AC好きの高校生、透き通った世界に転生する。   作:はぶらし023

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アビドス対策委員会:前編

アロナ「おはようございます、先生!」

 

‪”‬‪うん。おはよう”‬

 

 

シャーレで働き初めて数日。

 

私はタブレットの中にいる少女──アロナと会話を弾ませていた。彼女は自身曰く、この謎の端末「シッテムの箱」の中に入っているメインOSなのだとか。カステラやいちごミルクが好きらしく、幼い見た目に似合った可愛らしい少女で、そして、私の秘書……らしい。私はその気ではないのだけれど、彼女がそう自称しているから一応そういうことにしておこう。

 

アロナによると、ここ数日でシャーレに関する噂というのが沢山広まっていて、生徒からの助けを求める手紙というのが大量に届いているのだという。つまり、私たちの仕事がようやっと始まりを迎えるということ。楽しみではあるのだけれど、それと同時に不安でもある。生徒の期待に応えられるよう、精一杯頑張ろう。

 

そんな感情を胸に抱き、これから始まる仕事への心構えを持とうとしていると、アロナから「少し不穏な手紙」を貰った。手紙を読むと、それは前の世界だとおおよそ学生から送達されるものとは思えないほどの内容だった。

 

要約すると、この手紙を送ってきてくれた子は「奥空アヤネ」という子で、その子の所属する学校「アビドス高等学校」は、地域の暴力組織に追い詰められていて今までは何とか抑え込めていたものの、そろそろ弾薬等が尽きそう。そこで、私に助力をお願いするべくこの手紙を送ってきてくれたのだという。

 

 

アロナ「うーん……アビドス高等学校学校ですか……。昔はとても大きい自治区でしたけど、気候の変化で街が厳しい状況になっていると聞きました。そういえば、先生と働いている方もアビドス高等学校の出身と聞きましたが、その方に話を聞いてみるのはどうですか?」

 

 

ユメのことだろう。たしかにユメは、自身はアビドス高等学校の出身と言っていた記憶がある。

 

 

‪”‬‪そういえば、ユメもアビドスの出身なんだっけ。話を聞きたいんだけど……まだ来てないね”‬

 

アロナ「おかしいですね……もう来ていてもおかしくない時間なのですが……」

 

 

その時だった。扉の外から、タッタッタという足音が聞こえてきた。音だけで酷く焦っていることが分かり、それは段々と私のいるシャーレの部室に近づいて来ることも明確に判断できた。

 

 

‪”‬‪……来たみたい”‬

 

 

扉が開く。思っていた通り、そこにはユメがいた。酷く満身創痍でぜえぜえと肩で息をしており、おそらく寝坊か何かで遅れてしまったのだろう。何があったかは分からないけど……とりあえず落ち着かせた方が良さそう。

 

 

‪”‬‪おはよう、ユメ。そこまで焦らなくても良かったのに……”‬

 

ユメ「はぁ……はぁ……。ふぅ……おはようございます、先生。そんなこと言わないでくださいよぉ……。私だってもう立派な社会人なんですし、遅刻なんてしてられません!……それに、もう頼りない人間になりたくないんです」

 

‪”‬‪そ、そう……。まあ、無理せず自分のペースで頑張ってね。無理して逆に身体を壊しちゃったら意味がないんだから”‬

 

ユメ「はい!……ところで、その手紙って……」

 

ユメはそう言って私のもとに歩み寄り、手元にある手紙を覗き込んだ。そして、手紙を読み始めてすぐ──アヤネからの手紙だと気づいた時、ユメは嬉しさのオーラを包み隠すことなく盛大に喜んだ。すごく嬉しいのだろう。しっぽが付いていたら、引きちぎれるほどぶんぶんと振り回しているのが容易に想像できるほどには喜んでいた。

 

 

ユメ「アヤネちゃん!私たちに手紙をくれたんですね!どれどれ………………え……」

 

 

でも、それも長くは続かなかった。読み進めるうちに、この手紙がただの近況報告などでは無く、助けを求めるSOSであることをユメは理解したのだ。最初は笑顔で見ていたものの、徐々に顔が崩れて、最後は盛大に喜んでいたのが嘘かのように青ざめた顔を張り付けていた。……少し面白いと思ったのは言わない方が賢明かな。

 

 

ユメ「う、うそ……そんな状況になってたなんて……」

 

