赤龍帝と騎士王の現し身   作:ファブニル

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 体調優れない日々、完璧とはいかない仕事、もどかしくストレス溜まります……

 今回はあまりアルトリアが出ない、というか今回は原作を踏襲する回です。次回はオリジナル展開満載でいきます。

 それでは、第十二話どうぞ!


『リアス』と『赤龍帝』の力

 山籠もりから一週間が過ぎた頃、イッセーはベッドの上で天井を見上げていた。

 

 

「 (朝から晩まで練習した。ゲームで想定される連携や攻防バリエーション、なんかも何度も繰り返した。他のみんなは着実にレベルアップしている。これから努力して果たしてみんなと同等の実力に届くのか?それは何年後だ?いや、何十年後か?みんなが出世して、アルトリアがおばあちゃんになっても、きっと俺じゃあ模擬戦にも勝てないんだろうな。俺は、俺は……)……あー、くそっ!」

 

 

 そこまで考え始めたあたりでたまらなくなり、寝床を飛び起きる。のろのろと起き上がり、キッチンへ向かい、台所で水を一杯飲み干して、戻ろうとすると。

 

 

「あら? 起きたの?」

 

 

 階段から声が掛けられる。見上げれば、そこにはリアスが居た。

 

 

「あ、部長。こんばんは」 

「何改まっているの?ちょうど良かった、少しお話ししましょう。彼女も交えてね」

 

 

 すると、暗い一階の奥から人影が現れる。それは大量の本を持ったアルトリアだった。

 

 

「おや、イッセー。眠れないのですか」

「アルトリア?どうしてそんなに沢山本なんて持ってるんだ?」

「私が頼んだの。試合で使えそうな本をピックアップしてもらったわ。アルトリア、こっちよ」

 

 

 リアスは屋敷の書斎へと向かう。中に入り、アルトリアは持っていた本をテーブルの上に置いた。

 

 

「それでは、私は外で鍛錬に出てきます。私もこの合宿を機に『偽・全て遠き理想郷(イミテーション・アヴァロン)』を完成させたいですからね」

「ありがとう、アルトリア」

 

 

 ティーライトキャンドルがテーブルの上で淡い灯を灯している。悪魔は灯りが無くても夜目が利く。おかげでこれまで夜の山でトレーニング出来たわけなので、このキャンドルはあくまでも雰囲気作りのオブジェだ。

 イッセーはテーブルを挟んでリアスの対面の席に腰を下ろす。赤いネグリジェ姿のリアスは紅の髪を一本に束ねて眼鏡をかけていた。

 

 

「あれ?部長って目が悪いんですか?」

「あー、これ?気分的なものよ。考え事をしている時に眼鏡をかけていると頭が回るの。ふふふ、人間界の暮らしが長い証拠ね」

 

 

 リアスはクスクスと小さく笑う。その仕草とネグリジェ姿に見惚れていたイッセーだが、テーブルの上に広げられた地図らしきものとフォーメーションなどが書き込まれた紙に目が向かう。恐らく、ライザーとの戦いで使う為の戦術などであろう。

 

 

「…正直、こんなものを読んでいても気休めにしかならないのよね」

「どうしてですか?」

「相手が他の上級悪魔なら、これを読んでいれば戦いはできるわ。この本は百年かけて研究された戦いのマニュアルだもの。問題はそこじゃないの」

「?じゃあ、いったい何がヤバいんですか?」

「ライザー本人よ。というよりもフェニックスが相手なのが一番問題なの」

 

 

 イッセーの疑問に答えるべく、リアスはアルトリアが持ってきた書物の一冊を取り出してテーブルの上に置く。魔法か何かで開かれたページ、そこには雄々しく炎の翼を広げる火の鳥が描かれていた。

 

 

「その昔、フェニックスは命を司りし聖獣として人々に崇められていた。流す涙はいかなる傷をも治し、その身に流れる血を飲めば不老不死を手に入れられると人間界の国々に伝説を残すほどだったわ」

 

 

 だが、聖獣であるフェニックスにはもうひとつの一族がいた。侯爵の地位を持ち、『七十二柱』にも数えられた悪魔側のフェニックスだ。

 

