TS雷家事親父   作:ぱちぱち

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へのじちゃんねる

 りんとやい子が共同で作り上げた『へのじちゃんねる』は、まずまずの速度で成長していた。

 

 チャンネル作成から1週間ほどで登録者数は1000人を超え、一先ずのボーダーである収益化を達成。達成した事に気付いた母親のりんはピザを取りまくり食べきれなくて友人らを家に呼ぶなどはしゃぎにはしゃいでいたが、母親が大喜びしている理由がわからなかったへのじちゃん(良成)はもしや母には躁鬱の気があるのかとやきもきしたりしていた。

 

 そんな小さな騒動がありつつ、時は進みへのじちゃんが生まれて約半年。

 

 へのじちゃんはついにはいはい(移動手段)を習得した。

 

 

ばぶばぶばぶばぶ(ふんふんふんふん)

 

 

 気合の入った鼻息をならし、赤ん坊がぶつかったり転んだりしても大丈夫なように柔らかい素材でできたフロアーマットの上をへのじちゃんは爆走する。部屋の角まで走り抜け、ぐるりとカーブを曲がる様に壁際を攻めつつ反転。元来た道を逆回りに走り、お気に入りの赤ちゃん用クッションへとダイブする。

 

 

ばぶー、ばぶー、ばぶばぶ(はぁー、はぁー、つかれた)

 

 

 程よい全身疲労を感じながら横たわり、ごろりとクッションの上で寛ぐ。はいはいが出来るようになってから毎日へのじちゃんはこの散歩を行っている。理由は運動不足の解消だ。

 

 前世、いきなり訪れた死の瞬間をへのじちゃん(良成)はよぅく覚えていた。いきなり夜になったかのように訪れた暗い闇。ふと目を覚ましてみれば家族が自分を心配そうに見つめていて、自分の体が自分の体ではなくなったかのように身動きできない状況。

 

 医師と名乗る白衣の男から言われた言葉を、言われた瞬間をへのじちゃん(良成)はよぅく覚えていた。

 

 生まれ変わってからは別物のように動く体に、やはり自分は老いていたのだと。赤ん坊であり制限が多々ある今の方がむしろ過ごしやすい肉体であると感じたへのじちゃん(良成)は、この肉体を大事に、大切に扱う事を心掛けていた。

 

 そのための一歩目がこの散歩である。よく動き、よく学び、よく遊び、よく食べて、よく休む。それが子供のやる事だとへのじちゃんをみていたやい子が口にしたのだが、それはへのじちゃん(良成)にとっても至言と感じる一言であった。

 

 深い言葉だ。そして、間違ってない。

 

 日によって貧乏そうな(ダメージ系)服を着てくる母の友人を、この方は金銭的に余裕がないだけで実はとても素晴らしい人なのだとへのじちゃん(良成)は思い始めている。

 

 そんなへのじちゃんの考えはつゆ知らず、せっかく立ち上げた『へのじちゃんねる』に関して運営者である大人たち二人は頭を悩ませていた。

 

 

「うーん、一週間で収益化は中々なんだけど、そっから先はやっぱバズ待ちになりそう」

 

「えー、うちのベイビーちゃんはSNSでも大人気じゃん?」

 

「SNSで人気あっても動画サイトでってのはケッコーあるからね。SNSは一枚の写真とかでバズったりするけど動画はまた別なんだよね」

 

 

 動画にする以上は動画でしか出来ない魅力的なものを提供したい。りんと違って自身の職業にプロ意識を持つやい子は自分の考えを織り交ぜてりんにそれを告げる。りんもやい子の考えをうっすらと理解しているのか、特に反論せずに次の動画についてを話そうとし。ふとみた自分の娘の姿に、「あ」と小さく声を上げた

 

 

「やいちゃん、これイケるっしょ」

 

「ん?」

 

 

 ちょいちょい、と手で促すようにするりんにやい子がつられてへのじちゃんへ目を向ける。そこにはテレビを眺めるへのじちゃんの姿があり――

 

 その様子を眺めていた大人たち二人は、慌ててカメラを回し始めた。次に取るべき一手が見つかったのだ。

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