赤龍帝と騎士王の現し身   作:ファブニル

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 どうも、皆さま。

 今回からヴァンパイア編に移ります。ギャスパー君というか、吸血鬼の今後の扱いどうしようかなぁと思案の真っ最中で御座います。型月的な吸血鬼やら吸血鬼伝説で無辜った人らを絡ませるか、そこが問題だ……
 
 そして先日、お気に入り登録者数が500人を超えました。これだけの人に登録していただいた事、大変嬉しく思います。これからも頑張って参りますので、よろしければ今回もお気に入り登録や高評価、感想をお願いします。

 それでは第二十九話、どうぞ!


停止教室のヴァンパイア
『堕天使総督』と『魔王』


 ゼノヴィアの眷属加入から更に日が経ったある日、イッセーはお得意様の依頼をこなしていた。

 

 

「いや~、悪いね悪魔くん。荷物持ちなんてさせてさ」

「い、いえ。全然大丈夫っす」

 

 

 イッセーのお得意様の一人であるこの外国人の男。黒髪と金髪が混じったような、一見するとプリン頭などと呼ばれそうだがそれでいて様になる出で立ち。見た目はそれなりに年を取っているが雰囲気は若々しく、「イケメン王子」と呼ばれる『騎士』木場祐斗よりもイケメンだ。それでいて悪党っぽい雰囲気が漂っているが、それもまたチョイワルおじさんとしてそういうのが好きな女子にはどストライクだろう。

 

 

「しかし日本って国は面白いもんがゴロゴロしてるな。いやぁ、大量大量」

「ま、まさか最新ゲームハードとソフト。それに加えて他のゲームソフトから、レトロゲー、ボドゲまで買うとは……すげぇ大人買い」

「こういうのは掘り出しだすと止まらんからな。現に中々にレアなゲームもゲットできた訳だから、俺としては満足いくショッピングだったよ」

 

 

 イッセーとしては、これがリアスやアーシアのような美少女ならばまだしも、男のショッピングの荷物持ちというのは……仕事でなければ間違いなく断っている所だ。

 

 

「そうだ。メインの報酬は家についてから払うが、コレやるよ」

「?!こ、これは!未だに名作として語られるあの伝説のエロゲー……!!」

「偶然見つけてな。ヒロインがみんな乳デカいし、グラフィックもお前さん好みだと思ってな。ま、チップって奴だ」

「いつもご愛顧ありがとうございます」

 

 

 前言撤回。やはりこの人は素晴らしい人だ。ゲーム一本で評価を覆したイッセーだったが男とは単純なものである。ましてや男子高校生などその極みだ。

 

 

「イッセー。お疲れ様です」

「!?あ、アルトリア!!ッとと」

 

 

 突然声を掛けられ、危うく荷物を取り落としかける。すかさず体勢を立て直したお陰で荷物を取り落とす事は無かった。

 

 

「すみません。偶然近くにいる事を察知しまして様子を見に来たのですが、大丈夫ですか?」

「お、おう。平気平気……」

 

 

 危なかった。もし買ったばかりの商品を落としていたら、イッセーの過失として自分だけでなく、リアスたちにも迷惑が掛かりかねないところだった。加えて今自分は伝説のエロゲーを懐にしまっている。バレたらどんな折檻があるか分かった物ではない。

 

 

「お、可愛い子じゃないか。なんだなんだ?悪魔くんの彼女か?」

「ち、違いますよ!コイツとは別にそんなんz「イッセー!!」うおッ!?」

 

 

 気恥ずかしさから否定したイッセーだったが、突然首根っこを掴まれて引っ張られる。荷物ごとアルトリア側に引っ張り込まれたイッセーが向き直ると、幼馴染がコカビエルとの戦い並みの殺気を発しながらエクスカリバーを構えていた。

 

 

「お、オイ!アルトリアお前!一体何して……」

「何故、何故堕天使が悪魔と契約しているのですか………何が目的だ!」

「ふぅむ、昔この国に来た時に興味を持った隠形だったんだが、100年単位で鍛えれば案外と様になるもんだな」

 

 

 そう言った男が背中から翼を展開した。翼の枚数は十二枚。黒く、常闇を落とし込んだような薄暗い羽根が宙を舞い、コカビエルすら超える静かで圧倒的なオーラがあふれ出している。

