今回遂に教会から2人が来ます。今考えるとゼノヴィアの言ってる事だいぶヤバいですよね。あの発言、人間として見てないんですもの。上手いこと表現出来ていれば良いのですが。
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それでは第二十話、どうぞ!
祐斗を助けた翌日も、アルトリアは街の見回りをしていた。あの一件があった以上この街に高位の堕天使が潜んでいる事は確実だ。然もカレトヴルッフの欠片であるエクスカリバーを所持しているのだからその危険性はレイナーレ達とは比べ物にならない。
今アルトリアが歩いているのは街の中央部、それなりに発展しており人も多い。こんなところで凶行におよぶとは考えにくいが、警戒しておくに越した事はないだろう。
そんなことを考えながらすこし脇道に逸れてみる。小腹がすいてきたし何処かに適当な店は無い物か……
「「!」」
アルトリアの戦士の勘か、或いは聖剣が惹かれたか。前方数十メートル先のフード姿にアルトリアの意識が向いた。人除けの魔術が施された白いフードを被り、電柱にもたれ掛かる人物が一人。体格からしてアルトリアと同じくらいだろうか、フードの隙間から全身タイツのような服装が見て取れる。
その少女の奇特な見た目以上にアルトリアの気を引いたのは彼女の持っていたもの。かつペンドラゴン家から差し出されたカレトヴルッフの成れの果てであるエクスカリバーを彼女が持っていたのだ。
「(然もそれだけではない。亜空間に格納されているのか見えないが、彼女から漏れ出るこの圧倒的オーラは間違いなく高ランクの聖剣……)」
「(この気配、聖剣か?しかしこれほどの存在感を、まさか彼女が例の……)」
目があったのは一瞬、しかし両者は互いの内包する力を察しそのまま何事も無かったかの様にすれ違っていった。アルトリアとしてはあの場で問い詰める事も出来たが周りの目を考えて止めにした。フードの人物も聞きたいことがあったが、まずは相棒を待つのが先と考えその場から動かなかった。
こうして伝説の聖剣を宿す聖剣使い同士の邂逅は静かに、しかして互いに強い印象的を与えながら終わった。
次の日の放課後。グレモリー眷属の悪魔とアルトリアは部室に集まっていた。
あの後リアスから報告があり、教会からのエージェント二名がグレモリーとの会談を求めてきたそうだ。予想通りの展開だが、高位の堕天使が潜入していると思われる中で二人だけというのは少々甘く見積もり過ぎてはいないだろうかと感じるアルトリア。
「会談を受け入れてくれたこと、感謝する。私はゼノヴィア」
「紫藤イリナよ」
ソファーには、リアスが座り、反対側にはエージェントの二人、ゼノヴィアとイリナが座っていた。朱乃とアルトリアはリアスのすぐ後ろ左右に立ち、他眷属はその後ろで見守っている。
イッセーとのパスを通じて、彼の恐怖が感じ取れる。恐らく悪魔の本能が彼女達の危険性を察知しているのだろう。だが、この場で一番危険のは祐斗だ。彼女たちを怨恨の眼差しで睨んでいることが気配だけでも伝わってくる。何かあれば、いや、今この時点でも彼女たちに突然斬りかかりそうな雰囲気を作り出していた。彼の過去を考えれば、腹の中は煮えくり返っているだろうが、斬り掛かればその場で勢力間の争いになり兼ねない。
この空気の中、最初に話を切り出したのは、教会側、イリナだった。
「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側に保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われました」
「教会側が保有していた六本のエクスカリバーの内、三本が堕天使によって盗まれた」
教会の切札の一つとして保管されているカレトヴルッフ改めエクスカリバー。支配の力を司る聖剣はどうやら長い時の中で行方不明になったようだが、それでも残り六つの能力を持つ聖剣は保管されていたらしい。それが盗まれるとは確かに一大事だ。
「結果残ったのはこの『
「私の持つこの『
成程、という事は盗まれたのは『天閃』『夢幻』『透明』の三本か。どれも闇討ち向きな運用が可能な剣だが、偶然か意図的な物か……
