赤龍帝と騎士王の現し身   作:ファブニル

10 / 53
 前回から始まったフェニックス編ついて一つ、お話が。今章ですが、通常より少し短くなります。

 理由はただ一つ、アルトリアが転生悪魔ではない為、レーティングゲームに参加できないからです。これは今後の若手悪魔交流会にも当てはまり、アルトリアは蚊帳の外から戦局を見守るか、応援団団長の席に収まります。ただしアスタロト戦、バアル戦には何かしらの形で深く関わらせますので、ご期待くださいませ。ちな、アザゼル杯まで行ったらちゃんと出します。

 それでは第十話、どうぞ!


『不死鳥』への宣戦布告

 

 ライザー・フェニックス、彼の登場によってイッセーは昨日の出来事の理由を知った。部長はこいつとの婚約が嫌であんな事をしたのだと。

 そんなイッセーの思惑を他所にアルトリアが近づく。そしてライザーに礼をした。

 

 

「お初にお目にかかります、ライザー卿。魔王サーゼクス・ルシファー様が食客、名誉騎士侯アルトリア・ペンドラゴンと申します。以後お見知りおきを」

「おぉ、貴女が!こちらこそリアスがいつも世話になっている、アルトリア卿。フェニックス侯爵が三男、ライザー・フェニックス。こちらこそ、お見知りおきを」

 

 

 アルトリアの挨拶に対して、ライザーも返すように礼を返す。そしてアルトリアの手を取り、その手の甲に口づけを落とした。格好こそ崩しているが、彼とて名門の生まれ。女性の扱いは心得ているのだろう。

 

 

「しかし、知る悪魔ぞ知るアルトリア卿がこの様な美しい女性だったとは。眷属の枠が空いていないのが悔やまれる」

「ライザー、アルトリアを口説くために来たならさっさと帰ってちょうだい」

「ん?なんだぁ、リアス。嫉妬しているのか、可愛いやつめ」

 

 

 そう言いながらライザーはリアスの肩を掴み、そのまま一緒にソファーに座り込む。ライザーに促され、アルトリアも反対側のソファーに座る。そこに朱乃がお茶を出した。

 

 

「いやー、リアスの『女王』が淹れてくれるお茶は美味しいものだな」

「痛みいりますわ」

 

 

 朱乃のお茶を褒めるライザー。朱乃もニコニコしているが、いつものような「あらあら」や「うふふ」といった返しが無い。彼女もまたライザーに対して思うところがあるようだ。

 ソファに座るリアスと、その隣に座り軽々しく彼女の肩を抱くライザー。リアスは何度も肩を抱く手を振り払うが、ライザーは構わず肩や手、髪を触っている。止めても良かったが、これは両家の問題でありアルトリアは部外者のため、客人である事に務めた。

 眷属の面々は二人の上級悪魔から少し離れた席に集まって、二人の様子を見ているしかない。お茶を飲みながらチラリと他の部員達を見れば皆悔しさが顔に出ていた。

 

 

「いい加減にしてちょうだい!」

 

 

 辱めに怒ったリアスの声が室内に響き渡る。皆がそちらを向くと、ソファから立ち上がったリアスがライザーを睨んでいた。ライザーの方は変わらずにやけた表情だ。

 

 

「ライザー、以前にも言ったはずよ。私はあなたと結婚なんてしないわ」

「リアス、そういうわけにはいかないだろう?君の所のお家事情は意外に切羽詰まっていると思うんだが?」

「余計なお世話だわ!私が次期当主である以上、婿の相手ぐらい自分で決めるつもりよ!父もお兄様も一族の者も皆急ぎすぎるわ!当初の話では、私が人間界の大学を出るまでは自由にさせてくれるはずだったのに!」