 

 

「自己紹介させてもらおう。俺の名はアザゼル。堕天使共の頭をやっている。よろしくな『赤龍帝』、そして『現代の騎士王』」

 

 

 アザゼル。堕天使の組織『神の子を見張る者(グリゴリ)』の総督にして神器コレクター。あのコカビエルが不満を漏らしていた彼がまさかイッセーの契約相手とは。

 

 

「アンタが、アザゼル。!まさか俺のブーステッド・ギアを狙って!」

「まぁまぁ落ち着けよ。確かに君の赤龍帝の力に興味があるのは事実だが、契約を結んだのは俺が個人的に君を気に入ったからだよ」

 

 

 アザゼルは飄々とした態度を崩さず、イッセーの指摘を否定する。しかしイッセーとアルトリアは警戒を続ける。彼らにとって堕天使のイメージはレイナーレやコカビエルの様なマイナスなもの、加えてアザゼルは神器収集に熱を上げているため、その警戒心は余計に跳ね上がった。

 

 

「ま、取り敢えず今日は挨拶だけだ。詳しい話はまたいずれな。あ、報酬は後日に駒王学園のリアス・グレモリー宛で贈らせてもらうから安心してくれ。じゃあな」

 

 

 そう言ってアザゼルはイッセーの持つ荷物を何やら転移魔法で引き寄せ、展開した魔法陣の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

「冗談じゃないわ」

 

 

 紅髪の美少女が眉を吊り上げて、怒りを露わにしていた。リアス・グレモリー、イッセーの主であり、グレモリー家次期当主の上級悪魔。学園では、オカルト研究部の部長もしている。

 とても厳しいが、それと同じ位にとてもやさしい人物である。そんな彼女は今イッセーを膝枕している。ちなみに駒王学園の制服は既に夏服だ。イッセーも皆が薄着だと喜んでいた。

 

 

「確かに悪魔、天使、堕天使の三すくみのトップ会談がこの町で執り行われるとはいえ、堕天使の総督が私の縄張りに侵入し、営業妨害していたなんて…」

「不動産を調べたところ、あの物件はかなり隠蔽しながら購入された物のようです。目的は駒王町の偵察、及びコカビエルと私たちの監視、といったところでしょうか」

 

 

 朱乃からの報告にリアスはぶるぶると全身を怒りで震わせていた。先日、この町で起きた事件が悪魔、天使、堕天使の三すくみの関係に多少なりとも影響を及ぼした。その結果、一度トップ同士が集まって今後の三すくみ関係について話し合うことになった。グレモリー眷属とアルトリアはその事件の当事者としてその会談に同席して、事件の内容を報告しなければならない。

 そんな中、突然アザゼルが会談前に正体を明かして接触してきた。然も彼はコカビエルの一件の前からイッセーの契約相手として接触していたのだ。今まであちらは素性と気配を隠して、接してきた。本来なら人間と契約して対価を得る悪魔の営業相手が堕天使というのはある意味では営業妨害だろう。しかもそれが堕天使の総督となると、話は別になる。単なるお茶目じゃすまない。最悪これだけで勢力間に要らぬ摩擦を呼びかねない。

 

 

「しかも私のかわいいイッセーにまで手を出そうなんて、万死に値するわ!アザゼルは神器に強い興味を持つと聞くわ。きっと、私のイッセーがブーステッド・ギアを持っているから接触してきたのね…。大丈夫よ、イッセー。私がイッセーを絶対に守ってあげるわ」

 

 

 イッセーの頭を撫でながらリアスが言う。リアスは下僕の眷属悪魔を大切にするタイプの上級悪魔だ。自分の所有物であり家族同然に見ている彼らが他人に触れられたり、傷つけられたりするのを酷く嫌う。特にお気に入りであるイッセーにちょっかい出されて今は過敏になっているようだ。

 

 

「…やっぱ、俺の神器をアザゼルは狙っているのかな。堕天使の総督なんだろう?」

 

 

 イッセーは不安を口に出していた。加えてアザゼルは彼の幼馴染でもあるアルトリアにも興味を示していた。おそらく星の聖剣であるエクスカリバーについて知りたかったのだろう。そんなイッセーの不安を聞き、同じ男子部員の祐斗が口を開く。

