今回でエクスカリバー編は終了、次回からはヴァンパイア編に移ります。出したかったヴォーティガンの少女も出せたので、こっから独自要素も色々追加していきたいなぁと思っております。
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それでは第二十八話、どうぞ!
光の中から現れた2人の人影。1人は白き
もう1人は黒髪の少女。赤いトップスと、黒のホットパンツにニーソックス、その上からボロボロの外套をマントのように羽織っている。その他ブローチなど装飾品を纏っているが何より目を引くのは異形の左腕だ。黒く、禍々しく、右腕の倍近い体積を持っている。まるで悪魔のような、ドラゴンのような角張った攻殻と鋭い爪を備えた腕。そこから瘴気の様な物が漏れ出していた。
「ふむ、これほどとはな……」
「平気か?」
「問題ない。が、お前が半減させていなければ少々危うかったかもしれんな」
少女を心配するように若い男の声が呼び掛ける。その鎧には見覚えがあった。似ている、姿形は違うがその姿は『
恐らく、皆一様に同じことを考えているだろう。そして、同時に把握した。目の前の存在が何者なのか。
「…何故だ、何故邪魔をした!!『
最初にその名を口にしたのは堕天使の幹部であるコカビエルだった。イッセーの『
その神秘的な鎧と禍々しい少女に皆の視線が釘付けになる。対するコカビエルは2人を前にして舌打ちした。
「チィッ…!『
「改めて聞く、何故割り込んだ!事と次第によっては……」
コカビエルが全てを言い切る前に、彼の翼が宙を舞った。そして、傷口から鮮血が飛び出す。
「ガアッ!?」
「まるでカラスの羽だ。薄汚い色をしている。アザゼルの羽はもっと薄暗く、常闇のようだったぞ?」
「割り込んだ理由だが、簡単だ。私たちは兎も角他の奴らはお前に今死なれては困るからだ」
目で捉えきれなかったが、白い何かがコカビエルを襲ったように見えた。「
「き、貴様!俺の羽をっ!」
翼をもがれ、怒りをあらわにするコカビエルだが、『
「どうせ堕ちた印だ。地より下の世界へ堕ちた者に羽なんて必要ないだろう?まだ飛ぶつもりなのか?」
「『
空に無数の光の槍を出現させ、それを投射するコカビエルだが、『
「我が名はアルビオン」
『
音声が聞こえ、コカビエルを覆っていたオーラが一気に減少する。宙を飛ぶ光の槍も半数が霧散した。もう半数もヴォーティガンが翳した左腕によって掻き消される。
「我が神器、『
赤龍帝の能力は所有者の力を倍加し、何かに譲渡する。白龍皇の能力は相手の力を奪い、自らの糧にするもの。正に対、正反対の能力だ。
「手を貸そうか?」
「いや。コイツ程度、お前の手を煩わせるまでも無いさ」
「言わせておけばァッ!!」
残った翼を羽ばたかせ、コカビエルがアルビオンに立ち向かっていくが、光速とでも言える動きで翻弄され、捉えられていなかった。先程までコチラを圧倒していたコカビエルが、アルビオンと名乗った男に弄ばれている。
『
「おのれ!」
光の槍と剣でアルビオンに攻撃するが、白龍皇は腕を横になぐだけで全てを消し去ってしまう。コカビエルが苦戦している間にも、彼の力は更に半分になっていく。
『
何度目かの音声が響き、コカビエルの動きはイッセーでも相手にできるほど、目に見えて落ちていた。アルビオンがため息を吐く。
「…もはや、中級の堕天使並みか。つまらない。もう少し楽しめると思ったんだが…終わらせるか」フッ。
視界から消え去り、光の軌跡を残しながら、アルビオンがコカビエルへ直進する。その動きはアルトリアやリアスでさえ捉えるのがやっとだった。
ドゴッ!