「その通り、君は基本的に自由だ。大学に行ってもいいし、下僕も好きにしたらいい。だが、君のお父様もサーゼクス様もお家断絶が怖いのさ。先の戦争で純血悪魔が大勢亡くなり、戦後も堕天使、神陣営と均衡状態。奴らとのくだらない小競り合いで純血悪魔の跡取りが殺されてお家断絶したなんて話もないわけじゃない。純血であり、上級悪魔のお家同士がくっつくのはこれからの悪魔情勢を思えば当然だ。純血の上級悪魔。その新生児が貴重なことは君だって知らないわけじゃないだろう?」

 

 

 冥界の旧い悪魔の事情についてはアルトリアも把握している。かつて『七十二柱』と称された悪魔のうち、現在まで残っている家は半数以下だという。加えて悪魔は高い能力を有するが故に、子を成しにくい。伝統ある血を残すという点において、悪魔界は危機を迎えつつあるのだ。

 

 

「新鋭の悪魔。君の下僕みたいに人間からの転生悪魔が最近は幅を利かせているが、それでは俺達古い家系の立場が無い。力に溢れているというだけで転生悪魔と通じる旧家もいる。まあ、それもいい。血を濃くし過ぎない為にも新鮮な外の血も必要だ。だが、純血の悪魔を途絶えさせるわけにもいかないだろう?俺と君は純血を途絶えさせないために選ばれたんだ」

「俺の家は兄たちが居るから問題ない。しかし、君の所は二人だけ。しかも兄君の方は家を出られている。そうなると、リアスしかグレモリー家を継ぐものが居ないんだぞ?婿を得なければ君の代でグレモリーは潰えるかもしれない。君は長く続いた家を潰すつもりなのか?この縁談は悪魔の未来が掛かっているんだ」

 

 

 ライザーの発言は尤もだ。そしてこれは家の問題であると同時に、冥界の民の問題でもある。一度だけグレモリー領の街を見た事があった。グレモリー家の領地経営の下、多くの民が幸せに暮らしていた。もしグレモリー家が断絶する事があった際、次にあの土地を治める者が同じように善政を敷くとは限らない。

 

 

「私は家を潰さないわ。婿養子だって迎え入れるつもりよ。でも、あなたじゃないわライザー。私は私が良いと思った者と結婚する。古い家柄の悪魔にだって、それぐらいの権利はあるわ」

 

 

 愛する者と結婚する。当たり前の事の様に思えるが、それは貴族に生まれた者としては赦されない発言だった。それを耳にして、途端に機嫌が悪くなるライザーは目を細め舌打ちをする。

 

 

「……俺もなリアス、フェニックス家の看板背負ってここにいるんだよ。だからな、この名前に泥をかけられるわけにもいかないんだ」

 

 

 ボゥッ!!

 

 

 ライザーの周囲を炎が駆け巡り火の粉が部屋中に舞う。チャキ、とアルトリアは咄嗟にエムリスを握る。

 

 

「俺は君の下僕を全部燃やしてでも君を冥界に連れ帰るぞ」

 

 

 ザワッ、と殺意と敵意が室内全体に広がる。ライザーが全身から放つプレッシャーがイッセー達を襲った。アルトリアは立ち上がり、後ろにいたイッセーたちを護るように手をかざす。

 怖くなったのか、アーシアが震えながらイッセーの腕に抱きついている。やはり彼女ではこの殺気には耐えられないだろう。イッセーも震えている。祐斗と小猫は震えてこそいないが、臨戦態勢に入ってもおかしくない空気が流れる。

 

 

「 (ここで始める気か!?もしもの時は私が第二段階まで解除して……) 」

 

 

 リアスもライザーと対峙し、紅い魔力のオーラを全身から薄く発し始めている。ライザーも炎を纏い始めた。凄まじい熱気が部屋を包む。燃え盛るオーラがライザーの背中に集まり、翼のような形になる。その姿はまさに火の鳥、フェニックス。

 皆が張り詰めた空気の中で一触即発を警戒する中、冷静に介入する人物がいた。

 

 