 

 

「確かアザゼルは神器に造詣が深いと聞くね。そして、有能な神器所有者を集めているとも聞く。でも大丈夫だよ」

 

 

 祐斗が熱い視線をイッセーに向け続ける。

 

 

「僕がイッセーくんを守るからね」

「……いや、あの、う、嬉しいけどさ…。なんていうか、真顔でそんなことを男に言われると反応に困るぞ…」

「真顔で言うに決まっているじゃないか。君達は僕を助けてくれた。僕の大事な仲間だ。仲間の危機を救わないでグレモリー眷属の『騎士』を名乗れないさ」

 

 

 祐斗の台詞にイッセーは引き気味だ。一見すると仲間を護る意志を示した『騎士』の鑑のような風だが、その眼は良くない。あれではイッセーが『姫』だ。

 

 

「問題ないよ。『禁手』となった僕の神器とイッセーくんのブーステッド・ギア、この二つが合わさればどんな危機でも乗り越えられるような気がするんだ。…ふふ、少し前まではこんな暑苦しいことを口にするタイプではなかったんだけどね。君と付き合ってると心構えも変わってしまう。けれど、それが嫌じゃないのはなぜだろう…。胸のあたりが熱いんだ」

「…キ、キモいぞ、おまえ…。ち、近寄るな!ふ、触れるな!」

 

 

 参った。これではかつて見せられた『BL』まんまではないか。アルトリア自身そういう気はないが、何というか二人の間を変な目で見てしまう。祐斗はいままでがいままでだっただけに感情を持て余しているのだろう。このベクトル次第では変な過ちを犯しかねない。

 彼がもしその気を起こした際には、同じ剣士として責任をもって対処しなければなりませんね……

 

 

「そ、そんな、イッセーくん…」

 

 

 しゅんと気落ちする祐斗。ファンが見ればまた黄色い声援が上がるだろうか?

 

 

「しかし、どうしたものかしら…。あちらの動きが分からない以上、こちらも動きづらいわ。相手は堕天使の総督。下手に接することも出来ないわね」

 

 

 考え込むリアス。ただでさえ不安定な悪魔と堕天使の関係をこれ以上勝手に崩すわけにもいかない。ソーナが厳格に過ぎるが故に眩みがちだが、リアスもまたその辺りの線引きはかなり厳しい。アーシアを助けたのも、情だけでなくある程度の打算込みでの行動だろう。そういった面から見てもリアスは良き主君と言える。

 結論から言えば、あちらから大きな行動を取ってこなければ、こちらから動くこともない。彼もまた正体を現した以上はこれまでのような接触はないだろう。

 

 

「アザゼルは昔から、ああいう男だよ、リアス」

 

 

 突然、この場の誰でもない声が聞こえる。全員が声のした方向へ視線を移してみるとそこには紅髪の男性がにこやかに微笑んでいた。それは悪魔の世界に君臨する魔王、前大戦を生き延びクーデターを成した英雄、そしてアルトリアの雇い主。アルトリアがすかさず礼をし、朱乃達がその場で跪いた。

 まだ悪魔界に慣れないイッセーとアーシア、新顔のゼノヴィアが対応に困っていた。すかさずイッセーたちの頭を無理やり抑えて低頭させる。

 

 

「お、お、お、お兄様」

 

 

 驚愕の声を出していた。そう、彼こそリアスの兄であり悪魔を統べる現魔王『サーゼクス・ルシファー』様その方だ。まさかアポなしでいきなりやってくるとは。

 

 

「先日のコカビエルのようなことはしないよ、アザゼルは。今回みたいな悪戯はするだろうけどね。しかし、総督殿は予定よりも早い来日だな。いや、もともと目を付けていたのか」

 

 

とサーゼクスが零す。その後方には銀髪のメイド、サーゼクスの『女王』たるグレイフィアもいた。

 

 

「くつろいでくれたまえ。今日はプライベートで来ている」

 

 

 手をあげて、かしこまらなくていいと促す。全員がそれに従い、立ち上がった。

 

 

「やあ、我が妹よ。しかし、この部屋は殺風景だ。年頃の娘たちが集まるにしても魔方陣だらけというのはどうだろうか」

 

 

