赤龍帝と騎士王の現し身   作:ファブニル

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 どうも、休み中もウチの事で忙しい作者です。お盆という事で自分も家の手伝いに奔走しています。昔の自室は弟にあげてしまったので、書く場所が居間しかなく、サブカル嫌いな母からの視線がキツい。何処か喫茶店で作業でもしますかね……

 よろしければ今回も、お気に入り登録や高評価、感想をお願いします。

 それでは第二十三話、どうぞ!


対『エクスカリバー』 初戦

 アレから数日、イッセー達『エクスカリバー破壊団』は日々の契約取りの傍、街のあちこちを調査していた。が、未だに進展は見られない。それらしい痕跡の様な物はあったが、肝心の標的が見当たらないのだ。

 どうやら敵は随分と慎重に事を運んでいるようだ。ここまで何もないと探す気力も失せてくる。パトロールを言い訳にしている以上、アルトリア側からバレる事は少ないとは思うが……

 

 

「アルトリアさん、どうかしましたか?何処かお身体が悪いのですか?」

「…アーシア。いえ、私は大丈夫です」

 

 

 どうやら険しい顔が出ていたようだ。この件はアーシアには内緒にしてある。相手はかつての上司でもあるフリード、『皆殺しの大司教』バルパー・ガリレイ、そして堕天使コカビエル。あまりにも危険過ぎるこの案件に彼女を巻き込むわけにはいかなかった。

 

 

「そうですか。最近イッセーさんもお疲れのご様子でしたので何かあったのかと…」

「すみません、アーシア。心配をかけさせてしまいましたね。そういう貴方こそ大丈夫なのですか?あの様な事を言われて……」

 

 

 あの時ゼノヴィアから言われた言葉は間違いなくアーシアの心に深い傷を負わせたはずだ。表面的に大丈夫に見えても内心のショックは計り知れない。

 

 

「私は大丈夫です。寧ろあの時はとても嬉しかったんです」

「嬉しかった?」

「あの時、アルトリアさんが庇ってくれて、イッセーさんと一緒にゼノヴィアさん達に怒ってくれて、それだけで私は幸せです。それに私は悪魔ですから、教会の方に責められるくらいでへこたれていられませんから」

 

 

 フンス!といった感じで可愛くガッツポーズを取るアーシアにほっこりしつつ、アルトリアは改めて彼女の強さを感じた。

 

 

「そうですか、そう言って貰えると私としても嬉しいです」

「エヘヘ、それはそうとイッセーさんが心配です。いつも以上にお疲れのご様子でしたので、何か私にできる事があれば良いのですが」

「アイツを元気にする方法ならあるわよ」

 

 

 2人に掛かる声。ここ最近、最もアーシアに近づけさせたくない女の声だ。

 

 

「アイカ、また貴方ですか。またアーシアに良からぬ事を吹き込む気ですか?」

「なーによ姫騎士サマ。そんなに邪険にしなくても良いじゃない」

「あ、藍華さん」

 

 

 桐生藍華。同じクラスに所属する女子生徒であり、変態度合いならイッセー達に匹敵するであろう危険人物。転校してきたばかりのアーシアにかなり偏った性知識やらを教えている厄介な人物だ。アーシアが世間知らずで純真無垢なのをいいことにピンクに染め上げんとしている

 

 

「アーシア、アイツが疲れている理由は私には分からないけど、帰ってきたアイツに前教えた格好でこう言うの………」

「な、なるほど!勉強になります」

「止めなさい離れなさい黙りなさい。一体アーシアに何を教えたのですか!」

「ん〜、アルトリアって『新婚三択』って知ってる?アレって割と効くみたいよ〜」

 

 

 やはりその手の知識だったか!ある程度耐性のある現代女子ならともかく、アーシアにはまだ早い!先ずは正しい性知識の後、発展する形でやるべきです!

