赤龍帝と騎士王の現し身   作:ファブニル

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 遂に社会人初の夏休み突入。去年までの長い長い夏休みに比べてれば微々たるものですが、休めない人もいる以上休めるだけでもありがたいですね。
 これを機に少しでも書き溜めたいなと思います!

 よろしければ今回も、お気に入り登録や高評価、感想をお願いします。

 それでは第二十二話、どうぞ!


『守護騎士』と共同戦線

 

「待ちなさい!祐斗!」

 

 

 ゼノヴィア達の去った旧校舎にリアスの制止する声が木霊する。アーシアとアルトリアからの治療を受けた祐斗はすぐに立ち上がると、まるで憑りつかれたかのようにその場を去ろうとしていた。リベンジないし、堕天使側のエクスカリバー破壊に向かう事は明らかだった。

 

 

「私の元を離れるなんてこと許さないわ!貴方はグレモリー眷属の『騎士』なのよ。『はぐれ』になってもらっては困るわ。留まりなさい!」

「…僕は、同志たちのおかげであそこから逃げ出せた。だからこそ、彼等の恨みを魔剣に込めないといけないんだ…」

 

 

 それだけ言うと、祐斗はその場から歩き出す。

 

 

「待ちなさい、ユウト。今の貴方を、エクスカリバーへの執着に曇る貴方を行かせることは出来ません。それが貴方の剣の道なのですか?」

「君には関係ないだろう。真なるエクスカリバーを振るえる君に、僕の気持ちが分かるものか……」

 

 

 そう吐き捨てて、祐斗は幽鬼の如き気配を纏いながらその場を去っていった。

 

 

「祐斗…どうして…」

「部長……」

 

 

 祐斗と同じく回復を終えたイッセーの眼には、リアスの悲しそうな顔が浮かんでいた。

 部長にあんな顔をさせるなんて、そう思ったイッセーの頭の中にはこれから成そうとしている計画の構図が出来上がりつつあった。

 

 

 

 

 次の日、アルトリアは街の中を探索していた。目的はこの街に潜むコカビエル一党の手掛かりだが、表向きには通常のパトロールとして通している。リアスからは「教会の問題に首を突っ込まない事」を厳命されている。

 だがコカビエルの為さんとする事によってはこちら側に被害が及びかねない。そこでリアスに日課のパトロールという偽の任務をつけて、捜索を行なっている。

 これはアルトリアが思いついた事ではない。柔軟性を持っているとはいえ彼女の本質は真面目な騎士だ。だからこそ彼女は他者の知恵を借りる事にした。

 

 

『何かをこっそりやりたい時は建前と本音を用意したまえ、悪魔クン。本当にやりたい事を隠す為にそれらしい大義名分や作り話を用意しておくんだ。そうすりゃ、五月蝿い奴らからの追及をある程度は躱せる』

『上手い作り話ってのは真実と嘘が混ざり合っているモンだ。嘘で相手を騙して、真実でそれを補強する。嘘だけだと証拠や根拠を求められた瞬間に破綻しちまう。屁理屈を挟む余地のある真実を使うことも忘れずにな?』

 

 

 というのは、最近イッセーに付いた常連の男性の言葉だ。なるほどこういうやり方もあるのかと思い、今実践している。それにコカビエル一党が何もしなくても、この街には妖怪やら知性を持つモンスター、その他変人奇人が住んでいるのだ。彼等が問題を起こさないとも限らない。

 正しく屁理屈をこねたやり方だが、効果はあった。

 

 

「えー、迷える子羊にお恵みを~」

「どうか、天の父に代わって哀れな私達にお慈悲をぉぉぉぉ!」

 

 

 目の前には祈りを捧げる白ローブの女子二人。間違いなくゼノヴィアと紫藤イリナだ。托鉢の様な宗教的儀礼なのか、路銀が尽きたのか。周りから宗教の勧誘を見る様な奇異の視線がチラチラと向けられている。