「お嬢様、ライザー様、落ち着いて下さい。これ以上やるのでしたら、私も黙ってみているわけにもいかなくなります。私はサーゼクス様の名誉ためにも遠慮などしないつもりです」

 

 

 グレイフィアの言葉は静かだが迫力のあるものだった。リアスもライザーも表情を強張らせていた。彼女であるならば、それが出来る。先日アルトリアを呼んだのは、あくまでも秘匿性を考えて、穏便に事を済ませたかったがためだ。ライザーは体を覆っていた炎を消すと、息を深く吐きながら頭を振った。

 

 

「…最強の『女王』と称されるあなたにそんなことを言われたら、俺もさすがに怖いよ。バケモノ揃いと評判のサーゼクス様の眷属とは絶対に相対したくはないからな。それに、聖剣の露と消えたくもない」

 

 

 どうやら、最悪の状況は脱したようだ。リアスとライザーの戦意が無くなったのを確認すると、グレイフィアが分かっていた、という風に口を開く。

 

 

「こうなることは旦那様もサーゼクス様も、フェニックス家の方々も重々承知でした。正直申し上げますと、これが最後の話し合いの場だったのです。これで決着がつかない場合の事を皆様方は予測し、最終手段を取り入れることとしました」

「最終手段?どういうこと、グレイフィア」

「お嬢様、ご自身の意志を押し通すのでしたら、ライザー様と『レーティングゲーム』にて決着をつけるのはいかがでしょうか?」

「ッ⁉」

 

 

 グレイフィアの意見にリアスは言葉を失っている。レーティングゲーム、下僕悪魔を戦わせて競い合う上級悪魔たちのゲーム。しかしゲームに参加できるのは成人した悪魔のみ。ライザーは成人しているが、リアスはまだ学生であり参加資格は持っていない。そんな疑問に答えるかの様にグレイフィアは説明を続ける。

 

 

「お嬢様もご存じの通り、公式なレーティングゲームは成熟した悪魔しか参加出来ません。しかし、非公式の純血悪魔同士のゲームならば、半人前の悪魔でも参加出来ます。この場合の多くが……」

「身内同士、または家同士のいがみ合いよね」

 

 

 グレイフィアの言葉をため息を吐きながらリアスが続ける。

 

 

「つまり、お父様方は私が拒否した時の事を考えて、最終的にゲームで今回の婚約を決めようってハラなのね?…どこまで私の生き方をいじれば気がすむのかしら…っ!」

 

 

 リアスはイライラした様子を隠さず、その身体からは殺気がみなぎっている。

 

 

「では、お嬢様はゲームも拒否すると?」

「いえ、まさか、こんな好機はないわ。いいわよ。ゲームで決着をつけましょう、ライザー」

 

 

 挑戦的なリアスの物言いにライザーは口元をにやけさせる。

 

 

「へぇ、受けるのか。俺は構わない。ただ、俺は公式のゲームにも何度か出場している。今のところ勝ち星も多い。それでもやるのか、リアス?」

 

 

 ライザーはさらに挑戦的な態度で先輩に返す。リアスもまた勝気な笑みを浮かべていた。

 

 

「やるわ。ライザー、貴方を消し飛ばしてあげる!」

「いいだろう。そちらが勝てば好きにすればいい。俺が勝てばリアスは俺と即結婚してもらう」

 

 

 睨み合う二人。まるで火花が散っているかのような睨み合いだ。

 

 

「承知いたしました。お二人のご意志は私グレイフィアが確認させて頂きました。ご両家の立会人として、私がこのゲームの指揮を執らせてもらいます。よろしいですね?」

「ええ」

「ああ」

 

 

 グレイフィアの問いに二人も了承した。ここにリアス眷属VSライザー眷属の非公式レーティングゲームの開催が決定された。

 

 

「わかりました。ご両家の皆さまには私からお伝えします」

 

 

