赤龍帝と騎士王の現し身   作:ファブニル

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 今回で第二章は終わりとなります。前回の改変が思った以上に受けてて嬉しい限りです。

 まだまだ暑い日が続きますが、みなさん暑さ対策は十分にお済みでしょうか。筆者も暑さに負けないよう心掛けて参ります。

 よろしければ、お気に入り登録や感想をお願いします。

 それでは第十六話、どうぞ!


勝利と褒美と

『ライザー・フェニックス様、戦闘不能。よってこのゲーム、リアス・グレモリー様の勝利となります』 

 

 

 イッセーの拳がライザーを降した。グレイフィアのアナウンスがリアスの勝利を宣言する。徐にライザーへと向かうイッセー。それを止める影が一つ。ライザーの妹、レイヴェル・フェニックスだった。無言でイッセーを睨み、何かを訴えようとしている。

 

 

「落ち着けよ。ゲームは終わったんだ。これ以上、そいつを殴る気はないよ。ただ、」

 

 

 イッセーはドラゴンの左腕をライザーの妹に突き出し言った。

 

 

「ライザーにも伝えとけ。この結果に文句があるなら、俺の所へ来い。いつでも相手になってやる!」

 

 

 イッセーの迫力に押されたのか、彼女は後ずさりしながらぺたりと座り込んでしまった。言うべきことは言った、とばかりにイッセーは踵を返す。そこにリアスが降り立った。

 

 

「勝ちましたよ、部長。帰りましょう」

「…イッセー」

 

 

 傷を負いながらも、なお屈託のない笑顔を浮かべるイッセー。その姿は、確実にリアスの意識に変化を齎していた。

 

 

◆ 

 

 

 会場の一室。最VIPルームにて。

 

 

「見事なゲームだった。ドラゴンの威、存分に見ることが出来たよ」

 

 

 サーゼクスは満足げな笑みを浮かべる。彼自身、愛しい妹リアスの意志を無視した今回の婚約と、婿たるライザーの素行には不満を持っていた。しかし魔王の立場上、私事で介入することは出来ない。最悪このゲームに負けても挽回できるように手筈は整えていたが、リアスが勝った以上それも不要となった。

 対する両家当主はやや沈鬱な面持ちである。

 

 

「グレモリー卿。今回の婚約、このような形になってしまい、大変申し訳ない。無礼承知で悪いのだが、今回の件は」 

「みなまで言わないでください、フェニックス卿。純血の悪魔同士、いい縁談だったが、どうやらお互い欲が強すぎたようだ。私の所も貴方の所もすでに純血種の孫がいる。それでもなお欲したのは悪魔故の強欲か。それとも先の戦争で地獄を見たからか」

「あなた……」

「…いえ、私もあの子に自分の欲を重ねすぎたのです。一誠君と言ったかな、彼にも礼を言いたかった。息子に足りなかったのは敗北だ。あれは一族の才能をあまりにも多く過信しすぎた。これは、息子にとっていい勉強になっただろう。フェニックスは絶対ではない。これを学べただけでも今回の婚約は十分でしたよ。なぁ」

「そうですわね。あの子にも、レイヴェルにもよい薬になると良いのですが……」

 

 

 それぞれの家に、それぞれの事情がある。だが両家とも今はこの破談を噛みしめ、次につなげる事だけを考えていた。

 

 

「しかし、リアス嬢はいい下僕を持った。これからの冥界は退屈しないでしょうな」

「えぇ、彼と彼女の存在はこの冥界に大きな影響を与える気がします」

「赤い龍ウェルシュ・ドラゴンに騎士王ペンドラゴン。忌々しいドラゴンとかの英雄の末裔がこちら側に来るとは、どちらも実際目にするまでは信じがたいものでした」

「となると、次はやはり」

「ええ、でしょうな。いや、すでにいるのやもしれません」

「白い龍バニシング・ドラゴン。赤と白が出会うのは時間の問題か。もしかすると『卑王』、いやかの『終末装置』も存在するのでは……」

 

 

 

 

ゲーム終了後、イッセーたちはとある部屋に来ていた。そこは病室。治療が終わった小猫と朱乃の様子を見るためだ。

 

 

「二人とも、怪我は平気かしら?」

「あらあら、部長。問題ありませんわ、小猫ちゃんなんてほらこの通り」

 

 

 朱乃の視線の先、そこではアーシアに切ってもらった果物を食べる小猫の姿があった。因みに既に林檎だけで4個目である。

 

 