 

 

「なんてことだ。これが超先進国であり経済大国日本の現実か。これだから信仰の匂いもしない国は嫌なんだ」

「毒づかないでゼノヴィア。路銀の尽きた私達はこうやって、異教徒共の慈悲無しでは食事も摂れないのよ?ああ、パンひとつさえ買えない私たち!」

「ふん。もとはといえば、おまえが詐欺まがいのその変な絵画を購入するからだ」

 

 

 ゼノヴィアが指差す方に聖人らしき者が描かれた下手な絵画があった。確かに下手だ。

 

 

「何を言うの!この絵には聖なる御方が描かれているのよ!展示会の関係者もそんなことを言ってたわ!」

「じゃあ、誰かわかるのか?私には誰一人脳裏に浮かばない」

 

 

 絵画にはそれっぽい外国人が貧相な服装をして、頭の上に輪を浮かべ、背景には羽の生えた赤ちゃんがラッパを持って宙を舞っている。もう少し上手ければ多少は騙せるだろうか。

 

 

「…たぶん、ペトロ…さま?」

「ふざけるな。聖ペトロがこんなわけないだろう」

「いいえ、こんなのよ!私にはわかるもん!」

「ああ、どうしてこんなのが私のパートナーなんだ…。主よ、これも試練ですか?」

「ちょっと、頭を抱えないでよ。貴方って沈む時はとことん沈むわよね」

「うるさい!これだからプロテスタントは異教徒だというんだ!我々カトリックと価値観が違う!聖人をもっと敬え!」

「何よ!古臭いしきたりに縛られてるカトリックの方がおかしいのよ!」

「なんだと、異教徒め」

「何よ、異教徒!」

「宗教戦争は他所でして下さい。多神論派の私からすれば、同じ穴の狢ですよ」

 

 

 ついには顔をぶつけながら互いの宗派を持ち出した為仲裁に入る。この程度の諍いは駒王町では割と日常茶飯事だ。

 

 

「あ、アルトリア・ペンドラゴン!」

「此処で何を、まさか私達との協定を反故にしてエクスカリバーに関わろうと…」ぐぅぅぅぅぅ……

 

 

 此方を目にし、警戒態勢に入る2人。しかし、仲裁するかの様に腹が鳴るなり、二人は力なくその場に崩れ落ちた。仕方がない……

 

 

 

 

 

「うまい!日本の食事はうまいぞ!」

「うんうん!これよ!これが故郷の味なのよ!」

 

 

 ガツガツとファミレスで注文したメニューを腹に収めていくゼノヴィアとイリナ。その食いっぷりは本当に教会関係者かと疑いたくなる。ファミレスに着くまでの間は、「私達は異教徒に魂を売ったのよ」や「これも信仰を遂行するためだ」などとぶつぶつ言っていたが、一口食べてからはただただ食事に熱中していた。

 会計は無論自分が持つ。名誉騎士侯は特例かつ低い位ではあるが、魔王の食客だけあって給金はたっぷりと貰っているのだ。

 

 

「ふぅー、落ち着いた。まさか悪魔崇拝者(サタニスト)に救われるとは、世も末だな」

「奢ってもらって開口一番がそれですか。後私は悪魔側に身を寄せているだけで悪魔崇拝者ではありません」

 

 

 目を細めつつ訂正する。別に悪魔召喚や邪悪な儀式なんて事はしない。さて、奢るだけ奢ってはやった。まだ彼女達以外の教会関係者がいないとも限らない。あくまで奢るだけに済ませよう。

 

 

「あ!やっぱりアルトリアだ」

「おやイッセー、コネコにサジまで。なぜこの場に?」

 

 

 そろそろ会計をと思っていた矢先、イッセーに声をかけられた。近づいてきていた事はパスを通じて察知していた。そして彼のことだ、目的は大体わかる。

 

 