‪‪”‬‪元々は大きい場所だったけど、気候の変化で大変なことになっているらしいね。しかも、地域の暴力団に襲撃もされて……”‬

 

ユメ「そうなんです。私がいた頃から砂嵐による砂漠化が深刻で……でも、何とか復興させようってホシノちゃんと決めたんです!」

 

‪”‬‪ホシノちゃん?”‬

 

 

ユメの口から、ホシノという名前が出てきた。後輩だろうか?私が聞き返すと、ユメはハッと気づいた表情をして、すぐに答えてくれた。

 

 

ユメ「あ、先生は知らないですよね。アビドスの、今は三年生で、小鳥遊ホシノっていう子なんです!私の後輩で、学校にいた頃に一緒に復興を頑張っていた、頼もしい子なんですよ!今は後輩ちゃんたちと一緒に頑張っているみたいです!」

 

‪”‬‪小鳥遊ホシノ……”‬

 

 

ユメはその子と随分仲が良かったようで、ホシノのことを沢山語ってくれた。一緒に宝探しをした話、遊んだ話、怒られた話……。聞いていると、彼女はかなりしっかり者のようで、ユメのドジによく巻き込まれた苦労人だったようだ。

 

 

ユメ「……先生、私からもお願いします!アビドスを助けてください!!」

 

 

ユメは頭を下げてまでアビドスを助けて欲しいと切願していて、驚いた私は急いでユメに頭を上げるように催促した。

 

 

‪”‬‪ちょっと?!ユメ、そこまでしなくても大丈夫!元々その気だったから、安心して”‬

 

ユメ「……え?!って言うことは、もしかして……」

 

‪”‬‪アビドスに出張だ!”‬

 

ユメ「先生!!」

 

 

私はアロナに出張の旨を伝えた。アロナはそれを聞き、目を輝かせて応答してくれた。

 

 

アロナ「出発ですね!さすが、大人の行動力!かしこまりました!すぐに出発しましょう!」

 

‪”‬‪道案内はよろしくね、ユメ”‬

 

ユメ「はい!お任せ下さい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───アビドス自治区───

ユメ「迷っちゃったぁ……。ひぃん……」

 

‪”‬‪……あはは……”‬

 

 

シャーレから出発して、意気揚々とアビドス高等学校に向かった。……のは良かったのだが、参ったことに、このアビドス自治区が広すぎる。高校3年間このアビドスに通っていたユメでさえ迷うほど、この場所は広い。広すぎる……。迷ったことに絶望し、項垂れているユメの背中をさすりながら、どうしようかと考えていた。

 

 

‪”‬‪この辺、全くお店とかそういうのが無いね。……どうしよう。このままだと、空腹と脱水で力尽きちゃうかも”‬

 

ユメ「ひぃん?!嫌ですよそんなのぉ!!」

 

‪”‬‪うーん……”‬

 

 

どうにかしてここから学校、またはお店にたどり着けないかと思惟していると、後ろから自転車の音が耳に入る。振り返って見るとそこには、獣耳を持ったグレーの髪の少女が自転車に跨っている姿があった。

 

 

‪”‬‪ん?君は……”‬

 

ユメ「あ、シロコちゃん!!」

 

シロコ「……ユメ先輩?」

 

 

自転車に跨りこちらに向かってくる少女の名前は、シロコと言うらしい。シロコはユメの姿を見ると、不思議そうな顔をしてこちらに自転車を停めた。

 

 

シロコ「ユメ先輩、どうしてここに?今日はアビドスに来る予定だったっけ……」

 

ユメ「シロコちゃーん!来てくれてありがとう……死ななくて済んだよぉ!!」

 

 

ユメはシロコに飛びつき、抱きついた。シロコは微動だにせず、ユメに質問を続けた。

 

 

シロコ「その言い方だと……またアビドスで迷ったんだ。またコンパス忘れたの?」

 

ユメ「……あ」

 

 

シロコから、「また」という言葉が出てきた瞬間、色々と悟った。……ユメに道案内を任せたの、失敗だったかもしれない。今回はシロコが来てくれたから良いけど……次からはリンちゃんにヘリでも出してもらおうかな。

 

 

‪”‪‪コンパスが必要だったの……?”‬

 

ユメ「……あはは」

 