そのとき、祐斗から感じるプレッシャーが一層強くなるのを感じた。もはや殺意を隠そうともしていない。確かに彼の過去を考えれば、仇とも呼べる剣が今目の前にいる状況は復讐の絶好のチャンスだろう。だが堪えてもらいたい。リアスは真摯な態度で敵対組織と話をしている。そんな中で斬り掛かればこの交渉自体がパーになる。堕天使と天使の二正面戦闘は避けるべきだ。
「なるほど、もしかして三本のエクスカリバーを盗んだ堕天使がこの町に潜伏している…そういう事かしら?」
「察しが良くて助かる。この極東の地であるこの町に来訪し、この町の異形関係を管理する貴方に話し合いを申し出たのは、三本のエクスカリバーを奪った堕天使とその一行がこの町に潜伏している情報を掴んだからだ」
ここでアルトリアからの報告を出さないのは正解だ。あくまで予想、あくまで知らない体で行けば確認も兼ねて相手から情報を引き出せる可能性があるからだ。
「まさか私の領地、それも日本神話の神々から異形関係の管理を委託されたこの地に来るなんてね。それでエクスカリバーを奪ったのは?」
リアスの問いにゼノヴィアは目を細める。
「奪ったのは『
「「「!」」」
「コカビエル……古の戦いから生き残る堕天使の幹部…。聖書にも記された者の名前が出されるとはね」
幹部クラスであることは把握していたが、まさかコカビエルとは……と考えたアルトリアだが、魔王サーゼクスから教えられた各勢力の幹部のプロフィールを思い出し納得した。
コカビエル、人間に天体の兆即ち天文学や占星術を教えるために人と交わり堕ちたとされる堕天使。研究者、開拓者気質の多い有力堕天使の中で数少ない武闘派であり過激派。確かにこのような事態を引き起こすなら彼だろうという説得力があった。
「先日からこの町に神父、エクソシストを秘密裏に潜り込ませていたんだが、ことごとく始末されている」
それにしてはあの件の他に死体が見られなかったが、恐らく回収されたのだろう。アルトリアとて全てを見通すわけではなかったが、複数人の侵入を察知できなかった事は失態であった。
「私たちの依頼、いや、注文は私達と堕天使のエクスカリバー争奪の戦いにこの町に巣くう悪魔が一切介入してこないこと。つまり、そちらに今回の事件に関わるなと言いに来た」
ゼノヴィアの物言いにリアスの眉が吊り上がる。
「ずいぶんな言い方ね。それは牽制かしら?もしかして、私達がその堕天使と関わりを持つかもしれないと思っているの?手を組んで聖剣をどうにかすると」
「本部は可能性がないわけではないと思っている。それに、現にそこに聖剣使いがいるだろう?彼女の強化のために手を組む可能性もゼロじゃない」
アルトリアに目線を向けるゼノヴィア。リアスの瞳に冷たいものが宿る。わざわざ自分の領土にまで足を運んだ敵が、自分達のやることに手を出すな口を出すなと言ってきて、さらに他の組織と手を組んだら許さないと好き勝手に言ってくるのは統治者としては耐えがたいだろう。
「リアス・グレモリーの下には魔王の食客となった聖剣使いがいるという話、ホントだったのね……」
「彼女はこの一件に何の関係もないわ。」
「そうかな?上は悪魔と堕天使を信用していない。聖剣を神側から取り払う事ができるだけでも万々歳だろう?堕天使どもと同様に利益がある。それに聖剣の一本でも手に入れれば戦力強化も出来る。手を組んでもなんらおかしくない。だから、先に牽制球を放つ。堕天使コカビエルと手を組めば、我々は貴方達を完全に消滅させる。たとえ、そちらが魔王の妹でもだよ。と、私達の上司よりの伝言だ」
ゼノヴィアはリアスの睨みに臆することなく淡々とした口調だ。
「…私が魔王の妹だと知っていて、彼女の事も知っているという事は、貴方達も相当上に通じている者たちのようね。ならば、言わせてもらうわ。私は堕天使等と手を組まない。絶対によ。グレモリーの名にかけて、魔王の顔に泥を塗るような真似はしない」
「私も同じくです。赤き龍と偉大なる父祖に誓って」
拮抗状況の両者。だが、ゼノヴィアはフッと笑った。
