白一色に塗り潰されていた空と海へ、少しずつ色が戻ってきた。
厚い雲はまだ頭上を覆い、雨も完全には止んでいない。それでも、先ほどまで海底から絶え間なく伝わっていた重い振動は薄れ、絡み合っていたコードの各所から、駆動を失ったもの特有の鈍い軋みだけが聞こえていた。
そのすぐ前で、アンサーは膝をついていた。
両腕の中には、ファティマがいる。
否。
残っているのは、上半身だけだった。
腰から下は既に失われ、海底へ続いていた機械構造も、身体を拘束していた無数の配線も、その大半が灼け落ちている。断面から血が流れることはなく、代わりに細かな光の粒子が静かに零れ、雨へ触れるたび淡く消えていった。
それでも顔だけは、先ほどまでと変わらなかった。
ファティマはしばらく目を閉じていたが、やがてゆっくりと瞼を上げる。
最初に映ったのは、泣いているアンサーだった。
「……鎖凪ちゃん」
声は弱い。
それでも、いつもの柔らかな響きが残っている。
「どうして泣いてるの?」
「……澪音」
アンサーはそれ以上を言えなかった。
ファティマは不思議そうに目を細め、それから、自分を抱えているアンサーの腕へ視線を落とした。そこからさらに下へ辿ろうとして――本来なら身体が続いているはずだった場所で、ようやく目が止まる。
何もない。
残された上半身だけを、鎖凪が壊れ物でも扱うように抱きしめている。
ほんの数秒、ファティマはその光景を眺めていた。
やがて、緊張がほどけるように小さく息を吐く。
「ああ……そっか」
唇へ浮かんだのは、驚きよりも安堵に近い笑みだった。
「私、ちゃんと殺されたんだ」
「……っ」
アンサーの腕に力が入る。
抱きしめるほど、残された身体から細かな光が零れていく。それでも離すことなどできるはずもなく、アンサーは顔を伏せたまま、ファティマを胸元へ引き寄せていた。
ファティマは、そんな彼女の肩越しに視線を動かした。
濡れたコードの上へ、二つの兵装が転がっている。
ひとつは黒と橙の炎熱霊槍OW。
そして、その傍らに横たわる白と黒のOW-II。
先ほどまで連結され、ひとつの巨大な兵装として火を噴いていた二つは、役目を終えた今、雨に打たれながら静かに冷えていこうとしている。
ファティマの目が、OW-IIの上で止まった。
「……うん」
今度の声には、少しだけ違う響きがあった。
「完成させてくれたんだね、鎖凪ちゃん」
かつてファティマがアンサーへ渡したOW-IIには、ひとつだけ仕込みがあった。
崩壊因子ナノマシン。
OW-IIIの構造そのものへ潜り込み、内部から自己崩壊を誘発させるために組み込まれた、極めて攻撃的な因子。それはファティマ自身とOW-IIIを同時に終わらせるための手段として用意されたものだったが、彼女が仕込んだ段階ではまだ不完全で、確実な死を保証できるほど完成されたものではなかった。
けれど、アンサーは気づいた。
そして、誰にも告げずに手を加えた。
ファティマがOW-IIIのことを明かせないまま、その意図だけを残して渡した不完全な仕掛けを、鎖凪は自分の知識と技術で最後まで組み上げた。
先ほど放たれた閃光は、ただファティマの身体を焼いただけではない。
OW-IIから放出された崩壊因子は、彼女の内部へ侵入し、そこから生体部品として繋がったOW-IIIの系統を逆に辿って、海底の本体へまで到達していた。
今も遠くの海中で、規則的に明滅していた白い光がひとつずつ消えていく。
沖から。
さらにその奥から。
巨大なひとつの機構だった海が、時間を掛けて沈黙へ向かっている。
「ちゃんと届いてる」
ファティマは目を細めた。
「海底の本体まで」
アンサーが僅かに顔を上げる。
「これでOW-IIIは自壊する。もう二度と蘇らない」
言葉の最後へ、ほんのわずかな吐息が混じった。
「私もやっと……役割を果たせる」
「澪音……」
「ありがとう、鎖凪ちゃん」
ファティマは笑う。
「いっぱい準備して、いっぱい考えて……私が言えなかったところまで、ちゃんと答えを出してくれたんだね」
アンサーの瞳から、また涙が落ちた。
「やっぱり私を殺すのは、鎖凪ちゃんだった」
「そんな言い方……」
「荒唐無稽な『予言』だったけど、やっぱり私の予言は当たるなーって♪」
その軽さが、かえってアンサーの表情を歪ませた。
ファティマは少し黙ってから、アンサーの肩越しへ視線を移す。
そこには運命がいた。
雨に濡れた白い上着を風に揺らし、青い表示を灯した仮面の奥から、二人を静かに見守っている。
「ねえ」
ファティマが呼びかける。
「あなたのこと、教えて」