「はふぅー、ご馳走様でした。ああ、主よ。心優しき騎士にご慈悲を」

「「「クッ!?」」」

「ってイッセーくん?あ、もしかして十字に巻き込まれちゃった?ごめんなさいね」

「……フム、そういう事か。で、アルトリア・ペンドラゴン。私達に接触した理由は?我々が食事を終えるタイミングで彼等が来た。偶然とは思えない」

 

 

 その探りは些か穿ち過ぎなものだったが、まぁ全くの無私で恵んだ訳でもないのは事実だ。

 

 

「イッセー、恩は売っておきました。彼女とは貴方が話すべきでしょう」

「お、おう。……あんたら、エクスカリバーを奪還する為にこの国に来たんだよな?」

「そうだ。それはこの間説明したはずだよ」

 

 

 ソファー席から少しズレ、イッセー達が座るスペースを確保する。食事を摂ったばかりの為か、ゼノヴィアもイリナも今の所敵意を出していない。こんな一般人の多いファミレスで戦闘開始するのは彼女達も避けたいのだろう。

 

 

「エクスカリバーの破壊に協力したい」

 

 

 イッセーの告白に二人は目を丸くして驚いている様子だった。イッセーの狙いは分かっている、祐斗の復讐に協力したいのだ。エクスカリバーに取り憑かれた祐斗の心の闇を晴らすために力を貸す事にしたのだろう。この熱さもまた彼の魅力の一つだ。

 余りの驚きに互いに顔を見合わせた彼女達の返答を固唾をのんで見守る。すると、ゼノヴィアが口を開いた。

 

 

「……そうだな。一本ぐらい任せてもいいだろう。破壊できるのであればね。ただし、そちらの正体がバレないようにしてくれ。こちらもそちらと関わりを持っているように上にも敵にも思われたくない」

「ちょっと、ゼノヴィア。いいの?相手はイッセーくん達とは言え、悪魔なのよ?」

 

 

 イリナは異を唱えている。まあ、それが普通の反応だろう。

 

 

「イリナ、正直言って私達だけでは三本回収とコカビエルとの戦闘は辛い」

「それはわかるわ。けれど!」

「最低でも私達は三本のエクスカリバーを破壊して逃げ帰ってくればいい。私達のエクスカリバーを奪われるぐらいなら、自らの手で壊せばいいだろう。で、奥の手を使ったとしても任務を終えて、無事帰れる確率は三割だ」

「それでも高い確率だと私達は覚悟を決めてこの国に来たはずよ」

「そうだな、上にも任務遂行して来いと送り出された。自己犠牲に等しい」

「それこそ、私達信徒の本懐じゃないの」

「気が変わったのさ。私の信仰は柔軟でね。いつでもベストなカタチで動き出す」

 

 

 これは驚きだ。アーシアを断罪しようとしていたゼノヴィアだが、冷静な視点と柔軟性も持ち合わせていたとは。てっきり融通の効かない狂信者かと思っていたが、アルトリアはゼノヴィアへの評価を修正した。

 

 

「あなたね!前から思っていたけれど、信仰心が微妙におかしいわ!」

「否定はしないよ。だが、任務を遂行して無事帰る事こそが、本当の信仰だと信じる。生きて、これからも主の為に戦う。違う?」

「…違わないわ。でも」

「だからこそ、悪魔の力は借りない。代わりにドラゴンの力を借りる。上もドラゴンの力を借りるなとは言ってない。それに、この話を聞いた以上君も力を貸してくれるのではないかな?この町を守る騎士として」

 

 

 ゼノヴィアの視線がイッセーとアルトリアに向けられる。

 

 

「まさか、こんな極東の島国で赤龍帝と出会えるとは思わなかった。悪魔になっていたとはいえ、ドラゴンの力は健在と見ているよ。伝説の通りなら、その力を最大まで高めれば魔王並になれるんだろう?魔王並の力ならエクスカリバーも楽々破壊できるだろうし、この出会いも主のお導きと見るべきだね」

