AC好きの高校生、透き通った世界に転生する。 作:はぶらし023
黒服と会う前の朝
アスカ「……ふぁぁ…………」
あの戦闘から翌日。病院のベッドで目覚めた。かなりフカフカしていて、びっくりするぐらい眠ることが出来た。今日はホシノさんとユメ先輩が来るまでは病院で待たないといけないらしく、とんでもなく暇だ。ACしたい。
と、暇つぶしのために色々考え事をしているとドアから音が鳴った。
コンコン
アスカ「ん?どうぞー」
ガラガラ
アスカ「どうもこんにち……」
そこに居たのは、黒くて、白い亀裂の入った頭を持つ、人型の「なにか」。本能が、こいつは危険だと感じている。敵だと直截させる、異様な雰囲気に圧倒されながら、そいつを睨む。
???「どうもこんにちは、渡曾アスカさん」
アスカ「……誰だお前」
???「まあ、警戒されるのも無理はありませんね。では自己紹介から。私は、ゲマトリアという組織に所属しています、名前は……『黒服』、とでもお呼びください」
なんだこいつ……急に入ってきて急に自己紹介始めやがった。一応、人の言葉は喋れるらしい。しかも、妙に丁寧だ。
アスカ「……何しに来た、ヘンなの」
黒服「まあまあ、そう警戒なさらずに。私、暁の……小鳥遊ホシノさんの知り合いでして」
こんな怪しさぷんぷんのやつが、ホシノさんの知り合いなわけがないだろう。おそらく、一方的に関わっているとか、そんな感じだろう。
アスカ「ホシノさんの?……んで、その知り合いさんが何しに来たってんだ?」
黒服「お話が早くてとても助かります。今回、私はあなたにご提案があり、その旨を伝えるためにお伺いさせていただきました」
アスカ「……提案?」
黒服「はい。単刀直入に言いましょう。あなたの身体を調べ、研究したいと思っております」
……こいつはかなりやばい。自分の放ってる怪しさオーラを自覚してないのか?
アスカ「……はぁ?断る。怪しすぎるだろお前」
黒服「勿論、タダでとは言いません。貴方がもし首を縦に振るのであれば、それ相応の見返りは与えさせてもらいます」
……見返り?
アスカ「……一応聞いておこう。見返りは?」
黒服「アビドス高等学校の借金を半額……いや、貴方なら……全額の肩代わりをさせてもらいます」
……怪しすぎる。……が、この提案さえ飲んでしまえば…あの人たちを、助けられる……。
アスカ「……ヘンなの、お前は俺の身体の、何を調べたいんだ?」
黒服「……我々の組織、ゲマトリアは、このキヴォトスに存在する「神秘」について研究しているのですが……あなたの持つ神秘は、ほかの神秘とは違った性質を持っていることが解りました。なので、あなたの持つその神秘を、徹底的に研究し、その力を解明したいと思っている所存です」
アスカ「神秘?」
この世界は、他の人間と全く違う、何か特殊な能力を持っているらしい。ヘイローやら神秘やら……キリスト教の聖書に出てくるタイプの言葉ですやん。
黒服「おや、その様子だと知らない様ですね。いろいろ語りたいところではあるのですが……今回はもう時間がないようですので、ここまでとさせていただきます。もしもっと話を聞きたいと思うのなら、この地図が示す場所に来ていただきたい。……それでは」
そう言って紙を渡し、ドアを開けて病室から出ていった。なんだあいつ。紙に書いてあったのは、どうやら街のマップらしい。とある所に赤い点が書かれている。ここに来いと言う訳だろう。
そんなことを思っていると、病室に看護師さんが入ってきた。どうやらユメ先輩達が来たらしい。
