赤龍帝と騎士王の現し身   作:ファブニル

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 毎週投稿……ギリギリってところかな?アウトか……

 前回、初めて完全オリジナルの話を投稿しましたが、いかがだったでしょうか。焦るアルトリア、父親達の思いについて私なりの解釈を述べられたと思います。

 今回はレーティングゲーム本編。大分削ろうかと思いましたが、無理でした多分普通に話数一章より増えます。

 それでは、第十四話どうぞ!


『赤龍帝』VS『不死鳥』の眷属たち

「皆さま。この度グレモリー家、フェニックス家の「レーティングゲーム」の審判役を担うことなりました。グレモリー家の使用人、グレイフィアでございます」

 

 

 サーゼクスを挟んでアルトリアの隣に立つグレイフィアが、魔法通話で開会宣言を行う。今回は彼女の仕切によって執り行われる様だ。

 

 

「我が主、サーゼクス・ルシファーの名のもと、ご両家の戦いを見守らせていただきます。どうぞ、よろしくお願い致します。早速ですが、今回のバトルフィールドはリアス様とライザー様のご意見を参考にし、リアス様が通う人間界の学び舎「駒王学園」のレプリカを、異空間にご用意しました」

 

 

 映像が切り替わり、駒王学園のあちこちが映し出される。その再現度は外観は勿論こと、教室、グラウンド、理科室、体育館、更には森や旧校舎などなど……。

 その再現度の高さに驚いているのかイッセーとアーシアがあちこちを見渡している。

 

 

「両陣営、転移された先が「本陣」でございます。リアス様の「本陣」が旧校舎のオカルト研究部の部室。ライザー様の「本陣」は新校舎の学長室。『兵士』の方は「プロモーション」をする際、相手の「本陣」の周囲まで赴いて下さい」

 

 

 腕を組み、堂々としているリアスと、机に脚を乗せ周囲に眷属を侍らせているライザー。中継されていると分かっているのに、眷属の胸を揉みしだいている。

 

 

「ライザー、あのバカ息子め……」

「あの子ったら……」

 

 

 明らかに相手を舐めている態度にフェニックス夫妻は頭を抱えている。いくらハンディまで付けてやるほどの実力差と分かっているとはいえ、ここまで露骨に態度に出すのはよくない。フェニックス家にもメンツというものがある。この一戦は、ただでさえ未成年のリアス不利なゲーム故に良識的な貴族からの不満も出ている。旧72柱といえど、それに晒されては今後に支障が出るだろうに。

 

 

「開始のお時間となりました。なお、このゲームの制限時間は人間界の夜明けまで。それでは、ゲームスタートです」

 

 

キンコンカンコーン

 

 

 鳴り響く学校のチャイム。これが開始の合図か。こうして、イッセーたちにとっての初『レーティングゲーム』の狼煙があがった。

 

 ゲームの開始直後は互いにまずフィールドの把握と、作戦の決定を行った。リアス側はまず森の中にトラップを仕掛け、新旧校舎の中間にあたる屋内競技場に破壊力のある『戦車』を投入する事にしたようだ。

 

 

「自陣の背後をトラップで守り、戦場の中央を占拠し戦いを有利に進める、か……」

「定石ですな。リアス嬢はレーティングゲームの事をよく勉強してきているようだ。」

 

 

 レーティングゲームはチェスを基にした競技であると同時に軍事訓練の側面も持つ。戦場を限定化させ、橋頭保を作り、敵陣地に浸透する。リアスの戦術は理にかなったものだった。対するライザーもまたスタートと同時に作戦を説明し始める。どうやら、数を利用して眷属を複数部隊に分け、防御を中心としつつ、裏手からの奇襲を慣行するようだ。

 あんなふざけた態度だが、仮にもレーティングゲームの雄。数の有利を利用して、相手を削り、押しつぶすつもりのようだ。両者の動きや仕込みが着々と進む中、

 

 

「ッ!?」

 

 

 イッセーとアルトリアを繋ぐパスから強大な力が流れ込んできた。まるでダムから水が放流されるかのような感覚に、思わずアルトリアはビクッ!っと身体を震わせる。

 

 

「おや、アルトリア。どうかしたのかい?」

「は、はい。恐らくリアス、様がイッセーに科せられていた封印を解いたのだと思われます。彼とのパスから彼の力が増大したのを感じました」

 

 