「お、おう」

「それに噂の聖剣使いも想像以上だった。ペンドラゴン姓の真贋はこの際どうでもいい。大事なのは君の持つその聖剣が凄まじい力を秘めているという事だ。失礼だか、その剣の銘は一体?」

 

 

 思わずイッセーは息をのんだ。アルトリアの持つエクスカリバーの存在は悪魔側の機密事項。リアスから説明された事が事実ならこの場で彼女が明かすとは思えない。ならどんな言い訳をするのか。

 

 

「この剣の銘は『カレトヴルッフ』。かつて我が家が聖剣エクスカリバーを模倣しようとして生み出した聖剣です」

「エクスカリバーの模倣?」

「ご存じの通り、エクスカリバーは先の大戦で破壊されました。アレは仮にも我が家の、父祖アーサー王の誇り。それが砕けてしまった以上いずれ復活するアーサー王の為に変わりは必要でしょう?その結果生み出されたのがこの剣です」

 

 

 要素だけ抜き出せば嘘ではない。カレトヴルッフがペンドラゴン家で造られた事、エクスカリバーの代わりである事は事実だ。が、因果関係がバラバラだし、二本の立場は完全に逆だ。果たして騙せるかどうか。

 

 

「……成程、エクスカリバーの模倣という訳か。元のエクスカリバーが凄まじい力を秘めていた以上、そのコピーもまた強力な聖剣であるという事か。得心が言った、ありがとう」

「いいえ。それでイッセーの昔馴染みの貴方はどうなのでしょうか?」

「……ほんとの事を言えば悪魔の力を借りるなんて私の信仰が許さないのだけど、イッセーくんなら信頼できるし、ドラゴンと聖剣の力を借りるのなら、まぁ……」

「OK。商談成立だ。俺はドラゴンの力を貸す。アルトリアも聖剣の力を貸す。それじゃあ、後一人、助っ人を呼んでもいいかな」

 

 

 そういうとイッセーは携帯電話を取り出し、祐斗へ連絡を入れた。繋がるかいささか不安だったが連絡を入れた十分後、祐斗もファミレスにやってきた。

 

 

「…話はわかったよ」

 

 

 祐斗はため息を吐きながらもコーヒーに口をつけた。

 

 

「正直言うと、エクスカリバー使いに破壊を承認されるのは遺憾だけどね」

「随分な言いようだね。そちらが『はぐれ』だったら、問答無用で斬り捨てているところだ」

 

 

 睨み合う祐斗とゼノヴィア。やはりあの一戦の歪み合いが抜けていないようだ。

 

 

「やはり、『聖剣計画』のことで恨みを持っているのね?エクスカリバーと教会に」

 

 

 イリナの問いに祐斗は目を細めながら「当然だよ」と冷たい声音で肯定した。

 

 

「でもね、木場君。あの計画のおかげで聖剣使いの研究は飛躍的に伸びたわ。だからこそ、私やゼノヴィアみたいに聖剣と呼応できる使い手が誕生したの」

「だが、計画失敗と断じて被験者のほぼ全員を始末するのが許されると思っているのか?」

 

 

 祐斗は憎悪の眼差しをイリナに向ける。イリナの言っていることはあくまで結果論だ。研究のおかげで得た物はあったのだろうが、その実験の被害を受けた者からすればそんなものはどうでもいい。

 そもそもが人の処分なんて行為自体があまりにも非人道的かつ残酷だ。祐斗が被害にあったのが数年前、中世のような倫理観の薄い時代なら未だしも仮にも21世紀の神の信徒が行う事じゃない。イリナも反応に困っている様子だ。そこへゼノヴィアが助け船を出す。

 

 

「その事件は、私達の間でも最大級に嫌悪されたものだ。処分を決定した当時の責任者は信仰に問題があるとされて異端の烙印を押された。今では堕天使側の住人さ」

「堕天使側に?その者の名は?」

 

 