紙をポケットに入れて、ベッドから立ち上がり、病室の外に出た。
アスカ「……という感じで、マップが描いてある紙を貰って終わりました」
ホシノ「なるほど……黒服の提案には、まだ乗って無いのですね」
アスカ「当たり前ですよ。あんな怪しい大人の提案に乗る訳ないですよ」
ホシノ「…………」
ただでさえ大人が好きじゃ無いってのに……
アスカ「……どうしますか。今なら、敵地に乗り込むことができますけど……」
ホシノ「黒服とは、何回も会っているのでそれは良いのですが……もし貴方が行くと言うなら、私も着いて行きます。良いですね?」
アスカ「了解です」
頼もしすぎるぞホシノさん……いつも怖いなぁと思っていたが、やはりこういうときは頼れる。
ホシノ「では、そろそろ戻りましょうか。先輩が待ってます」
アスカ「そうですね。いきましょう」
ユメ「あ、おかえりなさい!どうだった?お話はできた?」
ホシノ「ええ、ある程度は」
ユメ「ホシノちゃん、憑き物が取れた顔してる!ちゃんと話し合えたんだね」
アスカ「まあ、そんな気にしなくて良いですよ。それよりも、今日はどうするんですか?お金のために依頼を受けたりするんでしょう?」
正直早く依頼を受けたい。ACに乗らせてくれ。まじで。
ホシノ「いえ、あなたには一度私と戦ってもらいます」
アスカ「…………は?」
ACに乗る前に死ぬかもしれない。命の危機。まずい。
アスカ「ちょ、ちょっと待ってください。おかしくないですか?!なんで銃初心者なのにプロと戦わないといけないんですか?!ねえ?!」
ホシノ「そこまで拒絶しなくても……ただ強さを測りたいだけですよ」
アスカ「あなたの戦いぶり見たことあるんですよ!?俺もう死にたく無いですよ!!」
もう死ぬのなんて懲り懲りだ。と強く思う。一回死んでるのだから。
ホシノ「殺しはしませんよ、流石に。手加減しますから、着いてきてください」
アスカ「嫌だアアアアアア!!死にたく無いいいい!!」
ホシノさんに首根っこを掴まれ、やってきたのはアビドス高等学校の砂にまみれたグラウンド。ここで勝負をするらしいが……
ホシノ「準備ができたら、かかってきてください。いつでもいいので」
強者の風格すぎる。きんちょうかんのせいできのみ食べられないよ……きのみ持ってないけど。
ユメ「アスカ君頑張ってー!」
ユメ先輩が応援してくれている。残念ですが先輩、俺は確実に負けますよ。
まあ、心の中で愚痴っても意味がないので、攻めよう。当たって砕けろ作戦だ。幸い手加減はしてくれるらしいので、死にはしないだろう。
アスカ「ふぅ…………っ!」
脚に力を込めて、ホシノさんの方向に向けて思いっきり飛び出す。ホシノさんは驚いた様子もなく、冷静にこちらを見ている。
ズダン
ズダン
試しに2発撃ってみるが……
ホシノ「…………」
ビュン
ビュン
全てスレスレで避けられた。チーターだろ最早。あの速さの銃弾をなんてことなく避けてしまう、化け物……多分、この世界の中でも強者に位置する人なんじゃないか?あの人。
そんなことを思いながら、銃弾を避けられたので作戦変更を試みる。脚でブレーキをかけて右に方向転換し、走る。走りながらまた2発撃った。視覚がこちらに向いているのなら、動きながら撃ったら少しは避けずらいだろうと思ったのだが……
ズダン
ズダン
ホシノ「…………」
ビュン
ビュン
また避けられる。どうしたものか。
焦燥の気持ちを抑え、視線を周りに張り巡らせる。当然“砂漠”なので何かあるわけもなく、何も打開策が浮かばない。
いや待て、砂漠?
