赤龍帝と騎士王の現し身   作:ファブニル

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 いつもより、遅れてしまい申し訳ありませんでした。

 新居に引越してドタバタしたり、慣れない環境と増えた仕事に忙殺されたりと時間が取れませんでしたが、何とか一話完成させました。
 これから少しでも早く投稿できる様頑張っていきますので、どうか皆さま、引き続き応援して頂ければとても嬉しいです。

 よろしければ今回も、お気に入り登録や高評価、感想をお願いします。

 それでは第二十五話、どうぞ!


死戦

 時は少し遡る。アルトリアに後を任せたリアス達は駒王学園のすぐ近くの小さな公園で態勢を整えていた。

 

 

「学園を大きな結界で覆ってます。これでよほどのことがない限りは外に被害は出ません」

 

 

 ソーナがリアスに現状の報告している。これでオカルト研究部と生徒会のメンバーが集まったと思ったが、祐斗だけがこの場に居なかった。イリナの話ではコカビエル達から逃げ切った為、直ぐに合流できる筈だ。イッセーが祐斗の心配をしている間にも、ソーナにより結界の説明は続く。

 結界はシトリー眷属全員で生み出したもので、中の情報を外に漏らさず、内側からの攻撃に特化した作りの様だ。相手は聖書や関連書物にも出てくる堕天使の幹部。何が起きてもおかしくない。

 

 

「これは最小限に抑える為のものです。正直言って、コカビエルが本気出せば、学園だけでなくこの地方都市そのものが崩壊します。さらに言うなら、既にその準備に入っている規模なのです。校庭で力を解放しつつあるコカビエルの姿を私の使い魔が捉えました」

 

 

 ソーナの言葉にイッセーは驚愕と同時に怒りを覚えた。あの堕天使は自分がやりたい事、戦争をしたいが為に街を破壊する気でいるのだ。この街で育った身として、そんな暴挙はさせないと気を昂らせる。ソーナは引き続き説明をする。

 

 

「攻撃を少しでも抑える為に私と眷属はそれぞれの配置について、結界を張り続けます。できるだけ被害を最小に抑えたいものですから…。学園が傷つくのは耐え難いものですが、堕天使の幹部が動いた以上、堪えなければならないでしょうね」

 

 

 ソーナは目を細め、学園の方を憎々しげに見つめる。おそらく学園にいるコカビエルへ向けたものだろう。学園に被害が出るのは確定事項か。俺達の通う学校が…。

 

 

「ありがとう、ソーナ。あとは私達がなんとかするわ」

「リアス、相手は桁違いのバケモノですよ?いまからでも遅くない、貴方のお兄様へ」

 

 

 ソーナの忠告に首を横に振るリアス。

 

 

「あなただって、お姉さまを呼ばなかったじゃない」 

「私の所は…。あなたのお兄さまは貴方を愛している。サーゼクス様なら必ず動いてくれます。だから…」

「すでにサーゼクス様に打診しましたわ」

 

 

 二人の会話を遮って朱乃が言う。少し席を外していたが、その間に報告を済ませてきたようだ。

 

 

「朱乃!貴方勝手に!」

 

 

 非難の声をあげるリアスだが、朱乃は珍しく怒った表情を浮かべていた。

 

 

「リアス、貴方がサーゼクス様にご迷惑をおかけしたくないのはわかるわ。貴方の領地、貴方の根城で起こっている事でもあるものね。けれど、幹部がきた以上、話は別よ。貴方個人で解決できるレベルを遥かに超えているわ。今でさえアルトリアちゃんに街の警護を半ば任せきりな状況ですけど、ここは魔王の力を借りましょう」

 

 

 普段の物腰柔らかな態度とは打って変わり、リアスに詰め寄る朱乃。リアスの方も何か言いたげだが、大きな息を吐き、静かにうなずいた。それを確認して、朱乃はいつものニコニコ顔になる。

 

 

「お話を理解してくれてありがとうございます、部長。ソーナ様、サーゼクス様の加勢が到着するのは一時間だそうですわ」

「一時間…わかりました。その間、私達生徒会はシトリー眷属の名にかけて、結界を張り続けてみせます。アルトリアさんが来た時はちゃんと通しますがね」

「お願いね、ソーナ」

 