 両者の意志を確認したグレイフィアはペコリと頭を下げた。直接対決こそ避けたものの、恐らくは不利なゲームになるだろう。フェニックス、不死鳥の名を冠する一族でありその体は文字通りの不死身。加えてその涙は絶大な治癒効果を持つという。そして相手は仮にもプロ、此方は未成年のアマチュア以下。リアス側が勝つ可能性は低い。

 そんな思案をアルトリアが巡らせていると、ライザーはイッセーたち眷属を見回し、嘲笑を浮かべた。

 

 

「なあ、リアス。まさか、ここにいる面子がキミの下僕なのか?」

「だとしたらどうなの?」

 

 

 ライザーの言葉にリアスは眉を吊り上げる。その答えにライザーはクククと笑い出した。

 

 

「これじゃあ話にならないじゃないか?キミの『女王』である『雷の巫女』ぐらいしか俺のかわいい下僕に対抗できそうにないな。それとも、兄君に泣きついてアルトリア卿でも借りるか?」

「アルトリアは人間よ。レーティングゲームへの参加資格が無いのを知らないのかしら?」

 

 

 そう、アルトリアはサーゼクスから名誉騎士侯という特例かつ低位ながら冥界における貴族階級を授与されている。しかしそれはあくまでも悪魔社会において『人間の分際で』と行動を制限されない為、そして勝手に眷属にされないようにとアルトリアの身を護るためのモノである。

 その為レーティングゲームへの参加資格を始めとした、爵位を持つ悪魔の権利を与えられていない。そもそもが悪魔でないためレーティングゲームのシステムに対応出来ず、アルトリアは参加資格を持たないのだ。

 

 

「知っているとも。だがそうなると君が俺に勝つ可能性は限りなく低くなるなぁ……」

 

 

 そういいながら、ライザーが指をパチンと鳴らすと、部屋の魔法陣が光りだす。紋章はライザーが出てきた時と同様のフェニックスの魔法陣だ。魔法陣の光から続々と人影が現れる。イッセーたちは魔法陣から現れた人数に言葉を失う。

 

 

「と、まあ、これが俺のかわいい下僕達だ」

 

 

 堂々と言うライザーの周囲を十五名の眷属悪魔らしき者が集結した。『騎士』と思われる鎧を着こんだ者、フードを深く被った『僧侶』らしき魔術師、チャイナドレスの拳法家等々。チェスの駒と同じ数がそろっていると言う事はフルメンバーという事だ。それに対しリアス側は『王』『女王』『騎士』『戦車』『僧侶』『兵士』一人ずつ。イッセーは駒を八つ消費していて八人分かつ、()()()()()()()()()()()()()()()()を含めたとしても数の不利は否めない。

 しかし気になるのは、全員が女である点だろう。やはりそういう趣向の眷属構成なのだろう。そういえば身内にもハーレムを目指している者が居たと思いイッセーを見やると、目の前の光景に感動しているのか悔しがっているのか号泣している。

 

 

「お、おい、リアス…。この下僕くん、俺を見て号泣しているんだが……」

 

 

 その様子には余裕綽々だったライザーも引いているようだ。リアスはそれを見て、額に手を当てて困り顔である。

 

 

「その子、夢がハーレムなの。きっと貴方の眷属を見て感動したんだと思うわ」

「申し訳ありません、ライザー卿。お見苦しいものを……」

「きもーい」

「ライザーさまー。このヒト、気持ち悪ーい」

 

 

 ライザーの眷属達はイッセーを見て心底気持ち悪がっていた。そんな眷属たちを労わるようにライザーは手を振る。

 

 

「そう言うな、俺のかわいい眷属たち。上流階級の者を羨望の眼差しで見てくるのは下賤な輩の常さ。あいつらに俺とお前たちが熱々な所を見せつけてやろう。ユーベルーナ」

 

 