「それが聞けただけでもいいさ。いちおう、この町にコカビエルがエクスカリバーを三本持って潜んでいる事をそちらに伝えておかねば何か起こったときに、私や教会本部が様々なものに恨まれる。そちらも神側と一時的にでも手を組んだら、三すくみの様子に影響を与えるだろう。特に魔王の妹ならば尚更だよ。」
ゼノヴィアの言葉を聞き、多少表情を緩和させたリアスは息を吐く。
「因みに正教会からの派遣は?」
「奴らは今回この話を保留した。仮に私とイリナが奪還に失敗した場合を想定して、最後に残った一本を死守するつもりなのだろうさ」
「では、二人で?二人だけで堕天使の幹部からエクスカリバーを奪還するの?無謀ね」
呆れた声のリアス。アルトリアからしても彼女たちの実力でコカビエルの勝つことが出来ないのは分かり切っていた。例えゼノヴィアの隠し持っている秘密兵器を使ってもだ。しかしイリナとゼノヴィアは決意の眼差しで言う。
「そうよ」
「私もイリナと同意見だが、出来るだけ死にたくないな」
「っ。死ぬ覚悟でこの日本に来たというの?相変わらず、貴方達の信仰は常軌を逸しているのね」
「我々の信仰をバカにしないでちょうだい、リアス・グレモリー。ね、ゼノヴィア」
「まあね。それに教会は堕天使に利用されるぐらいなら、エクスカリバーが全て消滅しても構わないと決定した。私達の役目は最低でもエクスカリバーを堕天使の手からなくすことだ。そのためなら、私達は死んでもいいのさ。エクスカリバーに対抗出来るのはエクスカリバーだけだよ」
その眼には覚悟、とも言うべきものが宿っている。己の信じる物の為に死力を尽くす、その在り方に理解が無いわけではない。だがバックにコカビエルが控えている以上、その目的が達せられるかはかなり怪しいところだ。
「二人だけでそれは可能なのかしら?」
「ああ、むろん、ただで死ぬつもりはないよ」
「自身満々ね。秘密兵器でもあるのかしら?」
「さてね。それは想像にお任せする。尤も彼女には見抜かれているようだが……」
そこで会話が途絶える。再び睨み合いになったところでゼノヴィアがイリナに合図を送った。
「それでは、そろそろおいとまさせてもらおうかな。イリナ、帰るぞ」
「そう、お茶は飲んでいかないの?お菓子ぐらい振舞わせてもらうわ」
「結構だ」
そのまま、二人はその場を後にしようとする。が、二人の視線が一箇所に集まった。アーシアだ。
「兵藤一誠の家で出会った時、もしやと思ったが、『魔女』アーシア・アルジェントか?まさか、この地で会おうとは」
『魔女』と呼ばれ、ビクっとアーシアは体を震わせた。どうやらゼノヴィアが昨日兵藤家を訪れた際に彼女の姿を見られていたようだ。イリナもそれに気づいたのか、アーシアをマジマジと見てくる。
「あぁ、あなたが一時期内部で噂になっていた『魔女』になった元『聖女』さん?悪魔や堕天使をも癒す能力を待っていたらしいわね?追放され、どこかに流されたと聞いていたけれど、悪魔になっているとは思わなかったわ」
「…あ、あの…私は…」
二人に言い寄られ、対応に困るアーシア。
「大丈夫よ。ここで見たことは上には伝えないから安心して。『聖女』アーシアの周囲にいた方々に今の貴方の状況を話したら、ショックを受けるでしょうからね」
「………」
イリナの言葉にアーシアは複雑極まりない表情を浮かべていた。
「しかし、悪魔か。『聖女』と呼ばれていた者が墜ちるところまで墜ちるものだな。まだ我らの神を信じているか?」
「ゼノヴィア。悪魔になった彼女が主を信仰しているはずないでしょう?」
呆れた様子でイリナは言う。確かに大部分の追放者、背信者は神やキリスト教を穢すような行いを好む。だが彼女は……
「いや、その子から信仰の匂い、香りがする。抽象的な言い方かもしれないが、私はそういうのに敏感でね。背信行為をする輩でも罪の意識を感じながら、信仰心を忘れない者がいる。それと同じものがその子から伝わってくるんだよ」
ゼノヴィアが目を細めながら言うと、イリナが興味深そうにまじまじとアーシアを見る。
「そうなの?アーシアさんは悪魔になったその身でも主を信じているのかしら?」
その問いかけにアーシアは悲しそうな表情で口を開く。
「…捨てきれないだけです。ずっと、信じてきたのですから…」
それを聞き、ゼノヴィアは布に包まれたものを、聖剣を突き出す。まさか――っ!