 

 ソーナの決意を聞き、リアスも腹を決めた様子だった。

 

 

「…一時間ね。さて、私の下僕悪魔たち。私達はオフェンスよ。結界内の学園に飛び込んで、コカビエルの注意をひくわ。これはフェニックスとの一戦とは違い、死戦よ!それでも死ぬことは許さない!生きて帰ってあの学園に通うわよ、皆!」

『はい!』

 

 

 イッセー達の気合の入った返事が木霊する。

 

 

「兵藤!あとは頼むぜ!」

「分かってるさ、中は俺達に任せろよ!お前は尻のダメージでも気にしてろ」

「言うな!言われるとさらに痛く感じる!お前こそ、尻は?」

 

 

 匙にそう聞かれたイッセーは痛みを思い出したようで、尻をさすっていた。

 

 

「ふふふ。部長の愛が痛い。まあ、今の状況はまさに尻に火が付いた感じだな」

「いやいや、笑えねえよ。それで、木場はまだか?」

「ああ、俺も無事だったんだ、無事だと信じてるさ」

「じきにアルトリアだって来るんだ。木場の奴も必ず来るさ」

「そうだな、俺も信じる」

 

 

 イッセーと匙は拳を合わせ、それぞれの健闘を祈った。結界の入り口が目の前に迫る中、イッセーはいざとなったら代償を支払う事も覚悟していた。

 

 

『任せろ相棒。相手はコカビエルか。不足はないぞ。奴に再びドラゴンの恐ろしさを思い知らせてやろう』

 

 

 覚悟は決まった。コカビエルに見せてやろう、かつて神と魔王に喧嘩を売った赤き龍の帝王の力を……!

 

 

 

 

 

 正門から校舎に入った瞬間イッセーは『女王』へ昇格して、力を底上げを行う。普段なら此方の陣地だが今ではコカビエルに半ば占領された敵地だ。

 

 

「イッセー、今回私達は貴方達をフォローするわ」

「力を高めて、俺がトドメですか?」

「いえ、貴方はサポートに徹してもらうわ。高めた力を仲間に譲渡するの。ブーステッド・ギアはあなた自身をパワーアップさせる神器(セイクリッド・ギア)であると同時に、チーム戦でメンバーの力を飛躍的に上昇させるものでもあるわ」

 

 

 『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』は直接戦闘だけでなく、サポートとしても優秀な神器だ。イッセーが力を高めて誰かに譲渡できれば、コカビエルにも通じる可能性がある。大ダメージを与えずとも、相手の攻撃を打ち消すだけの力を得られるだろう。

 

 

「イッセー、『譲渡』は、貴方自身のパワーアップも含めて何回使用可能かしら?」

「現時点の俺の体力も合わせると、限界まで高めたもので四回か、五回です。いや、五回目で俺自身がぶっ倒れそうなので、四回と考えてください」

 

 

 『赤龍帝の籠手』の力は超常の力を持つ神器の能力でもかなり無茶苦茶な力だ。故に使用には限度が存在し、それは使用者に依存する。現時点での彼では『倍化』は兎も角『譲渡』にはキツイ回数制限が掛かっていた。

 

 

「そう。無駄撃ちはできないわね……」

 

 

 作戦を把握しつつイッセー達が校庭に足を踏み入れると、異様な光景に皆が言葉を失った。校庭の中央に四本の剣が神々しい光を発しながら、宙に浮いている。それを中心に怪しい魔方陣が校庭全体に描かれていた。魔法陣の中央にはバルパー・ガリレイの姿がある。

 

 

「これはいったい…」

「生きていたか、悪魔ども。これかね?四本のエクスカリバーをひとつにするのだよ」

 

 

 バルパーはおもしろおかしそうに口にした。その顔には歓喜と狂気の色が渦巻いている。

 

 

「バルパー、あとどれぐらいでエクスカリバーは統合する?」

「ッッ!」

 

 

 空中から聞こえてくる声に全員が空へ視線を向けた時、月光を浴びるコカビエルの姿があった。宙に椅子に座って、イッセー達を見下ろしていた。

 

 

「五分もいらんよ、コカビエル」

「そうか。では、頼むぞ」

 

 

 コカビエルはバルパーからリアス先輩に視線を移す。

 

 

「サーゼクスは来るのか?それともセラフォルーか?フレギアスの命が消えた以上、あの騎士王の現し身も来るだろうな」

「お兄様とレヴィアタンさまの代わりに私達が」ヒュッ!ドォォォォオオオオオオンッ!

