AC好きの高校生、透き通った世界に転生する。 作:はぶらし023
プロローグ
???「ちょっと待って!代行!見つけた、待ってたわよ!連邦生徒会長を呼んできて!……うん?隣の大人の方は?」
エレベーターに揺られ辿り着いた先は、ロビーのような場所だった。扉を開けると、周りの雰囲気は騒々しくて目の前の青い髪の少女も焦った様子で呼びかけてきた。他にも、黒いセーラ服を纏った黒い髪の子、風紀と書かれた腕章を付けたベージュ色の髪の子が声を掛けてきた。
黒い髪の生徒「首席行政官。お待ちしておりました」
ベージュの髪の生徒「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求されています」
さっきからずっと名前を呼ばれている、「連邦生徒会長」とはどういう人なんだろう。みんな、その人のことばかり呼んでいる。信頼されていたのかな。……そういえば、ここで目覚める前に電車で誰かと話していたような?あまり覚えていないけど、あの子がもしかしたら……。
リン「あぁ……面倒な人達に捕まってしまいましたね」
隣に居るメガネの子……もといリンちゃんが、ロビーに集まった焦燥感に駆られた人たちの対応を始めた。リンちゃんの話によると、ここにいる人たちはそれぞれの所属している学園都市の委員会や生徒会の人なのだとか。そして、何故か今その数千もの都市学園が混乱に陥っているらしい。焦燥しきっている理由もわかる気がする……。
青い髪の生徒「そこまで分かっているなら何とかしなさいよ!連邦生徒会なんでしょ!数千もの学園自治区が混乱に陥ってるのよ!この前なんか、うちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」
ベージュの髪の生徒「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱出したという情報もありました」
白い髪の生徒「スケバンのような不良たちが、登校中のうちの生徒たちを襲う頻度も、最近急激に高くなりました。治安の維持が難しくなっています」
黒い髪の生徒「戦車やヘリコプターなど、出所の分からない武器の不法流出も2000%増加しました。これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます」
頭に白い羽がついた白い髪を持つ子も加えて、皆が口々に話し始めた。どうやら、私が思っていたよりも混乱の具合は大きくて収束が難しい状況らしい。こりゃかなり忙しくなりそう……。
青い髪の生徒「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの?どうして何週間も姿を見せないの?今すぐ会わせて!」
リン「……連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと、行方不明になりました」
その言葉を聞いた瞬間、ロビーに居る人たちは驚きの反応を示した。考えていた通り、連邦生徒会長と呼ばれている人が行方不明となって、今の混乱が招かれているようだ。
……やっぱり、あの電車で話した子がその人なのだろうか。思い出そうとしても、モヤがかかったように会話の内容が思い出せない。会話と言っても彼女から一方的に何かを話されていた記憶しかないけどね。なんて言っていたんだっけな……。
リン「この先生こそが、フィクサーになってくれるはずです」
”……私が?!”
考え事をしているうちに話が進んでいたみたいで、急に名前を呼ばれて驚いてしまった。どうやら、サンクトゥムタワーと呼ばれる建物の最終管理人となっていた連邦生徒会長が失踪したせいで連邦生徒会は行政権を失った状態となっていて、私はそのフィクサーにならないといけないらしい。
青い髪の生徒「うわぁ?!急に叫ばないで下さいよ!?……ちょっと待って。そういえばこの先生はいったいどなた?どうしてここにいるの?」
黒い髪の生徒「キヴォトスではないところから来た方のようですが……先生だったのですね」
リン「はい。この方は、これからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です」
青い髪の生徒「行方不明になった連邦生徒会長が指名……?ますますこんがらがってきたじゃないの……」
”皆さん、はじめまして。連邦生徒会長さんに指名されてやって来ました。気軽に、先生って呼んでね!”