 

「人間達は聖獣フェニックスと区別する為に悪魔のフェニックスを『フェネクス』とも呼ぶようだけど、聖獣のフェニックスとライザーの一族は能力はほとんど一緒。つまり、不死身。私達はそれと戦わないといけないのよ」

「ふ、不死身!?最強じゃないですか!不死身って、そりゃいくらなんでも無敵すぎる!」

「そうよ。ほとんど無敵ね。攻撃してもすぐに再生して傷を治すわ。業火の一撃は骨すら残さない。八勝二敗。これ、ライザーの公式『レーティングゲーム』の戦績よ。十回戦って八勝。二敗は懇意にしている家系への配慮で、わざと負けただけ。実質は全勝よ。すでに公式タイトルを奪取する候補にもなっているわ」

 

 

 イッセーは絶句し、理解した。リアスが言っていた問題、それは不死身の実力者たるライザーを如何倒せばいいのかという事。その為にこうして戦術やフォーメーションを考えているのだ。

 

 

「ライザーが婚約相手に選ばれた時、嫌な予感がしたの。そうね、今思えばこうなることを見越して、お父様達は最初から仕組んでいたんだわ。私が否応なしに結婚するように、ライザーを当てた。こうして身内同士のゲームになってもライザーが相手なら、フェニックスが相手なら、勝てるはずが無いと踏んでいたんだわ。チェスで言う所の嵌め手。スウィンドルね」

 

 

 そう。いくらリアスが滅びの魔力という強力無比な力を持っているとしても、相手は不死身のフェニックス。然もプロのレーティングゲーム選手ともなれば、勝ち目は薄い。そも、この話自体が最初から仕組まれた、結婚前提の話なのである。

 

 

「レーティングゲームが悪魔の中で流行るようになって、一番台頭したのがフェニックス家だった。悪魔同士で戦うなんて、ゲームをするようになるまで殆ど無かったわ。『王』も参加するこのゲームで、フェニックスの強さが浮き彫りになったの。フェニックス家は公式『レーティングゲーム』で最強クラスの一角。不死身、これがどれだけ恐ろしいものか、悪魔達が初めて理解したのよ」

 

 

 不死身なら、何度やられても復活できる。フェニックスと違って他の悪魔の力には限度がある。その疲弊したポイントを叩き、勝利する。そうしてフェニックス、ライザーは現悪魔界での地位を確立したのだ。

 そんな相手に、然も眷属も自分より強いような奴らと当たるのかと、暗い顔を浮かべるイッセー。そんな彼にリアスは微笑む。

 

 

「ライザーを倒せないことも無いのよ?」

「マジっスか⁉︎」

「ええ。倒す方法は二つ。圧倒的な力で押し通すか、起き上がる度に何度も何度も倒して相手の精神を潰すか。前者は神クラスの力が必要。後者はライザーの精神が尽きるまでこちらのスタミナを保つこと。身体が再生して不死身でも心、精神までは不死身じゃないわ。倒すたび確実に相手の精神は疲弊する。フェニックスの精神を押しつぶせば私達の勝ちよ。再生も止まり、相手は倒れるわ。まあ、神みたいに一撃で相手の精神も肉体も奪い去る力があれば一番楽なんでしょうけどね」

 

 

 神クラスの力なんて持っていない。つまり、相手が「何度も再生しまくって精神的に辛いんで勘弁して下さい」と降参するまで戦い続ける必要がある。当日の大まかな方針を理解したイッセーは、今しかないと前からの疑問を口にする。

 

 

「部長」

「なにかしら?」

「どうしてライザーの事を嫌っている…っていうか、今回の縁談を拒否しているんですか?」

 

 

 その質問にリアスはため息をつく。ライザーは一応の礼節を守る気はあるが、基本女たらしで、自分の物には何をしてもいいと考えているろくでもない男だ。お家の事情も考えると無下に断れないものだと思う。でも、それ以外に何か……

 

 