シロコ「……はあ、ホシノ先輩にあれ程言われてるのに。……そういえば、この人は?」

 

ユメ「あ、そうそう。紹介するね!この人が、最近話題の先生!アビドスに案内しようと思ってたんだけど……ね」

 

シロコ「……」

 

‪”‬‪あはは……”‬

 

私とシロコの思っていることは一緒だろう。ユメに少し呆れ、笑いながら、シロコと目を合わせる。自転車に乗っていたせいか少し汗ばんでいて、一滴の汗が頬を撫で落ちていく。

 

 

‪”‬‪初めまして、私はシャーレの顧問先生。見ての通りまあ……遭難しちゃってて”‬

 

シロコ「ん、よろしく。アヤネの手紙、見てくれたんだ」

 

‪”‬‪もちろん。ところで……アビドスに案内してくれない?”‬

 

シロコ「わかった、着いてきて。」

 

ユメ「シロコちゃんありがとぉ……!」

 

シロコ「ユメ先輩、ホシノ先輩にまた色々説教されるだろうね」

 

ユメ「ひぃん……」

 

‪”‬‪……ふふ”‬

 

 

微笑ましいな。なんて思いながら、自転車を引いて歩くシロコの後ろをユメと一緒に歩いた。

 

しばらく歩いていると、大きな校舎が見えてきた。門を通り、下駄箱や跳び箱、土のうがバリケードのように置かれたグラウンドを進み、自転車を置いたシロコと共に中に入っていく。

 

シロコがとある教室の扉をガラガラと音を立てながら開けると、そこには何人かの生徒が話し合っているのが見えた。扉の音に気づいた彼女らは、シロコに声をかける。

 

 

黒い髪の生徒「おかえり、シロコせんぱ……ユメ先輩?!」

 

ユメ「セリカちゃん!やっほー!」

 

セリカ「やっほーじゃないわよ!今日は来るって連絡1個も貰ってないわよ!」

 

黄色い髪の生徒「それに、見知らぬ大人の方もおられますね〜☆」

 

セリカ「ノノミ先輩の言う通り、その人は誰よ!なんでユメ先輩と一緒にいるの?!」

 

メガネをかけた生徒「あはは……」

 

 

セリカと呼ばれている子が、まくし立てる様に話し始めた。こちらを見る目はあまり友好的ではなく、逆に怪訝、不審そうな目であった。対照的にノノミと呼ばれている生徒は楽しそうな表情をしていて、メガネを掛けた生徒は苦笑いを1つして、困っている様子だった。

 

 

ユメ「紹介するね!この方はシャーレの顧問で、先生だよ!アヤネちゃんの手紙を見て来てくれたんだよ!」

 

アヤネ「……え、ええっ!?まさか!?」

 

セリカ「連邦捜査部「シャーレ」の先生!?」

 

ノノミ「わぁ☆支援要請が受理されたのですね!良かったですね、アヤネちゃん!」

 

アヤネ「はい!これで……弾薬や補給品の援助が受けられます!」

 

ユメ「ホシノちゃんにも知らせてあげたいんだけど……またお昼寝かな?」

 

セリカ「委員長は隣で寝てるわよ。私、起こしてくる」

 

‪”‪……お昼寝?”‬

 

 

ユメから聞いた話だと、かなり真面目で凛然としたイメージだったのだけど……。どういうことなのだろう。ホシノという生徒のイメージに齟齬が生まれ始めた。

 

──が、そんなことを気にする暇は、グラウンドから発せられた想定外の音によって潰されてしまった。

 

 

ダダダダダダダッ!

 

 

ノノミ「銃声?!」

 

シロコ「!!」

 

黒いヘルメットを被った人「ひゃーっはははは!」

 

赤いヘルメットを被った人「攻撃、攻撃だ!奴らは既に弾薬の補給を絶たれている!襲撃せよ!!学校を占領するのだ!!」

 

 

銃声を聞いて急いで教室の窓からグラウンドを覗いた。なんだあの人たちは。あれがアヤネの手紙に書いてあった、地域の暴力組織とやらなのだろうか。見るからに不良で、ヘルメットを被った集団がアビドスのグラウンドに現れた。

 

 

アヤネ「わわっ!?武装集団が学校に接近しています!カタカタヘルメット団のようです!」

 

シロコ「あいつら……!!性懲りもなく!」

 

 