青い髪の生徒「こ、こんにちは、先生。私はミニレアムサイエンススクールの……い、いや、挨拶なんて今はどうでも良くて……!」
リン「そのうるさい方は気にしなくていいです。続けますと……」
ユウカ「誰がうるさいって?!わ、私は早瀬ユウカ!覚えておいて下さい、先生!」
”ふふ。よろしくね、ユウカ”
リンちゃんが、私のここに来た理由を話してくれた。
連邦生徒会長が立ち上げた部活
連邦捜査部「シャーレ」
私は、この部活の担当顧問をするために呼ばれたのだ。
シャーレとは、部活という名目で立ちあげられているが、その実態は一種の超法規的機関である。連邦組織でもあるため、キヴォトスに存在する全ての学園の生徒達を際限なく加入させることも可能、各学園の自治区で、なんの制約も無しに戦闘を行う事も可能という、チートみたいな権限を持った機関なのだ。
そんな力を何故、私に委譲したのか。その理由を知るのは恐らくこの部活を立ち上げた彼女しか知らないだろう。
なにはともあれ、今から私はここから30km離れたシャーレの部室に行かねばならない。リンちゃんがヘリを出してくれるようで、モモカと呼ばれている子に要請をかけた。
───のだが、帰ってきた答えは予想から大きく外れたものとなった。
モモカ「矯正局を脱出した停学中の生徒が騒ぎを起こしたの。そこは今戦場になってるよ」
……この世界、想像以上に治安が悪いみたい。まあ、急にこの学園都市のトップである連邦生徒会長が消えて混乱してるし仕方ない……のかな?
モモカはシャーレ周辺の情報をある程度伝えてくれた後、お昼のデリバリーが来たと言って電話をブツ切りし、それによってリンちゃんのこめかみに青筋が立つこととなった。
リン「…………」
”大丈夫?深呼吸する?”
リン「だ、大丈夫です。……少々問題が発生しましたが、大したことではございません」
リン「……そういえば、連邦生徒会からシャーレに派遣となった方がおり、その方も一緒に向かう手筈なのですが……一向に姿が見えませんね」
”派遣?もしかして、私以外にもシャーレで働く子がいるの?”
リン「ええ、アビドス高等学校の卒業生で、名前を「
”梔子ユメ……”
その時、下からこの階に上がってきたエレベーターから間の抜けた叫び声が聞こえた。
ユメ「ひぃん!?遅れてごめんね!リンちゃん!」
リン「はぁ……何をされていたのですか?それと、リンちゃんはお止め下さい」
噂をすれば影が差すとはよく言ったもので、リンちゃんの反応を見るにエレベーターから出てきたこの子が梔子ユメと言う子なのだろう。
ユメ「忘れ物しちゃって……あれ?この方ってもしかして……」
”どうも。ユメ……でいいのかな?気軽に先生って呼んでね”
ユメ「は、はい!初めまして、先生!私は梔子ユメって言います!」
”うん、初めまして。話は聞いてるよ。これからよろしくね、ユメ”
ユメ「はい!!よろしくお願いします!」
ユメと言葉を交わした後、ユウカ達4人も連れて7人でヘリに乗り、シャーレの付近に向かった。ヘリの中では、ユウカ以外の三人の名前を知ることができた。黒い髪の子は羽川ハスミ、ベージュの髪の子は火宮チナツ、白い髪の子は守月スズミ、と言うらしい。シャーレの付近に着くまで、ユメのトーク力のおかげで会話が止まることはなかった。
───シャーレ周辺───
ユウカ「な、なにこれ?!」
モモカの情報通り、シャーレ周辺は大量の不良たちに囲まれて占拠されていた。今はヘリから降り、ユウカ達4人が不良と戦ってくれている。
ハスミ「今は先生が一緒なので、その点に気を付けましょう。先生を守ることが最優先。あの建物の奪還はその次です」
チナツ「ハスミさんの言う通りです。先生はキヴォトスではないところから来た方ですので、私たちとは違って弾丸一つでも生命の危機にさらされる可能性があります。その点ご注意を!」
チナツの言う通り、私は彼女らと違い弾丸を受けてしまえば致命傷、もしくは命を落とす場合もある。キヴォトスの人たちは不思議なことに、痛みを感じたり傷跡がつくだけで済むらしい。私もそういう力欲しかったなぁ……。
ユウカ「分かってるわ。先生、先生は戦場に出ないでください!私たちが戦っている間は、銃弾や爆発を受けない安全な場所にいてくださいね!」
”大丈夫。それより、今から私が指揮するから任せてほしいな”
ユウカ「え、ええっ?戦術指揮をされるんですか?まあ……先生ですし……」
凄く驚かれてしまった。でも、みんなすんなりと従ってくれて、私の指示した陣形を形成してくれた。私はただの不甲斐ない大人ではないことをここで証明しよう!