アルビオンの拳がコカビエルの腹部に深く突き刺さる。身体をくの字に折り曲げて、コカビエルが吐しゃ物を地面に撒き散らした。その姿に先程までの偉大なまでのオーラは微塵も感じられなかった。
「…バ、バカな…。こ、この俺が…」
「なんだ、ありきたりの台詞を吐くんだな。バカな?この俺が?そのあとはなんだ?」
「そんなはずはない、じゃないか?」
「フッ、あり得そうだな」
ヴォーティガーンの言葉にアルビオンはおかしそうに笑っている。戦場の中だというのに、その姿はまるで友人か恋人同士の様に仲睦まじげに見えた
「さて、あんたを無理やりにでも連れて帰るようアザゼルに言われているんだ。あんたは少しばかり勝手が過ぎた」
「貴様!そうか!アザゼルが!アザゼルゥゥゥゥ!お、俺はぁぁぁぁ!」
ゴンッ!
アルビオンの拳がコカビエルの顔面に突き刺さった。ずるっ…と、コカビエルは、その場に力なく崩れ落ちて、そのまま地面に突っ伏す。堕天使の幹部を難なく地面に堕としたアルビオンは自分で倒したコカビエルの体を肩に担いだ。
「フリードも回収しなければならないか。聞き出さないといけないこともある。始末はそのあとか」
「なら奴は私がかつごう」
「助かる」
ヴォーティガンが倒れこむフリードのもとにも足を運び、アルビオンは腕に抱えた。彼らは二人を回収すると、それぞれ光の翼とドラゴンの翼を展開し、空へ飛び立とうとした。
『無視か、白いの』
威厳に溢れた声がイッセーの籠手から発せられる。イッセーの籠手が光だしていた。
『起きていたか、赤いの』
アルビオンの鎧の宝玉も白き輝きを発していた。赤き龍と白き龍、古よりの宿敵にして共に神器に宿る龍同士が会話しているのだ。
『せっかく出会ったのにこの状況ではな』
『いいさ、いずれ戦う運命だ。こういうこともある』
『しかし、白いの。まさかお前もバディを連れているとはな。それもヴォーティガーンとは』
『赤いの、お前こそあ奴の現し身と一緒とは。あの光を見るのも1500年ぶりか、懐かしいな』
『だな、これは今回こそあるかもしれん』
『その日が楽しみだ。ひとまず今日は帰らせてもらう。また会おう、ドライグ』
『じゃあな、アルビオン』
赤龍帝と白龍皇の会話は終わったようだ。互いに別れを告げた両者だったが
「おい!どういうことだ!?お前らは何者で、何をやってんだ!?てか、お前らのせいで俺は部長のお乳が吸えなくなっちまったんだぞ!」
「今それを言いますかイッセー!?」
「ったりまえだ!あのままなら俺たちでコカビエルをぶっ倒せてたかもしれなかったんだぞ!」
アルビオンに対して怒りをあらわにするイッセー。怒るポイントが可笑しいと突っ込むアルトリアだが、彼にとってはそちらが重要だった。それに対して
「全てを理解するには力が必要だ。強くなれよ、いずれ戦う俺の宿敵くん」
「そういう訳だ。また会おう、私の宿敵。アーサー王の現し身よ」
少女が
乱入者が去った後、アルトリアは待機状態のペンダントに戻ったエムリスを見つめていた。あの一撃は間違いなく今の彼女が第二段階で放てる最高の一撃だった。にも拘らず、白龍皇の能力込みとはいえヴォーティガンに防がれてしまった。ヴォーティガーンは聖剣の光を呑むというあの伝説は事実らしい。いずれ相対した時に備えて己を鍛えなくては……
パシッ。
音のほうへ向けば、祐斗の頭をイッセーが叩いたようだった。
「ようやく終わったな、色男。聖魔剣、改めて見ても白いのと黒いのが入り混じっててキレイなもんだなぁ」
興味津々の様子でイッセーは改めて聖魔剣を見ていた。あの感じ、アレは意図した仕草だろう。
「イッセーくん、僕は」
「ま、いまは細かいの言いっこなしだ。とりあえず、一旦終了ってことでいいだろう?聖剣もさ、おまえの仲間のこともさ」
「その通りです。バルパーは斃れた、これで少なくとも貴方のような存在が生まれる事は無いでしょう。未だ残る人工聖剣使いの件はこれからゆっくり解決していけばいいのですから」
祐斗を励まそうとしているイッセーに便乗し、アルトリアもまた彼に声を掛ける。