「それだけ食べれれば問題ないわね」

「しっかし凄いですね。もうここまで回復するなんて」

「ここは魔王様直下の総合病院だからね。最新鋭の機器と優秀なスタッフが揃っているのさ」

 

 

 二人を治療したのはサーゼクス・ルシファー記念総合病院のスタッフだ。その腕の高さは今の二人の回復具合を見れば一目瞭然だろう。

 

 

「快復したようで何よりだ」

 

 

 病室に入ってきた、三人の人影。一人はグレイフィア、一人はアルトリア、あと一人はリアスに似た紅髪を備えている男性だった。

 

 

「お兄様!」

「「サーゼクス様!」」

「え、って事はこの人が……」

「初めまして、兵藤一誠君。私の名はサーゼクス・ルシファー。四大魔王を拝命しているリアスの兄だ」

「え、えぇぇぇぇ「静かに」っ痛!?」

 

 

 あまりの衝撃に叫びそうになるのを咄嗟に出てきたアルトリアに止められる。驚くのも無理はない。話にだけ聞いていたリアスの兄、魔王サーゼクスに会うことが出来たのだから。

 

 

「素晴らしいゲームを見せて貰った。あれほどの逆転劇は本家レーティングゲームでもそうそうお目に書かれる物じゃない。私も熱くなったよ」

「あ、ありがとうございます!」

「君のような悪魔がリアスの側にいて貰えると助かる。これからもリアスの事をよろしく頼む」

 

 

 そういってサーゼクスが合図をすると、グレイフィアから朱乃と小猫に見舞いの品が送られた。

 

 

「それでは失礼させてもらう。リアスの眷属諸君、今後に期待しているよ。アルトリア、君は残ると良い。積もる話もあるだろうからね」

「ハッ」

 

 

 そういってサーゼクスとグレイフィアは退室していった。残ったアルトリアが一歩前に出る。

 

 

「皆さん、この度の勝利おめでとうございます。指導を受け持った身として、とても鼻が高いです」

「ありがとう、アルトリア。あの戦いに勝てたのは間違いなく貴方のおかげよ」

「サンキュー、アルトリア。あの時バランス・ブレイクを使えたのは、多分お前が教えてくれたからだよ」

「いえ、貴方であれば遅かれ早かれあの高みには登り詰めていました。現に貴方は自力で赤龍帝第二の能力を発現させている。例え代償を払った上だとしても、貴方の功績は誇るべきものです」

 

 

 謙遜するアルトリア。だが彼女がいなければ、負けていたかもしれなかった事は眷属の誰もが思っていた。

 

 

「イッセーの活躍も凄まじいものでしたが、私としてはアケノ、貴方を讃えたい。フェニックスの涙によく気が付きましたね」

「ふふふ、貴方のお陰で不意打ち対策が出来ました。勝手に動く悪い子はちゃんと見張っておかないといけませんものね♪」

 

 

 朱乃のドSぶりは健在だった。今後あるであろうレーティングゲームで彼女に当たる相手が今から心配になってくる。対する小猫はやや沈んだ顔だったが、下手な慰めはかえって本人を傷つけるだろう。リアスはパン!と手を叩く

 

 

「さてみんな。これで私の婚約話はおしまい、晴れて自由の身よ。みんな本当に、本当にありがとう。最高の眷属を持てて、私は幸せ者よ」

「部長……俺も最高の主に仕えられて光栄です!」

「フフフ。それじゃあ帰りましょうか。朱乃と小猫も早く傷を治して戻ってきてちょうだい、待ってるわ」

「「はい、部長」」

 

 

 こうしてリアス達は人間界へと戻る事にした。彼らは学生、また明日からは学校に通わなくてはならない。魔法陣を通り、人間界へと帰還する。行き先はオカルト研究部の部室だった。

 

 

「…イッセー、貴方だけ少し残って頂戴」

「?ハイ…」

 

 

 皆が帰ろうとする中、リアスはなにやら覚悟を決めたような顔でイッセーを呼び止めた。その様子を見てアルトリアは疑問に思うアーシアを押しながら部室を出る。祐斗は既にクールに去っていた。

 

 

 ソファーに座ったリアスは自身の隣をポンポンと叩く。座りなさいというジェスチャーに従い、イッセーはリアスの隣に座った。スッ、とイッセーの頬にリアスの手が触れた。

 

 

「バカね、こんなになるまで戦って……」

 

 

 苦笑いしながら、そう言ったリアスの表情はどこか安堵したような様子だった。他の眷属たちの前で張っていた見栄を解き、やっと辛いものから解放されたという感じに見える。

 