”みんな!行くよ!!”
意気揚々と声を出し、指揮を取ろうとした時だった。
リン『……?!待ってください!上空から複数の熱源反応!ミサイルです!伏せて!!』
”?!”
無線越しのリンちゃんの声を聞き、頭を伏せて防御姿勢を取った瞬間、とてつもない爆音と振動が連続して襲い掛かってきた。幸い、近くの障害物が破片や爆風から守ってくれたが、ユウカ達は大丈夫なのだろうか。私と一緒にヘリを降りたユメも、ちゃんと隠れることができているといいけど……。
ユウカ「な、なんなのよあれ?!」
スズミ「多連装ミサイルのようでしたが……あのミサイルの大きさから考えると、かなり大きな多連装ミサイルランチャーから発射されたとしか考えられません」
ハスミ「そんな……。このあたりにそのようなものは見られていないはずですが……」
チナツ「どこか遠くからの襲撃……?先生を狙った犯行と考えることもできますが、それにしては狙いが不良に向いていませんか?」
大丈夫みたいで安心した。それぞれやり過ごすことができたみたいで、今は集まってあのミサイルについて話している。彼女らの言っている通り、私を狙ったものにしてはあまりにもずれていて、そのお陰か先ほどまで大量にいた不良たちの集団が吹き飛ばされていた。
話を聞いているうちに、ユメがこちらに近づいてきた。少し離れた場所で隠れていたみたいで、傷はなく、ちゃんと隠れることができていたことが分かって安心した。
ユメ「ひぃん……先生、大丈夫ですか?」
”私は大丈夫だけど……誰の仕業なんだろう。あまり私を狙おうとした犯行とは思えないよね”
ユメ「そうですね……。それどころか、あの不良さんたちを狙っているようにも見えませんか?」
”確かに……”
リン『……誰の仕業かわかりませんが、とりあえず不良の制圧は楽になりましたね。行きましょう』
”うん”
ユメ「はーい!」
その後も不良の制圧を続けていったが、そのどれもが謎のミサイルによって助けられ、ついにはシャーレの部室にたどり着いた。そして、この騒ぎを起こした犯人も突き止められた。
ワカモという名前で、百鬼夜行連合学院で停学になった後、矯正局を脱獄した生徒なのだとか。前科がいくつもあって、少し危険な子らしい。
ユウカ「着いた!!……けど、結局あのミサイルは何だったのかしら……。明らかに私たちじゃなくて不良を狙ってたわよね」
スズミ「それに、見たことのない見た目のミサイルでした。もしかしたら、開発されたばかりの新兵器かもしれません」
ユメ「まあまあ、シャーレに辿り着けたんだし、結果オーライってことにしておこう?」
”そうだね。少なくとも、敵意はなさそう”
リン『「シャーレ」部室の奪還完了。私ももうすぐ到着予定です。建物の地下で会いましょう』
建物を見上げる。少し大きめのビルのようで、これから私が働くことになる場所。ユメと一緒に中に入ると、電気がついていないためか暗い場所となっていた。廊下を進み部屋に入ると、そこには───
???「うーん……これが一体何なのか、まったくわかりませんね。これでは壊そうにも……あら?」
狐の面を被った、着物のような服を着た生徒と出くわした。……誰なんだろう。なんか今壊すとかいう物騒な言葉が聞こえたような……。とりあえず、挨拶しよう。
”ええっと……こ、こんにちは~?”