「…私は名門グレモリー家の娘、そのことは誇りに感じているわ。けれど私個人として、リアスという女の子としても見て欲しいの。でも、誰しも私の事をグレモリーのリアスと見るわ。リアス個人として認識してもらえない。だから、人間界での生活は充実していたの。誰も貴族悪魔のことなんて知らないものね。皆、私を私として見てくれている。それがたまらなく好きだわ。悪魔の社会ではそれを感じる事は出来なかったし、これからも感じる事なんて出来ないわ。私が私として充実出来るのはこの人間界にいる間だけ」

 

 

 遠い目をしているリアス。その寂しそうな横顔は、イッセーの想像できない苦悩を表していた。一挙手一投足がグレモリー家の悪魔として見られる。その身に背負う名門の重みは、彼には想像できなかった。

 

 

「家の名を捨てる事も、昔は考えたわ。でもアルトリアに出会ってそれが変わったの」

「アルトリアと?」

「あの子が駒王町に来たばかりの頃、お兄様に連れられた彼女と会ったわ。身なりこそ整えられていたけど、眼はどうしようもない位死んでいた。今は隠棲しているとはいえ、仮にもイギリスの名門ペンドラゴン。その名を持つ少女がしていいような目じゃない。この世の地獄を見てきたような…そんな目を」

 

 

 イッセーには初耳の話だった。アルトリアの過去をイッセーは知らない。街に来る前の事は頑として語らなかったからだ。

 

 

「それを見て、その時の私は怖くなってしまったの。あぁ、この子は私の未来の姿だって。自由だけを求めて、家を出た者がどうなるか、お兄様が教えるために連れてきたんだって。実際にはそんなことは無かったのだけれど、それでもあの衝撃を私は忘れることは出来ない。」

 

 

 そういったリアスの顔は酷く沈鬱としていた。まるで心の中の澱みを吐き出したかのような、今まで黙っていた負の感情を暴露したような。

 

 

「それでも……それでも私はグレモリーを抜きとして、私を、リアスを愛してくれる人と一緒になりたいの。それが私の小さな夢。…残念だけれど、ライザーは私のことをグレモリーのリアスとして見ているわ。あの態度だけじゃない、それがとても嫌なの。それでもグレモリーとしての誇りは大切なものよ。矛盾した思いだけど、それでも私はこの小さな夢を持っていたいわ」

 

 

 『リアス・グレモリー』としてではなく、『リアス』として。それは貴族に生まれた者としては許されない願いだ。貴族の子女に生まれた以上、結婚はただ好きな人とする物ではなくなる。家同士の関係強化のため、新たなコネクションの構築のため、文字通り発展のための道具になる必要がある。

 

 

「俺は部長の事、部長として好きですよ」

 

 

 何気なく口から出た言葉。だが、リアスはそれを聞いて目を丸くしていた。

 

 

「グレモリー家の事とか、悪魔の社会とか良く分からないし、アルトリアの事も分かんないですけど、俺にとってリアス部長はリアス部長であって…。うぬぬ、小難しい事は良く分からないですけど、俺はいつもの部長が一番です!」

 

 

 リアスを心配させまいと精一杯の笑顔を見せるイッセー。それに対してリアスは、その髪色に迫るほどに顔を真っ赤に染めた。

 

 

「ぶ、部長?お、俺、何か変なこと言いました?」

「な、なんでもないわ!」

 

 

 必死に取り繕うリアス。馬鹿正直に、真っ直ぐなイッセーに思わずときめいてしまった。

 

 

「でも、滅殺姫なんて呼ばれている天才の部長の初陣がそんな奴だなんて、前途多難ですね」

「天才って言葉はあまり好きじゃないわね」

 

 

 頬を赤く染めたまま、厳格さを装いつつリアスは答える。

 

 

「どうしてですか?」

「天から授けられた才能…神から与えられたようで嫌な気分になるわ。私の才能はグレモリー家が代々培ってきたものの結晶。それを私は悪魔として受け継いだ。神からもらったものだなんて思ったことは一度もないし、そんなことは有り得ない。私の力は我がグレモリー家と私のものよ。だから私は負けない。戦う以上は勝つわ。勝つしかないのよ」

 

 