 興味を惹かれた祐斗はゼノヴィアに訊く。

 

 

「バルパー・ガリレイ。『皆殺しの大司教』と呼ばれた男だ」

「……ようやくか。堕天使を追えば、その者にたどり着くのかな」

 

 

 バルパー・ガリレイ。ようやく主犯格の名を聞くことが出来た。かつてアルトリアも『聖剣計画』について調べていたが教会の恥、忌まわしい事件として厳重に秘匿され、外部からはそこまで詳しくは調べられなかった。

 

 

「僕も情報を提供したほうがいいようだね。先日、エクスカリバーを持った者に襲撃された。その際、神父を一人殺害していたよ。やられたのはそちらの者だろうね。」

「「「!」」」

 

 

 アルトリアを除くこの場に居る全員が驚いた。特にグレモリー眷属の二人はなんの説明も受けていなかったからだ。無論リアスに報告は挙げたが、それを伝える間もなく事態が急変した為にリアスも言うタイミングを逸していたのだ。

 

 

「相手はフリード・セルゼン。この名に覚えは?」

「なるほど、奴か」

 

 

 祐斗の言葉に目を細めるゼノヴィアとイリナ。どうやらフリードは色んな意味で有名なようだった。

 

 

「フリード・セルゼン。元ヴァチカン法王庁直属のエクソシスト。十三歳でエクソシストとなった天才。悪魔や魔獣を次々と滅していく功績は大きかったわ」

「だが奴はあまりにやりすぎた。同胞すらも手にかけたのだからね。フリードには信仰心なんてものは最初から無かった。あったのはバケモノへの敵対意識と殺意。そして、異常なまでの戦闘執着。異端に掛けられるのも時間の問題だった」

 

 

 やはりあの神父は教会でも手を焼くほどの存在だった。あの破綻した人格が先天的にしろ、後天的にしろ、あの性格では組織内で生き残る事は出来ないだろう。

 

 

「そうか。フリードは奪った聖剣を使って私達の同胞を手にかけていたか。あの時、処理班が始末出来なかったツケを私達が払う事になるとはね」

 

 

 忌々しそうに言うゼノヴィア。

 

 

「まあいい。とりあえず、エクスカリバー破壊の共同戦線といこう」

 

 

 ゼノヴィアはペンを取り出すと、メモ用紙にペンを走らせ、連絡先をこちらへよ渡してきた。

 

 

「何かあったらそこへ連絡をくれ」

「サンキュー。じゃあ俺の方も」

「イッセー君のケータイ番号は叔母様から頂いているわ」

 

 

 イリナが微笑みながら言う。あの人ならやりかねない、というかアルトリア自身もイッセーが携帯電話を買った際に番号を教えられている。「息子をよろしくね♪」との事だったが、今回もそういう事だろう。

 

 

「マジかよ‼母さん!勝手な事を!」

「では我々の番号も渡しておきましょう。今後何かの役に立つかもしれませんから」

「ありがたく頂戴しよう。では我々はこれで。食事の礼、いつかするぞ。アーサー王の末裔、アルトリア・ペンドラゴンよ」

 

 

 そういうとゼノヴィアは席を立った。

 

 

「食事ありがとうね、アルトリアさん!また今度も奢ってね!信徒じゃないけど、同じ聖剣使いとして仲良くしましょ!」

「えぇ、次にお会いした際には貴方が引っ越してからのイッセーの話でもしましょうか」

「……前言撤回、なんか負けられないって感じしてきたわ。言っておくけど、私の方が先に幼馴染になってたから!それじゃ!」

 

 

 アルトリアの無自覚なマウントに反応しつつイリナはゼノヴィアの後を追ってファミレスから出ていった。

 なんとか上手くいった。イッセーとのすり合わせは完全にアドリブ、向こうも上手く対応してくれたおかげでスムーズに事を運ぶことが出来た。最悪の場合悪魔と神側の争いの火種になっても可笑しくなかった。