 

 

「万が一に事が起きたらどうするのですか!やはり貴方をアーシアに会わせるべきではなかった。えぇい、離れなさい!」

 

 

 その後次の授業が始まるまでの間、アルトリアはアーシアの壁となって余計な知識を入れない様にしていた。後ろでメモを取るアーシアには気付けなかったが。

 

 

 

 

「ハァ〜」

「ん?どうしたどうした悪魔クン。お客を前にため息だなんて、サービス精神足りないんじゃないかい?」

「あ!す、すみません……」

 

 

 夜の河川敷、イッセーは常連の中年男性と川釣りに興じていた。イッセーの隣で釣り糸を垂らす、金髪と茶髪が混じった髪に顎に軽く髭を蓄え、如何にも遊び好きといったこのチョイ悪イケオジとも言うべき男は最近イッセーを気に入ってついたお得意先であり、よく指名してくれているのだ。

 

 

「いやぁ、最近はぐ……はぐれ犬を探してるんですけど、中々見つからなくて。町中隈なく探してるはずなんですけどねぇ」

「ふむ、犬探し、か。そいつに何か癖はあるのか?何処かへよく行くとか、好物とか」

 

 

 なんとか誤魔化せた。しかし癖、か。確かに有効かもしれない。そういえばアイツはずっと神父を狙っていたな。

 

 

「そうっすね……確かにそれっぽいのはあるかもしれないです」

「それなら後は簡単だ。それを餌にすれば良い。……それと、悪魔クンは『囮捜査』って知ってるかい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこは街から離れた廃屋。かつてははぐれ悪魔も巣くっていた曰くつきの建物に四人の人影。夜の闇の中をフードを被った神父の一団が進んでいる。辺りをしきりに見渡し、何かを探している様だった。しかし今のこの街において神父の格好する事は死を意味する。

 

 

「神父の一団にご加護あれってね!」ギィィィン!

 

 

 樹上から降ってきたはぐれ神父フリードの一撃は、素早く取り出された魔剣によって防がれる。

 

 

「フリード!」

「!その声はイッセーくんかい?てことはそっちは魔剣使いくんか!へぇぇぇぇ、これはまた珍妙な再会劇でござんすね!」

 

 

 そう、この神父の一団の正体は化けたイッセー達。フリードが神父狩りをしているという事で神父の格好をすれば釣れるのではないかと考えたのだ。結果はご覧の通り、ものの見事に引っかかってくれた。

 

 

「アレがエクスカリバーか!」

「…相変わらず、嫌な雰囲気」

「とっととぶっ壊すぞ!ブーステッド・ギア!」 

『Boost!』

 

 

 すかさずイッセーが倍加を開始する。今回イッセーはサポートに徹する。倍加した力を祐斗に譲渡する役割だ。しかし、イッセーの準備が始まる前から祐斗が突っ込む。

 

 

「おい待てよ木場!」

「ひゃあ!お熱いアプローチでござんすねぇ!だが、」

 

 

 祐斗がお得意のスピードで一気に詰めていく。しかし祐斗の一撃が空を切った、フリードが祐斗に匹敵するスピードで避けたからだ。

 

 

「俺様のエクスカリバーは『天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)』。速度だけなら、負けないんだよなぁ!」

 

 

 お返しとばかりに、フリードの高速攻撃が祐斗に迫る。祐斗もまた『騎士』のスピードで対抗する。2人は目にも止まらぬスピードで打ち合い続け、余りのスピードに他3人は火花を追うしかなかった。

 すぐに祐斗の魔剣が打ち合いの衝撃に耐えられずに破壊されるが、祐斗はすかさず2本の小剣を生み出す。スピード勝負として取り回しやすい魔剣に切り替えたのだ。

 

 

「チッ!『光喰剣(ホーリー・イレイザー)』だけじゃないってか!複数の魔剣所持、もしかして『魔剣創造(ソード・バース)』でございますか?わーお、レア神器持っているとはなかなか罪なお方ですこと」

 

 

 フリードの楽しげな様子を無視して、祐斗は逆手持ちにした二刀を振るう。

 

 

「だが、俺様の持っているエクスカリバーちゃんはそんじょそこらの魔剣くんでは」ガギィィン!

