IS学園から脱獄した少年   作:ネガ

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どうもです。今回は井上大河の憂鬱についての話です。


Case09 井上大河の憂鬱

IS学園がいかなる国家機関に属さず、いかなる国家や組織であろうと学園の関係者に対して一切の干渉が許されない事は以前に説明したが、内部で起きている出来事が必ずしも健全なものとは限らないのが現状だ。1人目の織斑一夏を巡って専用機持ちと代表候補生達が競り合いを起こして、ISの無断展開や校則、国際法違反とみられる行為が毎日のように繰り広げられるのは名物と化している。2人目の井上大河については、その様な出来事は全くといっていいほど聞かない。しかし、井上大河の周囲が何かしらの出来事は無くても、彼自身の心は確実に擦り減っていた。

 

 

「はぁ……」

 

 

自室のベッドに力無くもたれかかる大河。今日もまた一夏を巡って箒達がドタバタを引き起こして校舎を損傷させて千冬に説教される光景はすでにうんざりするほど見てきた。大河がIS学園に入学してから7ヶ月が経っていた。

 

「何故一夏は平気でいられるんだ…身体タフ過ぎだろ…」

 

大河から見てみれば一夏の身体が非常に丈夫なのが疑問だ。いつだったか忘れたが授業前に大河は1組の方からシャルロットのラファール・リバイヴ・カスタムⅡのヴェントの銃声と一夏の悲鳴が聞こえた。後々聞いたら授業開始時刻に遅れたためと、シャルロットの機嫌を損ねたとの事。

 

「正気か…!? どいつもこいつも…!」

 

生身の人間にISを用いてそれを容認するなんて、どうかしてる。何であんな事が許されるのか理解できない。そんな中でもただでさえ神経をすり減らす出来事が立て続けに起きた。まずは学園祭だ。各クラスがありふれた出し物を出して盛り上げるのはいいんだが、問題はそこじゃ無い。襲撃者が現れたのだ。

 

「亡国企業…」

 

千冬や楯無から聞かされたその組織は一夏の白式を狙っていた。幸い楯無が退けたものの、大河の持つ鉄鋼神も狙っていたという。実は一夏達が知らない所で大河もまた招かれざる客に奇襲されたのだ。一夏が亡国企業の構成員と戦っている中、校舎外にいた大河の周囲に銃撃が浴びせられたのだ。

 

『うおあぁっ?! …っ!?』

 

上空から現れたのは、2機のISだ。大河に立ち塞がり、アサルトライフルを構えて今にも撃とうとしている。

 

『何だお前ら…!』

 

找到了!井上大河(見つけたわよ!井上大河)!』

 

來吧,把鋼鐵神交給我(さぁ、鉄鋼神をよこせ)!』

 

(中国語…!? …まさかあのISは天津-21…!?)

 

操縦者が話すのは中国語。流線型でグレーの機体にプリントされているのは五星紅旗と赤色の龍と9つの星のマーク。そして量産型ISの天津-21。しかも第3世代だ。呆気に取られる大河に天津-21のアサルトライフルが火を吹く。

 

『着工!』

 

すぐさま鉄鋼神を展開する大河。2機の天津-21からアサルトライフルの猛攻を受け、機体に銃撃を喰らいながらもチェーンソー付きガトリングを展開させ、発砲する。しかし、戦闘経験など皆無の大河の射撃は当たらず、いとも簡単にかわされてしまう。2機のうち1機が近接武器の青龍刀を展開して、後ろから大河を斬りつけた。

 

『どわぁぁぁ!』

 

思わぬ攻撃を受けた大河は大きく跳躍して距離を取る。2機の天津-21はアサルトライフルを構えて接近する。そこへ、上空から突然天津-21に砲撃が浴びせられた。

 

『大河!大丈夫!?』

 

やってきたのは、甲龍を展開して衝撃砲を浴びせた鈴音だ。衝撃砲を浴びせられた中国人IS操縦者は一瞬驚く表情を見せたがすぐに冷静さを取戻す。

 