運命は僅かに首を傾けた。
「鎖凪ちゃんをここまで導いて、信じて、今日まで人類を守ってきたあなたは――何者なの?」
短い間があった。
やがて運命は、いつもの穏やかな声で答える。
『魔王』
ファティマの目が少し大きくなり、すぐに柔らかな笑みへ変わった。
「……ふふ、そっかそっか」
その響きには、面白がる気配と、妙に納得したような色が同居していた。
「ありがとう、運命さん」
『……うん』
「OW-IIIを殺す最後の一ピースが、あなたみたいな魔剣使いだったなんて」
雨粒の向こうで、ファティマは穏やかに目を細める。
「第八軌道人類史の、人類の夢を破壊するもの。まさに魔王ね」
運命は何も言わなかった。
ファティマも、それ以上その意味を掘り下げることはしない。ただ、自分の腕の中に残された時間を確かめるように一度息を吐き、それから再びアンサーへ視線を戻した。
「運命さんはね、きっと鎖凪ちゃんにとって、とっても大事な人になるよ」
「……澪音?」
「予言♪」
かすかな笑いが混じる。
「だから、大事にしてね」
それから、ファティマの視線がもう一度だけ動いた。
少し離れた場所には、壊れたヘイロリウムを下ろしたリンデンが立っている。戦いが終わったあともこちらへ近づくことはなく、ただ静かに、その場からアンサーとファティマを見ていた。
「それと……弟くんも」
アンサーもそちらへ目を向けた。
「……リンデンくん?」
「うん」
ファティマは小さく頷く。
「あの子ね。たぶん、私たちとは少し違うところを見てる」
何が見えているのかまでは分からない。
海辺で二人だけになった時も、リンデンは答えを知っていたわけではなかった。ただ、何も知らないまま通り過ぎることもできず、ファティマ自身へ問いかけた。
自分に何かできることはないか、と。
「すごく真面目で、自分でいっぱい考えて、自分で答えを見つけようとする子」
ファティマは小さく笑う。
「鎖凪ちゃんに、ちょっと似てるの」
「私に?」
「うん♪」
そこで一度、呼吸が浅くなった。
それでも言葉は続く。
「だから、お姉ちゃんとして見ててあげて」
守ってあげて、とは言わなかった。
止めてあげて、とも言わなかった。
「たぶんあの子、自分で決めたら、一人でどこまでも行っちゃうから」
アンサーは遠くのリンデンを見た。
その横には、いつの間にかトロイが立っている。
少し前の戦場でそうしていたように、すぐ傍にいながら、必要以上には踏み込まずに。
アンサーは腕の中のファティマへ視線を戻した。
「……うん」
「ありがと」
ファティマは満足そうに目を細める。
そこから先は、もう誰かへ何かを託すための話ではなかった。
ひとりの少女が、ずっと言えなかったことを、最後に友人へ残していく時間だった。
「ごめんね、鎖凪ちゃん」
「……何が?」
「残酷なことばっかり押し付けちゃって」
アンサーの眉が歪む。
「それにね」
ファティマは、少しだけ笑った。
「私、ずっとずっと、あなたに嫉妬してた」
「……え?」
「どんなときでも諦めなくて、どんな困難にもへこたれなくて……ちゃんと、少しずつ前に進み続ける」
声は徐々に弱くなっている。
それでも言葉だけは、驚くほど穏やかだった。
「そんなあなたのことが、怖かった」
アンサーは何も言わずに聞いていた。
「……でも」
ファティマの目元が柔らかくほどける。
「そんな鎖凪ちゃんがいたからこそ、私も前に進めたんだ」
雨は、いつの間にか細くなっていた。
遠くの雲の切れ間から、ほんの僅かに明るい色が覗き始めている。
「OW-IIIが人類を終わらせてしまう――その可能性に気付いてから『予言』になるまで、そんなに時間はかからなかったけど」
ファティマはアンサーの頬へ手を伸ばそうとした。
けれど途中で力が抜け、指先が届かない。
アンサーがその手を取った。
自分の頬へ重ねる。
「私も、鎖凪ちゃんみたいになりたかったから」
その手は、もうほとんど温度を失っていた。
「怖がらないで、ちゃんと前を向いて……人類を救うために、命を懸けようと思ったんだ」
「……澪音」
「私の英雄は、いつだって鎖凪ちゃん」
アンサーの目から、また涙が落ちる。
ファティマはそれを見て、少しだけ困ったように笑った。
「私はいなくなってしまうけど……泣き虫な鎖凪ちゃんが、泣いてしまわないかだけは心配かな」
「……泣くよ」
「そっか」
「泣くに決まってるじゃない……!」
「うふふ」
ファティマは笑った。
もう声はほとんど吐息に近い。
「でも、大丈夫」
腕の端から、小さな亀裂が走る。
肌が割れるのではない。