 

 

 甲高い破壊音を立てて、祐斗の魔剣が二刀とも砕け散る。

 

 

「相手になりはしませんぜ」

「くっ!」

「木場!譲渡するか!?」

「まだやれるよ!」

 

 

 強い語気から彼が苛ついていることが分かる。祐斗からすれば、一度ゼノヴィアのエクスカリバーに一度負けている。いずれ越えんとしてる聖剣に短期間に二度負ける事は、仇を取れないのと同時に彼のプライドが許さないのだ。

 

 

「ハハハ!君は随分とエクスカリバーを見る目が怖いねぇ。もしかして、憎悪とか持ってるの?何があったか知らないけどさ!こいつで斬られると悪魔くんは消滅確定ですぜぇ?死んじゃうよ!死んじゃうぜ!死んじゃえよッ!」

 

 

 飛び出してくるフリードに祐斗は幅広の魔剣を創り出して受け止めようとするが、ガギィンッ!と音を立てて易々と砕いてしまった。恐らく防御に特化した魔剣だったのだろうが、青白いオーラを纏った聖剣の前には無力だった。

 間髪入れずフリードの二振りめが襲い掛かる。危ない!とイッセーが思った瞬間、彼の身体が持ち上がる。小猫がイッセーを投げんと持ち上げている!

 

 

「…行ってください」

「うおおおおおおっ!小猫ちゃぁぁぁぁん!」

 

 

 イッセーの了承を待つ間もなく、イッセーはすさまじい勢いで二人の方へと飛んでいく。

 

 

「木場ぁぁぁぁぁ!譲渡すっからなぁぁぁ!」

「うわっ!イッセーくん!?」

 

 

 飛んできたイッセーは祐斗に飛びついた瞬間、神器を発動させた。

 

 

『Transfer‼』

 

 

 音声が発せられ、祐斗へドラゴンの力が譲渡される。祐斗の全身からオーラが迸り、『女王』クラスに迫るほどの魔力が全身に纏われた。

 

 

「…もらった以上は使うしかない!『魔剣創造(ソード・バース)』ッッ!」ザンッ!

 

 

 周囲一帯に刃が咲き乱れる!祐斗の立つ屋根、柱、壁、あらゆるところから様々な形の魔剣が出現した。

 

 

「チィィィ!」

 

 

 フリードが舌打ちしながら、自身に向かって伸びる魔剣を横薙ぎに破壊していく。対処に追われる一瞬の隙を見つけ、祐斗が魔剣を持って消えた。魔剣を足場にして、反射も合わせた神速で縦横無尽に動き回る。速度特化の『騎士』の面目躍如とも言うべき動きであるが、フリードは目で追っている。『天閃』の力で動体視力も強化されているのだ。

 

 ヒュッ!っと風を切る音と共に生えていた魔剣がフリード目掛けて飛んでいく。魔剣を蹴る際に一本引き抜き、それを放ったのだ。否、一本ではない無数の魔剣が四方八方からフリードへ飛んでいく!

 

 

「うっは!これは面白いサーカス芸だね!この腐れ悪魔がぁぁぁ!」キン!キィン!キィィィン!

 

 

 狂喜に彩られた表情でフリードは飛んでくる魔剣を一本一本打ち落としていく。ある程度攻撃が止んだタイミングで辺りを付けたフリードの凶刃が祐斗へ降り注がんとする。対する祐斗は丁度防御出来ない態勢にあった。

 

 

「やらせるか!伸びろ、ラインよ!」ビューッ!グンッ!

 

 

 フリードの体が何か引っ張られて、体制を崩した。フリードが目を向けると、彼の右足に黒い触手らしきものが巻き付いている。その触手は匙の手の甲に可愛らしくデフォルメされたトカゲの口から舌の様に伸びていた。

 

 

「うぜぇッス!」

 

 

 それを聖剣で斬り払おうとするが、巻き付いたトカゲの舌は実体が無いかのようにするりとすり抜けていた。

 

 

「これは……」

「クソ!んだこれ斬れねぇ!?」

「まだまだ!」

 

 

 祐斗が再び構えを取ったのと同時にトカゲの舌が淡い光を放ち始める。光はフリードから、匙の方へまるで力を吸い取るかの様に流れていく。

 

 

「…これは!?クッソ!俺っちの力を吸収するのかよ!」

「へッ!どうだ!これが俺の神器!『黒い龍脈(アブソーブション・ライン)』だ!こいつに繋がれた以上、お前さんの力は俺の神器に吸収され続ける!そう、ぶっ倒れるまでな!」