 

 

「…皆。どうして、こんなことを?」

 

 

 祐斗が静かに訊いてくる。彼にしてみれば、自分の怨恨をどうして助けてくれるのか不思議なのだろう。

 

 

「ま、仲間だし。眷属だしさ。それにお前には助けられた事があったからな。借りを返すってわけじゃないけど、今回はお前の力になろうと思ってさ」

「僕が下手に動けば部長に迷惑がかかるから。それもあるんだよね?」

「もちろん。あのまま暴走されたら、部長が悲しむ。まあ、俺が今回独断で決めたことも部長に迷惑かけているんだろうけど、お前が『はぐれ』になるよりはマシだろう?結果オーライになっちまったが、教会の関係者と協力態勢取れたんだしさ」

 

 

 祐斗はそれでもまだ納得していない様子だった。そこへ、小猫が口を開く。

 

 

「…祐斗先輩。私は、先輩がいなくなるのは…寂しいです」

 

 

 少しだけ寂しげな表情を小猫が浮かべる。普段無表情だからか、その変化はこの場に居る全員に衝撃を与えた。

 

 

「…お手伝いします。…だから、いなくならないで」

 

 

 小猫の悲痛な訴えは荒れていた祐斗の心に届いたようだ。祐斗は困惑しながらも苦笑いする。

 

 

「ははは。まいったね。小猫ちゃんにそんなことを言われたら、僕も無茶はできないよ。わかった。今回は皆の好意に甘えさせてもらおうかな。皆のおかげで真の敵もわかったしね。でも、やるからには絶対にエクスカリバーを倒す」

 

 

 久しぶりの、闇の少ない祐斗の困り顔。周りを頼る事を覚え、少しだけ好転しただろうか。

 

 

「よし!俺らエクスカリバー破壊団結成だ!がんばって、奪われたエクスカリバーとフリードのクソ野郎をぶっ倒そうぜ!」

 

 

 この場に集まった殆どが決意を固める。しかし、この場で一人だけ乗り気ではない者がいた。

 

 

「…あの、俺も?」

 

 

 手をあげながら、匙が訊いてくる。

 

 

「つーか、結構俺って蚊帳の外なんだけどさ…。結局、何がどうなって木場とエクスカリバーが関係あるんだ?」

「イッセー、まさか連れてきておいてサジに何も話していないのですか?」

「あ、いや〜。聖剣計画の被害者ってのは伝えたんだが……」

「…少し話そうか」

 

 

 コーヒーに口をつけたあと、祐斗は自分の過去を語った。カトリック教会が秘密裏に計画した『聖剣計画』。聖剣に対応した者を排出するための実験が、とある施設で執り行われていた。被験者は剣に関する才能と神器を有した少年少女。来る日も来る日も辛く非人道的な実験を繰り返すばかり。散々実験を繰り返され、自由を奪われ、人間として扱わず、木場達は生を無視された。

 彼らにも夢があった。生きていたかった。神に愛されていると信じこまされ、ひたすら『その日』が来るのを待ち焦がれていた特別な存在になれると信じて。聖剣を使える者になれると信じて。三百六十五日、毎日毎日何度も何度も聖歌を口ずさみながら、過酷な実験に耐えたその結果が『処分』だった。祐斗達は聖剣に対応出来なかった。

 

 

「…皆、死んだ。殺された。神に、神に使える者に。誰も救ってくれなかった。『聖剣に適応出来なかった』たったそれだけの理由で、少年少女達は生きながら毒ガスを浴びたのさ。彼らは『アーメン』と言いながら僕らに毒ガスを撒いた。血反吐を吐きながら、床でもがき苦しみながら、僕たちはそれでも神に救いを求めた」

 

 

 祐斗の話をイッセー達は無言で聞いていた。研究施設からなんとか逃げ出せた祐斗だが、毒ガスはすでに彼の体を蝕んでいた。一部の者を除いて、能力が平均値以下の被験者は用なしと処分されたのだった。逃げおおせた祐斗は、死ぬ寸前でイタリア視察に来ていたリアスと出会った。そして、今ここに至る。

