世界最強の兵器、ISは現代は競技として落ち着いていることは過去に述べたが、その中でISを語るにおいて絶対に外せない人物の1人…それが世界初の男性操縦者である織斑一夏の実姉、「織斑千冬」。彼女は元日本代表でありISの世界大会「モンド・グロッソ」にて初代チャンピオンの座に輝いた後に、訳あって引退した後に1年間ドイツ軍の教官を務め、その後IS学園の教師となった。
一夏については「バカ」や「愚弟」と罵りながらも、両親もいない中姉として育てながら成長を見守ってきた。当の一夏からは「真面目な狼」と称され、同時に憧れの存在である。そして、専用機持ちや代表候補生からは恐れられていたりもする。大半は箒達がドタバタを引き起こしたりするせいだが。
では、世界最強の千冬からは2人目である井上大河はどう見えていたのか。
私が初めて井上大河と出会ったのは、去年の4月の頃だった。あの日の空模様は今日と同じ曇り空だった。実弟である一夏が男性でありながらISを起動させたと聞いた時、何かの冗談であって欲しいと願ったが、そんな考えも現実は許しはしない。必ずあいつを執拗に狙う輩が現れる。その時は……そして、2人目の井上大河…彼にもまた苦労を背負わせてしまう事になるだろう…この世界は進み過ぎた…
IS学園の校門にて、千冬が仁王立ちして立っている。大河を待っているのだ。一夏がISを起動させたと聞いた時は、何故こんな事になったんだとある友人に問い詰めたが分からないの一点張りでどうにもならなかった。納得いかないが、男性でありながらISを操縦できる一夏と大河という世界中が注目する2人の男子がIS学園に来る。有名無実化しつつある国際規約は当てにならない。教師である自分が、守らなければならないという気持ちが大きくなっていく。そして…
(来たか…)
彼が歩いてきた。上下白い制服に黒色で短髪に何かを見透した様な瞳で右手で鞄を持って歩いてくる男子生徒が。彼こそが2人目である井上大河だ。
「こんにちは」
「君が井上大河か?」
「はい。ここが税金の無駄遣いをしている特別行政区、IS学園ですか」
「ここは香港やマカオではない。IS操縦者や技術者を育成する学園だ。これから寮へ案内する。ついて来い」
寮へ続く道を進み始めた千冬に続いて大河も歩き始めた。すると、大河が口を開いた。
「この学園で何をすればいいんですか?」
「ここでの学生の本分を全うしてもらうだけだ」
「俺からしてみれば心底どうでもいいんですけどね。とりあえず。将来役に立ちそうにない物の為に貴重な3年間をドブに捨てる様なものですから」
「残念だがお前に拒否権は無い。私も出来ることならお前をここには在籍させたくなかったんだが、融通の効かない連中がごまんといる。奴らと接触させない為にはやむを得ない。悪く思うな」
千冬と大河はお互いに淡々と自身の事情を話すやりとりをしながら歩く。
「……先生は今の世界はどう思ってます? 楽しいですか?それとも、つまらないですか?」
大河の質問に千冬は立ち止まって振り返った。
「……何が言いたい?」
千冬の目をまっすぐ見る大河の目は、全てを悟り、見透かしていてこの世界の真理を掴んだかのような表情をしていた。
「この世界は進み過ぎたんですよ」
あの日私は井上大河と初めて会って、あいつの目がこの世界の真理を見透かしている様な目をしていた。それに妙に冷静で戸惑いを隠す様子はなかった。だが、一抹の不安は残っていた。不自然にまで落ち着いているのだから、何かしらよからぬ事をしでかすのではないかと。そんな事も考えた事もあったが、3組の担任に聞いても、授業態度は真面目で成績も良いとの事だ。一夏とも良好な関係を築けていると山田先生からも聞いている。それを聞いて私は安心した。あの馬鹿からも大河の事をよく聞く。あんなにも楽しそうに過ごすあいつは久しぶりに見たかもしれない。篠ノ之をはじめとする専用機持ちや代表候補生とも、いい関係と聞いている。最も、奴らが国際法や校則違反を繰り返してる事も私と同じ悩みの種らしい。
臨海学校後、千冬は職員室にて楯無と話をしていた。大河と接触した事を楯無から聞いていたのだ。
「まさかあいつが、ここの卒業生の早川沙彩の異父弟だったとはな」
「ええ。それ以上の事の深追いは控えました。しかし、気になる事が1つあるんです」
「気になる事?」
「早川沙彩の実父の事です。彼女から聞いた話によると事故で亡くなったと聞いたんですが、調べても一切詳細が出てこないんです」
楯無が言うには、沙彩の実父は事故で亡くなったと聞かされているが、どういう訳かそれ以外の情報しか出てこないのだ。明らかに情報統制がされてるとしか考えようが無いくらいだ。
「よほど早川雅美にとって都合が悪い事だと思います」
「なるほどな。私からも1つ気になる事がある。これだ」
千冬が楯無に見せた物は、大河の専用機である鉄鋼神の資料だ。
「これは、鉄鋼神の…」
「多目的建設用と聞こえがいいが、明らかに笑って済まされない物が搭載されている」
「これらは開発元の思惑が絡んでいると思われますが…実に危険な思想を持っているようですね…」
大河に与えられた鉄鋼神は、表向きは多目的建設用とされているが、火炎放射器やニードルガンをはじめガトリング付きチェーンソーにモーニングスターや劇薬を散布するであろうスプレーガンや噴霧器等が搭載されている。明らかに対人や対ISを想定をされているのだ。
「こんな物を開発して井上に与えるとは…日本重工という企業…一体何をするつもりなんだ…?」
鉄鋼神に搭載されていた物は、護身用とあるが明らかに兵器としか見えないものばかり搭載されている。工具も使いようによっては武器になりかねない。開発元や製造した連中の意図や思想は明らかに危険なものだ。あんな物を開発して未成年の井上に与えて何をしようとしているのか。井上本人にもそれらを聞いたが日本重工から「好きに使っていい」との一点張りだと聞いた。幸いにも井上はあれらの武器は模擬戦や実習では一度も使っていないと聞く。出来れば卒業までは使って欲しくはない。……だが、同時に彼が卒業した後が、非常に怖いと感じた。あの様なISを所持している彼がここから外を出れば、一体何をしようとするのか…底知れない思いが心の中に芽生えてきた。いや…私は一体何を恐れているか。彼を卒業まで導くのが教師しての私の務めじゃないか。そんな気持ちを押し殺し、私は井上を卒業まで必ず導くと決意した。
そう…今でも忘れる事の出来ないあの日の出来事が起こるまでは…
いかがだったでしょうか? 結構あっさりした感じになってしまいましたが、千冬から見た大河という話になってます。最近はあまり執筆速度が速くならないのでまた遅れるかもしれません。今回はここまでです。感想お待ちしています。