TS雷家事親父   作:ぱちぱち

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子等簿? 子供用の人別帳かな(ばぶぶ? ばぶばぶばぶばぶばば)

 コラボ案件が全て立ち消えになった。それは今後の『へのじちゃんねる』の予定を大きく狂わせる出来事である。

 

 

「もう大幅に狂ってるじゃないですかぁ」

 

「うっさいわね。突発的なアクシデントとコレとじゃ全然違うんだよ」

 

 

 りんとやい子(大人たち)があまりに忙しいため自分からベビーシッターを買って出た赤佐てん(へぶん)の言葉に、ようやっと忙しさに慣れてきたやい子がそう返す。出会ってから一週間も経ってないのに、もう気安く軽口を叩きあえる仲になっているあたり相性が良いのだろう。

 

 ちなみに余裕しゃくしゃくのへぶんであるが、彼女のツブヤイターや過去動画などは『へのじちゃんねる』の比じゃないくらいに炎上している。なんせ傍から見たらコラボ先の赤ん坊に地縛霊の大群を押し付けた人間の屑である。関係者各位からは悲鳴のような声が上がっているが、へぶんはそれらを一切気にせずに忙しいりんとやい子(大人たち)に代わってへのじちゃんの面倒を見ている。

 

 りんとしては自分も困っているのに娘の面倒を見てくれる友人で、やい子としては助かっているから文句を言えないが、それはそれとして一言言いたい相手。この家におけるへぶんの立場というか立ち位置は大体そんな感じである。

 

 

「コラボなんて自分で数字が稼げる人なら要らないんですよぉ。ねぇ、へのじちゃん」

 

子等簿? 子供用の人別帳かな(ばぶぶ? ばぶばぶばぶばぶばば)

 

「ほら、へのじちゃんもそうだって言ってますよぉ」

 

「絶対言ってないだろ。というか三日前にうちにコラボ懇願してきた歌い手は誰だっけか」

 

 

 つい数日前に自身の停滞に悩んで『へのじちゃんねる』にコラボを持ちかけている事実を棚に上げて、へぶんは世にあるコラボ動画全てに喧嘩を売った。呆れたように応えたやい子の目の前で、へぶんはへのじちゃんを抱きかかえたままふんふんと般若心経を鼻歌で歌い始めた。

 

 なんでも自分に対する否定的なコメントや言葉を受けた時にこれをすると精神が一気に安定するのだという。ある意味で非常に真っ当な宗教への頼り方かもしれない。

 

 なんだこいつ、と思いながらも、やい子は言われた言葉を自分の中で吟味する。赤佐てん(へぶん)という女は色々な配信者を見てきたやい子をしてトップクラスに意味の分からない奴(頂点はへのじちゃん)だが、言っていることはそれほど間違ってはいない。と、思う。

 

 配信者のコラボというのは互いにメリットがあればこそ成り立つ。このメリットというのは登録者数の増加や普段関わらないジャンルや分野への知名度アップなどであり、現状一大祭り開催中のへのじちゃんにとってはよっぽどの相手とのコラボでなければこのメリットを得ることは難しい。

 

 自分で数字が稼げる、というのを今回の騒動に当てはめたくはないが、現状を考えればへぶんの言う事は間違っていないのだ。

 

 そして、メリットのあるコラボ相手となると……正直雲の上である金盾配信者あたりとなるだろう。

 

 

「しばらくは。少なくとも落ち着くまでは延期ってのも間違ってはないわな」

 

「そもそも忙しすぎてなんか企画とかリームー」

 

「せやな……」

 

 

 なにせ毎朝毎夕の配信すらへぶんに手伝ってもらっている状況である。その配信では明らかにへぶんだと分かる声音でへのじちゃんに声掛けしている撮影者が居ると話題になっているが、へぶんは自分のスマホを自宅に置いてきているので一切ダメージがない。らしい。

 

 着々とりんとやい子(大人たち)の隙をついて自身の立場を固めていくへぶんは、ここで次なる手を打った。先ほどはやい子はああいったが、へぶんと『へのじちゃんねる』は正式なコラボをしているわけではない。

 

 コラボの打ち合わせに行ったらアレが起きたためそのまま大事故動画とその後の『全ての元凶』がコラボ扱いになっているが、『へのじちゃんねる』と自身の動画チャンネルでの正式なコラボはまだなのだ。というか体調の不安が一気に解消されたため、へぶんとしては今までのうっ憤を晴らすためにも頭の中で渦巻く音符たちを使って新しい楽曲を作りたい。そして出来ればその楽曲のMVには当初の予定通りへのじちゃんに出てほしい。

 

 彼女にとって完ぺきな計画(願望)を頭の中で思い浮かべたへぶんは、努めて冷静な声音で決定権を持つりんとやい子(大人たち)に声をかけた。

 

 

「あああああのそれで。じ、自分。げほげほ。わわわ私が作る楽曲の、えええMVにへのじちゃん様をぜひご出演してほしいという案件であるのですが」

 

「忙しい。寝言は寝てからいえ」

 

「あはは、メンゴ♪ 流石に今は考えられねーよてんちゃん!」

 

 

 勇気を出した彼女の行動はりんとやい子(大人たち)の心無い言葉によって破綻した。崩れ落ちた赤佐てん(へぶん)にへのじちゃんは励ますようにポンっと足を叩く。やい子と違っておしゃぶりを上げるほどの好感度はないようである。

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