 

 

 風切り音のあと、爆音が辺り一帯に爆風と共に広がっていく。爆風が発生した先にあるのはいや、あったのは体育館だった。

 

 

「体育館が……」

「つまらん。まあいい。余興にはなるか」

 

 

 体育館のあった場所に巨大な光の柱が斜めに突き刺さっていた。それは堕天使の光の槍だったが、あまりにも大き過ぎた。かつてレイナーレが放ったそれと比べれば物干し竿と爪楊枝程の差がある。あんなのまともにくらったら余波でも消し飛びかねない。

 

 

『ビビっているのか、相棒』

 

 

 ドライグがイッセーの心に直接語りかけてくる。

 

 

「(ビビるだろう、あんなの見せられたら!規格外なんてもんじゃねぇ!次元が違うじゃねぇか!)」

『ああ、次元が違うさ。あいつは聖書に記されるほどの古からの強者だ。過去の魔王たちと神を相手に戦い生き残った者だ』 

 

 

 勝てるのか?俺はあいつに勝てるのかよ?ライザー戦時以上の恐怖が彼の心を締め上げる。

 

 

『いざとなったら、俺がおまえの体の大半をドラゴンにしてでも打倒してやるさ。倒せないまでも一時間動けないぐらいのダメージは残してやる。あとは魔王に任せればいい』

 

 

 イッセーの禁手は使えば無類の強さを得られるが、代償として3日ほど神器が使用不能に陥る。ドライグ曰く力を付ければ代償なしで長時間使える様になるとの事だが、今のイッセーはまだまだその域には達していない。

 

 

「さて、地獄から連れて来た俺のペットと遊んでもらおうかな」

 

 

 コカビエルが指を鳴らす。すると、闇夜の奥からズシンズシンと何かが地を揺らしながら近づいてくる。十メートルはあるであろう、黒い巨体。四肢は一つ一つが太く、そこから生えている爪は鉄すら切り裂けるほど鋭い。闇夜にギラギラと輝く血のような真紅の眼と突き出た口から覗かせるのは凶悪極まりない牙。ずらりと並び、牙と牙の隙間から白い息が吐き出されていた。

 

 それは誰もがよく知る地獄のバケモノ。首が三つある大きな犬だった。

 

 

「「ギャオオオオオオオオォォォォォォンッッ!!」」

 

 

 辺り一帯を震わせるほどの咆哮!三つの首が同時に吼えた!

 

 

「ケルベロス!」 

「ケルベロスってあのケルベロスっすか!?」

 

 

 信じられないとばかりにイッセーがリアスに訊ねる。

 

 

「ええ、地獄の番犬の異名を持つ有名な魔物よ。本来は地獄、冥界へ続く門の周辺に生息しているのだけれど、人間界に持ち込むなんて!」 

「そんなにヤバいんすか?」

「末端の個体でも上級クラス。やるしかないわ!消し飛ばすわよイッセー!」

「はい、部長!いくぜ、ブーステッド・ギアァァァ!」

『Boost!』

「行くわよ、朱乃!小猫!」バッ!

 

 

 リアスと朱乃、小猫が翼を展開させ共に空へ舞う。

 

 

「ガルルルルルウルルルウルルルルッ!」

 

 

 ケルベロスが威嚇を向け、一気に飛び出してきた!ゴウゥゥンッ!と首の1つが宙を舞うリアス先輩に向けて、炎を吐く。

 

 

「甘いですわ」

 

 

 朱乃が前に入り、氷魔法で炎を瞬時に凍らせた。

 

 

「くらいなさい!」

 

 

 朱乃の後ろから飛び出したリアスは赤黒い魔力の塊をケルベロスに放つ。滅びの魔力、リアスの魔力は触れたもの全てを消滅させる強力なものだ。

 

 

 ゴバァァァン!