「うん」
これでようやく祐斗も聖剣の呪縛から解放された。あの時は先延ばしする事しか出来なかったが、これで肩の荷が一つ降りた。後は政治の世界の問題だろう。
「…木場さん、また一緒に部活できますよね?」
アーシアが心配そうに訪ねる。神の死を聞かされたショックが抜けきっていないだろうに自分より他のだれかを心配できるのは彼女の美徳だ。それはこれからも、決して変わらないのだろう。
「祐斗」
祐斗を呼ぶリアス先輩。
「祐斗、よく帰ってきてくれたわ。それに
「…部長、僕は…部員の皆に…。何よりも、一度命を救ってくれたあなたを裏切ってしまいました…。お詫びする言葉が見つかりません…」
リアスが祐斗の頬を撫でる。その表情は慈愛に満ちていた。
「でも、貴方は帰ってきてくれた。もう、それだけで十分。彼らの想いを無駄にしてはダメよ」
「部長…。僕は改めて誓います。僕、木場祐斗はリアス・グレモリーの眷属『騎士』として、貴方と仲間達を終生お守りします」
「うふふ。ありがとう。でも、それをイッセーの前で言ってはダメよ?」
アルトリアがちらりとイッセーを見れば嫉妬の眼差しで祐斗を睨んでいた。
「俺だって『騎士』になって部長を守りたかったんだぞ!でも、お前以外に部長の『騎士』を務まる奴がいないんだよ!責任持って、任務を完遂しろ!」
イッセーは照れくさそうに言う。
「うん、わかっているよ、イッセーくん」
「ユウト。貴方の恨みがようやく晴れた事、同じ剣士として嬉しく思います。あの時は見られなかった貴方本来の剣とまた手合わせをしたいものです」
「ああ、その時はお手柔らかにね」
「さて」
ブゥゥゥン、と危険な音を立てて、リアスの手が紅いオーラに包まれた。あの魔法を発動したという事はまさか……。リアスはニッコリ微笑んで言った。
「祐斗、勝手なことをした罰よ。お尻叩き千回ね」
魔王の加勢が到着したのは全てが終わってから三十分以上たってからだった。その間祐斗はイッセーと、後から合流した匙に笑われながら、尻を叩かれたという。
◆
ここは駒王学園から少し離れた路地裏の廃屋。昔はタバコ屋があったであろう建物の前には半ば錆びついたベンチが置かれている。そこに一人の少女が座っていた。
「はぁ、これからどうしたものか……」
青い髪に緑のメッシュの入った豊満な少女、教会の戦士にして今代のデュランダル使いでもあるゼノヴィア。つい先ほどまで危険かつ重大な任務に就いていた彼女だったが今はそんなことはどうでもよかった。
任されていた聖剣の回収は核となる部分を手に入れる事には成功した。首謀者であるコカビエルもまた、乱入してきた白龍皇と卑王によって倒された。あとは負傷した相棒の紫藤イリナの回復を待ってヴァチカンに戻るだけ。だが戻るに戻れなかった。
「主が、身罷られていた……そんな筈はない。そんな、筈は……」
「現実逃避をしていても、事態は好転しませんよ」
「!アルトリア・ペンドラゴン……」
ゼノヴィアの隣に腰かけたのはつい先ほどまで共に戦っていた少女、アルトリア・ペンドラゴン。ゼノヴィアと同じく伝説の聖剣に選ばれた天然物の聖剣使いであり、先の戦いでは白龍皇達に防がれてはしまったものの、赤龍帝と協力して確実にコカビエルを消し飛ばせるほどの一撃を放ってみせた。
「そんな筈はない!主が身罷られていたなど!」
「貴方も薄々感づいているのでは?あの時、コカビエルの発言は真に迫っていた。恐らくはあの後の不満も含めて彼の本音でしょう。状況証拠ですが、聖魔剣という証拠も揃っている」
「なら私の今までの信仰は、祈りは、何だったのだ!私はそれを生きがいに今まで剣を振るってきたというのに、主が居ないのであれば、この剣を振るう意味も……」
唇を噛みしめ、拳を震わせる。やり場のない感情がゼノヴィアの中を荒れ狂っていた。彼女も頭の中では理解している。しかし、孤児であり幼いころから教会で育ったゼノヴィアにとって神の存在、神の教えは大きな支えであった。成長の中で柔軟な信仰を持つようになってからもそれは変わらなかった。