 部屋を見渡しながら、サーゼクスが苦笑いを浮かべている。確かにここがオカルト研究部という体裁を取っていて、自分たちは慣れているが第三者から見れば淑女が集まるにしてはおかしな部屋だ。

 

 

「お兄様、ど、どうして、ここへ?」

 

 

 怪訝そうにリアスが訊く。彼女からすれば、兄とは言えいきなり魔王がやって来るなど何事かと思うだろう。が、アルトリアはリアスのこの態度にもう一つの予感を感じた。するとサーゼクスは一枚のプリント用紙を取り出す。

 

 

「何を言ってるんだ。授業参観が近いのだろう?私も参加しようと思っていてね。ぜひとも妹が勉学に励む姿を間近で見たいものだ」

 

 

 授業参観、そう授業参観だ。親御さんが学校に来て授業の様子を見学するアレである。

 

 

「グ、グレイフィアね?お兄様に伝えたのは」

 

 

 少々困った様子のリアスの問いにグレイフィアが頷く。

 

 

「はい。学園からの報告はグレモリー眷属のスケジュールを任されている私の元へ届きます。むろん、サーゼクス様の『女王』でもありますので主へ報告も致しました」

 

 

 それを聞き、リアスはため息を吐く。彼女はこういったイベントには乗り気ではない。年頃の娘としての恥ずかしさもあるが、それ以上にグレモリー家の特性が彼女の羞恥心を刺激するのだ。

 

 

「報告を受けた私は魔王職が激務であろうと、休暇を入れてでも妹の授業参観に参加したかったのだよ。安心しなさい。父上もちゃんとお越しになられる」

 

 

 まさかグレモリー家当主も参加するのか。これでリアスの悩みは二倍に膨れ上がるだろう。天涯孤独の自分からすれば親がいるのは羨ましい限りだ。リアスには悪いが贅沢な悩みと言わせてもらおう。

 

 

「そ、そうではありません!お兄様は魔王なのですよ?仕事をほっぽり出してくるなんて!魔王がいち悪魔を特別視されてはいけませんわ」

「いやいや、これは仕事でもあるんだよ、実は三すくみの会談をこの学園で執り行おうと思っていてね。会場の下見に来たんだよ」

 

 

 サーゼクスからの衝撃的な一言。しかし同時に頷けもする。三すくみの関係に大きな波紋を起こした事件の現場がこの学園なのだ。であればこの学園で会談を開くというのも頷ける物ではある。

 

 

「っ!ここで?本当に?」

 

 

 リアスも目を見開いている。まさか自分たちが治めるこの学園で開催されるとは、緊張もするだろう。

 

 

「ああ。この学園とはどうやら何かしらの縁があるようだ。私の妹でもあるお前と、伝説の赤龍帝、騎士王の末裔にしてエクスカリバー使い、聖魔剣使い、聖剣デュランダル使い、そして魔王セラフォルー・レヴィアタンの妹が所属し、コカビエルと白龍皇、奈落の魔竜が襲来してきた。これは偶然で片付けられない事象だ。様々な力が入り混じり、うねりとなっているのだろう。そのうねりを加速度的に増しているのが兵藤一誠くん、赤龍帝だとは思うのだが」

 

 

 サーゼクスがイッセーへ視線を送る。

 

 

「貴方が魔王か。初めまして、ゼノヴィアという者だ」

 

 

 会話に介入してきたのは、新人悪魔のゼノヴィアだ。伝説の聖剣デュランダルの使い手であり、リアスの新たな眷属でもう一人の『騎士』でもある。

 

 

「ごきげんよう。ゼノヴィア。私はサーゼクス・ルシファー。リアスから報告を受けている。聖剣デュランダルの使い手が悪魔に転生し、しかも我が妹の眷属となるとは…正直、最初に聞いた時は耳を疑ったよ」

「私も悪魔になるとは思っていなかったよ。いままで葬ってきた側に転生するなんて、我ながら大胆な事をした思うが皆良くしてくれるし悪魔生も悪くないと思っている」

 

 

 神の不在を知り、当初は自信のあり方に思い悩んでいたが、アルトリアとの会話をきっかけに振り切れ、今では悪魔ライフを満喫している。この前もアルトリアを交えた女子達で遊びにいって来た。

 

 