そうか、砂漠だ。砂漠だから、“アレ”ができるんだ。
そう閃いた瞬間には、身体が動いていた。
思いっきり走ってホシノさんに近づく。前世の体では到底無理なぐらいのスピードが出て、少し驚く。この世界の人間の体はかなり身体能力が高いらしい。
そして、あと3歩ほどでホシノさんに近づけるであろう距離に近づいた時。
ホシノ「っ!」
ホシノさんがショットガンを向けてきた。だが、その銃口が俺に向く事はなかった。
思いっきり姿勢を低くして、ショットガンの射線から外れる。走りながら腕を砂に潜らせ、手で砂を掴んで、地面から手を持ち上げるように投げつける。狙いはもちろん目。
ホシノ「?!」
だが、ホシノさんはそれを腕で防いだ。流石当たり前の様に銃弾を避ける人だ、反射神経がクソほど良い。
防がれたが、ある程度の隙はできた。そのまま脚をホシノさんの方向に向けて放つ。
するとホシノさんも蹴りを入れてくると思ったのだろう。腕でそれを防ごうとしてくるが、俺はそれを待っていた。
目から腕が離れた隙に、手に持っていた砂をまた目に投げつける。そう、ホシノさんが脚に夢中になっている隙に、もう一度砂を掴んだのである。
ホシノ「くっ?!」
するとやはり、脚を防御するために腕を離していたので、砂が目にダイレクトイン。目を潰されたホシノさんは、後ろに退いた。
それを見逃す訳もなく、そのままホシノさんの方向に向かって走り出し、トリガーを3回引く。
ズダン
ズダン
ズダン
早い間隔で3回飛び出した銃弾は、ホシノさんの方に向かって行き、もう少しで確実に当たる……と、思っていた。
ビュオン
全ての銃弾を避けながら、ホシノさんがとんでもないスピードでこちらに向かってきた。目を潰されてる筈なんだけどなぁ?!
ホシノ「っ!」
目を瞑りながら、おそらく予測で、こちらに向けてショットガンを向けられる。
ズバン
アスカ「グエ?!」
しまった、声を出してしまった。ホシノさんはその声を頼りに、次は蹴りを出してきた。
反射神経がホシノさん程良くない俺は、それを受けるしかなかった。
ズガッ
アスカ「グフォエ?!」
そのまま蹴り飛ばされ、砂の大地に転がりながら着地する。
その隙を逃さず、目が回復したホシノさんが突っ込んできた。俺は反撃をするために体勢を整えて銃弾を放つが、当たらない。
そしてそのまま、至近距離に近づいてきたホシノさんは、ショットガンをこちらに向けてきた。
撃たれる……そう思って目を瞑ったが、いくら待っても銃弾は来なかった。目を開けると、そこにはいつものような、無愛想な顔のホシノさんが。
ホシノ「……ふう、私の勝ちですね。砂で目を潰してきた時は少し驚きましたよ。強いですね、あなた」
アスカ「はぁ……はぁ……絶対、嘘ですよね……」
お世辞にも程がある。目を潰してなお弾丸避けるとかなんだよ……化け物じゃん。
ユメ「2人ともー!お疲れ様ー!」
ユメ先輩が走り寄ってきた。タオルと水のペットボトル2人分を抱えて。
ユメ「お疲れ様!これで汗拭いて、ちゃんと水分とってね!」
ホシノ「ありがとうございます」
アスカ「ありがとうございます……」
水を飲みながら、さっきの戦いを振り返る。ホシノ先輩の目を潰したのに、銃弾を全て避けられ、尚且つ場所もバレていた。なんとも不思議だ。
アスカ「ぷはぁ……さっきの戦い、何でホシノさんは目を潰されたのにこちらの居場所がわかったんですか?あと弾丸も、当たり前の様に避けてましたよね」
気になったので聞いてみた。すると
ホシノ「いえ、ただ音を聞いて居場所を予測して攻撃しただけですが……あと、声を出してくれたおかげで、何処にいるかが分かりやすくなりました。銃弾に関しては、絶対に直進するので音さえ聞けば避けられますね」
さも当たり前の様に化け物みたいな返答が返ってきた。……なんだよ相手の居場所を予測するって、怖いよ。ていうか何?この人は弾丸を避けるのが当たり前なの?
ユメ「にしても、ちゃんと手加減してたねホシノちゃん。手加減してなかったらもっと酷い傷になってただろうなぁ……」
アスカ「ファ?!」
アスカはとても驚いた。それはそうだろう、本気で戦って負けたのにそれはまだ本気では無いと言われたのだ。アスカも薄々気づいてはいたが、やはり言葉に出されると心に来るものがある。
アスカ「アレが本気じゃないって……じゃあ、本気で戦っていたら一体どんな事になって……」
身震いを一つ覚えた。それと同時に、(俺はこの世界で生きていけるのだろうか……)と思うアスカであった。