そこにあった存在そのものが、淡い光へほどけ始めていた。
指先から腕へ、腕から肩へ。静かな崩壊は痛みを伴っているようには見えず、ただ役目を終えた何かが元の場所へ帰っていくように、アンサーの腕の中から少しずつ輪郭を奪っていく。
「鎖凪ちゃんには、たくさんの素敵な仲間がいる」
運命。
プロブレム。
そして、この海へ一緒に立った者達。
けれどファティマは、その誰かをひとりずつ見ようとはしなかった。
最後まで、アンサーだけを見ていた。
「だから、きっと――」
笑う。
「"あなたは幸せになる"」
「……」
「これは、私の本当に最後の予言だよ、鎖凪ちゃん――」
その言葉を最後に、ファティマの身体へ走っていた亀裂が一斉に光へ変わった。
「……澪音?」
アンサーが抱きしめる腕の中で、残っていた上半身が静かに砕けていく。
破片は地面へ落ちなかった。ひとつひとつが淡い光となり、雨の止みかけた空へ浮かび上がる。長い髪も、最後まで笑っていた顔も、アンサーの頬へ触れていた手も、順番に輪郭を失っていった。
「澪音……」
答えはない。
残された光だけが、潮風に乗って遠ざかる。
アンサーはしばらく、もう何も残っていない腕を抱くような姿勢のまま動かなかった。
やがて、ゆっくりと拳を握る。
「……ありがとう」
掠れた声を、消えていった光へ向ける。
「本当に……ありがとう」
最後の一粒が、雲の切れ間から差し込み始めた光の中へ溶けていく。
アンサーは涙を拭わなかった。
「――あとは任せて」
浮遊大陸GARDEN《ランヴィリズマ》、第二層司令室。
大きく開かれた窓の向こうには、魔界上空の青が静かに広がっていた。つい数時間前まで世界終焉確率などという物騒な数字が飛び交っていたことなど、ここから見える景色だけでは想像もつかない。通信卓の上にも緊急警告を示す赤い表示はすでになく、代わりに収束後の報告書と観測記録が、通常業務の形式へ戻されて整然と並んでいる。
マリアはそのうちの一枚を閉じ、長く息を吐いた。
「――で、テルマルインズの温泉化問題は解決、と」
向かいでは、メイズが端末に表示された最終観測値を眺めながら、小さく頷く。
「第八軌道人類史で海底投棄された神滅兵器OW-IIIの欠片が、現代で魔剣と融合して再起動。海底を中心に神域を展開して、ファティマを再現しながら旧命令の『人類滅亡』を遂行しようとした――だいたい、そんなところかな」
「蓋を開けてみれば、とんでもない事件だったわね」
マリアは机の上へ指を置いたまま、僅かに眉を寄せる。
「しかも最後は、ファティマ本人とアンサーがOW-IIIを永久自壊へ持ち込んだ。世界終焉確率まで跳ね上がった割には、人的被害が抑えられたのが不思議なくらいよ」
「アンサーちゃんだけじゃないよ」
メイズはそこで視線を上げた。
「海にいたみんながMVPだったって、ママは思うの。誰かひとり欠けても、あそこまで綺麗には繋がらなかったと思う」
「……そうね」
マリアも否定しなかった。
アンサーが最後の一撃を撃ち込んだことも、そのためにプロブレムが信じて待ったことも、騎士達が戦線を維持し続けたことも、そしてファティマまで続く道が開かれたことも、提出された報告書には事実だけが淡々と記されている。
そこに英雄譚めいた装飾はなかった。
誰がどれほど勇敢だったとも、誰が世界を救ったとも書かれていない。発生順、観測値、接敵状況、使用装備、損耗、判断理由、戦闘推移、終息確認。必要な事実だけが、驚くほど読みやすく整理されている。
マリアはもう一度、その報告書へ目を落とした。
「……ところで」
「ん?」
「どうして騎士の誰も帰ってきてないのよ」
メイズが目を細める。
「レポートは来てるけど?」
「それが余計に腹立たしいのよ」
マリアは報告書の束を指先で軽く叩いた。
「状況報告、戦闘記録、装備損耗、現地環境の再測定、温泉客の消失確認、魔剣種子体の再発生有無、海水温の推移まで全部揃ってる。しかも、恐ろしく綺麗にまとまってる」
余白には項目ごとの参照番号まで振られ、必要なら詳細ログへすぐ飛べるよう整理されている。文章も冗長さがなく、かといって不足もない。戦闘中に破損した機材の損傷箇所まで簡単な図付きで添えられていた。
「これ、リンデンくんだね」
「そうよ」
「うふふ♪」
「何がおかしいの」
「だって、すごくリンデンくんらしいんだもの」
メイズが楽しそうに笑う。
マリアは少しだけ眉を寄せたものの、その点について否定はしなかった。
「任務終了後、現地に残る場合でも報告だけは先に済ませておく。しかも、こちらから追加確認を出す必要がない程度までまとめてある……あの子、本当にそういうところだけは隙がないわね」