 転生の際、リアスはイッセーの肉体が駒と神器の力に耐えられないと考え、力を抑えるための複数のリミッターを設けていた。その一部はアルトリアが神器覚醒時に外し、再度掛けなおした物もあるが、今回外されたのは駒に関するリミッター。これでイッセーは駒八つ分の力と、赤龍帝としての本来の力を振るう事が可能となった。

 

 

「彼というのは、例の?」

「はい、旦那様。今代の『赤龍帝』であられます兵藤一誠様のことで御座います。リアス様の『兵士』であり、アルトリア様の幼馴染でもあられます」

「なるほど、リアスがいたく気に掛けているという彼か。もしかすると彼がリアスの……」

 

 

 イッセーの事を聞き、考え込むジオティクス。彼自身リアスの願いが不可能だと感じたためにこの婚約話を進めていたが、イッセーの存在によって今更ながらに考えを改めようとしていた。

 

 

「あなた、ゲームが動きますわよ」

 

 

 長考に入っていたジオティクスをヴェネラナが諫める。フィールドではリアス側がトラップと幻術を張り終え、眷属たちが動き出していた。イッセー、小猫は作戦通り体育館へ。祐斗は森で背後からの敵に対応。朱乃はどうやら遊撃に回るようだ。

 

 

「リアス嬢の眷属はライザーに比べて少ない。ならばここは速攻で押し進めるしかないですな」

 

 

 イッセーと小猫が裏口から体育館に入ると、中継が内部を映し出す。体育館にはライザーも既に眷属を派遣しており、『戦車』1人、『兵士』が3人待ち構えていた。

 イッセーと小猫が演壇の幕の裏に隠れていると、照明が付き、ライザー眷属たちを照らし出す。

 

 

『そこに居るのは分かっているわよ。グレモリーの下僕さん達!貴方達がここへ入り込むのを監視していたんだから』

 

 

 ライザーはリアスの動きを察知し、この4人を配置していた。駒の価値からすれば13対8だが、人数としては倍。然も『戦車』の実力は小猫の見立てでは『女王』クラスとのこと。

 そこで小猫が『戦車』を、イッセーが3人の『兵士』を相手取ることに。イッセーが神器を起動させると、『戦車』が中国拳法の構えを取り、イッセーを叩きのめした『兵士』が棍で構える。最後に双子が小型のチェーンソーをニコニコ顔で……

 

 

「チェーンソー、ですか」

「アルトリア卿もやはり驚きますか。初見の方は皆驚きます。かく言う私もあの子達の武器選択には目を疑いましたが……」

 

 

 意外な武器にイッセーも驚いたのか、双子の『兵士』から逃げ惑う。その隙を突くかのように棍による攻撃が挟まれるが、イッセーは紙一重でそれを回避する。その様が滑稽なのか、映像はずっとイッセーを追い続けている。

 

 

『あー、もう! ムカつくぅぅぅぅ!』

『どうして当たんないのよ!』

 

 

 チェーンソーを持つ二人が地団太を踏み、棍をもつ少女ミラも10日前とは違うイッセーに攻めあぐねていた。どうやらあの特訓はイッセーにとってかなり身になったようだ。

 

 

『Boost!!』

『Explosion!!』

 

 

 イッセーが三度目のパワーアップを果たし強化状態に入る。そこからのイッセーは一転攻勢、双子の片割れを殴り飛ばし、続けてもう一人も裏拳で倒す。ミラの突き入れた棍も強化された五感で察知し掴み取り、握りつぶすと同時に掌底で彼女を吹き飛ばす。

 

 

「あれが神滅具(ロンギヌス)、あれが『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』か。彼は悪魔になって日が浅いと聞いたが、それでも三人を相手取って互角以上に戦えるとは」

「ふふふ、リアスには心強い眷属ですわね、あなた」

 

 

 イッセーの善戦ぶりにグレモリー夫妻も笑顔を浮かべる。彼らからすれば神滅具使いが我が子の眷属になってくれるのは頼もしい限りだろう。アルトリアはイッセーが実力を付けている事に心躍らせていた。

 次の瞬間、その評価は逆転する。

 

 

「くらえ!俺の新必殺技!『洋服崩壊(ドレスブレイク)』ッ!」

 

 

 パチン!とイッセーが指を鳴らすと同時にチェーンソーの双子、棍使いの服が弾け飛んだ。上着だけではない、下着までもがだ。白く丸みを帯びた女性の裸体が映像に映し出される。