 そう言うとライザーは眷属の一人を呼び寄せると、その場でディープキスをし出した。然も胸まで愛撫し出す。アルトリアは目を疑った。リアスへの対応もそうだが、余りにも非常識が過ぎる。いや、彼は自分のもの、自分の権限の範疇においてはこれが素なのだろう。自分の物、自分の物になる予定の物だから何をやっても許される。そんな傲慢さがアルトリアには感じられた。

 

 

「お前じゃ、こんなこと一生できまい。下級悪魔くん」

「俺が思っていたこと、そのまま言うな!ちくしょう!ブーステッド・ギア!」

 

 

嫉妬心で我を忘れたイッセーが左腕を天にかざして叫ぶ。左腕が緑色に光りそれが収まると、赤い籠手『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』が形成される。

 

 

「お前みたいな女ったらしと部長は不釣り合いだ!そんな調子じゃ、部長と結婚した後も他の女の子とイチャイチャしまくるんだろう!」

「英雄、色を好む。確かに、人間界のことわざだよな?いい言葉だ。まあ、これは俺と下僕たちとのスキンシップ。お前だって、リアスに可愛がってもらっているだろう?」

「何が英雄だ!お前なんか、唯の種まき鳥野郎じゃねえか!火の鳥?フェニックス?ハハハ!まさに焼き鳥だぜ!」

「焼き鳥、だとぉ……?」

「そうだ焼き鳥野郎!てめぇなんざ、俺のブーステッド・ギアでぶっ倒してやる!」

『Boost‼︎』

 

 

 籠手の甲部分にある宝玉から音声が発せられる。口論の末に気合を入れるイッセーだが、ライザーの方はため息を吐くだけだ。

 

 

「ミラ。やれ」

「はい、ライザーさま」

 

 

 ライザーが下僕の1人に命令を下す。相手は小猫と同じ位の小柄な少女。棍を取り出し、くるくると回した後、向かってくるイッセーへ構えた。イッセーが大振りに拳を繰り出すと、ミラと呼ばれた少女は前に踏み込み棍による突きを放つ。アルトリアには見えた一撃だが、イッセーは相手が小柄な女の子だった為に油断していた様で、反応ができていなかった。

 

 

「ガハッ!」

「イッセー!?」

 

 

 ミラは腹に一発入れた後、そこから流れるように上へ突き上げる。イッセーはそのまま天井へと激突し、天井の破片とともに床に落下した。

 

 

「嫉妬は許す。羨望も許す。だが、誇り高きフェニックスの名を汚すことだけは、このライザー・フェニックスが許さん。徹底的にやれ、ミラ」

「はい、ライザーさま」

 

 

 床に伏すイッセーに向かって、魔力を纏った棍を振り下ろさんとするミラ。しかし、

 

 

 ガン!

 

 

「「「!」」」

「そこまでにして頂きたい、ライザー卿」

 

 

 追撃の根がイッセーを叩きのめす事は無かった。振り下ろされた棍はアルトリアが展開した大楯に阻まれ、盾の表面に叩きつけられたからだ。

 

 

「私の幼馴染の非礼の数々、謹んでお詫び申し上げます。ですが、イッセーはまだ転生して間もなく、何も知らない浅学の身。私に免じて、ご容赦を」

「……良いでしょう。退け、ミラ」

「はい」

「イッセー!」

「イッセーさん!」

 

 

 リアスとアーシアが駆け寄り、イッセーを抱き起こす。アーシアが手をかざすと緑色の淡い光がイッセーを包み込んだ。アーシアの持つ癒しの力だ。瞬時に生傷が癒える。ライザーが倒れ込むイッセーに近づき、見下ろしながら言い放つ。

 

 

「弱いな、お前。さっきお前が戦ったのは俺の『兵士(ポーン)』ミラだ。俺の下僕では一番弱いが、少なくともお前よりも実戦経験も悪魔としての質も上だ、お前、最初の一撃見えてなかったろ。ブーステッド・ギア?はっ」

 

 

 イッセーの神器を爪先でコンコンと叩き、ライザーは鼻で笑った。

 