 

「ーっ」

 

 

 リアスはイッセーの左腕に視線を移した時言葉を失う。沈痛な面持ちでイッセーの左腕をさすっていた。当然だ、袖と神器で隠れているが、彼の左腕は赤い鱗に包まれ、鋭い爪むき出しの異形なものと化しているからだ。

 

 

「腕を。腕をドラゴンに支払って、あの力を借りたのね?」

「はい。お得だったんですよ。俺みたいに才能が無い奴が腕一本で最強の力が手に入ったんです!お陰でライザーも倒せたし、部長も助けられました!」

 

 

 イッセーの無理やりな笑みに、リアスは目元を悲しそうに細めるだけだった。

 

 

「もう、この腕は元に戻らないのよ?」

「あー、ちょっと困りましたね。コスプレアイテム!で学校じゃ通じませんよね。いやー、どうしたものか」

「アーシア、これを知ったらきっと泣くわね」

 

 

 優しいアーシアであれば、イッセーが異形と化した事を悪く思う事は決してないだろうが、イッセーの決断に涙を流すだろう。

 

 

「…今回は破談にできたかもしれない。でも、また婚約の話が来るかもしれないのよ?こんな事続けたら」

 

 

 悲哀に暮れているリアスにイッセーは笑って答えた。

 

 

「次は右腕を支払います。その次が来たら、今度は目をくれてやります。何度でも何度でも部長を助けに行きますよ。俺にはそれぐらいしかできません。でも必ず貴方を助けに行きます。俺はリアス・グレモリーの『兵士』ですから」 

「ーっ」

 

 

 瞬間、イッセーの唇が塞がれた。唇から伝わる柔らかい感触、リアスがイッセーの首に手を回し、唇と唇を重ねていた。それは一瞬のものではなかった。一分ほど唇を重ねた後、リアスの唇が離れていく。そして、最後にふっと笑う。

 

 キス、キスである。学園中の憧れの的、絶世の美女というべきリアスからのキスである。イッセーの脳に電流が走り、爆発したかの様な衝撃が広がる!

 

 

「私のファーストキス。日本では、女の子が大切にするものよね?」

「え、ええ、そうですけど!って、ファーストキスゥゥゥゥゥ⁉︎」

 

 

 イッセーは心底驚いた。何故ならファーストキスといえば女子にとって最大級に大切なものであることは彼でも知っていた事だからだ。そんな大切なものが今、自分に捧げられた。

 

 

「い、い、いいんですか!お、俺なんかで?」

「貴方は私と唇を重ねるだけの価値のある事をしたのだから。ご褒美よ」

 

 

 ニッコリ微笑みながら言ってくれる。この瞬間、この笑顔とキスの為に頑張ってきたかいがあったとイッセーは今人生、いや悪魔性の頂点にいた。

 

 

「そうだわ、イッセー。一つお願いがあるのだけど……」

 

 

 

 

「と、そのような感じで私、リアス・グレモリーもこの兵藤家に住まわせてもらう事となりました。不束者ですが、どうぞよろしくお願いしますわ。お父さま、お母さま」

 

 

 兵藤家のリビング。イッセーの隣でリアスが両親に挨拶をしていた。その隣ではアーシアがリアスの突然の同居に驚いていた。あの一件のあと、リアスは突然イッセーの家に住むと言い出した。キスの責任というべきか、押しかけ女房と言うべきかリアスは半ば強引に話を進めてしまった。

 曰く「下僕との交流を深めたいのよ」との事だが、その内皆が我が家に住み着きそうだな、とイッセーは思ってしまった。

 

 結局その後グレモリー家とフェニックス家の話は破談となった。ライザーは生涯初めて味わった敗北によるショックで寝込んでしまったらしく、恐らくリベンジ戦はないだろう。

 

 

「まあ、どうしましょう。アーシアちゃんにリアスさん、娘が二人もできちゃうのね」

 

 

 イッセーの母親はアーシアと同居以降、アーシアを娘の様に可愛がり始めていたので、女の子が増えることは賛成の様子。イッセーの父親に至っては大号泣している。

 

 

「うんうん。男の夢だよな。女の子がいっぱいって!俺の若い頃の夢をお前なら叶えるかもしれないな!」

 

 