 

 

「なッ!?」

「なんと……」

「あらあらまあまあ……」

『イ、イヤァァァァァァァァアアアアッッ!』

 

 

 体育館中に響き渡る悲鳴。三人ともその場にうずくまり、大事な部分を隠そうとしていた。

 

 

『アハハハハハハ!どうだ、見たか!これが俺の技だ!その名も『洋服崩壊(ドレスブレイク)』!俺は脳内で女の子の服を消し飛ばすイメージだけを延々と、延々と妄想し続けたんだよ!魔力の才能を、全て女の子を裸にするだけに使った!』

 

 

 呆れた。怒りや恥ずかしさを通り越して呆れてしまった。あの技、接触時に自身のイメージを込めた魔力を流し込み、任意のタイミングで発動させられるもののようだが、まさか女性を引ん剝くイメージとは。そう言えばイッセーは魔力を使って野菜の皮むきをしていた。何の特訓かと思っていたらその結果がこれだ。まさかあの特訓の末にこんな技を生み出していたとは……

 

 

『最低!女の敵!』

『ケダモノ!性欲の権化!』

 

 

 少女達が涙目でイッセーを罵ってくる。多くの悪魔の見守るこの試合でこんな辱めを受けるとは……

 

 

「申し訳ございません。お見苦しい物をお見せしてしまい……」

「いや、中々面白い技だ。欲を力となす悪魔に相応しい技だと「サーゼクス様」…あぁ、うん。確かに慎みも必要だね」

 

 

 興味深そうな様子を見せるサーゼクスだが、グレイフィアに制され直ぐに訂正した。横を見れば両家の夫人もそれぞれの夫に何かしらの制裁を加えている。貴族であろうと、やはり性的興奮からは逃れられないか……

 そうこうしてる間に試合が動いた。イッセーと小猫が示し合わせたのち、全速力で体育館から飛び出す。次の瞬間、

 

 

 カッ!

 

 

 一瞬の閃光。刹那。

 

 

 ドォォォォォォオオオオオオオオオンッッ‼

 

 

 

 轟音と共に巨大な雷の柱が体育館へ降り注いだ。雷が止んだ時、目の前にあったはずの体育館は根こそぎ消失していた。

 

 

撃破(テイク)

 

 

 実況映像にニコニコ顔の朱乃が映る。黒い翼を広げて空に浮かび、天にかざした右手にはパチパチと電気が走っていた。

 

 

「ライザー・フェニックス様の『兵士』三名、『戦車』一名、戦闘不能」

 

 

 審判役のグレイフィアの声が魔法通話によってフィールド中に響く。彼女の二つ名『雷の巫女』の名に違わぬ一撃だった。

 

 

「ふむ、センターの体育館を橋頭保にしようとする事は向こうも予測している。ならそこを取りに来た敵を建物ごと一網打尽にしてしまおうという事か。」

「自分の策に溺れず相手も同じことを考えている事を想定する。リアス嬢はよくご存じのようだ。」

 

 

 思い切ったリアスの作戦にサーゼクスやフェニックス卿も高評価を出す。ライザー側は一気に四人を失ったが、リアス側はまだ一名も欠いていない。良い出だしを飾れただろう。

 無論、油断は禁物。この大胆な策でライザー側も少し本気を出してくるだろう。加えてあのレベルの攻撃を連発できるとは思えない。チャージまでの時間にまた相手眷属を削る必要が出てくる。となれば、本陣の守りに入っているライザー側眷属と対峙することになるだろう。

 そうして二人が移動しようとした、その時!

 

 

 ドォンッッ‼

 

 

 小猫に魔法陣が着弾し、そこから光と炎、爆砕音が響き渡る!