「ハハハ、妹の眷属は楽しい者が多くていい、ゼノヴィア、転生したばかりで勝手が分からないかもしれないが、リアスの眷属としてグレモリーを支えて欲しい。よろしく頼むよ」

「聖書にも記されている伝説の魔王ルシファーにそこまで言われては私もあとに引けない。どこまでやれるか分からないが、やれるところまではやらせてもらう」

 

 

 ゼノヴィアの言葉を聞き、サーゼクスは微笑む。その微笑みはリアスにそっくりだった。やはり血なのだろう。

 

 

「ありがとう」

 

 

 魔王直々のお礼を聞いて、ゼノヴィアも頬を少しだけ赤く染めていた。

 

 

「さて、これ以上難しい話をここでしても仕方がない。うーむ、しかし、人間界に来たとはいえ、夜中だ。こんな時間に宿泊施設は空いているのだろうか?」

 

 

 まさかこの人はなんの計画無しに来たのか!?愛しの妹に会いたいが為に!?参った、魔王とその『女王』となれば下手な安宿に泊まるのは憚られる。幸いこの街にはグレモリーやシトリー資本のホテルもある。そこなら良い部屋が余っているかもしれない。

 すかさずグレイフィアにその事を相談しようすると、イッセーが手をあげながら発言する。

 

 

「あ、それなら」

 

 

 

 

 

 

「なるほど、妹が迷惑をおかけしてなくて安心しました」

「そんなお兄さん!リアスさんはとてもいい子ですわよ」

「ええ、リアスさんはイッセーにはもったいないぐらい素敵なお嬢さんです」

 

 

 兵藤家のリビングで、伝説の魔王とイッセーの両親が挨拶を交わしていた。魔王サーゼクスの隣にはリアス、その後方にグレイフィアが待機している。

 イッセーが提案した。『それなら、俺の家に泊まりますか?』と。最初、サーゼクスは目を丸くしていた。当然だ、王を一庶民の家に呼ぶとは皆も驚いた。だが、リアスが兵藤家住んでいる事を思い出してか、

 

 

「それはいい。ぜひとも下宿先のご夫婦にあいさつしたいと思っていたのだよ」

 

 

と、イッセーの意見を快諾した。リアスは「ダメ!ダメよ!」と抵抗していたが、魔王とその『女王』の二人を止められるはずもなく、悪魔稼業終了後にお邪魔することとなった。イッセーとアーシアは少し離れた所から、その様子を窺っていた。リアス本人は顔を真っ赤にして座っている。兄であるサーゼクスが勢いで何を喋るか怖くて仕方ないのだ。

 一応サーゼクスの身の上はリアスの兄で、リアスの父ジオティクスが経営している会社の跡継ぎということになっている。名もサーゼクス・グレモリーとして数百年前に捨てた名前を再び使っている。サーゼクス様も楽し気だった。

 

 

「そちらのメイドさんは」

「ええ、グレイフィアです」

 

 

 イッセーの父、五郎の問いにサーゼクスが答える。

 

 

「実は私の妻です」

「「えええええええええええええええええッッ!?」」

 

 

 サーゼクスの告白にリアスを除いた皆が驚愕する。グレイフィアさんは無表情のまま、サーゼクスの頬をつねった。この事実はグレモリーと関わって数ヶ月のイッセー達は知らない事だが。

 

 

「メイドのグレイフィアです。我が主がつまらない冗談を口にして申し訳ございません」

「いたひ、いたひいひょ、ぐれいふぃあ」

 

 

 静かに怒っているグレイフィアと、涙目で朗らかに笑っているサーゼクス。隣ではリアスが恥ずかしそうに両手で顔を覆っていた。まぁ、実の兄が妻にメイドの格好させてるなんて恥ずかしいが。

 

 

「それでは、グレモリーさんも授業参観を?」

 

 

 イッセーの母、三希がサーゼクスに話しかける。

 

 

「ええ、仕事が一段落しているので、この機会に一度妹の学び舎を見つつ、授業の風景も拝見できたらと思いましてね。当日は父も顔を出す予定です」

「まあ、リアスさんのお父さんも」

「父は駒王学園の建設などにも携わっておりまして、私同様、良い機会だからと顔を出すようです。本当はリアスの顔を見たいだけだと思いますが。それとアルトリアも」

「アルトリアちゃんも?」

「実は私の父が彼女の身元保証人なのです。言うなれば親代わりですね。しかし父は海外で忙しい身。彼女自身も手のかからぬ子という事で、中々会えなかったのです。こういった授業参観にも……」