あの不良たちは「カタカタヘルメット団」というらしい。シロコの発言から推測するに何回も襲撃を受けていて、地域の暴力組織というのはカタカタヘルメット団で間違い無さそうだ。

 

セリカ「ホシノ先輩を連れてきたよ!先輩!寝ぼけてないで、起きて!」

 

ホシノ「むにゃ……まだ起きる時間じゃないよー」

 

 

……やっぱり、ユメから聞いていた話より気怠そうで、ふにゃふにゃしてる。1年生の時から性格が変わったのだろうか……。

 

 

アヤネ「ホシノ先輩!ヘルメット団が再び襲撃を!こちらの方はシャーレの先生です。それと、ユメ先輩が来られてます」

 

ホシノ「……うへ?!ユメ先輩?!」

 

ユメ「やっほー、ホシノちゃん!」

 

ホシノ「先生と一緒ってことは……うへ〜、そういうことかぁ。よろしくねー先生」

 

‪”‬‪うん、よろしく”‬

 

セリカ「呑気に挨拶してる場合じゃない!先輩、しっかりして!出動だよ!装備持って!学校を守らないと!」

 

ユメ「そうそう!もっとシャキッとしないと!昔はこんな感じじゃなかったんだけどなぁ……」

 

ホシノ「……うへ〜、おちおち昼寝もできないじゃないか〜、ヘルメット団めー」

 

シロコ「すぐに出るよ。先生のおかげで、弾薬と補給品は十分」

 

ノノミ「はーい、みんなで出撃です☆」

 

 

アヤネ以外の生徒たちは、皆グラウンドに向かうために教室を出ていった。暫くして戦闘が始まり、静かで平和だったアビドスのグラウンドが鉄臭い戦場に早変わりすることとなった。

 

 

アヤネ「私がオペレーターを担当します。先生とユメ先輩はこちらでサポートを……」

 

ユメ「ううん!私も戦うよ!銃と弾薬は持ってるから」

 

アヤネ「ええ?!」

”ええ?!”

 

ユメ「二人してなんでそんな反応なんですか?!私だって戦えるもん!ホシノちゃんに鍛えてもらったんだもん!」

 

アヤネ「そうなんですか?あまり戦ってるところは見かけませんでしたが……」

 

ユメ「ホシノちゃんが全部やってくれてたからね……。でも、今日こそはみんなの役に立ちたい!」

 

 

ユメは上に羽織っていた白色のスーツを脱ぎ、シャツとスカートの姿になった。言い忘れていたが、ユメは新しくシャーレ用の服を貰ったようで本人曰く、「アビドスの制服みたいでかわいい~!」と言っていた。スーツを脱いで身軽になったユメは腰に付けたホルスターに入っている拳銃に手を掛けたのだが、その拳銃はホルスターと形が合ってないようで、ホルスターの中の拳銃が傾いた。

 

 

”それ、形合ってないね。新しいやつ買ってあげようか?”

 

ユメ「大丈夫です!これは……大切なホルスターですから。これと一緒に戦いたいんです」

 

”……そっか。じゃあ、頑張って!”

 

ユメ「はい!」

 

 

ユメは教室の外に駆け出した。戦場と化したグラウンドを2階の教室から見下ろすと、ホシノが盾を用いて前線に出てタンクの役割をこなしているのが見える。そのほかの生徒はホシノの後方にある障害物に隠れながら、援護射撃のような陣形でヘルメット団に銃口を向けていた。

 

……あれじゃ、ホシノの負担が大きすぎる。盾があるとはいえ、彼女の耐久力にも限度はあるだろう。このままだとホシノがやられて、そのまま他の子たちもヘルメット団に押し切られてしまう。

 

 

ヘルメット団A「おいお前ら!あのピンク髪を狙え!あいつ以外は全員ビビってこっちに出てこねえ!」

 

ヘルメット団B「聞いたかお前ら!集中砲火だ!!」

 

ホシノ「っ?!」

 

 

赤いヘルメットを被った子の号令により、ホシノはヘルメット団から集中砲火を貰い始めてしまった。不味い。ホシノしか前線に出てこないことを逆手に取られた。このままじゃホシノが危ない。今は銃弾を盾で受けられているが、いつまで持つかわからない。何か作戦を……。

 

 

ユメ「ホシノちゃん!助けに来たよ!」

 