 

 

撃破(テイク)

「リアス様の『戦車』一名、戦闘不能」

「この攻撃。なるほど、アレが噂の『爆弾女王(ボムクイーン)』か」

 

 

 サーゼクスの視線の先、映像に魔導師の格好をしている女性。彼女こそ『爆弾女王』の二つ名を持つライザーの『女王』ユーベルーナ。爆発系の魔法を得意としており、その威力の高さは『戦車』である小猫を一撃で沈めた事から推し量れる。

 

 

犠牲(サクリファイス)。なるほど駒の多いライザー卿からすれば、多少の損耗で敵の油断を誘えれば十分という訳か」

 

 

 ライザー側はライザーを含めて16人。4人やられたとしてもまだ12人残っている。対してリアス側はリアスを含めて6人。1人欠けるだけでもその戦力喪失は大きい。

 

 

『クソォ!降りてきやがれぇぇぇぇ!俺が相手だ!』

 

 

 目の前で仲間がやられた事でイッセーは完全に頭に血が上っている。

 

 

『ふふふ。うるさい『兵士』のボウヤね。貴方もさっきのお嬢さんみたいに爆発してみる?』

『あらあら。貴方のお相手は私がしますわ。ライザー・フェニックス様の『女王』、ユーベルーナさん。『爆弾女王(ボムクイーン)』とお呼びすればいいのかしら?』

 

 

 『女王』同士の火花散る睨み合い。互いに目に見えて魔力を高ぶらせている。

 

 

『その二つ名センスが無くて好きではないわ、『雷の巫女』さん。貴方と戦ってみたかったの』

『イッセーくん、祐斗くんの元へ向かいなさい。ここは私が引き受けますから』

『で、でも』

 

 

 食い下がるイッセーに、朱乃は優し気な笑みを浮かべる。

 

 

『イッセーくん。貴方は貴方の役目があるでしょう?行きなさい。ここは私の仕事です』

『朱乃さん……頼みます!』

 

 

 そう言ってイッセーは祐斗と合流すべく走り出す。実況映像はそのまま残り、朱乃とユーベルーナの対決が流れる。一瞬の静寂、次の瞬間!

 

 

『ハァッ!』

『フッ!』

 

 

 朱乃の右手から雷が、ユーベルーナの杖から魔法陣が、それぞれ複数射出される!映像を煙幕と白光が包み込む。それらが収まった後、互いの衣装に傷が入っているものの、概ね迎撃できたようだ。

 

 

『やりますわね……』

『お互いに……フッ!』

 

 

 再び、ユーベルーナが爆破魔法陣を大量に展開してくる。それに対して朱乃は雷を自身にため込む。ユーベルーナの大技『連鎖爆破宴会(チェインボムパーティー)』が朱乃に襲い掛かる!朱乃を爆風と煙が包み込む。

 しかし、それを引き裂くように朱乃が薙刀状の雷を手に持ちユーベルーナに切り込む。彼女はユーベルーナの技の予備動作を見て、自身に魔力を溜め込み、雷を敢えて周囲に放電させることで攻撃を防いだのだ。自身の大技を透かされたユーベルーナも、薙刀を素早く避け、爆発の魔法陣を引き撃ちする。

 

 

『フッ!ハッ!』

 

 

 しかしそれを薙刀状の雷で切り払う。次々と襲い来る魔法を迎撃しながらユーベルーナに接近し、再び手にする獲物で斬りかかった。堪らず防御したユーベルーナとそのまま杖との鍔迫り合いとなる。

 

 

『意外ね。貴女は基本、雷での遠距離攻撃を得意としていたはずだけど?』

『あらあら、想像力が欠けていますわね。うちには近接戦のスペシャリストがいましてよ』

『スペシャリスト?まさかアルトリア卿か!』

『御明察ッ!』

『クウッ!?』

 

 

 そう。なにもアルトリアは合宿中、魔力弾による不意打ちばかりをしていたわけではない。時には雷の放てないクロスレンジまで接近しての攻防も繰り広げてきた。『女王』は『騎士』『戦車』『僧侶』の特性を併せ持つ。ならば、近接戦に不利な特性を持っている筈がない。そこでアルトリアは朱乃に近接戦の手ほどきを行ったのだ。

 最も朱乃自身、薙刀や弓矢などの武道には心得があったため、そこまで苦労はしなかったが。

 

 

「ふふふ。色々仕込んできたようだね、アルトリア」

「私は任務を果たしたまでです。それに、満足いく指導が出来たとは言えません」

 

 

 現に小猫の潜在能力を引き出せず、結局彼女は最初に脱落してしまった。彼女の過去を考えれば仕方が無いと言えるかもしれないが、状況が状況だ。何時かは彼女の力を見てみたいと思う。

 

 

「ライザー・フェニックス様の『兵士』三名、リタイヤ」

 

 

 『女王』同士の白熱したバトルが繰り広げられる中でもグレイフィアは自身の役目を忘れない。そうこうしている内に別働隊としてライザーが向かわせていた『兵士』三名がやられていた。