 神から与えられたものではない。己と、自分の先祖が積み上げてきた力だと堂々とするリアスに、イッセーは改めて劣等感に苛まれた。

 

 

「部長、俺、ダメです。山に来てから…てんでダメっス」 

「イッセー?」 

「皆と修行してて、強くなっているような気がするんですけど、それ以上に…差を感じてしまいました。剣の修行をすれば、木場の凄さがわかって『ああ、俺は木場みたいな剣士にはなれない』とわかっちゃって…。小猫ちゃんとの修行をすれば、小猫ちゃんの力を思い知って、魔力の修行をすれば、朱乃さんの偉大さを痛感して、横でアーシアはぐんぐん成長しちゃって……そんなみんなと人間なのに渡り合えてるアルトリアの凄さを思い知らされて…俺は何も出来なくて…。ブーステッド・ギアがあるから、大丈夫だ!って強がってみたりして……俺、俺……」

 

 

 気づけばイッセーは信じられないほどの涙を流していた。悔しくて、悔しくて。やればやるほど自分の矮小さが理解できた。自分には戦いの才能がない。

 

 

「自分が一番弱いって、わかりました…。俺が一番役立たずだって…十分にわかっちゃったんです……。たとえ凄い神器を持っていても俺が持ち主じゃ、意味がないんだって。だから、あのときライザー・フェニックスは俺を笑ったんですよね。『宝の持ち腐れ』、『豚に真珠』、まさに俺の事じゃないですか」

 

 

 ボロボロと悔し涙を溢れさせ、無様に鼻水まで出している。そんなイッセーをリアスはスッ、優しく抱き寄せる。そして愛おしそうに何度も何度も頭をなでる。

 

 

「自信が欲しいのね。いいわ、貴方に自信をあげるわ。ただ、今は少しでも体と心を休ませなさい。眠れるようになるまで私が傍にいるから」

 

 

 その言葉の真意がわからなかった。だが、この温もりが傷ついた心身を癒してくれる。今の彼にはそれだけで十分だった。

 

 

 

 

「ブーステッド・ギアを使いなさい、イッセー」

 

 

 翌朝、リアスから神器の使用を許可されたイッセー。実はこの山に入る前、リアスから神器の使用を禁止されていたのだ。イッセーの目標は基礎能力の向上、故に『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』を使ってバフを掛けてはトレーニングにならないと堅く禁じられていた。

 

 

「相手は祐斗でいいわね」 

「はい」

 

 

 リアスに促され、祐斗が一歩前へ出た。

 

 

「イッセー、模擬線を開始する前に神器を発動させなさい。そうね…発動から二分後、戦闘開始よ」

「は、はい」

 

 

 イッセーは言われるまま『赤龍帝の籠手』を左腕に出現させる。

 

 

「ブースト!」

『Boost!!』

 

 

 イッセーの言葉に反応して神器が音声を発し、宝玉が光る。まずはイッセーの能力が倍になった。そして十秒後。

 

 

『Boost!!』

 

 

 さらに能力が倍になる。神器から伝わるパワーがイッセーの全身を駆ける。こうして能力を倍倍にしていくのだが『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』には使用する際の注意があった。能力の増大には上限がないと思われるが、実はそうでもない。イッセーは一度、どこまで増大するのか試しに発動させてみた事がある。結果、発動から数分後に昏倒してしまった。理由は単純、増大した力にイッセー自身の肉体が耐えきれなかったからである。リアス曰く、

 

 

「貴方がトラックだとして、想定されている積載量を遥かに超える荷物を載せられた場合、どうなると思う?動かなくなるでしょう?そういうことよ」

 

 

との事。荷物とは倍化した力。荷がどんどん増えれば、トラックの速度は落ち、重さで扱いが難しくなり、容量を越えて詰め込めば最悪止まるか壊れてしまう。力を蓄える体という器が増加に耐えられなくなったから、安全装置が作動したのだ。

