登録者数30万人突破。
山を下りてきた『へのじちゃんねる』の面々は昨晩の結果ともいえるこの数字にまず出迎えられた。
「嬉しい。めちゃくちゃ嬉しい。嬉しいんだけども」
「これどうすっぺかなぁ……」
思いもしなかった出来事でもたらされた結果だけに
一旦は落ち着こう。自分たちが浮足立っている事を自覚した
そう考えた
「ど、同接数2万!? なにが起きてんのコレ!?」
昨日の大放送事故からまだ1日も経っていない。その事を
その状況で何食わぬ顔で生配信が始まったとなれば、どうなるかなんて火を見るよりも明らかだろう。
瞬く間に埋め尽くされるコメント。色とりどりの投げ銭コメント。普段であれば手の空いたりんが不穏なコメントなどをブロックするのだが、そんなことを言っていられる状況ではない。何故かへのじちゃんの生配信を実況する配信者も現れる始末で、正にてんやわんやという状況だ。
もちろんそんな世間一般のあれやこれやはへのじちゃんとくろじには一切関係がないため、一人と一匹はいつも通り朝のニュースを眺めて一喜一憂し時たま踊ったりちゃぶ台をひっくり返す。最終的には3万人まで増えた同接数に
そして配信が終わった後も
「し、死ぬ……死んでまう……」
「大変ですねぇ」
二人でこんなもん回せるか、と悲鳴を上げる
今、彼女は全能感に浸っている。3年もの間自身を悩ませ続けていた肩こり腰痛頭痛にのどの痛みその他もろもろが昨日から一切感じられなくなり、また正式にお祓いをした結果そんな状況に陥った原因も判明し対処も行った。自身にとって最高傑作ともいえる楽曲『天界の階段』が原因だったというのは痛恨であるが、余りに出来が良すぎて霊魂が寄ってきたという事実は
超一流の歌唱力とド三流のメンタリティを矛盾なく内包する
厄介すぎるおもしれ―女が地縛霊のように憑いてきたという事に気付かないまま、
もちろん騒動は一日では終わらない。次の日も、その次の日もお祭り騒ぎは止まらないし、悪い事は続いてしまう。
「え、コラボをキャンセル……ですか?」
『はい。大変申し訳ないのですが……現状、そちらさんの動きが激しすぎて。落ち着いたころに再度企画を動かしませんか?』
以前から交渉をしていた子育て系配信者から、軒並みコラボ案件がキャンセルされたのだ。