「そうか。それならば、いますぐ私たちに斬られるといい。今なら神の名の下に断罪しよう。罪深くとも、我らの神ならば救いの手を差し伸べて下さるはずだ」
そういってアーシアに近づくゼノヴィア。それを遮るように剣が出された。アルトリアのエクスカリバーだ。
「その剣をどかしたまえ、聖剣使い」
「いいえ、どかしません」
アルトリアは険しい顔を浮かべながらゼノヴィアを見る。
「貴方は此方に干渉しないように要求した。にも拘らず此方には剣を向ける。不公平では?」
「彼女は教会に背き、追放された身。言わば身内の恥、これは我々の問題だ」
「既に彼女はグレモリーの
一触即発の空気が流れる。が、アルトリアに退く気はない。先ほどの態度はまだいい。悪魔相手に舐められないようというのだろう。だが仮にも会談の席で刃を向けるとは、信仰の悪い面が如実に表れている。
「というかそもそも貴方はだれなの?人間なのに悪魔になった『魔女』を庇うだなんて」
「おや、私の存在を知っておきながら名前を知らなかったとは。では名乗らせて頂きましょう」
リアスが咄嗟に止めようとするが、アルトリアに止まる気はない。普段は冷静なアルトリアだが、今回の件では内心腹に据えかねていたのだ。
「我が名はアルトリア、アルトリア・ペンドラゴン!魔王サーゼクス・ルシファーが食客にして駒王町が守護騎士!」
「アルトリア、」
「ペンドラゴン!?」
二人は耳を疑った。ペンドラゴンといえば彼女たちにしてみれば自分たちの聖剣の元の持ち主、アーサー王の姓。代々教会とも関係を持ち、未だに残り続ける騎士の名家だ。
「ペンドラゴンの人間がなんで悪魔の側に!?」
「
イッセーのドスの効いた声がゼノヴィアの耳を打った。
「アーシアに、アルトリアに近づいたら、俺は許さない。てめぇはアーシアを『魔女』だと言ったな?」
「そうだよ。少なくとも今の彼女は『魔女』と呼ばれるだけの存在ではあると思うが?」
「ふざけるなッ!救いを求めるアーシアを誰も助けなかっただろう!?アーシアはただ優しかっただけだ!それを、理解できないお前らはどうかしてるんだ、誰も友達になってくれないなんて、おかしいだろ!」
「『聖女』に友人が必要だと思うか?大切なのは分け隔てない慈悲と慈愛だ。他者に友情と愛情を求めた時、『聖女』は終わる。彼女は神からの愛だけがあれば生きていけたはずなんだ。最初からアーシア・アルジェントに『聖女』の資格はなかったのだろう」
当然だというかのようにゼノヴィアは口にした。アルトリアは怒った。彼女はキリスト教徒ではない。日本に長く住み、日本人特有の多神教的考えに浸った人間だ。そんな彼女からすれば目の前の少女は理解し難い、立派な狂信者だ。
「自分たちの理想をアーシアに押し付け、それにそぐわなければ排斥する。それが貴方達の、教会の信仰か!愛か!正義か!」
「彼女は道を踏み外した。我らが愛と正義の加護は信仰と教えを守り続ける者にのみ与えられる」
柄にも無く声を荒げて怒りをぶつけるアルトリア。それにゼノヴィアは冷静に返した。
「アーシアだって辛かったんだ、助けてほしかったんだ!それなのに、なにが神だ!何が愛だ!その神はアーシアが助けてほしい時に何もしてくれなかった!神なら奇跡くらい起こして見せろよ!」
イッセーも思いをぶつけるが、ゼノヴィアは冷静に答える。
「神は愛してくれていた。何も起こらなかったとすれば、彼女の信仰が足りなかったか、もしくは偽りだっただけだよ」
それは彼女の信仰を、願いをバッサリと切り捨てる発言だった。これが教会か?これが、紛い物といえど我が家が作った聖剣のカケラを振るう者か?
「君達は彼女のなんだ?」
ゼノヴィアの問いに2人はハッキリと告げる。
「「友達だ」」
「家族だ。仲間だ。だから、アーシアを助けるし、アーシアを守る!アーシアの信仰心は偽りでもなかったし、足りないなんてことはなかった!てめぇらの神こそ偽りだろうが!」
「イッセーの言う通りです。神の名を借り、傲慢を働く者よ。貴方達がアーシアに手を出すなら、私は立場を捨ててでも貴方達を斬ります」
2人の挑戦的な言葉にゼノヴィアは目を細める。
「それは私達、我ら教会全てを敵に回す発言だぞ。ペンドラゴンを騙る者と一介の悪魔にすぎない者が、大きな口を叩くね。グレモリー、教育不足では?」
「イッセー、アルトリア、お止め――」
落ち着かせようとしたリアス先輩だったが、そんな渦中に祐斗が介入する。
「ちょうどいい。僕が相手になろう」
特大の殺意を体から発して、祐斗は剣を携えていた。
「誰だ、キミは?」
ゼノヴィアの問いかけに祐斗は不敵に笑った。
「君達の先輩だよ。失敗だったそうだけどね」
アルトリアにとってもアーシアが死にかけた事は傷になっています。原作イッセーほどではありませんが、彼女の過去を否定する様な発言にはバチボコにキレてます。