『鳳鈴音!』

 

你们!你们知道自己在做什么吗(あんた達!何をしてるのか分かってんの)!?』

 

你想打扰我吗(邪魔をするのか)!?』

 

『大河君!大丈夫!?』

 

鈴音と2人の中国人操縦者の激しい中国語の口論の中、白式を展開した一夏とミステリアス・レイディを展開した楯無を先頭に箒達が駆けつけた。一夏を襲撃した亡国企業の構成員を退けた後に、職員からの通報を受けて来たのだ。形勢が不利と判断した2機の天津-21はそのままIS学園から飛び去っていった。

 

『ねぇ大河…今のって…』

 

『間違いない…!九龍グループの刺客だ…!』

 

その後、学園祭は中止となり一夏と大河は千冬と楯無から事情聴取を受け、鈴音は駐日中国大使の元へ抗議を入れに行ったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『もう奴らに目を付けられていたか…!』

 

自分を襲ったのは中国のIS企業、「九龍鉄鋼集団公司」を中心とする九龍グループだ。学園祭前、日本重工の開発チームとリモート会議をしていた時にその名前が出てきた。実は鉄鋼神には日本重工が開発した世界初の機能が密かに搭載されているという。大河が何なのかと聞いても知る必要はないの一点張りだった。その時…

 

 

『それとなぁ、ウチが開発したこの機能を中国のIS企業、九龍グループが嗅ぎつけたんだ』

 

『嘘でしょう?! 機密管理どうなってるんですか一体!よりによって九龍グループに…!』

 

『全くだ…あいつらはこれまでも日本のIS企業の研究データやら技術やら、色々盗んでは軍事力強化に使っている…!もしかしたらIS学園に執拗にコンタクトを図ろうとしてくるだろう。気をつけてくれ。奴らは軍とは別の私兵を持っている』

 

『出来る限り外出は控えるつもりです』

 

 

 

 

 

 

 

 

ついこの間警告されたばかりなのに。すでにマークされている。その後、事情聴取を受けた後に疲れ果てた大河はいまに至るというわけである。

日増しに不満と憂鬱を募らせる大河だがまだある。IS学園の環境だ。本土から離れて閉鎖的な場所で学生の本分など全う出来ない。外出は出来るものの常に首輪を付けられているようなものだ。そして外出もこれから難しくなる。今思えば、幼少期と似たような感じかもしれない。雅美に邸宅に隔離されて育てられていた幼少期…

 

『大河。外は危ないものがたくさんあるから絶対出ちゃダメよ』

 

と自分に口酸っぱく言いながら雅美はその危険な外に頻繁に出ている。欲しい物は何でも手に入った。でも自由だけは手に入らなかった。そんな時に寿一の元で感じた初めて外に出た時の開放感。あの感覚が忘れられない。初めてだ。ここまで自由を渇望するのは。ここにいても、安全の保証なんて最初から無かったと悟った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「~~~~~~~~~!!」

 

大河は顔を枕に埋めて発狂した。今までの出来事を通じて溜め込んでいた物が今にも抑えきれずにはち切れそうだ。こんな閉鎖的な学園にいては卒業はおろか自分自身がおかしくなってしまう。それどころか、自分は狙われている。亡国企業だけでなく九龍グループにも目を付けられている中、これまで以上に神経を研ぎ澄ましながら生活しなければならない。

 

「ハァ…ハァ…ハァ…!」

 

枕から顔を離した大河は息を切らしていた。今の彼は閉鎖的な学園の中、自由に飢えている1人の少年だ。

 

「……ダメだ……!まだ俺には…」

 

まだだ。まだその時じゃない。まだやるべき事が残っている。それを成し遂げるまでは…

 

 

 




いかがだったでしょうか?原作のパートやイベントはカットして回想に留めています。最近リアルの方で忙しくてなかなか執筆出来ませんがよろしくお願いします。今回はここまでです。感想お待ちしています。
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