「“だけは”なの?」
「そういう意味じゃないわよ」
間を置かず返してから、マリアは小さく咳払いをした。
「ともかく、レポートが届いている以上、誰かが報告を忘れて遊び呆けているわけではない。それは分かってるわ」
「じゃあいいじゃない」
「でも誰ひとり帰ってきてないのよ?」
「マリア」
メイズが、子供を諭すような声音を出す。
「前に言ったでしょ?」
「何を」
「任務が終わったら、あとは好きにしていいって」
マリアの動きが止まった。
数秒。
記憶のどこかを探るように目を伏せ、それから小さく息を吐く。
「……言ったわね」
「言ったよ?」
「調査が終わったら、現地で多少自由にしても構わないとは言ったけれど」
「多少自由にしてるだけじゃない?」
「全員で?」
「全員で♪」
あまりに楽しそうに返され、マリアはそれ以上言葉を続けられなかった。
窓の向こうでは雲がゆっくり流れている。
海域からの最終報告では、OW-III由来の熱源反応は完全に消失。海そのものは正常な状態へ戻りつつあるものの、一度上昇した水温だけはしばらく残り、少なくとも今夜いっぱいは温泉として楽しめる見込みだという。
「……仕方ないわね」
とうとうマリアが折れた。
「任務そのものは終わってる。報告も提出済み。危険反応もなし……なら、今日くらいは好きにさせておきましょう」
「そういうこと♪」
メイズが満足そうに頷いたところで、ふと思いついたように首を傾げる。
「それとも、リンデンくんだけでも先に戻ってもらう?」
「なんでよ」
「だってレポート書いたのリンデンくんでしょ? 現地対応もいっぱいしてるし、壊れた装備の確認とか、こっちでやれることもありそうじゃない」
「駄目よ」
返事は、メイズが思っていたよりずっと早かった。
「……あら」
マリアは一瞬だけ自分の返答の速さに気づいたようだったが、そのまま続ける。
「あの子こそ残しておかないと」
「どうして?」
「どうしてって……」
マリアは視線を報告書へ落とした。
少しだけ言葉を選ぶように間を置く。
「リンデンは、こういう休暇を取ったことがほとんどないでしょう」
「こういう?」
「仕事の延長でも、訓練でも、療養でもない。ただ遊ぶためだけの休暇」
メイズの目が僅かに丸くなる。
「少なくとも、私は聞いたことがないわ」
戦場から離れても、何かを手伝っている。
任務がなければ訓練をし、訓練がなければ誰かの仕事を引き受ける。手が空けば装備の整備か資料整理。休むよう言えば休みはするが、自分から何かを楽しむために時間を空けることはほとんどなかった。
今回も例外ではない。
世界が終わりかけるほどの騒動のあとでさえ、誰より先に報告書をまとめ、必要事項をすべて送り終えてから、ようやく海に残っている。
「せっかくなんだから、今日は帰ってこなくていいわ」
マリアは少しだけ声を緩めた。
「遊ぶっていうのがどういうものなのか、少しくらい覚えてきてもらわないと」
メイズはしばらく何も言わなかった。
「……何よ」
「ううん?」
口元が、ゆっくりと笑みを作る。
「リンデンくんのそういうところ、ぜんぶ把握してるんだなぁと思って♪」
「……」
「いつ休んでるとか、何してるとか、遊んだことあるかないかまで」
「必要な把握よ」
「ほんとに?」
「騎士でもガーデナーでもない特殊枠なんだから、管理する側が勤務状況を把握するのは当然でしょう」
「はいはい♪」
「その返事やめなさい」
メイズは楽しそうに笑った。
マリアは少し不機嫌そうな顔で報告書を閉じたものの、それ以上反論することはなかった。
机の端には、リンデンから送られてきた最終報告がまだ残っている。
最後の項目。
――現地危険反応、なし。
――以降、追加調査を除き自由行動へ移行。
マリアはそこを一度だけ見てから、端末の画面を閉じた。
「……まあ」
ほんの少しだけ、声が柔らかくなる。
「ちゃんと遊べているなら、それでいいわ」
メイズは何も言わず、ただ笑っていた。
司令室の窓の向こうでは、魔界上空の午後の光がゆっくりと傾き始めていた。
昼の海岸は、最後まで騒がしかった。
世界の終わりを告げる数字も、海底を埋め尽くしたOW-IIIのコードも、白い穂先を連ねて押し寄せたOW-IIも、午後を過ぎる頃にはすっかり遠い出来事のようになっていた。戦闘の痕跡が残る場所は避け、危険反応がないことを確認したうえで、誰からともなく始まったのは、調査でも訓練でもない、ごく普通の海遊びだった。
普通、と呼ぶにはいささか騒がしかったが。