「そうだったのですか……ですがご安心を!実は私ども、時々アルトリアちゃんの授業参観に親代わりとして参加した事があるんですよ。いつも息子が世話になっているのでそのお礼にと」

 

 

 身寄りが無いアルトリアには当然、授業参観に来る父兄がいない。一時期はそれも含めイジメに晒されかけたが、イッセーのお陰でいじめっ子が黙り、アルトリア自身も気にしなかった事で大事になる前に収束した。以来彼女と兵藤家は深い交流を持つ様になったのだ。

 

 

「なんと、その様な事が。なんとお礼を言えばよろしいか」

「いえいえ、そんな!あ、グレモリーさん!お酒はいけますかね?日本の美味しいお酒があるんですがね」

 

 

 湿っぽい話は無しだとばかりに五郎がキッチンから秘蔵のお酒らしきものを取り出してきた。それは彼が長いこといつ飲むかと考え続けていたものだった。

 

 

「それは素晴らしい!ぜひともいただきましょう!日本の酒はいける口なのでね!」

 

 

 五郎の誘いに笑顔で返すサーゼクス。想像以上にフレンドリーな魔王様との夜は楽しそうに過ぎて行ったのだった。

 

 

 

 

 

 煌々とネオンが照らす繁華街。そこに今、アルトリアは降り立った。いつもの夜警、しかし今回はある人物と待ち合わせている。

 

 

「おや、早いのですね」

「俺は紳士なんでな、女を待たせる様な事はしないさ」

 

 

 待ち合わせ場所に来ていた男、それはアザゼルだった。先日自身の正体を明かしたこの男に彼女は聞きたい事があったのだ。

 

 

「それで、態々俺を呼びつけた理由は?デートのお誘いなら後5年は歳を取ったら受け付けるんだが」

「あの日、コカビエルを倒した『白龍皇』と『奈落の魔竜』。あれは貴方の差し金ですね。何故あの2人が貴方の下へ?彼らを始めとした神器使いを集めて何を企んでいるのですか」

 

 

 アザゼルの神器収集はかなり有名な話である。特に神滅具持ちが複数堕天使側に在籍しているという話はサーゼクス達上層部でも警戒のタネになっていた。

 

 

「あぁ、それか。別に今話しても良いんだが、タダって訳にもいかないな。この情報は一応機密扱いなんだ。対価は?」

「エクスカリバーの情報、はどうでしょう?神器ほどではありませんが、中々に貴方の興味を誘うのでは?」

 

 

 聖剣の情報は遅かれ早かれ、次の会談で開示する予定だ。ならば今のうちに交渉のカードとして切っておくのも悪くはない、アルトリアは丁度やって来たサーゼクスに許可を得て、アザゼルに交渉を持ちかけたのだ。

 

 

「ふぅむ、確かに魅力的な提案だな。エクスカリバー、星の聖剣はまだまだ謎が多い。その構造、構成物質、能力は気になるところだが……まだまだだな。その情報、今度の会談で公開する気なんだろ?」

「!?」

「だったら今聞くより待って会談で質問攻めした方がいいな。出ると分かり切った情報にそこまでの価値はない。交渉は不慣れかな、お嬢さん?」

「………」

「ま、安心しな。こっちも神器の研究データやらアイツらの事はちゃんと話す。焦らなくても良いさ。んじゃ、俺はここで失礼させて貰うよ。またな、可愛い騎士王ちゃん」

 

 

 そう言ってアザゼルは魔法陣の中に消えていった。彼の意思を確認出来た事は良かったが、半ば無駄骨だった。彼は気にしていない様子だったが、一勢力の長をすぐに帰らせてしまったのは良くない。

 交渉や情報の裏取引としては赤点ものだろう。彼女は己の未熟を恥じ、目線を落とすのだった。




 ヴォーティガン情報 その二

 『白龍皇』と『奈落の魔竜』の出会いはブリテンのとある湿地帯。そこで二人は運命的な出会いを果たした。
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