 

「確かにこいつは凶悪で強力無比な神器の一つだ。やり方次第じゃ俺どころか、魔王も神も倒せる。そしてお前の他にも過去に使い手は何人も存在した。だが、未だに魔王退治も神の消滅も成された事はない。この意味わかるか?」

 

 

 そういったライザーはイッセーを嘲笑う。

 

 

「この神器が不完全であり、使い手も使いこなせない弱者ばっかりだったってことだ!お前も例外じゃない!こういうとき、人間の言葉でなんて言ったっけかな。…そうだ、『宝の持ち腐れ』、『豚に真珠』だ!フハハハ!そう、『豚に真珠』だ!お前のことだよ、リアスの『兵士』くん!」

 

 

 愉快そうにイッセーの頭をペチペチ叩くライザー。

 

 

「全く、身の程知らずにも程があるな。誇り高きフェニックスに喧嘩を売るとどうなるか、これで分かっただろ」

「誇り高き…だぁ?部長にセクハラして、人前で盛り合う焼き鳥の何処に誇りがあんだよ……。俺は貴族社会なんて知らねぇし、他のフェニックス家の方々にも会った事はねぇ。けど、少なくともアンタからは優しくてカッコいい部長に似合う誇りなんざカケラも感じられねぇな……!」

「イッセー……」

「……まだ口が減らんか」

 

 

 叩きのめされても尚、啖呵を切るイッセー。その態度にライザーの怒りは更に高まり、手に火球を形成する。その瞬間、全員の背筋を悪寒が走った。

 

 

「いい加減にしてください。両者とも、それ以上の戦闘は容認できかねます。これ以上やるのであれば、私が相手になりますよ。よろしいのですか?」

 

 

 グレイフィアの放った言葉には怒気が含まれていた。殺気を放つ彼女の姿は先程と違い恐ろしいものだった。怒りはうせ、恐怖のみが心を支配する。この場にいる多くの者の体は震え、歯がガチガチと音を鳴らす。

 

 

「ライザー様もやりすぎです、他にやり方があったかと、リアス様も直ぐに眷属を止めていただかないと困ります」

「ええ、ごめんなさい。グレイフィア」

「俺もやり過ぎたよ、すまなかったなリアス。だが、多少は実力も見れた。しかしこれでは一方的だな」

 

 

 ライザーは顎に手をやり、何か思いついた様子だった。

 

 

「リアス、ゲームは十日後でどうだ?今すぐやってもいいが、それでは面白く無さそうだ」

「…私にハンデをくれるっていうの?」

「嫌か?屈辱か?自分の感情だけで勝てるほど『レーティングゲーム』は甘くないぞ。下僕の力を引き出してやらないと即敗北だ。初めてゲームに臨む君が下僕達との修行を行なっても何らおかしくない。いくら才能があろうと、いくら強かろうと、初戦で力を思う存分に出せず負けた奴らを俺は何度も見てきた」

 

 

 ライザーの言葉をリアスは文句も言わず黙って聞いていた。ライザーが手のひらを下に向けると、魔方陣が光を放つ。

 

 

「十日。君ならそれだけあれば下僕をなんとか出来るだろう。ではリアス、次はゲームで会おう」

 

 

 そう言い残し、ライザーは下僕達と共に魔法陣の光の中に消えていった。タイムリミットは十日、その間にイッセーが戦えるようにならなければ、リアスの自由は無くなるだろう。その事実に、イッセーは怒りと闘志を燃え上がらせるのだった。




 基本チンピラなライザーですが、アルトリアにはちゃんと礼を尽くすのではないかと思います。人間であっても歴史ある物には敬意を払うという感じで。
 イッセーは失礼な、男の、下賤な生まれの下級悪魔だったのであんな感じですが、礼儀正しい、女の、人間とはいえ名誉騎士侯の位を持つ、アーサー王の末裔であるアルトリアでは露骨に態度に差が出ると思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。