これに半ば命かけてた時期あったからなぁ。こっからモチベ保てるかが本番。
という事で第二話どうぞ!
夜の繁華街、とあるビルの屋上。ネオンが眩しいビルの一角にあるベンチに座りながらアルトリアはリアスからの報告を受けていた。あの後、イッセーは幸いにも一命を取り留めた。それは即ち完全に悪魔になった証拠である。悪魔の持つ驚異的な生命力が彼を生かしたのだ。通信を切り、またため息。もっともこれは安堵のため息だが。
「何とかなったのは良い事ですが、彼を此方側に巻き込んでしまいました」
『マイロード、過ぎた事を言っても仕方ないことだ。かの龍をその身に宿す以上、いずれは起きた事さ。それよりも感じるかい?堕天使の気配がここ最近強くなっている』
あの事件から町に妙な気配が立ち込め始めた。あの堕天使とはぐれエクソシストの出現に前後して、それまで路地裏にまで行かなければ感じなかった天使系の光の魔力を感じるようになっている。黒い影もチラホラと見る様になった。彼らは間違いなくこの街で「ナニカ」を始めようとしている。
「そう遠くない内に、彼等と刃を交える事になりそうですね………」
兵藤一誠が堕天使に初恋を散らされた翌日。アルトリア・ペンドラゴンは兵藤家の前に来ていた。表向きは幼馴染がおかしな行動をしない為の監視。裏は後任であり、上司と呼べる少女がおかしなことをしないか、悪魔の身体に幼馴染が振り回されないかの監視である。
アルトリアが見上げる一室。あの部屋に今、イッセーとリアスが寝ている。恐らくは裸で。リアスは服を着ずに寝る派である。駒王町の引継ぎの日、親睦を深める為にと何故か一緒に寝ようと誘われたが、自分は眷属ではないと断った。アレは彼女からすればからかい混じりのスキンシップであるが、男、特にイッセーには目に毒であろう。
「ウワァァァァ!?」
「やはり、ですか」
どうやら予感は当たったようである。幼馴染が間違いを犯さないよう構えつつ、アルトリアは二人が来るのを待った。
◆
「な、アレは!?」
「リアス先輩!?」
「なんで兵藤なんかと一緒に登校してるんだ!?」
「アイツぅ………我らが姫騎士だけではなく二大お姉さまの片割れをも毒牙に掛けやがったのか………」
「そんな!?そんなの嘘よ!!?」
「許さねぇ、ぜってぇ許さねぇぞ………!!」
校門を抜けた途端、周囲からの驚愕と嫉妬、怨嗟の視線がイッセーを突き刺す。片や『二大お姉さま』として絶大な人気を誇るリアス。片や学園を護る姫騎士として感謝と尊敬の的となっているアルトリア。この学園においてトップクラスに高い人気を誇る女子二人と歩いていれば、一般生徒がこういった反応を示すのも当然と言えば当然である。最も普段から慣れているアルトリアだけでなく、リアスすら気にする様子を見せていないが。
教室に入った後もイッセーはいつも以上に厳しい視線を向けられていた。生徒だけでなく、教師にもである。休み時間になれば、クラスメイトだけでなく他クラスの生徒すらイッセーを問い詰めていた。当の本人は悪魔化による影響で日光にけだるげに対応していただけに、その態度にキレた男子学生の拳を、アルトリアが防ぎ全員を一喝した事でその場は事なきを得た。
そんな事がありつつ、その日最後の授業が終わったところで出口辺りが騒がしくなる。黄色い悲鳴が木霊し、女子の間を割って一人の男子生徒が現れる。
「失礼するよ、兵藤一誠君っているかな」
「おや、貴方が遣いですかユウト。イッセーならあそこに」
「ありがとう」
木場祐斗。アルトリアと並んで『駒王学園の二大騎士』と称される男子生徒である。その甘いマスクと礼儀正しい態度は、さきほどからクラスが騒がしくなった通り女子生徒の憧れの的である。最もアルトリアにとってはリアスの眷属の中では一番仲の良くない存在ではあるが。
「ん、男の方のナイト様が俺になんの用があるんだよ」
「僕は単なる伝言係だよ。リアス・グレモリー先輩から、旧校舎に来て欲しいってね」
裕斗に連れられ、イッセーとアルトリアは旧校舎へと向かった。学園の裏にポツリとたたずむ旧校舎。その古めかしい外見とは異なり、中は清潔且つ割れガラスもない程度には手入れが行き届いている。その意外さにイッセーはキョロキョロと辺りを見回す。