ホシノ「うへ?!ユメ先輩?!」

 

 

ユメが合流したようだ。ユメが構えた銃は回転式拳銃──つまり、リボルバーである。ズダン、と重く火薬がはじける音が一つ生まれると、ヘルメット団の一人が、チャームポイントであるヘルメットのバイザーが割れながら後ろに仰け反り倒れた。

 

 

ヘルメット団C「ぐあぁ?!」

 

ホシノ「先輩ナイスエイム~!」

 

 

ホシノはそう言いながら、盾を構えてどんどんと前線へ侵攻してしまう。あの子、なぜああも一人で前線に立つのだろう。ただ戦いたいだけの戦闘狂という様子はなく、むしろ皆を守るために自分にヘイトを向けようとして、目立とうとしているように見える。銃の手さばきを見るに、戦闘も玄人だ。彼女の何がそう掻き立たせるのだろうか……。

 

 

ヘルメット団A「お前ら怯むな!あのピンク髪を狙え!他のやつらはこっちに出られねえんだ!」

 

 

 ヘルメット団は依然、ホシノに集中砲火を浴びせた。ホシノはそれを盾で受け流し、近づこうとする。

 

────だが、それが叶うことはなかった。

 

 

カラン

 

 

それは、あまりにも静かだった。集中砲火の銃声の中を、針に糸を通すようにそれは投げ入れられた。ホシノの盾の右斜め後ろ、爆発が当たる距離。

 

 

ホシノ「うへ?!」

 

ユメ「ホシノちゃん!?危ない!!」

 

 

ユメは駆け出した。でも、遅かった。投げ入れられた手榴弾はホシノのすぐそばで破裂し、爆風が砂を散らす。青ざめた顔のユメが何の躊躇もなく砂埃の中に突入し、ほかのアビドスの生徒たちは由々しき事態に絶句していた。

 

少しして、ユメがホシノを担いで砂埃から出てきた。ホシノは傷だらけで、余裕そうに笑みを浮かべておちゃらけているが、腕の傷が痛むようで少し顔をしかめる様子も見られる。彼女に戦闘を継続させるのはあまりにも酷だし、私がそれを許したくはない。

 

グラウンドにいるアビドス生徒たちはそれぞれ、シロコは突っ込む覚悟を、セリカはそれを止め、ノノミはホシノの心配をしている。ユメは……もうすでにリボルバーを構えて突っ込む気満々のようだ。でも、そんなことをしてたらまたやられてしまうだけ。

 

ようやっと私の出番が来たようだ。アビドスの助けになるために来たのに、今に至るまで何もできていない。このまま不甲斐ない大人として彼女らの記憶に刻まれるのは、絶対に回避したいのだ。そう思って、私は叫んだ。

 

 

 

”みんな!私の指示に従って!”

 

 

私の声にアビドスの生徒たちは振り向き、ヘルメット団は睨みつけた。

 

 

ヘルメット団A「ああ?!部外者の癖に何言ってんだお前!」

 

アヤネ「先生……?」

 

”ノノミ!地面に向かって掃射して!”

 

ノノミ「は、はい!」

 

 

ノノミは私の言った通り、地面へ向かって左から右にミニガンを回した。すると、アビドスのきめ細かい砂漠の砂が空中に舞い、ヘルメット団のいる一帯を包んだ。

 

 

ヘルメット団B「うわっ?!なんだこれ?!」

 

ヘルメット団A「くそ!見えねえ!?」

 

 

予想通り上手くいったようだ。

 

 

”ユメとシロコ!砂埃に紛れてヘルメット団に近づいてそのまま撃破して!セリカは取りこぼしの無いように遠距離射撃!”

 

 

ユメ「はい!」

シロコ「ん!」

セリカ「わかった!」

 

 

ユメとシロコは左右から挟むように砂埃の中に入り、セリカは同じ場所から砂埃の中にかすかに見えるヘルメット団の姿を撃ち抜き始める。ユメのリボルバーの音、シロコのアサルトライフルの音。視界が悪い上に左右から音に挟まれ、その上セリカの見えない場所からの狙撃。ヘルメット団は混乱に陥った。

 

 

ヘルメット団D「うぎゃ?!」

 

ヘルメット団B「くそ!どっから来やがる?!」

 

ヘルメット団A「落ち着け!このままじゃやられふべらっ?