 この子にしてこの親ありであった。彼は間違いなく兵藤一誠の父親である。

 因みに鎧の代償にしたイッセーの左腕はだが、未だにドラゴンの腕だ。しかしアルトリアが対処法をドライグから聞き出した事で、日常では人間の腕に戻っていた。どうやらドラゴンの魔力を散らせることでドラゴン化を防ぐらしい。ドラゴンの力を散らす作業は数日毎にやらねばならないのだが、それを怠ると元のドラゴンの腕に戻ってしまうらしく、朱乃やアルトリアが持ち回りで対処する事になった。

 

 

「さあ、イッセー。ご両親の許可は得たわ。これで今日から私もこの家の住人ね。さっそく、部屋へ荷物を運んでくれるかしら?」

 

 

 リアスが紅の髪を揺らしながら、高らかにイッセーへ命令する。

 

 

「は、はい!」

「イッセーさん、私もお手伝いします」

「アーシアはいいよ。休んでてくれ」

「…あぅぅ、イッセーさんとの二人っきりの時間も少なくなるかもしれないです…。でも、部長さんに習ってイッセーさんにアタックすれば…」

「え?なにか言った?」

「何でもありません」

 

 

 イッセーが聞き返すとアーシアは俯いてしまった。

 

 

「ほら、イッセー。その装飾品はこちらよ。で、その荷物はそっちよ」

 

 

 リアスに割り当てられた部屋に荷物を運ぶと早くも指示が飛んでくる。

 

 

「はーい」

「イッセー、これが終わったらお風呂に入りたいわ。…そうね背中、流してあげるわ」

「マジっすか⁉︎」

「わ、私もイッセーさんの背中を流します!」

「えぇ!?」

「なら、皆で入りましょっか!」

「家の風呂はそんな大きくありませんよ!?」

 

 

 こんなことが毎日起こるのかとイッセーはビックリ仰天した。リアス住むことになり、彼の日常はどんどん賑やかになりそうである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦争だ。

 

 

 戦争がしたい。あの時の続きを、あの甘美にして糞の様な戦争がしたい。天使がくたばり、悪魔が消し飛び、堕天使が息絶える。あの戦いに決着を付けたい。

 

 しかしアザゼル達は完全に腑抜けてしまった。かつてはアレほど神を倒してその仕組みを解明してやると意気込んでいたのに。

 

 多くの同胞達の死が、奴等を鈍らせた。昔のやつならアイツらを、アルビオン達を使って悪魔や天使に喧嘩を売るくらいはしただろうに。

 

 

「やはり俺が立たねばならんか。しかしヤルにしても理由がいる。ミカエルやサーゼクスが動かざるを得ないような………そうだ、アレがある。あの聖剣を使えば良い」

 

 

 アレには一杯食わされた。まさか全く別の聖剣とは思わなかった。あの点に関しては実に滑稽で憐れだったが、今は使わせて貰おう。それに風の噂で本物の聖剣がサーゼクスの妹の治める地に流れ着いたと言う。おあつらえ向きだな。

 

 

「確か聖剣計画の責任者がウチに居たはずだ、ソイツを焚き付けて……使い手もいるな。確かシグルド機関出身の奴が………」

 

 

 暗闇の中で思案に浸る男の顔は、悪戯を思いついた幼童の様な、歴戦の軍師の様な顔をしていた。彼の名は、コカビエル。堕天使勢力『神の子を見張る者』の幹部の1人である。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんと、聖剣が盗まれたとは………」

 

 

 雲海が浮かぶ、神聖な空気の漂う世界で1人の熾天使が報告を受けていた。彼の名はミカエル。天使達を率いるリーダーである。

 

 

「アレは、曲がりなりにもエクスカリバーの名を冠する物。それが盗まれたとなると、動かざるを得ませんか。犯人は?」

「は、報告によれば堕天使。それも幹部クラスと」

「コカビエルですね。今の彼らで冷戦状態を破壊しようとするなど彼しか考えられない。すぐにエージェントの派遣を、コカビエルの行き先も調べなさい」

「ハッ!」

 

 

 

 

「イリナ。報告は受けているな?」

「えぇ、まさか聖剣が盗まれたって。然も行き先が日本の駒王町だなんて」

「確か昔イリナがいた町だったな。散々聞かされた幼馴染がいると言う……」

「そうよ!あぁ、主よ。彼と再会出来る事に感謝いたします……」

「会えるとは限らないだろう。それに向こうは忘れてるかもしれんぞ」

「そんな事ないもん!イッセー君は絶対覚えてくれるもん!」

 

 

 時代が動き出す。聖剣の解放は近い。




 これでフェニックス編は終わり。次章からエクスカリバー編に移ります!
 オリジナル展開マシマシで行くので、更新が遅れるかもしれませんがお許しください!
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