リンデンは気がつけば何度も姉達の輪へ引き込まれ、砂浜を走らされ、何かを運ばされ、時には理由も分からないまま水鉄砲の流れ弾をヘイロリウムなしで避ける羽目になった。つい数時間前まで魔王として戦場の中心に立ち、世界終焉の危機にも声を乱さなかった運命でさえ、砂の上では妙に足元が覚束なかった。
『わっ』
短い声のあと、白いパーカーごと前へ傾いて、ぺしゃりと砂浜へ倒れる。
それが一度ならまだよかった。
二度。
三度。
最終的には、転ぶたびに仮面の隙間から細かな砂が入り込み、とうとう運命自身が黙ってリンデンの前へ座り込んだ。
『……リンデン』
「はい、陛下」
『また入った』
「……先ほどより多いですね」
『うん……』
リンデンは仮面の接続部を慎重に外し、内部へ入り込んだ砂を柔らかな布で拭き取った。目の前では、世界一優しい魔王が大人しく膝を抱えて待っている。その背後では誰かの笑い声が聞こえ、さらに遠くではプロブレムのドローンが、なぜか浮き輪を運搬していた。
別の場所では、シオンが濡れた水着を着直すことを面倒がった末、そのまま何も身につけず海へ戻ろうとしていた。
「シオン姉さん」
「ん」
「止まりましょう」
「ねこ、ぬれたのきらい」
「お気持ちは分かりますが、それとこれとは別です」
「めんどい」
「着てください」
「ねこだから」
「今回は万能ではありませんよ、その言葉は」
最終的にはリンデンとカノンの二人掛かりでどうにか水着を着直させ、その間に当人は終始不満そうな顔をしていた。
そんな時間が、日が傾くまで続いた。
誰かが転び、誰かが笑い、誰かが食べ物を持ってきて、濡れた衣服が砂にまみれればまた海へ洗いに行く。そこには任務らしい理由も、意味のある成果もなかった。何かを達成するためではなく、ただ一日を使い潰すように時間だけが過ぎていった。
リンデンにとって、それはひどく馴染みの薄い過ごし方だった。
夜の海岸は、昼間とはまるで別の場所になっていた。
砂浜に残っていた無数の足跡は夜風と波に少しずつ形を崩され、昼の喧騒も、今は仮設拠点の明かりの向こうへ遠ざかっている。
海岸から少し離れた高台には、リンデンが設営した簡易コテージがあった。簡易といっても、無機質な外壁と大きな窓、内部照明や空調まで備えた近未来型の居住設備で、数日程度の滞在なら不自由しない。昼間あれだけ騒いでいた運命達も、さすがに遊び疲れたらしく、今はほとんどがそこで休んでいた。
窓の向こうに、人影が時折通る。
それも、しばらくすれば見えなくなる。
リンデンはその明かりから離れ、ひとり砂浜へ腰を下ろしていた。
昼間より少し冷えた砂へ手を置き、膝を軽く立てる。
目の前には、夜の海が広がっている。
地上の海を見るのは、これが初めてだった。
神域の中で湖を見たことはある。港町を模した場所や、果ての見えにくい水辺へ立ったこともあった。それでも、本物の海岸に座り、その先に何も遮るもののない水平線を見るのは初めてだった。
夜空には月が浮かんでいる。
普段より少しだけ大きく見えるそれが、水面へ一本の淡い道を作っていた。波が寄るたびに光は砕け、引くたびにまた繋がる。同じ形を保つことは一度もないのに、遠くから眺めていると、ずっとそこに一本の道が続いているようにも見えた。
リンデンは何もせず、その光を見ていた。
耳へ届くのは、さざ波の音だけだった。
寄せて。
引いて。
また寄せる。
昼間のように誰かから呼ばれることもなく、端末も震えない。何かを考えようとする必要さえなく、ただ音だけを聞いている時間は、思っていたよりも悪くなかった。
夜風が頬を撫でる。
海の匂いが、昼より少し濃く感じられた。
そうしてどれほど座っていたのか。
背後の砂が、微かに鳴った。
振り返る前に分かる。
歩幅も、足音も、近づいてくる気配にも覚えがあった。
「こんな時間まで夜更かしー?」
すぐ後ろから、間延びした声が降ってくる。
「リンデンちゃんもワルなんだー」
リンデンが顔を上げると、トロイが背後から覗き込んでいた。
薄桃色の髪が重力に従って肩口から垂れ、月明かりの中で淡く色を失っている。いつもの柔らかな笑みと、何か面白いものを見つけた時の僅かな悪戯っぽさ。その両方が混じった顔だった。
「すみません、姉さん」
リンデンは少しだけ身体を起こす。
「……少しだけ、夜風にあたりたいなと思って」
「ふーん」
トロイはそれ以上追及しなかった。
リンデンの横へ回り、そのまま砂の上へ腰を下ろす。座る位置を決めるために少しだけ身体を揺らし、最後には肩ひとつ分ほどの距離を残して落ち着いた。
彼女は昼間と同じ水着姿のままだった。