「マジかよ!すげぇな匙!」

「この感じ、ドラゴン系神器か!一番厄介な系統だねぇ。初期状態は大したことなくても、成長した時の爆発力が他系統の神器と違って段違いに凶悪だから怖い怖い。まったく、忌々しいことこの上ないってね!」

「木場!文句は言ってられない!とりあえず、そいつを倒せ!エクスカリバー問題はその次でいいだろう!こいつ、マジで危ねぇ!こうして敵対しているだけで危ない気をビシビシ感じるしよ!このまま放置してたんじゃ、俺や会長まで害がありそうだ!俺の神器で力を吸収して弱らせるから、一気に叩け!」

 

 

 匙の提案は正しい。フリードの危険性を考えれば聖剣破壊よりも優先度を上げてこの場で始末するのが正解だ。しかし、祐斗は複雑な表情を浮かべていた。理由は分かる。自分の力で勝てなかったのが悔しかったのだろう。だがここでフリードをやっておいて損が無いのは彼も理解しているはずだ。決心したのか、魔剣を創り出す祐斗。

 

 

「…不本意だけど、ここで君を始末するのには同意する。奪われたエクスカリバーはあと二本ある。そちらの使い手に期待させてもらうよ」

「ハッ!他の使い手さんより俺様の方が強いんだぜ!つまりだ!俺を四人がかりで倒した瞬間、満足できる聖剣バトルはなくなるぜ?」

 

 

 不敵な笑みでそんなこと言うフリード。祐斗もそれを聞き、目元を引きつらせていた。

 

 

「ほう、『魔剣創造(ソード・バース)』か?使い手の技量次第では無類の力を発揮する神器だ」

 

 

 そのとき、この場に第三者の声が届く。そちらへ視線を送れば、少し派手な神父の格好をした初老の男性が立っていた。

 

 

「んだよ、バルパーのじいさん」

 

 

 フリードの言葉に全員が驚愕する。バルパー、その名はゼノヴィアが言っていた、『聖剣計画』の責任者であり祐斗達の処分を行なったという……

 

 

「…バルパー・ガリレイッ!」

「如何にも」

 

 

 憎々し気に祐斗は初老の男性を睨む。その男、バルパー・ガリレイは堂々と肯定した。

 

 

「フリード。何をしている」

「じいさん!このわけのわからねぇトカゲ君のベロが邪魔で逃げられねぇんスよ!」

「ふん。聖剣の使い方がまだ十分ではないか。お前に渡した『因子』をもっと有効活用してくれたまえ。そのために私は研究していたのだからね。体に流れる聖なる因子をできるだけ聖剣の刀身に込めろ。そうすれ自ずと切れ味は増す」 

「へいへい、体に流れる聖なる因子をできるだけ聖剣の刀身に込めろ、ねぇ」

 

 

 フリードの持つ聖剣の刀身にオーラが集まりだし、輝きを放ち始める!

 

 

「こうか!そらよ!」ブシュッ!

 

 

 匙の神器が難なく切断され、フリードを捕らえる術が取り払われた!

 

 

「逃げさせてもらうぜ!次に会う時こそ、最高のバトルだ!」

「逃がさん!」

 

 

 イッセー達の横を凄まじいスピードで通り過ぎていくものがあった。フリードの聖剣と火花を散らす切り込み!ゼノヴィアだ!

 

 

「やっほー、イッセー君。間に合ったかしら」

「イリナ!」

 

 

 イリナも駆けつけていた。この作戦はあらかじめ全員に伝えており、イッセーのパスを通じてアルトリアに状況が伝わるようにしていたのだ。

 

 

「フリード・セルゼン、バルパー・ガリレイ。反逆の徒め。神の元、断罪してくれる!」

「ハッ!俺の前で憎ったらしい名を出すんじゃねぇや!このビッチが!」

 

 

 斬撃を繰り広げるゼノヴィアとフリードだが、隙を突いて懐に手を突っ込み、小さな球を取り出した。それは以前使った逃亡用の閃光玉だ。

 

 

「バルパーのじいさん!撤退だ!コカビエルの旦那に報告しにいくぜ!」

「致し方あるまい」

「あばよ、教会と悪魔の連合共「逃すと思ったか!」ッ!?」

 