 

ヘルメット団B「リーダー?!大丈夫ですkぐふぉあ?!

 

 

そこからは順調で、次々と混乱に陥ったヘルメット団を制圧し、アビドスの勝利に終わった。アビドスの生徒たちとユメは歓喜に包まれ、各々がハイタッチなどで勝利を祝う、ほほえましい光景が広がった。青春っていいなぁ……。

 

 

セリカ「私たちの勝利よ!思い知ったか、ヘルメット団め!」

 

ノノミ「わあ☆勝っちゃいましたね!」

 

ユメ「一時はどうなるかと思ったよぉ……もう!ホシノちゃん前に出すぎだよ!」

 

ホシノ「ご、ごめんなさぁい……」

 

アヤネ「あはは……。皆さん、お疲れさまでした。教室に戻ってきてください」

 

”みんなお疲れ様!”

 

 

戦闘を終えた彼女たちは、喜びに包まれた満足気な表情で教室に戻ってきた。そして、少しして落ち着いた後、教室で改めて自己紹介を行った。そこで聞いた話によると、彼女ら──ホシノ、シロコ、ノノミ、アヤネ、セリカは、アビドス対策委員会という委員会に所属していて、尚且つアビドス高等学校に所属する全生徒であるのだという。あまりにも数が少なく驚いたが、ユメからの話だと、前はもっと少なかったらしく3人だったのだとか。ホシノとユメと……あと一人、誰かがいたらしいのだが……その話はまた今度と、半ばごまかされる形になってしまった。

 

自己紹介の話の後、ついでにユメはホシノにこっぴどく叱られることになった。ホシノの背後から般若が見えるような気がして、過去の彼女の片鱗を垣間見た気がする。

 

その後、ホシノの提案でカタカタヘルメット団のアジトを攻撃することになり、少数精鋭のアビドスにあっけなくヘルメット団は敗北を喫した。アジトを撃破し、彼女らは次の問題として借金返済のことについて話してくれたのだが──ここで問題が起きた。

 

セリカが教室を飛び出し、どこかに行ってしまった。私が借金の問題に関わるのが相当嫌だったらしい。ノノミはそれを追いかけるために一緒に教室を出ていき、残った生徒はアヤネとホシノとシロコの三人だった。私はその三人とユメに、アビドスの借金の話についての話を聞いた。

 

このアビドス高等学校には現在、約7億円の借金があるそう。アビドスは元々巨大なマンモス校で、生徒数も今と比べ物にならないほど大量にいたのだが、ある時、この学区の郊外にある場所で砂嵐が起きた。その場所は普段も砂嵐が頻発する場所だったのだが、その時に起きた砂嵐は想像を絶する大きさだったという。それによって、アビドスは砂に埋もれ始めた。どうにかすべく資金の融資を銀行に頼んだのだが、片田舎の学校にそんな巨額を貸してくれるような銀行はなく、悪徳な金融業者に頼るしかなかった。それだけでなく、砂嵐が年を増すごとに巨大になっていき、被害は甚大に。それ故、アビドスは砂漠化、借金も膨れ上がり、今のアビドスになってしまったという。

 

過去にユメとホシノともう一人の三人で何とか頑張っていたのだが……今の金額を維持するので精いっぱいだったらしい。この借金を返済できなければ、アビドスは銀行のものになり、彼女らは青春の記憶を失ってしまう。

 

そんなこと、先生である私が許すわけない。彼女らは平気だと言っているが、私は彼女らと共にその問題を解決したい。その決意を彼女らに明かすと、喜んで歓迎してくれた。ユメもこの考えには賛成なようで、ホシノと共に歓喜していた。

 

これで私も晴れてアビドスの対策委員会の仲間として、借金についての問題に着手できるが……セリカからどうにかして信用を得ねば……。

 

そう決意した翌日、私は一人でアビドスの住宅街を歩いていた。ユメはシャーレに戻り、私の代わりに書類仕事を進めてくれるのだとか。そうして歩いていると、セリカと出会った。やはり信用されておらず、突き放すような言動をされてしまう。どうにかして信用を得ようとちゃん付けしてみたり、一緒に学校に行こうと提案してみたりしたのだが、やはりシールドは厚かった。

 