普段の黒紺の修道服とは似ても似つかない、扇情的な黒のビキニ。頭にはピンクのヒョウ柄のキャップを被り、首元にはドッグタグが光っている。中指と小指には黒い指輪が嵌められ、月光を受けた金属だけが時折かすかに瞬いた。
清楚なシスターという普段の肩書きを知っている者ほど、目の前の姿との落差に困るだろう。
治安の悪いセレブ。
そんな言葉を与えても、あまり違和感はなかった。
「なにー?」
視線に気づいたらしい。
「いえ」
「トロイさんに見惚れちゃった?」
「そういうわけではありません」
「即答で草ー」
トロイは楽しそうに笑い、両手を後ろの砂へついた。
それからしばらく、二人とも何も話さなかった。
月明かりだけが海面を揺れながら近づいてくる。
リンデンは膝の上で指を組んだ。
「……姉さん」
「んー?」
「少し、お話してもいいですか」
「どーぞー」
軽い返事だった。
けれどトロイは、海から視線を外さなかった。
リンデンも同じように前を見る。
「……ファティマさんのことです」
波がひとつ、砂を濡らす。
「私、あの人のことを……何となくですが、分かっていた気がするんです」
それは正確な言い方ではなかった。
何をしようとしていたのかを知っていたわけではない。OW-IIIの存在も、アンサーへ何を託していたのかも、あの時点では何も知らなかった。
それでも。
「ファティマさんが、何かを決めていることだけは……なんとなく」
「……そっかー」
「はい」
リンデンは指先へ少しだけ力を込める。
「それで、聞きました。私に何かできることはありませんか、と」
「うん」
「ファティマさんは、今まで通りでいてほしいと仰いました」
あの時の笑顔を思い出す。
静かな海の中。
長い黒髪。
そして、こちらをまっすぐ見た瞳。
「だから私は、その通りにしました」
トロイは何も言わない。
「その後、皆さんが大変なことになると分かっていても、私は何もせずにいました。ファティマさん自身がそう望んでいるのなら、それを止めるべきではないと思って」
声は穏やかなままだった。
少なくとも、自分ではそう聞こえていた。
「結果として、あの人はアンサー姉さん達へ人類の未来を託して……OW-IIIに取り込まれながら、それでも最後まで自分で選んで、死んでいきました」
そこで一度、言葉が止まる。
ファティマは未来を語る人だった。
彼女の予言は、単なる計算結果でも、ただ可能性を口にするだけのものでもない。その言葉が世界へ落ちることで、ほんの僅かにでも、その方向へ未来そのものが傾いていく。
リンデンが見ているものとは、まるで違う。
けれど。
“未来”という一点だけが、どうしても胸の奥に残っていた。
「……少し、考えてしまいました」
「なにをー?」
「分かりません」
リンデンは小さく笑った。
「分からないから、考えているのかもしれません」
「なるほどー。哲学だねー」
「すみません」
「謝ることじゃないよー」
また、波の音だけが戻ってくる。
しばらくして、リンデンは月を見上げた。
「姉さん達は、ずっとこういうものを見てきたんですよね」
「こういうの?」
「過去の人類の……終わりです」
リンデンはゆっくりと言葉を選んだ。
「何かを守るために戦って、選んで。それでも届かなくて……それでも次へ託して」
月の光が、波間で揺れる。
「私は今回、ほんの少し触れただけです」
騎士達が歩いてきた時間とは比較にもならない。
彼女達が失ったもの。
諦めざるを得なかったもの。
何度それでも立ち上がったのか。
リンデンには、そのすべてを知ることはできない。
「皆さんが通ってきたそれに比べたら――」
夜風が、前髪を僅かに揺らした。
「きっと私は、“そよ風”のようなものですね」
トロイは答えなかった。
否定もしない。
慰めるような言葉も、茶化すような笑いもなかった。
ただ隣に座ったまま、リンデンと同じ月を見上げている。
二人の前で、海だけが変わらない速さで寄せては返していた。
どれほどそうしていたのか、リンデンには分からなかった。
会話が途切れたことを気まずいとは思わない。トロイも何かを言おうとはせず、足を投げ出したまま、月の光が崩れては繋がる海面を眺めている。
やがて、その横顔がほんの少しだけこちらへ向いた。
「ねー、リンデンちゃん」
「はい」
「――海、一緒に入らない?」
思いがけない言葉に、リンデンは顔を向けた。
トロイはいつもと変わらない顔で笑っていた。
優しいとも、からかっているとも取れる、境目の曖昧な笑み。答えを急かす気配はなく、ただ何でもない思いつきを口にしたように見える。