 

 

「なんと、いつの間に……」

「どうやら森の中に掛けられた幻術にハマり、リアスの『騎士』に一人ずつ各個撃破されたようですな」

「あらまぁ、あの子たちも可哀そうに」

 

 

 我が子の眷属なら、己が子も同義と、フェニックス夫人は見せ場もなく画面外で倒された三人を憐れむ。しかし目の前で繰り広げられる『女王』同士の熾烈な争いを見れば、カメラ担当の使い魔を操る者たちの気持ちも仕方ないだろう。ここまでの戦いをお家騒動での戯れのような試合で見れるとは思わなかったからだ。しかし彼らもプロ、試合の流れは見逃さない。

 突然、映像が切り替わり勇んだ女性の大声が聞えてくる。

 

 

『私はライザー様に仕える『騎士』カーラマイン!こそこそと腹の探り合いをするのも飽きた!リアス・グレモリーの『騎士』よ、いざ尋常に剣を交えようではないか!』

 

 

 場所は野球部のグラウンド。その中心で甲冑を装備した女性が堂々と立っている。アルトリアはあの少女に覚えがあった。ライザー眷属との顔見せの場で、心なしか自分に熱い視線を送っていた。慕情、というよりは尊敬や敬服といった感じなのを覚えていたが、騎士道精神を前面に出して生きているタイプとは思わなかった。

 その名乗りに呼応するかのように、祐斗とイッセーが出てくる。

 

 

『僕はリアス・グレモリーの眷属、『騎士』木場祐斗』

『俺は『兵士』の兵藤一誠だ!』

 

 

 2人の名乗りを聞いた女騎士は嬉しそうに口の端を吊り上げた。

 

 

『流石はかの騎士王の末裔を擁するリアス・グレモリーの眷属悪魔だ。お前達のような戦士がいたことを嬉しく思うぞ。堂々と真正面から出てくるなど、正気の沙汰ではないからな。だが、私はお前達のようなバカが大好きだ!』

 

 

 剣を鞘から抜き放つカーラマイン。やはりアーサー王物語のファンだったか。祐斗も銀光をきらめかせながら剣を抜き放つ。

 

 

『『騎士』同士の戦い、待ち望んでいた。個人的に尋常じゃない斬り合いを演じたいものだね』

 

 

 普段の祐斗とは違う攻撃的な物言い。彼もまた剣に命をかけた『騎士』という事か。

 

 

『よく言った!リアス・グレモリーの『騎士』よッ!』

 

 

 カーラマインが踊るように斬撃を繰り出す。それに対して祐斗も凄まじい速さで応戦する。無論この場にそれを追えないような弱者は居ない。皆、伊達に上級悪魔以上の地位と力を持っているわけではないのだ。

 

 

「相変わらず、あの子ったら剣一筋なのね」

「申し訳ありません、アルトリア卿。彼女は騎士道精神がモットーらしく、私生活にもそれを取り入れるほどストイックなのです。この試合の後、サインなどを強請られるかもしれませんがその時は是非……」

「分かりました。一筆、書かせていただきましょう」

 

 

 『騎士』同士の戦いに置いて行かれたイッセーだが、敵は待ってはくれない。すぐにライザーのもう1人の『戦車』、そして『僧侶』達が立ち塞がる。更にその後ろには『兵士』も。

 

 

「 (残り全ての駒を……一気に勝負を決める気ですね)」

「あの少女は確か……」

「えぇ、我が一人娘のレイヴェルでございます」

「ライザーめが、『将来の為の実地研修だ。それに妹をハーレムに入れることは世間的にも意義がある。近親相姦に憧れたり、羨ましがる者は多い。そいつらを煽る為にも、形として眷属悪魔ってことで』などとふざけた事を申しまして……」

 

 

 今実感した。ライザーとイッセーの根っこは全く変わらない。育ちが違うだけで考えの次元が同じだ。あの二人は間違いなく互いに同族嫌悪の感情をぶつけているのだろう。

 映像ではイッセーもレイヴェルの素性を知ったらしく、驚愕の声を上げている。その上で少なからずライザーに共感する姿勢も見せていた。この件が無ければ、二人は良き友人になれそうである。

 イッセーの相手は『戦車』のイザベラ。所々破けた意匠と仮面が特徴的な女性悪魔だ。そのファイトスタイルはワイルドな見た目に違わぬボクサータイプ。素早いステップと、『戦車』のパワーは中々の脅威と言える。イッセーもなんとか反応して見せているが『赤龍帝の籠手』の倍加が一定まで上がらないと攻撃にも転じられないため、防戦一方だ。

 

 

 ズドンッ!

