「!!」

 

楯無は驚愕して言葉を失った。そこには…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園のジャージを着た新聞紙と布で作られた人形が寝かされていた。

  

「ハァ…!ハァ…!」

 

楯無の報告を聞いて寮の廊下を全速力で走るのは千冬だ。

 

「更識ッ!」

 

校舎から走ってきた千冬が寮の部屋のドアを勢いよく開けた。普段の冷静な表情は無く、険しく、焦りが如実に現れている。当然だ。この状況で冷静になどなれるわけがない。

 

「状況は!?」

 

「昨晩の間に逃亡した模様です!」

 

「何!?」

 

千冬は机をふと見ると、ハンバーガーの包み紙や日本重工の社章が描かれた紙が残されており、逃亡したのが誰なのか確信した。

 

「逃げたのはあいつか?」

 

楯無は千冬の問いに頷き、逃亡者の所属クラスと名前を口にした。

 

「1年1組所属の専用機持ち、井上大河君です!」

 

その日、世界で2番目にISを操縦出来る男性、井上大河は忽然と姿を消し、全世界を揺るがすIS学園脱獄事件が発生したのだ。

 

「井上はどこから逃げた?」

 

「これを見てください」

 

楯無がベッドの隣のクローゼットを扉を開け、千冬は中を覗いた。

 

「ッ! これは…!」

 

そこには、衝撃的な光景が広がっていた…

 

 

 




いかがだったでしょうか?遂に井上大河がIS学園から脱獄しました。家族を失い、政略結婚されられる大河は果たしてどのように脱獄したのか。ぜひ考えてみてください。
今回はここまでです。感想お待ちしています。今年最後の投稿です。それでは皆様良いお年を!
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