話を聞いていると、今日のアビドスは自由登校日であり、学校には行かなくてもよいとのことだった。ではなぜ彼女は外出しているのか?その問いを彼女に投げかけると、彼女は答えたがらずそのまま走り去ってしまった。どうにかして理由を聞きたかった私は、走る彼女を追いかける。追いかけられていることに気づいたセリカは立ち止まり、私に拒絶の言葉を投げつけながらも、しぶしぶ理由を答えてくれて、それはバイトのためだった。アビドスの借金返済に少しでも貢献したいようで、ちょっとでもお金を稼ぎたかったのだろう。

 

バイト先はどこなのかと聞いたのだが、彼女はまた答えずに走り去ってしまった。ついていけば分かるだろうとまたついていったのだが、次に気づかれたときは強い拒絶の言葉を投げつけられた。これ以上やったら本格的に嫌われてしまうと思った私は、一度そこで追いかけるのをやめ、アビドスの学校に向かい、そこでホシノたちに会うこととなった。

 

先程の話をしたところ、彼女たちはセリカのバイト先を知っているようだ。それならばと、私はセリカを除いたアビドス対策委員会全員と一緒に彼女のバイト先にお邪魔させてもらうことに。彼女のバイト先──紫関ラーメン。そこでは、ユニフォーム姿のセリカが働いていて、対策委員会のメンバーを見るなり驚いた表情をしてなぜわかったのかと問いただした。ホシノがここに連れてきたと知るなり、セリカは紫関ラーメンの大将、柴大将に言われるまま、唇をかみしめながら対応してくれた。

 

そこでの彼女らの交流を見ていると、とてもわちゃわちゃしていて心底楽しそうだった。その光景をシロコの隣で微笑みながら見ていたのだが……料金を私が払うことになってしまった……。ホシノに半ば嵌められたような形になり、やられたなぁと思いながらもしっかりと払わせてもらった。ノノミが自分のカードで払ってほしいと提案してきたが、それはさすがに申し訳ないと思い、しっかりと断った。支払いを済ませ、私とホシノたちは各々解散することになり、私もシャーレに戻りユメに任せていた書類仕事をともに片づけ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──太陽は沈み、空が月と星の独壇場となった時、事件は起きた。

 

最初はアヤネからの連絡だった、セリカが攫われたと。それを聞き、私は急いでアビドスに向かった。後輩が危険な状況だと知ったユメも、じっとしていられず共についてきた。向かう途中、ホシノと出会った。彼女もアヤネから情報を聞き、急いで学校に向かっていたようだ。校舎に着くと、すでにホシノ以外の三人が集まっており、それぞれ情報交換をしていた。だが、やはり情報は少なく、どこで攫われたかもわからない状況で、暗澹とした状況になっていた。

 

そういうわけで私は、連邦生徒会の管理しているセントラルネットワークに接続し、セリカの端末反応がどこで消えたのかを探ることにした。バレたら始末書を書くことになるが、生徒の身に危険が迫っているというのにそんなことを気にする暇はない。急いで調べたところ、セリカの端末は砂漠化が進行している市街地の端のほうで消えており、そこはカタカタヘルメット団の主力が集まっている治安の悪い場所でもあったようだ。おおよそ、アビドス生徒の一人を人質に取って学校を占拠しようとしたのだろう。アロナにその端末の消えた位置からおおよその位置を特定できないかと聞いてみると、瞬時にその座標が返ってきた。流石、優秀な自称秘書だ。 その座標を伝えると、アヤネがどこからともなく車を引っ張り出してきて、その車で先程アロナが伝えてくれた座標に出発した。

 

 

シロコ「結構進んできたけど、そろそろ着きそう?」

 

”うん、かなり近くなってる。あと数分ってところかな”

 

ユメ「セリカちゃん、大丈夫かな……」

 

ノノミ「分かりません、でも……」

 

ホシノ「私たちが急いで助ければ大丈夫ですよ~せんぱい」

 

ユメ「……うん、そうだね!頑張ろう!」

 

ノノミ「はい!頑張りましょう!」

 

”アヤネも、サポートよろしくね”

 

アヤネ「お任せください!セリカちゃんを攫った人たちに痛い目を見せましょう!」

 

”そうだね”

 

 

皆、心意気も十分に張り切っていて、臨戦態勢は万全だった。そして、車の座標とアロナの予測した座標がマップ上で重なり合うほど近くなった時、皆の心はさらに引き締まった。

 

 