 

 

『…がっ!』

「ッ……」

 

 

 フリッカーの拳に気を取られたところに切り裂くような蹴りが腹部にヒット、そのままイッセーは何度も地面を転がった。苦しそうなイッセーに僅かに顔を歪ませるが、イッセーはすぐに立ち上がり、追撃を避ける。

 

 

「今の蹴りで勝負はついたとおもっていましたが…どうやらリアス嬢はよく鍛え込んでいる様だ。何よりも体力が凄まじい」

「えぇ。戦いにおいて一番重要なのは体力。瞬間的なパワーよりも、長く戦い続けるスタミナが重要となる。連戦してアレだけの動きが出来るのは、彼が相当な体つくりをしてきたからでしょう。今後が楽しみです」

 

 

 サーゼクスがそう評価を降すと、映像の中に折れた黒い刀身が映り込む。映像が切り替わると、そこには剣を折られた祐斗の姿が。

 

 

『残念だが、私に貴様の神器は通用しない』

 

 

 カーラマインの手には炎の剣が。成程、あれで祐斗の光喰剣(ホーリーイレイザー)を折ったのか。

 

 

『では、僕もこう返そうかな。残念だね。僕の神器はこれで全てではないんだ』

『何?戯言を。グレモリー家の『騎士』よ、見苦しさは剣士としての本質を曇らせて』

『凍えよ』

 

 

 祐斗が低く唸る様に言うと、刀身を無くした剣に光の粒が集まっていく。それは次第に氷塊を形成すると、割れる音と共に彼の獲物が氷の剣と化した。

 

 

炎凍剣(フレイムデリート)。この剣の前では、いかなる炎も消え失せる』

 

 

 そう、祐斗の神器『魔剣創造(ソード・バース)』は様々な特性を持つ剣を創り出す神器。闇だけでなく、氷、風、火、土等々、その種類は多岐にわたる。そして幾ら折られようと再度生成しなおせば幾らでも戦うことが出来る。

 アルトリアの持つエクスカリバーのような『究極の一』に勝つのは難しいが、対応力の高さと手数の豊富さは大きな強みだ。彼が地面に手のひらを向けると、グラウンドから複数の剣が勢いよく飛び出し、カーラマインを串刺しにせんとした。

 

 

『Boost!!』

『来た!ブーステッド・ギア!爆発しろっ!』

『Explosion!!』

 

 

 強大な力の波動がイッセーの手に集まりだす。あの技が来る。アルトリアはその身を顧みず、あの技がまるで無意味かのように突き放してしまったが……

 その瞬間、イッセーとのパスを通じて、彼の心境の一部がアルトリアに流れ込む。

 

 

『(あの時は防がれたけど、今度はそうはいかねぇ。俺の今できる最善の一撃をぶっ放す!!)』

『喰らえ!ドラゴンショットッ!!

 

 

 ドラゴンショットと命名されたあの一撃は真っ直ぐとイザベラに突き進む。威力は低い、避けられた時のことを考えて力を抑えて撃ったのだ。イッセーもまた考えて戦っている。

 案の定、咄嗟にイザベラが避けたことでドラゴンショットは遥か前方へ飛んでいく。そちらにはレプリカのテニスコートがあった。次の瞬間。

 

 

 ゴォォォォォォォンッッ!

 

 

 地を響かせる轟音、巻き起こる突風と共に赤い閃光が映像を染め上げた!皆が手をかざすほどの光が収まったあと、レプリカのテニスコートはその周囲も巻き込んで灰燼に帰していた。

 

 

「なんと……」

「新米の下級悪魔があそこまでの一撃を放てるとは……」

「…『赤龍帝』。かつて我々を脅かした力は健在という事か。いや、これでも覚醒しきっていないのだろう、益々末恐ろしいな」

「はい、サーゼクス様……」

 

 

 その場にいた悪魔全員がその一撃に驚愕する。ある者は純粋に驚き、ある者はかつての大戦を思い出し、ある者はこの先の彼の処遇を考えていた。

 

 その一撃に呆けていたライザー眷属だが、数秒の後にイッセーへの危険度を跳ね上げて襲い掛かる。だが、未だに強化幅を残している今のイッセーは上級悪魔クラスのステータスを維持していた。相手が拳、蹴りのラッシュを放ってくるが、それをガードしてやり過ごし、左拳に力を込める!