「……であれば簡単なことです。新たな生きがいを探すのです」
「新たな、生きがい?そんなもの……」
「確かに貴方の中でキリスト教の教えは大きなものでしょう。そして敬う対象がいないと分かった今その喪失感は尋常ならざるものだ。ですが、それだけで生きる意味を捨てるのは余りにも早計です」
「だが、私は今まで神に祈り、剣を振るうことしかしてこなかった。今更……」
ゼノヴィアの言葉を聞き、アルトリアは意を決した様に口を開いた。
「私は、この街に来るまでに幾つもの紛争地帯や治安の悪い地域を巡って来ました。何処も悲鳴と悲しみ、怒りに満ち、これをエクスカリバーによって鎮め、治めるのが私の役目だと思っていました」
「!君にそんな過去が……」
「ですがこの街に来て、イッセー達と共に過ごす中で、斬ること以外の生き方を見つける事が出来た。世界は我々が思っている以上に広い、私もこの街に来て、イッセーたちと出会い、世界が大きく広がった。あの頃よりも多くのやりがい、生きがいを私は見つけることが出来ました。」
「……私に、そんなことが出来るだろうか……」
「アーシア・アルジェントは教会を追放されて尚、信仰を諦めなかった。そして神の死を知った今も、彼女は必死に立ち上がろうとしている。貴方の信仰の強さは彼女に匹敵する。貴方であれば例え神が居なくても、神の掲げた博愛の心と慈悲を失う事はないのでは?」
その言葉を聞いたゼノヴィアの瞳に僅かながら光が宿った。どうやら自分の為すべきことを決めたようである。
「感謝する。腹は決まったよ」
「なら良かった。貴方の道に幸あらんことを」
◆
コカビエル襲撃事件から数日後。放課後、部活の助っ人を終えたアルトリアは、途中でイッセーとアーシアと合流し、オカルト研究部の部室へ入った。そこにはいつものメンバーの他に一人、外国人の少女がいた。
「やあ、兵藤一誠、アルトリア・ペンドラゴン」
青髪に緑色のメッシュを入れた女子、ゼノヴィアが駒王学園の制服を着て堂々と部室に居た。
「ゼノヴィア……」
「なっ…なんで、おまえがここに!?」
静かに驚いたアルトリアは驚愕の表情を浮かべ、動揺を隠せないイッセーは指を突き付けて訊ねる。その問いに答えるかのようにゼノヴィアが立ち上がると
バッ!
ゼノヴィアの背中から黒い翼が生える。それは悪魔特有の刺々しく、被膜の張った物だった。ゼノヴィアはふんと鼻息をつきながら言う。
「神がいないと知ったんでね、破れかぶれで悪魔に転生した。リアス・グレモリーから『騎士』の駒をいただいた。デュランダルがすごいだけで私はそこまで凄くなかったようだから、ひとつの消費で済んだみたいだぞ。で、この学園にも編入させてもらった。今日から高校二年の同級生でオカルト研究部所属だそうだ。よろしく頼むよ」
「破れかぶれって……」
「もしやあの時の会話の後に踏み切ったのですか」
教会から離れて静かに過ごすくらいを想像していたアルトリアだったが、まさか悪魔に転生してくるとは思いも寄らなかった。
「デュランダル使いが眷属にいるのは頼もしいわ。これで祐斗とともに剣士の二翼、アルトリアも含めれば強力な三剣士が誕生したわね」
リアスは楽しげだ。伝説の聖剣を持った剣士が味方に加わるのは心強い。特に「レーティングゲーム」ではアルトリアが参加できない以上、対悪魔にデュランダルは大いに活躍してくれるだろう。祐斗の禁手に続いてグレモリー眷属に更なる強化が施された。
「そう、私はもう悪魔だ。後戻りできない。神がいない以上、私の人生は破綻したわけだ。だったら新しい生きがいを探すためにいっそ元敵の悪魔に降るというのも良いかと思ってね」
なんという思い切りの良さ。教会の戦士として活動していた頃、雨に打たれていた頃からは想像できない程の振り切れ具合だ。
「所でイリナはどうしたんだ?」
イッセーが問いかける。相棒が悪魔になるなんて知れば、ゼノヴィア以上に硬い信仰を持つ彼女なら止めるはずだ。