 

 フリードが球体を路面に投げ放たんとした瞬間、一筋の光がフリードの手に直撃する。その痛みにフリードは閃光玉を地面に取り落としてしまった。

 

 

「そう何度も同じ手を喰らうと思うな」

「アルトリア!あの攻撃はやっぱお前のか!」

 

 

 一団から少し離れた位置、草むらから出てきたのは光の矢を番えたアルトリアだった。既に閃光玉で2度逃げられている以上同じ手を喰らうのは彼女の矜持が許さない。一番最初に突っ込んで行ったゼノヴィアとイリナを前衛に出して囮にし、自身は相手のアクションを潰す方に動いたのだ。

 

 

「チィッ!相変わらず隙が少なくて厄介だ事!」

「ほう、彼女が例の……」

 

 

 忌々し気にアルトリアをにらむフリードとは対称的に、バルパーは興味深げにアルトリアを観察する。その視線にアルトリアは嫌な物を感じていた。

 

 

「まぁ、良い。迎えは来ているしな」

「へ?あぁ、フレギアス兄さんか!」

 

 

 その直後、二人を捕らえんとするイッセーたちの背筋に寒気が走る。グレモリー眷属がかつて対峙した堕天使レイナーレ達に感じていた寒気を上回るほどの悪寒に、全員が動けなくなる。そして動けない彼等の目の前に大量の光の槍が撃ち込まれた!

 

 

「な、なんだコレ!」

「光の槍、まさか堕天使!」

 

 

 全員が上を見上げるとそこには一人の堕天使が宙に浮いていた。白髪に真っ黒なスーツを身に纏ったそれは一見すると一般男性に見えなくもないが、3対6枚の黒い翼が彼が堕天使であることを教えてくれている。彼に気を取られ、気づいた時にはフリードもバルパーも消えていた。

 

 

「逃げられましたか……」 

「追うぞ、イリナ」

「うん!」

 

 

 ゼノヴィアとイリナが頷き合って、その場を駆けだす。

 

 

「僕も追わせてもらおう!逃がすか、バルパー・ガリレイ!」

 

 

 祐斗も二人の後を追って、この場を駆けだした。

 

 

「木場!ったく!また勝手に一人で先走りやがって!」

「ほんとうに、勝手な行動ばかりで困ってしまうわね、イッセー?」

「匙、説明してもらいますよ」

 

 

 残された四人の後ろから掛かる声。四人がびくつき、振り向くとそこにはグレモリー、シトリー両『王』『女王』が立っていた。イッセーたちの顔は青ざめ、全員が思った。あ、終わったと……

 

 

 

 

 

「…エクスカリバー破壊って貴方達ね」

 

 

 額に手を当て、極めて機嫌のよろしくない表情のリアス。あの後、イッセー、アルトリア、小猫、匙の四人は廃屋内にて正座させられていた。

 

 

「サジ。貴方はこんなにも勝手なことをしていたのですね?本当に、困った子です」

「あぅぅ…。す、すみません、会長…」

 

 

 ソーナもご自慢の冷たい表情で匙に詰め寄っていた。匙の顔色は危険なほど青い。よほど怖いんだろう。

 

 

「祐斗はそのバルパーを追ったのね?」

「はい。ゼノヴィアとイリナも一緒だと思います。…何かあったら、連絡をよこしてくれると思うのですが…」

「復讐の権化と化した祐斗が悠長に電話をよこすかしら」

「それとあの場に堕天使が現れました。羽根の枚数から間違いなく上級の堕天使です」

「コカビエル以外にも堕天使がいたのね。そちらも警戒しないと……」

 

 

 僅かに考え込んだ後、リアスの視線が小猫に移る。

 

 

「小猫」

「…はい」

「どうして、こんなことを?」

「…祐斗先輩がいなくなるのは嫌です…」

 

 

 小猫は自分の思いを正直に口にした。リアスもそれを聞き、怒りというよりも困惑するような顔に転じていた。

 

 

「…過ぎたことをあれこれ言うのもね。ただ、貴方達がやったことは大きく見れば悪魔の世界に影響を与えるかもしれなかったのよ?それはわかるわね?」

「はい」

「…はい」

「はい…」

 

 

 3人は同時に頷いた。まだイッセーにはこの重大さは分からない。彼はただ漠然と危ないと思っただけで動いていたからだ。リアスの言う規模とイッセーの想像する規模は隔たりがあると思う。イッセーの考え方は遥かに浅はかだた

 

 

「すみません、部長」

「…ゴメンなさい、部長」

「申し訳ありませんでした、リアス」

 

 

 イッセーと小猫、アルトリアは深々と頭を下げた。頭は自然と下がっていた。

 

 

 ベシッ!ベシッ!