 

 

『だっ!』

 

 

 イッセーの拳がイザベラに放たれる。ガードによって威力は抑えられたが、触れてしまった事であの最悪の技『洋服破壊』が発動。その隙を突いたドラゴンショットがイザベラの肉体を包み込んだ。

 

 

「ライザー・フェニックス様の『戦車』一名、リタイヤ」

 

 

 グレイフィアのアナウンスがイッセーの耳に届く。

 

 

『よっしゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!』

 

 

 イッセーがイザベラを倒した。まさか格上の相手に勝つことが出来るとは、思わずアルトリアの顔が緩み、笑みがこぼれる。

 

 

「嬉しそうだね、アルトリア」

「ハッ!?し、失礼いたしました」

「構わないよ、幼馴染の初白星だ。喜ぶのも無理はない」

 

 

 すぐに顔の筋肉を強張らせ、笑みを抑える。これで一人減ったが、未だに数はライザー側の方が多い。朱乃は相手の『女王』とやりあっている。戦況は朱乃有利で進んでいるようだ。こちらは大丈夫だろう。戦況は五分五分に近づいただろう

 

 だが、事態は急変した。レイヴェルがイッセーに呼びかけ、新校舎の屋根を指さす。なんとそこにはリアスとアーシアが降り立っていた。その反対側にはライザーが炎の翼を羽ばたかせながら降り立つ。

 

 

「リアスが動いたか。然もこの状況……」

「もしや、ライザー卿と一騎打ちをする気か?無茶な……」

 

 

 どうやらアーシアを伴い、リアス自らが出てきたようだ。だが、『王』が動くという事はそれだけのリスクを伴う。眷属たちに守られながらの方が安全であり、もし『王』やられてしまえばそこで終わりだ。が、今回の場合は全ての戦力がほぼ一か所に集まっているため、陣地に引きこもるよりはよい判断ではあるだろう。

 

 

「(最も、やられなければの話ですが……)」

 

 

 そんな不安を考えていると、

 

 

『だって、この試合は最初からリアス様に勝ち目なんて無いんだもの。不死身って、それぐらいあなた方にとって絶望的なのですわよ?』

 

 

 ライザーの妹がそう漏らす。2人の実力差を考えれば確かにその通りだが、アルトリアは直感からこの言葉の裏に何かを感じた。言葉には出来ない。だが何か、別の意味を含んだような言い方に違和感を感じる。すると下僕悪魔達がイッセーを取り囲んだ。もはや手加減はしないと言わんばかりに『騎士』と『兵士』二人がイッセーに連携攻撃を掛ける。一人一人であればイザベラに比べれば大したことはない。が、複数人で取り囲めば話は別だ。

 

 

「成程、彼女は軍師タイプか」

「そのような高尚なものではございません、サーゼクス様。あの子はただただ自分の手を汚したく無いだけの怠け者でございます」

「いや、有能な怠け者というものはいるものだ、フェニックス夫人。ファルビウムなんかが正にそれだよ」

 

 

 フェニックス卿の言葉にサーゼクスは魔王の一人を引き合いに出す。ファルビウム・アスモデウス、魔界の軍事担当である四大魔王の一人。サーゼクスと同じく旧72柱出身で魔王の名跡を継いだ悪魔だ。アルトリア自身、中々会う機会の無いためよくは知らないが、『働いたら負け』を標榜しているらしい。

 

 彼女の指示によって残り眷属たちの動きが活発化する。もっとも、これはあくまで本気を出しただけ。彼女の指揮が凄まじいわけでも、なにか補助魔法を行使したわけでもないが、彼女の指示は的確であり、結果イッセーは倍加が溜まるまでの時間をずっと動き続け、消耗しダメージを受け続けていた。

 屋根の上では、リアスとライザーが互いの魔力をぶつけている。性質としては滅びの魔力が上、しかし練り上げられたフェニックスの炎はリアスに少しずつダメージを与えていく。傷はアーシアが治せるが、それでも消耗は避けられない。形勢は少しずリアス側不利になっていった。

 

 そんな中でイッセーは悔しさを噛みしめていた。

 

 

『(部長は劣勢、木場もすぐには動けない、アーシアも()()()しか攻撃方法が無い。俺はこうしてリンチ……ダメだ。足に力が入らない。頭もボーッとしてきた、ダメージを受けすぎた…。クソ!此処で意識を失ったら、絶対にリタイヤだ!そんなの嫌だ!部長の力になれずに負けるなんて嫌だ!)」

 

 

 なぁ、ドライグ。俺が求めるなら、お前は力を貸すんだろ!聞こえてるなら、応えろ!