 段階的に試してみたこともあったが籠手の宝玉から『Burst(バースト)』と発せられた瞬間に、体中が重くなり、全身の機能が一瞬止まったように思えた。神器に限界が無くても、使い手が先に限界を迎えてしまう。それが神器の弱点、というよりもイッセー自身弱点だ。リアスにパワーアップを命じられ、力の増大を十二回繰り返す。そして十二回目で「ストップ」とブーステッド・ギアのパワーアップを止めるよう指示してきた。

 

 

「いくぞ、ブーステッド・ギア!」

『Explosion!!』

 

 

 イッセーの身体から、眼に見えて魔力の奔流があふれ出す。これこそ、『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の戦闘形態だ。

 その音声は、増加した力の解放と同時に力の増加を止める意味も含まれていて、一種のストッパーになっている。一度パワーアップが止めると、一定時間強化した状態で戦える。使用できる時間は持ち主の状態と行動で決まる。激しく動くほど、傷を負うほどに強化時間は短くなってしまう。強化した力を活かし、傷を負わないように上手く立ち回るのがこの神器を使う上での基本スタイルとなるだろう。

 

 

「その状態でイッセーは祐斗と手合わせしてみてちょうだい。祐斗、相手をよろしく頼むわね」

「はい、部長」

 

 

 リアスの指示に従い、祐斗は木刀をイッセーへ構えた。

 

 

「イッセー、剣を使う?それとも素手でいく?」

「素手でやってみます!」

「よろしい。では、二人共始めてちょうだい」

 

 

 二人が構えを取った次の瞬間、フッ、とイッセーの目の前から突然祐斗が消える。『騎士』スピードで一気に距離を詰めたのだ。鋭い一撃がイッセーに繰り出されるが、イッセーは瞬時に腕を交差させてガードした。

 

 

「っ!」

 

 

 祐斗が少しだけ驚く様子を見せる。その隙にイッセーは拳を突き出して反撃する。しかし、拳が当たる寸前に躱され、拳は空を切った。咄嗟に当たりを見渡すが、何処にもいない。まさか!と思い上空を見上げたときには、既に祐斗が剣を下へ突き出して降ってくる寸前だった。

 ゴッ!っと鈍い音と共に、頭に痛みが走る。

 

 

「痛っ…」

 

 

 イッセーは打たれた箇所を押さえもせずに、地面へ降り立った祐斗に蹴りを放った。しかしそれも『騎士』のスピードで躱される。いくら強化しようとも、技術と特性の差は如何ともし難い。

 

 

「イッセー!魔力の一撃を撃ってみなさい!魔力の塊を出すとき、自分が一番イメージしやすい形で撃つの!」

 

 

 リアスから指示が飛ぶ。イッセーは体に流れる魔力を手のひらに集中させる。小さな米粒程の魔力の塊が出来上がった。相変わらず小さいが、思い切りそれを飛ばす!その瞬間、祐斗は度肝を抜かした。

 

 

グオォォォォォォオオオオンッ!

 

 

 米粒サイズの魔力の塊は、イッセーから放たれると同時に加速度的に巨大化し、メートルクラスの大きさまで巨大化した。速度もなかなかであり、そのまま祐斗に向けて突っ込むが、

 

 

 スッ

 

 

 祐斗は簡単に躱してしまった。確かに早いが、避けられない速さでもない。そりゃ避けられるよな、とイッセーが思った次の瞬間、

 

 

ドッゴォオオオオオオオオオンッッ‼

 

 

 そのまま突き進んだ魔力の塊は凄まじい爆音と爆風を撒き散らしながら、隣の山が吹き飛んだ!!削り取られるように大きく抉れた形を残す山。山頂付近は完全に消失していた!