「今から、ですか?」
「今だからだよー。昼は人いっぱいだったし」
そう言って、トロイは先に立ち上がった。
膝についた砂を軽く払い、そのままリンデンへ片手を差し出す。
「ほらほら。リンデンちゃん今回、結局一回も海入ってないでしょー?」
「それは……」
事実だった。
戦闘中は海上へ伸びたコードを足場にし、その後の遊びでも砂浜から離れなかった。水を掛けられることはあっても、自分から波の中へ足を踏み入れたことはない。
差し出された手を見る。
それから、トロイの顔を見る。
「行こー?」
「……はい」
リンデンが手を重ねると、トロイは指を握った。
そのまま軽く引かれ、砂の上から立ち上がる。
波打ち際までは、ほんの僅かな距離だった。
月光を含んだ水が薄く砂を覆い、すぐに沖へ戻っていく。昼間の熱をまだ残しているのか、夜の海にしては水面からわずかな温度が立っていた。
トロイは迷わずその中へ足を踏み入れた。
一歩。
二歩。
繋がれた手に引かれ、リンデンも続こうとする。
その足先が、水へ触れる寸前だった。
トロイが止まった。
「……ん?」
振り返る。
リンデンはすぐ後ろにいる。
しかし、動いていない。
トロイの手の中で、繋いだ指がほんの僅かに震えていた。
月明かりの下で、彼女はしばらくリンデンの顔を見た。
「――リンデンちゃん」
「はい」
「もしかして……海、苦手?」
「……」
すぐには返事がなかった。
リンデンの視線が、波打ち際へ落ちる。
寄せてきた水が靴先すれすれまで伸び、また遠ざかっていった。
「その……」
いつもの整った声が、珍しく小さい。
「入ったことが、ないので……」
「……」
トロイが瞬きをした。
もう一度。
「一回も?」
「はい……」
ぽしょぽしょと返ってくる声を聞きながら、トロイの表情が少しずつ変わっていった。
驚きが消える。
代わりに口の端が持ち上がる。
誰にも知られていない秘密を、偶然ひとりだけ見つけてしまった子供のような顔だった。
「ふーーん……」
「姉さん?」
「そっかそっかー」
嫌な予感がした。
リンデンが僅かに眉を寄せたところで、トロイは繋いでいなかった方の手まで差し出した。
「じゃあ――」
両手を取られる。
「トロイさんがリンデンちゃんの"はじめて"、貰っちゃうねー?」
「……言い方が」
「海の話ですよー? リンデンちゃんは何を考えてるんですかー?」
「何も考えていません」
「ほんとかなー?」
いつもの調子で笑いながら、トロイは後ろ向きに一歩下がった。
足首まで海へ入る。
両手を繋いだまま、リンデンをゆっくりと引く。
「ほら。ちゃんとトロイさんにつかまってー」
「……はい」
「ゆっくりねー。ゆっくりー」
次の波が来た。
今度こそ、リンデンの足へ触れる。
「……っ」
思わず肩が固くなる。
だが、水は想像していたほど冷たくなかった。
足首を覆い、引いていく。その感覚だけが妙に鮮明だった。
「どーお?」
「……変な感じです」
「感想が小学生で草ー」
「初めてなので仕方ありません」
「はいはい。じゃあ次いこっかー」
トロイは少しずつ後ろへ進んだ。
膝。
腿。
腰。
波が深くなるにつれ、リンデンの歩幅は小さくなる。そのたびにトロイは急かさず、握った両手を同じ位置に保った。
「大丈夫大丈夫ー」
「……姉さん」
「んー?」
「意外と深いですね」
「まだお腹くらいだよー」
「姉さん基準では」
「リンデンちゃんの方が高いんだから平気平気ー」
そんな言葉を交わしながら、さらに一歩。
トロイの腹部あたりまで水が届いた。
波が来るたび、二人の身体がわずかに上下する。
その時。
トロイの足首へ、柔らかなものが触れた。
「あ」
海藻だった。
水の流れに合わせ、足元で長く揺れている。
「リンデンちゃん、そこワカ――」
「――っ」
最後まで言い切る前だった。
リンデンの足に何かが絡む。
咄嗟に踏み直そうとしたものの、砂地がわずかに沈み、身体が横へ傾いた。
「リンデンちゃん」
トロイが手を引く。
倒れかけた身体が、逆に彼女の方へ向かった。
水音がひとつ、大きく立つ。
次の瞬間。
リンデンはトロイの腕の中にいた。
「……」
「……」
波が二人の腰を叩いた。
それ以外の音が、一度すべて遠くなったように感じられた。
トロイの片腕が背中へ回っている。
もう片方は肩を支えていた。
リンデンの手は咄嗟に彼女の脇腹へ触れ、そのまま止まっている。
近い。
さっきまで横に座っていた時より、遥かに。
濡れた肌に月明かりが薄く乗り、潮風に揺れた薄桃色の髪が、リンデンの頬へ触れた。
「……大丈夫ー?」