「イリナなら、私のエクスカリバーを合わせた五本を持って本部に帰った。統合したエクスカリバーを破壊してしまったせいか、芯となっている『かけら』の状態で回収した。まあ、奪還の任務には成功したわけだよ。芯があれば錬金術で鍛えて再び聖剣にできる」
「欠片になってるとはいえエクスカリバーを返していいのか?てか、教会裏切っていいのかよ?」
「いちおうあれは返しておかないとマズイ。デュランダルと違い、使い手は他に見繕えるからね。私にはデュランダルがあれば事足りる。あちらへ神の不在を知った事に関して述べたら、何も言わなくなったよ。私は神の不在を知った事で異分子になったわけだ。教会は異分子を、異端を酷く嫌う。たとえ、デュランダルの使い手でも捨てる。アーシア・アルジェントの時と同じだな」
聞いたことがある。キリスト教は異教よりも異端を嫌うという、異教であればキリスト教に改宗させ
「イリナは運がいい。怪我をしたため、戦線離脱していたとはいえ、あの場で、あの真実を知らずに済んだのだからね。私以上に信仰の深かった彼女だ。神がいない事を知れば、心の均衡はどうなっていたか分からない」
敬虔なクリスチャンほど、真相は辛い物だろう。自分の生き方全てを否定されることになるからだ。ゼノヴィアのように生きがいや目標を見失い、生きる気力そのものを奪いかねない。そうなった人間が何をするのか、どうなるかは、おおよそ碌なことにはならないだろう。
「ただ、私が悪魔となった事をとても残念がっていた。神の不在が理由だと言えないしね。なんとも言えない別れだった。次に会う時は敵かな」
ゼノヴィアは目元を細めながら言う。紫藤イリナ、どんな気持ちで帰国したのか…。部員が全員そろったことを確認すると、場を仕切りなおすようにリアスが語りだす。
「教会は今回のことで悪魔側つまり魔王に打診してきたそうよ。『堕天使の動きが不透明で不誠実の為、遺憾ではあるが連絡を取り合いたい』と。それとバルパーの行いについても過去逃したことに関して自分達にも非があると謝罪してきたわ」
文面から不快感と嫌悪、嫌々なのが見て取れる。教会、天使側からすれば悪魔と連絡を取り合うことすら嫌なのに、ましてや自分たちの非を認めて謝罪するなど、屈辱以外の何物でもないだろう。
しかし、少なくとも『聖剣計画』関係者への謝罪が見れたのは彼らも誠意が無いわけではないという事だ。
「しかし、この学び舎は恐ろしいな。ここには魔王の妹がもう一名いるのだもの」
と、ゼノヴィアはため息を吐きながら言う。リアスと幼馴染でもある生徒会長、真の名をソーナ・シトリー。彼女たちシトリー眷属のお陰で戦闘の余波は周辺に及ばず、破壊された校舎も彼女たちが中心となって修復してくれたという。今思い返せばあの時のエクスカリバーの一撃がコカビエルに当たっていればそれによって学校どころか結界ごと吹き飛んでいたかもしれない。
コカビエルを倒すためにはあのレベルの力が必要だったとはいえ、彼女たちも肝が冷えただろう。今度菓子折りを持っていかなければならないだろう。
「今回のことは、堕天使の総督アザゼルから、神側と悪魔側に真相が伝わってきたわ。エクスカリバー強奪はコカビエルの単独行為。他の幹部は知らない事だった。三すくみの均衡を崩そうと画策し、再び戦争を起こそうとした罪により、『
リアスがそう説明してくれた。終身刑を超え、実質的な死刑だろう。彼は氷の檻に閉じ込められ、二度と自分たちの前には姿を現さない。
「『
あの時、空から降ってきた『
神器を高めたイッセーの力を借り、エクスカリバーの力を解放してようやく倒せるはずだったコカビエル相手に立ち回った彼らといずれは雌雄を決する時が来るだろう。イッセーだけでなく自分も強くなる必要があると、アルトリアは再認識した。
「近いうちに天使側の代表、悪魔側の代表、堕天使代表のアザゼルが会談を開くらしいわ。なんでもアザゼルから話したいことがあるみたいだから。そのときにコカビエルの事を謝罪するかもしれないなんて言われているけれど、あのアザゼルが謝るかしら」