 

 

 ケルベロスの他の首が、火炎の球を撃ちだす。空中で激しくぶつかり合うリアスの魔力とケルベロスの炎、その間にもう一つの首が火炎の球を吐き出してくる。

 リアスの一撃に押し切られそうだった最初の火炎球を二撃目の炎が後押しする。連発によって炎の勢いが増し、今度はリアスの魔力が押し切られそうになっていた。更に火炎球を放とうとしているケルベロス!三発ともなれば今のリアスの魔力でも押し負けるだろう。しかし

 

 

「隙あり」ドゴォォォンッ!

 

 

 小猫が懐に飛び込んで、ケルベロスの頭部に蹴りを加える!

 

 

「さらにもう一撃あげますわ」

 

 

 朱乃が指先を天に向けると、稲光が夜空に発生した。そのまま指をケルベロスへ。カッ!っと一瞬の閃光のあと、ケルベロスが激しい電撃に包まれるた。朱乃の特大の雷がケルベロスに落ち、更にダメ押しにとリアス先輩の一撃が加わる!

 しかし、ケルベロスの体は消滅せず、魔力は横腹に直撃するだけだった。しかしケルベロスの脇腹から、ドス黒い鮮血が噴き出す。煙を上げるケルベロスだが、いまだ眼光は鋭い。あれだけの攻撃を受けて、まだ動けるのはケルベロスそのもの防御力か。

 

 

「力は、まだだ。『譲渡』するにはまだ足らねぇ……クソ」

 

 

 この局面において、イッセーは何度目かの力不足を感じていた。いくら『女王』にプロモーションしたとはいえ、元の能力が低いために力の倍加の振り幅も小さい。

 自分がもっと強ければあっという間に強化できるのに、そう考えていたその時!

 

 

「キャァァァァァァァッ!?」

「グルルルルルルルル……」

 

 

 別の方向から唸り声聞こえてくる。唸り声のした後ろを振り返ってみるとそこにはもう一匹のケルベロスの姿が!

 

 

「もう一匹いるのかよ!」

 

 

 追加で現れたケルベロスを見てイッセーは叫ぶ。ガァオァァァアアッッ!と咆哮をあげて、もう一匹がアーシアの元に駆け出した!イッセーがアーシアの元へ駆け出すがケルベロスの方が速い。間に合わない!獣の牙がアーシアに突き立たんとするその時!

 

 

 ズバッ!

 

 

 イッセー達に向かってきていたケルベロスの首がひとつ宙に舞う!誰だ?アルトリアが来たのか!?

 しかし、彼らの前に現れたのは斧と剣が一体となったかのような聖剣、『破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)』を振るう少女、ゼノヴィアだった。空に飛んだケルベロスの首が塵となって散っていく。

 

 

「彼女でなくて残念そうだが、加勢にきたぞ」ダッ!

 

 

 言うやいなやゼノヴィアは駆け出して、首を一つ失って絶叫を上げているケルベロスの胴体に斬りかかった!

 

 

「ギャオオオァァァッァァアアンッッ!?」

 

 

 破壊力に特化した一振りを受け、ケルベロスの胴が割れる。煙が立ち込め、ケルベロスの胴体が切られた側から消えかかる。

 

 

「聖剣の一撃は魔物に無類のダメージを与える」ザンッ!

 

 

 ゼノヴィアは倒れ込むケルベロスの胸元にトドメとばかりに聖剣を深く突き刺す。その瞬間、ケルベロスの体が塵芥と化して、宙へ霧散していった。

 

 

「すっげぇ……」

「聖剣の力と『破壊』の特性。彼女は見事に使いこなしていますね」

「!アルトリア、無事だったんだな!」

 

 

 愛馬グイントから飛び降り、イッセーの側に降り立ったアルトリア。堕天使達の相手のために1人残っていた彼女だが、目立った外傷もなくイッセーは一安心した。

 胸を撫で下ろすイッセーとアルトリアは、ふと籠手の宝玉が点滅している事に気付く。

 

 

「?イッセー、それは一体……」

「!なんだこれ?」

『譲渡に十分な量が溜まった合図だ。お前も神器も日々進化する。お前が早く力の譲渡をしたがってたから、相手を倒すのに必要な分が溜まった事を知らせる機能が着いたんだろうな』