 

 

「同志達の無念を晴らしたい。いや、彼らの死を無駄にしたくない。僕は彼らの分も生きて、エクスカリバーよりも強いと証明しなくてはいけないんだ」

 

 

 凄まじい過去だ。アーシアも悲しい過去を持っていたが、祐斗もまたも辛い経験をしてきたのだ。リアスも剣の才能を復讐以外で生かしてもらいたいと言っていたが、本当にそう思う。

 

 

「うぅぅぅぅ…」

 

 

 沈痛な面持ちで祐斗の過去を聞いていたのだが、すすり泣く声が聞えてくる。匙だ。匙は号泣していた。ボロボロと涙を流して、大泣きしていた鼻水まで垂れ流して…。匙は祐斗の手を取り言う。

 

 

「木場!辛かっただろう!きつかっただろう!ちくしょう!この世に神も仏もないもんだぜ!俺はなぁぁぁ、今非常にお前に同情している!ああ、酷い話さ!その施設の指導者やエクスカリバーに恨みを持つ理由もわかる!わかるぞ!」

 

 

 今度は力強くうんうんと頷きだした。

 

 

「俺はイケメンのお前が正直いけ好かなかったが、そういう話なら別だ!俺も協力するぞ!ああ、やってやるさ!会長のしごきをあえて受けよう!それよりもまず俺達でエクスカリバーの撃破だ!俺も頑張るからさ!お前も頑張って生きろよ!絶対に救ってくれ!リアス先輩を裏切るな!」

 

 

 言ってることは滅茶苦茶だが、彼も熱い男だ。そして、良い人間、いや悪魔だ。これまではイッセーを見下す態度とソーナに尻尾を振る姿しか見た事が無かった為、中々に新鮮である。

 

 

「よっし!いい機会だ!ちょっと俺の話も聞いてくれ!共同戦線張るなら俺の事も知ってくれよ!」

 

 

 匙は気恥ずかしそうにしながらもランランと瞳を輝かせて言った。

 

 

「俺の目標はソーナ先輩とできちゃった結婚をすることだ!」

 

 

 ………呆れた。打倒エクスカリバーに燃えていた気持ちが一気に沈静化され、上がっていた評価が一気に急落した。まさかこの場でこんな野望を口にするとは。しかし悲しいかな、この場にはそれ以上の変態がいた。

 

 

「匙!聞け!俺の目標は部長の乳を揉み、そして吸う事だ!」

 

 

 イッセーも自身の野望を告白する。イッセー、貴方の夢はハーレム王では?野望が酷くチープになっていた幼馴染に呆れてしまう。その後、イッセーと匙は意気投合し自分達の野望を必ず叶えようと二人で誓っていた。正直なところワードが低俗すぎて考えたくも無かった。

 

 

「サジがイッセーを嫌っていた理由は同族嫌悪ですか。やはりこの手の男は歪み合うのでしょうか…」

「…あはは」

「…やっぱり最低です」 

 

 

 号泣しあう二人の横でアルトリア達はため息を吐いていた。周りを見れば店内のいろんな人がこちらを奇異の目で見ている。取り敢えず簡単な記憶処理が必要だと考えながら、エクスカリバー破壊団は結束を強めていった。

 

 

「あ、私は独自行動をとりますね。守護騎士の任務を抜けたら確実にリアスにバレますので」

 

 

 水を差した様な発言だったが、これだけは言わないといけなかった。




 エクスカリバーとカレトヴルッフが逆転してごっちゃに扱われていますが、扱いは下記の通りです。


真エクスカリバー→カレトヴルッフ(ゼノヴィア達への言い訳)

聖虹剣カレトヴルッフ→教会エクスカリバー(ゼノヴィア達がエクスカリバーと認識している為)
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