 

 

Reset(リセット)

 

 

 籠手から音声が発せられ、同時に増幅されていた力がイッセーの体から抜けていく。強化時間が過ぎ、元に戻ったのだ。何もかも抜けていくような、体の内側が空になるような感覚をイッセーは味わう。

 

 

「そこまでよ」

 

 

 リアスが二人の手合わせを止めた。祐斗は木刀を下ろし、イッセーも腰を抜かしたように地面へ座り込んだ。山を削り取った。イッセーはその衝撃に心臓をバクバク鳴らしていた。ある程度落ち着いたところで、ふと気づいた。

 

 

「え、待って俺山消し飛ばしちゃった!?どうしよう!弁償なんて出来ないぞ!つかお山の弁償っていくら⁉」

「大丈夫よイッセー、消えた山については気にしなくていいわ」

「えぇ、この辺り一帯はグレモリー家が日本神話から買い取り、人除けを張った地域です。動物も獣除けで粗方追い払っていますので、後で修復すれば何の問題もありません」

 

 

 リアスはこうなることを分かっていたのか、驚いた様子もなく答える。アルトリアの補足も入り、一安心という所だ。

 

 

「とりあえずお疲れ様、二人とも。さて、感想を聞こうかしら。祐斗、どうだった?」

「はい。正直、驚きました。実は最初の一撃で決めようと思っていたんです」

 

 

 リアスの質問に祐斗が答える。

 

 

「ところが、イッセー君のガードを崩せませんでした。打ち破る気まんまんでいたんですけどね。ニ撃目、上からの振り下ろしで頭部を狙い、打ち倒そうとしましたが、これも無理でした」

 

 

 ハハハと爽やかに笑う祐斗。木刀を皆に見せるように前へ出す。その木刀はすでに折れかけていた。

 

 

「魔力で木刀を覆って強化していたんですが、それでもイッセーくんの体が硬すぎて大したダメージも与えられずって感じです。あのままやっていたら僕は得物を失って、逃げ回るしかなかったですね」

「ありがとう、祐斗。そういう事らしいわ、イッセー。貴方は私に『自分は一番弱く、才能もない』と言ったわね?」 

「は、はい」

「それは半分正解。ブーステッド・ギアを発動していないあなたは弱いわ。けれど、籠手の力を使うあなたは次元が変わる」

 

 

 リアスが吹き飛んだ山を指をさす。

 

 

「あの一撃は上級悪魔クラス。あれが当たれば大抵の者は消し飛ぶわ」

 

 

 その発言にイッセーは驚く。自分がそんなヤバい一撃を放ったのかと、自分の左腕を見つめた。

 

 

「基礎を鍛えたあなたの体は、莫大に増加していく神器の力を蓄えることの出来る器となったわ。現時点でも力の受け皿として相当なものよ。ね、言ったでしょ?あなたは基礎能力を鍛えれば最強になっていくの。始まりの数字が高ければ高いほど、増大していく力も大きいのよ。元の体力『一』が『二』になる。貴方にとってはそれだけでも強大な成長なの」

 

 

 そんなに成長したのか、といまだ自分の力を疑うイッセーに、リアスが自信満々に言う。

 

 

「貴方はゲームの要。イッセーの攻撃力が状況を大きく左右するの。あなた一人で戦うのなら、力の倍加中は隙だらけで怖いでしょうね。けど、勝負はチーム戦。あなたをフォローする味方が居る。私達を信じなさい。そうすれば、イッセーも私達も強くなれる。勝てるわ!」

 

 

 強くなる。俺が?一番弱い眷属に負けていた自分が強くなれると知り、イッセーの中に闘志が宿る。

 

 

「貴方をバカにした者に見せつけてやりましょう。相手がフェニックスだろうと関係ないわ。リアス・グレモリーとその眷属悪魔がどれだけ強いのか、彼らに思いを知らせてやるのよ!」

『はい!』

 

 

全員が力強く返事をした。そうだ!俺には部長と仲間たちがいる!みんなの力を合わせて、必ず勝ってやる!そう決意を新たにしたグレモリー眷属たち。

 

 しかし、ただ1人暗い顔でそれを見つめる者が居た。

 

 

「 (だめだ。今のままでは、勝てない……) 」




 今回ちょっと難産だった。リアスの身の上話にアルトリア絡ませる必要あるか?と悩んだが、アルトリアを『リアス』であることにこだわり過ぎたifとする事で収めることが出来ました。

 正直リアスが結構失礼な奴になったが、拙作アルトリアは駒王町に来るまでに色々な紛争地域を巡って強制レベリングしてる設定なので、傍から見れば追放されたか、家出した流れ者に見えなくもない。
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