「君を呼んだのは他でもない。君を僕たちの部活『オカルト研究部』に招こうと思ってね」
「オカルト研究部ぅ?」
「意外に思うかもしれませんがイッセー、顧問こそいませんが部員五名のれっきとした部活なのですよ。私も時々手伝いに来ています」
「へぇ~、そうなのか」
「と、着いたよ。ここがオカルト研究部の部室だ」
旧校舎の一室、かつては校長室に使われた格式ばった扉に、『オカルト研究部』の表札が付いている。
「部長、失礼します」
引き戸の前から祐斗が中に確認を取ると、「ええ、入ってちょうだい」とリアスの声が聞こえてくる。祐斗が戸を開け、あとに続いて室内に入る。室内には至るところに魔法魔術の文字が書き込まれていた。室内の中央には教室の大半を占める巨大な魔方陣。他にもソファーやデスクが何台か存在し、高級な調度品で彩られている。
「紹介するよ、こちらが兵藤一誠君」
裕斗はソファーで羊羹を食べていた部員の一人、一年生の塔城小猫にイッセーを紹介する。小猫は一礼だけすると、すぐに甘味補給に戻った。
すると、部屋の奥からシャワーの音がする。そこには二大お姉さまのもう片割れ、三年生の姫島朱乃が控えていた。そしてシャワーカーテンの先、影のみ映るのが、リアス・グレモリーである。
「部長、お召し物を」
「ありがとう、朱乃」
シャワーを止め、タオルで髪や身体の水分を拭く。朱乃はカーテンの隙間から畳んであった学生服を差し入れると。こちらに向かってくる。
「初めまして、兵藤一誠君。姫島朱乃と申します」
「あ、どうも。兵藤一誠です」
朱乃の物腰柔らかな態度に頬を緩ませるイッセー。今日日珍しい素であらあら、うふふというお姉さんにデレデレなイッセーを、アルトリアは肘で小突く。
「待たせてしまってごめんなさい。兵藤一誠君。いえ、イッセー。オカルト研究部は貴方を歓迎するわ」
着替えたリアスがカーテンを開け、そのまま一番大きなデスクの前に立つ。
「単刀直入に言うわ。私達、悪魔なの」
「あ、悪魔?」
「そう、このオカルト研究部は私リアス・グレモリーと私の眷属たちが活動する為の仮の姿でもある」
リアスの言葉に疑問符を浮かべるイッセー。その様子を見たリアス達は論より証拠と、背から黒い翼を広げた。堕天使のカラスのような翼とは違い刺々しく、皮膜の張られた蝙蝠の様な、正に悪魔の翼と呼ぶに相応しい出で立ちである。
「つ、翼。て俺にも!?」
「今のは私からあなたの身体に命令を飛ばして出したの。背中に軽く力を加えれば出せるわよ」
「へぇ~、てことは、アルトリアも……」
「いいえ、私は悪魔ではありません。歴とした人間ですよ」
「彼女は私達悪魔の協力者、正確にいえば私ではなく、私のお兄様に仕えているのだけど」
「リアスの眷属となったイッセーに改めて紹介を。魔王サーゼクス・ルシファーが食客、グレモリー領駒王町が守護騎士『
「え、あ、こちらこそよろしくお願いします?」
先日リアスに見せた物と同じ、見惚れる所作によって礼をするアルトリア。それに対しイッセーはぎこちないながらも頭を下げた。魔王、という言葉に疑問を持ちつつ、幼馴染が凄い存在なんだという事だけは理解したイッセーであった。
「話を戻すわね。私たち悪魔は人間と契約して代価をもらい、力を蓄える。貴方が持っていた『あなたの願い、叶えます』ってチラシ、アレは簡易的な契約書になっていてアレを通じて願いをかなえるの。今回は貴方の身を対価に命を救ったってところかしら」
「へぇ~、じゃ、じゃあ昨日の夕麻ちゃんは?」
「あれは堕天使。元々は神に仕えていた天使だったんだけれど、邪な感情を持っていたため、地獄に堕ちてしまった存在。私たち悪魔の敵でもあるわ」
「私たち悪魔は堕天使と太古の昔から争っているわ。冥界──人間界で言うところの『地獄』の覇権を巡ってね。地獄は悪魔と堕天使の領土で二分化しているの。悪魔が人間と契約して代価をもらい、力を蓄えるなら、堕天使は人間を操りながら己の欲望を満たし、悪魔を滅ぼそうとする。ここに神の命を受けて悪魔と堕天使を倒しに来る天使も含めると三すくみ。それを大昔から繰り広げているのよ」
