交戦規定 ~Outlaw Runner~   作:椚木

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第1話「駅にて」
合流


 待ち合わせの場所は、駅の南口改札。ショッピングセンターなどに繋がる空中デッキであった。足元にはひっきり無しに発着するバスのロータリーが展開されている。

 この時間、帰宅中の学生や勤め人の行き交いで賑わい、そして忘れてはならない買い物客の主婦たち。

 日が暗くなってつき始めたイルミネーションが、先ほどまで路地裏を疾駆し繁華街から外れた街道を進んできた身には眩しかった。

 

 そんな雑踏の中、この小さなウマ娘コールは、目当てのグループをすぐに見つけられたようだ。これまでのプレッシャーから解放されたように、喜び勇んで人々の合間をかい潜り、向こうへ駆け寄っていく。

 相手もすぐに彼女に気づいたようで、安心したように出迎えた。

 

 同行者オーデンアジリティは彼女の後を歩きながら、出迎えの一行を見た。

 

 左から、

 やや勝ち気な印象を受けるウマ娘。

 背の高い、どこか計算高さを感じる眼鏡のウマ娘。

 世話焼きそうな、一行では最も小柄なウマ娘。

 

 といった感じだ。

 

「ごめんなさい。集まるのが時間ギリギリになってしまって」

 

「大丈夫。ここなら人目もある。向こうもおいそれとは手を出せないだろうし、こうしてゆっくり待たせてもらったよ……もちろん貴女が来ないと始まらない訳だけども」

 と、実態待ちわびた感が隠せていない勝ち気なウマ娘。

 

「その様子だとここに来るまでにも何かあったみたいだけど、大丈夫だったかい」

 世話焼きそうなウマ娘が、心配そうに尋ねる。

 

「その話はまた後で……。そう言えばタイトさんの姿が見えないのですが……」

 

 コールがこの場にいない者の名を挙げ不安そうにすると、

 

「彼女なら念の為周辺の監視と、各チームへの諸連絡を請け負っていますよ」

 と眼鏡のウマ娘が、心配ないとばかりに告げる。

「と、こちらは……」

 そして、コールの隣に控えるオーデンを見て、訝しげに尋ねた。

 

「あ、この方は――」

 ハッと思い出したように、ウマ娘の少女は背後に控えていたオーデンを振り返る。

「えっと、話すと長くなるのですが、ちょうど私が追いかけられていたときに――」

 

――――。

 

「なるほど。それでこちらの方に助けて頂いたと」

「そんなことがあったんだね」

 

 先刻あったことを説明したコールである。

 

 話を聞いた3人は、その活躍を聞いて「実際実力はどれほどのものかね」と興味津々であったり、「多勢に無勢だったのに、わざわざ乱入して。親切な方もいるもんだね」と素直に関心してみせたり、「そこまでストリートレースの準備して彼女の前に現れて見せて、何か腹積もりでもあるんじゃないかい」と訝しんでみせたり、三者三様である。

 

 ただ皆が皆、こうして現れたオーデンを頼みになる新戦力と目したのは共通なようで、彼女を見る目が実に期待に満ちている。

 

「と、早速本題に入りたいのですが」

 

 期待の新戦力に目を向けるのも良いが、今は語るべき議題があった。だから眼鏡のウマ娘が話を戻そうと試みると、

 

「あ、いけない。そうでしたね」

「例の物はお持ちで」

「ええ、もちろん」

 

 無論オーデンに事情は分からぬが、コールが守り、そして自身が守った。それに間違いない筈だ。

 実際その通りであったようで、コールも自らが抱えていた小包の布をほどいて、中にあるものを皆に差し出そうとする。

 

 だが、

「――!」

 

 そんな彼女にオーデンは横から腕を伸ばし、制止してみせるのであった。

 

 思わぬ妨害にたじろぐコール。それに受け取る手筈だった3人も動揺する。

 「何を」と不安がるコールに、しかしオーデンは3人の方を向き語るのだ。

 

「ここまで彼女は命がけでこいつを守って運んで来た。それで一体お前たちは何をしていたんだい。……ただ口を開けて待っていれば、それで良かったと。大した心がけだな」

 

 「か弱きウマ娘にこんな危ない橋を渡らせて、のうのうとしていたのか」と問いかけるオーデン。

 3人にも彼女の心意気は十分伝わったのだろう。

 ただ眼鏡のウマ娘は、「ふっ」と息を吐いて残念そうに首を振ると、

 

「なるほど。オーデン殿はレースの準備には余念が無いようですが、ただ、我々の事情に関してはいささか疎いとお見受けられる」

 そう丁重に返すのだった。

 

 オーデンの弾劾を真っ向から跳ね除けられた形になる訳だが、そんな中コールが彼女の袖をそっと掴み、こう伝えるのだった。

 

「オーデンさん。そう言って頂ける気持ちはありがたいです。けれども、皆様にその様な物言いをされるのは、私の立場としても申し訳ないのです。何故なら……」

 

 コールは顔を上げると、オーデンの顔を見据え伝えた。

 

「これは全て、私が始めたことなんです」

 

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