 

 

 神器は人の願いに呼応して進化する。イッセーは早くリアス達に『譲渡』をしたかったがそもそもの強化が遅く、加えて相手の力量が測れず、最適なタイミングが分からなかった。そこで神器は相手を倒すのに最適な量が溜まった事を伝える一種のタイマー機能を追加したのである。

 イッセーも突然の状況に驚いているようだが、すぐに思考を切り替え空を飛ぶリアスと朱乃に向かって叫ぶ。

 

 

「部長!朱乃さん!ケルベロスを屠れるだけの力が溜まりました!」

 

 

 それを聞き、2人は顔を見合わせて頷く。同時に両者が俺達の元へ降下してくる。

 

 

「イッセー!あなた、ライザーとの一戦で十字架と聖水を同時に強化していたわね?」

「はい!ドライグに聞いたら、同時に二つまでなら可能だそうです。ただ、どちらも倍増分の七割か八割しか譲渡出来なくなるみたいです!」

 

 

 リアスと朱乃に説明するイッセー。だが二人とも承知のようだ。

 

 

「それだけあれば十分ね」

「はい、いけますわ」

「「お願い!」」

 

 

 リアスと朱乃が同時に号令をかける。イッセーが飛び上がり、2人の肩を叩き、神器を発動させる。

 

 

「いくぜ!ブーステッド・ギア!ギフト!」

『Transfer!!』

 

 

 刹那、二人の体から凄まじい魔力が漂う。赤龍帝の力によって魔力の量が跳ね上がったのだ。両者とも溢れ出す力に驚いている。

 

 

「凄い力……」

「これならいけるわ」

 

 

 リアスの不敵な笑みに朱乃もうなずいた。

 

 

「朱乃!」

「はい!天雷よ!鳴り響け!」

 

 

 朱乃さんが天に指をかざし、雷を支配する。指の照準が、ケルベロスに向けられた。雷撃を察したのか、ケルベロスがその場から逃げようとする。しかし、

 

 

「逃がさないよ」ザシュ!

 

 

 ケルベロスの四肢を無数の剣が貫いていく!地面から生える剣、この攻撃はグレモリーが誇る『騎士』の一撃だ!

 

 

「!『魔剣創造(ソード・バース)』、来ましたか」

「なんてグッドタイミングで駆けつけてんだよ!木場!」

 

 

 カッ!ドオオオオオオオンッッ!

 

 

 四肢を魔剣によって縫い付けられたケルベロスに天からの雷が降り注いだ。先程とは比べ物にならない、校庭の半分以上を覆いつくす雷の柱!

 ケルベロスは絶叫をかき消され、その体も稲光の中で無に帰した。ケルベロスが消えた瞬間、間髪入れずにリアスがコカビエルの方へ手を向ける!

 

 

「喰らいなさい!コカビエル!」ドウゥゥゥゥォォォオオオンッ!

 

 

 リアスの手から、巨大な魔力の塊が撃ちだされた!

 

 

「デカい!」

 

 

 余りの大きさにイッセーも声に出していたが、長い付き合いのアルトリアから見てもその規模は普段の10倍はあろうかという程である。それが凄まじい速度を得て、宙に座る堕天使の幹部へ襲い掛かる!

 コカビエルに降りかかる滅びの一撃!だが、彼は片手を前に突き出しただけだ。

 

 

「フン」ゴオオオオオオオォォォォォオオンッッ!

 

 

 次の瞬間、虫でも追い払うかのようにリアスの放った魔力の塊は軌道をずらされ、テニスコートに着弾。一帯を消し飛ばした。掌から立ちのぼる煙を見て、コカビエルは楽しそうな笑みを見せる。

 

 

「なるほど。赤龍帝の力があれば、ここまでリアス・グレモリーの力が引き上がるか。なるほど、存外に面白いぞ」

 

 

 クククと一人おもしろおかしそうにコカビエルは空で哄笑をあげていた。

 

 

「そんな……」

「やはりコカビエルは一筋縄ではいかないか。なら!」

 

 

 コカビエルの様子を見たゼノヴィアは目標をバルパーと聖剣に変える。先に聖剣の融合を解除しようとの目論見だ。

 

 

「ならば私も『待て!行ってはダメだアルトリア!』ッ!?エムリス?」

 

 

 ゼノヴィアに続かんとするアルトリアをエムリスは強く止めた。まるで罠に掛からんとする者を制止するかの様に。そんな声など届かないゼノヴィアは聖剣を振り上げながらバルパーに迫る!