この三すくみは俗に聖書の三大勢力とも言われる。人類世界にその信仰を広げた聖書の教えに属する彼等を指すの丁度いい呼び名と言えよう。
「ここまではまず触りの範囲。ここからは貴方にも本格的に関わってくる話題よ」
そういってリアスは一枚の写真を取りだす。そこにはデートしているイッセーと天野夕麻の姿が映し出されていた。
「貴方もあの日、黒い羽根を見たでしょう?彼女は堕天使、天野夕麻は仮の姿ってわけね」
「仮の、やっぱりですか」
「あら、驚かないのね」
「一緒に告白を聞いたダチに聞いても全く覚えてなくて。まるで最初から存在しなかったみたいな感じがして、おかしいとは思ってたんすけど。そっかぁ、やっぱ堕天使かぁ」
認めたくなかった、という様子のイッセー。その様子を見かね、アルトリアが彼の手に自身の手を重ねる。そんな姿にイッセーも心配させまいと笑顔を浮かべる。
「堕天使は貴方に眠るとある力に気付いて、貴方を殺そうとしたの。それこそが『
「
「大半の
そう言われてイッセーは手を出す。
「貴方が一番強くイメージできる強者は?」
「え、『ドラグ・ソボール』の『
「そう、ならそれをイメージしながら手に力をこめなさい。神器の力はイメージの力。貴方の強いイメージが形となって現れるの」
「な、なるほど。おーし、ドラゴン、波ァァァァッ!」
ドラグ・ソボールの象徴とも言うべき必殺技の真似をしたイッセー。しかし何も起こらない。
「あ、アレ?もっかい!波ァァァァッ!!」
「何も起きませんわね」
「肩透かし……」
またしても何も起こらない。部室内が微妙な空気に包まれる中、小猫からの容赦ない一言にイッセーは崩れ落ちる。するとアルトリアが立ち上がり、イッセーの前にしゃがみ込む。
「イッセー、私にも手伝わせてください。」
「アルトリア?」
アルトリアはネックレスを取り外し、それを手に巻き付けると、イッセーの手を握りながら魔力を高める。彼女の力と彼の力には古い繋がりがある。その縁を辿りながら彼の意識の底、魂に眠るかの龍にアクセスし、覚醒を促す。
「もう一度、イッセー。強くイメージしてください」
「お、おう。スゥーーーー……ドラゴン、波ァァァァァァッ!!」
イッセーが再び左腕に力を込めた瞬間、二人は奥底から何かが沸き上がってくるのを感じた。次の瞬間、イッセーの左手の甲に緑色の玉が浮かびあがり、そこを中心にイッセーの左腕を赤い装甲が覆っていく。光が収まるとそこには真っ赤な籠手が装着されていた。
『Dragon Booster!!』
「こ、これが
「いいえ、コレはまだ力を抑えた形態です。今はまだこの程度、これ以上は貴方の身体には負担が大きすぎます。心身を鍛えれば、自力で本来の姿に至れるでしょう。」
「鍛えるかぁ………走り込みでもしてみるかなぁ?」
「良いわねそれ。イッセー!主として最初の命令を下すわ。鍛えなさい、その
「は、はい!!リアス先輩!!」
リアスからの最初の命令にイッセーはビシッっとした敬礼で答える。
「フフフ。リアス様、なんて呼ばないで私の事は『部長』って呼びなさい。改めて、オカルト研究部部長、リアス・グレモリーよ」
「同じくオカルト研究部副部長の、姫島朱乃です。よろしくお願いしますね♡」
「同じくオカルト研究部部員、木場祐斗。よろしくね、イッセー君」
「同じくオカルト研究部、塔城小猫。よろしく、です」
「は、はい!オカルト研究部新入部員、兵藤一誠!よろしく、お願いします!」
こうしてイッセーは晴れて、オカルト研究部、グレモリー眷属の一員となった。そんな姿に、少し嬉しいような、悲しいような表情を見せるアルトリアであった。
アルトリアなら龍の籠手状態から一気に飛んで赤龍帝の籠手にする事も可能でしたが、それではまだキツいと考えて敢えてセーブしてあります。
ドライグ的には懐かしい気配に飛び起きた所に蓋された感じ。
段階を踏むって大事ですからね。最初から強い力を持つより段階を踏んだ方が良いと判断しました。