肩をすくめながら、リアスが忌々しそうに言う。堕天使総督、アザゼル。サーゼクスからの情報では豪胆、エゴの塊という話だ。最近ではコカビエルが不満をこぼしていたように神器の回収、及び研究に熱中しているという。
しかし、三大勢力の代表による会合。間違いなく歴史が動く出来事になるだろう。今後への影響も計り知れない。
「私達もその場に招待されているわ。事件にかかわってしまったから、そこで今回の報告をしなくてはいけないの」
「マジッスか!?」
「そして、その場では間違いなくエクスカリバーへの説明が求められる。アルトリア、貴方にも参加してもらう事になるわ」
「…遂に公表するのですか。分かりました、同席します」
リアスの言葉にイッセーが驚く。各陣営のトップが集まる中に呼ばれてるのだから驚くのも無理はないが、彼もまたこの三勢力に深く関わっているのだ。正確には彼の中にいる
「…『
「そうだ。アザゼルは『
あれで四番目か五番目。となるとアザゼルは更に強いのだろう。一勢力の長を務めるのだから強いのは当然か。と、ゼノヴィアの視線がアーシアに移る。
「…そうだアーシア・アルジェント、君に謝ろう。主がいないのならば、救いも愛も無かったわけだからね。すまなかった、アーシア・アルジェント。君への魔女という発言、謝罪したい。君の気が済むのなら、殴ってくれてもかまわない」
ゼノヴィアが深々と頭を下げる。神の不在を知り、自分を見つめなおした結果、初めて会った時の事を彼女は気にしていたのだろう。
「…そんな、私はそのようなことをするつもりはありません。ゼノヴィアさん。私は今の生活に満足しています。悪魔ですけど、大切な人に大切な方々に出会えたのですから。私はこの出会いと、今の環境だけで本当に幸せなんです」
聖母のような微笑みでアーシアは彼女を赦した。アーシアは本当に良い子だ。神の死を知った直後は精神的に不安定な状態にあったが、イッセーとリアスが側についてなんとか元に戻ってくれている。
「…クリスチャンで神の不在を知ったのは私と君だけか。もう君を断罪するなんてことは言えやしないな。異端視か。尊敬されるべき聖剣使いから、異端の徒。私を見る目の変わった彼らの態度を忘れられないよ」
そのとき、ゼノヴィアの瞳に少しだけ悲しみの影が映った気がした。報告をし、神の死を問いただしたときに上層部や他の信徒から白眼視や心無い言葉を向けられたのだろう。
「では、私は失礼する。この学園に転校するにいたって、まだまだ知らねばならないことが多すぎるからね」
部室を後にしようとするゼノヴィア。
「あ、あの!」
そのゼノヴィアをアーシアが引き止めた。
「今度の休日、皆で遊びに行くんです。ゼノヴィアさんもご一緒にいかがですか?」
屈託のない笑顔で言うアーシア。ゼノヴィアは少しだけ驚くように目を見開くが、直ぐに苦笑する。
「今度機会があればね。今回は興が乗らないかな。ただ」
「ただ?」
首をかしげるアーシアにゼノヴィアは笑顔で問う。
「今度、私に学校を案内してくれるかい?」
「はい!」
アーシアも笑顔で答える。自然なゼノヴィアの笑顔を初めて見たが、本来の彼女は悪い人間ではないのだろう。
「我が聖剣デュランダルの名に懸けて、そちらの聖魔剣使いとも再び手合わせしたいものだね」「いいよ。今度は負けない」
「その時は聖剣エクスカリバーとも手合わせしたいな。最強の聖剣がどちらか、決めようじゃないか」
「フッ、望むところです」
剣士たちは笑顔でいつかの再戦の約束を取り決めた。それを確認するとゼノヴィアは部室を後にした。祐斗の全身から自身と共にオーラのような物が立ち上る。恐らくは闘気だろう。あの校庭での戦いが彼を大きく変えた。ぼやぼやしていたらグレモリー最強の座も取られかねないな、とアルトリアも気を引き締める。すると、ポン!とリアスが手を鳴らした。
「さ、全員が再びそろったのだから、悪魔の活動も再会よ!」
『はい!』
全員が元気よく返事する。その日、久しぶりにイッセーたちは部室で談笑する事が出来た。
ヴォーティガーンの情報 その一
彼女は妖精にあらず。彼女はドラゴンである。