「うわっ! うわっ! 生へのじちゃんさんだ本当に! はんにゃーはーらーみーたー」
「
都内某所にあるライバー事務所『どどんぱち』の応対室で『へのじちゃんねる』の面々(Withoutへぶん)と『
「どもー。元気にしゃくしゃくシャークヘッド! 鮫好き系Vライバーこと
「
「
ごくごく自然な様子でへのじちゃんに名刺を差し出す飯島氏に、名刺を受け取ったへのじちゃんは申し訳なさそうな表情を浮かべて自分のベビー服を探る仕草を見せ首を横に振る。くろじはくろじである。
飯島氏のマネージャーとして今回も田中氏が来ている。恐らく『へのじちゃんねる』との応接はほぼ田中氏が受け持つことになったのだろう。その田中氏は本来名刺を渡すべき
なぜ動揺がないのかというと、例の大事故配信以来こういうタイプの人間――へのじちゃんを同等の人格を持った相手だと認識する人、というか配信者が増えたのだ。その最たる例は今回関係者じゃないからとWithoutされたへぶんだろうか。
彼ら彼女らは自分の配信だったりSNSアカウントなどで口をそろえてこう言う。「あれはまだ赤ん坊の外見をした大人である」と。言葉が分からない外国人とコミュニケーションを取るくらいの心持で見れば言ってることが分かるだろ、とまでいう人も居る。特に生配信を見た人は。
現在は賛否両論ある考え方だが、毎日の朝夕生配信を見た視聴者の中からは少しずつ賛の意見が増えているようだ。
「保護者のお二人もよろしくお願いします。へのじちゃんさんの言葉が伝わりにくいというデメリットもありますが、私とへのじちゃんさんの表現力であれば十分観衆を楽しませる動画は作れると思います」
「よろしくお願いします。あの、こちら私の名刺です」
「あ、うちも」
「これはご丁寧に……」
演者同士の挨拶が終わった後、ようやく飯島氏は
『へのじちゃんねる』の場合は矢面にたつ演者が赤ん坊と子犬のため必然的に最初の挨拶は
「ゲーム配信ですね」
「ゲーム配信がいいよね」
顔合わせが終わった後、では実際にどのような動画を作るかの話し合いが行われる。この際、最初に出た意見は両陣営ともに同じものだった。
「ゲーム配信なら言葉の壁はある程度取り払えますし、赤ちゃん用の知育ゲームなら数もあります。許可もとりやすい」
「知育ゲームなら配信事故も起きにくいしねぇ」
飯島氏の言葉にりんがそう返す。この場合の配信事故とはゲーム内容がセンシティブなものだったりそも赤ん坊がやってはいけないものだったりする場合が多いためだ。低年齢の動画配信者も増え、全年齢向けと言われるゲームでも年齢的にやってはいけない対象だった、とかいう見落としで動画が削除される事もままあったりするらしい。
その点知育ゲームであればそもそもプレイ年齢など気にしなくていいし、赤ん坊の知能の発達や反射神経の発達といった成長促進を目的に作られたものの為、これをプレイしてその動画を配信するという事にはなんら事故性のものが介在しない。そして知育ゲームとはいえ競い合う形式であればある程度以上の面白さも保証できる、と飯島氏は語る。
「本気で知育ゲームをやる私と本気で知育ゲームをやるへのじちゃんさん。ゲームの上手下手はあるかもしれませんが、この絵図の段階で私は面白くなりそうだと思ってます。普通は勝負が成立しないし本来なら大人げないでぶった切られる構成なのに、へのじちゃんさんが相手なら変わるんですよ。世間の見方ってやつが。これ凄くないです?」
自分の動画では鮫に対する愛情が異常なだけのふつうの女の子で通している飯島氏は、へのじちゃんの特異性についてを熱く語り始めた。なんでも最近開設された公式へのじちゃんファンクラブ『後方保護者面』でも3桁内の会員であるらしい。
ちなみにこの後方保護者面の発起人は『どどんぱち』所属のVライバー
べいびは飯島氏のすぐあとに入った後輩らしく、ほとんど同期と言っても良いデビュー時期のためこういったマウントの取り合いは往々にして行われていたのだが、今回に関しては本気で悔しい、と飯島氏は熱く語る。
「なんでへのじちゃんさん。べいびの奴が悔しがるくらいいい動画作りましょう、よろしくお願いします!」
「
0歳児に向けて頭を下げる大人の姿に、へのじちゃんは嫌そうな表情を浮かべる。そんなへのじちゃんを見てくろじが「
感想評価お気に入りありがとうございます。励みになってます