 

 

「バルパー・ガリレイ!裁きを受けろ!」

「だが、断る」

 

 

 ドカァァァァァァァアァァン!!

 

 

 バルパーまであと僅か、その時ゼノヴィアの踏んだ地面が爆発した!

 

 

「なんだ!?」

「トラップ!?」

「邪魔されたくは無いのでな、少々小細工をさせて貰った」

 

 

 あの爆発に巻き込まれてはアルトリアとて無傷では済まない。現にゼノヴィアは手にした剣を手放す程に吹き飛ばされている。

 

 

「ゼノヴィアさん!」

「クッ……アーシア、アルジェント……なぜ」

「目の前で怪我をした人を放ってなんておけません!」

 

 

 倒れ伏すゼノヴィアだったが、駆け寄ったアーシアから治療を受ける。一時は『魔女』として断罪せんとした相手からの奉仕にゼノヴィアは屈辱よりも寧ろ博愛の心を感じていた。何かが彼女の中で変わり始めている。

 

 

「いやぁ、ものの見事に引っ掛かってますなぁ。正に猪!」

「フリード、それを此方に寄越せ。追加で『破壊の聖剣』も組み込む」

「マジ?んな事出来んのか爺さん?」

 

 

 魔術の行使には繊細な作業が必要となる。様々な計算の上に成り立つ魔術にとって、外部からの干渉やイレギュラーは想定外の自体を引き起こしかねない。

 

 

「私を舐めるな。そもそもこの術式はそこにある真のエクスカリバーの光を取り込む事を前提に出来ている。かの星の聖剣の膨大な力を受け入れるために術式に余裕は持たせてある。尤も、そこな礼装に止められてしまったがな」

『バルパー・ガリレイ。この結界に入った瞬間、此方の魔力を吸わんとするその魔法陣には警戒していた。それは聖剣の光を吸収し、取り込む為の魔術も含まれているね』

「聖剣の、光を?」

 

 

 コカビエルからエクスカリバーの真実を聞かされたバルパーは、早速自身の計画に大幅な修正を加えた。ただ単にエクスカリバー達を融合する魔術から、聖剣の力を取り込み全く新しい聖剣を生み出す方向へと魔法陣を書き換えたのだ。

 

 

「そうだ。最早過去の聖剣を再現するのでは足りない。エクスカリバー、カレトヴルッフ、二つの聖剣の力を合わせ新たな聖剣へと新生させる!」

 

 

 幸い堕天使陣営には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、相手がエクスカリバーによって邪魔せんとした際には逆にその力を取り込み、聖剣の糧とする気でいた。

 

 

「エクスカリバー、カレトヴルッフ……?」

「ほう、ミカエルはあの話をしていないのか。まぁ良い。土壇場で更にもう一本とは運がいいな。バルパー、追加の融合にはどれくらい、っと。なんだもう出来たのか」

「……完成だぁ!」

 

 

 五本のエクスカリバーが眩い光を発し始めた。皆がその光景に釘付けになる中、コカビエルは空中で拍手を送る。

 

 

「五本のエクスカリバーが一つになる」

 

 

 神々しい光が校庭全域に広がっていく。あまりの眩しさに皆が手で顔を覆った。目を凝らして校庭の中央を見て見れば、五本の聖剣が重なっていくのがわかる。もともと一本の聖剣カレトヴルッフであった物が七本に分かれた教会のエクスカリバー、そのうちの五本が一本に戻っていく

 眩い光が終わった時、校庭の中央には、白いオーラを放つ一本の聖剣が浮かんでいた。

 




 バルパーが仕込んだ追加の術式は、とある2次創作から着想を得た物です。アレは中々に新解釈で私も目から鱗でした。

 あんな感じの新しい視点を生み出してみたいなぁと思います。
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