アヤネ「皆さん!そろそろ先生が予測した座標に到着します!」

 

 

アヤネの声で皆が緊張感を持った。

 

────でも、それは

 

 

”……なに、あれ……”

 

ホシノ「……え」

 

ユメ「……うそ……」

 

 

目の前に広がる景色によって、絶望と恐怖に置き換わった。

 

 

シロコ「あの、大きなロボットは何……?」

 

ノノミ「トラックが……セリカちゃんが危ないです!!」

 

 

大きく大破し横転した数台のトラックと、暗闇が蔓延るまっさらな砂漠にそびえ立つ、巨大な人型のロボットが映る景色によって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ブルーアーカイブ、ストーリー第二部が始まりましたね!皆さんは読まれましたでしょうか。ストーリーはもちろんのことなのですが、個人的にはプラナがガチャに出てくれることが一番うれしかったです。
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蒼穹の雪風 - Blue Archive: Stratospheric Phantom -(作者:Orpheus@失踪主)(原作:ブルーアーカイブ)

▼キヴォトス。そこは銃と神秘、そして少女たちの学園都市。▼戦車やヘリコプターが日常的に行き交うこの街に、一つだけ存在しないものがあった。▼_____『音速を超える、固定翼の戦闘機』▼サンクトゥムタワーの影響か、あるいは失われた技術か。▼誰もが「空はヘリで飛ぶもの」と信じるこの世界で、その常識を嘲笑う一人の元生徒がいた。▼妖崎(ゆざき)レイ。▼ミレニアムサイエ…


総合評価:296/評価:8.09/連載:11話/更新日時:2026年04月20日(月) 23:40 小説情報

ACを作りたい少年とセミナー書記(作者:雨垂れ石)(原作:ブルーアーカイブ)

ひょんなことからキヴォトスに流れ着いた少年『境井 仁』もとい『レイヴン』▼彼が目指すのは人型機動兵器『アーマード・コア』を開発する事▼そしてそれを見守るセミナー書記とエンジニア部など様々な人物▼果たして彼は『AC』を作る事ができるのか▼そんな物語です▼※俺が書いているもうひとつの小説『無名のリンクス 先生になる』の世界とは別の世界線です▼メインの小説と並行し…


総合評価:574/評価:7.12/連載:17話/更新日時:2026年05月05日(火) 20:00 小説情報

神話使いの男子生徒(作者:ok.ko)(原作:ブルーアーカイブ)

ブルアカの世界にペルソナ3の召喚機をもった生徒を追加してみました。あ、全てのペルソナが使えて、能力もガチです。▼ペルソナとブルアカどっちもにわかです。▼違うところがあったらどんどんご指摘お願い致します。▼圧倒的駄作、文章力壊滅的、設定とんでもないことになってますが、それでも良かったらどうぞ。▼曇らせかもしれない


総合評価:216/評価:6.22/連載:16話/更新日時:2026年04月30日(木) 19:07 小説情報

荒んだ人生で心が壊れたうつ病男性がキヴォトスに転生(作者:ダブクロチャンネル)(原作:ブルーアーカイブ)

衝動的に書いたブルアカ二次創作▼簡単なあらすじ▼転生した主人公がブルアカの世界で好きなように生きる話▼2025年6月22日―追記―▼当小説では以下の銃器の種類をこのように省略します▼ハンドガン:HG▼サブマシンガン:SMG▼ショットガン:SG▼アサルトライフル:AR▼グレネードランチャー:GL▼マシンガン:MG▼スナイパーライフル:SR▼ロケットランチャー:…


総合評価:472/評価:5.8/連載:37話/更新日時:2026年04月26日(日) 14:14 小説情報

Blue Legend〜一般男子の物語〜(作者:宗也)(原作:ブルーアーカイブ)

簡単なあらすじ▼これは何故か中途半端な特典を持ってブルーアーカイブの世界であるキヴォトスに来てしまった一般男子の青春の物語である。▼なお、一部生徒は結託して一般男子を囲い込もうとしている模様。▼詳細なあらすじ▼目が覚めると何故かブルーアーカイブの世界にやって来ていた一般男子高校生。特典みたいな物はあるが、何故か中途半端。しかも原作の9ヶ月前の世界だった。▼原…


総合評価:930/評価:6.3/連載:44話/更新日時:2026年05月07日(木) 00:23 小説情報


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