狐面の生徒「あら、あららら…………あ、ああ……。し、し…………」
”し?”
狐面の生徒「失礼いたしましたー!!」
”……?”
そう言って、狐面の生徒はどこかに逃げてしまった。なんだったんだろう、あの子。隣のユメを見ると、顔面を蒼白にして白目を剥いていた。
”ええっと……ユメ?大丈夫?”
声を掛けると、ユメはこちらを向いてまくしたてる様に話し始めた。
ユメ「なんで先生はそんな落ち着いているんですか?!あの人知らないんですか?!あの……矯正局から脱獄して、今回の騒ぎを起こした張本人ですよ?!」
”……もしかして、ワカモって呼ばれてた子?”
ユメ「そうです!!……でも、なんで逃げたんでしょうね?」
”さあ……”
理由は分からないけど、とりあえず何事も起こらずに済んでよかった。そんなことを話しているうちに、リンちゃんがやってきた。
リン「お待たせしました。……?何かありましたか?」
”ううん、大丈夫”
ユメ「う、ううん!大丈夫だから、リンちゃんは気にしなくていいよ!」
リン「……そうですか。ここに、連邦生徒会長の残したものが保管されています。幸い、傷一つ付いていない様ですね」
リンちゃんはそう言って、タブレット端末のようなものを取り出した。そして、こちらに近づきそれを差し出してきた。
リン「……受け取ってください」
”タブレット端末……?”
リン「はい。これが、連邦生徒会長が先生に残した物。「シッテムの箱」です」
どこかで聞いたことがある。……どこだったかは忘れたけど。リンちゃんからこのシッテムの箱の説明を聞いていると、この端末がただのタブレットではないことがよく分かった。
これを作った会社、OS、システム構造、動く仕組みのすべてが不明。
でも、これは私のもので、私がこれでタワーの制御権を回復することができると連邦生徒会長は言っていたらしい。
ユメ「なんか……すごいものなんだね、リンちゃん」
リン「ええ。私たちでは起動すらできなかった物ですが、先生ならこれを起動させられるのでしょうか、それとも……」
”…………”
リン「……では、私たちはここまでです。ここから先は、全て先生にかかってます」
ユメ「頑張ってください!先生!」
リン「邪魔にならないよう、離れています。ユメさんも、離れていましょう」
ユメ「はーい!」
シッテムの箱を見つめる。……やはり、見た目は普通のタブレットにしか見えない。
そして、起動させた。すると、タブレットの画面が青く光った。
…Connecting To Crate of Shittim…
「システム接続パスワードをご入力ください」
”…………パスワードは…………”
脳裏に文章が浮かぶ。私はそれを入力した。
”……我々は望む、七つの嘆きを”
”……我々は覚えている、ジェリコの古則を。”
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???「ふーん、あれが先生か。黒服から話は聞いてたけど、やっぱり普通の大人なんだなぁ」
黒服から話を聞き、先生が所属するであろうシャーレの建物の周りを占拠していた不良を蹴散らした後、生徒を指揮していた先生のことを思いだす。この世界……ブルーアーカイブというゲームの主人公であり、プレイヤー。
腰まで届く濃い藍色をしたロングヘアーと、青みのある緑色をした目、少し幼さが残る顔を持つ女性だった。……普通に美人でびっくり。
そして、その先生の近くに居た……ユメ先輩。あれからかなり時間がたったけど……あまり変わっていなかったな。強いて言うなら、ちょっと大人びたか?それとあの表情、何かを隠しているような……そんな感じがする。まあ気のせいだろう。
先生を見ることができた俺は、ACと共に黒服のオフィスに向かった。