「はい……すみません」
「ワカメに負けたねー」
「……面目ありません」
「海デビュー初戦、ワカメに敗北。草ー」
「姉さん」
「とかいってー」
笑っている。
いつものトロイだった。
ならば、身体を離せばよかった。
足元はもう安定している。
手を離し、一歩下がれば、それで済む。
けれど、どちらも動かなかった。
波だけが二人の間を通り過ぎていく。
寄せるたび、身体がわずかに近づく。
引くたび、離れるはずなのに、トロイの腕がそれを許さない。
リンデンもまた、手を退けなかった。
身動きができないわけではなかった。
ただ。
今、動く理由を見つけたくなかった。
リンデンの視界の奥に、ひとつの大きな枝が映っている。
トロイから伸びるもの。
幾度も見てきた、彼女へ続く大きな流れ。
近づきすぎれば僅かに揺らぎ、細かな輪郭が読み取りづらくなることはあったが、今のところ大きな変化はない。
分岐も、向かう先も。
少なくとも、リンデンの目に映る範囲では。
だからだったのかもしれない。
「――あの、姉さん」
「……んー?」
今度の返事は、少しだけ静かだった。
リンデンは顔を上げない。
トロイの肩口へ視線を置いたまま、僅かに息を吸った。
「……もう少し」
言葉が止まる。
頼んでいいものなのか。
その迷いが短い沈黙になる。
「もう少し、このままで……いいですか……?」
ほんの少しだけ。
リンデンは欲張った。
「……」
トロイが瞬きをする。
腕の中にいる弟の横顔を、ほんの数秒だけ見つめた。
それから。
「とかいってー」
いつもの調子が戻る。
「トロイさんが嫌って言っても、今のリンデンちゃん離せないでしょー?」
「……」
「今離したら、そのまま海藻みたいにゆらゆら流されて水草生えちゃうからなー」
「……そうですね」
その声とともに、リンデンの腕から少しだけ力が抜けた。
「すみません。では――」
離れようとした。
身体を僅かに後ろへ引く。
トロイの脇腹へ添えていた手も退けようとする。
だが。
「――どこ行くのー?」
背中へ回っていた腕が強くなった。
「……え」
離れかけた身体が、もう一度引き寄せられる。
今度は倒れそうになったリンデンを支えるためではない。
トロイ自身が、抱き寄せた。
胸元へ戻されたリンデンが、一瞬だけ目を見開く。
「姉さん……?」
「もー。リンデンちゃんはすぐそうやって真に受けるー」
耳元で笑う声がする。
けれど、背中を抱く腕は緩まなかった。
「トロイさん、離れていいなんて言ってないでしょー?」
「……ですが」
「ですが、じゃないの」
軽い声音。
それでも、今度の言葉には茶化すだけではない何かがあった。
トロイは頬を少しだけリンデンの髪へ寄せる。
「いいよ」
波の音に紛れそうな声で言った。
「もう少しだけ、こうしてよっかー」
「……」
「神様も、魔王様も、誰も見てないしねー」
リンデンはしばらく何も言わなかった。
胸の奥に何かが落ちていく。
名前をつけるほど明確ではなく、それでも先ほどまでそこになかった温度だった。
「……はい」
小さな返事。
それから、リンデンの腕も動いた。
遠慮するように、確かめるように。
トロイの背中へ回し、ほんの僅かに力を込める。
拒まれない。
それが分かってから、もう少しだけ。
トロイの腕もまた、それに応えるように強くなる。
言葉はなかった。
波が来るたび身体が少し揺れ、そのたびに互いの腕が位置を確かめるように動く。
月明かりの下で、トロイの薄桃色の髪が水面へ広がっていた。
リンデンの髪も、波に持ち上げられてその傍へ流れていく。
二つは境目も分からないほど混ざることはない。
けれど、寄せる波のたびに触れ、引く波のたびに離れ、また次の波でゆっくり交わる。
その繰り返しだけが、誰にも見られていない夜の海へ残っていた。
姉と弟。
育てられた子と、育ててきた騎士。
それまで何百年、何千年と続いてきた名前のまま。
今だけは、そのどれにも触れずにいられた。
トロイから伸びる大きな枝は、変わらずそこにあった。
外から見える輪郭も、分岐の数も、向かう先も、何ひとつ変わってはいない。
リンデンはそれを確かめて、静かに目を閉じる。
――だからこそ。
その枝の表面からは見えない、もっと深いところで。
小さな亀裂がひとつ走ったことを。
リンデンが知ることはなかった。
ド本命トロイルートの前座はこれで一旦終了です。
次回叡智を書いて、日常回を書いて、本命ルートを再開する感じになります。
もしよろしければ、感想評価など頂けると励みになります。でも自分で見てて感想むずくね? とは思ってます……