 

 

 ずっと聞こえている、何かを叩く音の方へ顔を向けて見れば、匙が会長に尻を叩かれていた。

 

 

「貴方には反省が必要ですね」

「うわぁぁぁん!ゴメンなさいゴメンなさい!会長、許してくださぁぁぁい!」

「ダメです。お尻を千叩きです」

 

 

ベシッ!ベシッ!

 

 

 ソーナの手には魔力がこもっている。アレは悪魔が我が子を折檻する際に使われる魔法だった筈。魔法辞典で昔見た魔法を思い出し、高校生になってあれは色々辛いと、アルトリアは考える。

 

 

「コラ。余所見しない」

「「は、はい!」」

「使い魔を祐斗探索に出させたから、発見しだい、全員で迎えに行きましょう。それからのことはその時に決めるわ。いいわね?」

「「「はい」」」

 

 

 リアスの言葉に3人は返事をした。すると、ぎゅっ、リアスがイッセー小猫を引き寄せ、抱きしめた。彼女の温もりが2人に伝わってくる。

 

 

「…馬鹿な子達ね。本当に、心配ばかりかけて…」

 

 

 優しい声音でリアスはイッセーと小猫の頭を撫でてくれている。イッセーの心と体にリアスの優しさが沁み渡る。

 その時、イッセーは思った。部長の下僕で良かった。こんなに優しい主を得たんだもん。と

 

 

「さ、アルトリアも」

「いえ、私は食客の身。この度の事で責められる事はあっても抱きしめられる事は……」

「何言ってるの、あの家で少なく無い時間を過ごした貴方はもう立派な私の家族。家族を抱きしめるのに理由があるかしら?」

「リアス……」

 

 

 そうしてリアスはアルトリアを抱きしめる。アルトリアも抵抗する事なく、それを受け入れた。

 

 

「貴方にとってもこの一件は無視できないものだったでしょう?ごめんなさいね、いつも頼ってばかりで……」

「いえ、此方こそご迷惑をおかけしました」

「うわぁぁぁん!会長ぉぉぉ!あっちはいい感じで終わってますけどぉぉぉ!」

「よそはよそ。うちはうちです」

 

 

 ベシッ!ベシッ!

 

 

 匙の尻叩きは未だに終わりを見せてなかった。出来ちゃった結婚への道は遠いようだ。

 

 

「さて、イッセー。お尻を出しなさい」

「…へ?ぶ、部長、俺のことお許しになってくれたんじゃ…」

 

 

 ニッコリ微笑むリアスの右手が紅いオーラに包まれた。

 

 

「下僕の躾は主の仕事。貴方もお尻叩き千回よ♪小猫もね。後アルトリアは事が済み次第お兄様から減給処分が降るでしょうね。覚悟なさい」

 

 

 やはり罰は落ちるのだった。




 とある漁港


「ふぅ、今日は悪魔クンも急用かぁ。さて1人寂しく夜釣りでも……と、お前達か。なんだ?夜風に吹かれる寂しい俺の相手でもしてくれるのか?」
「ふっ、アンタが寂しがるタマか?」
「寧ろお前は此処に居ていいのか?コカビエルの一党の成さんとしている事は、お前にとっても都合が悪いだろう?」
「そうでもないさ。これを機に長年歪みあってきた三大勢力の話し合いの場を設ける。そうすりゃ俺の望みにも一歩近づく。それに、」
「万が一にはオレ達が出向くが、だがあの街にはオレ達のライバルが居るのだろう?ならまぁ、何とかなるさ」
「『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』、そして『騎士王』か……楽しみだな、■■■■」
「そうだな、■■■■■」
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