 

 

『俺に力を貸しやがれ!ブーステッド・ギアッ!』

『Dragon booster‼』

 

 

 赤と緑の閃光を放つ神器。しかし、イッセーにはまだ足りなかった。

 

 

『もっとだ!あの時はアーシアだった!今度は部長だ!俺の想いに応えてみせろ!ブーステッド・ギアァァァァァァァッッ!』

『Dragon booster second Liberation‼』

 

 

 今まで耳にしたことのない音声が籠手から発せられ、イッセーの左腕に変化が訪れる。赤いオーラが左腕を覆い、籠手が徐々に姿形を変質させていった。オーラが消え去ったとき、纏う籠手の姿は。

 

 

「籠手が…」

「…変わった?」

「ほう、神器が新たな段階に至ったのか……」

 

 

 並外れた力の結晶と称された籠手は、新たな姿となっていた。甲の部分にあった宝玉の他に、もう一つの宝玉が肘側にも現れ、全体のフォルムもやや刺々しくなった。

 イッセーからのパスを通じてアルトリアにも力と情報が流れ込む。この力は……そうか、それが新しい力の使い方…。成程、これならこの状況を打開できる。

 

 

『木場ァァァァァァッ!お前の神器を解放しろォォォォォッ!』

 

 

 イッセーの叫びに祐斗は当惑するが、彼を信じると言わんばかりに剣を地面に突き刺し高らかに吼える!

 

 

『魔剣創造!』

 

 

 ギャァン!

 

 

 グラウンドが光り輝き、いくつもの魔剣が地面から姿を現す。そしてイッセーは魔法陣で光り輝く地面に拳を放ち叫んだ!

 

 

「ブーステッド・ギア!第二の力!」

 

 

 それは赤龍帝の第二の力。高めた力を他者に託し、その力を何倍にも高める。

 

 

赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)!」

Transfer‼

 

 

 ギィィィンッッ‼と、金属の激しくこすれる音が一帯に鳴り響き、運動場全域が刃の海と化した。いたるところから様々な形状の刀身が天に向かって鋭く飛び出している。辺り一面が魔剣の森と言うべき状態になっていた。

 

 

「おぉ……」

「他者の力も倍増させる。これもドラゴンの力か……」

 

 

 ライザーの眷属達が幾重もの魔剣に貫かれている。瞬時にその体が光出し、このフィールドから透けて消えていく。

 

 

「ライザー・フェニックス様の「兵士」二名、「騎士」二名、「僧侶」一名、リタイヤ」

 

 

 グレイフィアのアナウンスを聞き、イッセーはその場でガッツポーズを取った。第二の力『譲渡』、これがあれば眷属の能力を飛躍的強化する事が出来る。滅びの魔力、雷、回復、魔剣、そして◾️◾️や彼の神器も。それだけでは無い、アルトリアの持つ現状最大の切り札もその威力を何倍にも高められるだろう。

 そして今の攻撃で殆どの眷属を倒せた。これでライザー側はライザー本人と妹、そして『女王』のみ。このまま押し切れれば、あるいは……

 

 

『イッセーくん、驚いたよ。この力は…』

 

 

 祐斗は困惑しながら地面から生えている魔剣群を見渡していた。自分の能力が思っていた以上の効果を出して驚いている様子だ。

 

 

『どうだ!これでお前の魔剣をもっと強化して…』ドォォォンッ!!

 

 

 突如響く爆発音、振り返るとそこには息を切らし、巫女服をボロボロにした朱乃が地面にへたり込んでいた……




 今回は客席からみるレーティングゲームをイメージして書いてみましたので、大分心情部分などが削られています。見てる側からは選手の内面なんて分からないので、あくまでも流れを書くだけにしました。

 次回は原作とはまた違う展開が待っていますのでお楽しみに。
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